説明

調香用キット

【課題】 本発明は、調香者が香りの専門知識をもたなくても、簡便に調香し、フレグランスを得ることができる調香用キットを提供するものである。
【解決手段】 本発明は、香料の揮発度(持続性)を基準に「トップノート」、「ミドルノート」及び「エンドノート」の3つの「ノート」群に分類される香料組成物から構成され、調香者が3つの「ノート」群から、それぞれ少なくとも1種の香料組成物を選び、これらを調合してフレグランスを得るための調香用キットにおいて、香料組成物は、各「ノート」内で共通の香調を有するベース香料部分と異なる香調を有する特徴香料部分とからなり、この共通の香調を持つベース香料を含有することにより、3つの「ノート」群から、いずれの香料組成物を選択し、いずれの割合で調合してもバランスのとれた良い香りを作ることができる調香用キットに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調香用キットに関し、更に詳しくは、香料の揮発度(持続性)を基準に「トップノート」、「ミドルノート」及び「エンドノート」の3つの「ノート」群に分類される香料組成物を調合することによって、調香者が香りの専門知識を持たなくても、簡便に調香し、フレグランスを得ることができる調香用キットである。香料組成物は、各「ノート」内において共通の香調を持つベース香料部分と異なる香調を持つ特徴香料部分とからなる。そして、この共通の香調を持つベース香料を含有することにより、3つの「ノート」群から、いずれの香料組成物を選択し、いずれの割合で調合してもバランスのとれた良い香りを作ることができる調香用キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレグランス製品(香水、オードパルファム、オーデコロン等)を構成する香料には多数の香料成分が使用されている。従来、香料成分の中には、多くの量を配合しても特徴がでないもの、反対に少量でかなりの特徴がでてしまうものがある。また、それぞれの香料は揮発度により、香りが強く出る時間が異なるものである。そこで、フレグランス製品の塗布の最初からある程度時間が経過した後まで、バランスの良い香りを調香して、イメージする香りに近づけるこは、非常に困難であり、経験と知識を持った専門性が必要であった。
しかし、自分だけの香りや、自分にあった香りを作りたいというニーズがあり、専門知識がなくてもフレグランスを作成する方法が検討されてきた。
例えば、職業や趣味、血液型等から分類し、イメージできる香りの処方を行い自分の香りを作る方法や専門家に香りのイメージを伝え調合してもらう方法などが挙げられるが、これらではもともと決まった香りの中から選ぶものであったり、専門家が作った香りのため、自分自身で調香したという実感は得られなかった。
更に、専門知識なしに、イメージ通りの調香を為しうる技術として、香料組成物を三種類に分けその香料群より選択する調香方法が検討されてきた。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2005−162991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、3種類に分けその香料群より選択する方法では、相性の合うものと合わないものが存在し、自由に調香するには、予め香料の質や量限定する必要があった。
そこで、調香者が専門家でなくても簡便にどのような割合で調合してもバランスのとれた良い香りのフレグランスを調香できる調香用キットが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は、調香用キットを、香料の揮発度(持続性)を基準に、「トップノート」、「ミドルノート」及び「エンドノート」というカテゴリーに分け、この3つの「ノート」群はそれぞれ複数の香料組成物で構成されるものとした。そして、この香料組成物は、1つのカテゴリーの「ノート」においては、共通の香調を持つベース香料部分と異なる香調を持つ特徴香料部分とからなる。この共通の香調を持つベース香料が存在することで、3つの「ノート」群から、いずれの香料組成物を選択し、それをどのような割合で調合してもバランスのとれた良い香りのフレグランスを調香できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、揮発度(持続性)を基準に、「トップノート」、「ミドルノート」及び「エンドノート」の3つの「ノート」群に分類される香料組成物から構成され、調香者が3つの「ノート」群から、それぞれ少なくとも1種の香料組成物を選び、これらを調合してフレグランスを得るための調香用キットであって、各「ノート」は複数の香料組成物からなり、その香料組成物は、共通の香調を持つベース香料部分と、異なる香調を持つ特徴香料部分からなり、共通の香調を持つベース香料部分は、同一「ノート」の中では、共通の香調を有するもので構成されることを特徴とする調香用キットを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調香用キットは、調香者が専門家でなくても簡便にどのような割合で調合してもバランスのとれた良い香りのフレグランスを調香できる調香用キットに関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の調香用キットは、香料の揮発度(持続性)を基準に「トップノート」、「ミドルノート」及び「エンドノート」の3つの「ノート」群に分類される香料組成物から構成されるものである。ここで、香料の揮発度とは、香料をにおい紙に塗布した時ににおいがどれくらい持続するかをみたもので、「トップノート」は20分位香りがよくにおうもので、「ミドルノート」は2時間位香りがよくにおうもの、「エンドノート」は6時間位香りが残るものとする。
【0009】
本発明の調香用キットは、各「ノート」が複数の異なる香調を有する香料組成物で構成されるが、例えば、「トップノート」がシトラス系とグリーン系の香調を持つ2種、「ミドルノート」がフレッシュフローラル系とフローラルブーケ系の香調を持つ2種、「エンドノート」がムスキー系とウッディー系の香調を持つ2種の香料組成物の場合は、合計で6種の香料組成物で構成されるものである。
【0010】
前記香料組成物は、共通の香調を持つベース香料部分(以下、「ユニバーサルベース」と言うことがある。)と、異なる香調を持つ特徴香料部分(以下、「モディファイヤー」と言うことがある。)からなり、ユニバーサルベースは、同一の「ノート」の中では、共通の香調を有するものである。例えば、「トップノート」がシトラス系とグリーン系の香調を持つ2種の香料組成物の場合、「ユニバーサルベース」として、酢酸リナリル、リモネン、リナロール、テルピノーレン、オレンジ油、グレープフルーツ油、ベルガモット油、マンダリン油、ライム油、レモン油、ローズウッド油を共通に含有する。そして、シトラス系は、「ユニバーサルベース」にシトラス系の特徴を持つ「モディファイヤー」を配合しシトラス系香料組成物とする。グリーン系も前記の成分で構成される「ユニバーサルベース」に加え、グリーン系の特徴を持つ「モディファイヤー」を配合して、グリーン系香料組成物とする。
同様に、「ミドルノート」であれば、例えばフレッシュフローラル系とフローラルブーケ系の香調を持つ2種の香料組成物の場合、「ユニバーサルベース」として、α−アミルシンナミックアルデヒド、シトロネロール、ジヒドロジャスモン酸メチル(=へディオン)、ヒドロキシシトロネラール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(=リラール)、β−フェニルエチルアルコール、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(=リリアール)、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、メチルイソオイゲノール、メチルヨノン、α−ヨノン、β−ヨノンを共通に含有する。そして、フレッシュフローラル系は、「ユニバーサルベース」にフレッシュフローラル系の特徴を持つ「モディファイヤー」を配合しフレッシュフローラル系香料組成物とする。フローラルブーケ系も前記の成分で構成される「ユニバーサルベース」に加え、フローラルブーケ系の特徴を持つ「モディファイヤー」を配合しフローラルブーケ系香料組成物とする。
同様に、「エンドノート」であれば、例えば、ムスキー系とウッディー系の香調を持つ2種の香料組成物の場合、「ユニバーサルベース」として、エチレンブラシレート、ガラクソリド50質量%ジプロピレングリコール溶液(以下単に、質量%は「%」、ジプロピレングリコール溶液は「DPG」と略す。)、クマリン、サリチル酸ベンジル、シクロペンタデカノリド(ペンタリド)、トナリド、ジヒドロジャスモン酸メチル(=へディオン)、ヒドロキシシトロネラール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(=リラール)、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(=リリアール)、ヘリオトロピンを共通に含有する。そして、ムスキー系は、「ユニバーサルベース」にムスキー系の特徴を持つ「モディファイヤー」を配合しムスキー系香料組成物とする。ウッディー系も前記の成分で構成される「ユニバーサルベース」に加え、ウッディー系の特徴を持つ「モディファイヤー」を配合して、ウッディー系香料組成物とする。
【0011】
本発明の調香用キットを構成する香料組成物において「ユニバーサルベース」は50〜90%含有することが好ましい。この範囲であれば、バランスの良い香りが得られる。
【0012】
本発明の調香用キットの「トップノート」を構成する香料組成物に配合する香料成分は、特に限定されないが、以下のものをあげることができる。
例えば、「ユニバーサルベース」として好ましいものは、酢酸リナリル、リモネン、リナロール、テルピノーレン、オレンジ油、グレープフルーツ油、ベルガモット油、マンダリン油、ライム油、レモン油、ローズウッド油等が挙げられ、これらの1種または2種以上を含有することができるが、全てを含有したものを「ユニバーサルベース」とすることが好ましい。
【0013】
「トップノート」を構成する香料組成物で、「モディファイヤー」として配合する香料成分としては、例えば、シトラス系として、n−オクタナール(アルデヒドC−8)10%DPG、n−ノナナール(アルデヒドC−9)10%DPG、デカナール(アルデヒドC−10)10%DPG、ウンデカナール(アルデヒドC−11)10%DPG、α−ダマスコン10%DPG、β−ダマスコン10%DPG、γ−ダマスコン10%DPG、δ−ダマスコン10%DPG、α−テルピネオール等が挙げられる。
【0014】
グリーン系としては、デカナール(アルデヒドC−10)10%DPG、ウンデカナール(アルデヒドC−11)10%DPG、2−メチルウンデカナール(アルデヒドC−12MNA)10%DPG、カシスベース345、酢酸スチラリル、酢酸cis−3−ヘキセニル、サリチル酸cis−3−ヘキセニル、cis−3−ヘキセノール10%DPG、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム(=ステモン)10%DPG、ローズオキサイド10%DPG、Galbex183 10%DPG、ガルバナム油10%DPG、スターアニス油、セージ油、バイオレットリーフ油10%DPG、バジル油10%DPG、ラバンジン油、ラベンダー油、ローレル油等が挙げられる。
【0015】
フルーティー系としては、γ−ウンデカラクトン10%DPG、α−ダマスコン10%DPG、β−ダマスコン10%DPG、γ−ダマスコン10%DPG、δ−ダマスコン10%DPG、γ−デカラクトン10%DPG、γ−ドデカラクトン10%DPG、ラズベリーケトン等が挙げられる。
【0016】
本発明の調香用キットの「ミドルノート」を構成する香料組成物に配合する香料成分は、特に限定されないが、以下のものをあげることができる。
例えば、「ユニバーサルベース」として好ましいものは、α−アミルシンナミックアルデヒド、シトロネロール、ジヒドロジャスモン酸メチル(=へディオン)、ヒドロキシシトロネラール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(=リラール)、β−フェニルエチルアルコール、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(=リリアール)、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、メチルイソオイゲノール、メチルヨノン、α−ヨノン、β−ヨノン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を含有することができるが、全てを含有したものを「ユニバーサルベース」とすることが好ましい。
【0017】
「ミドルノート」を構成する香料組成物で、「モディファイヤー」として配合する香料成分としては、例えば、フレッシュフローラル系として、エチルリナロール、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、シクラメンアルデヒド、イランイラン油、カミツレ油、ゼラニウム油、タジェート油、ネロリ油等が挙げられる。
【0018】
フローラルブーケ系としては、イソイースーパー、エチルリナロール、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、シクラメンアルデヒド、イランイラン油、ジャスミンアブソリュート、ローズ油等が挙げられる。
【0019】
スウィートフローラル系としては、エチルリナロール、クマリン、ヘリオトロピン、イランイラン油、オリス油、ジャスミンアブソリュート、パチュリ油、ローズ油等が挙げられる。
【0020】
本発明の調香用キットの「エンドノート」を構成する香料組成物に配合する香料成分は、特に限定されないが、以下のものをあげることができる。
例えば、「ユニバーサルベース」として好ましいものは、エチレンブラシレート、ガラクソリド50%DPG、クマリン、サリチル酸ベンジル、シクロペンタデカノリド(ペンタリド)、トナリド、ジヒドロジャスモン酸メチル(=へディオン)、ヒドロキシシトロネラール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(=リラール)、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(=リリアール)、ヘリオトロピン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を含有することができるが、全てを含有したものを「ユニバーサルベース」とすることが好ましい。
【0021】
「エンドノート」を構成する香料組成物で、「モディファイヤー」として配合する香料成分としては、例えば、ムスキー系として、アンブレットリド、インドール10%DPG、11−オキサヘキサデカノリド(Musk R−1)、アンブレットシード油、オークモスアブソリュート、オリバナム油等が挙げられる。
【0022】
ウッディ系としては、アンブロキサン10%DPG、イソカンフィルシクロヘキサノール(=Sandela)、カシュメラン、グリサルバ、酢酸グアヤック、酢酸ベチベリル、サンタロール、サンダロール、セドロールメチルエーテル(=セドランバー)、バンガロール(=バクダノール)、アンブレットシード油、オークモスアブソリュート、オリバナム油、グアヤックウッド油、サンダルウッド油、セダーウッド油、ヒノキ油、ベチパー油等が挙げられる。
【0023】
スウィート系としては、エチルバニリン、エチルマルトール、バニリン、マルトール、ラズベリーケトン、オークモスアブソリュート、トンカビーンズアブソリュート、バルサムトルー、バルサムペルー、ベンゾイン等が挙げられる。
【0024】
尚、本発明の調香用キットにおいて、「トップノート」、「ミドルノート」、「エンドノート」は、揮発度を基準にして分類されるが、それぞれを構成する香料組成物に配合する香料成分は、「ノート」間で重複して用いられることがある。
【0025】
本発明の調香用キットは、調香者が、「トップノート」、「ミドルノート」、「エンドノート」から、所望の香料組成物を1種類ずつ選び、自分の好みに合わせて量を決めることができるが、例えば、香料組成物の選択は「ミドルノート」、「トップノート」、「エンドノート」の順に選び、「ミドルノート」が骨格となるような量、例えば、70%程度として、「トップノート」を20%程度、「エンドノート」を10%程度とすると、所望の香調が持続して好ましいフレグランスが得られる。また、当初所望する量の7割を目安に作成し、好みの香りであれば、残りの3割を足すことで、調合中に修正することができるため好ましい。調合の際は、秤を用いずに、スポイド等を用い、ビーカーに入れ大体の目安で簡便に作成することができる。
フレグランスは一般的に香料成分をエチルアルコールで希釈して使用するものである。
例えば、オーデコロンとしては、香料成分が5〜10%程度、オードトワレとしては、10〜15%程度、香水としては30%程度の濃度にする。そこで、本発明の調香用キットを構成する香料組成物は、香料成分を5〜30%含有するように、エチルアルコールで希釈しておくことが好ましい。予め希釈してあるものを使用すれば、後で希釈する必要がなく簡便に調香ができるため好ましい。希釈物は香料成分と同程度の水を含有することが好ましく、水を含有することにより、肌に塗布した際白くなるのを防ぐことができる。
本発明の調香用キットは、「トップノート」、「ミドルノート」、「エンドノート」のカテゴリーが1種類ずつで構成したものを調香用キットとして商品とすることができるが、2種以上で構成されたものを商品とすることもできる。また、調香後のフレグランスを商品とすることもできる。
【0026】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0027】
実施例1:調香用キット
「トップノート」
下記表1に示す処方のT(トップノートユニバーサルベース)(TU1)を調製し、これを用いて、表2に示すシトラス系香料組成物(T−1)、グリーン系香料組成物(T−2)、フルーティー系香料組成物(T−3)を調製した。
尚、表1〜6では、各ユニバーサルベースを構成する香料成分の好ましい配合量と、それぞれの香料組成物においては、モディファイヤーを構成する香料成分の好ましい配合量とユニバーサルベースの好ましい配合量を記載した。
「ミドルノート」
同様に、下記表3に示す処方のM(ミドルノートユニバーサルベース)(MU1)を調製し、これを用いて、表4に示すフレッシュフローラル系香料組成物(M−1)、フローラルブーケ系香料組成物(M−2)、スウィートフローラル系香料組成物(M−3)を調製した。
「エンドノート」
更に、同様に、下記表5に示す処方のE(エンドノートユニバーサルベース(EU1)を調製し、これを用いて、表6に示すムスキー系香料組成物(E−1)、ウッディー系香料組成物(E−2)、スウィート系香料組成物(E−3)を調製した。
「調香用キット」
先に調整した香料組成物であるT−1、T−2、T−3、M−1、M−2、M−3、E−1、E−2、E−3を、水を5%含有するエチルアルコール溶液で、それぞれ5%に希釈し、各々をスポイト付香料瓶に詰めて、これらを、調香用キットとした。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

*1:TU1を使用した。
【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

*2:MU1を使用した。
【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

*3:EU1を使用した。
【0034】
実施例2〜10:調香用キット使用例
下記表7に示す実施例2〜10の処方でフレグランスを作成した。これらについて、専門パネル4名で香りのバランスについて下記評価方法により、絶対評価基準に従い評点をつけ、各評点の平均点より下記判定方法に基づいて判定を行った。
【0035】
【表7】

【0036】
(評価方法)
におい紙に実施例のフレグランスを塗布し、アルコール分を揮発させた直後の香りと、塗布後室温で1時間放置後の香り、塗布後室温で3時間放置後の香りについて、下記評点を基準に香りのバランスについて評価を行った。その結果も併せて表7に示した。
【0037】
絶対評価基準
(評点):(評価)
5:非常に良い
4:良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0038】
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4.5点以上
○ :3.5点以上4.5点未満
△ :2.5点以上3.5点未満
× :2.5点未満
【0039】
表7の結果から明らかな如く、本発明の実施例2〜10のフレグランスは、アルコール分を揮発させた直後、塗布後室温で1時間放置後、塗布後室温で3時間放置後の全てにおいてバランスのとれた優れたものであった。
【0040】
実施例11〜16:調香用キット使用例
下記表8に示す実施例11〜16の処方でフレグランスを作成した。これらについて、実施例2〜10と同様に評価を行い、その判定結果を併せて表8に示した。
【0041】
【表8】

【0042】
表8の結果から明らかな如く、本発明の実施例11〜16のフレグランスは、アルコール分を揮発させた直後、塗布後室温で1時間放置後、塗布後室温で3時間放置後の全てにおいてバランスのとれた優れたものであった。
【0043】
実施例17:調香用キットの使用方法(フレグランスの調香体験)
ステップ1:初めにフレグランスの香りの構成について説明する。
トップノート:持続時間20分位
ミドルノート:持続時間2時間位
エンドノート:持続時間6時間位
これらをパネルに記載したものを使用する。
ステップ2:調香の仕方を説明しながら実施する。
1.初めに、3種のミドルノートの中からお好きな香りを一つ選んでください。
2.続いて、3種のトップノートの中からお好きな香りを一つ選んでください。
3.最後に、3種のエンドノートの中からお好きな香りを一つ選んでください。
4.処方箋に選んだ各ノートの番号を記入し、合計が20mlになるように各々の割合を記入します(表9の処方No.A参照)。
5.処方箋通りにビーカーに調合します。
6.調合が終わったらよく混ぜて、匂い紙につけて調合した香りを評価しましょう。
7.この香りでOKであれば、同じ割合で3つのノートを増やして30mlになるようにします(表9の処方No.B参照)。もしお気に召さない時は、30mlになるまで自由に3つのノートを加えてください(表9の処方No.C参照)。
8.最後にお気に入りの香りをスプレービンに詰めてお持ち帰りください。
【0044】
【表9】

【0045】
以上のように、フレグランスの調香体験をすることによって、調香者が香りの専門知識を持たなくても、簡便に調香し、フレグランスを得ることができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調香者が所望する香調のフレグランスを調香するためのキットであって、「トップノート」、「ミドルノート」及び「エンドノート」の3つの「ノート」群に分類される香料組成物から構成され、調香者が3つの「ノート」群から、それぞれ少なくとも1種の香料組成物を選び、これらを調合してフレグランスを得るための調香用キットにおいて、各「ノート」の香料組成物が、同一「ノート」内で共通の香調を有するベース香料部分と異なる香調を有する特徴香料部分とからなることを特徴とするフレグランス調香用キット。
【請求項2】
前記「トップノート」の香料組成物において、共通の香調を持つベース香料を該組成物中50〜70質量%含有することを特徴とする請求項1記載の調香用キット。
【請求項3】
前記「ミドルノート」の香料組成物において、共通の香調を持つベース香料を該組成物中50〜70質量%含有することを特徴とする請求項1または2記載の調香用キット。
【請求項4】
前記「エンドノート」の香料組成物において、共通の香調を持つベース香料を該組成物中50〜70質量%含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の調香用キット。
【請求項5】
前記「トップノート」の香料組成物において共通の香調を持つベース香料が、酢酸リナリル、リモネン、リナロール、テルピノーレン、オレンジ油、グレープフルーツ油、ベルガモット油、マンダリン油、ライム油、レモン油、ローズウッド油で構成されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の調香用キット。
【請求項6】
前記「ミドルノート」の香料組成物において共通の香調を持つベース香料が、α−アミルシンナミックアルデヒド、シトロネロール、ジヒドロジャスモン酸メチル(=へディオン)、ヒドロキシシトロネラール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(=リラール)、β−フェニルエチルアルコール、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(=リリアール)、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、メチルイソオイゲノール、メチルヨノン、α−ヨノン、β−ヨノンで構成されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の調香用キット。
【請求項7】
前記「エンドノート」の香料組成物において共通の香調を持つベース香料が、エチレンブラシレート、ガラクソリド50%ジプロピレングリコール溶液、クマリン、サリチル酸ベンジル、シクロペンタデカノリド(ペンタリド)、トナリド、ジヒドロジャスモン酸メチル(=へディオン)、ヒドロキシシトロネラール、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(=リラール)、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド(=リリアール)、ヘリオトロピンで構成されることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の調香用キット。
【請求項8】
前記調香用キットが女性向け用であり、「トップノート」、「ミドルノート」及び「エンドノート」の各「ノート」が異なる香調の香料組成物を3種ずつ有し、合計で9種類の香料組成物で構成されるを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の調香用キット。
【請求項9】
前記調香用キットが男性向け用にであり、「トップノート」、「ミドルノート」及び「エンドノート」の各「ノート」が異なる香調の香料組成物を2種ずつ有し、合計で6種類の香料組成物で構成されるを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の調香用キット。

【公開番号】特開2009−144150(P2009−144150A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298848(P2008−298848)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】