説明

警備装置、遠隔警備システム、及び遠隔警備方法

【課題】警備対象の施設又は輸送手段に警備員が到着する前であっても、犯行を阻止すると共に、当該施設内の人員又は輸送手段の乗員を犯人から保護する。
【解決手段】警備装置10は、監視カメラ20と、遠隔操作により作動されて監視カメラ20の撮像軸22をパン方向及びチルト方向に旋回させる電動雲台30と、撮像軸22の方向に催涙ガスやキャッチングネット等を発射可能な状態で電動雲台30により旋回されるように監視カメラ20に支持され、遠隔操作により作動されて催涙ガスやキャッチングネット等を発射する防犯器具40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動雲台と防犯器具とを有する監視カメラを備える警備装置、遠隔警備システム、及び遠隔警備方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関や店舗等の警備システムとして、侵入者の侵入を検知する情報、又は店員による非常釦の操作に応じて、店員と侵入者との間を遮断したり、侵入者の逃走経路を遮断したりするシャッターを作動させるものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、監視カメラと異常検知センサとを搭載して走行する移動体を巡回させ、異常検知センサにより検知された対象を監視カメラで撮像してモニタに表示させ、警備員に確認させるという遠隔警備システムも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005―274112号公報
【特許文献2】特開2004−206539号公報
【特許文献3】特開平8−7186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の警備システムでは、犯人(侵入者)の犯行を阻止できず、特許文献2に記載の警備システムでは、店内の人員を犯人から保護できない。また、特許文献3に記載の遠隔警備システムでは、遠隔警備の対象の銀行や店舗への警備員の到着が早まるものの、警備員の到着前は、犯行を阻止できず、店内の人員を犯人から保護できない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、警備対象の施設又は輸送手段に警備員が到着する前であっても、犯行を阻止し、又犯人の逃走を妨害できると共に、当該施設内の人員又は輸送手段の乗員を犯人から保護できる警備装置、遠隔警備システム、及び遠隔警備方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る警備装置は、監視カメラと、遠隔操作により作動されて前記監視カメラの撮像軸をパン方向及びチルト方向に旋回させる電動雲台と、前記撮像軸の方向に防犯用の被発射体を発射可能な状態で前記電動雲台により旋回されるように前記監視カメラ又は前記電動雲台に支持され、遠隔操作により作動されて前記被発射体を発射する防犯器具と、を備える。
【0007】
上記警備装置において、前記防犯器具の前記被発射体の発射軸と前記撮像軸とが平行であってもよい。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る遠隔警備システムは、上記警備装置を遠隔操作する遠隔警備システムであって、前記監視カメラで撮像された映像を表示する表示手段と、前記表示手段により表示された映像中の任意の位置を指定する際に操作される第1操作部と、前記第1操作部が操作されることにより指定された位置が映像の所定位置に移動するように、前記電動雲台を作動させる電動雲台制御手段と、前記防犯器具に前記被発射体を発射させる際に操作される第2操作部と、前記第2操作部が操作されると、前記防犯器具に前記被発射体を発射させる防犯器具制御手段と、を備える。
【0009】
上記遠隔警備システムは、警備対象の施設又は輸送手段に配置された異常検知手段と非常通知手段との少なくも一方から異常検知信号と非常通知信号との少なくとも一方を受信すると、前記監視カメラで撮像された映像を前記表示手段に表示させる起動制御手段を備えてもよい。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る遠隔警備システムは、上記警備装置を遠隔操作する遠隔警備方法であって、前記監視カメラで撮像された映像を表示手段に表示するステップと、前記表示手段により表示された映像中の任意の位置を指定するステップと、指定した位置が映像の中心に移動するように、前記電動雲台を作動させるステップと、前記防犯器具に前記被発射体を発射させるステップと、を備える。
【0011】
上記遠隔警備方法は、警備対象の施設又は輸送手段に配置された異常検知手段と非常通知手段との少なくも一方から異常検知信号と非常通知信号との少なくとも一方を受信すると、前記監視カメラで撮像された映像を前記表示手段に表示させるステップを備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記警備装置、遠隔警備システム、及び遠隔警備方法によれば、警備対象の施設又は輸送手段に警備員が到着する前であっても、犯行を阻止し、又犯人の逃走を妨害できると共に、当該施設内の人員又は輸送手段の乗員を犯人から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係る警備装置を備える遠隔警備システムの概略構成を示す図である。
【図2】一実施形態に係る警備装置を示す斜視図である。
【図3】モニタに映った侵入者の位置と映像のピクセル座標との関係を示す図である。
【図4】モニタに映った侵入者の位置と監視カメラの水平方向及び垂直方向の角度との関係を示す図である。
【図5】電動雲台が水平方向にΔθhだけ回転したときのモニタに映った侵入者の位置と監視カメラのパン角度との関係を示す図である。
【図6】電動雲台が垂直方向にΔθvだけ回転したときのモニタに映った侵入者の位置と監視カメラのチルト角度との関係を示す図である。
【図7】指定位置P1の角度座標を直線的に中心に変化させたときのモニタに映った侵入者の位置と監視カメラのパン角度及びチルト角度との関係を示す図である。
【図8】遠隔警備システムの動作フローを示すフローチャートである。
【図9】他の実施形態に係る警備装置を備える遠隔警備システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る警備装置10を備える遠隔警備システム100の概略構成を示す図である。警備装置10は、銀行や店舗や学校や要人宅等の警備対象の施設1の室内の天井等に設置される。この警備装置10は、監視カメラ20と、監視カメラ20を支持する電動雲台30と、監視カメラ20と共に電動雲台30に支持された防犯器具40とを備えている。また、遠隔警備システム100は、警備対象の施設1に設置された制御端末50と伝送端末60と異常検知センサ62と非常釦64とを備えている。
【0015】
監視カメラ20は、警備対象の施設1内を撮影し、撮影した映像に応じた映像信号を映像信号入力部52へ出力する。また、電動雲台30は、監視カメラ20をパン軸周り及びチルト軸周りに回転可能に支持する雲台であり、監視カメラ20をパン軸周りに回転させる第1のステッピングモータ32と、監視カメラ20をチルト軸周りに回転させる第2のステッピングモータ34とを備えている。
【0016】
また、防犯器具40は、催涙ガス等の防犯用の気体や、接着剤入りのカラースプレー等の防犯用の液体や、キャッチングネット等の防犯用の捕獲具や、塗料を収容したカラーボール等の防犯用の識別弾等を被発射体として発射する装置である。この防犯器具40は、取付金具41により監視カメラ20に固定されることによって、監視カメラ20と共に監視カメラ20のパン軸及びチルト軸の周りに回転可能に電動雲台30に支持されている。
【0017】
なお、防犯器具40は、必要に応じて複数種類設置できる。本実施形態に係る警備装置10は、催涙ガスを発射する防犯器具40Aと、キャッチングネットを発射する防犯器具40Bとを備えている。防犯器具40Aは、電磁弁45が励磁されることにより催涙ガスを発射する。また、防犯器具40Bは、電磁スイッチ47が励磁されることによりキャッチングネットを発射する。
【0018】
制御端末50は、監視カメラ20で生成された映像信号が入力される映像信号入力部52と、電動雲台30の第1及び第2のステッピングモータ32、34にパルス信号を出力する雲台制御部54と、防犯器具40Aの電磁弁45及び防犯器具40Bの電磁スイッチ47に駆動信号を出力する防犯器具制御部58とを備えている。
【0019】
伝送端末60は、制御端末50と異常検知センサ62と非常釦64とに接続されている。異常検知センサ62は、侵入者等の異常を検知すると伝送端末60に異常検知信号を送信する。また、非常釦64は押圧操作されると非常通知信号を伝送端末60に送信する。
【0020】
また、遠隔操作システム100は、警備対象の施設1から離れて位置する監視室2に設置された伝送端末66とモニタ68と操作盤70とホストコンピュータ80とブザー90とを備えている。伝送端末66は、伝送端末60とホストコンピュータ80とに接続されており、ホストコンピュータ80と制御端末50とは、伝送端末60、66を介して各種信号を送受信する。
【0021】
また、モニタ68は、ホストコンピュータ80と接続されており、監視カメラ20により撮影されホストコンピュータ80の映像処理部81により処理された映像信号に応じた映像を表示する。また、モニタ68には、カーソル74が監視カメラ20の映像と重ねて表示される。
【0022】
また、操作盤70は、防犯器具の発射等を制御する操作スイッチを取り付けた台であり、この操作盤70には、防犯器具40Aに催涙ガスを発射させる際に操作される第1キー76と、防犯器具40Bにキャッチングネットを発射させる際に操作される第2キー78と、ブザーを停止させる第3キー79と、遠隔支援操作を終了させる第4キー75とが設けられ、後述のキー操作検出部84に接続されている。また、キー操作検出部84にはマウス72が接続されている。このマウス72によりカーソルが任意の位置に移動され、クリックされることにより、映像中の任意の位置が指定される。
【0023】
ホストコンピュータ80は、上述の映像処理部81と、モニタ68に表示される監視カメラ20の映像のピクセル座標を解析する座標解析部82とを備えている。座標解析部82は、マウス72がクリックされることにより指定された映像中の位置P1のピクセル座標(x1,y1)と映像の中心位置P0のピクセル座標(x0,y0)との差(Δx,Δy)を演算する。
【0024】
また、ホストコンピュータ80は、座標解析部82により演算されたピクセル座標差(Δx,Δy)に基づいて、電動雲台30のパン角度及びチルト角度の調整量を演算して該調整量に応じた駆動信号を雲台制御部54へ送信する雲台調整量演算部83と、操作盤70の第1〜第3キー76、78、79とマウス72のクリック操作を検出するキー操作検出部84とを備えている。なお、ピクセル座標差(Δx,Δy)の演算方法及び電動雲台30のパン角度及びチルト角度の調整方法の詳細については後述する。
【0025】
キー操作検出部84は、第1キー76が操作されると、防犯器具40Aを作動させる駆動信号を防犯器具制御部58へ送信する。また、キー操作検出部84は、第2キー78が操作されると、防犯器具40Bを作動させる駆動信号を防犯器具制御部58へ送信する。また、キー操作検出部84は、マウス72がクリック操作されるとクリック検出信号を座標解析部82へ送信する。さらに、キー操作検出部84は、第3キー79及び第4キー75が操作されると検出信号を起動制御部85へ送信する。
【0026】
また、ホストコンピュータ80は、起動制御部85を備えている。この起動制御部85は、異常検知センサ62からの異常検知信号又は非常釦64からの非常通知信号を受信すると、ブザー90を作動させると共に、モニタ68に監視カメラ20の映像を表示させる。また、起動制御部85は、キー操作検出部84から送信された第3キー79の操作の検出信号を受信するとブザー90を停止させる。さらに、起動制御部85は、キー操作検出部84から送信された第4キー75の操作の検出信号を受信すると、遠隔支援操作を終了し、待機状態に戻る。
【0027】
図2は、警備装置10を示す斜視図である。この図に示すように、防犯器具40の発射軸42は、監視カメラ20の撮像軸22と平行に設定されており、防犯器具40の発射口が、監視カメラ20の撮像軸22の方向に向けられている。監視カメラ20の撮像軸22が電動雲台30によりパン方向及びチルト方向に旋回されると、防犯器具40の発射軸42が、監視カメラ20の撮像軸22に対して平行に保たれた状態で、パン方向及びチルト方向に旋回される。即ち、防犯器具40は、監視カメラ20の撮像軸22の方向に照準を合わせた状態でパン方向及びチルト方向に旋回される。
【0028】
防犯器具40Aは、高圧の催涙ガスが充填されたボンベ43とボンベ43の軸線の延長線上に延びるスプレーノズル44とを備えている。スプレーノズル44は、監視カメラ20の撮像軸22と平行に配されており、これにより、防犯器具40Aの発射軸42と撮像軸22とが平行に設定されている。また、スプレーノズル44には、電磁弁45が設けられている。この電磁弁45が励磁されるとスプレーノズル44が開放され、スプレーノズル44から催涙ガスが噴射される。
【0029】
また、防犯器具40Bは、キャッチングネットを収納し圧縮空気が充填された発射筒46を備えている。発射筒46の軸線は、カメラ20の撮像軸22と平行に配されており、これにより、防犯器具40Bの発射軸42と撮像軸22とが平行に設定されている。また、発射筒46には、電磁スイッチ47が設けられている。この電磁スイッチ47が励磁されると発射筒46が開放され、キャッチングネットが発射筒46内の高圧により発射される。
【0030】
ここで、上述のピクセル座標差(Δx,Δy)の演算方法及び電動雲台30のパン角度及びチルト角度の調整方法の詳細について説明する。
【0031】
図3は、モニタ68に映った侵入者の位置と映像のピクセル座標との関係を示す図である。この図に示すように、本実施形態では、映像の解像度が、横1280ピクセル、縦1024ピクセルに設定されており、映像の左下を原点(0,0)とする横が1280ピクセルで縦が1024ピクセルのピクセル座標(x,y)が設定されている。
【0032】
座標解析部82は、マウス72がクリックされることにより指定された映像中の位置P1のピクセル座標(x1,y1)を検出し、指定位置P1のピクセル座標と映像の中心位置P0のピクセル座標(x0,y0)との差(Δx(=x0−x1),Δy(=y0−y1))を演算する。なお、本実施形態では、中心位置P0のピクセル座標(x0,y0)は(640,512)である。
【0033】
次に、雲台調整量演算部83は、座標解析部82により演算されたピクセル座標差(Δx,Δy)と監視カメラ20の画角情報とに基づいて、監視カメラ20の撮像軸22の角度座標(θh0,θv0)と映像中の指定位置P1の角度座標(θh1,θv1)との差(Δθh(=θh0−θh1),Δθv(=θv0−θv1))を演算する。なお、中心位置P0に照準したときを基準とするθhはパン角度、θvはチルト角度であり、Δθhはパン方向の角度差、Δθvはチルト方向の角度差である。
【0034】
図4は、モニタ68に映った侵入者の位置と監視カメラ20のパン方向及びチルト方向の角度との関係を示す図である。この図に示すように、本実施形態では、監視カメラ20の焦点距離が18mmに設定されており、映像の左下を原点(0,0)とするパン角度の最大値が90°でチルト角度の最大値が67.4°の角度座標(θh,θv)が設定されている。このケースでは、ピクセル座標(x、y)と角度座標(θh、θv)とが、θh=0.0703x、θv=0.0658yの関係になるため、Δxに係数0.0703(=90/1280)を乗じることによりΔθhを算出し、Δyに係数0.0658(=67.4/1024)を乗じることによりΔθvを算出する。
【0035】
そして、雲台調整量演算部83は、算出した角度差(Δθh、Δθv)を、監視カメラ20のパン角度及びチルト角度の調整量として該調整量に応じた駆動信号を雲台制御部54へ送信する。雲台制御部54は、まず、パン角度調整用の第1のステッピングモータ32に電動雲台30をΔθhだけ回転させるパルス信号を送信し、次に、チルト角度調整用の第2のステッピングモータ34に電動雲台30をΔθvだけ回転させるパルス信号を送信する。
【0036】
図5は、電動雲台30がパン方向にΔθhだけ回転したときのモニタ68に映った侵入者の位置と監視カメラ20のパン角度との関係を示す図である。この図に示すように、電動雲台30がΔθhだけパン方向に回転すると監視カメラ20のパン角度が調整されて、指定位置P1のパン方向の角度座標がθh1からθh0に変化する。また、指定位置P1のピクセル座標が(x1,y1)から(x0,y1)に変化する。
【0037】
図6は、電動雲台30がチルト方向にΔθvだけ回転したときのモニタ68に映った侵入者の位置と監視カメラ20のチルト角度との関係を示す図である。この図に示すように、電動雲台30がΔθvだけチルト方向に回転すると監視カメラ20のチルト角度が調整されて、指定位置P1のチルト方向の角度座標がθv1からθv0に変化する。また、指定位置P1のピクセル座標が(x0,y1)から(x0,y0)に変化する。
【0038】
なお、上述したように、パン角度の調整を完了させてからチルト角度の調整を行ってもよいが、チルト角度の調整を完了させてからパン角度の調整を行ってもよい。あるいは、図7に示すように、Δθh°を細分化したΔθh´°のパン角度調整と、Δθv°を細分化したΔθv´°のチルト角度調整とを交互に繰り返すことにより、指定位置P1の角度座標を直線的に中心位置(θh0,θv0)に変化させてもよい。
以上のようにして、カーソル74で指定した撮影対象が画面中央(つまり、防犯器具40の照準位置)となるように電動雲台30が制御される。
【0039】
図8は、遠隔警備システム100の動作フローを示すフローチャートである。このフローチャートに示すように、遠隔警備システム100では、まず、ステップ100において、起動制御部85が、異常検知センサ62からの異常検知信号又は非常釦64からの非常通知信号を受信したか否かを判定する。判定が肯定された場合にはステップ102へ移行する。
【0040】
ステップ102では、起動制御部85が、ブザー90を作動させると共に、モニタ68に監視カメラ20の映像を表示させる。次に、ステップ104において、起動制御部85は、キー操作検出部84からの第3キー79の操作の検出信号を受信したか否かを判定する。判定が肯定されるとステップ106へ移行する。
【0041】
ステップ106では、起動制御部85が、ブザー90を停止させる。次に、ステップ108において、座標解析部82が、キー操作検出部84からマウス72のクリック検出信号を受信したか否かを判定する。判定が肯定された場合にはステップ110へ移行する。ここで、監視室2内の監視員は、モニタ68に映った侵入者にカーソル74を合わせてマウス72をクリックすることになる。
【0042】
ステップ110では、座標解析部82が、映像中の指定位置P1のピクセル座標(x1,y1)を検出し、指定位置P1と映像の中心位置P0とのピクセル座標差(Δx,Δy)を演算する。次に、ステップ112において、雲台調整量演算部83が、座標解析部82により演算されたピクセル座標差(Δx,Δy)と監視カメラ20の画角情報とに基づいて、監視カメラ20の撮像軸22と映像中の指定位置P1との角度差(Δθh,Δθv)を演算する。
【0043】
次に、ステップ114において、雲台制御部54は、まず、パン角度調整用の第1のステッピングモータ32に電動雲台30をパン方向にΔθh°だけ回転させるパルス信号を送信し、次に、チルト角度調整用の第2のステッピングモータ34に電動雲台30をチルト方向にΔθv°だけ回転させるパルス信号を送信する。これにより、監視カメラ20のパン角度及びチルト角度が、電動雲台30により調整され、映像中の指定位置P1に映っている侵入者が、映像の中心位置P0に移動する。
【0044】
次に、ステップ116において、防犯器具制御部58は、キー操作検出部84から、防犯器具40Aの駆動信号及び防犯器具40Bの駆動信号の少なくとも一方を受信したか否かを判定する。判定が肯定された場合にはステップ118へ移行する一方、判定が否定された場合にはステップ117へ移行する。ステップ117では、座標解析部82が、キー操作検出部84からマウス72のクリック検出信号を受信したか否かを判定する。判定が肯定された場合にはステップ110へ移行する一方、判定が否定された場合にはステップ116へ移行する。
【0045】
ステップ118では、防犯器具制御部58が、受信した駆動信号が防犯器具40Aへの駆動信号であるか、防犯器具40Bへの駆動信号であるかを判定し、防犯器具40Aへの駆動信号であればステップ120へ、防犯器具40Bへの駆動信号であればステップ122へ移行する。
【0046】
ステップ120では、防犯器具制御部58が、防犯器具40Aの電磁弁45を励磁してスプレーノズル44を開放し、スプレーノズル44から催涙ガスを発射させる。また、ステップ122では、防犯器具制御部58が、防犯器具40Bの電磁スイッチ47を励磁して発射筒46を開放し、発射筒46からキャッチングネットを発射させる。そして、ステップ124では、起動制御部85が、キー操作検出部84から第4キー75の操作の検出信号を受信したか否かを判定する。判定が否定された場合にはステップ116へ移行する一方、判定が肯定された場合には処理ルーチンを抜けて、待機状態に移行する。
【0047】
ここで、防犯器具40A、40Bの発射軸42は、監視カメラ20の撮像軸22と平行に設定されており、防犯器具40の発射口44が、監視カメラ20の撮像軸22の方向に向けられている。また、監視室2からの遠隔操作により、監視カメラ20の撮像軸22が侵入者に向くように、監視カメラ20のパン角度及びチルト角度が調整されている。このため、防犯器具40A、40Bの照準を侵入者に合わせた状態で、催涙ガス及びキャッチングネットを発射できる。
【0048】
これによって、異常検知センサ62により警備対象の施設1への侵入者が検知されたり、当該施設1の人員により非常釦64が押されたりしてから、警備員や警察が当該施設1に駆けつけるまでの時間中に、監視室2からの遠隔操作により、侵入者に催涙ガスを当てたり、侵入者をキャッチネットで捕獲したりすることができる。従って、警備対象の施設1に警備員や警察が到着する前であっても、侵入者の犯行を阻止したり、逃走を妨害したりできると共に、当該施設1内の人員を侵入者から保護できる。
【0049】
図9は、他の実施形態に係る遠隔警備システム101の概略構成を示す図である。この図に示すように、本実施形態に係る遠隔警備システム101では、警備装置10と制御端末50と伝送端末60と異常検知センサ62と非常釦64とを警備対象の現金輸送車3に設置している。
【0050】
警備装置10は、現金輸送車3の内部とルーフ上との間で昇降できるものであり、監視カメラ20は、現金輸送車3の周囲を撮影する。また、制御端末50と異常検知センサ62と非常釦64とは、現金輸送車3に設置されている。また、伝送端末60には、制御端末50と非常釦64とが接続されている。また、伝送端末60は、無線により監視室2に設置された伝送端末66と接続されており、伝送端末66との間で種々の信号を送受信する。
【0051】
以上の構成の遠隔警備システム101では、現金輸送車3の乗員により非常釦64が押されたりしてから、警備員や警察が犯行現場に駆けつけるまでの時間中に、監視室2からの遠隔操作により、犯人に催涙ガスを当てたり、犯人をキャッチネットで捕獲したりすることができる。従って、犯行現場に警備員や警察が到着する前であっても、犯行を阻止できると共に、現金輸送車の乗員を犯人から保護できる。
【0052】
なお、上記実施形態では、防犯器具40を、防犯用の被発射体として催涙ガスを発射する防犯器具40A、該被発射体としてキャッチングネットを発射する防犯器具40Bとした。しかし、防犯器具40は、該被発射体として塗料を発射するカラースプレーや、該被発射体としてカラーボールを発射する発射装置であってもよい。この場合、逃走する犯人に塗料が付着することが、犯人追跡の手がかりとなり、犯人の逃走の阻止に寄与する。
【0053】
また、上記実施形態では、モニタ68の映像中の任意の位置P1を指定する方法として、マウス72でカーソル74を位置P1まで移動させてマウス72をクリックして指定するという方法を用いた。しかし、ライトペンをモニタ68の映像中の任意の位置P1に接触させて指定するという方法を用いてもよい。また、上記実施形態では、防犯器具40の照準を、モニタ68の映像の中心位置P0に合わせたが必須ではなく、中心位置P0からずれた位置に合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 施設、2 監視室、3 現金輸送車(輸送手段)、10 警備装置、20 監視カメラ、22 撮像軸、30 電動雲台、32 第1のステッピングモータ、34 第2のステッピングモータ、40、40A、40B 防犯器具、41 取付金具、42 発射軸、43 ボンベ、44 スプレーノズル、45 電磁弁、46 発射筒、47 電磁スイッチ、50 制御端末、52 映像信号入力部、54 雲台制御部(電動雲台制御手段)、58 防犯器具制御部(防犯器具制御手段)、60 伝送端末、62 異常検知センサ、64 非常釦、66 伝送端末、68 モニタ(表示手段)、70 操作盤、72 マウス(第1操作部)、74 カーソル、75 第4キー、76 第1キー(第2操作部)、78 第2キー(第2操作部)、79 第3キー、80 ホストコンピュータ、81 映像処理部、82 座標解析部(電動雲台制御手段)、83 雲台調整量演算部(電動雲台制御手段)、84 キー操作検出部、85 起動制御部(起動制御手段)、90 ブザー、100、101 遠隔警備システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視カメラと、
遠隔操作により作動されて前記監視カメラの撮像軸をパン方向及びチルト方向に旋回させる電動雲台と、
前記撮像軸の方向に防犯用の被発射体を発射可能な状態で前記電動雲台により旋回されるように前記監視カメラ又は前記電動雲台に支持され、遠隔操作により作動されて前記被発射体を発射する防犯器具と、
を備える警備装置。
【請求項2】
前記防犯器具の前記被発射体の発射軸と前記撮像軸とが平行である請求項1に記載の警備装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の警備装置を遠隔操作する遠隔警備システムであって、
前記監視カメラで撮像された映像を表示する表示手段と、
前記表示手段により表示された映像中の任意の位置を指定する際に操作される第1操作部と、
前記第1操作部が操作されることにより指定された位置が映像の所定位置に移動するように、前記電動雲台を作動させる電動雲台制御手段と、
前記防犯器具に前記被発射体を発射させる際に操作される第2操作部と、
前記第2操作部が操作されると、前記防犯器具に前記被発射体を発射させる防犯器具制御手段と、
を備える遠隔警備システム。
【請求項4】
警備対象の施設又は輸送手段に配置された異常検知手段と非常通知手段との少なくも一方から異常検知信号と非常通知信号との少なくとも一方を受信すると、前記監視カメラで撮像された映像を前記表示手段に表示させる起動制御手段を備える請求項3に記載の遠隔警備システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の警備装置を遠隔操作する遠隔警備方法であって、
前記監視カメラで撮像された映像を表示手段に表示するステップと、
前記表示手段により表示された映像中の任意の位置を指定するステップと、
指定した位置が映像の中心に移動するように、前記電動雲台を作動させるステップと、
前記防犯器具に前記被発射体を発射させるステップと、
を備える遠隔警備方法。
【請求項6】
警備対象の施設又は輸送手段に配置された異常検知手段と非常通知手段との少なくも一方から異常検知信号と非常通知信号との少なくとも一方を受信すると、前記監視カメラで撮像された映像を前記表示手段に表示させるステップを備える遠隔警備方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−257855(P2011−257855A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130100(P2010−130100)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(510158819)
【Fターム(参考)】