説明

豆乳風味組成物の製造法

【課題】無脂大豆固形分、無脂乳固形分、糖類を含むO/W型乳化組成物であって、大豆特有の青臭さみ、えぐみが少なく、強い豆乳風味を持った豆乳風味組成物の製造法及び当該組成物を使用してなる食品の提供。
【解決手段】無脂大豆固形分、無脂乳固形分及び糖類を含むO/W型乳化物を加熱する。加熱の際に濃縮を行うものであって、加熱前のO/W型乳化物中に無脂大豆固形分が1重量%以上含む豆乳風味組成物であり、又、当該豆乳風味組成物を使用してなる食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆乳風味組成物の製造法に関し、更に詳しくは大豆特有の青臭さみ、えぐみが少なく、強い豆乳風味を持った豆乳風味組成物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大豆蛋白のコレステロールを低下させる効果が明らかにされ、これに伴い伝統的な豆乳、豆腐、湯葉や調整豆乳及び豆乳飲料その他各種豆乳製品への関心が急速に高まってきている。
特許文献1では、大豆から得た豆乳に凝固剤を加えておぼろ豆腐を作り、このおぼろ豆腐に洋酒や砂糖などの添加剤を混入した中間材を適宜の撹拌工程を経てホイップすることによりデザート食品を得る事を特徴とするヨーグルト状デザート食品の製造方法が提案されている。これは単に豆乳を添加した食品であり豆乳風味は不十分であった。特許文献2では、豆乳及びニガリを含む原料を混合してニガリ入り液状混合物とし、該液状混合物を加熱して半流動状とすることにより、豆乳デザートを製造する方法が提案されている。これもまた、豆乳をそのまま使用した食品であり風味的に満足できるものではなかった。特許文献3では、豆乳、おから、油脂から成る豆乳クリーム及びパン類の製造方法が提案されている。これは期待する豆乳風味としては不十分であった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−95518号公報
【特許文献2】特開2002−262803号公報
【特許文献3】特開平11−289968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、無脂大豆固形分、無脂乳固形分、糖類を含むO/W型乳化組成物であって、大豆特有の青臭さみ、えぐみが少なく、強い豆乳風味を持った豆乳風味組成物の製造法及び当該組成物を使用してなる食品を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、豆乳風味組成物の製造に際して、無脂大豆固形分、無脂乳固形分及び糖類を含むO/W型乳化物を加熱濃縮する事で、大豆特有の青臭さみ、えぐみが少なく、強い豆乳風味を持った豆乳風味組成物が得られるとの知見に基づき本発明を完成するに至った。
即ち本発明の第1は、無脂大豆固形分、無脂乳固形分及び糖類を含むO/W型乳化物を加熱することを特徴とする豆乳風味組成物の製造法である。第2は、加熱の際に濃縮を行う、第1記載の豆乳風味組成物の製造法である。第3は、加熱前のO/W型乳化物中に無脂大豆固形分が1重量%以上含む、第1記載の豆乳風味組成物の製造法である。第4は、加熱前のO/W型乳化物中に糖類が2重量%以上含む、第1記載の豆乳風味組成物の製造法である。第5は、加熱後の豆乳風味組成物の全固形分が10〜65重量%である、第1記載の豆乳風味組成物の製造法である。第6は、第1〜第5のいずれか1に記載の豆乳風味組成物を使用してなる食品である。
【発明の効果】
【0006】
豆乳を材料として用いた食品においては大豆特有の青臭さみ、えぐみがあるが、無脂大豆固形分(大豆固形分から油脂を取り除いたもの)、無脂乳固形分及び糖類を加熱させることで豆乳風味、乳風味、カラメル風味を強調し大豆特有の青臭さみ、えぐみが少ない豆乳風味組成物の製造法及び当該組成物を使用した食品を提供する事が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の豆乳風味組成物の製造法としては、無脂大豆固形分(大豆固形分から油脂を除いたもの)、無脂乳固形分及び糖類を含むO/W型乳化物を加熱することによって得ることが出来る。
加熱することで色調は褐色化するがこれは食品において良好な色調であり他の食品に添加した場合においても良好な色調を呈する。一般的に豆乳の豆臭いのは大豆を磨砕する際に大豆油中の構成脂肪酸にリポキシナーゼ(脂質酸化酵素)が作用してヘキサナール、ヘキサノールが生成しこれが要因と推定されている。本発明の製造法においては、この大豆特有の青臭さみ、えぐみが少なく、強い豆乳風味を持った豆乳風味組成物を得ることが出来る。
食品製造において一般的に採用されている何れの加熱方法でも良く、加熱の際に濃縮を伴うのが好ましく、具体的には、O/W型乳化物を乳化釜や銅鍋で直火で加熱濃縮すると良い。
【0008】
本発明の無脂大豆固形分とは、大豆固形分から油脂分を差し引いたものであって原料としては大豆由来であって油脂を含んだものでもいいし油脂を含まない何れの原料でもよい。具体的には、豆乳、丸大豆、脱脂豆乳、分離大豆蛋白である。風味作業性の面で豆乳、脱脂豆乳、分離大豆蛋白が好ましい。豆乳は、一般に大豆を水、温水、熱湯等に浸漬して磨砕後、必要に応じて加熱し、オカラを非分離若しくは分離して得る方法や大豆粉を原料として水抽出する方法等の公知の方法により製造されたものを用いる事ができる。脱脂豆乳は、脱脂大豆を原料として同様に製造したもである。この脱脂豆乳と油脂を均質化してエマルジョンとすることもできる。
【0009】
本発明の加熱前のO/W型乳化物中に、無脂大豆固形分(大豆固形分から油脂を除いたもの)が1重量%以上、好ましくは2〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%含むのが良く、無脂大豆固形分が少ないと豆乳風味が得難くなり、多すぎると乳風味、カラメル風味が得難くなる。
【0010】
本発明の無脂乳固形分とは、牛乳の全固形分から乳脂肪分を差し引いた成分をいう。具体的な原料としては、生乳、牛乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、チーズ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエーパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳が例示できる。本発明の加熱前のO/W型乳化物中に、無脂乳固形分(牛乳の固形分から乳脂肪分を除いたもの)が0.5〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、更に好ましくは0.5〜8重量%含むのが良く、無脂乳固形分が少ないと乳風味が得難くなり、多すぎると豆乳風味が得難くなる。
【0011】
本発明の糖類は、単糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、デキストリン、水飴等が例示できる。単糖類としては具体的には、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロースを挙げる事ができる。またオリゴ糖類としては、通常2糖類から6糖類までのものが含まれるが、具体的にはショ糖、マルトース、乳糖、トレハロース、マルトトリオース等を挙げる事ができる。糖アルコール類としては具体的には、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、キシロース、オリゴ糖アルコール等を挙げる事ができる。
糖類は、無脂大豆固形分由来のオリゴ糖類や無脂乳固形分由来の乳糖を含むものであって、原料としては粉末状、顆粒状、液状何れの状態でも良い。糖類は加熱前のO/W型乳化物中に2重量%以上、好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは3〜35重量%含むのが良く、糖類が少ないと豆乳風味、乳風味、カラメル風味が得難くなり、多すぎると甘くなり過ぎて好ましくない。ここでいう重量%は使用する糖類の固形分の数値である。
【0012】
本発明の無脂大豆固形分、無脂乳固形分及び糖類を含むO/W型乳化物に使用する油脂としては、動植物性油脂及びそれらの硬化油脂の単独又は2種以上の混合物或いはこれらのものに種々の化学処理又は物理処理を施したものが例示できる。かかる油脂の由来としては、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ゴマ油、カポック油、ヤシ油、パーム核油、乳脂、ラード、魚油、鯨油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂が例示できる。
本発明の加熱前のO/W型乳化物中に、油脂分が1〜20重量%、好ましくは2〜18重量%、更に好ましくは2〜15重量%含むのが良く、油脂分が少ないとO/W型乳化物が得難くなり、風味も悪くなる。多すぎると安定なO/W型乳化物が得難くなる。
【0013】
本発明の豆乳風味組成物は、無脂大豆固形分、無脂乳固形分及び糖類を含むO/W型乳化物を加熱することによって得るであるが、加熱後の豆乳風味組成物の全固形分が10〜65重量%、好ましくは15〜65重量%、更に20〜60重量%が好ましい。全固形分が少ないと豆乳風味、乳風味、カラメル風味に乏しいものになり、多すぎると粘度が高くなり過ぎて作業性が悪いものとなる。
【0014】
上記の方法で得られた豆乳風味組成物は、ムース、ババロア、プリン、カスタード等のデザート類、パウンドケーキ、スフレケーキ、タルト、パイ、パン等の和洋焼成菓子、フラワーペースト、ファットスプレッド、マーガリン、クリーム類、チョコレート等の油脂加工食品等のあらゆる食品に練り込み材として利用出来、主に濃縮乳や生クリームの代わりに食品へ使用する事で良好な豆乳風味、乳風味、カラメル風味を強調し大豆特有の青臭さみ、えぐみが少ない食品を得ることが出来る。
【実施例】
【0015】
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味する。本発明の方法で得た豆乳風味組成物の風味を、優れている順に「5」、「4」、「3」、「2」、「1」の五段階にて評価した。
評価項目は、以下の5項目で行った。
(豆乳風味)強い 5 〜 弱い 1
(乳風味) 強い 5 〜 弱い 1
(カラメル風味)強い 5 〜 弱い 1
(大豆臭、青臭さ)弱い 5 〜 強い 1
(総合評価) 良好 5 〜 不良 1
【0016】
実施例1
豆乳(不二製油株式会社製、商品名:液状豆腐 無脂大豆固形分6.1%、植物性脂肪分3.7%)100g、クリーム(不二製油株式会社製、商品名ガトーノイエ22 無脂乳固形分6% 乳脂肪分22% 植物性脂肪分20%)20g、グラニュー糖3gを銅鍋に入れO/W型乳化物を準備(表1に記した配合)し、目標として水分20重量%蒸発を直火にてO/W型乳化物を加熱し適度なところで重量を測定し98gの豆乳風味組成物を得た。この豆乳風味組成物と未加熱ものとを評価し、これらの結果を表1に纏めた。又豆乳風味組成物の評価をレーダーチャート図に図1として纏めた。
【0017】
実施例2〜実施例3及び比較例1
実施例2は、実施例1においてグラニュー糖3gを6gに変更した以外は実施例1と同様な配合、同様な処理を行い実施例2に基づく豆乳風味組成物を100g得た。実施例1と同様な評価を行った。実施例3は、実施例1においてグラニュー糖3gを20gに変更した以外は実施例1と同様な配合、同様な処理を行い実施例3に基づく豆乳風味組成物110gを得た。実施例1と同様な評価を行った。比較例1は、実施例1においてグラニュー糖3gを添加しない以外は実施例1と同様な配合、同様な処理を行い比較例1に基づく豆乳風味組成物96gを得た。実施例1と同様に評価し、これらの結果を表1に纏めた。又豆乳風味組成物の評価をレーダーチャート図に図1として纏めた。
【0018】
実施例1〜実施例3及び比較例1の配合及び結果を表1に纏めた。
【表1】

【0019】
実施例4
豆乳(不二製油株式会社製、商品名:液状豆腐 無脂大豆固形分6.1%、植物性脂肪分3.7%)100g、クリーム(不二製油株式会社製、商品名ガトーノイエ22 無脂乳固形分6% 乳脂肪分22% 植物性脂肪分20%)60g、グラニュー糖64gを銅鍋に入れO/W型乳化物を準備(表2に記した配合)し、目標として水分20重量%蒸発を直火にてO/W型乳化物を加熱し適度なところで重量を測定し180gの豆乳風味組成物を得た。この豆乳風味組成物と未加熱ものとを評価し、これらの結果を表2に纏めた。又豆乳風味組成物の評価をレーダーチャート図に図2として纏めた。
【0020】
実施例5及び実施例6
実施例5は実施例4においてクリーム(不二製油株式会社製、商品名ガトーノイエ22 無脂乳固形分6% 乳脂肪分22% 植物性脂肪分20%)60gを牛乳(明治乳業株式会社製、商品名おいしい牛乳 無脂乳固形分8.3% 乳脂肪分3.5%)60gに変更した以外は実施例4と同様な配合、同様な処理を行い実施例5に基づく豆乳風味組成物を得た。実施例4と同様な評価を行った。実施例6は、実施例4においてクリーム(不二製油株式会社製、商品名ガトーノイエ22 無脂乳固形分6% 乳脂肪分22% 植物性脂肪分20%)60gをマスカルポーネ(不二製油株式会社製、商品名マスカポーネガトーR 無脂乳固形分9% 乳脂肪分30% 植物性脂肪分8%)60gに変更した以外は実施例4と同様な配合、同様な処理を行い実施例6に基づく豆乳風味組成物を得た。実施例4と同様に評価し、これらの結果を表2に纏めた。又豆乳風味組成物の評価をレーダーチャート図に図2として纏めた。
【0021】
実施例4〜実施例6の配合及び結果を表2に纏めた。
【表2】

【0022】
実施例7
調整豆乳粉末(不二製油株式会社製、商品名:ソヤフィット2000 無脂大豆固形分93.5%、植物性脂肪分0.1%以下)2g、水98g、クリーム(不二製油株式会社製、商品名ガトーノイエ22 無脂乳固形分6% 乳脂肪分22% 植物性脂肪分20%)20g、グラニュー糖20gを銅鍋に入れO/W型乳化物を準備(表3に記した配合)し、目標として水分20重量%蒸発を直火にてO/W型乳化物を加熱し適度なところで重量を測定し112gの豆乳風味組成物を得た。この豆乳風味組成物と未加熱ものとを評価し、これらの結果を表3に纏めた。又豆乳風味組成物の評価をレーダーチャート図に図3として纏めた。
【0023】
実施例8及び実施例9
実施例8は、実施例7において調整豆乳粉末(不二製油株式会社製、商品名ソヤフィット2000 無脂大豆固形分93.5%)2gを5gに変更した以外は実施例7と同様な配合、同様な処理を行い実施例8に基づく豆乳風味組成物を得た。実施例7と同様な評価を行った。実施例9は、実施例7において調整豆乳粉末(不二製油株式会社製、商品名ソヤフィット2000 無脂大豆固形分93.5%、植物性脂肪分0.1%以下)2gを9gに変更した以外は実施例7と同様な配合、同様な処理を行い実施例9に基づく豆乳風味組成物を得た。実施例7と同様と同様に評価し、これらの結果を表3に纏めた。又豆乳風味組成物の評価をレーダーチャート図に図3として纏めた。
【0024】
実施例7〜実施例9の配合及び結果を表3に纏めた。
【表3】

【0025】
実施例10〜実施例12及び比較例2(豆乳風味組成物を起泡性水中油型乳化物への練り込み材としての使用)
実施例1、2、3及び比較例1の豆乳風味組成物をそれぞれ100gとクリーム(不二製油株式会社製、商品名ガトーノイエ22 無脂乳固形分6% 乳脂肪分22% 植物性脂肪分20%)150g、グラニュー糖10gを撹拌し(ホイッパー)ホイップクリームを得た。そしてこれらの評価を行い表4に纏めた。
【0026】
実施例10〜実施例12及び比較例2の配合及び結果を表4に纏めた。
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、豆乳風味組成物の製造法及び豆乳風味組成物を使用してなる食品に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1〜実施例3及び比較例1の風味評価のレーダーチャート図
【0029】
【図2】実施例4〜実施例6の風味評価のレーダーチャート図
【0030】
【図3】実施例7〜実施例9の風味評価のレーダーチャート図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無脂大豆固形分、無脂乳固形分及び糖類を含むO/W型乳化物を加熱することを特徴とする豆乳風味組成物の製造法。
【請求項2】
加熱の際に濃縮を行う、請求項1記載の豆乳風味組成物の製造法。
【請求項3】
加熱前のO/W型乳化物中に無脂大豆固形分が1重量%以上含む、請求項1記載の豆乳風味組成物の製造法。
【請求項4】
加熱前のO/W型乳化物中に糖類が2重量%以上含む、請求項1記載の豆乳風味組成物の製造法。
【請求項5】
加熱後の豆乳風味組成物の全固形分が10〜65重量%である、請求項1記載の豆乳風味組成物の製造法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の豆乳風味組成物を使用してなる食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−29274(P2008−29274A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207642(P2006−207642)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】