説明

負圧創傷治療用ポンプシステム

創傷に吸気を適用するシステムにおいて、負圧を生じさせる携帯型吸引ポンプであって、ポンプは、圧力を予め選択された圧力付近の下限値及び上限値の間に維持するために、ポンプの作用を制御する圧力制御回路と、創傷に適用される負圧レベルのずれを検知する故障検知システムとを有しており、故障検知システムは、圧力制御回路とは独立して作動し得る。好適な実施形態において、故障検知システムは、システムの故障を検知するために、基準気流からのずれを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して創傷治療の分野に関し、特に、吸引による創傷の排液及び治療用機器の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
気密創傷カバーの下で吸気をすることにより、創傷を治療することは周知である。吸気は、創傷の滲出液や他の液体を創傷から及び/又は創傷湿布材料から吸引するために使用され得、また吸気は、周知の殺菌及び組織再生効果の治療手法として使用され得る。
【0003】
吸気支援創傷治療を用いる際の主要な関心事は、一貫した吸引圧を創傷に維持することである。吸気創傷包帯が適用されると、吸気は一定レベルに維持されるべきであることは、一層認知されている。システムに漏れ又は妨害が生じるならば、創傷への吸気の損失が生じることも考えられる。
【0004】
漏れは、創傷を包囲する気密シールの破壊により生じ得る。初期の機器は単に、創傷カバーの縁の下に管を延在させ、且つ気密シールを維持するために、接着剤又は糊を管及びカバーの周りに適用していた。管の他端は、屑収集リザーバ及び病院の吸引システムの吸気調整器に接続可能であり、また調整器で選択された圧力は、カバーの下で、創傷部分に伝達された適正圧力であると考えられていた。漏出試験は、負圧が適用された時の、カバーの収縮の視覚的な観察、及び笛音の欠如であった。例えば、M.E.チャリカー(Chariker)等の「閉鎖吸引創傷排膿による切開性皮膚瘻管の有効な管理」、コンテンポラリーサージェリー(Contemporary Surgery) 第34巻、1989年6月、59〜63頁を参照。しかしながら、この初期の気密シール検査は、数時間の使用後に、システムが漏れを起こし、或いは妨害が収集回路で生じるならば、いかなる警告ももたらさなかった。
【0005】
これら従来の創傷包帯の創傷カバーの縁の下に延在する吸引管又は他の管周りにおける接着シールは、割れに弱く、また気密シールを破り、カバーに空気の漏れをもたらす。漏れの可能性を低減させるために、吸引創傷治療機器への改良がなされている。例えば、2005年7月14日付けで出願された特許文献1は、吸引管が主要カバーの外部で終端をなし、それ故、皮膚への接着シールが破損する危険性を低減させる管取付パッチを開示している。これらのより新しい管取付機器は、シールの更なる一体性をもたらすが、例えば患者のベッド内での移動に起因して、気密シールが破れる可能性が未だある。
【0006】
創傷への吸気の妨害は、幾つかの理由により生じ得る。創傷の屑収集容器は通常、創傷及び吸引源の間の吸引ラインのある場所に位置決めされる。屑収集器は、収集器が一杯になった時に、創傷への吸気を遮断する遮断機構を組み入れている。別の妨害の可能性は、吸引ライン自体のもつれ又は折れ曲がりである。創傷からの壊死組織片及び凝血塊による妨害もまた、問題である。吸引源は、創傷用包帯が適用された後に、誤って停止させられ、ラインが誤って締め付けられ、或いは吸気調整器が誤調整されるかもしれない。吸引創傷用包帯は、取り換えることなく長期間に亘り、通常は24時間又はそれ以上持ちこたえるようにされているので、漏れ又は妨害は気付かないまま大きくなり、また吸引の有効な治療効果を無効にし、且つ感染の危険を増加させるのに十分な期間に亘り、検知されないかもしれない。屑収集器が一杯になった時を検知し、且つその容器を空にするように警告信号を供給する機器が、目下存在する。しかしながら、この機器のいずれもが、包括的且つ確実なシステム操作の監視を提供せず、また漏れ又は妨害による事故の可能性の全範囲を包含していない。
【0007】
これらの従来技術の機器を改良する試みにおいて、本願出願人は、特許文献2に記載されるような吸引創傷用包帯監視システムを設計した。この時に、本願出願人は、体液による感染に起因して、一回使用使い捨て物品であるシステム構成部品のいずれかに、高価な圧力変換器を配置することが実際的でないと考えた。設計者は、同じ基本システムが好適には、漏れ及びシステムの妨害の両方を検知及び指示するのに有効であり、また漏れ又は妨害の検知は好適には、漏れ又は妨害がシステムのどこで発生しようとも有効であるべきと考えた。設計者は、システムが好適には、正常及び異常の両方の作動の明確な視覚的指示を提供し、また通常は、異常の聴覚的指示及び自動録音を提供するべきだと考えた。設計者はまた、吸気監視機能は、病院の病室で一般的に見られるような固定式吸引システムとの使用から、携帯式吸引ポンプとの使用に簡単に交換可能であるべきと考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第11/181128号明細書
【特許文献2】米国特許出願第11/268212号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明において、発明者は更に、携帯式ポンプを吸引源として使用する時に、基準気流からのずれを検知し、且つ対応して指示及び/又は警報を提供するために、ポンプの流量監視システムにマイクロプロセッサを使用すると有利であると考えた。マイクロプロセッサの使用はまた、時間単位において、様々なパラメータを記録及び蓄積し、且つこの時間の記録のレポートを提供する等、他の有用な機能も可能にする。
【0010】
しかしながら、安全性及び冗長性のために、本発明者は、マイクロプロセッサ制御気流監視とは独立した圧力制御回路をポンプに設ければ有利であると考えた。これは、マイクロプロセッサからの信号に頼る必要がなく、ポンプが圧力を、操作者選択圧力設定値となるように制御するのを可能にする。しかしながら、圧力制御回路は、断線、故障圧力変換器、又は暴走ポンプ状態等、ポンプの作動に関連するマイクロプロセッサのデータを提供する。また、マイクロプロセッサは、断続的な操作のため等、ポンプ制御回路への選択された圧力をリセットするために、又は気流のずれが導管の閉塞を指示し始めるのならば、ライン清掃圧力パルスをもたらすために、使用され得る。
【0011】
本発明者はまた、気流監視システムが、正常操作、低レベル漏出、高レベル漏出、ライン閉塞、及び満杯屑収集器等、気流に関連する状態条件の便利な指示のために、ポンプの表示システムと連結されれば有用であると考えた。本発明者はまた、ポンプが、圧力変換器による過剰圧力の検知、圧力変換器の故障、屑収集容器のはずれ、バッテリの低電圧、正しくない電源の取り付け、及び少作動時間残余等、気流に関連しない誤った状況の便利な指示のために、別個のエラー指示表示器を有するならば有用であると考えた。
【0012】
屑収集容器は、創傷用包帯及び真空源の間のある場所に配置され得るが、本発明者は、携帯式ポンプ真空源を使用する時に、ポンプが屑収集容器のドッキングステーションを供給することにより、容器がポンプハウジングに固定され得るようにすれば有利であると考えた。この形態において、ポンプはまた、容器の満杯状態を検知及び指示するためのレベル検知器を有してよい。例えば、ポンプは、容器の疎水膜を横切る差圧以外の指標に基づいて、満杯の屑収集容器を検知するために、キャパシタンスセンサ等、レベルセンサを有してよい。もしそうであるならば、レベル検知器の信号は、ポンプ/容器が移動させられた時に、跳ね上げによって生じさせられる満杯の容器の誤った指示の可能性を低減させるために、マイクロプロセッサのアルゴリズムによって和らげられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、創傷への吸気適用システムを提供し、システム作用を監視するために、基準気流速度が使用される。吸気を使用する創傷治療システムの基本構成部品は、気密性創傷用包帯を含み、吸引導管は、吸気を創傷と連通させるために、創傷用包帯と作動的に関連付けられる一端と、吸引源と作動的に連結される他端とを有する。本発明は、システムが作動状態にある時に、吸引源に基準気流速度(即ち「制御漏れ」)を供給することにより、基準気流からのずれが、作動変化の指標として監視され得る。本発明の好適な実施形態において、携帯式ポンプが、吸引源として使用される。ポンプは、創傷に適用される負圧レベルを示す、創傷用包帯から導管を通りポンプに至る気流を監視するために、流速監視システムを有する。基準流速からのずれは、創傷用包帯の漏れ、又は導管の閉塞等、異常状態の指標として使用され得る。流速監視システムは、マイクロプロセッサによって制御され、状況及びエラー表示、並びに時間の管理及び報告をもたらす付加的な機能をも提供する。ポンプで選択される設定値圧力の変動を補償するために、マイクロプロセッサは、異なって選択された負圧を補償する流速の参照用テーブルを有し得る。
【0014】
安全性及び冗長性のために、ポンプは、マイクロプロセッサ及び流量監視装置とは独立して作動し得る固体素子エレクトロニクス及び圧力変換器を使用する圧力制御回路を有する。使用者制御圧力選択器は、使用者が、負圧設定値の範囲内で、負圧ポンプ出力を選択するのを可能にし;また圧力変換器及び圧力制御回路は、変換器によって検知された圧力を、選択圧力付近の上限値及び下限値の間に維持するために、ポンプの作動を制御する。
【0015】
マイクロプロセッサは信号を信号表示器に、好適にはポンプを通る気流の視覚的指示をもたらすように、色付けされると共に目盛りが付けられたバーメータに供給する。信号表示器は、ポンプを通る気流が、正常システム作動と関連付けられた基準気流範囲内にある時を示し、また逆に、基準気流からのずれが異常作動と関連づけられたときを示す。
【0016】
ポンプはまた、圧力変換器による過剰圧力の検知、圧力変換器の故障、屑収集容器のはずれ、低バッテリ電圧、正しくない電源の取り付け、及び少作動時間残余等、ポンプを通る気流の基準気流からのずれに関連しないシステムエラーの視覚的警告を表示するエラー指標表示器を含む。
【0017】
圧力制御回路は概して、選択された圧力を維持するために、マイクロプロセッサと独立して作動するが、マイクロプロセッサは、特定の状態にあるポンプの監視のために使用され得る。例えば、マイクロプロセッサは、連続的な圧力治療が所望される時に、より高い圧力レベル及びより低い圧力レベルの間等、選択された設定値をリセットし得る。別の例では、マイクロプロセッサは、基準気流からのずれが、閉塞を指示し始める時に、ポンプからの圧力パルス出力が、患者及び収集容器の間のラインを洗浄するように、ポンプを直接的に作動させ、或いはポンプ速度を増加させるようにプログラムされ得る。
【0018】
マイクロプロセッサはまた、他のセンサからの入力に基づいて、時間単位を記録及び蓄積するための計時プログラムと、ポンプが作動している時間単位を報告するための時間レポートルーチンとを含む。レポートには、実行時間間隔の記録、日付及び実行時間間隔の持続時間の記録、総合蓄積実行時間の記録、蓄積コンプライアント実行時間の記録、及びプリセット実行時間期間に残る実行時間の記録を含んでよい。
【0019】
システムは、屑収集器を含み、創傷用包帯及び吸引源の間の吸引ラインに載置され、創傷から吸引された流体を収集する。好適な収集器は、外面に充填レベルマーキングを備えた直立透明プラスチック容器である。収集容器はまた、ポンプが遮断された時に、流体をラインから吸込む残留吸引機能を有してよい。
【0020】
容器は、容器が満杯になった時に、容器の上端にある気流を遮断する疎水膜フィルタによって、過充填を阻止してもよい。創傷から吸引された液体は、廃棄を容易にするために、またこぼれを阻止するために、廃棄可能な容器にあるゲル化剤によって、ゲルに変えられてよい。屑を容器レベルに保つために、ゲル化剤は好適には、積み重ね状ディスクで供給される。容器は、創傷用包帯からの吸引管のための入口コネクタと、携帯式ポンプに、又は固定式即ち病室壁面吸引と共に使用する流量監視器具に接続する出口コネクタとを有する。出口コネクタは好適には、誤って吸引システムに直接接続するのを阻止するために、固定式吸引システムの標準的な器具結合金具に直接接続しない専用(非一般的)コネクタである。
【0021】
ポンプはまた、屑収集器のドッキングステーションを備えてもよく、それにより、収集器は、ポンプハウジングに固定式に取り付けられ得る。好適には、屑収集器は、直円柱状輪郭を有すると共に、Oリングシールを備えた連結用結合金具を有する透明プラスチック容器である。ポンプは、容器を支持するために、容器の半分に一致する凹状輪郭を備えたドッキングステーションを有すると共に、容器の連結用結合金具を受入れるように適用される開放ラッチ結合金具を有する。
【0022】
ポンプは、容器の屑レベルが、満杯容器状態を示すレベルを超えた時を検知するために、容器ドッキングステーションに近接してセンサを有してよい。好適なセンサは、キャパシタンス検知器である。センサは、容器に収集された屑のレベルを表す信号をマイクロプロセッサに送り、マイクロプロセッサは、容器の内部における液体の跳ね上げによって生じさせられる満杯容器の誤った指示の可能性を低減させるために、信号に適用されるアルゴリズムを含む。
【0023】
ポンプは、ポンプからの臭気を低減させるために、開放可能なラッチ結合金具及びポンプの空気排出ポートの間に設けられる活性炭空気フィルタを有してもよい。ポンプは、フィルタを備えた乾燥剤を有してもよい。ポンプは、ポンプ出口の上方に載置される板ばね消音装置等、容積式ポンプの弁の作動に固有のノイズを減らすために、制御された背圧を使用してもよい。
【0024】
好適な実施形態において、創傷用包帯の近くの吸引導管にある較正通気孔は、基準気流を確立する。好適には、通気孔は創傷カバーのまさしく外側にある管に配置される。通気孔は、特定の流速特性を有する多孔質材料で密封される管の孔であってよい。基準流速は、毎分50〜300ccの好ましい範囲にあってよい。1000cc/minのようなより早い流れも可能であるが、吸引源の機能の実際的な限界並びに創傷用包帯の漏れ量は、毎分1000cc以下の流れを使用するのが好ましいことを示唆している。
【0025】
通気孔を創傷近くの導管に配置することにより、基準気流はまた、流体導管を掃除するように作用する。掃除作用は、汚染された流体の逆流が創傷に戻る可能性、及びこの逆流に付随する感染の危険を最小減にする。流体は、長期間導管に存在しないので、浄化作用はまた、ラインへの血液凝固の可能性をも低減させる。ポンプシステムは、流れの減少が検知されるならば、収集ラインの連続的な流体の小塊を取り除くために、圧力パルス発生装置を設けてもよい。
【0026】
ポンプは好適には、携帯電池式容積形ポンプであり、流速はモータrpmと比例しており、システムの気流速度が、モータ速度又はポンプ速度によって間接的に指示されるのを可能にする。圧縮作用に合わせて流れるように、モータ及びポンプ速度を補正するために、アルゴリズムが使用されてもよい。それ故、モータ速度指示器即ち回転計は、好ましい監視器具である。しかしながら、ターゲットメータ、ロトメータ、タービン流速計、マス
フローメータ、差圧(Dp)セル、及び熱線風速計等、他の流速監視器具が使用されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0027】
「気流」という用語は、本明細書では一貫して使用されているが、当然のことながら、周囲空気の混合物に限定されない。医療の設定において、創傷への気流混合物を、例えば酸素又は治療用エアロゾル又は他の有益な医薬品を増加させることにより、変更することは一般的である。これら混合気体又はエアロゾル懸濁液の流れは、本説明のために、気流と考えられるべきである。
【0028】
本発明のこれら及び他の効果、並びに態様は、詳細な説明及び以下の図面を読めば理解される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】吸引創傷治療用システムの分解組立斜視図。
【図2】吸引源へ制御基準気流速度をもたらすために、吸引管の空気通気孔を示す吸引管取付機器の図。
【図3】遮断膜及びゲル化剤を示す屑収集容器の断面図。
【図4】創傷監視気流指示器の断面図。
【図5A】携帯式吸引ポンプを使用する吸引創傷治療用システムの好適な実施形態の分解組立斜視図。
【図5B】図5Aのシステムで使用され得る携帯式ポンプの上前からの斜視図。
【図6A】気流の代わりとして、モータ速度を測定する容積形ポンプ実施形態の概略図。
【図6B】流れ監視及び報告、並びに他の計時、制御、及び状況表示機能のためにマイクロプロセッサを使用する容積形ポンプの実施形態の概略図。
【図7】ターゲットメータフロー指示器の代替物の概略図。
【図8】創傷への治療用流体送出を使用する本発明に係る吸引創傷治療用システムの代替実施形態の一部の分解組立斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、共有所有されている米国特許出願第11/268212号明細書に記載されているような吸引創傷治療用システム(10)の一実施形態を示す。構成部品には、創傷用包帯サブシステム(12)と、吸引管(14)と、屑収集容器(16)と、流量監視器具(18)と、固定式吸引源の壁面吸引調整器(20)とを含む。
【0031】
創傷用包帯
一般的な創傷用包帯(12)は、創傷カバー(22)及び創傷湿布材料(24)を含み、また特別な創傷接触層(26)を含んでもよい。創傷用包帯(12)は、主要カバーの縁の下方に、又はカバーを貫通して延出する吸引管(14)を有し、或いはカバーの外側で終端をなすと共に、カバーのノズル又は長穴と連通してよい。これらの構成部品各々には、多様性がある。図示されると共に、本明細書で説明される創傷用包帯(12)は、現今好適な構成部品を使用しているが、本発明は、これらの構成部品に限定されるものではない。
【0032】
主要創傷カバー(22)は好適には、透湿性を有する気密創傷カバーである。3Mによって製造される医療グレードの商標名テガデラム[Tegaderm]等の薄層フィルムの透明市販用絆創膏を使用するのが好ましく、液体に対しては不透過性を有するが、水蒸気及び酸素に対しては透過性を有する。「気密」という用語は、カバーの下側での吸引を維持するために、カバーを通る気流は阻止しつつ、吸気が適用されるように、材料が十分な閉鎖性を有することを意味する。同様な特性を有する他の薄層フィルムの市販用絆創膏
は多くある。高度に不透過性を有する材料が使用されてもよい。しかしながら、創傷の治療において、水蒸気が漏れ出ると共に、酸素が創傷に移動するのを可能にするならば有益であるので、商標名テガデラムのようなフィルム材料の半透過性カバーが好ましい。幾つかの例において、主要カバーは、創傷の上に置かれる硬質又は半硬質のカバーであってもよい。主要創傷カバーは概して、カバーに組み入れられた接着剤[図示な]で、創傷の周りの皮膚にシールされ、また間隙充填ペースト[図示なし]が、必要なところに使用されてもよい。
【0033】
主要カバー(22)が適用される前に、創傷は一般的に、創傷パック(24)で湿布される。簡単なガーゼ又は発泡体パッド、或いは創傷パックとして市販されている他の材料が、使用されてもよい。しかしながら、現今好適な創傷パックは、本願と同一出願された米国特許出願第10/981,119に記載されているような、弾性圧縮可能な構造体を形成するように構成される波形層パターンのポリエステル繊維又は比較的弾性のある繊維である。
【0034】
創傷パック(24)は、創傷接触層(26)に取り付けられてもよい。現今好適な創傷接触層(26)は、本願と同一出願された米国出願第10/982,346に記載されるように、創傷接触面を提供する特別の構成を有し、より迅速な組織再生を促進するために、吸気と共に作用するように、陥凹が接触面に形成される。接触面は、陥凹によって形成された空隙が、湿気、圧縮力、及び吸気の存在において、創傷面の上方にとどまるように構成されており、局所的な組織の撓みを促進する。
【0035】
創傷用包帯は、創傷カバーに取り付けられる吸引管(14)を含む。包帯は、薬剤の供給又は創傷の洗浄のために、他の管(図2の28)を有してよい。(複数の)管は、カバーの縁の下方通り又はカバーの縁を貫通してよいが、現今好適な構成では、本願と同一出願された米国特許出願第11/181128号明細書に記載されているような、吸引管が主要カバーの外側で終端をなすのを可能にすると共に、接着シールを破り皮膚が出る危険性を低減させるために、管取付パッチ(30)を使用する。
【0036】
図2に図示されるように、本実施形態において、吸引管(14)の先端は、多孔質プラグ(34)で密封された通気孔穴(32)を有し、以下に説明される気流監視機器に、制御された漏れ即ち基準気流を供給する。通気孔(32,34)を可能な限り創傷カバーの近くに配置するのが好ましい。管取付物を主要カバーの外側に有することにより、通気孔が創傷近くのカバーの下側にあるならば生じかねない創傷の乾燥を生じさせることなく、この制御された漏れ基準気流の使用が可能になる。制御された漏れを実際の創傷空間に載置することもありえるが、導入された気流に起因して、創傷組織の過剰な乾燥を回避するために、考慮がなされる必要がある。また、通気孔をパッチ(30)の孔として設けるために、図2に示されると共に、米国特許出願第11/181128号明細書に記載されるタイプの管取付パッチ(30)を備えることが可能である。
【0037】
較正弁からの基準気流速度は、システムの作動を監視するために使用される。制御された漏れ速度は、創傷部位及び湿潤治癒環境において、適当な吸気を維持するために、低くされるべきである。好適には、基準気流は、毎分50〜300立法センチメートルの範囲にある。この流れは、乾燥を最小減にするのに十分な程低く、また創傷に適用される吸気を著しく変化させない。また流れは、携帯式ポンプが吸引源として使用される場合に、電池の使用を最小減にするのに十分な程低い。この大きさの流れは、上述のような多孔質プラグ(34)により無菌状態で密封される吸引管の通気孔穴(32)を設けることにより、容易に得られる。適当なシール材料は、焼結高密度ポリエチレンからポレックス[Porex]によって製造される多孔質プラスチックである。この多孔質材料は、空気が医療用流体ラインに適当な流量で入るのを許容する一方で、細菌に対する効率的な無菌ろ過バ
リアを維持するために、慣例的に利用される。
【0038】
創傷治療者は、創傷用包帯(12)を患者に適用すると共に、本システムを吸引に取り付ける。治療者は、創傷カバーの折れ目又はしわを平らにすると共に、患者の解剖学的構造における折重なりに起因する間隙を扱うことにより、包帯の漏れを改善する。コロプラスト等、造孔術治療では一般的である間隙充填ペーストを使用することにより、困難な解剖学的構造の特定領域を扱うと、時として有用であった。以下に説明される気流監視器具は、創傷カバー及び管の周りにおけるシールの完全性について、能動的フィードバックを治療者に供給することにより、初期包帯設定プロセスを容易にする。
【0039】
屑収集器
吸引治療の主要な機能は、液体を創傷から排出させることであり、システムは通常、創傷から吸引された流体を収集するための屑収集器(16)を含む。図3に図示される実施形態と同様に、収集器(16)は、直円柱輪郭を備えた直立プラスチック容器(36)であってよく、容器の外側において、円柱の高さに沿って延出する帯に、充填レベル標示を有してよい。標示は、容器に接着剤で接着される紙ラベル上であってよい。容器は好適には、使い捨て一回使用機器である。容器は、結合金具(40)を組み入れた蓋(38)を有しており、結合金具(40)は、入力管(42)の取付けのために、蓋を貫通する。入力管(42)は、創傷から至る吸引管(14)の端であってよく、或いは、吸引管(14)の端において、対応するコネクタ(46)と組み合わさるコネクタ結合金具(44)で終端をなす短い管部分であってよい。
【0040】
創傷から吸引された気流及び血液又は他の流体は、蓋の結合金具(40)を通過し、容器(36)に至る。液体は容器に保持されるが、空気は上昇すると共に、蓋の内部に密封される疎水性膜(50)から吸い出される。膜(50)は細菌フィルタとして作用すると共に、容器が溢れるのを阻止し、また汚染物が、容器から吸引源へ向けて流れ出るのを阻止するために、遮断機構として使用され得る。
【0041】
蓋は、容器を携帯式ポンプに、又は固定式壁面吸引システムに延出する管へ連結させるために、出口ポート(52)から別のコネクタ(54)への空気管路を画定する。しかしながら、第2コネクタ(54)は好適には、固定式吸引システムの標準的な機器結合金具に直接的に接続しない専用(非一般的)コネクタである。これは、創傷へ過剰に大きな吸気を適用するという付随する危険を伴い、以下に説明される流量監視器具及び圧力解放機能を有することなく、吸引システムに誤って直接的に接続するのを、阻止するためである。以下に説明される携帯式ポンプ形態の結合ソケットは、専用コネクタを受け入れるように構成される。コネクタ(54)は、Oリングシール等の密封要素を含む。密封要素がポンプにあると共に、最終的には磨耗して、システムが漏れにより故障する他のポンプコネクタとは対照的に、この構成によれば、新しいOリングが好適には、各使い捨て容器に使用される。
【0042】
それ故、容器を通る空気通路は、創傷及び吸引源の間に、吸引導管の一部を形成する。本明細書に説明されるシステムの一実施形態において、容器(36)は、疎水性膜(50)によって、溢れるほどに満杯になるのが阻止される。内容物が膜と接触するほど多く、容器(36)が充填されるならば、膜は閉塞すると共に、容器を通過する気流を遮断する。この遮断は、創傷からのより多くの屑の吸引を妨げ、また以下に説明されるように、基準気流の遮断は、異常作動状態の指示として検知される。以下に説明される他の実施形態において、容器の中の屑生成物のレベルが、キャパシタンスセンサ又はポンプの他の検知器によって検知され得、また検知は、溢れるほど満杯になるのを阻止するために使用される。
【0043】
好適には、創傷から吸引される液体屑は、廃棄を容易にするために、またこぼれたり跳ねたりするのを阻止するために、ゲルに換えられる。ゲル化剤が多孔質袋に設けられ得るが、ゲロックインターナショナル[Gelok International]によって供給されるようなゲル化剤を含む積層繊維シートのディスク(56)を使用するのが好ましい。ディスク(56)は、広口壜の内部に嵌合するように切断されると共に、互いに積み重ねられる。積み重ねディスクにより、液体は、容器の中で水平面ゲルに変えられる。
【0044】
システムは、屑収集器及び創傷流量モニタ(18)の間に載置されるフィルタ/乾燥機ユニット(21)を含んでもよい。フィルタ要素は付加的に、汚染された粒子が吸引源に入るのを防ぎ、また乾燥機は、流量監視器具の較正を行う空気から、湿気を取り除く。
【0045】
正常作動を指示するために制御された基準気流の使用
従来技術の吸引包帯システムは、システムの作動を全く監視せず、或いは、圧力を直接的に検知しようとすることにより、決して最適ではなかったが、本明細書に説明されるシステムは、システムが正常作動である時を指示すると共に、また異常作動の指示として、基準気流からのずれを検知するために、上述の空気通気孔(32)によって供給されるような基準気流を使用する。基準流量よりも高い気流は、漏れを指示するが、より低い気流は遮断を指示する。
【0046】
基準流量に適当な流量範囲は、下端が創傷カバーの浸透性によって、また上端が吸引限界によって確定される。創傷カバーが半浸透性材料である時には、カバーを通過する空気分子から、自然な低レベルのバックグラウンド気流が存在する。この浸透気流は、流量監視機器が極めて感度が高いならば、基準気流として作用し得る。しかしながら、浸透流量は通常は極めて低く、また極めて不安定であるので、良好な基準とはならない。手術用無菌布及び創傷からの流体によって遮断されるカバーの範囲及びその可能性は、浸透流を不安定にさせる。それ故、通気孔は、浸透流の変動を隠すと共に良好な基準をもたらすより大きく且つより安定的な流れを供給する。例えば、テガデルム[Tegaderm][商標名]の絆創膏は、およそ800グラム/平方メートル/日の水の拡散を可能にし、これは平方メートル当り約0.5cc/分の流速に相関する。一般的な創傷カバー範囲は、十分の一平方メートル未満であり、それ故、おおよそ、半浸透性材料は、0.05cc/分、或いは50cc/分の基準流の1パーセント未満ほど与える。従って、バックグラウンド浸透性流量の変動は、より大きな基準流によって隠される。
【0047】
指示器サブステムは、図示されると共に以下に説明されるように、2個の機器に具体化されてよい;固定式吸引源と共に使用する創傷監視流量機器と、流量検知システムを備えた携帯式ポンプ。ターゲットメータ又は熱線風速計等の他の種類の流量指示機器が、使用されてもよい。
【0048】
流量モニタ
図1の創傷吸引システムにおいて、流速モニタは、屑収集容器(16)及び固定式吸引源の間の吸引導管(58)を含むフロートメータ(19)である。導管の一端は、容器の専用コネクタ(54)と結合するコネクタ(60)を含む。流量モニタ(18)は好適には、導管(58)の他端に配置されると共に、固定式吸引システムに一般的に見られるような調整可能な吸引調整装置(20)と連結させられた機器接続用結合金具(64)に直接的に取り付く。
【0049】
流量モニタ(18)は、システムを通る流速の視覚的な指示をもたらすように設計される。流速が当初の用途に従う制御基準気流で安定すると、この基準流の視覚的な指示の維持は、漏れ又は遮断がない正常作動の指示であり、それ故、創傷カバーで受入れられる吸引レベルである。より高い気流へのずれは漏れを指示しており、またより低い気流へ或い
は気流がない状態への降下は、収集回路での遮断を指示している。
【0050】
図4は、フロートメータ(19)の断面図である。メータの上端の標準的なコネクタ(63)は、調整可能な吸引調整器(20)の器具結合金具(64)に接続可能な短縮導管(62)に取り付く。流量計の下端では、標準的なコネクタ(59)が吸引導管(58)に取り付けられる。創傷治療において、25〜200mmHgの範囲の吸気を使用するのが一般的である。流量指示器は、100mmHgの制御された吸引レベルが、吸引調整器(20)によって適用された時に、吸引気流を毎分20リットル未満に制限するように較正されるオリフィス(67)を有する流量絞り(66)を組み入れている。
【0051】
図4に示されるように、流量指示器は異なる内径を有する連続部(68,70,72,74)を有しており、下端に最幅狭部(68)を有し、上端に連続する3個の更なる部分(70,72,74)において、連続的により大きな直径を有する。除去管の外側筒(76)は、気流速度を指示するために、目盛り(図示なし)を有する。フロート(78)は、システムを通る流量の指示器として作用する。気流が存在しない時には、フロートは最下部(68)に位置する。この領域は、満杯の容器又は流体路の閉塞等、遮断状態を指示するために、赤色が付けられている。メータへの流れが低い、好適には約毎分50立方センチメートルから毎分300立方センチメートルの間にある時には、フロート及び指示器の下部の間の空隙は、フロートの周りの流れにより、フロートが次の部分(70)まで上昇するようにされる。それ故、正常の基準気流は、フロートを次の部分まで、認識できる量だけ上昇させる。この正常作動範囲は、緑色が付けられており、許容できる状態を指示している。
【0052】
フロートの質量は、フロートの外側と管の内側の間の空隙と協働する。フロートは、気流速度及び流体密度に反応すると共に、動的力が平衡状態にあるレベルに上昇する。他の用途のための一般的な流量指示器は、連続的に増加する内径を有する。流速の僅かな変化は、フロートを、流速を指示する高さの周りで、上下にカタカタさせる。この指示器における4個の部分(68,70,72,74)のような、同一の直径を有するが連続的に増加する別個の部分の使用は、カタカタという音を減少させると共に、フロートを段階的に上方に移動させる。これらの段階は、創傷に適用される吸気に関して、重要な基準情報を供給する個別の流れについて選択される。
【0053】
システムを通る流れが、創傷用包帯における漏れに起因して、許容レベルを超えて増加するならば、正常位置におけるフロート周りの空隙は、フロートがこの位置に留まるのを許容するのにもはや適切ではなく、また増加した流れは、フロートを、内径が階段的に増加する表示器のより高い部分に持上げる。指示器の外側の目盛りが付けられたラベル[図示なし]は、中程度の漏れ状態の視覚的な指示をもたらす。更なる階段的に増加する直径部分は、より高い漏れ状態を指示するために設けられる。階段的に増加する直径は、フロートが一位置からより高い位置へ跳ね上がる前に、著しい流れの変化を必要とする。これにより、他の用途の流量計では一般的であるような、連続テーパ内径では遭遇する跳ね上がりが排除される。階段的に増大する直径部分は、使用者の判断を低減させ、ひいては使用性及び安全性を高める。
【0054】
創傷監視器具はまた、過度に高いレベルの吸気の偶発的な適用から保護するために、最大吸気を制限する安全弁(80)を組み入れている。創傷の排液及び治療のために、25〜200mmHgの範囲の吸気を使用するのが一般的である。その結果、吸気制限機能は、吸気を、約200mmHgに制限するように設定されてよい。吸引圧解放室(84)が、第1流量絞り(66)と、第1絞りと同じ寸法のオリフィス(83)を有する第2流量絞り(82)の間に形成される。解放室内の弾性弁機構(86)は、高レベルの吸気の適用からの解放として作用する。弁機構は、200mmHg等、所定の吸気設定値にばね付
勢される。解放室の吸引圧が所定の設定値を越えるならば、過度の吸気が患者に適用されるのを阻止するために、弁機構が開放すると共に、通気孔の空気が解放ポート(69)から制量穴に吸込まれる。
【0055】
フロートが圧力解放室へのオリフィス入口を完全に遮断するのを阻止し、ひいては大きな漏れが発生しても、空気の流れは許容するために、フロートメータの内部の上側裏面において、第1流量絞りオリフィスに隣接して、突起(75)が設けられてよい。これにより、高い気流速度であっても、システムと連通する吸引が可能になる。或いは、突起は、フロートの上面に配置されてもよい。
【0056】
創傷流量監視機器はまた、機器及び容器の間の導管に配置される空気フィルタ/乾燥機(21)によって、粒子状物質、エアロゾル、及び湿気の形態をなす潜在的な汚染源から保護される。フィルタ/乾燥機ユニットは、創傷モニタが、定期的な交換のために、収集容器から切り離された時に遭遇するような浮遊粉塵を除去する粒子フィルタを含む。乾燥剤又は他の湿度制御手段が、必要に応じて、フィルタ/乾燥機ユニットに載置されることも予想される。
【0057】
本システムは病院の壁面吸引システムの状況において説明されているが、本システムはまた、吸引ポンプと共に使用され得る。幾つかの医療用建物では、創傷治療のための吸気を供給するために、電力ポンプを使用し得る。これらは移動させられ得るが、唯一の制限が電源コンセントの位置及び電源コードの長さであるので、厳密には携帯可能ではない。携帯式電池ポンプを使用するシステムが、以下に説明される。
【0058】
携帯式ポンプ
図5Aに示される吸引システムの携帯式ポンプの実施形態(100)において、吸引源は、固定式吸引源に代えて、携帯式吸引ポンプユニット(102)である。ポンプは、上述されたものと同じ創傷用包帯サブアセンブリ(12)及び屑収集容器と接続する。
【0059】
ポンプ(102)は、低電圧直流で作動すると共に、搭載[電池]電源を有する。ポンプはまた、適当な交流/直流電力変換器を備えた壁面コンセントで作動し、使用の間に、電池を再充電するために、充電器と結合されてよい。
【0060】
ポンプは、制御された負圧レベルを生じさせるように構成される。図5Bに示されるように、ポンプは、上側パネル上に、オン/オフ/間欠制御スイッチ(112)と、圧力レベル選択器ダイアル(113)とを有する。ポンプの電源は、制御スイッチ(112)を使用して、作動させられる。予め決められる圧力設定値は、圧力選択器ダイアルで選択され、30から75mmHgの間の設定値選択を可能にする。
【0061】
図6Aの概略図において、携帯式ポンプの実施形態は、容積形空気ポンプ(103)と、変速直流モータ(104)と、回転速度計(105)と、圧力制御回路(106)と、故障検知/警報システム(108)とを含む。本実施形態において、ポンプ圧力制御回路及び故障検知/警報システムは、配線固体素子電気機器であってよい。
【0062】
図6Bの好適な実施形態の概略図において、故障検知及び警報システムは、マイクロプロセッサ(200)を含む。適当なプロセッサは、マイクロチップ16シリーズ、パートナンバー16F688であるが、他の同様なプログラム可能な論理装置が使用されてもよい。
【0063】
独立圧力制御システム
ポンプがマイクロプロセッサを使用しようが否かに拘わらず、ポンプの圧力制御システ
ムは、空気流量監視機能とは独立している。圧力制御システムは、標準的な圧縮機回路と同様に機能する。圧力変換器(図示なし)は、ポンプで作られる負圧を監視すると共に、好適には、屑収集容器(16)及びポンプ(102)の間の導管に配置される。圧縮機制御回路(106)は、固体素子論理装置を含む。使用者は、可変抵抗器の抵抗を変化させると共に、選択された圧力を表す電気信号を作るために、選択器ダイアル(113)を使用して、圧力設定値を選択する。制御回路(106)は、選択された圧力設定値を、入力値として受け取ると共に、選択された圧力に関連する圧力の上限値及び下限値を設定する。この上限値及び下限値の範囲は、適度に安定した吸引レベルを供給する一方で、ポンプモータのオン‐オフ循環を最小減にするように選択される。約10mmHgの範囲が、患者の快適性にとって、また騒音を最小減にするのに好ましい。制御回路(106)は、変換器によって検知された圧力を、2つの制限値の間に維持するように機能する。この制御回路は、工業用途並びに医療用集中吸引システムにおいて、一般的に利用される。
【0064】
ポンプが、オン/オフ/間欠欠スイッチ(112)によって、最初に作動させられた時に、制御回路(106)は、圧力値が制御回路によって設定された圧力範囲の上限値を又はそれを超えたことを変換器が検知するまで、ポンプの作動を開始する。圧力制御回路(106)は、圧力変換器からの圧力信号を、操作者によって、圧力選択器ダイアル(113)を介して選択された設定値制限信号と連続的に比較する比較器(図示なし)を有する。上限値に到達すると、圧力制御回路(106)は、ポンプを停止させる。導管の正常基準気流は、変換器の圧力を、制御範囲の下限値へ向けて減衰させる。検知された圧力が制御下限値に達すると、制御回路(106)はポンプを作動に戻し、またプロセスが繰り返される。それ故、圧力変換器は現在の負圧を検知し、また制御回路(106)は、選択された所望範囲内にある負圧を維持するために、それに従ってポンプを作動及び停止させる。
【0065】
モータ(104)は好適には、変速直流ブラシレスモータであるが、他の型の直流モータ、並びに可変出力が備えられ得る交流モータも、受入れられる。変速モータにより、速度は、制御回路(106)のパルス幅変調(PWM)機能を介して制御される。変速制御は、直流モータの有効な使用を可能にする。
【0066】
好適な実施形態において、容積形ポンプ(102)は、入口及び出口チェック弁を備えた直流ダイアフラム型ポンプを使用する。ダイアフラムポンプのクランク軸は、変速モータの軸と作動的に連結される。ぜん動型、ピストン型、シリンジ型、又はロッキングピストンポンプ等、他の容積形ポンプが使用されてもよい。
【0067】
回転速度計(105)は、モータ又はポンプ軸rpmを指示するために使用され得る。例えば、ホールセンサが、rpmを指示するために、直流ブラシレスモータ並びにエンコーダに、一般的に利用される。モータ軸回転速度を判定するために、直流モータのブラシバージョンにおいて、EMFを検知し戻すことも可能である。交流ポンプにおいて、磁石が一端に据え付けられた振動バーが、交流コイルによって励磁され、それによりダイアフラムを駆動させる。その場合、コイルによって供給される振動の数が、ポンプ速度の指標として使用され得る。ポンプ又はモータ速度センサのこれら及び他の形態各々が、一般的な用語である回転速度計に含まれると共に、流速監視器具として使用され得、ポンプ速度即ち排除量が、容積形ポンプを備えた直接気流測定の代用物として測定される。
【0068】
上述したように、圧力制御回路(106)は、変換器によって検知された吸気を、選択された負圧設定値の所望範囲内に維持するために、必要に応じて、ポンプを作動させる。ポンプ作動時間の継続時間は、選択された設定値によって確定される範囲内に、負圧を維持するために、ポンプ制御回路(106)により必要に応じて、制御回路のパルス幅振幅機能によって決定される有効モータ速度で、増加又は減少させられる。それ故、圧力制御
回路は、検知された圧力で作動し、検知された気流で作動しない。これにより、圧力制御は流量検知及び監視とは独立しており、また流量の状況は、システムの機能を表示している。
【0069】
流量検知システム
図6Aに示されるように、故障検知システム(108)は、創傷治療及び屑収集ラインを通る空気の流速の指標として、ポンプ作動を監視するように適用される回路であってよく、作動状態の聴覚的且つ視覚的な指示を供給するために、信号表示器(114)と連結される。この故障検知回路(108)は、圧縮機制御(106)とは独立した別個の回路である。好適には、故障検知システムは、モータ作動入力値に基づいて流速を判定し、基準流速からのずれを特定し、且つ異常作動状態を特定する信号表示器信号を供給するマイクロプロセッサに、入力値を供給するポンプモータ作動センサを含む。以下に説明される好適な実施形態において、故障検知回路は、マイクロプロセッサを含み得る。
【0070】
携帯式ポンプユニット(200)の好適な実施形態が、図6Bの概略図に図示される。ポンプ(203)は上述されるような、入口及び出口チェック弁を備えたダイアフラム型容積式ポンプであると共に、変速ブラシレス交流モータ(204)によって動力が供給される。ユニットは電力変換装置及び12ボルトバッテリをも含む充電器モジュール(207)によって電力を供給するラインコード(205)を備えた壁面コンセント電源によって、動力が供給されてもよい。ユニットは直流電力を、変換装置から、或いはプラグが抜かれて使用された時には充電池から受け取る。圧力制御回路(206)は、選択器ダイアル(213)で選択された圧力を維持するために、上述のように作動する。
【0071】
ユニットはまた、流量監視及びシステム状況検知機能に必要とされるマイクロプロセッサ(210)を含む。本実施形態において、モータ又はポンプの回転は、容積形ポンプを通過した空気容量の指標として計数されると共に、入力値をマイクロプロセッサ(210)に供給する。マイクロプロセッサのプログラムにおける判別アルゴリズムは、モータ回転を計数すると共に、流速を決定する。この流速は、故障状態を判定するために、周知の基準流速と比較される。流速は、流速信号表示器(214)の表示バーを点灯させる信号に変換される。基準流未満の流速は、回路、最も一般的には満杯の容器の閉塞のような信号表示器の異常作動として指示される。基準流速と比較可能な流速は、正常作動の信号表示器指標をもたらす。基準流速よりも大きい流速は、創傷カバーのシールを扱うように介護者に警告を与えるために、回路が漏れているという異常信号表示器指標をもたらす。
【0072】
ポンプが、設定値圧力を維持するように、圧力制御回路によって独立的に作動及び停止させられる場合には、変換器によって検知される圧力は、制御上限及び下限値の間で変動する。この変動期間は、創傷用包帯の漏れに関連付けられる。漏れが大きいほど、期間は短い。それ故、ポンプの作動又は停止の間の時間間隔は、マイクロプロセッサによって検知されると共に、気流速度のおおよその測定値として使用され得る。しかしながら、直流電流をより有用に使用するために、モータ速度が、またパルス幅振幅[PWM]を介して制御される場合には、マイクロプロセッサはまた、気流速度を判定するために、オン/オフ間欠をパルス速度と相関させ得る。正常作動において、容積形ポンプは、ポンプの各回転に対して、所定数のパルスを出力する。パルス信号は、マイクロプロセッサへ、入力値として供給され得る。これらのパルス信号は、ポンプが出力したポンピングストローク数を決定するために使用されると共に、ポンプ容積に極めて近似する。マイクロプロセッサの流量監視プログラムは、気流の容積を表すために、ポンプから出力されるパルスを連続的に計数する。時間計測値と合わせて得られる時に、これらの単位時間当たりのパルスは、気流速度を表す。目下好適な実施形態において、時間計測値は、ポンプモータのオフサイクルに基づく。ポンプが停止させられた時から、次のポンプが停止させられる時まで、マイクロプロセッサはパルスを計数すると共に、導管における流速を決定するために、各
モータ停止状態の間の時間で割る。
【0073】
治療プロセスのためになるように、吸気を間欠状態で供給することが好ましいことがある。従来のプロセスでは、システムが、組織の再灌流を可能にするために、所定時間の間、大気圧を排出させるのを可能にする必要がある。システムが大気を完全に排気させるのを可能にすることにより、包帯システムにおける吸気の完全な減少に至ると共に、創傷の周りに気密シールを維持するように、吸気が役割を果たすという利益に至る。本発明は、吸気を2個の特有のレベルの間で変化させることにより、この問題を解決する;第1レベルは圧力選択ダイヤル(113)によって選択され、また第2レベルは、20〜25mmHgである。選択されたより高いレベルは、有益な吸引治療効果を与えるために使用される。第2のより低いレベルは、毛細管床圧力以下であり、それ故、このより低い段階では、組織の再灌流が生じる一方、創傷用包帯は、包帯シールを所定位置に保つのを助けると共に、基準気流を維持し、且つラインの逆流及び凝固を阻止するために、少なくとも幾らかの吸引レベルを維持する。この種の間欠ポンプ作動では、基準気流は、減少レベルにおいてでさえも維持されるべきであり、そうでなければ、低気流に関連付けられた警告は、減少吸引の間、並びに一定割合での増加及び減少の間に、マイクロプロセッサによって安全にされるべきである。
【0074】
マイクロプロセッサ(210)は、間欠吸引を生じさせるために、選択された圧力で落ち着く。オン/オフ/間欠スイッチが間欠モードに設定された時に、マイクロプロセッサのプログラムは、正常選択圧力及び下側レベルの間で切り替えるために、時間間隔を使用する。間欠モードの下側圧力サイクルに入るために、マイクロコントローラは、抵抗を圧縮機比較器回路に加えるトランジスタを作動させる。実質的に、マイクロコントローラは、圧力制御回路を下側選択圧力に再設定している。それ故、マイクロプロセッサは直接的に圧力制御システムを制御しないが、マイクロプロセッサは、選択された圧力を、マイクロプロセッサへの入力値によって選択された時間間隔で、上側及び下側レベルの間の選択された圧力に再設定し得る。
【0075】
吸引治療システムの故障は、システムを通る予想流量からのずれとして検知される。流量検知システムは、正常作動を指示する流量信号を供給するために、吸引管の一端において較正通気孔によって生じさせられ、約50〜100cc/分に較正された基準気流を使用する。設定値負圧を維持するために、ポンプが正常持続時間で作動していないと、流量検知システムが判定するならば、視覚的及び聴覚的警告を介して、介護者に警告する。
【0076】
モータの作動時間の増加は、システムにおける空気流の増加に比例する。マイクロプロセッサは、回路の実際の圧力に基づいて、気流を補正するために、アルゴリズムを使用する。包帯システムにおけるいかなる漏れも、ポンプの作動時間の増加によって補償される。毎分約3リットルの流量に匹敵するために、作動時間が増加すると、指示器は、包帯システムが漏れを有しているという事実を介護者に警告するために、ユニットの流量信号表示器(214)を点灯する。介護者が漏れている包帯を正すことができるならば、指示器は停止する。一分間の時間枠内において、故障状態が(創傷部位を再度密封することにより)扱われないならば、マイクロプロセッサは、可聴警報を作動させる。しかしながら、たとえ漏れ状態が存在する時であっても、ポンプは、圧力制御システムの制御下において、継続的に作動し、状況が正され、或いはポンプが停止されるまで、数レベルの吸気が送られる。
【0077】
流量検知システムはまた、基準気流の損失又は低下を検知する。屑容器へのラインが創傷浸出液で閉塞させられ、或いは折れ曲がり又は締め付けによって妨害閉鎖させられる等、基準気流が減少させられる多くの故障状態が存在する。これらの状態はまた、創傷における負圧の損失を結果的にもたらす。この減少させられた基準気流は、流量検知システム
によって検知されるモータ作動時間の減少を結果的にもたらすと共に、視覚的指示器に遮断状態を指示させる。
【0078】
ポンプはまた、マイクロプロセッサの計時機能の一部として、搭載コンプライアントモニタを有する。コンプライアント指示器(159)は、時間と共に創傷への正常な吸気の適用からのずれを、介護者に警告すると共に、負圧創傷治療用途の有用な付属物である。コンプライアントモニタは、吸気が設定値からプラスマイナス5mmHg内にある時間数を計算してよい。医学的経験によれば、吸気は有効であるために、連続24時間の22時間適用されるべきであることが分かっている。この読み取りは、吸引治療のコンプライアント時間数即ちパーセンテージを示すために、多くの方法で提示され得る。
【0079】
屑収集容器及び満杯指示器
ポンプユニット(102)はまた、創傷用包帯及び創傷から吸引された液体の収集用ポンプの間に配置される屑収集容器のドッキングステーション(160)を含む。現今好適であるように、屑収集容器は、直円柱輪郭を有すると共に、円柱の高さに沿って延出する帯(170)に充填レベルマークを有する透明プラスチック容器(16)であり、またOリングシールを備えた接続結合金具(54)を有する。携帯式ポンプのドッキングステーション(160)は、容器を支持する。ドッキングステーションは、容器の半分に一致する凹状輪郭を有すると共に、容器の1個がドックに入れられた時に、容器を支持するために、半円形基部(162)を有する。ポンプは、上側壁の中間に、容器の接続結合金具(54)を受入れるように適応させられた解放可能なラッチ結合金具(164)を有する。容器の結合金具は、ラッチ結合金具(164)に挿入されると共に、ラッチによって、所定位置に固定される。容器は、ラッチの容器解放ボタン部(166)を押すことにより、解放及び移動させられてよい。
【0080】
ポンプはまた、膜を横切る圧力の差を測定する必要なく、一杯になった容器を検知する能力を提供する。差圧測定値は、部分的に閉塞された膜が、誤った読み取り及び解釈に至る点で問題であるかもしれない。本実施形態において、ポンプ(102)は、容器の充満状態の直接的な指示として、明確なレベル検知を利用する。ポンプは、容器の中の屑レベルが、充満容器状態を指示するレベルを超えた時を検知するために、容器ドッキングステーション付近に、レベル検知器センサ(図6Bの218)を含んでよい。レベルセンサは、ターク社[Turck,Inc.]によって製造されるModel#BC10−QF5センサのようなキャパシタンス検知器等、多くの形態をとり得る。この検知器は、ポンプハウジング内において、所望の高さに位置決めされ得ると共に、イオン流体の存在によって生じさせられるキャパシタンスの変化を読み取る能力を有する。検知器は、ポンプハウジングを介して、この変化した環境を検知し得、それ故、露出させられる要素は存在しない。キャパシタンス型検知はまた、ミスト又は霧等の状態に対して、耐性を有する。光学式、超音波、接触線、フロートシステム等、他の明確なレベル検知機構が使用されてもよい。
【0081】
患者は、移動可能であってよく、或いは搬送される必要があるので、流体が跳ね上がり、且つ満杯容器の誤った明確な指示をもたらし、結果的に不当な信号或いは警告を生じさせる場合に、振動及び運動が人為的な結果をもたらす可能性がある。ソフトウェアのアルゴリズムは、この誤った指示の可能性を最小減にするために、マイクロプロセッサによって使用されてよい。アルゴリズムは、遅延時間及び標本速度を組み入れる。10ミリ秒の標本速度及び4秒の遅延は、運動の人為的な結果に起因する誤った充満指示を低減させる有効なパラメータセットである。好適には、アルゴリズムは、マイクロプロセッサポンプ制御にプログラム化される。
【0082】
直接レベル検知器はまた、システムが、満杯容器と、基準気流からのずれによって検知
される導管の他の遮断により生じさせられる閉塞状態を区別するのを可能にする。直接レベルセンサは、正常気流指標よりも低い視覚的且つ聴覚的警報のアレイを点灯し得る信号を供給する。臨床家へ容器満杯状態及び閉塞の区別をもたらすことにより、作動を単純にすると共に、システムの使用をより容易に、且つ使用者の操作ミスをより少なくする。
【0083】
計時サブシステム
ポンプユニットは、ポンプが作動している時間間隔に対応する時間単位を記録及び蓄積する計時サブシステムを有してよい。好適には、計時サブシステムは、他のセンサからの入力に基づいて、時間単位を記録及び蓄積するために、マイクロプロセッサ(210)のプログラムを使用する。例えば、計時は、オン/オフ/間欠電源スイッチからの信号、或いは回転速度計又は他のセンサからのポンプ作動時検知信号によって、開始及び停止させられ得る。マイクロプロセッサの計時サブシステム又はプログラムは、また好適には、ポンプが作動していると時間単位のレポートを提供するための時間レポートルーチンを含む。時間レポートは、実行時間間隔の記録、日付及び実行時間間隔の継続時間の記録、合計蓄積実行時間の記録、蓄積コンプライアント実行時間の記録、及びプリセット実行時間期間に残る実行時間の記録を含んでよい。
【0084】
計時サブシステムはまた、漏れ又は閉塞に起因する異常作動状態を指示する警報に関連付けられてよい。これは、計時サブシステムが、合計ポンプ作動時間及びコンプライアント作動時間を検知及び記録するのを可能にする。コンプライアント作動は、治療の慣行によって定義されてよい。例えば、コンプライアント時間は、時として、24時間の内の22時間に亘る正常な吸気の適用として特定される。時間報告サブシステムは、ポンプ作動時間に加えて、コンプライアント実行時間のレポートも行ってよい。
【0085】
計時サブシステムは、予定された維持管理又は洗浄の残り時間を指示し、又は使用に対する支払いが時間単位に基づき戻り或いは予め支払われる場合に、使用された時間又は支払い請求プランに残る時間を指示するために、使用されてもよい。ポンプがこのようにして販売又はリースされた時に、計時サブシステムは、ポンプが作動している時間期間に対応する時間単位を記録及び蓄積する能力を有し、また創傷治療システムが正常作動している時のコンプライアント実行時間を含む実行時間のレポートを供給する。
【0086】
状態指示器及び警報器
システム状態信号表示器は、システムが正常作動している時に、ポンプを通る流れが、基準気流を維持するのに必要とされる範囲内にあると視覚的に指示するために、色づけされると共に目盛りが付けられたバーメータ(114)の形態をなしてよく;また逆に言えば、ポンプが基準気流を維持するのに必要とされるよりも高速で作動していることを指示して、システムでの空気の漏れを指示し、或いは基準気流を維持するのに必要とされるよりも低速で作動していることを指示して、システムでの空気の遮断を指示する。ポンプは、ビープ音等の異常作動の聴覚的指示をもたらしてもよい。
【0087】
エラー検知及び表示
ポンプは、ポンプ作動パラメータ、又は低充電等の基準気流から検知されるもの以外のエラーを指示する警告又は警報ライト(116,118,120)を有してよい。電子制御装置は、流量検知の故障及び他のエラーの視覚的且つ聴覚的指示の多くの組み合わせを可能にする能力をもたらす。図6Bのマイクロプロセッサの実施形態において、流速信号表示器(214)とは別の視覚的エラー指示表示器(216)は、付加的に故障の発見を援助する。これらのエラーは、センサからマイクロプロセッサへの信号によって検知される。マイクロプロセッサは更に、英数字表示としての信号を、以下のエラーと相関するエラー表示器(214)へ送る:過剰圧力、容器の紛失、変換器故障、低電池、少作動時間残余、及び誤った電源の取付け。
【0088】
過剰圧力は、暴走するポンプにより、潜在的に高い圧力が患者に供給される状態である。マイクロプロセッサのエラー検知ソフトウェアは、連続的に圧力変換器の出力を集計すると共に、その出力を記録された最大許容圧力と比較する。最大許容圧力を所定時間の間超えたならば、マイクロプロセッサはポンプを遮断し、また過剰圧力エラーが、エラー表示器に指示される。
【0089】
容器紛失状態は、屑収集容器が結合金具に接続されていない状態で、ポンプが作動させられるならば生じる。この状態は、開始時点で生じ得ると共に、システムを通る気流が、対応する最小圧力増加を伴うことなく所定レベルを超えた時に、エラー検知ソフトウェアによって検知される。容器紛失のための検知流速は一般的に、取り外され或いは汚染された創傷用包帯から予想される増大した流量よりも大きくなるように設定される。これが検知された時に、容器紛失エラーが、エラー表示器に指示される。
【0090】
圧力変換器の故障は、2つの形態をとり得る:開路[圧力示度無し]又は高真空を指示する過剰に高い示度。後者は、過剰圧力[上述]として解釈されると共に、結果的にポンプのフェイルセーフ停止をもたらすので、明白である。開路故障は、零圧力出力として現れる。従って、エラー検知システムソフトウェアが、気流を検知したが、零圧力であるならば、変換器故障エラーが、エラー表示器に指示される。
【0091】
低充電は、ポンプのプラグが外部電源に差し込まれていない時に、電池出力電圧を集計するエラー検知ソフトウェアによって判定される。閾値低電圧レベルを超えた時に、低電池エラーが、エラー表示器に指示される。
【0092】
少作動時間残余は、計画された維持管理サービスまでの残りの時間、又はプリペイドレンタルプランでの残りの時間を指示するために使用される時に、ポンプの計時機能と連動させられる。計時システムは、常に、実行時間及びプリペイド時間数等の目標時間の残り時間を蓄積する。エラー検知システムは、時間残余閾値に設定され得、その結果、時間残余が閾値よりも下に降下したことを、蓄積された時間が指示した時に、少時間エラーが、エラー表示器に指示される。
【0093】
誤った電源の検知は、過剰な電圧をシステムに供給することからの保護のためである。これは、入力電圧を設定最大レベルと比較すると共に、電圧が最大レベルを超えたか否かを検知することにより達成される。システムソフトウェアは、過剰な電圧を検知すると共に、ポンプを遮断し、また誤電源エラーが、エラー表示器に指示される。
【0094】
収集ラインパルスシステム
収集ラインパルス機能は、ライン内の流体量を最小減にし、且つ負圧の正確な送出を保証するために、収集ラインが可能な限りきれいに維持されることを保証するように意図される。基準気流からのずれが閉塞を指示し始めた時に、マイクロプロセッサモータ制御装置は、選択された圧力をより高いレベルに再設定し得、圧力制御回路にポンプを始動させ、或いはポンプ速度を増加させる。このポンプの作動により、ポンプからの過渡的な高い負圧出力の圧力パルスが、患者及び収集容器の間のラインを掃除する。マイクロプロセッサは、閉塞指示の点灯に先立ち、圧力パルスが開始されるように、プログラムされる。圧力パルスの後に、圧力変換器の圧力示度の減衰が続くならば、閉塞指示は点灯しない。圧力示度の減衰は、収集ラインの洗浄を指示しており、従って、閉塞の懸念を排除する。
【0095】
安全要素
システムの冗長性、ひいては強化された安全性は、圧力制御システムを監視及びエラー検知ソフトウェアとは独立して作動させることにより、達成される。圧力変換器は、適用
された負圧レベルを制御するために、従来の圧縮機回路で利用される。圧縮機回路が故障するならば、ソフトウェアはシステムを遮断させる能力を有し、またソフトウェアが故障するならば、独立した圧力制御装置が、制御された吸気を患者へ供給する。
【0096】
ポンプは、患者からポンプを通り発散され得る臭気を制御するチャコールフィルタ要素を有してよい。この要素は、ポンプの出口に載置されると共に、容易に変換及び交換され得る。また、ポンプからの排気における湿気を最小減にするために、乾燥剤がフィルタと共に使用され得る。
【0097】
容積形ポンプは一般的に、騒音を生じさせるチェック弁を利用する。ポンプは、ポンプから発する騒音を低減させるために、ポンプの出口上方に載置される板ばね形状の背圧機器を利用する。
【0098】
ターゲットメータ代替物
基準気流と共に作動する創傷用包帯システムにおいて、漏れ検知機器として利用され得、システムを通る流れを判定する他の機器が存在する。これらの機器は、気流を直接的に測定し、それ故、非容積形ポンプ及び壁面真空源と共に、また容積形ポンプと共に使用され得る。図7に示されるように、ターゲットメータは(120)は、圧力の変化に非感応的な確実な流量検知機器である。ターゲットメータ(120)は、入口オリフィス(122)と、一般的にオリフィスに隣接して載置されるターゲット(124)を利用する。ターゲットは、軸(126)に取り付けられると共に、点(128)又は電機子上で枢動する。軽ねじりばね[図示なし]が、ターゲットをオリフィスに隣接させたままにするために使用されてよい。軸の伸長部は、流路の外側に載置される。気流がオリフィスに入ると、ターゲットはオリフィスから強制的に離される。リードスイッチ(130)等の近接センサは、軸伸長部の端部上にある磁石の位置、ひいては回路における流れの存在又は欠如を検知すると共に、流速を測定するように載置される。ターゲットメータは、上述したような、アナログ流速情報を提供するために、屑収集容器及びポンプの間に、或いはポンプの出口に、或いは屑収集容器及び固定式吸引源の間に載置され得る。
【0099】
流量測定代替物
単独で、或いは吸引源と共に使用され得る他の流量検知機器には、流れている空気流におけるワイヤ冷却の関数として、流量を判定する熱線風速計と、フロートの位置を検知する光学式検知器を備えたロトメータと、流れが適用された時に回転するタービンメータとを含む。これらの流量検知システムは一般的に、圧力の変化に感応しない。熱線風速計は、屑収集容器及びポンプの間に、又はポンプの入口に、又は屑収集容器及び又は固定式吸引源の間に載置され得る。これらの代替流量センサは、ベーンポンプ及びスクロールポンプ等、容積形ではない他の型のポンプの使用を可能にする。例えば、流速の間接測定を行う差圧[DP]セル等、殆どどのような流量器具も使用され得る。
【0100】
システム内で故障状態が判定された時に、状態が正され、或いは使用者がシステムの電源をオフにするまで、ポンプは継続的に作動し、創傷に適用される最適レベル以下の吸気は、全く吸気が存在しないよりも好ましいので、最適吸引レベル以下の吸気を供給する。
【0101】
治療流体の供給及び基準流量
上述された実施形態において、正常及び異常作動の間を認識するための基準流量は、通気孔を介して吸引導管に供給される周囲空気であった。しかしながら、基準気流は、富酸素空気、一酸化窒素、加熱加湿空気、又はエアロゾル含有薬剤小滴又は粒子等、治療用混合物の形態で供給され得る。このような形態は図8に示されている。酸素調整器又はネブライザ等の治療用混合物源(115)は、創傷に至る導管(117)に接続される。混合物は、創傷カバー(152)の下側又は中の導管を通り運ばれると共に、創傷接触材料(
156)の付近で、創傷用包帯(154)に解放される。この混合物の一部は吸収されるが、流れが平衡状態に落ち着いた時に、基準気流をもたらすために、十分な量が吸引導管を通り戻され得る。
【0102】
気流モニタは、携帯式ポンプと、又は吸引調整器の器具結合金具の前に連結され得る一方、上述したように、気流モニタ(119)は、治療用混合物源(115)及び創傷カバー(122)の間に設けられ得る。カバーの下側の導管の一部は、使用に際して汚染されるので、取り外し可能な使い捨て管(121)が、モニタから創傷湿布への導管の部分に使用されてよい。それ故、本発明は、創傷への吸引治療の維持管理、並びに創傷に対する治療用物質の適用及び除去を監視する能力を提供し得る。
【0103】
本発明は、上述の幾つかの実施形態に関して説明及び例証されてきたが、当然のことながら、本発明は、その範囲及び特質から逸脱することなく、他の形態で具体化されてよい。それ故、本発明の範囲は、以下の請求項から導き出されるべきであり、請求項の言語は、詳細に説明されていない構造を事実上包括することを認識するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気を創傷へ適用するシステムにおいて、負圧を生じさせる携帯式吸引ポンプであって、
(a)創傷用包帯から前記ポンプへの導管を通る気流を測定する流速監視システムと、該流速監視システムは、該気流が基準流速範囲内にあるか、該基準流速範囲より低いか、或いは該基準流速範囲より高いかを検知することと、
(b)前記気流が前記基準流速範囲より低い時に閉塞を、該気流が該基準流速範囲内にある時に正常作動を、また該気流が該基準流速範囲より高い時に漏れを指示する視覚的指示器と、
(c)前記ポンプの入口において、圧力変換器によって検知された圧力を、圧力設定値付近の上限値及び下限値の間に維持するために、該ポンプの作動を制御する圧力制御回路と
を含むことを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記流速監視システム及び前記視覚的指示器は、マイクロプロセッサによって制御されることを特徴とする請求項1のポンプ。
【請求項3】
前記圧力制御回路は、前記マイクロプロセッサからの入力がない状態で、前記ポンプの作動を制御する固体素子電子機器を使用することを特徴とする請求項2のポンプ。
【請求項4】
前記創傷から吸引された液体を収集するために、前記創傷用包帯及び前記ポンプの間の前記導管に配置される屑収集容器を更に含み、該容器は、接続用結合金具を有し、
前記ポンプは、前記容器を支持するドッキングステーションと、該容器の接続用結合金具を受入れるように適用された結合金具とを有する
ことを特徴とする請求項2のポンプ。
【請求項5】
前記ポンプの結合金具は、前記容器を機械式に拘束するために、解放可能なラッチを含むことを特徴とする請求項4のポンプ。
【請求項6】
容器満杯センサは、前記容器に収集された屑のレベルを表す信号を前記マイクロプロセッサに供給し、且つ該マイクロプロセッサは、満杯容器の誤指示の可能性を低減させるために、前記センサ信号の時間遅延及び採取速度を組み入れたアルゴリズムを含むことを特徴とする請求項4のポンプ。
【請求項7】
前記気流が前記基準流速範囲よりも高い時に、前記流速監視システムは更に、該気流が該基準流速範囲よりも高い第1範囲内にあるか、又は該基準流速範囲よりも高い第2範囲にあるかを検知し、該第2範囲は、該第1範囲よりも、該基準流速からのずれが大きく、
前記指示器は更に、前記気流が前記基準流速範囲よりも高い前記第1範囲内にある時に、第1レベルの漏れを指示し、また該気流が該基準流速範囲よりも高い第2範囲内にある時に、第2レベルの漏れを指示する
ことを特徴とする請求項1のポンプ。
【請求項8】
前記指示器は、前記ポンプを通る気流の状態の図形視覚的指示を供給するために、色付けされると共に目盛りが付けられたバーメータを含むことを特徴とする請求項7のポンプ。
【請求項9】
前記ポンプを通る気流の基準流速範囲からのずれと関連付けられていない1個又は複数のシステムエラーの視覚的警告を表示するエラー指標表示器を更に含むことを特徴とする請求項7のポンプ。
【請求項10】
前記システムエラーは、圧力変換器からの過剰圧力の検知、圧力変換器故障、屑収集容器
のはずれ、低電池電圧、正しくない電源の取付け、及び少作動時間残余からなるグループから選択されることを特徴とする請求項9のポンプ。
【請求項11】
前記マイクロプロセッサは、間欠圧力治療が所望される時に、定期的な時間間隔で、使用者選択レベル及び該使用者選択レベルよりも低い第2非零圧力レベルの間において、圧力設定値を変化させるプログラムを有することを特徴とする請求項2のポンプ。
【請求項12】
前記マイクロプロセッサは更に、前記気流が前記基準気流よりも低くずれ始めた時に、より高い吸引レベルへ前記圧力設定値を増加させるためのプログラムを有し、前記患者及び前記収集容器の間の前記ラインを掃除する目的で、吸引圧力パルスを生じさせることを特徴とする請求項11のポンプ。
【請求項13】
前記圧力パルスは、前記視覚的指示器が閉塞を指示する前に開始され、また該視覚的指示器は、前記圧力パルスの後に、前記圧力変換器によって検知される圧力の減衰が続くならば、閉塞を指示しないことを特徴とする請求項12のポンプ。
【請求項14】
前記マイクロプロセッサは、前記気流が前記基準流速範囲内にあるコンプライアント実行時間の時間単位を記録及び蓄積するために、計時プログラムを含み、該コンプライアント実行時間は、医学的に有効な治療のために、適当な吸気が前記創傷へ与えられる時間を示すことを特徴とする請求項2のポンプ。
【請求項15】
前記計時プログラムはまた、前記記録された時間単位のレポートを供給するための時間レポートルーチンを有することを特徴とする請求項14のポンプ。
【請求項16】
前記レポートは、蓄積されたコンプライアント実行時間の記録を含むことを特徴とする請求項15のポンプ。
【請求項17】
吸気を創傷へ適用するシステムであって、
(a)創傷の周りの皮膚にシール可能な創傷カバーを含む創傷用包帯と、
(b)携帯式吸引ポンプとを含み、該ポンプは、
(i)前記ポンプ入口で吸引圧力設定値を保つために、前記ポンプを制御する圧力制御回路と、
(ii)導管を通る気流を測定する流速モニタと、該導管は、吸気を前記創傷と連通させるために、前記創傷用包帯と作動的に連結される一端と、前記吸引ポンプと作動的に連結される対向端とを有することと、前記流速モニタは、前記気流が基準流速より低く、基準流速と略同じで、或いは基準流速よりも高いかを検知することと、
(iii)前記測定された気流が前記基準流速よりも低い時に閉塞を、該測定された気流が該基準流速と略同じである時に正常作動を、該測定された気流が該基準気流よりも高い時に漏れを指示する視覚的指示器と、
(iv)前記創傷から吸引された液体を収集するために、該創傷及び前記ポンプの間の前記導管に配置される屑収集容器と、
(v)前記容器を支持するドッキングステーションとを含み、該ドッキングステーションは、該容器の接続用結合金具を受入れるように適応させられる解放可能なラッチ結合金具を有することと
を特徴とするシステム。
【請求項18】
前記容器内の屑レベルが、満杯容器状態を指示するレベルを超えた時を検知するために、前記容器のドッキングステーションに隣接して、前記ポンプにセンサを更に含むことを特徴とする請求項17のシステム。
【請求項19】
前記センサは、キャパシタンス検知器であることを特徴とする請求項18のシステム。
【請求項20】
マイクロプロセッサを有する前記ポンプを更に含み、また前記センサは、前記容器に収集された屑のレベルを表す信号を、該マイクロプロセッサに供給し、また該マイクロプロセッサは、前記容器の内部で揺れ動く液体によって生じさせられる満杯容器の誤指示の可能性を低減させるために、該信号に適用させられるアルゴリズムを含むことを特徴とする請求項18のシステム。
【請求項21】
前記解放可能なラッチ結合金具及び前記ポンプからの空気吐出ポートの間に載置されるチャコール空気フィルタを有するポンプを更に含むことを特徴とする請求項20のシステム。
【請求項22】
前記ポンプの背圧を増加させるために、前記解放可能なラッチ結合金具及び該ポンプからの空気吐出ポートの間に載置される板ばね式消音装置を有するポンプを更に含むことを特徴とする請求項20のシステム。
【請求項23】
吸気を創傷へ適用するシステムにおいて、負圧を生じさせる携帯式吸引ポンプであって、
(a)前記ポンプの入口圧力を、予め選択された圧力付近の上限値及び下限値の間に維持するために、該ポンプの作動を制御する圧力制御回路と、
(b)前記ポンプを通る気流速度を測定すると共に、該気流が基準流速範囲よりも低いか、該基準流速範囲内にあるか、或いは該基準流速範囲よりも高いかを判定することにより、前記創傷に適用された負圧レベルのずれを検知する故障検知システムとを含み、該故障検知システムは、前記圧力制御回路から独立して作動すること
からなる携帯式吸引ポンプ。
【請求項24】
前記気流速度の状態を指示するために、図形視覚的指示器を更に含むことを特徴とする請求項23の携帯式吸引ポンプ。
【請求項25】
前記視覚的指示器は、第1色によって閉塞を、第2色によって正常作動を、また第3色によって漏れを指示する色付け表示器を含むことを特徴とする請求項24の携帯式吸引ポンプ。
【請求項26】
前記圧力制御装置は、前記故障検知システムが前記基準流速範囲よりも低い流速を検知した時に、予め選択された圧力よりも大きい吸引圧力を供給することを特徴とする請求項23の携帯式吸引ポンプ。
【請求項27】
前記ポンプは視覚的閉塞指示器を有し、また前記マイクロプロセッサは、圧力パルスが該閉塞指示器の点灯に先立ち開始されるように、プログラムされており、また該閉塞指示器は、該圧力パルスの後に、前記ポンプ吸引圧力の減衰が続くならば、点灯しないことを特徴とする請求項30の携帯式吸引ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−504805(P2010−504805A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530327(P2009−530327)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/000984
【国際公開番号】WO2008/039223
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(508248003)ボリンジャー・テクノロジーズ・エル・ピー (7)
【Fターム(参考)】