説明

負荷制御装置

【課題】常用運転モードから試験運転モードへの切り換えを、使用者が手動により操作する切換装置を不要とした構成にて実現する。
【解決手段】負荷制御装置1の切換回路26は、回路遮断器7の開閉を検出し、その回路遮断器7が閉路状態にあるときには多機能型保護リレー装置5に主回路3から常用電源を与え、回路遮断器7が開路状態にあるときには多機能型保護リレー装置5に試験用電源を与えるように切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に対する電力の供給、遮断、保護、監視などの制御機能を備えた負荷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コントロールセンタとして用いられる閉鎖配電盤に格納される負荷制御装置(単位装置)においては、マイクロコンピュータを応用することにより、負荷(例えば、電動機)に対する電力の供給、遮断、保護、監視などの多数の制御機能を備えたものが供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−105452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような負荷制御装置を備えた閉鎖配電盤においては、負荷制御装置が有する機能を試験する場合がある。このような試験は、例えば、閉鎖配電盤の製造時や、設置した閉鎖配電盤の保守点検時に行われる。
【0005】
ところで、近年では、上記のような試験を負荷制御装置を閉鎖配電盤から引き出すことなく行うことが要求されている。負荷制御装置を引き出すことなく試験を実現可能とするためには、常用運転モードから試験運転モードへ移行するための切換装置が必要となる。ここで、このような切換装置を備えた構成について図4,図5を参照して説明する。図4は、切換装置を備えた負荷制御装置の外観構成を概略的に示す斜視図である。図5は、切換装置を備えた負荷制御装置の回路構成を概略的に示す図である。
【0006】
図4に示すように、負荷制御装置101は、回路遮断器102(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)、電磁接触器103(コンタクタ)、多機能型保護リレー装置104(モータマルチリレー)、そして、切換装置105(COS:Change Over Switch)を備えている。なお、閉鎖配電盤に格納された負荷制御装置101の前面は、収納扉106によって覆われるようになっている。
【0007】
図5に示すように、回路遮断器102は、主接点102aおよび補助接点102bを有し、主接点102aは、負荷である電動機107に商用電源からの交流電力を供給する主回路108に設けられ、主回路電流の大きさに応じて遮断動作(主接点102aが開、補助接点102bが閉)するようになっている。また、この回路遮断器102は、操作ダイアル102c(図4参照)を備えており、使用者が当該操作ダイアル102cを手動操作することによって、主接点102aを開閉し、補助接点102bを閉開可能に構成されている。
【0008】
多機能型保護リレー装置104は、主回路108から変圧器109を介して常用電源が与えられるようになっている。この多機能型保護リレー装置104は、電動機107に対する電力の供給、遮断、保護、監視などの多数の制御機能を備えており、始動・停止スイッチ104aが操作されると、電動機107の駆動を制御するようになっている。
【0009】
電磁接触器103は、多機能型保護リレー装置104による制御コイル103aの通断電に応じて主回路108を開閉するように制御されるスイッチ103bを有している。
切換装置105は、主スイッチ105aおよび補助スイッチ105bを有し、主スイッチ105aは、多機能型保護リレー装置104に試験用電源を供給する試験用電源回路110に設けられている。この切換装置105は、操作ダイアル105c(図4参照)を備えており、使用者が当該操作ダイアル105cを手動操作することによって、主スイッチ105aを開閉し、補助スイッチ105bを閉開可能に構成されている。
【0010】
回路遮断器102の操作ダイアル102cが「OFF」側に操作されて、主接点102aが開路し補助接点102bが閉路している状態において、使用者が操作ダイアル105cを試験用電源側に切り換えると、切換装置105の主スイッチ105aがオンして、試験用電源回路110を閉路する。また、回路遮断器102の主接点102aが開かれると、主回路108が開路する。これにより、主回路108から電動機107への交流電力の供給、および、主回路108から多機能型保護リレー装置104への常用電源の供給が遮断されるとともに、試験用電源回路110から多機能型保護リレー装置104に試験用電源が供給されるようになっている。
【0011】
以上の動作により、負荷制御装置101は、主回路108から電動機107に交流電力が供給され多機能型保護リレー装置104に常用電源が供給される常用運転モードから、主回路108から電動機107への交流電力の供給が遮断され多機能型保護リレー装置104に試験用電源が供給される試験運転モードに切り換えられ、多機能型保護リレー装置104が有する機能の試験を行うことができる状態となる。
【0012】
なお、負荷制御装置101は、切換装置105が試験用電源側に切り換えられて試験用電源回路110を閉路すると、補助スイッチ105bが開かれるようになっている。これにより、試験用電源回路110からの試験用電源が変圧器109を介して電動機107に供給されてしまうこと(逆誘起)が防止されるようになっている。
【0013】
上述した構成の負荷制御装置101によれば、使用者は、切換装置105を介して試験運転モードに切り換えることで、多機能型保護リレー装置104の機能試験を行うことができる。しかしながら、このような切換装置105を備えた構成では、当該切換装置105の設置スペースを確保しなければならないことから、負荷制御装置101の大型化(サイズアップ)、ひいては、閉鎖配電盤の大型化、閉鎖配電盤の設置スペースの増大を招いてしまう。また、特に図4に示すように、使用者が手動により操作する切換装置105を備えた構成では、閉鎖配電盤に格納された負荷制御装置101の前面を覆う収納扉106に、切換装置105用の開口106aを設けなければならず、このような加工が手間である。
【0014】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、常用運転モードから試験運転モードへの切り換えを、使用者が手動により操作する切換装置を不要とした構成にて実現することができる負荷制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の負荷制御装置は、負荷に交流電力を供給する主回路と、この主回路に主回路電流の大きさに応じて遮断動作するように設けられ、手動操作により開閉可能な回路遮断器と、前記主回路から常用電源が与えられることにより前記負荷を制御する負荷制御手段と、前記回路遮断器の開閉を検出し、その回路遮断器が閉路状態にあるときには前記負荷制御手段に前記主回路から常用電源を与え、前記回路遮断器が開路状態にあるときには前記負荷制御手段に試験用電源を与えるように切り換える切換手段とを具備してなることに特徴を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の負荷制御装置によれば、切換手段は、回路遮断器の開閉を検出し、その回路遮断器が閉路状態にあるときには負荷制御手段に主回路から常用電源を与え、回路遮断器が開路状態にあるときには負荷制御手段に試験用電源を与えるように切り換える。これにより、使用者が手動により操作する切換装置を不要とした構成にて、常用運転と試験運転とを切り換えることができ、常用運転モードから試験運転モードへの切り換えを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、負荷制御装置の回路構成を概略的に示す図
【図2】閉鎖配電盤の外観構成を概略的に示す斜視図
【図3】1ユニットを概略的に示す拡大斜視図
【図4】従来の負荷制御装置の外観構成を概略的に示す拡大斜視図
【図5】従来の負荷制御装置の回路構成を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図1ないし図3を参照しながら説明する。
図1は、コントロールセンタとして用いられる閉鎖配電盤に格納された負荷制御装置の1ユニット分(1単位装置分)の回路構成を概略的に示す図である。図2は、負荷制御装置が格納される閉鎖配電盤の外観構成を概略的に示す斜視図である。図3は、負荷制御装置の1ユニット分の外観構成を概略的に示す拡大斜視図である。
【0019】
図2に示すように、閉鎖配電盤は、ユニットごとに個別化された複数の負荷制御装置1を縦方向に順に収容しており、各負荷制御装置1は、それぞれに接続された電動機2(負荷の一実施例、図1参照)に対する電力の供給、遮断、保護、監視などの制御を行うようになっている。
【0020】
図1に示すように、負荷制御装置1は、主回路3と、補助回路4と、多機能型保護リレー装置5(負荷制御手段の一実施例、モータマルチリレー)とから構成されている。
主回路3は、R相,S相,T相からなる三相の交流の商用電源6と、負荷である電動機2との間に設けられている。主回路3は、電動機2に商用電源6からの交流電力を供給するとともに、多機能型保護リレー装置5に常用電源を供給するものである。この主回路3には、回路遮断器7(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)の主接点7a、電磁接触器8(コンタクタ)の主スイッチ8a、変流器9、および、零相変流器10が設けられている。変流器9は、主回路3に流れる電流(主回路電流)を検出する。零相変流器10は、主回路3の零相電流(地絡電流)を検出する。
【0021】
回路遮断器7は、主回路3に、主回路電流の大きさに応じて遮断動作(主接点7aが開、後述する補助接点7bが閉)するように設けられている。また、この回路遮断器7は、操作ダイアル7c(図3参照)を備えており、使用者が当該操作ダイアル7cを手動操作することによって、主接点7aを開閉させるようになっている。なお、回路遮断器7は、主接点7aの開閉に連動して閉開する補助接点7bを有する。
【0022】
主回路3において回路遮断器7の主接点7aの負荷側(主回路3の下流側)の何れか2相間には、降圧変圧器11の一次側巻線11aが接続されている。この降圧変圧器11は、2系統の二次側巻線11b,11cを備えている。このうち、1系統の二次側巻線11bは、制御電源線12,13を介して、多機能型保護リレー装置5の直流電源回路5aに接続され、当該多機能型保護リレー装置5の駆動電源を生成するために用いられる。他の1系統の二次側巻線11cは、常用電源線14,15を介して、補助回路4の動作に用いられる。なお、直流電源回路5aには、ケーブル16,17を介して供給される試験用電源18の試験用制御電源線12´,13´が接続されている。このケーブル16,17は、多機能型保護リレー装置5の通信ケーブル(例えば、プログラム書き込み,書き換え用の通信ケーブル)として機能するとともに、試験用電源を多機能型保護リレー装置5に供給するための試験用電源線14´,15´にも接続されている。
【0023】
多機能型保護リレー装置5には、切換回路26(切換手段の一実施例)が設けられている。この切換回路26は、切換スイッチ26aを有し、その一方の固定接点aは、常用電源線14に接続され、他方の固定接点bは、安全スイッチ29を介して試験用電源線14´に接続され、可動接点cは、電源線30に接続されている。なお、常用電源線15および試験用電源線15´は、共通に接続されている。
【0024】
従って、切換回路26は、切換スイッチ26aによって、電源線30を常用電源線14側に接続した状態と、電源線30を試験用電源線14´側に接続した状態(図1に示す状態)とに切り換わるようになっている。
【0025】
多機能型保護リレー装置5の端子25と、常用電源線15および試験用電源線15´の共通接続点との間には、切換回路26の開閉入力回路26bが接続されており、電源線30と端子25との間には回路遮断器7の補助接点7bが接続されている。切換回路26は、この開閉入力回路26bによって回路遮断器7(補助接点7b)の開閉を検出し、その開閉状態に応じて切換スイッチ26aを切り換えるようになっている。即ち、切換回路26は、回路遮断器7が閉路状態(主接点7aが閉、補助接点7bが開の状態)にあるときには、切換スイッチ26aを常用電源線14側(接点c−aオン)に切り換え、回路遮断器7が開路状態(主接点7aが開、補助接点7bが閉の状態)にあるときには、切換スイッチ26aを試験用電源線14´側(接点c−bオン)に切り換えるようになっている。
【0026】
切換回路26の安全スイッチ29は、使用者の手動操作によって閉成する常開型スイッチである。従って、多機能型保護リレー装置5への試験用電源18の供給は、安全スイッチ29が操作されて閉成した場合に可能となるようになっている。なお、この安全スイッチ29は、多機能型保護リレー装置5が備える既存のスイッチを兼用して設けることができる。
【0027】
補助回路4において、電源線30と多機能型保護リレー装置5の端子19との間には、電磁接触器8の制御コイル8bが接続されている。電源線30と多機能型保護リレー装置5の端子20との間には、電磁接触器8の補助スイッチ8cが接続されている。主スイッチ8aおよび補助スイッチ8cは、制御コイル8bへの通電に応じて閉成する常開型スイッチである。補助スイッチ8cは、多機能型保護リレー装置5に対し、電磁接触器8の主スイッチ8aの開閉状態を確認するためのアンサーバック信号を出力する。
【0028】
電源線30と多機能型保護リレー装置5の端子21との間には、始動スイッチ22が接続されている。始動スイッチ22は、使用者の手動操作によって閉成する常開型スイッチである。電源線30と多機能型保護リレー装置5の端子23との間には、停止スイッチ24が接続されている。停止スイッチ24は、使用者の手動操作によって開成する常閉型スイッチである。
【0029】
多機能型保護リレー装置5は、マイクロコンピュータを中心としてROM,RAMなどを備えて構成されており、図示しない書き換え可能な不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)に記憶された負荷制御プログラムに基づいて、電動機2への通断電(始動/停止)、保護、監視などの処理(常用運転モード)を行うようになっている。また、多機能型保護リレー装置5は、不揮発性メモリに記憶された試験運転プログラムに基づいて、後述する試験運転モードを実行可能に構成されている。
【0030】
また、多機能型保護リレー装置5は、判定回路27を備えている。この判定回路27は、試験運転中に回路遮断器7の主接点7aが閉成されて補助接点7bが開放されると、電磁接触器8の制御コイル8bを断電するようになっている。なお、この判定回路27は、変流器9の出力信号に基づいて、電動機2の過電流を検出する過電流判定回路としての機能や、零相変流器10の出力信号に基づいて、電動機2の漏電を検出する漏電判定回路としての機能を備えている。
【0031】
また、多機能型保護リレー装置5は、変流器9および零相変流器10の各出力信号をA/D変換して出力する電流検出回路(図示せず)、制御コイル8bなどの通電状態、種々の接点の開閉状態、負荷制御状態などを入力する入力回路(図示せず)、制御コイル8bなどの通電状態や種々の接点の開閉状態などを変更するための信号を出力する出力回路(図示せず)などを備えている。なお、負荷制御状態とは、電動機2の運転状態(例えば、電動機2の始動・停止、回転速度、加減速などの状態)、当該運転状態を作り出すための負荷制御装置1内の制御コイル8bなどの励磁状態、種々の接点の開閉状態などをいう。
【0032】
なお、図3に示すように、閉鎖配電盤の各ユニット室の前面開口部には、これを開閉する収納扉28が設けられている。この収納扉28には、回路遮断器7の操作ダイアル7cを外部から操作可能に開口28aが形成されている。また、収納扉28には、多機能型保護リレー装置5の前面の操作表示部を外部に露呈させるための開口28bが形成されている。
【0033】
次に、負荷制御装置1の動作について説明する。
まず、常用運転時における負荷制御装置1の動作(常用運転モードにおける動作)について説明する。
常用運転時では、回路遮断器7の主接点7aは閉成される。また、主接点7aが閉成されたことに応じて、補助接点7bは開成される。従って、切換回路26は、切換スイッチ26aを常用電源線14側(接点c−aオン)に切り換える。
【0034】
この状態で、使用者が多機能型保護リレー装置5の始動スイッチ22を操作すると、多機能型保護リレー装置5は、電磁接触器8の制御コイル8bに通電して励磁させる。これにより、電磁接触器8の主スイッチ8aが閉成され、商用電源6からの交流電力が主回路3から電動機2に供給されて当該電動機2が始動する。また、商用電源6からの交流電力が、主回路3から降圧変圧器11を経て常用電源として多機能型保護リレー装置5に与えられ、多機能型保護リレー装置5は、電動機2の駆動を制御する。
【0035】
なお、このとき、電磁接触器8の主スイッチ8aの閉成に応じて補助スイッチ8cが閉成され、多機能型保護リレー装置5にアンサーバック信号が与えられ、補助回路4に自己保持回路が形成されるようになっている。これにより、始動スイッチ22がオフ状態に戻されても商用電源6から電動機2に電力が供給され続ける。
【0036】
一方、使用者が多機能型保護リレー装置5の停止スイッチ24を操作すると、補助回路4に形成された自己保持回路が解除される。これにより、電磁接触器8の主スイッチ8aが開成され、商用電源6から電動機2への電力の供給が遮断され、電動機2が停止する。
【0037】
次に、試験運転時における負荷制御装置1の動作(試験運転モードにおける動作)について説明する。なお、この試験運転は、負荷制御装置1を閉鎖配電盤から引き出すことなく行われる。
【0038】
試験運転時では、使用者が回路遮断器7の操作ダイアル7cを手動操作することによって主接点7aが開成される。これにより、商用電源6から電動機2への交流電力の供給が遮断される。また、主接点7aが開成されたことに応じて、補助接点7bは閉成される。従って、切換回路26は、切換スイッチ26aを試験用電源線14´側(接点c−bオン)に切り換える。これにより、商用電源6から降圧変圧器11を経て多機能型保護リレー装置5への常用電源の供給が遮断される。さらに、使用者が安全スイッチ29を操作すると、試験用電源線14´,15´を介して、多機能型保護リレー装置5に試験用電源が供給される。なお、多機能型保護リレー装置5は、切換スイッチ26aを試験用電源線14´側(接点c−bオン)に切り換えた状態では、試験用制御電源線12´,13´を介して、試験用電源を直流電源回路5aに供給するようになっている。
【0039】
この状態で、使用者が多機能型保護リレー装置5の始動スイッチ22を操作すると、多機能型保護リレー装置5は、電磁接触器8の制御コイル8bに通電して励磁させ、主スイッチ8aを閉成させる。使用者は、始動スイッチ22を操作したことに応じて電磁接触器8の主スイッチ8aが閉成されたか否かを確認することで、電磁接触器8の動作試験を行うことができる。なお、この試験運転モードでは、商用電源6から電動機2への交流電力の供給が遮断されていることから、電磁接触器8の主スイッチ8aが閉成されたとしても、電動機2は始動しない。また、このとき、補助回路4に自己保持回路が形成される。これにより、使用者が停止スイッチ24を操作しない限り、上述した試験運転の状態(電磁接触器8の制御コイル8bが励磁されて主スイッチ8aが閉成された状態)が維持される。
【0040】
一方、使用者が多機能型保護リレー装置5の停止スイッチ24を操作すると、補助回路4に形成された自己保持回路が解除される。これにより、電磁接触器8の制御コイル8bの励磁が解除され、主スイッチ8aが開成される。使用者は、停止スイッチ24を操作したことに応じて電磁接触器8の主スイッチ8aが開成されたか否かを確認することで、電磁接触器8の動作試験を行うことができる。
【0041】
次に、上述した試験運転中に誤って回路遮断器7の主接点7aが閉成された場合における負荷制御装置1の動作について説明する。
多機能型保護リレー装置5の判定回路27は、開閉入力回路26bを介して、試験運転中における回路遮断器7の開閉状態(主接点7aおよび補助接点7bの開閉状態)を監視するようになっている。そして、試験運転中に回路遮断器7の主接点7aが閉成されると、判定回路27は、主回路3を開路するように電磁接触器8の主スイッチ8aを制御するようになっている。即ち、多機能型保護リレー装置5の判定回路27は、試験運転中に回路遮断器7の主接点7aの閉成を検知すると、電磁接触器8の制御コイル8bへの通電を直ちに遮断して励磁状態を解除し、主スイッチ8aを開成させる。これにより、主回路3が開路されるようになっている。
【0042】
以上に説明したように本実施形態によれば、切換回路26は、開閉入力回路26bを介して回路遮断器7の開閉を検出し、その回路遮断器7が閉路状態にあるときには多機能型保護リレー装置5に主回路3から常用電源を与えるように切換スイッチ26aを切り換え、回路遮断器7が開路状態にあるときには多機能型保護リレー装置5に試験用電源を与えるように切換スイッチ26aを切り換える。これにより、使用者が手動により操作する従来構成の切換装置(図4,図5参照)を不要とした構成にて、常用運転と試験運転とを切り換えることができ、常用運転モードから試験運転モードへの切り換えを実現することができる。
【0043】
また、従来構成の切換装置を不要としたので、当該切換装置の設置スペースを確保する必要がなく、負荷制御装置1の大型化(サイズアップ)、ひいては、閉鎖配電盤の大型化、閉鎖配電盤の設置スペースの増大を抑えることができる。
【0044】
また、閉鎖配電盤に格納された負荷制御装置1の前面を覆う収納扉28(図2,図3参照)に、切換装置用の開口を設ける必要がなく、このような開口を設けるための加工の手間を省くことができる。また、切換装置のための配線作業の負担を省くことができる。
【0045】
また、負荷制御装置1は、切換回路26による多機能型保護リレー装置5への試験用電源の供給を可能とする安全スイッチ29を備えた。これにより、使用者の意思(試験運転モードを実行しようとして安全スイッチ29を操作したこと)を確認した上で試験運転モードを実行することができ、安全に試験運転モードに移行(切換)することができる。
【0046】
また、試験運転モードに移行した後に、安全スイッチ29が操作されたことに応じて、試験運転が自動的に実行されるので、試験時間の短縮を図ることができる。
また、多機能型保護リレー装置5は、切換回路26が当該多機能型保護リレー装置5に対して試験用電源を供給するように切り換えている状態で、回路遮断器7が閉路された場合には、主回路3を開路するように電磁接触器8(主スイッチ8a)を制御する。これにより、試験運転中に誤って回路遮断器7が閉成され、主回路3から電動機2に交流電力が供給される状態になったとしても、多機能型保護リレー装置5が電磁接触器8(主スイッチ8a)によって主回路3を瞬時に遮断するので、電動機2が不要に動作してしまうことを防止でき、作業者の安全を確保することができる。
【0047】
また、試験用電源を、通信ケーブルとして機能するケーブル16,17を利用して多機能型保護リレー装置5や直流電源回路5aに供給するようにしたので、従来構成の試験用電源回路110や補助スイッチ105b、これらに付随する配線などを不要とすることができ、構成の簡素化を図ることができる。
【0048】
なお、本発明は、上述の一実施形態にのみ限定されるものではなく、例えば次のように変形または拡張することができる。
多機能型保護リレー装置5の試験対象となる機能は、上述の一実施形態に示した電磁接触器8の試験に限られるものではなく、例えば、変流器9の検出値に基づき過電流を判定する過電流判定回路の動作試験、零相変流器10の検出値に基づき漏電を判定する漏電判定回路の動作試験、異常を報知する警報器の動作試験なども行うことができる。
【0049】
不揮発性メモリに記憶された試験運転プログラムの内容を適宜変更(書き換え)することによって、様々な試験を行うことができる。
負荷としては、電動機2(モータ)に限られるものではなく、例えば電磁ソレノイドなどであってもよい。
安全スイッチ29は、多機能型保護リレー装置5が備える既存のスイッチを兼用して設けてもよいし、新たなスイッチとして設けてもよい。
【符号の説明】
【0050】
図面中、1は負荷制御装置、2は電動機(負荷)、3は主回路、5は多機能型保護リレー装置(負荷制御手段)、7は回路遮断器、8は電磁接触器、26は切換回路(切換手段)、29は安全スイッチを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に交流電力を供給する主回路と、
この主回路に主回路電流の大きさに応じて遮断動作するように設けられ、手動操作により開閉可能な回路遮断器と、
前記主回路から常用電源が与えられることにより前記負荷を制御する負荷制御手段と、
前記回路遮断器の開閉を検出し、その回路遮断器が閉路状態にあるときには前記負荷制御手段に前記主回路から常用電源を与え、前記回路遮断器が開路状態にあるときには前記負荷制御手段に試験用電源を与えるように切り換える切換手段とを具備してなる負荷制御装置。
【請求項2】
前記切換手段による前記負荷制御手段への試験用電源の供給を可能とする安全スイッチを備えたことを特徴とする請求項1記載の負荷制御装置。
【請求項3】
前記負荷制御手段によって、前記主回路を開閉するように制御される電磁接触器を備え、
前記負荷制御手段は、
前記切換手段が前記負荷制御手段に対して前記試験用電源を供給するように切り換えている状態で、前記回路遮断器が閉路された場合には、前記主回路を開路するように前記電磁接触器を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の負荷制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−61892(P2011−61892A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205821(P2009−205821)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(500414800)東芝産業機器製造株式会社 (137)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】