説明

貨幣処理機

【課題】レジの精算処理の簡素化を可能にする貨幣処理機を提供する。
【解決手段】貨幣処理機は、投入された貨幣を金種毎に振り分けて計数し、金種毎に設けられた収納庫もしくは混合金種の収納庫に収納し、上位制御部からの出金指示に基づいて金種および枚数を決定して前記収納庫から釣銭を出金するものである。ここでは、貨幣の収納枚数データを記憶する第1のメモリ13a、収納庫に残置すべき貨幣の金額を指示する操作キー14a、この操作キー14aで指示された貨幣金額に基づいて金種毎の収納庫に残置すべき貨幣枚数を記憶する第2のメモリ13b、および第1、第2のメモリ13a,13bに記憶されたデータを比較し、比較結果に基づいて金種毎の収納庫から貨幣の回収枚数を決定する演算部15を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投入された貨幣を収納庫に収納し、上位制御部からの出金指示に基づいて金種および枚数を決定して収納庫から釣銭を出金する貨幣処理機に関し、とくに能率の良い貨幣回収が可能な貨幣処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット等のPOS(Point Of Sales)レジスタには、預かり金の入金、釣銭の出金等を行うための貨幣処理機が接続されている。このような貨幣処理機では、従来、投入された紙幣や硬貨(以下、貨幣という。)を収納するとともに、その真偽を判別して金種毎の在高を計数し、釣銭として余分な準備金をなくすことで、レジ担当者の負担を軽減することも提案されている。
【0003】
一般に貨幣処理機には、収納されている貨幣を回収する回収機能が備わっており、上位機(POSレジスタ等)からの指示、または貨幣処理機に設けられた操作表示部からの指示により、回収動作が実行される。この回収動作によって翌日等の次回の使用に備えるために、一日の営業終了時等のPOSレジスタ使用後において、貨幣処理機に釣銭準備金相当額等の所定額を自動的に残置することができる。
【0004】
このような貨幣の回収動作には、貨幣処理機から回収したい金種毎に貨幣の回収枚数を指示する方法だけでなく、収納庫に残す釣銭金額(残置金額)または釣銭枚数(残置枚数)を予め設定しておき、貨幣在高と残置金額との差、あるいは現在収納枚数と残置枚数との差を指示して回収し、釣銭を定額だけ残置する方法がある。
【0005】
ところで、営業終了時に貨幣処理機に収納されている金種別の貨幣の枚数は、日によってまちまちとなるから、金種によっては釣銭を所定額だけ残置することができない場合が生じる。そこで、残置する金額と、残置枚数に関する金種の優先順位を予め設定しておいて、所定のアルゴリズムにしたがって残置する金種およびその枚数を自動的に計算し、この計算結果にしたがって回収処理が自動的に行われる貨幣入出金機の定額残置回収装置が考えられている(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−213213号公報(段落番号[0017]〜[0106])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、釣銭準備金としての残置金額を設定し、その差額を回収する方法(金額残置回収)では、実際に回収動作を実行してみないと釣銭として残される金種および枚数の構成がわからないだけでなく、収納されている低額貨幣が少ない場合等には、釣銭準備金として過不足のない金額を収納庫に残せない場合も生じる。そのような場合、会計担当者にその理由を通知するようにしておけば、それに必要な金種の貨幣を補充して対処することができる。しかし、現状では金額残置回収を実行する際の金種および枚数構成、あるいは希望する釣銭を残置するために必要な金種とその補充枚数については、会計担当者が自ら予想を立てて試行錯誤しながら判断する必要があった。
【0007】
また、残置枚数を設定して回収する方法(枚数残置回収)では、残置枚数の目標値が小さく設定されていれば、不足金種の発生する確率を減少させることができる。しかし、残置枚数が少なければ営業時間中に釣銭が不足して、出金できなくなり運用が中断してしまうおそれがあった。また、反対に残置枚数を大きく設定した場合、釣銭の不足が生じにくくなる反面、収納庫の容積を大きくしなければならず、貨幣処理機の設置スペースが必要になるだけでなく、レジ運用資金が不必要に大きくなるという不都合も生じていた。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、レジの精算処理の簡素化を可能にする貨幣処理機を提供することを目的とする。
また、本発明の別の目的は、残置枚数を予め定めた許容範囲内に収めるとともに、残置金額を予め定めた値に一致させるようにした貨幣処理機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記問題を解決するために、投入された貨幣を金種毎に振り分けて計数し、前記金種毎に設けられた収納庫もしくは混合金種の収納庫に収納し、上位制御部からの出金指示に基づいて金種および枚数を決定して前記収納庫から釣銭を出金する貨幣処理機において、前記貨幣の収納枚数データを記憶する第1のメモリと、前記収納庫に残置すべき貨幣の金額を指示する操作部と、前記操作部で指示された貨幣金額に基づいて前記金種毎の収納庫に残置すべき貨幣枚数を記憶する第2のメモリと、前記第1、第2のメモリに記憶されたデータを比較し、比較結果に基づいて前記金種毎の収納庫から貨幣の回収枚数を決定する演算部と、を備えることを特徴とする貨幣処理機が提供される。
【0010】
残置回収を実行する準備段階で、第1のメモリに記憶された貨幣の収納枚数データと、操作部で指示された残置すべき貨幣金額に基づいて、金種毎の残置枚数データが演算部で演算され、さらに第2のメモリに記憶されるとともに金種毎の回収枚数が決定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の貨幣処理機によれば、実際の残置回収指示を行う前に結果の予測および是正方法が把握できるので操作のやり直しや、手計算等をレジ担当者または管理者が行う必要が無くなり、レジ業務の簡素化が可能となる。
【0012】
また、貨幣処理機に収納された貨幣がどのような在高枚数であっても、残置枚数を予め定めた許容範囲内に収め、且つ、残置金額を予め定めた値に一致させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態に係る貨幣処理機の制御機構を示すブロック図である。
貨幣処理機は、通常、上位通信部11を介してPOSレジ等の上位制御部(図示せず)に接続されている。入出金計数部12は、メモリ部13と接続され、投入された貨幣を金種毎に振り分けて計数して、それらを金種毎に設けられた収納庫もしくは混合金種の収納庫に収納するとともに、収納庫からの釣銭等の出金動作を制御するものである。メモリ部13には、さらに操作・表示部14および演算部15が接続されている。
【0014】
メモリ部13は、後述するように、貨幣の収納枚数データを記憶する第1のメモリ13aと、操作・表示部14で指示された貨幣金額に基づいて金種毎の収納庫に残置すべき貨幣枚数を記憶する第2のメモリ13bと、仮収納枚数を記憶する第3のメモリ13cとから構成されている。この第1のメモリ13aでは、上位制御部からの出金指示データを記憶し、それに基づいて入出金計数部12に対して金種および枚数を指示し、さらに実際に入出金処理された貨幣データを記憶している。
【0015】
操作・表示部14は、収納庫から回収すべき貨幣の金額等を指示する操作キー14aと、指示された貨幣データを表示する表示パネル14b等が設けられており、メモリ部13との間でデータを授受するように構成されている。また、演算部15には、残置回収論理機能を構成する論理部16が接続されている。論理部16には、たとえば「釣銭枚数を各金種で同一とする」、「不足金種を低額の金種で補填する」等、残置回収の際の演算論理が格納され、演算部15では、こうした論理部16の残置回収論理機能を用いて、メモリ部13の3つのメモリ13a〜13cに記憶されたデータを比較し、比較結果に基づいて収納庫から金種毎の貨幣の回収枚数を決定している。
【0016】
つぎに、貨幣処理機の金銭処理動作について説明する。
(金銭処理動作)
商品コードのスキャン等によって、お客様の買上げ品の登録がすべて終了すると、POSレジではその合計額が計算され、それがPOSレジの表示部に表示される。通常、レジ担当者は表示された合計額を読み上げ、お客様からは買上げ品の合計額以上の貨幣が預かり金としてレジ担当者に渡される。
【0017】
レジ担当者は、預かり金の金額を読み上げるとともに、その金額をPOSレジの入力部から入力する。POSレジでは、預かり金の入力額から買上げ品の合計額の差額が釣銭金額として計算され、上述した図1の貨幣処理機に釣銭金額データとして通知される。
【0018】
貨幣処理機では、受け取った釣銭金額データにしたがって、その必要金種と枚数が計算され、対応する貨幣が出金される。レジ担当者は、POSレジで発行されたレシート、および貨幣処理機から出金された釣銭貨幣(紙幣や硬貨等)をお客様に渡す。その後、お客様が受け取った釣銭貨幣に納得してレジを離れた時点で、貨幣処理機に預かり金を入金する。このとき、貨幣処理機の入出金計数部12では、入金された紙幣および硬貨の枚数を計数して、第1のメモリ13aが記憶している収納庫の収納枚数データに加算するとともに、出金された紙幣および硬貨の枚数を収納枚数データから減算する。
【0019】
以上が釣銭先払出し方式によるレジでの貨幣の受け渡しにともなう貨幣処理機の金銭処理動作である。こうした方式とは別に、貨幣処理機に預かり金の紙幣および硬貨を投入して、その金額を計数させることによって、預かり金の機械計数額と買上げ品の合計額との差額として釣銭金額を算出し、釣銭貨幣を出金する先入金計数方式もある。
【0020】
つぎに、上述した貨幣処理機における金銭回収動作について説明する。
(金銭回収動作)
金銭回収方式には、指定金種毎にその枚数を指定して貨幣処理機から回収する即値指示回収、貨幣処理機に収納された売上金額(余剰金)を指定して回収する残値回収等がある。
【0021】
このうち、即値指示回収方式は、ある特定金種が貨幣処理機の収納容量を超えた場合、あるいは両替用に元金が必要な場合等、図1の操作・表示部14によって金種とその枚数を指定し、入出金計数部12に必要なデータを供給することで収納庫から貨幣を回収するものである。一方、売上金だけを回収する残値回収方式は、貨幣処理機の使用開始時の在高からレジ取引を通じて増加した金額を回収する方式であって、(売上金額−運用開始時の収納金額(または金種毎の枚数))として計算された余剰金を回収することができる。
【0022】
図2は、残置金額を指定する残値回収の演算手順を示す図である。
同図(a)に示す第1のメモリ13aは、操作・表示部14で設定された残置金額設定値(333,300円)とともに、現在の収納庫に収納された金種別貨幣の収納枚数データを記憶する現在収納枚数メモリである。同図(b)に示す第2のメモリ13bは、残置すべき金種別貨幣の残置枚数データを記憶する残置回収予定メモリである。
【0023】
残置回収を実行する準備段階で、予め上位通信部11を介して、あるいは操作・表示部14の操作キー14aによって残置金額設定データが入力され、メモリ部13の第1のメモリ13aに記憶される。つぎに、金種毎の残置枚数データが、指定された残置金額設定値と現在収納枚数メモリの収納枚数データから演算部15で演算される。この演算部15での演算は、論理部16の残置回収論理機能によって、たとえば金種毎に残置する枚数をほぼ同一にするように実行される。
【0024】
こうした演算の一例として、ここでは、釣銭として想定されていない2000円紙幣と1万円紙幣以外の各金種1枚の合計金額を求め、「残置金額設定値(333,300円)」÷「各金種1枚の合計金額(6,666円)」から残置枚数(50枚)を求めている。ここで、第1のメモリ13aの現在収納枚数と第2のメモリ13bの残置枚数とを比較すると、すべての金種で50枚を超えているので、残置枚数を各金種50枚とすることができる。すなわち、2000円紙幣と1万円紙幣以外の残置枚数はいずれも50枚となり、図2(c)に示すように、表示パネル14bに第1のメモリ13aの収納枚数データから第2のメモリ13bの残置枚数データを差し引いた回収予定枚数を表示できる。
【0025】
このように回収予定枚数を決定する残値回収方式では、金種毎に現時点での収納枚数が運用開始時の枚数を超過していれば、演算部15での残値回収演算は単純なものとなる。しかし実際には、釣銭として出金されることが多い小額金種は不足することが多く、高額金種は釣銭として出金されにくいため、その収納枚数は大きくなる。すなわち、収納金額が使用開始時を上回っていたとしても、残置回収を実行する際に、全金種について運用開始時の枚数を超過していることは稀である。
【0026】
そこで、実行不可となった不足する金種の貨幣を補充することで、是正された残置回収が必要になる。
(補充による是正方法)
図3は、金額残置回収が実行不可であった場合の是正された金額残置回収の演算手順を示す図である。
【0027】
同図(a)に示す第1のメモリ13aには、5千円紙幣の現在収納枚数が31枚となっているため、このままでは金額残置回収が実行できない。ここで、同図(b)の第2のメモリ13bに示すように、金種毎に残置する枚数が同一の50枚と演算された場合には、そのような残置回収を実行するために必要な是正方法として、図3(c)の表示パネル14cに補充すべき必要枚数が通知される。こうして、5千円紙幣を19枚補充すれば、すべての金種を50枚残した残置回収が可能となることを知らせることができる。
【0028】
ところで、補充のための5千円紙幣が19枚、常に用意できるとは限らないし、また実際に5千円紙幣は他の貨幣種類に比べて釣銭としてそれ程多く必要とはしない場合がある。そのような場合には、残置金額を設定された333,300円とするためには、過剰に収納された他の低額貨幣によって補填することが好ましい。
【0029】
(補填による是正方法)
図4は、残置金額を指定する残値回収の別の演算手順を示す図である。
ここでは、第1のメモリ13aの残置金額設定値(333,300円)に対して、現在収納枚数が100円硬貨47枚、5千円紙幣48枚となっている。すなわち、100円硬貨と5千円紙幣だけが50枚に満たない場合である。
【0030】
この場合に、演算部15での残置枚数データの演算は、論理部16の残置回収論理機能によって、指定された残置金額設定値に達しない不足金種について、より低額金種によって補填するという残置回収が実行される。
【0031】
図4(a)に示す第1のメモリ13aでは、収納枚数データとして50円硬貨(111枚)と千円紙幣(115枚)が50枚以上、余分に収納されていることが分かる。そこで、これらの金種によって不足している100円硬貨の3枚分(300円)と、5千円紙幣の2枚分(10000円)を補填すればよい。
【0032】
そこで、演算部15による残置枚数演算では、300円分を補填する50円硬貨が6枚増えて56枚、10000円分を補填する千円紙幣が10枚増えて60枚が第2のメモリ13bに格納される。したがって、図4(c)に示す表示パネル14bには、第1のメモリ13aの収納枚数データから第2のメモリ13bの残置枚数データを差し引いた回収予定枚数と合わせて残置枚数が表示されることになる。
【0033】
なお、この表示された回収予定数および残置枚数が、翌日の釣銭として想定されている必要枚数に合致していないと判断した場合には、不足している100円硬貨と5千円紙幣を補充すれば、図2の場合と同様の残置回収が可能になる。
【0034】
(他の回収方法)
以上、収納庫に残置すべき貨幣の残置総金額によって指示する金額残置回収について3つの例をあげて説明したが、回収すべき金種毎の金額によって指示する即値枚数指示回収であっても、その指示枚数に対して残置枚数を計算して、実際に残置される貨幣枚数の予測値を通知することもできる。
【0035】
図3に示すような回収不可の場合、枚数不足であるが他に「構成不可」等の理由を通知するようにすることも可能である。レアなケースではあるが、たとえば3,000円の残置設定に対して、5千円紙幣1枚しか収納されていない場合である。
【0036】
また、現在収納枚数を記憶する第1のメモリ13aとは別に、仮収納枚数を記憶する第3のメモリ13cを別に設けておき、実際に貨幣が収納されていなくても、仮収納枚数に基づいて貨幣の補充および回収動作をシミュレーションするようにしてもよい。
【0037】
つぎに、残置枚数に予め許容範囲を定めて、目標金額と残置金額を一致させる貨幣定額残置について説明する。
上述した貨幣処理機によって入出金を自動化した場合に、貨幣の入出金によって貨幣収納枚数や在高総金額が変動する。そして、たとえば毎日の営業終了後等の一定間隔で、予め定めた残置枚数の目標値からの超過分を回収している。こうした回収作業において、金種毎の在高枚数が残置枚数の目標値未満である額面(不足額面)については、その不足分を補充し、目標値を超える額面(過剰額面)については、その許容幅上限値以上を回収するようにしている。
【0038】
このような方法は、一般に不足額面が発生する都度、事務所等から補充分の貨幣を持参して、貨幣処理機に補充する作業が必要になるから、定額残置処理はその業務効率が低下するという問題があった。
【0039】
そこで、以下では運用中の貨幣処理機が如何なる在高枚数であっても、在高不足(釣銭不足)や在高過剰(入金不可)となりにくくするために、その残置枚数を予め設定された許容範囲内に収めるとともに、残置金額を予め定めた目標金額と一致させるようにした定額残置処理について説明する。なお、こうした定額残置処理、および処理結果の出力機能を具備した貨幣処理機は、図1に示すものと同様の構成で実現できる。
【0040】
図5は、実施の形態の貨幣処理機における貨幣定額残置処理の手順を示す流れ図である。
この貨幣処理機で取り扱う金種は、1円、5円、10円、50円、100円、500円、1000円、2000円、5000円、10000円であって、以下では、xを貨幣の額面ID、額面ID=xの額面をM(x)、その在高枚数をZ0(x)とする。
【0041】
また、額面ID=xの残置枚数目標値をS(x)、その残置枚数許容幅としてT(x)が設定されているものとする。このとき、残置総金額の目標値(残置目標金額)Wtは、
Wt=Σ[M(x)*S(x)]…(式1)
となる。
【0042】
最初に、ステップST1における初期調整処理について説明する。初期調整処理とは、収納庫内の貨幣枚数について、金種毎に残置枚数の許容範囲の上限値からの超過分や残置枚数目標値からの不足分を計数する処理である。
【0043】
ここでは、在高枚数Z0(x)が残置枚数の許容範囲上限値(=S(x)+T(x))を上回った額面貨幣xについて、許容範囲の上限値からの超過分を回収するための回収枚数K0(x)(=Z0(x)−S(x)−T(x))を算出し、在高枚数Z0(x)が残置枚数の許容範囲下限値(=S(x)−T(x))を下回った額面貨幣xについて、残置枚数目標値S(x)からの不足分を補充するための補充枚数J0(x)(=S(x)−Z0(x))を算出している。
【0044】
したがって、初期調整処理における額面ID=xの回収枚数をK0(x)、補充枚数をJ0(x)とすると、初期額整処理後の額面ID=xの在高枚数は、
Z1B(x)=Z0(x)+J0(x)−K0(x)…(式2)
となる。また、初期調整処理後の在高総金額Wz1Bは、
Wz1B=Σ[M(x)*Z1B(x)]…(式3)
となる。
【0045】
このように、図5に示すステップST1(初期調整処理)では、たとえば百円硬貨の在高枚数Z0(x)が85枚で、その残置枚数目標値が100枚、残値枚数許容幅が10枚であるとする。Z0(x)とS(x)±T(x)の大小関係は、Z0(x)<S(x)−T(x)となるから、ここでは百円硬貨の回収枚数K0(x)=0、補充枚数J0(x)=S(x)−Z0(x)=15枚が演算できる。なお、在高枚数Z0(x)が110枚以上であれば回収枚数K0(x)だけ回収し、90枚以上であって110枚以下であれば、回収枚数K0(x)=0、補充枚数J0(x)=0となって、補充も回収も行わないことになる。同様の演算処理は、すべての額面貨幣について行われる。
【0046】
つぎに、図5に示すステップST2では、初期調整処理後の在高総金額Wz1Bの大きさについて、残置目標金額Wtと比較している。ここでは、金種毎の在高枚数Z1B(x)を(式4)から演算し、
Z1B(x)=Z0(x)+J0(x)−K0(x)…(式4)
となる。
この値を(式5)に代入することで、初期調整処理後の在高総金額Wz1Bを求めている。
【0047】
Wz1B=Σ[M(x)*Z1B(x)]…(式5)
そして、予め設定された残置総金額の目標値である残置目標金額Wtを上回る金額の貨幣が収納されているかどうかを判断し、在高総金額Wz1Bの残置目標金額Wtとの大小関係に応じて、Wz1B<Wtの場合には、ステップST3の総金額の不足分補充処理に進み、Wz1B=Wtの場合には、ステップST12の集計処理に進み、Wz1B>Wtの場合には、ステップST6の不足額面の有無判定ステップに進む。
【0048】
<総金額不足分補充処理>
つぎに、ステップST3における総金額の不足分補充処理について説明する。総金額の不足分補充処理とは、総金額の不足分をなくすための補充貨幣の補充枚数を算出する処理である。
【0049】
ここでは、まず(式5)に示す初期調整処理後の在高総金額Wz1Bの、残置目標金額Wtに対する不足分(=Wt−Wz1B)を求め、それを貨幣xによって補充する場合の補充枚数J1(x)を求める。補充枚数J1(x)の算出では、残置枚数の許容範囲上限値(=S(x)+T(x))と金種毎の在高枚数Z1B(x)の差で決まる補充上限値(=S(x)+T(x)−Z1B(x))を上限とする。その際に、高額面の貨幣xを優先することにより、補充総枚数ΣJ1(x)を最小化できる。
【0050】
つぎに、各額面貨幣xの補充枚数J1(x)に基づいて、(式6)から補充金額和Wj1を求める。
Wj1=Σ[M(x)*J1(x)]…(式6)
このとき、金種毎の残置枚数Z1A(x)および補充処理後の残置総金額Wz1Aは、
Z1A(x)=Z1B(x)+J1(x)…(式7)
Wz1A=Σ[M(x)*Z1A(x)]=Wz1B+Wj1…(式8)
となる。したがって、補充金額和Wj1が不足分を丁度埋める金額である(Wj1=Wt−Wz1B)場合は、回収枚数を初期調整処理時の回収枚数K0(x)とし、補充枚数をJ0(x)+J1(x)とすることで、残置総金額Wz1Aを残置目標金額Wtに等しい定額残置とすることができる。
【0051】
このように、図5に示すステップST3(総金額の不足分補充処理)では、たとえば初期調整処理後の在高総金額の残置目標金額からの不足分(=Wt−Wz1B)に基づいて、補充枚数上限値(=S(x)+T(x)−Z1B(x))を上限として、補充総枚数ΣJ1(x)を最小化すべく、それぞれ補充枚数J1(x)が算出できる。このとき、補充総枚数を最小化するためには、高額面の貨幣から補充枚数を決定することとする。
【0052】
たとえば千円紙幣の補充枚数J1(i)を決定するには、すでに5千円紙幣で補充された金額(=M(i−1)*J1(i−1))を残置目標金額からの不足分(=Wt−Wz1B)から減じ、その結果(=Wt−Wz1B−M(i−1)*J1(i−1))を額面M(i)(=1000円)で除した商から小数点以下を切り捨てた整数値として演算する方法が可能である。すなわち、この処理では、残置目標金額Wtを在高総金額の不足分(=Wt−Wz1B)として、補充枚数J1(x)が算出される。
【0053】
そして、この補充枚数J1(x)から算出される補充金額和Wj1(=Σ[M(x)*J1(x)])と在高総金額の不足分(=Wt−Wz1B)との大小関係に応じて、Wj1=Wt−Wz1Bの場合には、ステップST12の集計処理に進み、Wj1<Wt−Wz1Bの場合には、ステップST4の総金額の不足分過剰補充処理に進む。
【0054】
なお、補充枚数J1(x)の決定において、前述したように小数点以下の切り捨てによる方法で算出しているため、Wj1>Wt−Wz1Bとなることはない。
<総金額不足分過剰補充処理>
つぎに、ステップST4における総金額の不足分過剰補充処理について説明する。不足分過剰補充処理とは、総金額の不足分を超過して補充する補充枚数と、こうした過剰補充による余剰分をなくすための回収枚数とを算出する処理である。
【0055】
ここでは、ステップST3の不足分補充処理で補充金額和Wj1が、Wj1<Wt−Wz1Bとなっていることから、まず残置目標金額Wtに対する補充処理後の残置総金額Wz1Aの補充残分(=Wt−Wz1A)より大きい額面貨幣xであって、その残置枚数Z1A(x)が残置枚数の許容範囲上限値(=S(x)+T(x))以下のもののうち、最低額面の金種を補充額面xj2として、その残置枚数Z1A(xj2)を1枚増加させる。このことにより発生する在高総金額の過剰分(=M(xj2)−Wt+Wz1A)を求め、額面貨幣xを回収することで調整する場合の回収枚数K2(x)を求める。ただし、この回収枚数K2(x)は、金種毎の在高枚数Z1A(x)と残置枚数の許容範囲下限値(=S(x)−T(x))の差で決まる回収上限値(=Z1A(x)−S(x)+T(x))を上限とする。その際に、高額面の額面貨幣xを優先することにより、回収総枚数ΣK2(x)を最小化できる。
【0056】
つぎに、各額面貨幣xの回収枚数K2(x)に基づいて、式9から回収金額和Wk2を求める。
Wk2=Σ[M(x)*K2(x)]…(式9)
このとき、金種毎の残置枚数Z2(x)および回収処理後の残置総金額Wz2は、
Z2(x)=Z1A(x)−K2(x)…(式10)
Wz2=Σ[M(x)*Z2(x)]=Wz1A+Wk2…(式11)
となる。したがって、回収金額和Wk2が過剰分(=M(xj2)−Wt+Wz1A)を丁度埋める金額、すなわちWk2=Wt−Wz2の場合は、回収枚数を初期調整処理時の回収枚数K0(x)に回収枚数K2(x)を加えたものとし、補充枚数をJ0(x)+J1(x)+1(額面xj2のみ)とすることで、残置総金額Wz2を残置目標金額Wtに等しい定額残置とすることができる。
【0057】
このように、図5に示すステップST4(総金額の不足分過剰補充処理)では、残置枚数Z1A(x)が許容最大枚数(=S(x)+T(x))以下であって、不足分補充処理後の補充残分(=Wt−Wz1A)より大きい最低額面xj2の残置枚数Z1A(xj2)に1を加え、これにより発生する在高総金額の余分(=M(xj2)−Wt+Wz1A)に対して、回収枚数上限値(=Z1A(x)−S(x)+T(x))を上限として、回収総枚数を最小化すべく、それぞれ回収枚数K2(x)が算出できる。このとき、回収総枚数ΣK2(x)を最小化するために、高額面の貨幣から回収枚数を決定することとする。
【0058】
たとえばステップST3における補充残分が3900円であったとして、5千円紙幣を1枚増加させる過剰補充を行うことにすると、在高総金額の過剰分は1100円となる。したがって、千円紙幣1枚と100円硬貨1枚を回収すればよく、残置目標金額Wtに対する総金額の不足分が1枚の追加補充と、2枚の追加回収によって補充できることになる。
【0059】
このような回収総枚数ΣK2(x)の最小化方法については、ステップST3で説明した総金額不足分補充処理の場合と同じであって、ステップST3における「在高総金額の残置目標金額からの不足分(=Wt−Wz1B)」を、「在高総金額の過剰分(=M(xj2)−Wt+Wz1A)」とすることで、回収枚数K2(x)が算出される。
【0060】
そして、各金種の回収枚数K2(x)から算出される回収金額和Wk2(=Σ[M(x)*K2(x)])と在高総金額の過剰分(=M(xj2)−Wt+Wz1A)との大小関係に応じて、Wk2=M(xj2)−Wt+Wz1Aの場合には、ステップST12の集計処理に進み、Wk2<M(xj2)−Wt+Wz1Aの場合には、ステップST5の枚数残置処理に進む。
【0061】
なお、回収枚数K2(x)の決定において、ステップST3で説明したように小数点以下の切り捨てによる方法で算出しているため、Wk2>M(xj2)−Wt+Wz1Aとなることはない。
【0062】
<枚数残置処理>
つぎに、ステップST5における枚数残置処理について説明する。枚数残置処理とは、初期調整処理後の在高枚数Z1B(x)を残置枚数目標値S(x)に一致させるための処理であって、ここでは残置枚数目標値S(x)を超える余剰貨幣を回収する回収枚数K8(x)と、残置枚数目標値S(x)に足りない不足貨幣を補充する補充枚数J8(x)とが算出される。
【0063】
このように、図5に示すステップST5では、金種毎に在高枚数Z1B(x)と残置枚数目標値S(x)の大小関係を比較し、Z1B(x)≧S(x)の場合には、初期調整処理での回収枚数K0(x)に新たな回収枚数K8(x)(=Z1B(x)−S(x))を加える。このとき、補充枚数J8(x)は0とする。また、Z1B(x)<S(x)の場合には、回収枚数K8(x)を0とし、初期調整処理での補充枚数J0(x)に新たな補充枚数J8(x)(=S(x)−Z1B(x))を加える。このステップST5が終了すると、ステップST12の集計処理に進む。
【0064】
<不足額面の有無判定>
つぎに、ステップST6における不足額面の有無を判定する処理について説明する。ここでは、初期調整処理後の在高総金額Wz1Bが残置目標金額Wtを超えている場合であって、各金種の在高枚数Z1B(x)が残置枚数目標値S(x)未満であるか否かを判定している。
【0065】
すなわち、図5のステップST6では、各金種について在高枚数Z1B(x)と残置枚数目標値S(x)の大小関係を比較し、Z1B(x)<S(x)となる額面数が1つでもあれば、ステップST7の不足額面不足分補填処理に進む。また、Z1B(x)<S(x)となる額面貨幣xが1つもなければ、ステップST10の余剰額面余剰分回収処理に進む。
【0066】
<不足額面不足分補填処理>
つぎに、ステップST7における不足額面の不足分補填処理について説明する。ここで補填処理とは、余剰額面の貨幣によって不足額面の不足分を相殺するように補填する処理であって、この不足額面の不足分補填処理では、余剰額面の余剰分による補填枚数と新たな回収枚数とを算出している。この処理によって、Z1B(x)<S(x)となる不足額面の貨幣xを他の金種の貨幣(余剰額面)によって補うことができる。
【0067】
ここでは、まず初期調整処理後の在高枚数Z1B(x)と残置枚数目標値S(x)から不足額面(Z1B(x)<S(x)と判定された金種)と余剰額面(Z1B(x)≧S(x)と判定された金種)に分類する。
【0068】
つぎに、不足額面についての残置枚数目標値S(x)からの不足金額和Wc(=Σ[M(x)*{S(x)−Z1B(x)}])を求め、それを余剰額面の額面貨幣xによって補填する補填枚数H3(x)を求める。この補填枚数H3(x)の算出では、補填枚数の上限値(=Z1B(x)−S(x))を上限として、余剰額面の中でも高額面の金種を優先することにより、補填総枚数ΣH3(x)を最小化できる。
【0069】
その際、初期調整処理によって余剰額面の余剰分(=Z1B(x)−S(x))から補填枚数H3(x)を差し引いた枚数が、新たな回収枚数K3(x)(=Z1B(x)−S(x)−H3(x))として分配される。
【0070】
つぎに、各額面貨幣xの補填枚数H3(x)に基づいて、式12から補填金額和Wh3を求める。
Wh3=Σ[M(x)*H3(x)]…(式12)
このとき、金種毎の残置枚数Z3(x)および補填処理後の残置総金額Wz3は、
Z3(x)=Z1B(x)−K3(x)=S(x)+H3(x)…(式13)
Wz3=Σ[M(x)*Z3(x)]…(式)
となる。したがって、補填金額和Wh3(=Σ[M(x)*H3(x)])が不足金額和Wcを丁度補填する金額、すなわちWh3=Wcの場合は、回収枚数を初期調整処理時の回収枚数K0(x)に新たな回収枚数K3(x)を加えたものとすることで、残置総金額Wz3を残置目標金額Wtに等しい定額残置とすることができる。なお、補充枚数は初期調整処理時のJ0(x)とする。
【0071】
このように、図5に示すステップST7(不足額面の不足分補填処理)では、在高枚数Z1B(x)と残置枚数目標値S(x)の大小関係に応じて、不足額面(Z1B(x)<S(x)の額面)と余剰額面(Z1B(x)≧S(x)の額面)に分類し、不足額面のS(x)からの不足金額和Wc(=Σ[M(x)*{S(x)−Z1B(x)}])に対して、補填枚数上限値(=Z1B(x)−S(x))を上限として、補填総枚数を最小化すべく、それぞれ補填枚数H3(x)が算出できる(ただし、Z1B(x)<S(x)の額面貨幣xのみで算出する。)。このとき、補填総枚数ΣH3(x)を最小化するためには、余剰額面の高額面から優先して配分した決定することとする。
【0072】
たとえば5千円紙幣が残置枚数目標値より2枚少なく、千円紙幣が残置枚数目標値より15枚多かったとすれば、余剰額面の千円紙幣10枚を補填枚数H3(x)とし、千円紙幣の回収枚数K3(x)に5枚(=15枚−10枚)を分配することにより、不足金額を補填するとともに、その補填総枚数を最小にできる。
【0073】
このような補填総枚数ΣH3(x)の最小化方法については、ステップST3で説明した総金額不足分補充処理の場合と同じであって、ステップST3における「残置目標金額からの不足分(=Wt−Wz1B)」を、「不足額面についての残置枚数目標値S(x)からの不足金額和Wc」とすることで、補填枚数H3(x)が算出される。
【0074】
そして、各金種の補填枚数H3(x)から算出される補填金額和Wh3(=Σ[M(x)*H3(x)])と不足金額和Wcとの大小関係に応じて、Wh3=Wcの場合には、ステップST12の集計処理に進み、Wh3<Wcの場合には、ステップST8の不足額面の不足分過剰補填処理に進む。
【0075】
なお、補填枚数H3(x)の決定において、ステップST3で説明したように小数点以下の切り捨てによる方法で算出しているため、Wh3>Wcとなることはない。
<不足額面不足分過剰補填処理>
つぎに、ステップST8における不足額面の不足分過剰補填処理について説明する。不足額面不足分過剰補填処理とは、余剰額面の余剰分によって不足額面の不足分を超過して補填する補填枚数と、こうした過剰補填による余剰分をなくすための回収枚数とを算出する処理である。この処理によって、Z1B(x)<S(x)となる不足額面の貨幣xを他の金種の貨幣(余剰額面)によって過剰に補填して、残置総金額を調整することができる。
【0076】
ここでは、ステップST7の不足額面の不足分補填処理で、補填金額和Wh3が不足金額和Wcに達していないことから、このときの補填残分(=Wc−Wh3)より大きい額面貨幣xであって、その回収枚数K3(x)が1以上のもののうち、最低額面の金種を補填額面xh4として、その回収枚数K3(xh4)を1枚少ない回収枚数K3A(xh4)とする。このことにより発生する残置総金額Wz4の過剰分(=M(xh4)+Wh3−Wc)を求め、額面貨幣xを回収することで調整する場合の回収枚数K4(x)を求める。ただし、この回収枚数K4(x)は、回収上限値(=T(x))を上限とする。その際に、高額面の額面貨幣xを優先することにより、回収総枚数ΣK4(x)を最小化できる。
【0077】
つぎに、各額面貨幣xの回収枚数K4(x)に基づいて、式14から回収金額和Wk4を求める。
Wk4=Σ[M(x)*K4(x)]…(式14)
このとき、金種毎の残置枚数Z4(x)および回収処理後の残置総金額Wz4は、
Z4(x)=Z3(x)−K3A(x)−K4(x)…(式15)
Wz4=Σ[M(x)*Z4(x)]…(式16)
となる。したがって、回収金額和Wk4が過剰分(=M(xh4)+Wh3−Wc)を丁度埋める金額、すなわちWk4=W(xh4)+Wh3−Wcの場合は、回収枚数を初期調整処理時の回収枚数K0(x)に回収枚数K3A(x)+K4(x)を加えたものとし、補充枚数をJ0(x)とすることで、残置総金額Wz4を残置目標金額Wtに等しい定額残置とすることができる。
【0078】
このように、図5のステップST8(不足額面の不足分過剰補填処理)では、回収枚数K3(x)が1以上であって、不足額面不足分補填処理後の補填残分(=Wc−Wh3)より大きい最低額面xh4の回収枚数K3(xh4)を1枚少ない回収枚数K3A(x)とし、これにより発生する残置総金額の余分(=M(xh4)+Wh3−Wc)に対して、回収枚数上限値(=T(x))を上限として、回収総枚数を最小化すべく、それぞれ回収枚数K4(x)が算出できる。このとき、回収総枚数ΣK4(x)を最小化するためには、高額面の貨幣から回収枚数K4(x)を決定することとする。
【0079】
たとえばステップST7における補填残分が3900円であったとして、5千円紙幣を1枚増加させる過剰補填を行うことにすると、在高総金額の過剰分は1100円となる。したがって、千円紙幣1枚と100円硬貨1枚を回収すればよく、残置目標金額Wtに対する総金額の不足分が1枚の追加補充と、2枚の追加回収によって補充できることになる。
【0080】
このような回収総枚数ΣK4(x)の最小化方法については、ステップST3で説明した総金額の不足分補充処理の場合と同じであって、ステップST3における「在高総金額の残置目標金額からの不足分(=Wt−Wz1B)」を、「残置総金額の余分(=M(xh4)+Wh3−Wc)」とすることで、回収枚数K4(x)が算出される。
【0081】
そして、各金種の回収枚数K4(x)から算出される回収金額和Wk4(=Σ[M(x)*K4(x)])と残置総金額の余分(=M(xh4)+Wh3−Wc)との大小関係に応じて、Wk4=W(xh4)+Wh3−Wcの場合には、ステップST12の集計処理に進み、Wk4<W(xh4)+Wh3−Wcの場合には、ステップST9の不足額面の不足分補充処理に進む。
【0082】
なお、回収枚数K2(x)の決定において、ステップST3で説明したように小数点以下の切り捨てによる方法で算出しているため、Jk4>W(xh4)+Wh3−Wcとなることはない。
【0083】
<不足額面不足分補充処理>
つぎに、ステップST9における不足額面の不足分補充処理について説明する。不足額面不足分補充処理とは、不足額面の不足分をなくすための補充貨幣の補充枚数を算出する処理である。この処理によって、ステップST8の過剰補填では調整できなかった不足額面の貨幣xを、新たな貨幣の補充によって調整することができる。
【0084】
ここでは、まずステップST8での調整結果がWk4≠M(xh4)+Wh3−Wcの場合の補填残分(=Wc−Wh3)を求め、それを貨幣xによって補充する場合の補充枚数J5(x)を求める。補充枚数J5(x)の算出では、補充枚数上限値(=S(x)+T(x)−Z3(x))を上限とする。その際に、高額面の貨幣xを優先することにより、補充総枚数ΣJ5(x)を最小化できる。
【0085】
つぎに、各額面貨幣xの補充枚数J5(x)に基づいて、式17から補充金額和Wj5を求める。
Wj5=Σ[M(x)*J5(x)]…(式17)
このとき、金種毎の残置枚数Z5(x)および補充処理後の残置総金額Wz5は、
Z5(x)=Z3(x)+J5(x)…(式18)
Wz5=Σ[M(x)*Z5(x)]…(式19)
となる。したがって、補充金額和Wj5が不足分を丁度埋める金額である(Wj5=Wc−Wh3)場合は、回収枚数をステップST7での回収枚数(=K0(x)+K3(x))とし、補充枚数をJ0(x)+J5(x)とすることで、残置総金額Wz1Aを残置目標金額Wtに等しい定額残置とすることができる。
【0086】
このように、図5のステップST9(不足額面の不足分補充処理)では、ステップST7における不足額面不足分補填処理の補填残分(=Wc−Wh3)を、補充枚数上限値(=S(x)+T(x)−Z3(x))を上限として、補充総枚数を最小化すべく、それぞれ補充枚数J5(x)が算出できる。このとき、補充総枚数ΣJ5(x)を最小化するためには、高額面の貨幣から補充枚数J5(x)を決定することとする。
【0087】
たとえばステップST7における補填残分が3900円であったとすると、千円紙幣3枚と500円硬貨1枚と100円硬貨4枚を補充すればよく、残置目標金額Wtに対する総金額の不足分が8枚の追加補充によって補充できることになる。
【0088】
このような補充総枚数ΣJ5(x)の最小化方法については、ステップST3で説明した総金額不足分補充処理の場合と同じであって、ステップST3における「在高総金額の残置目標金額からの不足分(=Wt−Wz1B)」を、「補填残分(=Wc−Wh3)」とすることで、補充枚数J5(x)が算出される。
【0089】
そして、各金種の補充枚数J5(x)から算出される補充金額和Wj5(=Σ[M(x)*J5(x)])と補填残分(=Wc−Wh3)との大小関係に応じて、Wj5=Wc−Wh3の場合は、ステップST12の集計処理に進み、Wj5<Wc−Wh3の場合には、ステップST10の不足額面の不足分過剰補填処理に進む。
【0090】
なお、補填枚数H3(x)の決定において、ステップST3で説明したように小数点以下の切り捨てによる方法で算出しているため、Wj5>Wc−Wh3となることはない。
<不足額面不足分過剰補充処理>
つぎに、ステップST10における不足額面の不足分過剰補充処理について説明する。不足額面の不足分過剰補充処理とは、不足額面の不足分を超過して補充する補充枚数と、こうした過剰補充による余剰分をなくすための回収枚数とを算出する処理である。この処理によって、ステップST9における不足額面の不足分を、他の金種の貨幣(余剰額面)によって過剰に補填して、残置総金額を調整することができる。
【0091】
ここでは、ステップST9の不足額面の不足分補充処理で、補充金額和Wj5が補填残分(=Wc−Wh3)に達していないことから、このときの補充残分(=Wc−Wh3−Wj5)より大きい額面貨幣xであって、その残置枚数Z5(x)が残置枚数の許容範囲上限値(=S(x)+T(x))以下のもののうち、最低額面の金種を補充額面xj6として、その残置枚数Z6(xj6)を1枚増加させる。このことにより発生する残置総金額の過剰分(=M(xj6)−Wc+Wh3+Wj5)を求め、対応する貨幣xを回収することで調整する場合の回収枚数K6(x)を求める。ただし、この回収枚数K6(x)は、金種毎の回収枚数上限値(=T(x))を上限とする。その際に、高額面の貨幣xを優先することにより、回収総枚数ΣK6(x)を最小化できる。
【0092】
つぎに、各額面貨幣xの回収枚数K6(x)に基づいて、式20から回収金額和Wk6を求める。
Wk6=Σ[M(x)*K6(x)]…(式20)
このとき、金種毎の残置枚数Z6(x)および回収処理後の残置総金額Wz6は、
Z6(x)=Z5(x)−K6(x)…(式21)
Wz6=Σ[M(x)*Z6(x)]…(式22)
となる。したがって、回収金額和Wk6が過剰分(=M(xj6)−Wc+Wh3+Wj5)を丁度埋める金額、すなわちWk6=M(xj6)−Wc+Wh3+Wj5の場合は、回収枚数を初期調整処理時の回収枚数K0(x)に回収枚数K3(x)と回収枚数K6(x)を加えたものとし、補充残数をJ0(x)+J5(x)+1(額面xj6のみ)とすることで、残置総金額Wz6を残置目標金額Wtに等しい定額残置とすることができる。
【0093】
このように、図5に示すステップST10(不足額面の不足分過剰補充処理)では、ステップST9での残置枚数Z5(x)が許容最大枚数(=S(x)+T(x))以下であって、ステップST9での補充残分(=Wc−Wh3−Wj5)より大きい最低額面xj6の残置枚数Z5(xj6)に1を加え、これにより発生する残置総金額の余分(=M(xj6)−Wc+Wh3+Wj5)に対して、回収枚数上限値(=T(x))を上限として、回収総枚数を最小化すべく、それぞれ回収枚数K6(x)が算出できる。このとき、回収総枚数ΣK6(x)を最小化するために、高額面の貨幣から回収枚数を決定することとする。
【0094】
たとえばステップST9における補充残分が3900円であったとして、5千円紙幣を1枚増加させる過剰補充を行うことにすると、在高総金額の過剰分は1100円となる。したがって、千円紙幣1枚と100円硬貨1枚を回収すればよく、残置目標金額Wtに対する総金額の不足分が1枚の追加補充と、2枚の追加回収によって補充できることになる。
【0095】
このような回収総枚数ΣK6(x)の最小化方法については、ステップST3で説明した総金額不足分補充処理の場合と同じであって、ステップST3における「在高総金額の残置目標金額からの不足分(=Wt−Wz1B)」を、「在高総金額の過剰分(=M(xj6)−Wc+Wh3+Wj5)」とすることで、回収枚数K6(x)が算出される。
【0096】
そして、各金種の回収枚数K6(x)から算出される回収金額和Wk6(=Σ[M(x)*K6(x)])と、在高総金額の過剰分(=M(xj6)−Wc+Wh3+Wj5)との大小関係に応じて、Wk6=M(xj6)−Wc+Wh3+Wj5の場合には、ステップST12の集計処理に進み、Wk6<M(xj6)−Wc+Wh3+Wj5の場合には、新たな補充処理後の在高枚数Z1B(x)を残置枚数目標値S(x)に一致させるためのステップST5の枚数残置処理に進む。
【0097】
なお、回収枚数K6(x)の決定において、ステップST3で説明したように小数点以下の切り捨てによる方法で算出しているため、Wk6>M(xj6)−Wc+Wh3+Wj5となることはない。
【0098】
<余剰額面余剰分回収処理>
つぎに、ステップST11における余剰額面の余剰分回収処理について説明する。ここで余剰分回収処理とは、余剰額面の残置枚数を残置枚数目標値と一致させるための回収枚数を算出する処理である。この処理によって、余剰額面の金種をなくして、すべての金種の枚数を目標値に一致させることができる。
【0099】
ここでは、在高枚数Z1B(x)が残置枚数目標値S(x)に一致させるために、各額面xの回収枚数K11(x)を式23から演算している。
K11(x)=Z1B(x)−S(x)…(式23)
これにより各額面貨幣xの残置枚数調整が完了して、ステップST12の集計処理に進む。
【0100】
<集計処理>
図5に示す集計処理のステップST12は、それぞれステップST1、ST3〜ST5、およびステップST7〜ST11で残置枚数の調整が完了したとき、そこで演算された回収枚数、および補充枚数の総和を算出する処理である。
【0101】
図6は、図5の残置処理における集計処理の実行条件別に回収枚数と補充枚数を示す図である。
上述した各ステップST1、ST3〜ST5、およびステップST7〜ST11の処理を組み合わせて回収枚数と補充枚数を決定することで、運用中の貨幣処理機の在高枚数と各処理結果とに応じて、残置金額を予め定めた目標金額と一致させる貨幣定額残置が可能になる。しかも、残置枚数に予め許容範囲を定めておけば、残置金額を予め定めた目標金額と一致させることができる。
【0102】
ここでは、貨幣処理機は、上述したいずれか1つ又は複数の処理を実行する機能を有するものであってもよい。
また、貨幣処理機に各処理を実施した結果を表示する表示部を設けて、そこに表示するようにしてもよい。
【0103】
あるいは、貨幣処理機とは別の機器にこれらの処理結果を出力することで、定額残置のために必要な各額面の補充枚数をその場で、あるいは遠隔地(たとえば事務所)で簡単に把握することができ、貨幣処理機の定額残置作業を実施する前に補充用貨幣の準備が可能となるから、レジの精算処理を簡素化することができる。
【0104】
上述した貨幣処理機においては、いずれの額面についても補填・補充の両方を可能としている。しかし、額面毎に以下の制眼を設けることも可能である。
(制限1)特定金種の補充を不可とする場合
釣銭機であれば、1万円札のような、釣銭として出金されることのない最高額面に対して設定がなされる。ここでは、残置は許容される。
【0105】
(制限2)特定金種の調整を不可とする場合
釣銭として出金されないだけでなく、残置も許容されない額面に対して設定される。たとえば、2000円札のようにその流通量が少ない額面に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】実施の形態に係る貨幣処理機の制御機構を示すブロック図である。
【図2】残置金額を指定する残値回収の演算手順を示す図である。
【図3】金額残置回収が実行不可であった場合の是正された金額残置回収の演算手順を示す図である。
【図4】残置金額を指定する残値回収の別の演算手順を示す図である。
【図5】実施の形態の貨幣処理機における貨幣定額残置処理の手順を示す流れ図である。
【図6】図5の残置処理における集計処理の実行条件別に回収枚数と補充枚数を示す図である。
【符号の説明】
【0107】
11 上位通信部
12 入出金計数部
13 メモリ部
13a〜13c 第1〜第3のメモリ
14 操作・表示部
14a 操作キー
14b 表示パネル
15 演算部
16 論理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された貨幣を金種毎に振り分けて計数し、前記金種毎に設けられた収納庫もしくは混合金種の収納庫に収納し、上位制御部からの出金指示に基づいて金種および枚数を決定して前記収納庫から釣銭を出金する貨幣処理機において、
前記貨幣の収納枚数データを記憶する第1のメモリと、
前記収納庫に残置すべき貨幣金額を指示する操作部と、
前記操作部で指示された貨幣金額に基づいて前記金種毎の収納庫に残置すべき貨幣枚数を記憶する第2のメモリと、
前記第1、第2のメモリに記憶されたデータを比較し、比較結果に基づいて前記金種毎の収納庫から貨幣の回収枚数を決定する演算部と、
を備えることを特徴とする貨幣処理機。
【請求項2】
前記演算部は、決定された回収枚数による回収動作が実行不能である場合、前記実行不能の理由、および是正された回収動作の内容を決定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の貨幣処理機。
【請求項3】
前記実行不能の理由、および前記是正された回収動作の内容を提示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の貨幣処理機。
【請求項4】
前記演算部は、前記実行不能の理由が在高不足である時には、前記貨幣の金種毎に補充する枚数、あるいは他の金種による補填の枚数を決定するようにしたことを特徴とする請求項2記載の貨幣処理機。
【請求項5】
前記操作部から前記貨幣の金種毎に補充すべき枚数を仮収納枚数として入力するとともに、前記仮収納枚数を記憶する第3のメモリを設け、
前記演算部では、前記仮収納枚数に基づいて前記貨幣の補充および回収動作をシミュレーションするようにしたことを特徴とする請求項4記載の貨幣処理機。
【請求項6】
前記演算部は、前記実行不能の理由が在高不確定である時には、前記収納庫内の金種および枚数の計数動作を自動的に再実行するようにしたことを特徴とする請求項1記載の貨幣処理機。
【請求項7】
前記演算部は、決定された回収枚数による回収動作が実行可能である場合、実行後における前記貨幣の金種毎の枚数を算出することを特徴とする請求項1記載の貨幣処理機。
【請求項8】
前記操作部は、前記収納庫に残置すべき貨幣の残置総金額によって指示することを特徴とする請求項1記載の貨幣処理機。
【請求項9】
前記操作部は、前記収納庫から回収すべき金種毎の金額によって指示することを特徴とする請求項1記載の貨幣処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−116604(P2009−116604A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288749(P2007−288749)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】