説明

貫通コンデンサ

【課題】直流電流の許容量及び耐電圧性の双方を良好に確保できる貫通コンデンサを提供する。
【解決手段】貫通コンデンサ1では、コンデンサ素体2内において、複数配置された第1の電極層11の第1の信号用内部電極21に加え、第2の電極層12の第2の信号用内部電極22が配置されて通電部Vが構成されている。これにより、直流電流の許容量を確保できる。また、貫通コンデンサ1では、第3の電極層13において、第1の信号用内部電極21における幅方向の他方側領域に対向し、かつ第2の信号用内部電極22に対向しない状態で一方の接地用端子電極4に接続される接地用内部電極23が設けられている。この構成により、容量が形成される第1の信号用内部電極21と接地用内部電極23との間に第2の電極層12に対応する厚さの誘電体層5が介在することとなり、電極間の間隔が広がることによって耐電圧性を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の貫通コンデンサとして、例えば特許文献1に記載の貫通コンデンサがある。この貫通コンデンサは、素体内においてアース電極間に少なくとも3層の貫通電極(以下、「通電部」と称す)を配置している。これにより、貫通電極全体での抵抗値を小さくし、貫通コンデンサにおける直流電流の許容量を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−55335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような貫通コンデンサでは、貫通電極の配置数を増加させれば、直流電流の許容量を増加させることができる、しかしながら、素体内の内部電極を過密に配置すると、コンデンサ容量を形成する内部電極間の間隔が小さくなり過ぎてしまい、貫通コンデンサの耐電圧性が不足するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、直流電流の許容量及び耐電圧性の双方を良好に確保できる貫通コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る貫通コンデンサは、内部電極を配した誘電体層の積層によって形成されたコンデンサ素体と、コンデンサ素体の互いに対向する端面にそれぞれ配置された信号用端子電極と、コンデンサ素体の端面とは異なる方向で互いに対向する側面にそれぞれ配置された接地用端子電極と、を備え、コンデンサ素体は、誘電体層を介して順に積層された第1の電極層、第2の電極層、及び第3の電極層を有し、第1の電極層は、一方の端面から他方の端面にかけて延在し、各信号用端子電極に接続される第1の信号用内部電極を有し、第2の電極層は、第1の信号用内部電極における幅方向の一方側領域に対向した状態で各信号用端子電極に接続される第2の信号用内部電極を有し、第3の電極層は、第1の信号用内部電極における幅方向の他方側領域に対向し、かつ第2の信号用内部電極に対向しない状態で一方の接地用端子電極に接続される接地用内部電極を有していることを特徴としている。
【0007】
この貫通コンデンサでは、コンデンサ素体内において、第1の電極層の第1の信号用内部電極に加え、第2の電極層の第2の信号用内部電極が配置されている。これにより、通電部の抵抗値が十分に小さくなり、直流電流の許容量を確保できる。また、この貫通コンデンサでは、第2の電極層の次に積層される第3の電極層において、第1の信号用内部電極における幅方向の他方側領域に対向し、かつ第2の信号用内部電極に対向しない状態で一方の接地用端子電極に接続される接地用内部電極が設けられている。この構成により、容量が形成される第1の信号用内部電極と接地用内部電極との間に第2の電極層に対応する厚さの誘電体層が介在することとなり、電極間の間隔が広がることによって耐電圧性を確保できる。
【0008】
また、第3の電極層は、第2の信号用内部電極に対向した状態で各信号用端子電極に接続される第3の信号用内部電極を更に有していることが好ましい。この場合、第3の信号用内部電極によって直流電流の許容量を一層確保できる。
【0009】
また、コンデンサ素体の中央部分において、第1の電極層が複数積層されていることが好ましい。この場合、複数の第1の信号用内部電極によって直流電流の許容量を一層確保できる。
【0010】
また、コンデンサ素体の積層方向について対称となるように、第1の電極層、第2の電極層、及び第3の電極層が順に積層されていることが好ましい。こうすると、貫通コンデンサを実装する際の実装の方向性を打ち消すことができる。
【0011】
また、第2の信号用内部電極の幅は、第3の信号用内部電極の幅よりも大きくなっていることが好ましい。この場合、直流電流の許容量を更に確保できる。
【0012】
また、第2の信号用内部電極の幅は、第3の信号用内部電極の幅よりも小さくなっていることが好ましい。この場合、耐電圧性を更に確保できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る貫通コンデンサによれば、直流電流の許容量及び耐電圧性の双方を良好に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る貫通コンデンサの斜視図である。
【図2】図1に示した貫通コンデンサの側面図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】第1の電極層を示す平面図である。
【図5】第2の電極層を示す平面図である。
【図6】第3の電極層を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る貫通コンデンサの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る貫通コンデンサの斜視図である。また、図2は、図1に示した貫通コンデンサの側面図であり、図3は、図2におけるIII−III線断面図である。図1及び図2に示すように、貫通コンデンサ1は、コンデンサ素体2と、信号用端子電極3,3と、接地用端子電極4,4とを備えて構成されている。
【0017】
コンデンサ素体2は、図3に示すように、内部電極を配した複数の誘電体層5が積層されて形成され、略直方体形状をなしている。誘電体層5は、例えばBaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、(Ba,Ca)TiO系といった電歪特性を有する誘電体材料によって形成されている。コンデンサ素体2の上面2a及び底面2bは、それぞれ実装基板(不図示)への実装面Pとなっている。
【0018】
信号用端子電極3は、コンデンサ素体2における長手方向の端面2c,2dを覆うようにそれぞれ形成され、互いに対向した状態となっている。信号用端子電極3は多層化されており、コンデンサ素体2に接する内側の層には、例えばCu、Ni、Ag−Pdなどが用いられ、外側の層には、例えばNiめっき、Snめっきなどのめっきが施されている。
【0019】
接地用端子電極4は、コンデンサ素体2において、端面2c,2dと直交する側面2e,2fの略中央部分にそれぞれ形成され、互いに対向した状態となっている。接地用端子電極4は、信号用端子電極3と同様の材料によって多層化されている。また、接地用端子電極4は、コンデンサ素体2の表面において、信号用端子電極3とは互いに電気的に絶縁されている。
【0020】
次に、コンデンサ素体2内の内部電極の構成について説明する。
【0021】
このコンデンサ素体2は、図3に示すように、誘電体層5を介して順に積層された第1の電極層11、第2の電極層12、及び第3の電極層13を有している。第1の電極層11は、図4に示すように、誘電体層5の積層方向から見て略長方形のパターンをなす第1の信号用内部電極21を有している。第1の信号用内部電極21は、他の内部電極と対向する対向部分21aと、対向部分21aの両端から信号用端子電極3,3に向かってそれぞれ引き出される引出部分21b,21bとを有している。これにより、第1の信号用内部電極21は、端面2c,2dに形成された信号用端子電極3,3を互いに電気的に接続している。
【0022】
第2の電極層12は、図5に示すように、誘電体層5の積層方向から見て略長方形のパターンをなす第2の信号用内部電極22を有している。第2の信号用内部電極22は、例えば第1の信号用内部電極21の半分未満の幅となっており、第1の信号用内部電極21における幅方向の一方側領域に対向する対向部分22aと、対向部分22aの両端から信号用端子電極3,3に向かってそれぞれ引き出される引出部分22b,22bとを有している。これにより、第2の信号用内部電極22は、端面2c,2dに形成された信号用端子電極3,3を互いに電気的に接続している。
【0023】
第3の電極層13は、図6に示すように、誘電体層5の積層方向から見て略長方形のパターンをなす接地用内部電極23及び第3の信号用内部電極24を有している。接地用内部電極23は、例えば第1の信号用内部電極21の半分未満の幅となっており、第2の信号用内部電極22には対向しない状態となっている。接地用内部電極23は、第1の信号用内部電極21における幅方向の一方側領域に対向する対向部分23aと、当該対向部分23aの略中央から一方の接地用端子電極4に向かって引き出される引出部分23bとを有している。
【0024】
第3の信号用内部電極24は、例えば第2の信号用内部電極22と略同一の幅となっており、第2の信号用内部電極22と対向する対向部分24aと、対向部分24aの両端から信号用端子電極3,3に向かってそれぞれ引き出される引出部分24b,24bとを有している。これにより、第3の信号用内部電極24は、端面2c,2dに形成された信号用端子電極3,3を互いに電気的に接続している。
【0025】
本実施形態では、図3に示すように、コンデンサ素体2の中央側において、複数の第1の電極層11からなる電極群が積層されており、電極群の最上層の第1の電極層11から上面2a側に向かって、第2の電極層12、第3の電極層13、第2の電極層12、第1の電極層11、第2の電極層12、第3の電極層13の順に積層されている。また、本実施形態では、内部電極の配置は誘電体層5の積層方向について対称となっており、電極群の最下層の第1の電極層11から底面2bに向かって、第2の電極層12、第3の電極層13、第2の電極層12、第1の電極層11、第2の電極層12、第3の電極層13の順に積層されている。
【0026】
これにより、コンデンサ素体2では、中央側で第1の信号用内部電極21が複数積層されている部分、及び上下の実装面P側の幅方向の一方側領域で第1の信号用内部電極21、第2の信号用内部電極22、第3の信号用内部電極24が積層されている部分によって、直流電流を流す通電部Vが形成されている。また、上下の実装面P側の幅方向の他方側領域で第1の信号用内部電極21と接地用内部電極23とが積層されている部分によって、容量形成のためのコンデンサ部Cが形成されている。
【0027】
以上説明したように、貫通コンデンサ1では、コンデンサ素体2内において、複数配置された第1の電極層11の第1の信号用内部電極21に加え、第2の電極層12の第2の信号用内部電極22が配置されて通電部Vが構成されている。これにより、通電部Vの抵抗値が十分に小さくなり、直流電流の許容量を確保できる。
【0028】
また、貫通コンデンサ1では、第2の電極層12の次に積層される第3の電極層13において、第1の信号用内部電極21における幅方向の他方側領域に対向し、かつ第2の信号用内部電極22に対向しない状態で一方の接地用端子電極4に接続される接地用内部電極23が設けられている。この構成により、容量が形成される第1の信号用内部電極21と接地用内部電極23との間に第2の電極層12に対応する厚さの誘電体層5が介在することとなり、電極間の間隔が広がることによって耐電圧性を確保できる。
【0029】
また、貫通コンデンサ1では、第2の信号用内部電極22に対向した状態で各信号用端子電極に接続される第3の信号用内部電極24が第3の電極層13に更に設けられている。このため、第3の信号用内部電極24によって直流電流の許容量を一層確保できる。
【0030】
また、貫通コンデンサ1では、コンデンサ素体2の積層方向について対称となるように、第1の電極層11、第2の電極層12、及び第3の電極層13が順に積層されている。これにより、貫通コンデンサ1を実装基板等に実装する際の実装の方向性を打ち消すことができる。
【0031】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、第3の電極層13に第3の信号用内部電極24を設けているが、この第3の信号用内部電極24は、必ずしも設けなくてもよい。また、第1の電極層11、第2の電極層12、及び第3の電極層13は、必ずしもコンデンサ素体2の積層方向について対称である必要はなく、第1の電極層11(或いはその電極群)からコンデンサ素体2の上面2a又は底面2bのいずれか一方に向かって積層されていてもよい。実装面P側にコンデンサ部Cが位置することで、高周波ノイズ成分が通電部Vに流れることが抑制され、コンデンサ部Cの接地用内部電極23から接地用端子電極4に向けてより高周波ノイズ成分をより確実に流すことができる。
【0032】
また、上述した実施形態では、第2の信号用内部電極22の幅と第3の信号用内部電極24の幅とが略同一となっているが、第2の信号用内部電極22の幅を接地用内部電極23と対向しない範囲で第3の信号用内部電極24の幅よりも大きくしてもよい。この場合、通電部Vの抵抗値を更に小さくすることが可能となり、直流電流の許容量をより確保できる。一方、第2の信号用内部電極22の幅を接地用内部電極23と対向しない範囲で第3の信号用内部電極24の幅よりも小さくしてもよい。この場合、耐電圧性を更に確保できる。
【符号の説明】
【0033】
1…貫通コンデンサ、2…コンデンサ素体、2c,2d…端面、2e,2f…側面、3…信号用端子電極、4…接地用端子電極、5…誘電体層、11…第1の電極層、12…第2の電極層、13…第3の電極層、21…第1の信号用内部電極、22…第2の信号用内部電極、23…接地用内部電極、24…第3の信号用内部電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極を配した誘電体層の積層によって形成されたコンデンサ素体と、
前記コンデンサ素体の互いに対向する端面にそれぞれ配置された信号用端子電極と、
前記コンデンサ素体の前記端面とは異なる方向で互いに対向する側面にそれぞれ配置された接地用端子電極と、を備え、
前記コンデンサ素体は、前記誘電体層を介して順に積層された第1の電極層、第2の電極層、及び第3の電極層を有し、
前記第1の電極層は、一方の前記端面から他方の前記端面にかけて延在し、前記各信号用端子電極に接続される第1の信号用内部電極を有し、
前記第2の電極層は、前記第1の信号用内部電極における幅方向の一方側領域に対向した状態で前記各信号用端子電極に接続される第2の信号用内部電極を有し、
前記第3の電極層は、前記第1の信号用内部電極における幅方向の他方側領域に対向し、かつ前記第2の信号用内部電極に対向しない状態で一方の前記接地用端子電極に接続される接地用内部電極を有していることを特徴とする貫通コンデンサ。
【請求項2】
前記第3の電極層は、前記第2の信号用内部電極に対向した状態で前記各信号用端子電極に接続される第3の信号用内部電極を更に有していることを特徴とする請求項1記載の貫通コンデンサ。
【請求項3】
前記コンデンサ素体の中央部分において、前記第1の電極層が複数積層されていることを特徴とする請求項1又は2記載の貫通コンデンサ。
【請求項4】
前記コンデンサ素体の積層方向について対称となるように、前記第1の電極層、前記第2の電極層、及び前記第3の電極層が順に積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の貫通コンデンサ。
【請求項5】
前記第2の信号用内部電極の幅は、前記第3の信号用内部電極の幅よりも大きくなっていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載の貫通コンデンサ。
【請求項6】
前記第2の信号用内部電極の幅は、前記第3の信号用内部電極の幅よりも小さくなっていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載の貫通コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−104784(P2012−104784A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254553(P2010−254553)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】