説明

貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法

【課題】小型で、貫通孔を高密度に有する構造体を高い寸法精度で、容易かつ効率よく製造することが可能なセラミックス構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス原料粉末により、一側縁から他の側縁に連続する凹溝の形成された板状の溝付き成形体を形成する工程と、前記溝付き成形体の複数個を、一つの溝付き成形体の溝形成面が他の溝付き成形体の溝形成面の裏面側に当接されるように、前記セラミックス原料粉末とガラス形成物質粉末とバインダーとを含有する接着剤を介して積層する工程と、複数個積層された前記溝付き成形体の積層物を焼結する工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス構造体の製造方法に係り、特に小型で、貫通孔を高密度に有する構造体を容易かつ収率よく製造することが可能なセラミックス構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、硫酸、硝酸などを製造する化学生成プラント、同種の化学物質を用いる各種化学プラント、エネルギープラント、環境有害物質の処理装置やごみ処理用ガス化溶解炉などに使用される構造部品材料としては、従来の金属材料では高温度での耐食性が不十分なため、熱的、化学的な安定性に優れたセラミックス材料が好適に用いられている。
【0003】
特に、セラミックス熱交換器として、単一の孔(熱放射管)を形成した単純構造を有するチューブ状シングルエンド型が工業炉用に実用化されている。例えば、炉温1150℃の連続式焼鈍炉で使用されているラジアントチューブ(熱放射管)は、内側からバーナーの燃焼により輻射伝熱をするだけでなく、低温の空気をチューブ内に吹き込んで炉内から熱回収する目的でも用いられている。
【0004】
このようなセラミックス熱交換器は、その作製時において、セラミックス部材が高硬度で脆く加工時に損傷し易いことから、大型の構造物とすることが多い。
【0005】
従来のセラミックス構造体の製造方法として、例えば、特許文献1には、複数のセラミックス部材を部品ユニットとして用意し、これら部品ユニットを接合する方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、炭化ケイ素体(炭化ケイ素基焼結体、もしくはその前駆体としての成形体や仮焼体)と多孔質炭化ケイ素体(炭化ケイ素の反応焼結工程における成形体、仮焼体、焼結体など)とを、炭化ケイ素微粉末を含有する熱硬化性樹脂からなるバインダー層を介して重ね合わせ、多孔質炭化ケイ素体の上面側から溶融シリコンを含浸することによって、炭化ケイ素体と多孔質炭化ケイ素体とを接合する方法が記載されている。すなわち、特許文献2に記載の接合方法は、バインダー層中の炭素と溶融シリコンとを反応させることによって反応焼結炭化ケイ素層を形成し、炭化ケイ素体と多孔質炭化ケイ素体とを反応焼結炭化ケイ素層で接合している。また、この接合方法を用いて、例えば、炭化ケイ素体からなる部品ユニット間を、炭化ケイ素粉末を含有した樹脂系接着剤で接着し、脱脂した後、溶融シリコンを含侵させて複数の部品ユニットを接合する方法も行われている。
【特許文献1】特開2002−11653号公報
【特許文献2】特公平5−79630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のセラミックス構造体の製造方法は、大型の構造物を製造するための方法であり、小型で複雑形状の構造体には適用し難い。特に、硬度が高く、脆性を有するセラミックス焼結体に、熱交換用の貫通孔を高密度に形成し、さらに小型化を図ることは極めて困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、小型で、貫通孔を高密度に有する構造体を高い寸法精度で、容易かつ効率よく製造することが可能なセラミックス構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法は、セラミックス原料粉末により、一側縁から他の側縁に連続する凹溝の形成された板状の溝付き成形体を形成する工程と、前記溝付き成形体の複数個を、一つの溝付き成形体の溝形成面が他の溝付き成形体の溝形成面の裏面側に当接されるように、前記セラミックス原料粉末とガラス形成物質粉末とバインダーとを含有する接着剤を介して積層する工程と、複数個積層された前記溝付き成形体の積層物を焼結する工程とを具備することを特徴とする。
【0010】
以下、本発明に係るセラミックス構造体の製造方法について説明する。
【0011】
まず、セラミックス原料粉末とバインダーとを混合した後、公知の成形法で加圧成形して板状の成形体を形成する。セラミックス原料粉末としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素及びサイアロンから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これにより、その焼結体は、他の原料粉末を用いた焼結体と比較して高い熱伝導率を有するため、熱交換器や放射機構などに好適である。また、セラミックス原料粉末に焼結助剤粉末を添加して用いてもよい。焼結助剤粉末としては、イットリア、アルミナ、マグネシア、チタニア及び窒化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。焼結助剤粉末の配合量は、セラミックス原料粉末100重量部に対して、5〜15重量部とすることが好ましい。
【0012】
次に、成形体に型押しによる直接形状付与または研削加工等の生加工処理を施すことによって、成形体の一側縁から他の側縁に、一方向に連続するようにして深さ1〜5mm、幅1〜5mmの凹溝を形成する。
【0013】
この後、複数の溝付き成形体を、接着剤を介して重ね合わせることにより、溝を貫通孔として内部に多数有する積層物を形成することができる。このとき、該成形体の溝形成面を、他の溝付き成形体の溝が形成されていない裏面側に当接するようにして積層する。接着剤としては、樹脂バインダーとセラミックス原料粉末とガラス形成物質粉末とを含有する樹脂系材料を用いることができる。ここで、樹脂バインダーとしては、可塑材を添加したポリビニルアルコール等が挙げられる。ガラス形成物質粉末としては、シリカ等のガラス物質粉末又は上述したような焼結助剤粉末を用いることが好ましい。その組成としては、セラミックス原料粉末100重量部に対して、樹脂バインダーを20〜40重量部、焼結助剤粉末を5〜20重量部、ガラス物質粉末を5〜20重量部含有することが好ましい。これにより、耐環境性に優れた接着が可能である。セラミックス構造体の、接着剤からなる接合層の厚さとしては200〜300μmであることが好ましく、この範囲になるように予め接着剤の塗布量を調整する。
【0014】
続いて、溝付き成形体の積層物を、不活性ガス又は窒素ガス気流中で温度600〜850℃に加熱し、1〜3時間保持することにより脱脂し、続いて、温度1600〜1800℃に加熱し、1〜6時間焼結して、貫通孔を有するセラミックス構造体を得る。
【0015】
上記製造方法によれば、セラミックス原料粉末から溝付き成形体を作製し、溝付き成形体同士を接着剤で接合し、脱脂後、焼結することにより、貫通孔が高密度に形成されたセラミックス構造体を高い寸法精度で、容易且つ収率よく製造することができる。
【0016】
さらに、上述したような特定の接着剤を用いることにより、セラミックス構造体の接合層において剥離や割れの発生がない、信頼性に優れたセラミックス構造体を得ることができる。
【0017】
上記製造方法では、溝付き成形体同士を接着剤で接合して内部に貫通孔を有するセラミックス構造体を作製しているが、特に限定されるものではなく、溝付き成形体を脱脂、焼結して溝付き焼結体としてから、砥石などの機械加工により、該焼結体の両面を平坦化した後、接着剤で接合してもよい。
【0018】
すなわち、本発明に係る貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法は、セラミックス原料粉末により、一側縁から他の側縁に連続する凹溝の形成された板状の溝付き成形体を形成する工程と、前記溝付き成形体を焼結する工程と、焼結された溝付き成形体の両面を平面となるように機械加工する工程と、前記焼結され機械加工された溝付き成形体の複数個を、一つの溝付き成形体の溝形成面が他の溝付き成形体の溝形成面の裏面側に当接されるように、前記セラミックス原料粉末とガラス形成物質粉末とバインダーとを含有する接着剤を介して積層する工程と、複数個積層された前記溝付き成形体の積層物を焼結温度以下に加熱する工程とを具備する方法を用いることもできる。
【0019】
ここで、焼結温度以下とは、800〜1600℃を示し、この温度で1〜6時間保持することが好ましい。これにより、接着剤成分を溶融させてセラミックス構造体の接合層において高い信頼性を有するセラミックス構造体を得ることができる。
【0020】
セラミックス構造体の内部に貫通孔を高密度に形成する方法は、特に限定されるものではなく、以下に示すような中子等を使用した方法で形成することも可能である。
【0021】
すなわち、本発明に係る貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法として、複数の棒状の中子を有する型を用いて、バインダーを含むセラミックス原料粉末から、ゲルキャスティング法、スリップキャスティング法又は加圧成形法により、前記中子に対応した貫通孔を有する成形体を形成する工程と、前記中子に対応した複数の貫通孔を有する成形体を形成する工程と、前記貫通孔を有する成形体を焼結する工程とを具備する方法を用いてもよい。
【0022】
ゲルキャスティング法又はスリップキャスティング法を用いて成形する場合、セラミックス原料粉末、バインダー及び水などの溶媒を混合して、スラリーを作製し、複数の棒状の中子を平行配置した型に鋳込み、該成形法で成形体を形成する。バインダー(固化成形用バインダー)の配合量は、セラミックス原料粉末100重量部に対して、5〜15重量部であることが好ましい。溶媒の配合量は、セラミックス原料粉末100重量部に対して、80〜120重量部であることが好ましい。
【0023】
一方、加圧成形法を用いて成形する場合、セラミックス原料粉末とバインダーとを混合して、加圧軸方向に移動可能な複数の棒状の中子を平行配置した型に充填し、該成形法で成形体を形成する。
【0024】
上記製造方法によれば、成形型内に平行配置した棒状の中子に対応した貫通孔を成形体内部に容易に形成することができる。
【0025】
さらに、本発明に係る貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法として、ハニカム状の口金を用いて、バインダーを含むセラミックス原料粉末から、押出し成形法により、押出し方向に複数の貫通孔を有する成形体を形成する工程と、前記貫通孔を有する成形体を焼結する工程とを具備する方法を用いてもよい。
【0026】
押出し成形を用いて成形する場合、セラミックス原料粉末、バインダー及び水などの溶媒を混合して、混練物を作製し、ハニカム状の口金を挿入しながら押出し成形して、口金に対応した貫通孔を有する成形体を形成する。バインダーの配合量は、セラミックス原料粉末100重量部に対して、20〜40重量部であることが好ましい。溶媒の配合量は、セラミックス原料粉末100重量部に対して、40〜80重量部であることが好ましい。ここでは、ハニカム状の口金を用いたが、ワイヤー状の中子を用いて押出し成形してもよい。
【0027】
上記製造方法によれば、ハニカム形状の口金を挿入しながら押出し成形することにより、上記口金の形状に対応した貫通孔を成形体内部に容易に形成することができる。
【0028】
上述した本発明の製造方法によって得られた貫通孔を有するセラミックス構造体には、その表面に表面改質層を形成してもよい。表面改質層の形成方法としては、例えば、酸素雰囲気中でセラミックス構造体を加熱処理して皮膜を形成する方法、シリカなどのガラス質粉末を溶射して皮膜を形成する方法、又はポリシラザン等の有機溶媒溶液を塗布し、大気中で焼成して皮膜を形成する方法などが挙げられる。これによって、熱伝達特性の制御、耐食性と耐酸化性の改良、強度向上を図ることができる。
【0029】
さらに、本発明の製造方法によって得られたセラミックス構造体の貫通孔内面、該構造体の外表面には、サンドブラスト処理またはウォーターブラスト処理を行ってもよい。これにより、貫通孔内や構造体の外表面を高い寸法精度で仕上げることができる。
【0030】
すなわち、溝付き成形体同士あるいは溝付き焼結体同士を接着剤で接合する際に、過剰な接着剤が成形体または溝付き焼結体に付着する場合がある。特に、貫通孔内面においては、過剰な接着剤の付着が完全に防止できない可能性がある。このような部分について、仕上げ加工法としてサンドブラストまたはウォーターブラストを用いることにより、過剰の接着剤を容易に除去することができ、セラミックス構造体の仕上がり寸法精度を大幅に向上させることができる。
【0031】
したがって、本発明の製造方法によって得られる貫通孔を有するセラミックス構造体は、例えば、化学プラント、エネルギープラント、環境保全プラント等の耐高温部材、耐食性部材、熱交換器部材などに好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法によれば、小型で、貫通孔を高密度に有するセラミックス構造体を高い寸法精度で、容易かつ収率よく製造することができる。
【0033】
また、特定の接着剤を用いることにより、セラミックス構造体の接合層において剥離や割れの発生がない、信頼性に優れた構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。図1は、本発明に係る貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法の製造プロセスを簡潔に示した製造フロー図である。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
まず、窒化ケイ素粉末91重量%と、イットリア5重量%およびアルミナ4重量%からなる調合粉末に、成形用バインダーを加えて混合し、造粒粉を作製した。次に、造粒粉を成形型に充填し、1.0t/cmでプレス成形し、縦100mm×横100mm×厚さ6mmの平板状の成形体を作製した。続いて、直径2mmの超硬ドリルを備えた縦型フライス研削盤により、図2に示すように、上記成形体に、幅3mm×深さ3mmの溝1を一方向に形成し、溝付き成形体2を得た。溝1のピッチは3mmとした。
【0036】
次に、図2に示すように、この溝付き成形体2を10枚積層し、該成形体2同士の接合面に接着剤を塗布して仮接合し、溝を貫通孔5として内部に有する積層物3を得た。積層物3の最上部には、溝なしの平板状成形体4を接着剤で接合した。なお、接着剤は、窒化ケイ素粉末100重量部に対して、シリカ60重量部およびポリビニルアルコール系バインダー40重量部からなり、その塗布量は、接合層の厚さが200〜300μmとなるように調整した。
【0037】
この積層物3を窒素ガス気流中で、800℃で2時間保持して脱脂し、続けて、1780℃で4時間保持して焼結した。これにより、窒化ケイ素構造体を得た。
【0038】
なお、窒化ケイ素構造体の透孔内と、該構造体の外周の一部に過剰な接着剤の付着が認められたため、サンドブラストによる仕上げ加工を実施した。その結果、良好な寸法精度と平滑な貫通孔が形成された窒化ケイ素構造体を得た。
【0039】
[実施例2]
窒化ケイ素粉末91重量%、イットリア5重量%およびアルミナ4重量%からなる調合粉末50重量部に、溶媒45重量部と固化成形(ゲルキャスティング)用バインダー5重量部を加え、均一に混合してスラリー(泥漿)を作製した。次に、貫通孔を形成するための中子を予め配置した成形型内に、上記スラリーを注ぎ込み、固化成形用バインダーの自硬化性反応によりゲル化した成形体を得た(ゲルキャスティング)。貫通孔に相当する中子の断面寸法は幅3mm×深さ3mm、成形体全体のサイズは縦105mm×横105mm×高さ65mmとした。
【0040】
次に、成形体を、乾燥室で徐々に乾燥させた後、窒素ガス気流中、800℃で2時間保持することにより脱脂し、続けて、1780℃で4時間保持して焼結した。
【0041】
なお、中子を取り外して、得られた窒化ケイ素構造体の貫通孔内と該構造体の外表面を観察したところ、貫通孔内と外周の一部に焼結面の粗れが認められたため、サンドブラストによる仕上げ加工を実施した。これにより、図3に示すように、中子の形状に対応した貫通孔を有し、且つ良好な寸法精度と平滑な貫通孔31が形成された窒化ケイ素構造体32を得た。
【0042】
[実施例3]
実施例1と同様な方法で、溝付き成形体を作製した。溝付き成形体同士の接合は行わず、乾燥室で徐々に乾燥させた後、窒素ガス気流中、1780℃で4時間保持して焼結した。
【0043】
次に、焼結体の接合面をダイアモンド砥石(♯400)で平坦に仕上げた後、接着剤を塗布して10枚積層、接合して、積層物を得た。なお、接着剤は、窒化ケイ素粉末100重量部に対して、シリカ粉末100重量部、イットリア33重量部、アルミナ粉末67重量部およびポリビニルアルコール系バインダー120重量部からなり、その塗布量は、接合層の厚さが200〜300μmになるように調整した。
【0044】
この積層物を窒素ガス気流中で、800℃で2時間保持することにより脱脂し、続けて、1650℃で1時間保持した。これにより、窒化ケイ素構造体を得た。
【0045】
なお、窒化ケイ素構造体の貫通孔内と外周部に、部分的に若干のガラス成分の付着が認められたため、サンドブラストによる仕上げ加工を実施した。これにより、良好な寸法精度と平滑な貫通孔が形成された窒化ケイ素構造体を得た。
【0046】
[実施例4]
窒化アルミ93重量%、イットリア焼結助剤7重量%からなる調合粉末に、成形用バインダーを加え、造粒粉を作製した。次に、加圧軸方向に移動可能な棒状の中子を一方向に配置した型に、造粒粉を充填して成形圧力1000kg/cmでプレス成形し、縦100mm×横100mm×高さ100mmの成形体を作製した。貫通孔に相当する中子の断面寸法は幅3mm×深さ3mmとし、中子間のピッチは4mmとした。
【0047】
次に、成形体を窒素ガス気流中、800℃で2時間保持して、脱脂した。続けて、1800℃で4時間保持して、焼結した。
【0048】
この後、中子を除去することにより、中子の形状に対応した貫通孔を有する窒化アルミ構造体を得た。
【0049】
得られた窒化アルミ構造体の貫通孔内と外表面を観察すると、仕上げ加工は不要の状態であり、良好な寸法精度と平滑な貫通孔が形成された窒化アルミ構造体を得た。
【0050】
[実施例5]
炭化ケイ素粉末100重量%、ボロン1重量%および炭素粉末2重量%からなる調合粉末56重量部に、溶媒36重量部と成形用バインダー8重量部を添加、混練して、混練物を作製した。次に、混練物をハニカム状の口金を経由して押出成形して、貫通孔を形成した点以外は、構造体の寸法を含めて実施例2と同様に行った。但し、焼結は、2200℃で4時間保持することで行った。これにより、常圧焼結炭化ケイ素構造体を得た。
得られた常圧焼結炭化ケイ素構造体の細孔内と外表面を観察すると、仕上げ加工は不要の状態であり、良好な寸法精度と平滑な貫通孔が形成された常圧焼結炭化ケイ素構造体を得た。
【0051】
[実施例6]
実施例4の製造方法において、得られた焼結体(窒化アルミ構造体)に、ポリシラザンの有機溶媒溶液を塗布、乾燥した後、870℃で4時間保持することによりシリカ膜を形成した。なお、膜厚が50μmとなるように、塗布量を調整した。
これにより、シリカ膜が形成された窒化アルミ構造体を得た。皮膜にクラック等の欠陥は発生せず、良好な皮膜が形成された。
【0052】
[比較例1]
実施例1と比較する製造方法として、窒化ケイ素91重量%、イットリア5重量%およびアルミナ粉末4重量%からなる混合粉末に、成形用バインダーを加え、造粒粉を作製した。
【0053】
造流粉を、成形圧力1500kg/cmで冷間静水圧プレス(CIP)成形し、縦100mm×横100mm×厚さ60mmのブロック状成形体を作製した。直径1〜2mmの超硬ドリルを備えた縦型フライス研削盤により、ブロック状成形体に、縦3mm×横3mmの断面形状を有する貫通孔を一方向に形成した。溝間のピッチは3mmに設定した。
【0054】
しかし、各貫通孔の長さが約30mm以上になると、隣接する貫通孔同士を隔てる厚さ3mmの隔壁を形成することが困難になり、加工は不可能であった。通常のCIP成形法から貫通孔の生加工プロセスまでを利用した本比較例では、上記のような長大な寸法を有する貫通孔を高密度に備える構造体の作製は不可能であった。
【0055】
[比較例2]
比較例1に係る製造方法を改良する手段として、成形圧力1500kg/cmでCIP成形したブロック状成形体を不活性雰囲気中において1500℃で仮焼し、構造強度を高めた仮焼体の状態で同様に加工することを試みた。
【0056】
しかし、この仮焼体は成形体と比較して、高強度ではあったが、成形体のような粘りが無く、ドリルによる穿孔作業時の衝撃力によって簡単に破損したり、割れを発生したりする問題があり、加工性の顕著な改善は認められなかった。
【0057】
[比較例3]
実施例3と同様にして、焼結体の接合面をダイアモンド砥石(♯400)で平坦に仕上げた後、接着剤を塗布して10枚積層、接合して、焼結体の積層物を得た。なお、接着剤は、シリカ粉末100重量部に対して、ポリビニルアルコール系バインダー40重量部からなる。
【0058】
この積層物を、実施例3と同様に、窒素ガス気流中で加熱すると、十分な接合強度が得られず積層物の接合層で割れを生じた。
【0059】
本比較例では、貫通孔を高密度に有する構造体は得られなかった。
【0060】
上記各実施例および比較例から明らかなように、各実施例に係る製造方法によれば、貫通孔を高密度に備えた構造体を高い寸法精度で、容易且つ収率よく製造することができ、特に細孔を熱放射管や熱媒流路としたコンパクトな熱交換器等の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の製造方法を例示した製造フロー図。
【図2】本発明の製造方法の一例を示す図。
【図3】中子の形状に対応した貫通孔を有するセラミックス構造体の斜視図。
【符号の説明】
【0062】
1…溝、2…溝付き成形体、3…積層物、4…溝なしの平板状成形体、5…貫通孔、31…貫通孔、32…窒化ケイ素構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス原料粉末により、一側縁から他の側縁に連続する凹溝の形成された板状の溝付き成形体を形成する工程と、
前記溝付き成形体の複数個を、一つの溝付き成形体の溝形成面が他の溝付き成形体の溝形成面の裏面側に当接されるように、前記セラミックス原料粉末とガラス形成物質粉末とバインダーとを含有する接着剤を介して積層する工程と、
複数個積層された前記溝付き成形体の積層物を焼結する工程とを具備することを特徴とする貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法。
【請求項2】
セラミックス原料粉末により、一側縁から他の側縁に連続する凹溝の形成された板状の溝付き成形体を形成する工程と、
前記溝付き成形体を焼結する工程と、
前記焼結された溝付き成形体の両面を平面となるように機械加工する工程と、
前記焼結され機械加工された溝付き成形体の複数個を、一つの溝付き成形体の溝形成面が他の溝付き成形体の溝形成面の裏面側に当接されるように、前記セラミックス原料粉末とガラス形成物質粉末とバインダーとを含有する接着剤を介して積層する工程と、
複数個積層された前記溝付き成形体の積層物を焼結温度以下に加熱する工程とを具備することを特徴とする貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法。
【請求項3】
複数の棒状の中子を有する型を用いて、バインダーを含むセラミックス原料粉末から、ゲルキャスティング法、スリップキャスティング法又は加圧成形法により、前記中子に対応した貫通孔を有する成形体を形成する工程と、
前記中子に対応した複数の貫通孔を有する成形体を形成する工程と、
前記貫通孔を有する成形体を焼結する工程とを具備することを特徴とする貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法。
【請求項4】
ハニカム状の口金を用いて、バインダーを含むセラミックス原料粉末から、押出し成形法により、押出し方向に複数の貫通孔を有する成形体を形成する工程と、
前記貫通孔を有する成形体を焼結する工程とを具備することを特徴とする貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法。
【請求項5】
前記焼結されたセラミックス構造体に、表面改質層を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法。
【請求項6】
前記焼結されたセラミック構造体の貫通孔内面に、サンドブラスト処理又はウォーターブラスト処理をすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の貫通孔を有するセラミック構造体の製造方法。
【請求項7】
前記セラミックス原料粉末は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素及びサイアロンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法。
【請求項8】
前記ガラス形成物質粉末は、ガラス物質粉末又はイットリア、アルミナ、マグネシア、チタニア及び窒化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の焼結助剤粉末であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の貫通孔を有するセラミックス構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−8774(P2007−8774A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193110(P2005−193110)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】