説明

貯水ユニット及びこの貯水ユニットを用いた保水性舗装

【課題】 本発明の目的は、雨水の貯水ユニットへの集水効率を高めることができ、同時に貯水ユニット内に溜まっている雨水の保水性ブロックへの給水効率も高くできる貯水ユニット及びこの貯水ユニットを用いた保水性舗装を提供することにある。
【解決手段】 本発明の貯水ユニットは、上部に開口部を有する貯水ボックス2と、貯水ボックス2の開口部を覆いこの貯水ボックス2に通じる通水孔9を有する天板3と、通水孔9を介して貯水ボックス2内に垂下している導水性部材10とからなる貯水ユニット4であって、天板3はその上面に通水孔9を囲むリブ3Aを有していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、舗道や屋上、公園内等に布設される保水性舗装を形成するための貯水ユニット及びこの貯水ユニットを用いた保水性舗装に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部の舗道、ビルの屋上そして公園内の一部においては、通常アスファルトやコンクリートで固められている。そのため夏季の日中、これらの場所では温度上昇が激しく、舗道を歩いたり、屋上で過ごすにはとても厳しい環境条件となる。特に温暖化現象が顕著になってきた昨今においては、日中のみならず夜間においても、この熱がアスファルトやビルの屋上から放熱されて、いわゆるヒートアイランド現象を引き起こす要因の一つにもなっている。
【0003】
このヒートアイランド現象を緩和しようと、道路の脇に木を植えたり、ビルの屋上に芝生を植えたり、あるいは種々の草木や花を植える試みも成されているが、それだけでは十分でなく、さらなる工夫が求められている。
この一環として、特許文献1にあるように保水性舗装ブロック本体の下に容器状の保水タンクを設置し、この保水タンクに降雨時に降った雨水を溜めておき、これを不織布を介して毛細管現象により上方に吸い上げ、保水性舗道ブロック本体から蒸発させて、その蒸発潜熱により保水性舗装ブロック本体を冷やそう、との試みもなされている。
【0004】
しかしながら特許文献1に開示されている保水性舗装ブロックの場合、一部の保水性舗装ブロック本体が目詰まりを起こしたり、枯葉等で覆われたりして、前記一部の保水性舗装ブロック本体下方にある保水タンクに充分雨水が溜まらず、舗装全体にあって冷却ムラが発生する恐れがあった。
【0005】
そこで本発明者らは、前記問題を解決すべく図6に示すような構造の保水性舗装を提案した(特許文献2)。
これは図6に示すように地面を所定深さ掘って整地して固めた路床の上に、例えば、砕石や該砕石上にさらに所定厚さの砂を被せて形成したクッション層等が設けられている下地1の上に、上部に開口部を有する貯水ボックス2とこの貯水ボックス2の開口部を覆う天板3とからなる貯水ユニット4を平面状に複数個敷詰め、さらにこの貯水ユニット4上に、例えば、1〜5mm程度の厚さを有する不織布等からなる透水性防砂部材5を被せ、さらにこの透水性防砂部材5上に土砂等からなる透水性クッション材6を被せた後、この透水性クッション材6上に保水性ブロック7を敷詰めたものである。
【0006】
尚、貯水ユニット4の貯水ボックス2の内部には符号8が示すように貯水空間が形成されていて、この貯水空間8に通ずる通水孔9が各天板3に少なくとも1個ずつ形成されている。またこの通水孔9には、この通水孔9にその上端が接続され、貯水ボックス2内の底面に向かって垂下している導水性部材10が設けられている。
【0007】
この保水性舗装では、雨が降って保水性ブロック7を透水して降下してきた雨水は、透水性クッション材6や透水性防砂部材5を透過した後、天板3に設けられている通水孔9に至り、この通水孔9に接続されている導水性部材10を介して貯水ボックス2内に下り、貯水ボックス2内の貯水空間8に溜まる。
一方、外部の温度が上昇した場合には、貯水空間8内の雨水は毛細管現象により導水性部材10を介して上昇し、最終的には保水性ブロック7等を冷却しながら空気中に放散される。
【0008】
このようにしてなる特許文献2により提案された発明によれば、降った雨は保水性ブロック7、透水性クッション材6を透過して不織布等からなる透水性防砂部材5に至ると、この透水性防砂部材5を介して水平方向に拡散し、仮に目詰まりした保水性ブロック7があってもその保水性ブロック7の下方にも拡散し、結局、いずれの貯水ユニット4にも雨水が行き渡ることが期待されている。
【0009】
期待通り、降った雨は保水性ブロック7等を透水して透水性クッション材6や透水性防砂部材5に至ると水平方向に拡散して、いずれの貯水ユニット4にも雨水が行き渡った。
しかしながら透水性クッション材6や透水性防砂部材5で水平方向に拡散された雨水の一部は、透水性クッション材6や透水性防砂部材5端部から舗装形成部以外の方向にも拡散してしまう。しかもその量が予想外に多いことが判ってきた。
結局、通水孔9を通じて各貯水ボックス2に溜まる雨水の量が目減りし、貯水ユニット4による集水効率が低下することが判った。
逆に外部が高温のとき、貯水ボックス2から保水性ブロック7へ雨水を供給する場合、導水性部材10を介して供給する雨水が透水性防砂部材5や透水性クッション材6で水平方向に拡散し、その一部がやはり舗装形成部以外の方向にも逃げ、保水性ブロック7への給水効率が悪化することも判った。
【0010】
そこでこの問題を解決するために、透水性防砂部材5をなくし、かつ透水性クッション材6を構成する土砂等の粒径を特定範囲に揃える検討を行った。
しかしながら保水性ブロック7から浸透してくる雨水の集水効率を高めようとするならば、土砂の粒径を大きくして貯水ユニット4側への排水性を高める必要があるが、反面、貯水ユニット4内に溜まっている雨水を保水性ブロック7側に供給する給水効率を上げようとするならば、粒径を小さくして毛細管現象を起こし易くする必要がある。
【0011】
このように降った雨水を貯水ユニット4の貯水空間8に集める集水効率を高める粒径と、貯水空間8に溜まっている雨水を導水性部材10を介して上昇させ、保水性ブロック7側に供給する給水効率を高めるための粒径とは相反する関係にある。そのためこれまでのところ貯水ユニット4への雨水の集水効率と、貯水ユニット4から保水性ブロック7への給水効率の両方を満足させる透水性クッション材6を得ることができていない。
【0012】
【特許文献1】特許第2885085号公報(特開平8‐85907号)
【特許文献2】特願2007−111182号(本件出願時未公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の問題に鑑み本発明の目的は、雨水の貯水ユニットへの集水効率を高めることができ、同時に貯水ユニット内に溜まっている雨水の保水性ブロックへの給水効率も高くできる貯水ユニット及びこの貯水ユニットを用いた保水性舗装を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく本発明の請求項1記載の貯水ユニットは、上部に開口部を有する貯水ボックスと、該貯水ボックスの開口部を覆い前記貯水ボックスに通じる通水孔を有する天板と、前記通水孔を介して前記貯水ボックス内に垂下している導水性部材とからなる貯水ユニットであって、前記天板はその上面に前記通水孔を囲むリブを有していることを特徴とするものである。
また請求項2記載の貯水ユニットは、請求項1記載の貯水ユニットにおいて、前記天板はその下面に前記通水孔から前記貯水ボックス内への土砂の侵入を防止する透水性防砂部材を有していることを特徴としている。
【0015】
また請求項3記載の貯水ユニットは、請求項1または請求項2いずれかに記載の貯水ユニットにおいて、前記天板がその上面に有するリブは天板上面に縦横に形成されていて、前記通水孔は前記縦横に形成されているリブで囲まれている区画内に形成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに請求項4記載の保水性舗装は、平面状に複数個敷詰められた請求項1〜請求項3いずれかに記載の貯水ユニットと、該貯水ユニットの天板上面に形成されたリブで囲まれている区画内に充填された透水性クッション材と、前記リブで囲まれている区画内に透水性クッション材が充填された前記貯水ユニット上に直接敷詰められた保水性ブロックとを有することを特徴とするものである。
【0017】
また請求項5記載の保水性舗装は、請求項4記載の保水性舗装において、平面状に複数個敷詰められた請求項1〜請求項3いずれかに記載の貯水ユニットと、該貯水ユニットの天板上面に形成されたリブで囲まれている区画内に充填された透水性クッション材と、前記リブで囲まれている区画内に透水性クッション材が充填された前記貯水ユニット上方に敷詰められた芝生とを有することを特徴としている。
さらにまた請求項6記載の保水性舗装は、請求項4または請求項5いずれかに記載の貯水ユニットにおいて、前記貯水ユニットの天板の少なくとも一部のリブは前記保水性ブロックを位置決めする位置決め機能を有していることを特徴とするものである。
【0018】
このようにしてなる本発明によれば、貯水ユニットにおける天板には、その上面に通水孔を囲むようにリブが形成されている。そしてこの貯水ユニットを用いて保水性舗装を形成する場合には、平面状に複数個敷詰めた各貯水ユニットの天板のリブ内、すなわちリブで囲まれた区画内に珪砂、土あるいは砂等からなる透水性クッション材を充填して、その上に直接保水性ブロックを、あるいはその上方に芝生を敷詰めるものである。
【0019】
そのため、保水性ブロックを透水して下方に浸透してきた雨水は、天板上面に形成されたリブで囲まれた区画内に充填されている透水性クッション材に沁み込む。沁み込んだ雨水は水平方向に拡散しようとしてもリブで遮られるため、リブで囲まれている区画内に溜まり、時間の経過と共にこの区画内に形成されている通水孔及びこの通水孔に装着されている導水性部材を介して貯水ボックス内の貯水空間に集まる。
このように透水性クッション材に沁み込んだ雨水は、四方を囲むリブに遮られて水平方向に拡散することができなくなって、効率よく貯水ボックスの貯水空間に集水されるようになる。
逆に外気温が上昇した場合には、貯水空間から導水性部材を介して上昇した雨水は、リブで囲まれた区画内の透水性クッション材に沁み込むが、沁み込んだ雨水はリブに遮られて四方に拡散できないため効率よく保水性ブロックへと給水される。
【発明の効果】
【0020】
このようにしてなる本発明によれば、雨水の貯水ユニットへの集水効率を高めることができ、同時に貯水ユニット内に溜まっている雨水の保水性ブロックへの給水効率も高くできる貯水ユニット及びこの貯水ユニットを用いた保水性舗装を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図を用いて、本発明の貯水ユニット及びこの貯水ユニットを用いた保水性舗装の一実施形態例を詳細に説明する。尚、図6に示されているものと同一のものには、同一の符号を付してある。
図1は本発明の貯水ユニット4及びこの貯水ユニット4を用いた保水性舗装の縦断面図である。図1に示すように、まず舗装を施す部分の地面を所定深さ掘って整地し、固めた路床の上に、例えば、砕石や該砕石上にさらに所定厚さの砂等を被せて下地1を形成する。しかる後この下地1の上に、上部に開口部を有する貯水ボックス2とこの貯水ボックス2の開口部を覆う天板3とからなる貯水ユニット4を平面状に複数個敷詰める。
因みに、この実施形態例では、天板3の上面には、天板3の外縁に沿ってとその内側に縦横に2列ずつ直線的にリブ3Aが設けられていて、結果的には格子状にリブ3Aが形成されている。
【0022】
またリブ3Aで格子状に区切られている区画3Bの中心部に通水孔9が、この例では1個ずつ設けられている。もちろん、各区画3B内に複数個の通水孔9を設けてもよいことはいうまでもない。
さらにまた天板3の裏面(下面)には、不織布等の透水性防砂シートからなる透水性防砂部材5をピンや接着剤等で貼り付けてある。尚、この透水性防砂部材5にあっては、前通水孔9に導水性部材10を装着する箇所に、予め導水性部材10を通すための穴が形成されている。
ところで、通水孔9の穴径が比較的小さく、リブ3Aで囲まれている区画3Bに充填する砕石等からなる透水性クッション材6の粒径が通水孔9の穴径よりも大きいなら、敢えてこの透水性防砂部材5を天板3の下面に装着する必要はない。
【0023】
このように下面に透水性防砂部材5を、上面にリブ3Aを有する天板3が貯水ボックス2の開口部に被せられた貯水ユニット4を下地1上に敷詰めたら、まず各貯水ユニット4、4の隙間に砕石等からなる透水性の充填材11を詰め込む。次にリブ3Aで囲まれた区画3B内に砕石、珪砂あるいは土砂等からなる透水性クッション材6をほぼリブ3Aと同じ高さまで充填する。
最後に平面状に敷詰めた複数個の貯水ユニット4上に直接、複数個の保水性ブロック7を平面状に敷詰める。
ここで貯水ユニット4上に直接、保水性ブロック7を敷詰める、とは、天板3のリブ3Aの上端に保水性ブロック7の下面がほぼ接するように保水性ブロック7を敷詰めることを意味している。
【0024】
このようにしてなる図1に示す保水性舗装によれば、保水性ブロック7を透水して下方に浸透してきた雨水は、天板3の上面に形成されたリブ3Aで囲まれた区画3B内に充填されている透水性クッション材6に沁み込む。沁み込んだ雨水は水平方向に拡散しようとしても四方がリブ3Aで遮られているため、区画3B内に留まり、時間の経過と共に区画3B内に形成されている通水孔9及びこの通水孔9に装着されている導水性部材10を介して貯水ボックス2内の貯水空間8に溜まる。符号20は貯水空間8内に溜まった雨水を示している。
【0025】
このように透水性クッション材6に沁み込んだ雨水は、リブ3Aに四方を遮られて水平方向に拡散することができなくなるため、効率よく貯水ボックス2の貯水空間8に集水されるようになる。
また天板3の下面には透水性防砂部材5が装着されているため、通水孔9を通って貯水空間8に侵入しようとする土砂はこの透水性防砂部材5で遮られる。よって土砂の貯水ボックス2内への侵入が防止できる。
因みに、導水性部材10はすべての通水孔9に装着されている必要はなく、各貯水ユニット4において、少なくとも一個の導水性部材10が、区画3B内のいずれかの通水孔9に装着されていればよい。もちろん導水性部材10が多いほど雨水を貯水ボックス2に集める集水効率と集めた雨水を保水性ブロック7に供給する給水効率は向上する。
【0026】
図2は天板3の別の実施形態例を示すもので、天板3を上方からみた平面図、図3は図2のA−A断面図である。この例ではリブ3Aは天板3の外縁と共に、天板3の上面全体に等間隔で複数本、縦横にかつ格子状に形成されている。加えて各リブ3Aで平面正方形状に区切られている各区画3B内には通水孔9が一個ずつ設けられている。
図4は、天板3のさらに別の実施形態例を示す縦断面図で、天板3とこの天板3上に敷詰められた保水性ブロック7との関係を示している。
図4に示すように、この例では、図4の下方に○印部の拡大図を示しているが、この拡大図が示すように、外縁のリブ3Aには、保水性ブロック7を布設する際、保水性ブロック7の位置決めが容易にでき、保水性ブロック7の布設作業がより簡単にできるように位置決め用切欠3Cが設けられている。尚、外縁のリブ3Aは保水性ブロック7の下部を支える位置決め用切欠3Cの高さ分、内側のリブ3Aよりも高く形成されている。
ところで図4では、外縁のリブ3Aに保水性ブロック7の下部を支える位置決め用切欠3Cを設けているが、別の位置のリブ3Aに位置決め機能を持たせることもできる。例えば、内側のリブ3Aの先端に嵌合突起を、保水性ブロック7の対応する下面に嵌合穴を形成する等、双方に嵌合部を設ける方法もある。
【0027】
図5は本発明の保水性舗装の、別の実施形態例を示す縦断面図である。図1に示す保水性舗装との相違は、通水孔9を貫通して、その上端が保水性ブロック7の下面にほぼ接する位置まで導水性部材10の上端を延長せしめた点にある。
このように導水性部材10が保水性ブロック7の下面にほぼ接するように延びていると、貯水ボックス2への集水効率が向上するが、それ以上に、高温時における貯水空間8から保水性ブロック7への給水がより効率的に行われ、保水性ブロック7の冷却効率をより高めることができる。
【0028】
但し、このように保水性ブロック7の下面まで導水性部材10が延びていると、その分導水性部材10を破損させる危険性が高くなるが、図5に示す実施形態例では、導水性部材10を延長しても、基本的にはこの導水性部材10がリブ3Aで囲まれた区画3Bに入っているため、外部から導水性部材10に負荷しようとする力を遮ってくれる。
このように図5に示すものでは、導水性部材10が通水孔9の上方に延びていても損傷し難くなっている。
【0029】
尚、この導水性部材10としては、例えば、シリカ粉末を柱状あるいはパイプ状に成形したもの等が用いられる。導水性部材10が柱状の場合には、図1に示すように天板3に形成されている通水孔9の内径と導水性部材10の外径をほぼ等しく作っておけば、通水孔9に導水性部材10を嵌めることができる。そしてその下端は貯水ボックス2の底面にほぼ接する位置まで延ばしておく。あるいはその上端を図5に示すように通水孔9を貫通させて保水性ブロック7の下面に接するまで延長させておく。
【0030】
このようにシリカ粉末製の導水性部材10は多孔質の成形体であるから毛細管現象も働き易く、特に外部の環境が高温の際には、貯水ボックス2の貯水空間8からの雨水の上昇に大きく寄与し、保水性ブロック7等を冷却する上でその効果は極めて大きい。
もちろん導水性部材10としてはシリカ粉末による成形体に限らず、不織布等の透水性部材を円筒状、円柱状、あるいはそれ以外の形状にしたものでもよいことはいうまでもない。但し、その下端は、貯水ボックス2内の底面に接触させる程度に垂下されて取り付けられていることが肝要である。そのようにしておけば貯水ボックス2内の貯水量が極くわずかであっても雨水を最後迄有効に上昇させ、使い切ることができるからである。
【0031】
ところで貯水ボックス2の大きさとしては、最大幅、すなわち、前述実施形態例のような平面形状略正方形である場合ならその一辺が、長方形ならその長辺が最大500mm未満になっていることが好ましい。何故ならば、稀に舗道に隣接する店舗等に荷物を搬送するため、あるいは事故等でトラックが一時的に舗道に乗り上げる場合があるからである。例えば、25トントラックの場合、タイヤの設置面積はタイヤ2本分、すなわち、200mm(L)×500mm(W)なので、貯水ボックス2の最大幅を500mm未満にしておけば、タイヤが最悪でも貯水ボックス2内にすっぽり収まる位置に来ることはない。それ故、トラック等の車が舗道に乗り上げる可能性の高い場所だけでも、貯水ボックス2として、その最大幅が500mm以下のものを用いておけば、最悪この貯水ボックス2上にトラックが駐車しても貯水ボックス2の損傷の恐れを少なくでき好ましい。
【0032】
また貯水ボックス2、天板3とも樹脂で形成すれば、リブ3Aや位置決め用切欠3C等の加工も容易で製造し易い。しかも樹脂のリサイクル材も使用でき好ましい。但し、特に荷重負担が大きな場所に布設する貯水ユニット4にあっては、貯水ボックス2や天板3のいずれか、あるいは総てを金属製にしてもよい。
【0033】
ところで前記各実施形態例では、本発明を舗道に適用した例のみ示しているが、本発明の貯水ユニット及び保水性舗装は舗道に限らず、例えば、ビルの屋上や公園内等の人が多く集まる場所において、特に夏季に環境温度を下げたいような場所にも適用可能である。また、駐車場にも適用できるが、その場合には貯水ユニットの機械的強度には十分な配慮が必要である。具体的には、例えば、貯水ボックスの最大幅を小さくしたり、貯水ボックスの壁部や天板の厚さを厚くする等の工夫が必要である。またリブの幅を大きくしたり、格子状にリブを形成したり、かつその形成間隔を小さくする工夫も効果的である。
【0034】
以上説明したように本発明の貯水ユニット及びこの貯水ユニットを用いた保水性舗装によれば、保水性ブロック7を透水して下方に浸透してきた雨水は、天板3上面に形成されたリブ3Aで囲まれた区画3B内に充填されている透水性クッション材6に沁み込む。沁み込んだ雨水は水平方向に拡散しようとしても四方をリブ3Aで遮られるため、区画3B内に溜まり、時間の経過と共に通水孔9及びこの通水孔9に装着されている導水性部材10を介して貯水ボックス2内の貯水空間8に集まる。
このように透水性クッション材に沁み込んだ雨水は、四方を囲むリブに遮られて水平方向に拡散することができなくなって、効率よく貯水ボックスの貯水空間に集水されるようになる。逆に外気温が上昇した場合には、貯水空間から導水性部材を介して上昇した雨水は、リブで囲まれた区画内の透水性クッション材に沁み込むが、沁み込んだ雨水は四方に拡散できないため効率よく保水性ブロックへと給水される。
【0035】
また天板3の下面に透水性防砂部材5を装着すれば、貯水ボックス2内への土砂の侵入を効果的に防止できる。さらにリブ3Aの一部に位置決め用切欠3Cを設けておけば、貯水ユニット4上に保水性ブロック7を敷詰める際、保水性ブロック7の位置決めが容易になるため布設作業が簡単になる。
また図1及び図5においては、貯水ユニット4の上に保水性ブロック7を敷き詰めているが、区画3Bに透水性クッション材6が充填されている貯水ユニット4の上方、すなわちリブ3A上に、保水性ブロック7に替えて透水性、保水性に優れている芝生を敷き詰めても同様の効果を期待できる。このような実施形態は、特に芝生が多い公園内にこの貯水ユニットを用いた保水性舗装を布設する場合に、外観的にも優れ好適である。
尚、このように芝生を敷き詰める場合には、区画3Bに透水性クッション材6が充填されている貯水ユニット4の上に、必要に応じてさらに、例えば芝生生育用の透水性材料層を介在させることもできる。具体的には、前記の透水性クッション材6が酸性が強い土砂から形成されている場合には、これを緩和すべく土に石灰や栄養素を混ぜ合わせた透水性材料層を透水性クッション材6上に設けたり、あるいは各貯水ユニット4上全体にわたって広く形成し、この上に芝生を敷き詰めることもできる。
【0036】
このようにしてなる本発明によれば、雨水の貯水ユニットへの集水効率を高めることができ、同時に貯水ユニット内に溜まっている雨水の保水性ブロックへの給水効率も高くできる貯水ユニット及びこの貯水ユニットを用いた保水性舗装を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る貯水ユニット及び保水性舗装の一実施形態例を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明に用いる天板の別の実施形態例を示す天板を上から平面図である。
【図3】図2に示す天板のA−A断面図である。
【図4】本発明に用いる天板のさらに別の実施形態例を示す天板を上から平面図である。
【図5】本発明に係る貯水ユニット及び保水性舗装の別の実施形態例を示す概略縦断面図である。
【図6】従来の貯水ユニット及び保水性舗装の別の実施形態例を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 下地
2 貯水ボックス
3 天板
3A リブ
3B 区画
3C 位置決め用切欠
4 貯水ユニット
5 透水性防砂部材
6 透水性クッション材
7 保水性ブロック
8 貯水空間
9 通水孔
10 導水性部材
11 透水性の充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する貯水ボックスと、該貯水ボックスの開口部を覆い前記貯水ボックスに通じる通水孔を有する天板と、前記通水孔を介して前記貯水ボックス内に垂下している導水性部材とからなる貯水ユニットであって、前記天板はその上面に前記通水孔を囲むリブを有していることを特徴とする貯水ユニット。
【請求項2】
前記天板はその下面に前記通水孔から前記貯水ボックス内への土砂の侵入を防止する透水性防砂部材を有していることを特徴とする請求項1記載の貯水ユニット。
【請求項3】
前記天板がその上面に有するリブは天板上面に縦横に形成されていて、前記通水孔は前記縦横に形成されているリブで囲まれている区画内に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2いずれかに記載の貯水ユニット。
【請求項4】
平面状に複数個敷詰められた請求項1〜請求項3いずれかに記載の貯水ユニットと、該貯水ユニットの天板上面に形成されたリブで囲まれている区画内に充填された透水性クッション材と、前記リブで囲まれている区画内に透水性クッション材が充填された前記貯水ユニット上に直接敷詰められた保水性ブロックとを有することを特徴とする保水性舗装。
【請求項5】
平面状に複数個敷詰められた請求項1〜請求項3いずれかに記載の貯水ユニットと、該貯水ユニットの天板上面に形成されたリブで囲まれている区画内に充填された透水性クッション材と、前記リブで囲まれている区画内に透水性クッション材が充填された前記貯水ユニット上方に敷詰められた芝生とを有することを特徴とする保水性舗装。
【請求項6】
前記貯水ユニットの天板の少なくとも一部のリブは前記保水性ブロックを位置決めする位置決め機能を有していることを特徴とする請求項4または請求項5いずれかに記載の貯水ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−52261(P2009−52261A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219238(P2007−219238)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】