説明

貯湯式給湯機

【課題】急激な流量変化が発生しても温度変動の少ない貯湯式給湯器を提供すること。
【解決手段】本発明の貯湯式給湯器は、貯湯タンク9と、貯湯タンク9より高温水を出湯する出湯管12と、貯湯タンク9に水を供給する第1給水管13と、出湯管12と第1給水管13から分岐した第2給水管14とを接続し湯水を混合する混合手段15と、混合手段15によって混合した湯水を給湯端末11へ供給する給湯管44と、給湯管44を流れる湯の流量を検出する流量検知手段17と、混合手段15の下流側に混合した湯水の温度を検出する温度検出手段16と、流量検出手段17および/または温度検出手段16での検出値に基づいて、混合手段15を制御する制御装置とを備え、流量検知手段17が湯水の出湯を検出しているときに、一定期間内に所定流量以上の流量差を検出したときに、混合手段15の湯水の混合比を所定の混合比にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合弁を有する貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の貯湯式給湯器において、給湯端末へ供給する湯水は、貯湯タンク内の高温水と、給水源から供給される水とを、混合弁にて混合して生成される。一般的に、その混合弁の開度の制御は、混合弁の下流側にあるサーミスタで検出される温度情報を元にして、目標温度との温度偏差に応じて湯水の混合比を制御し、カラン等の給湯端末へ目標温度の湯を提供している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−179880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、混合弁よりも下流側で、台所の蛇口や、浴室内のシャワー等、複数の給湯端末へ分岐して混合弁で生成された湯水が供給されている。その結果、例えば、蛇口とシャワーの両方から出湯している状態から、蛇口のみの出湯へと状態が変化した場合には、急激な流量変化が生じてしまい、その結果、混合弁よりも下流側で急激な流量変化が生じた場合、湯圧および水圧の関係から同じ出湯温度であっても、混合弁の開度を大きく変更しなければならず、その結果、ハンチングを引き起こしてしまうという課題を有していた。
【0004】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、急激な流量変化が発生しても温度変動の少ない貯湯式給湯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の貯湯式給湯器は、湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクの上方部より高温水を出湯する出湯管と、給水源から前記貯湯タンクに水を供給する第1給水管と、前記出湯管と前記第1給水管から分岐した第2給水管とを接続し湯水を混合する混合手段と、前記混合手段によって混合した湯水を給湯端末へ供給する給湯管と、前記給湯管を流れる湯の流量を検出する流量検知手段と、前記混合手段の下流側に混合した湯水の温度を検出する温度検出手段と、前記流量検出手段および/または前記温度検出手段での検出値に基づいて、前記混合手段を制御する制御装置とを備え、前記流量検知手段が湯水の出湯を検出しているときに、一定期間内に所定流量以上の流量差を検出したときに、前記混合手段の湯水の混合比を所定の混合比にすることにより、流量特性に応じて混合弁の開度を変更するので、急激な流量変化が生じても混合弁から出湯される湯の温度変動を抑制することができ、使用者に不快感を与えることがない。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、急激な流量変化が発生しても温度変動の少ない貯湯式給湯器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の発明の貯湯式給湯器は、湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクの上方部より高温水を出湯する出湯管と、給水源から前記貯湯タンクに水を供給する第1給水管と、前記出湯管と前記第1給水管から分岐した第2給水管とを接続し湯水を混合する混合手段と、前記混合手段によって混合した湯水を給湯端末へ供給する給湯管と、前記給湯管を流れる湯の流量を検出する流量検知手段と、前記混合手段の下流側に混合した湯水の温度を
検出する温度検出手段と、前記流量検出手段および/または前記温度検出手段での検出値に基づいて、前記混合手段を制御する制御装置とを備え、前記流量検知手段が湯水の出湯を検出しているときに、一定期間内に所定流量以上の流量差を検出したときに、前記混合手段の湯水の混合比を所定の混合比にすることにより、流量特性に応じて混合弁の開度を変更するので、急激な流量変化が生じても混合弁から出湯される湯の温度変動を抑制することができ、使用者に不快感を与えることがない。
【0008】
第2の発明の貯湯式給湯器は、特に第1の発明において、一定期間内に所定流量以上の流量差を検出したときに、混合比を所定値だけ増加もしくは減少することにより、混合弁で混合する湯温の設定温度が何度に設定されていても、所定流量以上の流量差が生じれば決まった所定値だけ増減するので、簡単な制御で温度変動を抑制することができる。
【0009】
第3の発明の貯湯式給湯器は、特に第1または第2の発明において、前記流量検知手段が所定流量以上の流量差を検出した際に、前記混合手段の駆動速度を通常の駆動速度よりも速くすることにより、出湯温度変動の回復時間を短縮することができ、使用者の不快感をさらに減少させることができる。
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における貯湯式給湯器の構成図である。図1において、本実施の形態の貯湯式給湯器1は、冷凍サイクル2と湯を沸き上げるための加熱サイクル3から構成されている。
【0012】
冷凍サイクル2は、圧縮機5と冷媒熱交換器6と膨張弁7と蒸発器8とを順次冷媒配管で環状に接続して構成されており、冷凍サイクル2内には冷媒が循環している。冷媒には二酸化炭素冷媒を用いる。なお、冷媒としては、他にもR410a等のフロン系冷媒、プロパン等の炭化水素系冷媒などが挙げられる。
【0013】
加熱サイクル3は、貯湯タンク9と冷媒熱交換器6と積層ポンプ10とを順次給湯配管で環状に接続して構成されており、積層ポンプ10を駆動することで、貯湯タンク9の下方部の低温水を冷媒熱交換器6へ送り、冷媒熱交換器6では高温冷媒から熱を受け取ることで高温水を生成し、生成した高温水は貯湯タンク9の上方から積層状態で貯えられていく。この貯湯運転は、夜間などの決まった時間もしくは貯湯タンク内の残湯から決定される時間になると開始し、貯湯タンク9内に高温の湯水で満たされるまで続けられる。
【0014】
次に、カラン等の給湯端末11への湯の供給について説明する。貯湯タンク9の上部には、高温水を出湯する出湯管12と給水源から前記貯湯タンクに水を供給する第1給水管13と、出湯管12と第1給水管13から分岐した第2給水管14とを接続し混合装置である電動式混合弁15で湯と水を混合する。電動式混合弁15の下流には、湯水の温度を検出するサーミスタ16と湯水の流量を検出する流量検出装置17が、給湯管44に備えられている。
【0015】
また、混合弁の制御などを行うマイコンや電子部品で構成された制御装置(図示せず)が設けられており、通常、電動式混合弁15の制御は、サーミスタ16で検出する温度が使用者が設定した設定温度になるように制御装置(図示せず)がフィードバック制御を行う。
【0016】
ところで、給湯端末11は複数の端末に分岐しており、電動式混合弁15で混合された
湯は、複数の端末へと分岐されて供給される。例えば、台所の蛇口や浴室のシャワーへといった複数の端末に分岐している。そのため、はじめは蛇口から湯水を出していて、急に蛇口とシャワーの両方から湯水を出し始めると、一つの混合弁から出湯される湯水の流量が急激に増加してしまう。もしくは、蛇口とシャワーの複数の端末から湯水を出していて、急に一つの端末からのみ湯水を出す構成にすると、同様に一つの混合弁から出湯される湯水の流量が急激に減少してしまう。
【0017】
このように急激に所定流量以上の流量差が増減してしまうと、出湯管12および第2給水管14で生じる圧力損失が、流量によって異なるために、設定温度が同じであっても、混合弁の開度が異なってしまう。特に低流量になるほど、圧力損失が大きく影響してしまい、その結果混合弁の開度にも影響を与えてしまう。そのため、流量が大きく変わるたびに、混合弁が駆動することになるので、フィードバック制御のみで電動式混合弁15を駆動してしまうと、湯温が激しく変動し、使用者に不快感を与えてしまう。
【0018】
本発明では、フィードバック制御に加えてフィードフォワード制御を用いることで、急激な流量変化が発生しても、温度変動を小さく抑えている。次に、本発明の電動式混合弁15の制御について具体的に説明する。
【0019】
図2は、流量による混合弁の開度変化を表した図である。図2の曲線aは、給湯端11から出湯する流量が10.0L/minの時の開度変化を表している。また、曲線bは、給湯端末11から出湯する流量が3.0L/minの時の開度変化を表している。この両曲線を比較すると、例えば、設定温度が40度の時には、曲線aの場合、湯側の混合比率が40パーセントであるが、曲線bの場合、湯側の混合比率が60パーセントとなる。これは、低流量ほど配管での圧力損失が大きくなってしまい、混合弁に供給される湯量が減ってしまうために、より湯側に開かなければ設定温度の湯を生成することができないからである。
【0020】
そこで、流量が一定期間内に所定値だけ急激に増加した場合には、配管での圧力損失が、ある程度小さくなることを予測して、混合比率を所定値だけ減少させる。そのため、流量が急激に増加したときに、ある程度の予測量だけ混合弁の開度を減少させてからフィードバック制御をするので、フィードバック制御だけで混合弁の開度を調節するよりも湯温の変動を抑えた混合弁の駆動を行うことができる。
【0021】
また、流量が一定期間内に所定値だけ急激に減少した場合には、配管での圧力損失が、ある程度大きくなることを予測して、混合比率を所定値だけ増加させる。そのため、流量が急激に減少したときに、ある程度の予測量だけ混合弁の開度を増加させてからフィードバック制御をするので、フィードバック制御だけで混合弁の開度を調節するよりも湯温の変動を抑えた混合弁の駆動を行うことができる。
【0022】
例えば、流量が一定期間である1.2秒間のうちに7.0L/min以上の流量変化があった場合には、混合弁の開度を、まず20パーセントだけ変化させた後に、サーミスタ16で検出する温度が設定温度となるようにフィードバック制御で混合弁を駆動する。
【0023】
つまり7.0L/minの流量増加があれば、混合弁の開度を湯側に20パーセントだけ減少させ、7.0L/minの流量減少があれば、混合弁の開度を湯側に20パーセントだけ増加させる構成としている。このように流量変化が大きい場合には、設定温度が同じであっても混合弁の開度が大きく変わってしまうので、まず、所定の混合比に混合弁を駆動させた後、サーミスタ16の温度に基づいて混合弁の開度を駆動させることで、湯温の変動を抑えることができる。
【0024】
なお、本実施の形態では、設定温度に関わらず、一律20パーセントだけ増減させる構成としているが、この数値は20パーセントに限定されることはなく、予め実験で定めた数値としてもよい。また、流量と設定温度とのマトリクスから最適な混合比を予め設定しており、流量変化があった時には、そのマトリクスを元に、混合比を設定する構成でもよい。
【0025】
さらに、固定値だけ混合弁の開度を駆動する構成としているが、予め流量毎に混合比率と設定温度との関係式を複数有しており、流量に応じた関係式に基づいて混合弁の開度を変更する構成でもよい。例えば、図2に示す曲線aや曲線bのような関係式を複数用意しておき、10.0L/minの流量の場合は、曲線aに基づいて混合弁の開度を決定し、3.0L/minの流量になった場合は、曲線bに基づいて決定された設定温度に対応する混合弁の開度となるように混合弁を駆動する。その結果、流量変化が発生したとしても湯温の変動を抑えた快適な貯湯式給湯機を提供することができる。
【0026】
図3は、流量検出装置17で検出された流量と温度偏差に基づいて電動式混合弁15の駆動速度を示した図である。図3における温度偏差とは、設定した給湯端末の設定温度と、サーミスタ17で実際に検出された温度との絶対値であり、例えば、設定温度が40℃で、サーミスタ17で検出された温度が35℃の時には、温度偏差は5℃となる。また、図3に示すPPSとは、Pulse/Secondを表しており、1秒当たりの駆動速度を示している。
【0027】
図3に示すように、通常の電動式混合弁15の制御は、流量検出装置15が検出する流量が7.0L/min以上の場合には、高流量であると判断し、高流量モードを選択し、さらに現在の温度偏差を算出することにより、複数ある段階から1つの段階を選択し、該当する駆動速度で電動式混合弁13を制御する。また、流量が高ければ高いほど、ユーザーに貯湯タンク1から供給される時間は短いので、流量が低い時に比べてより速い駆動速度で混合弁を動作させる必要があり、また、温度偏差が大きければ大きいほど、より速く設定温度とサーミスタ15で検出される値との差を縮めなければならないので、温度偏差が小さいときに比べてより速い駆動速度で混合弁を動作させる必要がある。なお、図3に示す駆動速度は予め定められた実験値であり、状況に応じて変更することができる。
【0028】
しかしながら、給湯端末11で出湯中に所定流量以上の流量差が生じると、電動式混合弁15の混合比は流量に応じて混合比が異なる。電動式混合弁15の混合比を所定位置まで素早く駆動させなければ、給湯端末13の温度変動は大きくなり、使用者に不快感を与えてしまう。そのため、図3に示す通常の混合弁の駆動速度では、オーバーシュートやアンダーシュートが発生してしまうので、図4に示すように、流量変化に応じた駆動速度のマトリクスを新たに用意することで、流量変化時の混合弁の駆動を行っている。
【0029】
つまり、通常の混合弁の駆動は、図3に示すように流量検知量に基づいて駆動速度で混合弁を駆動しており、所定量の流量変化が生じたときには、図4に示すように、流量変化量に応じて駆動速度を変更している。このように混合弁の駆動速度において、通常の混合弁の駆動速度と、所定量の流量変化が生じた時の駆動速度とを変更することで、さらに快適な湯温制御を行うことができる。
【0030】
例えば、流量検出装置17で検出する流量が10L/minの時の混合弁の駆動速度は、図3に示す高流量モードに規定される混合弁の駆動速度に基づいて混合弁を駆動する。そして、流量検出装置17で検出する流量が3.0L/minに急激に減少すると、図3に示す低流量モードに規定される混合弁の駆動速度に基づいて混合弁を駆動するのではなく、図4に示す中流量モードに基づいた混合弁の駆動速度で、所定の開度まで駆動する。
【0031】
そして、所定の開度まで駆動した後は、図3の中流量モードに基づいて混合弁の駆動速度を変化させる。このように、所定の流量変化があった場合に、所定の開度まで駆動する速度を、通常の混合弁制御の駆動速度よりも、さらに早い駆動速度で駆動することで、より湯温の変動を抑えることができる。なお、図3および図4に示す駆動速度は、予め定められた実験値であり、状況に応じて変更することができる。
【0032】
以上のように、流量差に応じて混合弁の駆動速度を制御することにより、オーバーシュート現象またはアンダーシュート現象の継続時間を最小にすることができ、より快適な温度制御を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明はヒートポンプ式の貯湯式温水器に限らず、電気、ガス、石油、燃料電池などいずれの方式においても、一つの貯湯タンクから複数の給湯機器に湯水を供給する貯湯式温水器に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1における貯湯式給湯機の構成図
【図2】同実施の形態における給湯端末へ供給する湯量と混合弁の混合比の関係を示した図
【図3】同実施の形態における電動式混合弁の通常温度制御の駆動速度を示した図
【図4】同実施の形態における電動式混合弁の流量変化があった場合の駆動速度を示した図
【符号の説明】
【0035】
1 貯湯式給湯機
2 冷凍サイクル
3 加熱サイクル
5 圧縮機
6 冷媒熱交換器
7 膨張弁
8 蒸発器
9 貯湯タンク
10 積層ポンプ
11 給湯端末
12 出湯管
13 第1給水管
14 第2給水管
15 電動式混合弁
16 サーミスタ
17 流量検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクの上方部より高温水を出湯する出湯管と、給水源から前記貯湯タンクに水を供給する第1給水管と、前記出湯管と前記第1給水管から分岐した第2給水管とを接続し湯水を混合する混合手段と、前記混合手段によって混合した湯水を給湯端末へ供給する給湯管と、前記給湯管を流れる湯の流量を検出する流量検知手段と、前記混合手段の下流側に混合した湯水の温度を検出する温度検出手段と、前記流量検出手段および/または前記温度検出手段での検出値に基づいて、前記混合手段を制御する制御装置とを備え、前記流量検知手段が湯水の出湯を検出しているときに、一定期間内に所定流量以上の流量差を検出したときに、前記混合手段の湯水の混合比を所定の混合比にすることを特徴とする貯湯式給湯器。
【請求項2】
一定期間内に所定流量以上の流量差を検出したときに、混合比を所定値だけ増加もしくは減少することを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯器。
【請求項3】
前記流量検知手段が所定流量以上の流量差を検出した際に、前記混合手段の駆動速度を通常の駆動速度よりも速くすることを特徴とする請求項1または2に記載の貯湯式給湯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−250502(P2009−250502A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97929(P2008−97929)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】