説明

貯蔵に安定なグルコースオキダーゼ

本願発明は少なくとも1つのグルコースオキシダーゼ酵素を含む方法と組成物を提供する。ここで、本グルコースオキダーゼは向上した貯蔵安定性をもつ。いくつかの好ましい実施例では、本グルコースオキシダーゼ酵素は高温に暴露された後も安定である。他の好ましい実施態様では、本グルコースオキシダーゼは液剤において向上した貯蔵安定性をもつ。いくつかの特に好ましい実施態様では、本願発明はアスペルギルス種(Aspergillus sp.)より得られたグルコースオキシダーゼを含む方法と組成物を提供する。一層好ましい実施態様では、本グルコースオキシダーゼはアスペルギルス・ニゲル(A.niger)から得られる。本願発明は、人の介護等、洗浄を含む用途がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本願は2006年12月20日に出願された米国仮出願第60/875,968号に基づく優先権を主張する。この出願は引用により全てを本願に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本願発明は少なくとも1個のグルコースオキシダーゼ酵素(ブドウ糖酸化酵素)を含む方法及び組成物を提供する。ここで、本グルコースオキシダーゼは向上した貯蔵安定性をもつ。いくつかの好ましい実施態様では、本グルコースオキシダーゼ酵素は高い温度に暴露された後に安定である。いくつかの他の好ましい実施態様では、本グルコースオキシダーゼは、液剤で向上した貯蔵安定性をもつ。いくつかの特に好ましい実施態様では、本願発明はアスペルギルス種(Aspergillus sp.)から得られるグルコースオキシダーゼを含む方法と組成物を与える。いくつかの特に好ましい実施態様では、本グルコースオキシダーゼはアスペルギルス・ニゲル(A.niger)から得られる。本願発明は、洗浄を含む用途で使用される。いくつかの特に好ましい実施態様では、本願発明は介護製品、介護用途に使用される。
【背景技術】
【0003】
本願発明の背景
グルコースオキシダーゼ(E.C.1.1.3.4)は、酸素によリグルコースを酸化し、D-グルコン酸と過酸化水素が生成する反応を触媒する。これらの酵素は、水分を含む食製品、香味料、密封された食品包装のほか、タマゴの脱糖(desugaring)、飲料水からの酸素除去を含みかつこれらに限定されない、多くの産業的用途がある。これらの酵素はまた、産業用の溶液と体液(例.血液と尿)中のグルコースの検出と除去にも使用されている。
【0004】
しかし、これらの酵素は種々の条件下で不安定であることが見出されている。よって、本酵素は種々の産業や、多くの製品に使用されているが、本願技術分野ではこれらの産業で共通の条件で安定であるグルコースオキシダーゼが依然必要とされている。実際、本酵素を安定化させる方法に関する殆どの報告は、バイオセンサーで使用される固定化されたグルコースオキシダーゼである。従って、他の産業での用途に適した貯蔵安定性グルコースオキシダーゼが依然必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
発明の要約
本願発明は少なくとも1個のグルコースオキシダーゼ酵素を含む方法と組成物を提供する。ここで、本グルコースオキシダーゼは向上した貯蔵安定性をもつ。好ましい実施態様では、本グルコースオキシダーゼ酵素は高い温度に暴露後に安定である。いくつかの他の実施態様では、本グルコースオキシダーゼは液剤で向上した貯蔵安定性をもつ。いくつかの特に好ましい実施態様では、本願発明はアスペルギルス種(Aspergillus sp.)から得られたグルコースオキシダーゼを含む方法と組成物を提供する。他のいくつかの特に好ましい実施態様では、本グルコースオキダーゼはアスペルギルス・ニゲル(A.niger)から得られる。本願発明は洗浄を含む用途で使用される。
【0006】
本願発明はグルコースオキシダーゼと少なくとも1つ又は2つの貯蔵安定性を向上させる化合物を含む組成物を提供する。
【0007】
いくつかの実施態様では、本願発明はグルコースオキシダーゼと少なくとも1つの又は2つの貯蔵安定性を向上させる化合物(貯蔵安定性向上化合物)を含む組成物を与え、この少なくとも1つ又は2つの貯蔵安定性向上化合物はグルコネート(gluconate、グルコン酸塩又はエステル)、メタ重亜硫酸塩(metabisulfite)、アスコルベート(ascorbate、アスコルビン酸塩又はエステル)、グルコース、ピロリン酸4カリウム塩から選択される。
【0008】
いくつかの実施態様では、本願発明はグルコースオキシダーゼと少なくとも1個又は2個の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物を与え、ここで貯蔵安定性向上化合物は18.5%の塩化ナトリウム、1.3%のリン酸2水素ナトリウム2水和物、2.5%クエン酸3ナトリウム・2水和物及びピロリン酸4カリウム、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、ピロリン酸4ナトリウムから選択された少なくともさらに1個の貯蔵安定性向上化合物を含む。
【0009】
いくつかの実施態様では、本願発明はグルコースオキシダーゼと少なくとも1個の又は2個の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物を与え、ここで、本組成物は、約40℃で約10週の貯蔵後にその初期活性の少なくとも約15%を保持する。
【0010】
他の実施態様では、本願発明はグルコースオキシダーゼと少なくとも1個又は2個の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物を与え、ここで本組成物は、約40℃で約10週の貯蔵後にその初期活性の少なくとも約30%を保持する。
【0011】
他の実施態様では、本願発明はグルコースオキシダーゼと少なくとも1個又は2個の貯蔵性向上化合物を含む組成物を与え、ここで本組成物は、約40℃で約10週の貯蔵後にその初期活性の少なくとも約50%を保持する。
【0012】
さらに他の実施態様では、本願発明はグルコースオキシダーゼと少なくとも1個又は2個の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物を与え、ここで本組成物は、約40℃で約10週の貯蔵後にその初期活性の少なくとも約70%を保持する。
【0013】
本願発明はさらに、グルコースオキシダーゼと少なくとも1個又は2個の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物を与え、ここで本組成物は介護用の組成物である。
【0014】
いくつかの実施態様では、本願発明は、グルコースオキシダーゼと少なくとも1個又は2個の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物を与え、ここで本組成物は、約5.0から約7のpH範囲で貯蔵した後に安定である。
【0015】
いくつかの実施態様では、本願発明は、グルコースオキシダーゼと少なくとも1個又は2個の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物を与え、ここで本組成物は約pH7で貯蔵後に、安定である。
【0016】
さらに他の実施態様では、本願発明は、グルコースオキシダーゼと少なくとも1個又は2個の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物を与え、ここで本組成物は、約4℃から約50℃の温度範囲で貯蔵の後、安定である。
【0017】
いくつかの実施態様では、本願発明は、グルコースオキシダーゼと少なくとも1個又は2個の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物を与え、ここで本組成物は、約4℃未満から約40℃の範囲の温度で貯蔵の後安定である。
【0018】
本願発明は組成物中でグルコースオキシダーゼを安定化する方法もまた提供する。この方法は、グルコースオキシダーゼと少なくとも1個の安定性向上化合物を与え、当該グルコースオキシダーゼと当該少なくとも1個の安定性向上化合物が合わさり安定化されたグルコースオキシダーゼ組成物を与えることを含む。
【0019】
いくつかの実施態様では、本願発明は組成物中でグルコースオキシダーゼを安定化する方法を提供する。本方法は、グルコースオキシダーゼと少なくとも1つの安定性向上化合物を与え、当該グルコースオキシダーゼと当該少なくとも1個の安定性向上化合物を合わせ、安定化されたグルコースオキシダーゼ組成物を与えることを含む。ここで少なくとも1個の貯蔵安定性向上化合物はグルコネート、メタ重亜硫酸塩、アスコルベート及びグルコースから選択される。
【0020】
別の実施態様では、本願発明は組成物中のグルコースオキシダーゼを安定化させる方法を提供する。この方法はグルコースオキシダーゼと少なくとも1個の安定性向上化合物を与え、当該グルコースオキシダーゼと当該少なくとも1個の安定性向上化合物を合わせ安定化されたグルコースオキシダーゼ組成物を調製することを含む。ここで本組成物は少なくとも2個の貯蔵安定性向上化合物を含み、前記貯蔵安定性向上化合物の少なくとも1個は、グルコネート、メタ重亜硫酸塩、アスコルベート、グルコース及びピロリン酸4カリウムから選択される。
【0021】
いくつかの実施態様では、本願発明は組成物中のグルコースオキシダーゼを安定化させる方法を提供する。この方法は、グルコースオキシダーゼと少なくとも1個の安定性向上化合物を含み、当該グルコースオキシダーゼと当該少なくとも1個の安定性向上化合物を合わせ安定化されたグルコースオキシダーゼ組成物を調製することを含む。ここで本組成物は18.5%の塩化ナトリウムの溶液、1.3%のリン酸2水素ナトリウム・2水和物、2.5%のクエン酸3ナトリウム・2水和物、及びピロリン酸4カリウム、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、ピロリン酸4ナトリウムから選択される少なくとも1個の追加の貯蔵安定性向上化合物を含む。
【0022】
いくつかの実施態様では、本願発明は組成物中のグルコースオキシダーゼを安定化する方法を与える。本方法はグルコースオキシダーゼと少なくとも1個の安定性向上化合物を与え、当該グルコースオキシダーゼと当該少なくとも1個の安定性向上化合物を合わせて安定化されたグルコースオキシダーゼ組成物を調製することを含む。ここで、本組成物は約40℃で約10週間安定である。
【0023】
いくつかの実施態様では、本願発明は、組成物中のグルコースオキシダーゼを安定化する方法を与える。この方法は、グルコースオキシダーゼと少なくとも1個の安定性向上化合物を与えること、及び当該グルコースオキシダーゼと当該少なくとも1つの安定性向上化合物を合わせて安定化されたグルコースオキシダーゼ組成物を調製することを含む。ここで本組成物は人の介護用組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は4℃で貯蔵したOXYGO(登録商標)HP L5000の活性との相対的な、40℃で貯蔵されたときの20mM酒石酸、20mMのリン酸塩pH6.0中のグルコースオキシダーゼのサンプルの活性を示している。実線は式1にデータが最も適合するようにして決定された活性値である。残存活性値は他のサンプルの安定性との機能の比較が容易になるよう10週で決定された。
【図2】図2は4℃で貯蔵したOXYGO(登録商標)HP L5000の活性との相対的な、40℃で貯蔵されたときのベース(Base) Aに調合されたグルコースオキシダーゼのサンプルの活性を示すグラフを与える。実線は、式1にデータが最もよく適合するようにして決定された活性値を表す。残存活性値は、他のサンプルの安定性と機能の比較が容易になるように10週で決定された。
【図3】図3は、4℃で貯蔵したOXYGO(登録商標)HP L5000の活性との相対的な、40℃で貯蔵されたとき2.4%ピロリン酸4カリウム塩とベース(Base)Aにより調合されたグルコースオキシダーゼのサンプルの活性を示すグラフを与える。実線は式1にデータが最も良く適合するようにして求めた活性値を表す。残存活性値は、他のサンプルの安定性と機能の比較が容易になるよう10週で決定された。
【図4】図4は、4℃で貯蔵したOXYGO(登録商標)HP L5000の活性との相対的な、40℃で貯蔵されたときの33%グルコン酸ナトリウム中で調合されたグルコースオキシダーゼのサンプルの活性を示すグラフを与える。実線は式1にデータが最も良く適合するようにして求めた活性値を表す。残存活性値は、他のサンプルの安定性と機能の比較が容易になるよう10週で決定された。
【図5】図5Aと図5Bは、40℃で10週貯蔵後のパーセント残存活性値を示すグラフを与える。式1に適合する非線形最小二乗回帰分析から決定した、速度定数値、kから計算された。
【0025】
本願発明の説明
本願発明は少なくとも1つのグルコースオキシダーゼ酵素を含む方法と組成物を与える。ここで、本グルコースオキシダーゼは向上した貯蔵安定性をもつ。いくつかの好ましい実施態様では、本グルコースオキシダーゼは、昇温した温度に暴露した後、安定である。いくつかの好ましい実施態様では、本グルコースオキシダーゼは、液剤で向上した貯蔵安定性をもつ。いくつかの特に好ましい実施態様では、本願発明はアスペルギルス・種(Aspergillus sp.)から得られるグルコースオキシダーゼを用いる方法とその組成物を提供する。いくつかの特に好ましい実施態様では、グルコースオキシダーゼはアスペルギルス・ニゲル(A.niger)から得られる。本願発明は洗浄を含む用途で使用する。いくつかの特に好ましい実施態様では、本願発明は人の介護製品及び介護用途で使用される。
【0026】
別途記載がない限り、本願発明の実施は分子生物学、微生物学、タンパク質精製、製剤開発等で通常使用される従来の技術を含み、これらは本願技術分野の範囲内にある。本明細書に記載された全ての特許、特許出願、製品及び刊行物は、上記のもの、下記のもの、ともに、引用により本明細書に明示的に含められる。
【0027】
さらに、ここに記載された項目は全体として本明細書を参照することにより得られる本願発明の種々の面又は実施態様を限定するものではない。従って、直ぐ下記に定義される用語は、全体として明細書を参照することにより、より十分に定義される。それにもかかわらず、本願発明の理解を容易にするため、多くの用語が以下に定義されている。

定義
【0028】
ここで別途記載が無い限り、本明細書に使用されている全ての技術的及び科学的用語は本願発明が属する技術分野の通常の技術者により普通に理解されるものと同一の意味をもつ。例えば、SingletonとSainsbury, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,第2版., John Wiley and Sons, NY(1994); 及びHale と Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991)は、本願発明で使用されている用語の多くについて一般的辞書を本技術分野の技術者に提供している。本明細書に記載されている用語に類似または同一の如何なる方法と材料も本願発明で使用されるが、好ましい方法と材料は、本明細書に記載されている。従って、直ぐ後に定義される用語は全体として本明細書を参照することにより、より十分に記述される。また、本明細書で使用される場合に、単数の用語”a”、”an”、及び”the”は、文脈が明瞭にそうではないこと示す場合のほか、複数のものを示す場合を含む。別途示されるのではない限り、核酸は5’から3’の向きに左から右へ記載され、アミノ酸配列はアミノ基からカルボキシ基の向きへ左から右へ記載される。本発明は、当該技術分野の技術者によりそれらが使用される状況に応じ変わり得るものであるので、記載されている特定の方法論、試験手順、試薬に限定されないと理解されるべきである。
【0029】
本明細書全体に与えられている全ての最大の数的限度は、あたかもより低い値の限度が明示的に本明細書に記載されているように、全てのより低い数的限度を含むことが意図されている。本明細書全体に与えられている全ての最小の数的限度は、より高い数的限度が明示的に本明細書に記載されているかのように、全てのより高い限度を含むことになる。本明細書全体に与えられている全ての数的範囲は、より狭い数的範囲が本明細書で全て明示的に記載されているかのように、当該広い数的範囲内にある全てのより狭い数的範囲を含むことになる。
【0030】
引用された全文書は、関連のある部分が、引用により本明細書に組み込まれる。いずれかの文書の引用は、本願発明に関してその文書が先行技術であることを認めたものとして解釈されてはならない。
【0031】
本明細書では、“OXYGO(登録商標)”と“OXYGO(登録商標)HP L5000”はOXYGO(登録商標)HPL5000の名称でGenencorから購入可能な精製グルコースオキシダーゼを含む製品をいう。この酵素は、アスペルギルス・ニゲルの遺伝的に修飾された菌株由来の高度に精製されたアスペルギルス・ニゲル(A.niger)グルコースオキシダーゼである。
【0032】
本明細書では、用語「グルコースオキシダーゼ活性単位」はml当たりの滴定法による単位(titrimetic unit)(“Titr.U”又は“U”)で表されるグルコースオキシダーゼの活性を言う。1滴定単位(One Titrimetric Unit)は、35℃でpH5.1の分析条件下15分で3.0mgのグルコースを酸化しグルコン酸とする。OXYGO(登録商標)HP L5000を用いて得られる数値を下記に与えられている分析の校正の標準として使用された。
【0033】
本明細書では、用語「安定性向上化合物」は、組成物中のグルコースオキシダーゼに安定性及び/又は向上した安定性を与える組成物をいう。特に好ましい実施態様では、本用語は約40℃で約10週間向上した安定性を与える組成物をさすときに使用される。しかし、本願発明がこれらの条件に限定されることは意図されていない。本用語は本化合物のない条件のグルコースオキシダーゼと比較してグルコースオキシダーゼに向上した安定性を与えるいずれの化合物も含むことが意図されているからである。
【0034】
本明細書では、「化粧品組成物」は化粧品で使用される組成物をいう。食品・医薬品・化粧品法(Food Drug and Cosmetic Act FD&C Act)の定義を本明細書では使用する。そのため、化粧品はその意図された用途により、肌を清潔にし、美観を高め、魅力を増し又は外観を変えるために人の体へ擦り付ける、注ぐ、撒布する、またはスプレーする、または内へ導入する、あるいは他の方法で適用されることを目的とされた製品として定義される。これらの組成物は非治療的利益を与え、医薬品として規制されることはない。しかし、ある状況では、化粧品組成物は医薬品組成物へ導入され美容上の効果(例.皮膚又は髪の疾病を治療するが、また、その着色又は他の効果を与える化粧品組成物も含む製品)を与える医薬品組成物に含められる。また、本願発明は人以外の動物用への化粧品の使用を含むことが意図されている。
【0035】
本明細書では、用語「人の介護用組成物」と「人の介護用製品」は、皮膚、髪、つめ、口腔及び関連する膜にこれらの表面又は膜を改善し、洗浄し、美観を高め、治療し、及び/又は手入れする目的で使用するための組成物又は製品を言う。いくつかの特に好ましい実施態様では、これらの製品は人に使用され、一方、他の実施態様では、これらの製品は人以外の動物について使用される(例.動物の治療)。
【0036】
本明細書では、「洗浄組成物」と「洗浄製剤」は、別途指示がない限り、洗浄を受ける製品、例えば、布、皿、コンタクトレンズ、他の固体製品から好ましくない化合物の除去に使用される組成物を言う。この用語は、この組成物が組成物中で使用されるグルコースオキシダーゼ及び他の酵素と共存できる場合に、好ましい特定の種類の洗浄剤組成物と製品形態(例.液体、ゲル、顆粒、又はスプレー組成物)に対して選択されたいずれの物質/組成物を含む。
【0037】
本明細書では、用語「共存可能(compatible)」とは、洗浄剤組成物が、グルコースオキシダーゼが正常な使用状況において望むほど効果的でない程度にまでグルコースオキシダーゼの酵素活性を減少させないことをいう。特定の洗浄剤組成物は後に詳細に例示される。
【0038】
本明細書では、「酵素の有効量」とは、特定の用途(例.人の介護製品、洗浄剤組成物等)に必要とされる酵素活性を達成するために必要な酵素量をいう。そのような有効量は本願技術分野の通常の技術をもつ者によって容易に確認され、多くの因子に基づいて決められる。例えば、使用される特定の酵素変異種、洗浄の用途、洗浄組成物の特定の組成、及び液体又は乾燥(例.顆粒、塊状)組成物が必要とされているか否かなど。
【0039】
本明細書では、「布以外の物の洗浄剤組成物」とは、硬い表面の洗浄剤組成物、皿洗浄組成物、介護用洗浄組成物及びパルプ、製紙業での使用に適した組成物を含む。
【0040】
本明細書では、用語「酵素変換」とは、酵素に材料又は中間製品を接触させることにより材料を中間製品にする変換又は中間製品を最終製品にする変換をいう。いくつかの実施態様では、接触は適当な酵素に材料又は中間製品を直接に暴露することにより行われる。他の実施態様では、接触は、材料又は中間製品を、酵素を発現及び/又は分泌する生物に暴露し、及び/又は、望む材料及び/又は中間製品を代謝して、それぞれ望む中間製品及び/又は最終製品にすることを含む。
【0041】
本明細書では、用語「タンパク質分解に安定」とは、タンパク質分解に耐えるタンパク質(例.酵素)の能力をいう。この用語はタンパク質の安定性を評価するためのいずれか特定のグルコースオキシダーゼの使用に限定する意図はない。
【0042】
本明細書では、「酸化安定性」とは酸化的条件下で定温保存後にタンパク質が機能する能力を言う。
【0043】
本明細書では、「pH安定性」とは、特定のpHで定温保存後にタンパク質が機能する能力を言う。いくつかの好ましい実施態様では、本願発明のグルコースオキシダーゼは、約5から約7の範囲のpHに暴露した後、機能する。しかし、本願発明が、いずれか特定のpH安定性水準又はpH範囲にも限定されることを意図していない。
【0044】
本明細書では、「熱安定性」とは、特定の温度で保存後タンパク質が機能する能力を言う。いくつかの好ましい実施態様では、本願発明のグルコースオキシダーゼは、約4℃から約50℃までの範囲の温度に暴露後に機能できる。いくつかの特に好ましい実施態様では、本願発明のグルコースオキシダーゼは、約4度未満から約40℃までの範囲の温度に暴露後に機能できる。しかし、本願発明はいずれかの温度安定性水準または温度範囲に限定されることは意図されていない。
【0045】
本明細書では、用語「化学的安定性」とはその活性に悪影響を与える化学物質に暴露後のタンパク質(例.酵素)の安定性をいう。本願発明は特定の化学的安定性水準又は化学的安定性の範囲に限定されることを意図していない。
【0046】
本明細書では、「表面特性」とは、タンパク質の表面により呈される疎水性及び/親水性のような性質のほか、静電気の荷電をさして使われる。
【0047】
本明細書では、用語「精製された」及び「単離された」は、サンプルから汚染物質を除くことをいう。例えば、グルコースオキシダーゼは、グルコースオキシダーゼでない、溶液や調合剤に含まれる汚染タンパク質や他の化合物の除去により精製される。ある実施態様では、組換えグルコースオキシダーゼは、細菌又は菌類宿主細胞に発現され、これらの組換えグルコースオキシダーゼは他の宿主細胞の成分の除去により精製される。組換えグルコースオキシダーゼポリペプチドのパーセントはそれにより、サンプル中で増大する。特に好ましい実施態様では、本願発明のグルコースオキシダーゼは、SDS-PAGE又は本願技術分野で知られている他の標準的方法により決定されたところでは、実質的にタンパク質成分の少なくとも約99%の水準にまで精製される。いくつかの別の好ましい実施態様では、本願発明のグルコースオキシダーゼは本組成物のグルコースオキシダーゼ成分の少なくとも約99%を含む。さらに別の実施態様では、グルコースオキシダーゼは総タンパク質の少なくとも約90-95%の範囲で含まれる。しかし、本願発明が特定の純度水準のグルコースオキシダーゼに限定されることは意図されていない。例えば、いくつかの実施態様では、使用に必要な純度は約75%から約80%の範囲である。そのため、いくつかの実施態様では、本願発明のグルコースオキシダーゼはかなり低い純度で用途がある。いくつかの他の実施態様では、グルコースオキシダーゼは、本組成物中のカタラーゼ濃度が十分に低く、グルコースオキシダーゼ反応の生成物(つまり、H2O2)を分解しない点で「精製」されている。
【0048】
本明細書では、「目的タンパク質」とは、分析されている、同定されている及び/または修飾されているタンパク質(例.酵素又は「目的酵素」)をいう。組換えタンパク質と同様、天然のタンパク質も本願発明で使用される。
【0049】
本明細書では、「タンパク質」とはアミノ酸からなる組成物であって、本願技術分野の技術者によりタンパク質として認識されるものをいう。用語「タンパク質」、「ペプチド」及び「ポリペプチド」は本明細書では相互に交換して使用される。ペプチドがタンパク質の一部であるかは、本願技術分野の技術者は文脈の中で用語の使用を理解する。
【0050】
本明細書では、官能性で及び/又は構造的に類似のタンパク質は「関連タンパク質」であると考えられる。いくつかの実施態様では、これらのタンパク質は、生物の綱が異なる(例.細菌のタンパク質と菌類のタンパク質)ほか、異なる属及び又は種に由来する。いくつかの実施態様では、生物の綱が異なる(例.細菌の酵素と菌類の酵素)ほか、これらのタンパク質は異なる属、及び/又は種に由来する。他の実施態様では、関連するタンパク質は同一の種から得られる。実際、本願発明がいずれか特定の源に由来する関連するタンパク質に限定されることは意図されていない。加えて、用語「関連タンパク質」は三次構造類縁体と一次配列類縁体(例.本願発明のグルコースオキシダーゼ)を含む。更に他の実施態様では、この用語は免疫学的に交叉反応性のあるタンパク質を含む。
【0051】
本願発明の詳細な説明
本願発明は少なくとも1つのグルコースオキシダーゼ酵素を含む方法と組成物を与える。ここで、本グルコースオキシダーゼは向上した貯蔵安定性をもつ。いくつかの好ましい実施態様では、本グルコースオキシダーゼ酵素は、上昇した温度に暴露後、安定である。いくつかの別の好ましい実施態様では、本グルコースオキシダーゼは、液剤で向上した貯蔵安定性をもつ。いくつかの特に好ましい実施態様では、本願発明は、アスペルギルス種(Aspergillus sp.)から得られたグルコースオキシダーゼを含む方法と組成物を与える。他のいくつかの好ましい実施態様では、グルコースオキシダーゼはアスペルギルス・ニゲル(A.niger)から得られる。本願発明は洗浄を含む用途で使用される。
【0052】
いくつかの実施態様では、人の介護用製品での有効成分としてグルコースオキシダーゼを使用するためには、この酵素が高い温度(例.約40℃)での貯蔵に長期間安定であることを実証することが必要である。食品医薬品局(FDA)は、安定性試験により決定される有効成分の安定性に基づく製品の有効期間の要件を定めている(例えば、21CFR211参照)。従って、いくつかの特に好ましい実施態様では、FDAにより定められた有効成分の安定性に関する貯蔵安定性要件に適合している。しかし、本願発明はいずれかの特定の貯蔵温度に限定されることは意図していない。
【0053】
グルコースオキシダーゼ活性の消失は酵素への種々の傷害から生じうる。しかし、本願発明を行う間、還元剤(例.メタ重亜硫酸塩、ベータ-メルカプトエタノール、及びアスコルベート)の添加がカタラーゼの添加とともに、グルコースオキシダーゼの安定性を向上したことが決定された。いくつかの実施態様では、相乗的効果が還元剤とカタラーゼの組合せにより与えられると考えられている。高濃度のグルコネートの添加も、またグルコースオキシダーゼ活性を安定化するために見出された。加えて、他のポリアルコールもまた、安定化効果があった。これらは、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グリセロール、カタラーゼの組合せを含むがこれらに限定されない(例えば、表1、下記参照。)
【0054】
好ましい実施態様では、少なくとも1つのポリアルコールが本願発明のグルコースオキシダーゼを安定化するために使用されている。本願発明で使用されるポリアルコールの例は、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン-マレイン酸無水物共重合体(polyethylene-co-maleic acid anhydride)、ポリスチレン-マレイン酸無水物共重合体(polystyrene-co-maleic acid anhydride)、デキストラン類(例.カルボキシメチル-デキストラン)、セルロース(例.メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース)、キトサン加水分解物、澱粉類(例.ヒドロキシエチル澱粉とヒドロキシプロピル澱粉)、グリコーゲン、アガロースとそれらの誘導体、グアルゴム(guar gum)、プルラン(pullulan)、イヌリン、ザンサンゴム(xanthan gum)、カラギーナン、ペクチン、アルギニン酸加水分解産物、バイオポリマー、ソルビトール、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、グロース、キシロース、トレオース、ソルボース、フルクトース、グリセロール、マルトース、セロビオース、スクロース、アミラーゼ、アミロペクチン、及びモノ-プロピレングリコール、グルコネート(例.グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム)。
【0055】
いくつかの実施態様では、本願発明の組成物は少なくとも1つのポリマー及び/又は糖類を含む。適当なポリマーは、ポリアルキレンオキシド(PA)、ポリアルキレングリコール(PAG)、及びポリプロピレングリコールを含むがこれらに限定されない。
【0056】
いくつかの実施態様では、本願発明の組成物は少なくともさらに1つの成分を含む。いくつかの実施態様では、追加の成分が抗菌剤、pH調整剤、分散剤、粘度調整剤及び抗酸化剤から選択される。
【0057】
本明細書では、「抗菌剤」は、細菌、菌類、ウィルス、寄生虫等の微生物を殺し、増殖を抑制又は予防する化合物を言う。いくつかの実施態様では、抗菌剤は安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラベン類を含むがこれらに限定されない。この用語はまた、いずれかの適当な抗生剤(つまり、微生物により産生される抗菌剤、及びそのような適した抗生剤の合成類縁物質)も含む。
【0058】
本明細書では、「分散剤」は分散された固体物質の分離(例.沈殿)を予防又は遅らせることを促す化合物である。適した試薬は、「抗凝集ポリマー」及びアニオン性ポリマー種の両親媒性物質のほか、ある種の微粉砕された粘度(例.カオリン、陶土、ベントナイト、フラー土など)を含むがこれらに限定されない。
【0059】
本明細書では、「pH調整剤」とは本発明の組成物が水性溶媒と接触するとき、本組成物中のpHに影響を受けやすい組成物の成分と共存するpHを与えるように媒体のpHを調整及び/又は維持(つまり、緩衝)することを促す化合物をいう。適した試薬は種々の無水の無機及び有機塩(例.リン酸2水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸2水素カリウム)、グリシン緩衝剤、トリスナトリウム緩衝液を含むがこれらに限定されない。
【0060】
本明細書では、「抗酸化剤」とは、酸化(例.空気中の酸素による)に対して本願発明のいくつかの実施態様の組成物のうち酸化を受けやすい成分を保護できる化合物をいう。しかし、いくつかの実施態様では、酸化はHからまたは、製剤の他の成分によりHから生成される酸素ラジカルからも生じ得る。適した抗酸化剤はメチオニンとレシチン類を含むがこれらに限定されない。
【0061】
本願発明の開発中において、低濃度の化学物質がベースA中のグルコースオキシダーゼとベース(Base)B中のグルコースオキシダーゼに加えられた(下記参照)。これらの化学物質は、界面活性剤、キレート剤、ポリマー、カオトロピック塩、緩衝剤、還元剤、反応速度の低い基質(slow substrate)、最終製品、カタラーゼ、及びこれらの試薬の組合せを含んでいた。加えて、ポリマー、糖アルコール、糖、グルコン酸ナトリウムがグルコースオキダーゼ製剤の成分として使用された。これらの方法のいくつかはグルコースオキシダーゼの安定性を高める利点があることが見出された。OXYGO(登録商標)のグルコースオキシダーゼが本願発明の開発において使用されたが、本願発明はいずれのグルコースオキシダーゼによっても使用できるので、本願発明をこの特定のグルコースオキシダーゼに限定する意図はない。さらに、本願発明は、グルコオリゴサッカライドオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ラクトースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼを含むが、これらに限定されないグルコースに結合する他の酵素の安定化に使用できると考えられている。さらに、本願発明はソルビトールオキシダーゼの安定化に使用できると考えられている。実際、本願発明はいずれか特定の酵素に限定することは意図されていない。いくつかの特に好ましい実施態様では、グルコネートは種々の酵素の活性部位の安定化に用途があり、そのため長時間、高温にさらされる酵素の安定性を増大させる。しかし、本願発明をいずれか特定の作用機構に限定する意図はない。
【発明を実施するための形態】
【0062】
実験
以下の実施例はある好ましい実施態様と本願発明のいくつかの側面を実証しさらに説明するために提供されるが、本願発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【0063】
以下の本実験の開示では、以下の略号が使用される。℃(摂氏温度);rpm(毎分の回転数);H2O(水);HCl(塩酸);aa(アミノ酸);bp(塩基対);kb(キロ塩基対);
kD(キロダルトン);gm(グラム);μgとug(マイクログラム);mg(ミリグラム);ng(ナノグラム);μgとug(マイクログラム);mg(ミリグラム);ng(ナノグラム);μlとul(マイクロリットル);ml(ミリリットル);mm(ミリメートル);nm(ナノメートル);μmとum(マイクロメートル);M(モル);mM(ミリモル);μMとuM(マイクロモル);U(単位);V(ボルト);MW(分子量);sec(秒);min(s)(分);hr(s)(時間);MgCl2(塩化マグネシウム);NaCl(塩化ナトリウム);OD280(280nmでの光学密度);OD600(600nmでの光学密度);PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動);EtOH(エタノール);PBS(リン酸緩衝液添加食塩水[150nm NaCl、10mM リン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2]);SDS(ドデシル硫酸ナトリウム);Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン);Genencor(Genencor社, Palo Alto, カリフォルニア);Molecular Devices(Molecular Devices社., Sunnyvale, カリフォルニア);Amersham(Amersham Life Science社. Arlington Heights,イリノイ);Corning(Corning International社, Corning, ニューヨーク);ICN(ICN Pharmaceuticals社,Costa Mesa, カリフォルニア);Pierce(Pierce Biotechnology社, Rockford、イリノイ);Amicon(Amicon社、Beverly、マサチューセッツ);ATCC(アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection), Manassas, バージニア);Becton Dickenson(Becton Dickenson Labware社, Lincoln Park、ニュージャージー);Perkin-Elmer(Perkin-Elmer社、Wellesley、マサチューセッツ);Waters(Waters社、Milford、マサチューセッツ);Perceptive Biosystems (Perceptive Biosystems社, Ramsey、ミネソタ);Difco(Difco Laboratories社、Detroit、ミシガン);GIBCO BRL又はGibco BRL(Life Technologies社、Gaithersburg、メリーランド);Novagen(Novagen社、Madison、ウィスコンシン);Novex(Novex社、San Diego、カリフォルニア);Sigma(Sigma-Aldrich Chemical 社、St.Louis,ミズーリー);Dupont Instruments (Asheville、ニューヨーク);Global Medical Instrumentation 又はGMI(Global Medical Instrumentation社;Ramsey、ミネソタ);Agilent(Agilent Technologies社、Palo Alto, カリフォルニア)
【0064】
以下の実施例では、OXYGO(登録商標)HP L5000(Genencor)に見出されるアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)グルコースオキシダーゼが使用された。塩は20mM リン酸塩20mMクエン酸緩衝液pH6.0に対する徹底した透析により酵素から取り除かれた。この透析を受けた物質は次に約15000単位/mlに濃縮された。安定化成分は、OXYGO(登録商標)HP L-5000に所定の濃度まで直接加えられ、OXYGO(登録商標)HP L-5000が15%以下であるように稀釈されるか又はグルコースオキダーゼの上記の透析された濃縮液に加えられ最終酵素濃度は約5000単位/mlにされた。これらの新しい製剤のサンプルと元のOXYGO(登録商標)HP L-5000(1.5mlミクロ遠心分離管に1ml)は40℃にされ、一定期間恒温槽に置かれた。少量のこれらのサンプル(17μl)が約1週、2週、4週及び8週の間隔で採取された。これらのサンプルは続いて14641倍に0.05%TWEEN(登録商標)-20を含む100mMリン酸塩緩衝液pH7.0に稀釈され、すぐにグルコースオキシダーゼの活性が測定された。

グルコースオキシダーゼ活性試験手順
【0065】
試薬の混合物は毎日調製され、2.74mg/ml ABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸;Sigma A 1888-5g)、100mMリン酸塩緩衝液(pH 7.0)、50mMグルコース、及び2.5 プルプロガリン単位/ml ワサビダイコンパーオキシダーゼ(Sigma)を含んでいた。
【0066】
グルコースオキシダーゼの標準サンプルはOXYGO(登録商標)HPL5000を5000U/mlから0.4-0.05U/mlに100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で稀釈して調製された。緩衝液のみの対照サンプルも調製した。酵素サンプルは検量線の範囲内の予定濃度に稀釈された。
【0067】
SpectraMax 250 分光光度計(Molecular Devices)が反応速度分析のため準備され、サンプリングし405nmで測定を行う前に混合した。測定のため95ulの反応混合物は透明な底の96孔のマイクロタイタープレート(microtiter plate, MTP)に移された。その後、5ulの稀釈した酵素サンプル又はグルコースオキシダーゼ標準サンプルが、MTP中の反応混合物に加えられた。MTPは次に分光光度計に入れられ、室温で、5分間、30秒の間隔で測定された。吸光度のデータから、時間の関数として吸光度の変化の傾きが求められた。各組成物のサンプルの活性は4℃(つまり、100%残存活性を維持するために示された条件)で貯蔵されたOXYGO(登録商標)HPL5000の一次の検量線に対して計算された。表1は試験された組成物を示す。「サンプル番号」は、図5Aと図5Bの数字に対応する。
【表1】




【0068】
「ベースA」は18.5%塩化ナトリウム、1.3%リン酸2水素ナトリウム・2水和物及び2.5%クエン酸3ナトリウム・2水和物を含んでいた。「ベースB」は43%ソルビトール、3%グリセロール、5g/l塩化ナトリウム及び50mM リン酸2水素カリウムを含み、pH5.4に調整された。
【0069】
保存時間ごとの40℃で貯蔵した各サンプルの測定した活性値は、各保存時間4℃で貯蔵した全てのOXYGO(登録商標)HPL5000サンプルの測定活性値の平均値により割った。この分析では、「1」という値は活性消失がないことを示し(つまり、100%残存活性)、「1」より低いいずれの値もこのサンプルが活性を失ったことを示す。4℃で貯蔵されたサンプルと比べた40℃で貯蔵したサンプルの活性値は単純な指数関数的減少(式1)にあてはめられた。
A/A0 = e−kXt (1)
【0070】
式1では、「A」は40℃で貯蔵されたサンプルについて測定された活性を表し、
「A0」は4℃で貯蔵されたサンプルについて測定された活性を表し、「k」は活性の消失を述べる速度定数を表し、「t」はサンプルが40℃に維持された保存時間を表す。図1、図2、図3及び図4は、本願技術分野で知られている、非線型最小二乗回帰分析を用いて式1に適合させたデータを示す。
【0071】
本試験期間にわたり収集された全てのデータから、速度定数値「k」が式1と非線型最小二乗回帰分析を使用して各サンプルについて決定された。決定された速度定数の値から、10週での残存活性値のパーセントが計算された。表1に記載したサンプルについて40℃で10週貯蔵した後の残存活性のパーセントは図5Aと図5Bに表されている。
【0072】
これらの結果は、メタ重亜硫酸塩と、アスコルベート、カタラーゼ、グルコース、グルコネートの組合せが、他の組合せと同様、貯蔵安定性について利点を与えるが、グルコン酸ナトリウムが試験した全ての組成物について優れた貯蔵安定性について利点を与えることを明瞭に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のグルコースオキシダーゼと少なくとも1個又は2個の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物。
【請求項2】
請求項1の組成物であって、前記少なくとも1個又は2個の貯蔵安定性向上化合物がグルコネート(gluconate)、メタ重亜硫酸酸塩、アスコルベート(ascorbate)及びピロリン酸4カリウムから選ばれる組成物。
【請求項3】
請求項1の組成物であって、前記貯蔵安定性向上化合物が、18.5%の塩化ナトリウム、1.3%のリン酸2水素ナトリウム2水和物、2.5%クエン酸3ナトリウム2水和物、及び、ピロリン酸4カリウム、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム及びピロリン酸4ナトリウムから選択された少なくとも1個の追加の貯蔵安定性向上化合物を含む組成物。
【請求項4】
請求項1の組成物であって、前記組成物は、約40℃で10週貯蔵後に少なくともその初期活性の約15%を保持するものである組成物。
【請求項5】
請求項1の組成物であって、前記組成物は、約40℃で10週貯蔵後に少なくともその初期活性の約30%を保持するものである組成物。
【請求項6】
請求項1の組成物であって、前記組成物は、約40℃で10週貯蔵後に少なくともその初期活性の約50%を保持するものである組成物。
【請求項7】
請求項1の組成物であって、前記組成物は、約40℃で10週貯蔵後に少なくともその初期活性の約70%を保持するものである組成物。
【請求項8】
請求項1の組成物であって、前記組成物は人の介護用である組成物。
【請求項9】
請求項1の組成物であって、前記組成物は、約5.0から約7のpHの範囲で貯蔵後安定である組成物。
【請求項10】
請求項1の組成物であって、前記組成物は約pH7で貯蔵後安定である組成物。
【請求項11】
請求項1の組成物であって、前期組成物は約4℃から約50℃の範囲の温度で貯蔵後に安定である組成物。
【請求項12】
請求項1の組成物であって、前記組成物は約4℃未満から約40℃の範囲の温度で貯蔵後安定である組成物。
【請求項13】
組成物中のグルコースオキシダーゼを安定化させる方法であって、
a) グルコースオキシダーゼと少なくとも1個の安定性向上化合物を与えること、
及び
b) 前記グルコースオキシダーゼと前記少なくとも1個の安定性向上化合物を併せ安定化したグルコースオキシダーゼ組成物を調製すること、
を含む方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、前記少なくとも1個の貯蔵安定性向上化合物がグルコネート(gluconate)、メタ重亜硫酸塩、アスコルベート(ascorbate)及びグルコースから選択される方法。
【請求項15】
請求項13の方法であって、前記組成物は少なくとも2個の貯蔵安定性向上化合物を含み、前記貯蔵安定性向上化合物の少なくとも1個はグルコネート(gluconate)、メタ重亜硫酸塩、アスコルベート(ascorbate)、グルコース、及びピロリン酸4カリウムから選択されるものである方法。
【請求項16】
請求項13の方法であって、前記組成物は18.5%の塩化ナトリウム、1.3%のリン酸2水素ナトリウム2水和物、2.5%のクエン酸3ナトリウム2水和物及び、ピロリン酸4カリウム、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、ピロリン酸4ナトリウムから選択される、少なくとも1個の追加の貯蔵安定性向上化合物を含むものである方法。
【請求項17】
請求項13の方法であって、前記組成物は約40℃で約10週間安定であるものである方法。
【請求項18】
請求項13の方法であって、前記組成物は人の介護用組成物である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2010−513511(P2010−513511A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542892(P2009−542892)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/025923
【国際公開番号】WO2008/079227
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(508377015)ダニスコ・ユーエス・インク、ジェネンコー・ディビジョン (31)
【Fターム(参考)】