説明

貯蔵タンクの補修方法

【課題】補修時期においてタンク底面とその近傍のみ交換する。
【解決手段】燃料タンク1の周囲に側板上部5aに連結する複数のジャッキ6を配置し、側板5の周囲を溶断し、側板上部5aと側板下部5bとを縁切りし、各ジャッキ6を一斉にジャッキアップして側板上部5aを側板下部5bから分離し、底板4及び側板下部5bを撤去し、撤去後の地盤に新設の底板4Aを設置し、各ジャッキ6を一斉にジャッキダウンして側板上部5aを新設の底板4Aに接合し、接合位置に沿って溶接を行い側板上部5aと底板4Aを一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵タンクの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等で利用される燃料は、敷地内の貯蔵タンク内に加温貯蔵され、必要分を設備内に供給している。貯蔵タンクのうち、屋外に設置される浮き屋根式の大形貯蔵タンクは、貯蔵量に応じてその容積を可変とすることができる利点がある反面で、その構造上、浮き屋根と側板の内側との隙間よりタンク内に雨水が侵入し、雨水が沈降して堆積するために経年後にあってはタンクの底部、すなわち金属からなる底板及び側板下部に錆が発生し、底板及び側板下部が腐食して著しく減肉する。
【0003】
そこで、定期の保守点検時(5〜8年毎)にはタンクを開放し、燃料を抜いてタンク内を空にし、サンドブラストで錆を除去し、超音波探傷試験方法等でタンク内表面の腐食、減肉の程度を測定して肉厚の分布状況を確認する。
【0004】
その結果、腐食が局部的な場合においては、肉盛り溶接又ははめ板補強等により補強していた。例えば、腐食が底板のみ著しい場合においては、底板のみを交換していた。しかし、肉盛り溶接箇所若しくははめ板補強箇所等が増えた場合、又は腐食が広範囲におよぶ場合においては、タンクの強度維持の観点からタンク全体を撤去し、この跡地に新設のタンク本体を構築していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貯蔵タンクにおいては、腐食が進行するのは主にタンクの底部付近のみであり、他の部分は依然として初期肉厚を保ち、使用可能状態であるため、一部不具合のために全体を新設するという従来行われてきた方法はきわめて不経済であった。
【0006】
そこで、本発明は、腐食の程度に応じてタンクの底板及び側板下部、又は底板のみを交換して補修費用の削減を図るようにした貯蔵タンクの補修方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の貯蔵タンクの補修方法は、底板、側板を備えてなる貯蔵タンクにおいて、前記側板を上部と下部とに切断する位置を決定する工程と、前記側板の上部を固定装置にて固定する工程と、前記側板の上部と前記側板の下部とに切断して縁切りする工程と、前記底板及び前記側板の下部を撤去する工程と、新設された底板及び側板の下部、又は底板のみを設置する工程と、新設された前記側板の下部、又は前記底板と前記側板の上部とを接合して一体化する工程とを備えたことを特徴とする。
【0008】
したがって、本発明方法によると、腐食、減肉の著しい部分のみを交換することが可能となるために、全体を交換する場合に比べて補修費用の大幅削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による貯蔵タンクの補修方法によれば、補修時においてタンクの底板及び側板下部、又は底板のみを交換して補修費用の削減を図ることができる。
【0010】
また、側板下部は撤去して底板のみを新設することによって積極的にタンク容量を小さくすることが可能であり、以後の点検負荷も削減できる。例えば、備蓄容量が10,000KLを越える既存の貯蔵タンクでは開放点検の周期が短く、点検のための負担が大となっているが、本発明方法を採用することで、備蓄容量を10,000KL以下とすることができ、これによって、定期点検周期を長期化することができ、もって点検負担を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明方法の好ましい実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の施工手順の概略を示す。まず、(a)は施工前の状態であり、燃料貯蔵タンク1は、タンク本体2と、タンク本体2の上面開口に装備されて燃料の増減に応じて昇降する浮き屋根3とからなっている。
【0012】
タンク本体2は、図1(b)に示すように、底板4と、その周囲に一体に立ち上げられた側板5とからなっている。なお、タンク配管その他の附属設備についてはその説明及び浮き屋根3の図示を省略する。
【0013】
定期点検時においては、タンク本体2内の燃料を抜いて空にしてタンク内表面を清掃する。そして、サンドブラストで錆を除去し、超音波探傷試験方法等でタンク内表面の腐食、減肉の程度を測定し、肉厚の分布状況を確認する。
【0014】
側板5の下部が腐食している場合においては、肉厚の分布状況等の結果に基づいて撤去する側板5の高さを決め、溶断線Mを仮想する。この際、溶断線Mをマーキングしておくことが好ましい。ここで、溶断後、継続して使用する側板5の上部、撤去する側板5の下部をそれぞれ側板上部5a、側板下部5bとする。
【0015】
その後、(c)に示すように、タンク本体2の外周に沿って固定及び揚重手段としての複数のジャッキ6を所定の間隔を置いて地上に配置し、その上部を溶断線Mより上方に位置する側板上部5aに取付ベースなどを介して固定する。なお、ジャッキ6の配置数は実際には図示よりも多数配置されている。例えば、直径が50mにもおよぶ大容量貯蔵タンクの場合、40トンジャッキを採用すると、24箇所程度が必要である。
ジャッキ6の固定後、前記溶断線Mに沿って溶断し、側板5を側板上部5aと側板下部5bとに縁切りする。
【0016】
溶断作業完了後は(d)に示すように、各ジャッキ6を一斉にジャッキアップし、側板下部5bに対して側板上部5aを揚重させてロックし、その揚重された側板上部5aの下方に作業空間を確保する。なお、具体的なジャッキアップ作業については後述する。
【0017】
その後、(e)、(f)に示すように、既に腐食した底板4及び側板下部5bを撤去した後、地盤基礎を修復し、基礎上に新設の底板4Aを構築して、各ジャッキ6を一斉にジャッキダウンする。
【0018】
側板上部5aを底板4aに接合した後、(g)に示すように、その接合ラインLに沿って溶接を行い、ジャッキ6を撤去して一体化作業が完了する。
【0019】
なお、側板下部5bを撤去し、新設しないことで、施工完了後の燃料タンク1の容量を小さくすることが可能である。
【0020】
次いで、検査工程、漏洩テストなどを経て、必要な配管附属設備などを取付ることで、使用可能な状態に修復されることになり、耐用年数を大幅に延長できる。
【0021】
図2(a)、(b)は、以上のジャッキアップ作業に用いるジャッキ6及びこのジャッキ6と側板上部5aとの取付関係を示す。同図において、側板上部5aの下部側面外周には取付ベース10が固定され、この取付ベース10には油圧ジャッキ11内を摺動するブラケット12の側面に一体化されたブラケットベース13が固定されている。ブラケット12には垂直方向にネジシャフト14が遊嵌状態に貫通し、このネジシャフト14の下端は枕木15を介してジャッキベース16が設置されている。ブラケット12の下部にはネジシャフト14の外周に上部ナット17、反力板18及び下部ナット19が配置されている。
【0022】
ジャッキ6は水平度及び鉛直度が調整されたうえで固定され、油圧配管を介して油圧駆動部及び制御部等(図示しない)に接続され、動作確認後、一斉に駆動される。具体的には、図3に示す手順で順次ジャッキアップされる。
【0023】
まず(a)に示すように、油圧を加えることで、一ストローク分に相当する所定の高さHまでジャッキアップ動作がなされ、ジャッキアップ動作完了後、(b)に示すように、上部ナット17を巻き上げ、ブラケット12の下部を支持した状態で(c)に示すようにジャッキストロークを戻し、ついで(d)に示すように、下部ナット19を巻き上げることにより、所定高さHに保持された状態での次のストロークのジャッキアップ待機状態となる。
【0024】
したがって、一ストローク毎に以上の操作を繰り返し実行することで、前記ネジシャフト14の最大高さまで上昇可能となり、かつ上昇位置にロックされることになる。例えば、40トンジャッキの場合、最大揚程としては1台あたり1400mm、一ストローク150mm、使用圧力390kg/cmGである。また、ジャッキダウン操作は、前記と逆の手順で行えばよい。
【0025】
本実施形態では、底板及び側板下部を除去して底板のみを新設したが、タンク容量を維持する場合においては、底板及び側板下部を新設し、側板下部と側板上部とを接合して一体化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)〜(h)は本実施形態における貯蔵タンクの補修手順を示す説明図である。
【図2】(a)、(b)は本実施形態における貯蔵タンクの補修に用いるジャッキ及び上部側板に対する取付構造を示す説明図である。
【図3】(a)〜(d)は本実施形態における貯蔵タンクの補修に用いるジャッキのジャッキアップ毎の操作手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 燃料貯蔵タンク
2 タンク本体
3 浮き屋根
4 底板
4A 新設の底板
5 側板
5a 上部側板
5b 下部側板
6 ジャッキ
10 取付ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板、側板を備えてなる貯蔵タンクにおいて、
前記側板を上部と下部とに切断する位置を決定する工程と、
前記側板の上部を固定装置にて固定する工程と、
前記側板の上部と前記側板の下部とに切断して縁切りする工程と、
前記底板及び前記側板の下部を撤去する工程と、
新設された底板及び側板の下部、又は底板のみを設置する工程と、
新設された前記側板の下部、又は前記底板と前記側板の上部とを接合して一体化する工程とを備えたことを特徴とする貯蔵タンクの補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−56525(P2006−56525A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237611(P2004−237611)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】