説明

貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種以上のポリイミド繊維からなる繊維集合体

【課題】軽量であって、吸音特性に優れる航空機用途に最適な断熱・吸音材料であり航空機の軽量化、燃費向上に役立つ材料であり、更には、航空機用途に限らず、断熱の必要な配管の保温・断熱や、吸音の必要な空間の吸音材料、更には、嵩密度を上げることで防振や制震等の機能も発揮する材料を提供する。
【解決手段】貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維100、101を含む繊維集合体であって、上記ポリイミド繊維の少なくとも1種類を介して、繊維同士が少なくとも一部結合していることを特徴とする繊維集合体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種以上のポリイミド繊維からなる繊維集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の建築物の外壁の断熱・吸音材や、各種発熱体の断熱材料、各種音響設備の吸音材等の多くには、ガラスウールからなる断熱・吸音材が広く用いられている。これは、吸音特性・断熱性能・難燃性能に優れる材料であることから一般的には用いられている。また、軽量が要求される航空機の外壁用の断熱・吸音用途にも、低嵩密度のガラスウール繊維を袋に詰めたもの(Insulation Blanket)が広く用いられている。ガラスウールの特徴としては、不燃であり、断熱性能に優れ、しかも、吸音特性に優れる材料であることから現在の航空機用途には広く用いられている(例えば、非特許文献1〜2、特許文献1〜2参照。)。
【0003】
一方で、非熱可塑性繊維と熱可塑性繊維を組み合わせて上記ガラスウールの代替製品として用いる為の材料が開発されている(例えば、特許文献3〜4参照。)。
【非特許文献1】航空技術、No.581、34項〜39項(2003年)
【非特許文献2】「日本航空宇宙学会 第40回飛行機シンポジウム」 267項〜270項 (2002年)
【特許文献1】米国特許第6551951号明細書
【特許文献2】米国特許第6627561号明細書
【特許文献3】米国特許第6383623号明細書
【特許文献4】米国特許第6579396号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記非特許文献1〜2にも記載があるように、航空機用途の断熱・吸音材料は難燃性の基準に適合する材料であることは少なくとも必要であり、さらに、環境に対する配慮から燃費向上のために軽量の部材であることが求められている。ところが、従来のガラスウールでは、難燃性の基準に対応できる材料ではあるがガラスの密度(2.5g/cm3)がフッ素系繊維を除く高耐熱繊維と比較して重く、軽量化することが現状では難しい問題があった(例えばm−アラミド繊維では、1.38g/cm3、p-アラミド繊維では、1.44g/cm3、ポリイミド繊維では、1.41g/cm3)。そこで、従来の難燃性基準を克服して、かつ、軽量であって、吸音特性に優れる航空機用途の断熱・吸音材料が求められている。そのために、特許文献3〜4では、非熱可塑性繊維を熱可塑性樹脂で繋ぎ合せて作製したものの報告があるが、この製造方法では、短い非熱可塑性繊維が、融解した熱可塑性樹脂により生じる結合部位の瘤により包み込まれながら融着することで、低密度化を実現している。しかし、このような繊維集合体の場合には、熱可塑性繊維が融解して瘤になるため、繊維本数が少なくなり吸音特性や断熱性が低下する問題があり、更に、瘤が再度融解する温度に曝された場合に、繊維同士の結合力が極端に低下して密度が高くなってしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維を含む繊維集合体であって、上記ポリイミド繊維の少なくとも1種類を介して、繊維同士が少なくとも一部結合していることを特徴とする繊維集合体を用いることで、上記問題点を解決しうることを見出した。本発明の繊維集合体の構成を詳述すると下記の構成となる。
【0006】
すなわち、本願発明の繊維集合体は、貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維を含む繊維集合体であって、上記ポリイミド繊維の少なくとも1種類を介して、繊維同士が少なくとも一部結合していることを特徴とする繊維集合体である。
【0007】
上記貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維のうち、低下温度の最も低い繊維の低下温度と低下温度の最も高い繊維の低下温度との差が、30℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0008】
また、上記繊維集合体が、上記ポリイミド繊維のうち、貯蔵弾性率の低下温度の最も低いポリイミド繊維を介して、繊維同士が少なくとも一部結合していることが好ましい。
【0009】
また、上記繊維集合体が、上記ポリイミド繊維のうち、貯蔵弾性率の低下温度の最も低いポリイミド繊維が完全に融解することなく形状を保持した状態で繊維同士の少なくとも一部が結合していることが好ましい。
【0010】
また、前記繊維集合体が、原料として少なくともピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを含むポリイミド繊維、及び、原料として少なくともピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物から選ばれる1種以上の酸二無水物を含むポリイミド繊維の2種類の繊維を少なくとも含む繊維集合体であり、前記繊維集合体の嵩密度が1.0〜80.0kg/m3であることが好ましい。
【0011】
また、本願発明の別の発明は、前記繊維集合体を用いた断熱・吸音材である。
【0012】
また、本願発明の別の発明は、前記繊維集合体を用いて得られる吸音材料である。
【0013】
また、本願発明の別の発明は、前記繊維集合体を用いて得られる断熱材料である。
【0014】
また、本願発明の別の発明は、前記繊維集合体を用いて得られる難燃マットである。
【0015】
また、本願発明の別の発明は、前記繊維集合体を用いて得られる濾布である。
【0016】
また、本願発明の別の発明は、前記繊維集合体を用いて得られる耐熱服である。
【0017】
また、本願発明の別の発明は、前記繊維集合体を用いて得られる不織布である。
【0018】
また、本願発明の別の発明は、前記繊維集合体を用いて得られる航空機用途断熱吸音材である。
【0019】
さらに、本願発明の別の発明は、繊維集合体の製造方法において、貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維の原料となるポリアミド酸溶液及び/又はポリイミド溶液の液流を、同時に高速気流にてひきとりながら紡糸して、基材表面に積層して繊維集合体を作製することを特徴とする繊維集合体の製造方法である。
【0020】
上記貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維のうち、低下温度の最も低い繊維の低下温度と低下温度の最も高い繊維の低下温度との差が、30℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0021】
また、上記繊維集合体が、上記ポリイミド繊維のうち、貯蔵弾性率の低下温度の最も低いポリイミド繊維を介して、繊維同士が少なくとも一部結合していることが好ましい。
【0022】
また、上記繊維集合体が、上記ポリイミド繊維のうち、貯蔵弾性率の低下温度の最も低いポリイミド繊維が完全に融解することなく形状を保持した状態で繊維同士の少なくとも一部が結合していることが好ましい。
【0023】
また、前記繊維集合体が、原料として少なくともピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを含むポリイミド繊維、及び、原料として少なくともピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物から選ばれる1種以上の酸二無水物を含むポリイミド繊維の2種類の繊維を少なくとも含む繊維集合体であり、前記繊維集合体の嵩密度が1.0〜80.0kg/m3であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の断熱・吸音材料は、軽量であって、吸音特性に優れる航空機用途に最適な断熱・吸音材料であり航空機の軽量化、燃費向上に役立つ材料である。更には、航空機用途に限らず、断熱の必要な配管の保温・断熱や、吸音の必要な空間の吸音材料、更には、嵩密度を上げることで防振や制震等の機能も発揮する材料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本願発明のポリイミド繊維からなる繊維集合体は、貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維を含む繊維集合体であって、上記ポリイミド繊維の少なくとも1種類を介して、繊維同士が少なくとも一部結合していることを特徴とする繊維集合体である。
【0026】
本願発明における一部結合しているとは、ポリイミド繊維が融解することなく形状を保持した状態で繊維同士の少なくとも一部が結合していることを意味する。本願発明のポリイミド繊維集合体の模式図を図1に示す。ポリイミド繊維の貯蔵弾性率の低下温度の高いポリイミド繊維100と、貯蔵弾性率の低下温度の低いポリイミド繊維101は、繊維同士の結合部位102により繊維同士が結合しているが、貯蔵弾性率の低いポリイミド繊維が完全に融解することなく、形状を保持した状態で繊維同士が結合している。本願発明においては、このように完全に融解することなく繊維の重なり部位で結合を形成することが特徴であり、2種以上の繊維が形状を保持した状態で結合しているので繊維集合体の嵩密度が低く制御し易くなると共に、繊維本数が多くなるので吸音特性や断熱性能に優れる繊維集合体を作製することができるので好ましい。このような形状の繊維集合体に制御するには下記に示す製造方法を用いることにより達成することができるが、特に、貯蔵弾性率の低下温度の低いポリイミド繊維の選定が重要である。尚、本願発明においてはポリイミド繊維が完全に融解することが無いため、特許文献3や4に記載の方法の様に瘤が生成することは無い。
【0027】
本願発明における貯蔵弾性率の低下温度とは、ポリイミド繊維の原料となるポリアミド酸溶液から25μm厚みのポリイミドフィルムを作製して、そのフィルムの動的粘度弾性挙動を測定した際に、貯蔵弾性率E'の低下温度を指す。詳述すると、ポリイミドフィルムの製造方法は以下の通りである。すわなち、ガラス基板上に最終ポリイミドフィルムの厚みが25μmになるようにポリアミド酸溶液を塗布して、室温に冷却したオーブンに投入して、300℃になるまで6℃/分の昇温速度で昇温させる。そして、室温になるまでゆっくりと冷却を行うことでガラス基板上にポリイミドフィルムを作製することができる。動的粘弾性挙動の測定は、ポリイミドフィルムを、9mmの幅で40mm長さに切り出して、セイコー電子(株)製 DMS200の装置にセットした後に、引張りモードで、下記の測定条件で行うことができる。尚、ポリイミドフィルムが脆く計測が難しい場合には、焼成最高温度を低下させることが好ましい。
【0028】
<測定条件>
プロファイル温度: 20℃〜400℃(昇温速度:3℃/分)但し、ポリイミドフィルムが溶融してしまう場合には、適宜温度を低下させることが好ましい。
周波数: 5Hz
Lamp.(交流歪振幅目標値): 20μm
Fbase(測定中のテンションの最小値):0g
F0gain(測定中にテンションを交流力振幅に応じて変化させる場合の係数):3.0。
【0029】
この測定条件での測定によって、上述のプロファイル温度における貯蔵弾性率E'及び、損失弾性率E"の値がそれぞれ得られる。貯蔵弾性率E'の低下温度とは、急激に貯蔵弾性率が低下し始める時の温度である。図2の動的粘弾性を測定した例を用いて説明を行うと、貯蔵弾性率が変化し始めるまでの直線に対する接線50と、貯蔵弾性率が変化しはじめて変化し終わった直線に対する接線51とをひき、その交点52の温度を求める。この温度が貯蔵弾性率の低下温度となる。尚、本願発明において貯蔵弾性率の低下温度が、400℃以内に存在しない場合には、貯蔵弾性率の低下温度は400℃であると考える。本願発明においては、この低下温度が異なる2種以上のポリイミド繊維を用いることが好ましい。このような貯蔵弾性率の低下温度の異なるポリイミド繊維を用いることで紡糸して加熱・イミド化を行う際に、ポリイミド繊維同士が結合して強固な結合となるため好ましい。
【0030】
尚、本願発明における貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維とは、その貯蔵弾性率の低下温度の差が30℃以上200℃以下の範囲であることが好ましく、特に好ましくは40℃以上150℃以下であることが好ましい。このような範囲に制御することでポリイミド繊維の成形過程において高温で加熱イミド化を行う際に、イミド化反応と共に、熱融着も進むことになる。その結果、最終的に得られるポリイミド繊維同士に強固な結合ができるので好ましい。
【0031】
また、本願発明においては、上記繊維集合体が、上記ポリイミド繊維のうち、貯蔵弾性率の低下温度の最も低いポリイミド繊維を介して、繊維同士が少なくとも一部結合していることを特徴とする繊維集合体であることが好ましく、また、上記ポリイミド繊維のうち、貯蔵弾性率の低下温度の最も低いポリイミド繊維が完全に融解することなく形状を保持した状態で繊維同士の少なくとも一部が結合していることを特徴とする繊維集合体であることが好ましい。このような状態にする為には、貯蔵弾性率の低下温度の最も高いポリイミド繊維の貯蔵弾性率の低下温度よりも高い温度で加熱イミド化を行えば良い。そうすることで融着が進み易くなるので好ましい。但し、400℃以内に貯蔵弾性率の低下温度を有しないポリイミド繊維については、400℃以上の温度で焼成することが好ましい。
【0032】
本願発明における貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維には、原料として少なくともピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを含むポリイミド繊維、及び、原料として少なくともピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物から選ばれる1種以上の酸二無水物を含むポリイミド繊維の2種のポリイミド繊維が含まれることが好ましい。このような2種のポリイミド繊維を併用することでポリイミド繊維の貯蔵弾性率の低下温度の異なる繊維が製造し易くなるので好ましい。
【0033】
<貯蔵弾性率の低下温度が高いポリイミド樹脂>
特に、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを含むポリイミド繊維を用いることでポリイミド繊維の耐熱温度が高くなるので好ましい。上記ピロメリット酸二無水物に加えて、下記の酸二無水物を併用することも可能である。
【0034】
例えば、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3´,4,4´−テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3,4―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´−ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3',4,4'―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4'―オキシジフタル酸二無水物、3,3',4,4'―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラカルボキシブタン二無水物を併用することも可能である。
【0035】
中でもポリイミド繊維の耐熱性、耐薬品性を向上させる上で、併用できる酸二無水物の中でも、3,3',4,4'―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を併用することが好ましい。
【0036】
尚、酸二無水物としてピロメリット酸二無水物以外の酸二無水物成分の使用量は、全酸二無水物を100モルとした場合に、70モル以下で使用することが耐熱性を損なわないので好ましい。特に好ましい使用量は、50モル以下で使用することが好ましい。
【0037】
また、本願発明においては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルに加えて、下記のジアミンを併用することもできる。
【0038】
例えば、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、(4−アミノフェノキシフェニル)(3−アミノフェノキシフェニル)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、3,3’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3’−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3’−ヘキサフルオロプロパン、2,2−[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)] −1,1,1,3,3,3’−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−P−アミノベンゾエート、ポリ(テトラメチレン/3−メチルテトラメチレンエーテル)グリコールビス(4−アミノベンゾエート)、トリメチレン―ビス(4−アミノベンゾエート)、p-フェニレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、m−フェニレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、ビスフェノールA−ビス(4−アミノベンゾエート)を併用することも可能である。
【0039】
特に、最終的に得られるポリイミド樹脂の耐熱性や耐薬品性を向上させるためには、芳香族系のジアミンである、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを併用することが好ましい。特に、好ましくはp−フェニレンジアミンを併用することが好ましい。
【0040】
更には、側鎖にカルボキシル基や水酸基を有するジアミノ化合物として、例えば、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3'−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、[ビス(4-アミノ-2-カルボキシ)フェニル]メタン、[ビス(4-アミノ-3-カルボキシ)フェニル]メタン、[ビス(3-アミノ-4-カルボキシ)フェニル]メタン、[ビス(3-アミノ-5-カルボキシ)フェニル]メタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3'−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4‘−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3'−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2'−ジカルボキシジフェニルスルフォン、2,3−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3'−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニルを一部併用することもできる。
【0041】
このような側鎖にカルボキシル基や、水酸基を有するジアミノ化合物を併用することでポリイミド繊維を他の反応性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)で硬化させるときに、硬化しやすくなるので好ましい。また、エポキシ樹脂等の反応活性点を持たせることで繊維同士の結合ができるので繊維同士の絡み合いが増えるので好ましくなる。
【0042】
エポキシ樹脂等の反応性樹脂の反応方法としては、出来上がったポリイミド繊維を反応性樹脂溶液に浸漬したのち、加熱乾燥することで架橋したポリイミド繊維を得る方法や紡糸の際に反応性樹脂溶液を噴霧しながら紡糸する方法等の方法を採用することでポリイミド繊維を得ることができる。
【0043】
本願発明で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルに併用することのできるジアミンの使用量は、全ジアミンを100モルとした場合に、80モル以下で使用することが耐熱性を損なわないので好ましい。特に好ましい使用量は、70モル以下で使用することが好ましい。また、芳香族系のジアミンと側鎖にカルボキシル基や水酸基を有するジアミノ化合物の使用割合は、適宜選定することが好ましい。特に、側鎖にカルボキシル基や水酸基を有するジアミノ化合物は、全ジアミンを100モルとした場合に、20モル以下で使用することでポリアミド酸溶液の貯蔵安定性を向上させることができるので好ましい。また、特に好ましい使用量は15モル以下である。
【0044】
<貯蔵弾性率の低下温度が低いポリイミド樹脂>
また、他のポリイミド成分として、少なくともピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物から選ばれる1種以上の酸二無水物を含むポリイミド繊維を用いることで、貯蔵弾性率の低下温度が低いポリイミド繊維が得られる。
【0045】
この貯蔵弾性率の低下温度の低いポリイミド繊維のジアミン成分としては、例えば、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、(4−アミノフェノキシフェニル)(3−アミノフェノキシフェニル)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、3,3’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)]エタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3’−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3’−ヘキサフルオロプロパン、2,2−[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)] −1,1,1,3,3,3’−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、トリメチレン―ビス(4−アミノベンゾエート)、p-フェニレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、m−フェニレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、ビスフェノールA−ビス(4−アミノベンゾエート)、下記一般式群(1)から選ばれるジアミン成分を用いることが好ましい。
【0046】
【化1】

(式中、o、p及びqは、それぞれ独立して、1〜30の整数を示す。R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル基、または芳香族基を示し、mは1〜40の整数、nは1〜20の整数を示す。R3及びR4は、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキル基である。)
【0047】
特に、少なくとも4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンもしくは、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを含むポリイミド繊維であることが耐熱性及び耐薬品性の点で好ましい。
【0048】
特に、耐熱性の観点から貯蔵弾性率の低下温度の低いポリイミド樹脂として、下記ポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
(1)ピロメリット酸二無水物と、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル及び、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンからなるポリイミド樹脂であって、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが全ジアミンを100モルとした場合に、50モル以上含有するポリイミド樹脂、
(2)ピロメリット酸二無水物と、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル及び、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンからなるポリイミド樹脂であって、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが全ジアミンを100モルとした場合に、50モル以上含有するポリイミド樹脂、
(3)ピロメリット酸二無水物と、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル及び、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンからなるポリイミド樹脂であって、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンが全ジアミンを100モルとした場合に、50モル以上含有するポリイミド樹脂、
(4)3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、4,4'−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリイミド樹脂、
(5)3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と、4,4'−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリイミド樹脂、
(6)2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物と、4,4'−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリイミド樹脂、
(7)2,3,3’,4―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p-フェニレンジアミンからなるポリイミド樹脂、
(8)2,3,3’,4―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、4,4'−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリイミド樹脂、
(9)2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物と、4,4'−ジアミノジフェニルスルホンからなるポリイミド樹脂、
(10)2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物と、3,3'−ジアミノジフェニルスルホンからなるポリイミド樹脂、
(11)3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンからなるポリイミド樹脂が好適に用いられる。
【0049】
上記ポリイミド樹脂を用いることで、貯蔵弾性率の低下温度の高いポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸繊維をイミド化するための温度にて焼成することでポリイミド繊維が少なくとも一部結合していることを特徴とするポリイミド繊維集合体を得ることができる。
【0050】
本願発明のポリアミド酸溶液に用いられる有機溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン等の有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等の水溶性エーテル化合物、プロピレングリコール、エチレングリコール等の水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトン等の水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル等の水溶性ニトリル化合物等が用いられる。これらの溶媒は2種以上の混合溶媒として使用することも可能であり、特に制限されることはない。中でもN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンを用いることがポリアミド酸溶液の樹脂濃度を高くすることができるので好ましい。
【0051】
本願発明に好適に用いられるポリアミド酸溶液は、上記の酸二無水物とジアミンを上記有機溶剤中で反応させて得られるポリアミド酸溶液である。
【0052】
特に、ポリアミド酸の製造には、純度の高い酸二無水物を用いることが分子量を上げて紡糸し易いポリアミド酸溶液にする上で好ましい。本願発明で好ましい酸二無水物の純度は閉環構造を有する酸二無水物が、98%以上の高純度で含有されている物を用いることが好ましく、特に好ましくは、99%以上の高純度である。
【0053】
本願発明におけるポリアミド酸溶液の製造方法では、前記酸二無水物と前記ジアミンの使用量がそれぞれのモル数に対する比として好ましくは0.90〜1.10で制御することで本願発明の紡糸に適したポリアミド酸溶液を調整することができる。より好ましくは0.95〜1.05で反応させポリアミド酸とすることが好ましい。このような反応比率で反応ささせることでポリアミド酸からポリイミドへのイミド化の際に分子量の低下が起きず、耐熱性、耐薬品性に優れるポリイミド繊維を製造することができるので好ましい。
【0054】
ポリアミド酸溶液のポリマー濃度としては、固形分濃度として0.1〜50重量%、特に好ましくは1〜40重量%である。ポリアミド酸の重合条件としては、不活性ガス雰囲気下で−20〜60℃、好ましくは50℃以下で攪拌することで、目的とするポリアミド酸を重合することができる。
【0055】
また、他のポリイミド成分として、少なくともピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物から選ばれる1種以上の酸二無水物を含むポリイミド繊維の場合には、ジイソシアネート化合物を用いて、ポリイミド樹脂とすることもできる。
【0056】
ジイソシアネート化合物としては例えば、ジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジメチルジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジエチルジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジメトキシジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4′−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4′−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、4,4′−[2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートを使用することが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートを用いてもよく、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等があるが、特に制限はない。
【0057】
尚、酸二無水物とジイソシアネートの配合量を、酸無水物基数とイソシアネート基数の比率が、イソシアネート基/酸無水物基=0.95〜1.05になるように無溶媒あるいは有機溶媒中で反応させることで本願発明に好適なポリイミド樹脂を得ることができる。
【0058】
この時の反応温度は、60〜250℃とすることが好ましく、より好ましくは、60〜200℃であり、特に好ましくは70℃〜180℃である。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件などにより適宜選択することができる。
【0059】
また、無溶剤で反応させることもできるが、ポリイミド樹脂を安定的に生産する上で、溶剤系で反応させることが好ましい。例えば有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、メチルモノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、メチルジグライム(ビス(2-メトキシエテル)エーテル)、メチルトリグライム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、メチルテトラグライム(ビス[2-(2-メトキシエトキシエチル)]エーテル)、エチルモノグライム(1,2-ジエトキシエタン)、エチルジグライム(ビス(2-エトキシエチル) エーテル)、ブチルジグライム(ビス(2-ブトキシエチル)エーテル)等の対称グリコールジエーテル類、γ―ブチロラクトンやN−メチル−2−ピロリドン、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n―プロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名、カルビトールアセテート、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル))、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート等のアセテート類や、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3―ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールものエチルエーテル等のエーテル類の溶剤を用いることもできる。
【0060】
尚、反応の際に用いられる溶剤量は、反応溶液中の溶質(酸二無水物とジイソシアネート類)の溶質重量濃度が5重量%以上90重量%以下となることが好ましく。更に好ましくは、10重量%以上80重量%以下となることが好ましい。上記濃度に調整することで、重合反応が起こり安く所望の構造物質が得られるので好ましい。
【0061】
必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、錫、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行っても良い。
【0062】
上記ポリアミド酸溶液もしくは、ポリイミド溶液は、紡糸する前に、脱水剤、イミド化触媒、各種フィラー、酸化防止剤、難燃剤、消泡剤、潤滑材、着色剤等を1種あるいは2種以上、混合しておくこともできる。脱水剤としては、無水酢酸が好ましく用いられる。イミド化触媒としては、3級アミンを用いることが好ましく、より好ましいものは、ピリジン、ピコリン、イソキノリンを用いることが好ましい。
【0063】
尚、本願発明のポリアミド酸溶液は、B型粘度計で測定した場合に、23℃で300ポイズ以上10000ポイズ以下の溶液粘度を有することが紡糸したときに安定して紡糸できるので好ましい。特に好ましくは、溶液粘度は500ポイズ以上6000ポイズ以下、特に好ましい溶液粘度は1000ポイズ以上4000ポイズ以下に制御することが好ましい。
【0064】
さらに、E型粘度計もしくはB型粘度計で10回転/分で測定した場合と、2回転/分で測定した場合の粘度から下記一般式(1)を用いて算出されるチキソ指数が1.5以下であることが、紡糸繊維を気流で引き伸ばした時に安定して紡糸されやすいので好ましい。特に、チキソ指数が1.5より大きくなると溶液を気流で紡糸する際に、伸びなく紡糸できなくなるので好ましくない。
【0065】
チキソ指数 = (2回転/分におけるポリアミド酸の粘度)/(10回転/分におけるポリアミド酸の粘度) 一般式(1)。
【0066】
<紡糸方法>
本願発明のポリイミド繊維の製造方法は、上記ポリアミド酸溶液を気流にて引き取りながら紡糸し、積層してなるポリイミド繊維の製造方法を用いることで作製し得る。気流にて引き取るとは、紡糸工程において、紡糸原液を気流にて吹き飛ばしながら、引き伸ばして繊維状に成形する方法である。特に、外力として、気流を最も主要な外力として用いることで紡糸する方法である。
【0067】
詳細な製造装置を図3を用いて説明を行う。
【0068】
本願発明のポリイミド繊維の製造方法は、図3に示す気流発生装置1により発生した気流4により、紡糸口金2から吐出されたポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液5を引き取ることにより表面の有機溶剤を一部除去しながら紡糸する方法である。このとき、外力として与えられた気流は、ポリアミド酸溶液を気流にて吹き飛ばしながら紡糸すると共に、気流の外力によって紡糸繊維を延伸する効果も呈する。また、気流によって紡糸された繊維は、比表面積が一度に増えることによりポリアミド酸溶液中に含まれる溶剤は、揮発することになる。
【0069】
また、ポリアミド酸溶液を紡糸する際に、気流にて引き取ると、繊維の気流接触面とその反対側の面(裏側の面)での乾燥状態に差異が生じることになる。このような乾燥状態に差異が生じることで紡糸して集めたポリアミド酸繊維の集合体を乾燥させると、乾燥に伴う収縮力の違いから繊維が湾曲することになる。このように繊維が湾曲することで最終的に得られるポリイミド繊維の嵩密度を小さくすることができるのである。
【0070】
本願発明のポリイミド繊維の繊維径は、紡糸口金2のオリフィス径及び、ポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液の吐出量により制御することができる。オリフィス径が小さい程、ポリイミド繊維の繊維径を小さくすることができ、ポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液の吐出量が少ない程、ポリイミド繊維の繊維径を小さくすることができる。
【0071】
本願発明の紡糸口金2のオリフィス径としては、直径0.01mm〜1.00mmの物を用いることが繊維を紡糸する際に安定的に紡糸できると共に、最終的に得られるポリイミド繊維の繊維径を100μm以下、好ましくは0.1〜50μmの範囲に制御し易くなるので好ましい。特に好ましいオリフィス径は、直径0.05mm〜0.80mmのオリフィスを用いることが好ましい。また、紡糸口金2の吐出口のオリフィス形状は、円形、楕円形、星型、アレイ型等、どのような形状でも使用することができる。特に、円形のオリフィスを用いることが紡糸繊維表面の溶剤量をコントロールし易くなるので好ましい。
【0072】
上記オリフィスに流すポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液の流量は、オリフィス径と固形分濃度から適宜選定される。特に、ポリイミド繊維が太い場合には、ポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液の吐出量を低下させることで100μm以下、好ましくは0.1〜50μmの繊維径に制御することができる。
【0073】
本願発明においては、2種類以上のポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液を吐出して紡糸するため、例えば、図4に示す様に、2種類以上の紡糸原液を異なる紡糸口金から吐出して同時に紡糸することで2種類以上の繊維を一度に作製することができる。このように、紡糸時に2種類以上の繊維を混合させることで、加熱・乾燥工程における加熱により繊維同士が一部結合した繊維集合体になりやすいので好ましい。また、繊維径が細い繊維を紡糸した後に、繊維同士を絡ませて加熱することで、繊維同士を融着する方法もあるが、この方法では、繊維径が細いと繊維同士を上手く絡ませることが難しく、しかも、繊維が切れてしまい短くなるので好ましくない。また、紡糸口金のオリフィス径やオリフィス形状は、各繊維に最適な形状にすることが好ましい。
【0074】
また、紡糸口金はそれぞれが独立していてもよく、捕集装置8の表面で2種以上のポリアミド酸もしくはポリイミド溶液からなる繊維を同時に捕集することで最終得られる繊維集合体に2種以上のポリイミド繊維を混合することができ、加熱工程で繊維同士が少なくとも一部結合した繊維集合体とすることができる。
【0075】
本願発明におけるポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液5をひきとるための気流4は5m/秒以上400m/秒以下の風速を有していることが好ましく、特に好ましくは10m/分以上350m/秒以下であることが紡糸繊維を細くすることができるので好ましい。また、上記気流にすることで紡糸繊維の表面から効率よく溶剤を揮発させることができるので好ましい。
【0076】
上記、気流によりひきとられたポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液は、捕集装置8により捕集される。捕集装置8の表面は、気流を上手く逃がすために、金網状の捕集装置11のようになっていることが好ましい。また、捕集装置8と紡糸口金2との距離は、1m以上が好ましく、特に2m以上であることが好ましい。捕集装置8と紡糸口金2の距離を1m以上に制御することで紡糸されたポリアミド酸繊維もしくはポリイミド繊維表面の溶剤濃度が低くなり、嵩密度の小さいポリアミド酸繊維もしくはポリイミド繊維の集合体となる。このようにして、最終的に得られるポリイミド繊維からなる集合体の嵩密度を1.0〜80.0kg/m3に制御することができる。特に、嵩密度を低くするには、捕集装置8と紡糸口金2の距離を遠くすることが好ましい。また、嵩密度を高めるには、捕集装置8と紡糸口金2の距離を近くすることが好ましい。
【0077】
次いで、積層したポリアミド酸もしくはポリイミド繊維の集合体3は、ベルトから引き剥がされて搬送方向6の方向に搬送される。搬送されたポリアミド酸もしくはポリイミド繊維の集合体3は、インライン中或いはオフラインの加熱・乾燥装置9により残留揮発分を乾燥・除去されると共に、加熱イミド化される。また、ポリアミド酸もしくはポリイミド繊維の集合体3は、端部を固定され搬送され、加熱・乾燥が実施される。或いは、搬送台上にのせられて加熱・乾燥されても良い。また、オフライン装置では、ポリアミド酸もしくはポリイミド繊維の集合体3を特定の成形装置に入れて焼成することでポリイミド繊維の集合体を作製することも可能である。
【0078】
ポリアミド酸もしくはポリイミド繊維の加熱・乾燥は80℃以上700℃以下の温度で、実施することが好ましく、特に好ましい温度範囲は、100℃以上600℃以下の温度で加熱・乾燥することが好ましい。このような温度範囲で加熱することで残留溶剤を完全に除去できると共に、イミド化反応を効率良く進めることができるので好ましい。また、加熱時間については、適宜選定することが好ましく、さらに、加熱炉の温度ステップは、適宜選定することが好ましい。
【0079】
ポリアミド酸もしくはポリイミド繊維の集合体3は、焼成することでポリイミド繊維の集合体7となる。このポリイミド繊維の集合体7は、巻き取り装置10により巻き取られることで、ロール状のポリイミド繊維の集合体のロール12を形成することができる。
【0080】
本願発明のポリイミド繊維の集合体は、高い空隙率を有するので吸音特性に優れており、特に、航空機用途の断熱・吸音材料としては好適に用いられる。また、他の用途としては例えば建築部材用途の吸音材料、車内や列車内の騒音を減らすための吸音材料、音響設備に用いられる吸音材料等の各種吸音材料に好適に用いることができる。
【0081】
また、高い空隙率を有しているので、例えば建築部材用途の断熱材料や、車のエンジンルーム内の断熱材料や、車内や列車内の断熱材料、各種高温配管を覆う断熱材料等の各種断熱材料にも好適に用いることができる。特に好適には、軽量であることから航空機用途の断熱材料として好適に用いることができる。
【0082】
また、非可塑性ポリイミド繊維でできているので、高い難燃性が求められる航空機用途の難燃カーペット代替や、難燃毛布代替等の難燃マットの用途にも広く用いることができる。
【実施例】
【0083】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
<平均繊維径>
平均繊維径の測定方法は、電子顕微鏡(日本電子データム株式会社製、JSM−6380LA)により繊維径を30本測定した。異形断面を有する繊維に関しては、繊維の最大の幅を直径として算出した。その平均値を平均繊維径とした。
【0085】
<ポリイミド樹脂の貯蔵弾性率の低下温度の測定>
ポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液を、厚みが1cmのガラス基板上に塗布して、室温から300℃まで6℃/分の昇温速度で昇温させて焼成を行った。出来上がったガラス基板上のポリイミドフィルムは完全に冷却した後に、水中に沈めることで引き剥がした。このポリイミドフィルムを50℃のオーブン中で30分かけて完全に乾燥を行った。
【0086】
乾燥したポリイミドフィルムを、9mm幅×40mm長さに切り出して、セイコー電子(株)製 DMS200の装置にセットした後に、引張りモードで、下記の測定条件で測定を行った。
【0087】
<測定条件>
プロファイル温度: 20℃〜400℃(昇温速度:3℃/分)但し、ポリイミドフィルムが溶融してしまう場合には、適宜温度を低下させることが好ましい。
周波数: 5Hz
Lamp.(交流歪振幅目標値): 20μm
Fbase(測定中のテンションの最小値):0g
F0gain(測定中にテンションを交流力振幅に応じて変化させる場合の係数):3.0
【0088】
この測定条件での測定によって、上述のプロファイル温度における貯蔵弾性率E'及び、損失弾性率E"の値がそれぞれ得られる。貯蔵弾性率E'の低下温度とは、急激に貯蔵弾性率が低下し始める時の温度である。図2の動的粘弾性を測定した例を用いて説明を行うと、貯蔵弾性率が変化し始めるまでの直線に対する接線50と、貯蔵弾性率が変化しはじめて変化し終わった直線に対する接線51とをひき、その交点52の温度を求める。この温度が貯蔵弾性率の低下温度となる。
【0089】
<垂直入射吸音率測定>
ASTM−E−1050の垂直入射吸音率試験に準じて、サンプル径φ29mm、厚み2.54cm(1インチ)、背後空気層0mm、測定周波数域500〜6300Hz(1/3オクターブバンド)の条件にて測定した。
【0090】
<嵩密度の測定方法>
得られた非熱可塑性ポリイミド繊維の集合体を10cm×10cm×2.5cmに切り出して、その重量を測定して嵩密度を測定した。
【0091】
<燃焼性試験方法>
FAR 25.856(a)に準拠した方法で測定を行った。
【0092】
(合成例1)
チッソ置換を行った2Lのガラス製セパラブルフラスコ中に、溶液を攪拌するための攪拌翼を取りつけた反応装置内で反応を行った。まず、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、4,4'-ODAと略す)91.8g(0.458モル)をN,N−ジメチルホルムアミド779gに溶解する。この溶液を40℃に保温した。この溶液中に、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAと略す)95.0g(0.436mol)を投入して完全に溶解した。この溶液に5.0gのPMDAを66.5gのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した溶液を少量づつ添加して、溶液の粘度が23℃で3100ポイズになった時点で添加を止めて紡糸用の高分子樹脂溶液とした。尚、この溶液の23℃での粘度をB型粘度計で10回転/分と5回転/分の2つの回転数で溶液の粘度測定を行い、その溶液粘度からチキソ指数を求めると1.01であった。固形分濃度は18.5%であった。このポリイミド樹脂からポリイミドフィルムを作製して、貯蔵弾性率の測定を行ったところ、低下温度は360℃であった。
【0093】
(合成例2)
チッソ置換を行った2Lのガラス製セパラブルフラスコ中に、溶液を攪拌するための攪拌翼を取りつけた反応装置内で反応を行った。まず、3,3',4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと略す。)50.0g(0.170モル)をN,N−ジメチルホルムアミド543gに溶解する。この溶液を30℃に保温した。この溶液中に、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPと略す)69.4g(0.169mol)を投入して完全に溶解した。この溶液に0.35gのBAPPを3.14gのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した溶液を少量づつ添加して、溶液の粘度が23℃で2600ポイズになった時点で添加を止めて紡糸用の高分子樹脂溶液とした。尚、この溶液の23℃での粘度をB型粘度計で10回転/分と5回転/分の2つの回転数で溶液の粘度測定を行い、その溶液粘度からチキソ指数を求めると1.02であった。固形分濃度は18.0%であった。このポリイミド樹脂からポリイミドフィルムを作製して、貯蔵弾性率の測定を行ったところ、低下温度は243℃であった。
【0094】
(合成例3)
チッソ置換を行った2Lのガラス製セパラブルフラスコ中に、溶液を攪拌するための攪拌翼を取りつけた反応装置内で反応を行った。まず、4,4'-ODA18.0g(0.09モル)、BAPPを86.3g(0.21モル)をN,N−ジメチルホルムアミド769gに溶解する。この溶液を40℃に保温した。この溶液中に、PMDA65.5g(0.30モル)を投入して完全に溶解した。この溶液に0.33gのPMDAを4.18gのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した溶液を少量づつ添加して、溶液の粘度が23℃で1860ポイズになった時点で添加を止めて紡糸用の高分子樹脂溶液とした。尚、この溶液の23℃での粘度をB型粘度計で10回転/分と2回転/分の2つの回転数で溶液の粘度測定を行い、その溶液粘度からチキソ指数を求めると1.07であった。固形分濃度は18%であった。このポリイミド樹脂からポリイミドフィルムを作製して、貯蔵弾性率の測定を行ったところ、貯蔵弾性率の低下温度は305℃であった。
【0095】
(合成例4)
チッソ置換を行った2Lのガラス製セパラブルフラスコ中に、溶液を攪拌するための攪拌翼を取りつけた反応装置内で反応を行った。まず、4,4'-ODAを60.1g(0.300モル)をN,N−ジメチルホルムアミド670gに溶解する。この溶液を30℃に保温した。この溶液中に、BPDA87.9g(0.299モル)を投入して完全に溶解した。この溶液に0.44gのBPDAを5.81gのN,N−ジメチルホルムアミドに分散してスラリー溶液とした溶液を少量づつ添加して、溶液の粘度が23℃で1660ポイズになった時点で添加を止めて紡糸用の高分子樹脂溶液とした。尚、この溶液の23℃での粘度をB型粘度計で10回転/分と2回転/分の2つの回転数で溶液の粘度測定を行い、その溶液粘度からチキソ指数を求めると1.01であった。固形分濃度は18.0%であった。このポリイミド樹脂からポリイミドフィルムを作製して、貯蔵弾性率の測定を行ったところ、貯蔵弾性率の低下温度は303℃であった。
【0096】
(実施例1)
合成例1と合成例2で得られたポリアミド酸溶液を用いて紡糸実験を行った。紡糸実験は図3と同様の装置を用いて行った。但し、捕集装置8は固定した状態で紡糸を行い、得られたポリアミド酸繊維の集合体を下記条件で焼成して繊維集合体を得た。
【0097】
吐出口金2のオリフィスは、図4に示すダイスの様に、合成例1のポリアミド酸溶液のオリフィス25と、合成例2のポリアミド酸溶液のオリフィス26の異なる吐出口から吐出するダイスを用いた。合成例1のポリアミド酸溶液は注入口20より注入されて、分岐流路24により溶液が分岐されて合成例1のポリアミド酸溶液のオリフィス25から吐出される。また、合成例2のポリアミド酸溶液の注入口21より注入されて、分岐口23により溶液が分岐されて各吐出口26から吐出される。
【0098】
各ポリアミド酸溶液の吐出量、オリフィスの孔数及びオリフィス径は表1に記載の条件で吐出して紡糸を行った。図3記載の紡糸方法に沿って説明を行うと、まず、紡糸口金2のオリフィスから気流発生装置1の吐出口までの距離は20cmに設置し、気流4はポリアミド酸溶液をひきとるように、ポリアミド酸溶液の吐出方向に垂直に気流があたるように設定して紡糸を行った。気流発生装置1からの風速はポリアミド酸繊維と交差するポイントでの風速を測定した結果を表1に記載する。この紡糸繊維を、2.5m飛行させて捕集ネット11上で捕集した。この状態で5時間捕集を行い、一部溶剤が残ったポリアミド酸繊維の集合体を得た。このポリアミド酸繊維の集合体を、捕集ネット11から取り外して、金属製の容器に入れて加熱・乾燥を行った。加熱温度は、100℃のオーブンで3分間乾燥を行い、100℃から420℃に1時間かけて除々に温度を上げた。420℃の状態で5分間焼成を行いポリイミド繊維の集合体を得た。
【0099】
得られたポリイミド繊維の集合体の物性評価を行った。その結果を表1に纏める。また、実施例1の条件で紡糸して得られた繊維集合体の電子顕微鏡写真を図5と図6に記載する。図5の写真より、繊維が屈曲していることが明らかになった。また、図6の写真に見られる矢印部位の結合は繊維同士が結合していることを示唆している。当該部位より、繊維が完全に融解することなく形状を保持した状態で繊維同士に結合が見られることが明らかになった。
【0100】
(実施例2)
合成例1と合成例3で得られたポリアミド酸溶液を用いて紡糸実験を行った。紡糸実験は図3と同様の装置を用いて行った。但し、捕集装置8は固定した状態で紡糸を行い、得られたポリアミド酸繊維の集合体を下記条件で焼成して繊維集合体を得た。
【0101】
吐出口金2のオリフィスは、図4に示すダイスの様に、合成例1のポリアミド酸溶液のオリフィス25と、合成例3のポリアミド酸溶液のオリフィス26の異なる吐出口から吐出するダイスを用いた。合成例1のポリアミド酸溶液は注入口20より注入されて、分岐流路24により溶液が分岐されて合成例1のポリアミド酸溶液のオリフィス25から吐出される。また、合成例2のポリアミド酸溶液の注入口21より注入されて、分岐口23により溶液が分岐されて各吐出口26から吐出される。
【0102】
各ポリアミド酸溶液の吐出量、オリフィスの孔数及びオリフィス径は表1に記載の条件で吐出して紡糸を行った。図3記載の紡糸方法に沿って説明を行うと、まず、紡糸口金2のオリフィスから気流発生装置1の吐出口までの距離は15cmに設置し、気流4はポリアミド酸溶液をひきとるように、ポリアミド酸溶液の吐出方向に垂直に気流があたるように設定して紡糸を行った。気流発生装置1からの風速はポリアミド酸繊維と交差するポイントでの風速を測定した結果を表1に記載する。この紡糸繊維を、2.5m飛行させて捕集ネット11上で捕集した。この状態で5時間捕集を行い、一部溶剤が残ったポリアミド酸繊維の集合体を得た。このポリアミド酸繊維の集合体を、捕集ネット11から取り外して、金属製の容器に入れて加熱・乾燥を行った。加熱温度は、100℃のオーブンで3分間乾燥を行い、100℃から420℃に1時間かけて除々に温度を上げた。420℃の状態で5分間焼成を行いポリイミド繊維の集合体を得た。
【0103】
得られたポリイミド繊維の集合体の物性評価を行った。その結果を表1に纏める。また、実施例1の条件で紡糸して得られた繊維集合体の電子顕微鏡写真を図7に記載する。図7の写真に見られる矢印部位の結合は繊維同士が結合していることを示唆している。当該部位より、繊維が完全に融解することなく形状を保持した状態で繊維同士に結合が見られることが明らかになった。
【0104】
(実施例3)
合成例1と合成例4で得られたポリアミド酸溶液を用いて紡糸実験を行った。紡糸実験は図3と同様の装置を用いて行った。但し、捕集装置8は固定した状態で紡糸を行い、得られたポリアミド酸繊維の集合体を下記条件で焼成して繊維集合体を得た。
【0105】
吐出口金2のオリフィスは、図4に示すダイスの様に、合成例1のポリアミド酸溶液のオリフィス25と、合成例4のポリアミド酸溶液のオリフィス26の異なる吐出口から吐出するダイスを用いた。合成例1のポリアミド酸溶液は注入口20より注入されて、分岐流路24により溶液が分岐されて合成例1のポリアミド酸溶液のオリフィス25から吐出される。また、合成例2のポリアミド酸溶液の注入口21より注入されて、分岐口23により溶液が分岐されて各吐出口26から吐出される。
【0106】
各ポリアミド酸溶液の吐出量、オリフィスの孔数及びオリフィス径は表1に記載の条件で吐出して紡糸を行った。図3記載の紡糸方法に沿って説明を行うと、まず、紡糸口金2のオリフィスから気流発生装置1の吐出口までの距離は15cmに設置し、気流4はポリアミド酸溶液をひきとるように、ポリアミド酸溶液の吐出方向に垂直に気流があたるように設定して紡糸を行った。気流発生装置1からの風速はポリアミド酸繊維と交差するポイントでの風速を測定した結果を表1に記載する。この紡糸繊維を、2.5m飛行させて捕集ネット11上で捕集した。この状態で5時間捕集を行い、一部溶剤が残ったポリアミド酸繊維の集合体を得た。このポリアミド酸繊維の集合体を、捕集ネット11から取り外して、金属製の容器に入れて加熱・乾燥を行った。加熱温度は、100℃のオーブンで3分間乾燥を行い、100℃から420℃に1時間かけて除々に温度を上げた。420℃の状態で5分間焼成を行いポリイミド繊維の集合体を得た。
【0107】
得られたポリイミド繊維の集合体の物性評価を行った。その結果を表1に纏める。また、実施例1の条件で紡糸して得られた繊維集合体の電子顕微鏡写真を図8に記載する。図8の写真に見られる矢印部位の結合は繊維同士が結合していることを示唆している。当該部位より、繊維が完全に融解することなく形状を保持した状態で繊維同士に結合が見られることが明らかになった。
【0108】
(参考例1)
現在航空機用途に使用されている低嵩密度のガラスウール製の断熱・吸音材料(Johns Manville社製、Microlite AA Premium NR、嵩密度5.5kg/m3品)について同一条件で測定を行った。この製品と同等の吸音率を示せば、航空機用途の断熱・吸音材料として最適であると判断することができる。
【0109】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本願発明のポリイミド繊維集合体の模式図
【図2】動的粘弾性挙動の測定結果の例
【図3】本願発明の紡糸装置の模式図
【図4】紡糸用ダイスの模式図
【図5】ポリイミド繊維の繊維集合体(実施例1)の写真
【図6】ポリイミド繊維の繊維集合体(実施例1)の拡大写真
【図7】ポリイミド繊維の繊維集合体(実施例2)の写真
【図8】ポリイミド繊維の繊維集合体(実施例3)の写真
【符号の説明】
【0111】
1 気流発生装置
2 紡糸口金
3 ポリアミド酸繊維もしくはポリイミド繊維の集合体
4 気流
5 ポリアミド酸溶液もしくはポリイミド溶液
6 搬送方向
7 ポリイミド繊維の集合体
8 捕集装置
9 加熱・乾燥装置
10 巻き取り装置
11 金網状の捕集装置
12 ポリイミド繊維の集合体のロール
20 合成例1のポリアミド酸溶液の注入口
21 合成例2もしくは、合成例3もしくは、合成例4のポリアミド酸溶液の注入口
22 ダイス
23 分岐流路
24 分岐流路
25 合成例1のポリアミド酸溶液のオリフィス
26 合成例2もしくは、合成例3もしくは、合成例4のポリアミド酸溶液のオリフィス
50 貯蔵弾性率が変化し始めるまでの直線に対する接線
51 貯蔵弾性率が変化しはじめて変化し終わった直線に対する接線
52 交点(貯蔵弾性率の変曲温度)
100 貯蔵弾性率の低下温度の高いポリイミド繊維
101 貯蔵弾性率の低下温度の低いポリイミド繊維
102 繊維同士の結合部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維を含む繊維集合体であって、上記ポリイミド繊維の少なくとも1種類を介して、繊維同士が少なくとも一部結合していることを特徴とする繊維集合体。
【請求項2】
上記貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維のうち、低下温度の最も低い繊維の低下温度と低下温度の最も高い繊維の低下温度との差が、30℃以上200℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の繊維集合体。
【請求項3】
上記繊維集合体が、上記ポリイミド繊維のうち、貯蔵弾性率の低下温度の最も低いポリイミド繊維を介して、繊維同士が少なくとも一部結合していることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維集合体。
【請求項4】
上記繊維集合体が、上記ポリイミド繊維のうち、貯蔵弾性率の低下温度の最も低いポリイミド繊維が完全に融解することなく形状を保持した状態で繊維同士の少なくとも一部が結合していることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維集合体。
【請求項5】
前記繊維集合体が、原料として少なくともピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを含むポリイミド繊維、及び、原料として少なくともピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物から選ばれる1種以上の酸二無水物を含むポリイミド繊維の2種類の繊維を少なくとも含む繊維集合体であり、前記繊維集合体の嵩密度が1.0〜80.0kg/m3であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維集合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維集合体を用いて得られる吸音材料。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維集合体を用いて得られる断熱材料。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維集合体を用いて得られる難燃マット。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維集合体を用いて得られる濾布。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維集合体を用いて得られる耐熱服。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維集合体を用いて得られる不織布。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維集合体を用いて得られる航空機用途断熱吸音材。
【請求項13】
繊維集合体の製造方法において、貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維の原料となるポリアミド酸溶液及び/又はポリイミド溶液の液流を、同時に高速気流にてひきとりながら紡糸して、基材表面に積層して繊維集合体を作製することを特徴とする繊維集合体の製造方法。
【請求項14】
上記貯蔵弾性率の低下温度が異なる2種類以上のポリイミド繊維のうち、低下温度の最も低い繊維の低下温度と低下温度の最も高い繊維の低下温度との差が、30℃以上200℃以下であることを特徴とする請求項13に記載の繊維集合体の製造方法。
【請求項15】
上記繊維集合体が、上記ポリイミド繊維のうち、貯蔵弾性率の低下温度の最も低いポリイミド繊維を介して、繊維同士が少なくとも一部結合していることを特徴とする請求項13または14に記載の繊維集合体の製造方法。
【請求項16】
上記繊維集合体が、上記ポリイミド繊維のうち、貯蔵弾性率の低下温度の最も低いポリイミド繊維が完全に融解することなく形状を保持した状態で繊維同士の少なくとも一部が結合していることを特徴とする請求項13または14に記載の繊維集合体の製造方法。
【請求項17】
前記繊維集合体が、原料として少なくともピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを含むポリイミド繊維、及び、原料として少なくともピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物から選ばれる1種以上の酸二無水物を含むポリイミド繊維の2種類の繊維を少なくとも含む繊維集合体であり、前記繊維集合体の嵩密度が1.0〜80.0kg/m3であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の繊維集合体の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−138320(P2009−138320A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263611(P2008−263611)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】