説明

貴重品包装体とその真贋判定方法

【課題】 真贋判定を簡単に行うことができるホログラムラベルを用いた貴重品包装体とその真贋判定方法を提供する。
【解決手段】 本発明の貴重品包装体1は、貴重品を収容する本体部21と当該本体部を覆う透明な上蓋部22とからなる貴重品包装体であって、上蓋部を本体部に嵌め込みし貴重品を収容部23に納めて密閉した際の、上蓋部内面には、基材の片面にコレステリック液晶印刷部を有し、基材の他方の面にホログラム形成層と透明反射層と透明粘着剤層を有するホログラムラベル10が貼付されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴重品包装体とその真贋判定方法に関する。詳しくは、薄板状等の貴金属や記念硬貨等を収容し、その真正性を保証するのに適した包装体とその真贋判定方法に関する。本発明の具体的用途は、金、銀、白金等の貴金属や記念硬貨の包装、およびその真贋判定の分野である。
【背景技術】
【0002】
貴金属類や記念硬貨等の貴重品は、悪意のある者により贋造品や低級品とすり替えられたり、悪戯により損傷を受けることを防止するため、厳重に密封して保管される。しかし、貴金属類や記念硬貨等は元来、視覚による鑑賞価値のあるものだから密封して外からも見えないようにした状態ではその本来的価値が減殺されてしまうことになる。
そこで従来から外部から見える状態にするが手にとって汚したり傷を付けたり、なかみを交換されてしまうことを防止できる保管方法がされている。また、密封した包装体自体が模造品と交換されていないことを証明する手段を備えることも重要となる。
【0003】
このような目的のため先行特許文献1は、「基材上に剥離層を介してホログラム層が形成されている基体に貴重品を挟み、透明樹脂シートに粘着剤層が形成された透明樹脂シールにより封止した」ことを特徴とする貴重品包装体について記載している。この提案によれば、基体に貴重品を挟み透明樹脂シールで封止するので、封入が容易に行える。また、透明樹脂シールによって接着してあり、開封が容易に行えるうえ、開封したときには、剥離層が剥離するので、ホログラム層が破壊されて開封の痕跡を残すことができる。
しかし、この提案の貴重品包装体は真偽の判定を目視に頼らざるを得ず、判定を確実に行えない問題があった。
【0004】
特許文献2は、貴重品を容器の収容凹部に収めた後、その上から機械読み取り可能なホロマークを備えたホログラムシールで密封する貴重品包装体を提案している。貴重品を取り出しすると、シールに痕跡が残るので判るというものである。しかし、このマークは目視可能であってセキュリティーの存在が明らかで印象を悪くすること、収容する貴重品の凹凸の具合によっては、ラベルが剥がれたり読み取りを不可能にする問題があった。また、ホログラムシール自体が模造される場合は真贋判定が困難になる問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、白色光視認可能な通常のホログラムラベルに、コレステリック液晶印刷部を持たせ、その選択反射性と円偏光選択性を利用して、光(円偏光)選択性フィルムからなる判定具を用いて真贋判定するものである。また、レーザー再生型の隠しホログラムパターンをも併せて記録し、その判定を専用の真贋判定装置を使用して識別することも企図するものである。なお、このようなホログラムについては、特許文献3や特許文献4等の先行技術文献がある。また、関連する真正性識別フィルムについては、特許文献5等がある。
【0006】
【特許文献1】実開平4−102261号公報
【特許文献2】特開平5−318667号公報
【特許文献3】特開2000−3124号公報
【特許文献4】特開平11−24539号公報
【特許文献5】WO00/13065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来の貴重品包装体は、セキュリティーの存在が明瞭なホログラムラベルを使用していたので、使用者の印象を悪くする問題があった。また、ホログラム自体がある程度の技術がある者により複製可能になってきた近年では、ホログラムラベルを模造した貴重品包装体が出現する危険性もあり、万全の対策にはならない問題があった。
そこで本願では、ホログラムラベルに円偏光性を有するコレステリック液晶印刷部を設け、円偏光選択性フィルムからなる判定具を介して視覚判定することにより真贋判定し、貴重品包装体自体の真正性を保証しようとするものである。なお、ホログラムラベルにレーザー再生型の隠しホログラムパターンを併せて持たせ、専用の真贋判定装置により確実に判定することも可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の要旨の第1は、貴重品を収容する本体部と当該本体部を覆う透明な上蓋部とからなる貴重品包装体であって、上蓋部を本体部に嵌め込みし貴重品を収容部に納めて密閉した際の、上蓋部内面には、基材の片面にコレステリック液晶印刷部を有し、基材の他方の面にホログラム形成層と透明反射層と透明粘着剤層を有する、ホログラムラベルが貼付されていることを特徴とする貴重品包装体、にある。
【0009】
上記において、ホログラムラベルが隠しホログラムパターンを含んでいて、透明な上蓋部基材を介してレーザー光を当該ホログラムラベルの隠しホログラムパターン記録部に照射することにより、レーザー光非照射時の白色光下で視認できるホログラム像とは異なる、隠しホログラムパターンの再生像を真贋判定装置のスクリーン上に再現する、ようにしてもよい。
【0010】
本発明の要旨の第2は、請求項1または請求項2記載の貴重品包装体の真贋判定を行う方法であって、透明な上蓋部基材表面に光選択性フィルムからなる判定具を被せて前記ホログラムラベルを観察し、コレステリック液晶印刷部の外観変化により真正性を判断することを特徴とする真偽判定方法、にある。
【発明の効果】
【0011】
(1)本発明の貴重品包装体は、上蓋部の内面に真贋判定用のホログラムラベルが貼り付けされていて、そのホログラムラベルが視覚で見えるホログラムパターンの他に、コレステリック液晶印刷部を含み、当該液晶印刷部を光選択性フィルムを被せて観察することで、その外観の変化状況により真贋判定を簡単に行うことができる。
(2)本発明の貴重品包装体は、本体部と密閉した上蓋部の内面に真贋判定用のホログラムラベルが貼り付けされていて、上蓋部の透明基材を介して真贋判定するので、ホログラムラベルが模造品と交換されることがなく、また、ホログラムラベルが外面に露出しないので耐久性を高めることができる。
【0012】
(3)請求項2の貴重品包装体の実施態様では、ホログラムラベルが視覚で見えるホログラムパターンの他に隠しホログラムパターン(以下、「隠しホロパターン」とする。)を有している特徴がある。従って、この隠しホロパターンをレーザー光で再生することにより、貴重品包装体またはホログラムラベル自体が偽造品であるか否かを確実に判定することができる。
(4)本発明の真贋判定方法は、貴重品包装体に光選択性フィルムからなる判定具を被せて観察するという簡単な方法で真贋判定できるので、高価な判別装置を必要としないで済む利便性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、貴重品包装体の外観斜視図と構成を示す図、図2は、貴重品包装体の断面図、図3は、ホログラムラベルとその層構成を示す図、図4は、真贋判定具と真贋判定方法を説明する図、図5は、真贋判定装置を用いた判定方法を説明する図、図6は、真贋判定装置の外観図、図7は、真贋判定装置の筐体内部構成を示す図、である。
【0014】
本発明の貴重品包装体1は、図1(A)のように、全体がやや細長で偏平な筐体2からなっている。筐体2は透明な上蓋部22(図1(C))と貴重品を納める収容部23を有する本体部21(図1(B))とからなっている。筐体2をやや細長な形態にするのは、真贋判定用ホログラムラベル10の判定部分を真贋判定装置に挿入して判定する際に、筐体2の一部が真贋判定装置の外部にあって容易に抜き出し易くするためである。もっとも、真贋判定装置での判定を前提としない場合は細長な形態にする必要はない。また、偏平にするのは、収容する貴重品はコイン状等の偏平体が多いからである。ただし、この形態に限定されるものではない。
【0015】
本体部21は、貴重品を嵌め込みして納める凹状の収容部23を有する構造にされており、着色した樹脂材料等により成型されている。上蓋部22は、その本体部21の全体を納める深さの周縁部22eを外周に備え、全体が透明樹脂により成型されているのが好ましい。貴重品3やホログラムラベル10を視認できるようにするためである。
本体部21に貴重品を納めて上蓋部22で覆う際は、通常、本体部21と上蓋部22間を接着剤で固定し、簡単には開封できないようにする。貴重品を取り出しできないようにするためである。
【0016】
上蓋部22の内面であって、ホログラムラベル10を貼り付けする位置部分には、鍵状(「 」)の罫書き線(透明樹脂の成型による線)22kが形成されていて、当該罫書き線22kを目標に一定位置にホログラムラベル10を貼り付けするようにされている。ホログラムラベル10の隠しホロパターン記録部が常に、レーザー光ビームの照射部に位置して、スクリーン上に隠しホロパターンを再生させるためである。貴重品を収容部23に収納した際は、前記のように接着剤を使用して上蓋部22との間を密封するが、貴重品を収納した筐体2の全体が模造品と交換されてしまうことも考えられ、その場合は、当該ホログラムラベル10により、筐体2自体の真贋を判定しようとするものである。
【0017】
図2は、貴重品包装体の断面図である。図1(A)の、ホログラムラベル10部の横断面に該当する。前記のように、上蓋部22の外周には本体部21を納める高さの周縁部22eが、上蓋部22の全周囲にわたって一体に成型されている。貴重品3は収容部23に納められ、上蓋部22の内面にはホログラムラベル10が貼り付けされている。貼り付け部はホログラムラベル10の厚み程度の深さのラベル用凹部22dが形成されている。
【0018】
ホログラムラベル10はこのラベル用凹部22dに嵌め込むようにして貼り付けする。 ホログラムラベル10が隠しホロパターンを有する実施態様(請求項2)では、透明な上蓋部22の基材層を介してレーザー光ビーム5をホログラムラベル10に照射することにより、隠しホロパターンがスクリーン上に再生される。レーザー光は径1mm程度のビームとなるので、当該ビーム照射位置に隠しホロ記録部が位置する必要がある。
【0019】
図3は、ホログラムラベルとその層構成を示す図であって、図3(A)は平面図、図3(B)は断面図である。ホログラムラベル10は、平面から見た場合、白色光下で各種のホロパターン12pが虹色に輝いて見える。視角によりパターンと虹色が変化する。隠しホロパターンを有する場合は、ホログラムラベル10の中心部等に位置しているが、白色光下では視認できない。ホロパターン12pの背景にはコレステリック液晶印刷によるパターン15pが見えるようにされている。
【0020】
ホログラムラベル10は、図3(B)断面図のように基材11の片面に、コレステリック液晶印刷部15を形成し、当該液晶印刷部15とは反対側の基材11面に、ホログラム形成層12を設け、ホログラム形成層12の面に透明反射層13tを形成し、さらに透明反射層13t面に透明粘着剤層14を塗工してあるものである。この透明粘着剤層14によりホログラムラベル10を上蓋部22の透明基材に貼り付けする。
【0021】
コレステリック液晶印刷部15の印刷には、見る角度(視角)によって光の選択反射性および円偏光選択性を有し色彩変化を生じる液晶が用いられる。コレステリック液晶印刷部15を構成するコレステリック液晶(Cholesteric Liquid Crystal)は、液晶分子の配向構造が膜厚方向に螺旋を描くように規則的ねじれを有しており、螺旋のピッチP(液晶分子が360°回転するのに必要な膜厚)と入射光の波長λがほぼ等しい場合に、(1)入射光のうち特定の波長帯域内にある光を強く反射する選択反射性、および(2)円偏光選択性の、2つの光学的性質を示す。
【0022】
(1)の選択反射性は、特定の波長域に限定されて生じるため、コレステリック液晶のピッチPを適切に選択することにより、反射光は色純度の高い有彩色となる。また、入射光が法線に対し斜めに入射する場合、ピッチPが見かけ上減少することから、中心波長λsは短波長側へ移行し、帯域幅Δλは減少する。この現象は、中心波長λsが短波長側へ移行することからブルーシフトと呼ばれ、目視でも容易に識別可能である。たとえば、法線方向(0°の入射位置)から観察して赤色に呈色するコレステリック液晶の反射色は、視野角を大きくして行くにつれ、オレンジ色、黄色、緑色、青緑色、青色と順次変化するように観察され、見る角度による色変化を観察できる。
【0023】
(2)の円偏光選択性は、特定の回転方向の円偏光だけを反射し、これと回転方向が反対の円偏光を透過する性質をいう。入射光のうちコレステリック液晶の配向構造のねじれ方向と同方向の円偏光成分は反射され、その反射光の回転方向も同一方向となるのに対し、逆方向に回転する円偏光成分は透過する点がコレステリック液晶に特有な特異な性質である。例えば、右ねじれ構造を有するコレステリック液晶の場合、右円偏光を反射し、かつ反射光は右円偏光のままであり、左円偏光は透過することになる。従って、コレステリック液晶層は、入射した光のうち、左円偏光又は右円偏光のいずれか一方の光のみを反射または透過させて反射光または透過光を生成する層である。
【0024】
コレステリック液晶印刷部(以下、「CLC印刷部」ともいう。)15の印刷には、通常の印刷インキで黒色等に印刷したパターン面に透明なコレステリック液晶塗膜を塗工してもよく、コレステリック液晶片を微粉砕して顔料としたインキを使用することもできる。図3において、ホログラムパターン12pの背景にチェック模様15pが見えるのは、そのようにして印刷したCLC印刷部15である。ホログラムラベル10の全面にチェック模様15pを施すことができるが、図3(A)では、ホログラムパターン12pの間の一部に見えるように図示している。
【0025】
CLC印刷部15は、前記(1)の選択反射性に基づき、ホログラムラベル10を傾けることにより、色純度の高い異なる色彩を呈すると共に、その(2)の光(円偏光)選択性に基づき、判定具25に異なる光選択性フィルムを用いることにより、異なる真偽判定パターンを呈することができる。
【0026】
図4は、真贋判定具と真贋判定方法を説明する図であって、ホログラムラベル10に対して、光選択性フィルムからなる判定具25を被せて判定する状況を示している。
光選択性フィルムからなる判定具25は、2つの窓枠を有し、例えば、右側の窓25aには右円偏光フィルム、左側の窓25bには左円偏光フィルムが嵌め込まれた構造の判定具25にされている。すなわち、2種類の円偏光フィルムが、間隔をあけて設けられた二つの窓枠(例えば、各々が正方形である。)内に嵌め込まれたものである。
【0027】
CLC印刷層15が、右円偏光成分のみを選択的に反射するコレステリック液晶層を含む場合には、右円偏光成分を透過しない左円偏光フィルムが覆っている左側の窓25b部分は、ほぼ黒色となって、チェック模様15pが観察不能であるが、右円偏光成分を透過する右円偏光フィルムが覆っている右側の窓25a部分は、チェック模様15pが、判定具25を重ねない場合とほぼ同様に観察可能であり、CLC印刷層15が、右円偏光成分のみを選択的に反射するコレステリック液晶層を含むことが検証され、それにより、ホログラムラベル10の真正性を識別することができる。
【0028】
光(円偏光)選択性フィルムには、コレステリック液晶配向を固定化したフィルム又はコレステリック液晶粒子を担体中に分散したフィルムなど光学的に円偏光選択性を示す媒体を用いることができるが、特に、液晶配向を固定化した高分子フィルムを好適に用いることができる。当該品は、市販品を利用することもできるし自製もできる。
【0029】
再度、図3に戻って説明する。ホログラム形成層12は、干渉縞が記録されたレリーフホログラムである。視覚でそのパターンが確認できるように白色光再生型ホログラムが記録されている。実際には干渉縞を記録した感光性材料から成型用金属型を起こし、当該金属型により賦形された樹脂層が、ホログラム形成層12となっている。複製した干渉縞の凹凸面に透明反射層13tが真空蒸着法、スパッタリング法等により薄膜に形成されている。反射層を透明にするのは、CLC印刷層15を視認可能にするためである。
【0030】
ホログラム形成層12は、上記のようにホログラムを記録した型材から型押しにより形成するので、賦形性のある材料が使用される。例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、等の熱可塑性樹脂、あるいはこれらの共重合体または混合物、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂あるいはこれらの共重合体または混合物、さらにはラジカル重合性不飽和基を有する熱成型性材料等が使用可能である。
【0031】
一般的には反射層13は、入射した光を反射する層であり、金属感や反射特性および屈折反射特性をだすときは、金属または金属化合物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、等の一般的な薄膜形成方法によって形成可能である。金属感は、平滑面による鏡面光沢でも、粗面による艶消しの金属感でもよい。金属薄膜の具体例としては、例えば、アルミニウムを真空蒸着した金属薄膜である。この他、薄膜の形成材料としては、金、銀、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、チタン、ゲルマニウム、硅素、マグネシウム、すず、インジウム等の金属およびそれらの酸化物(例えば二酸化硅素)、窒化物、硫化物等を単独または二種以上組み合わせて使用すれば良い。金属、金属酸化物、金属窒化物等からなる金属薄膜の厚みは、薄すぎると膜自身を視認できなくなる。従って、通常は、10〜1000nm、好ましくは、20〜60nm程度が良い。
【0032】
本発明では、反射層13を透してCLC印刷層15を観察するので、反射層13を透明反射層13tとする必要がある。反射層13を透明反射層13tとするには、ホログラム形成層12の屈折率(通常、屈折率n:1.3〜1.6である。)よりも大きい屈折率を有する金属化合物からなるものを使用すればよい。このような透明反射層となる薄膜の具体的な材質としては(以下、材質名の右にカッコ書きで屈折率:nを付記する)、
Sb2 3 (n=3.0)、Fe2 3 (n=2.7)、TiO2 (n=2.6)、CdS(n=2.6)、CeO2 (n=2.3)、ZnS(n=2.3)、PbCl2 (n=2.3)、CdO(n=2.2)、Sb2 3 (n=2.0)、WO3 (n=2.0)、SiO(n=2.0)、Bi2 3 (n=2.5)、In2 3 (n=2.0)、PbO(n=2.6)、Ta2 5 (n=2.4)、ZnO(n=2.1)、ZrO2 (n=2.0)、Cd2 3 (n=1.8)、Al2 3 (n=1.6)、CaO・SiO2 (n=1.8)などが挙げられる。
【0033】
上記薄膜はその屈折率がホログラム形成層12の屈折率よりも0.3以上大きいことが好ましく、より好ましくは0.5以上大きいことである。
上記透明反射層となる薄膜の膜厚は1000nm以下の厚みであればよく、通常は20〜60nmが好ましい。前記薄膜の膜厚が1000nmを越えてしまうと薄膜内部での上記の如き多重反射が良好に生じなくなってしまう、また膜厚が10nm以下になると安定した製膜が困難になる。
【0034】
<その他の材質に関する実施形態>
(1)ホログラムラベル基材
基材11としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の各種樹脂フィルムを使用することができる。厚みは、10μmから500μm程度である。
(2)粘着剤層
粘着剤層14には、徐々に粘度が顕著に上昇することなく、中間的なタック状態を永く保つものを好ましく使用できる。樹脂組成としては、天然ゴム系、合成ゴム系、ニトリルゴム系、エポキシ樹脂系、酢酸ビニルエマルジョン系、ポリエステル系、アクリル系、アクリル酸エステル共重合体系、ポリビニルアルコール系、フェノール樹脂系、等に粘着補助剤(ロジン、エステルゴム、石油樹脂等)、可塑剤(フタル酸エステル、不乾性油、低分子量ポリイソブチレン等)、充填剤を混ぜたものが用いられる。
【0035】
請求項2の貴重品包装体1に使用するホログラムラベル10の特徴は、白色光再生型ホログラムに重畳して、レーザー光再生型の隠しホロパターンが記録されている特徴がある。隠しホロパターンは、計算機ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)で作成されたホログラムパターンである。計算機ホログラムは、光学的な干渉縞の生成プロセスをコンピュータでシュミレーションすることにより得られるものてあり、干渉縞パターンを生成する過程は、すべてコンピュータ上の演算として行われる。このような演算によって得られた干渉縞パターンの画像データに基づいて、実際の媒体上に物理的な干渉縞が形成される。具体的には、例えば、干渉縞パターンの画像データを電子線描画装置に与え、媒体上で電子線を走査することにより物理的な干渉縞を、例えば、感光性樹脂に形成する方法が行われている。
【0036】
隠しホロパターンの例として、「OK」の文字を再生する場合は、計算機による干渉縞パターンを、直径1mm程度の大きさとして生成し、レリーフホログラムの干渉縞パターンと重畳したパターンとして感光性樹脂に記録する。現像後は感光性樹脂の硬化物の表面の微細な凹凸パターンとして形成される。これをそのままホログラムラベル10にすることも勿論可能であるが、通常は、これを原型として凹凸型を製造し、得られた凹凸型を用いて大量に複製することが行われる。計算機による干渉縞パターンを、直径1mm程度の大きさとするのは、再生する半導体レーザー光ビームがその程度となるからである。
なお、計算機ホログラムについては、特許文献4等に詳細に記載されている。
【0037】
図5は、真贋判定装置を用いた判定方法を示す図である。レーザー光再生型の隠しホロパターンは、ホログラムラベル10の一定の狭い範囲に記録されているので、当該箇所を定めて半導体レーザー発光器4からレーザー光ビーム5を照射する。再生された隠しホロパターン10kは、スクリーン36に結像する。図5の場合は、「OK」という文字表示がされている。
ホログラムラベル10は貴重品包装体2の上蓋部22の前記鍵状の罫書き線22k内の一定位置に貼られ、隠しホロパターンはホログラムラベル10の一定位置に記録され、貴重品包装体2は、真贋判定装置の一定位置で停止するようにされているので、該隠しホロパターン記録部はレーザー光ビーム照射位置に常に位置する。レーザー光ビーム5の照射角度αや回折光の角度等も予め計算して設計されるもである。
【0038】
図6は、真贋判定装置の外観図である。一部内部構造を透視して示している。真贋判定装置30は全体が着色した遮光性材料からなる遮光性筐体31からなっている。レーザー光ビーム5が目に入る危険を防止するためである。遮光性筐体31の形状は立方体や円筒形等の適宜な形状にできるが、隠しホロパターンを再生するスクリーン36となる平面部を有している必要がある。スクリーン36は遮光性筐体21の前面や上面の平面部に、磨りガラス等を貼り付けるものであってよい。遮光性筐体31の上面または側面には、貴重品包装体1を差し込みする挿入口(検査穴)33を有している。挿入口33の形状は、貴重品包装体1の断面形状と略同等のものとする。
【0039】
図6の場合は、遮光性筐体31は略立方体状の形状にされ、上面に挿入口(検査穴)33を有し、前面にスクリーン36を有している。スクリーン36は、垂直よりは傾斜した面にして、観察し易くしてもよい。スクリーン36に再生された隠しホロパターン10kは、もちろん裸眼で観察できる。
真贋判定装置30の内部には、半導体レーザー発光器(その回路基板を含む。)4と電源電池が納められている。半導体レーザー発光器4は、ホログラムラベル10の隠しホロパターンが記録されている部分を照射し、その回折光が所定の角度で屈折してスクリーン36面に隠しホロパターン像10kを結像するようにされている。
半導体レーザーの発光色は可視色であれば、赤色、青色、緑色等の何色でもよい。出力は0.2mW〜3mW程度の低出力のもので十分である。1mW未満であれば、0.25秒間未満の直視は問題ないとされている。
【0040】
図7は、真贋判定装置の筐体内部構成を示す図である。挿入口(検査穴)33から挿入された貴重品包装体1は、半導体レーザー発光器4用のリミットスイッチ32の上で停止するようにされている。貴重品包装体1の重さではリミットスイッチ32は、「ON」状態にならないが、指先に少し力を入れるとスイッチ「ON」の状態になる。これにより、半導体レーザー発光器4が点灯する。真贋判定装置30は、電源電池38を有し、制御回路34とLD用ドライバ35により、半導体レーザー発光器4を点灯させる。スクリーン36の隠しホロパターン再生像は裸眼7で観察できる。
【実施例】
【0041】
(ホログラムラベルの実施例)
基材11として、厚さ:約50μmのポリエチレンテレフタレートを使用し、その一方の面上に、予め通常の印刷インキを用いて、黒色のチェック模様15pをオフセット印刷し、その面にコレステリック液晶を塗工した。またさらにその後、基材11の他方の面に厚さ1〜3μmの紫外線硬化型の透明樹脂からなるホログラム形成層12用樹脂を塗工した後、「OK」の文字の隠しホロパターンを含むホログラムパターンの凹凸型を型押ししてホログラム形成層12を形成した。なお、隠しホロパターンは、CGH法により形成し、直径1mm程度の円内に記録されるようにした。
次いで、ホログラム形成層12の面に透明反射層(材質:酸化チタン)13tを真空蒸着法で、厚さ30〜50nmになるように製膜した。透明反射層13t形成面に、透明な粘着剤層(材質:アクリル樹脂を主成分とする粘着剤)14を、グラビアリバース法により厚さ20〜30μmに塗布形成した。1枚のホログラムラベル10を15mm×15mmのサイズとして裁断し、その中心に隠しホロパターンが位置するようにした。
【0042】
(貴重品包装体の実施例)
一方、図1のような貴重品包装体1を以下のようにして製造した。
本体部21を、厚み5mm、幅29mm、長さ79mmとし、貴重品を納める収容凹部23を有する形状とし、赤色に着色したポリスチレン樹脂により成型した。上蓋部22は、その内側に本体部21が隙間なく納まる形状の、厚み6mm、幅32mm、長さ82mmの外形とし、透明なポリスチレン樹脂により成型した。周縁部の厚みは、1.5mm、天板部の基材は1.0mmの厚みとなった。上蓋部22の一方端側近くのホログラムラベル10を貼り付けする位置部分に鍵状(「 」)の罫書き線22kを同時に成型した。
【0043】
前記のようにして製造したホログラムラベル10を、貴重品包装体1の上蓋部22の鍵状(「 」)の罫書き線22kの内側に、粘着剤層14により貼り付けした。
本体部21の凹部に貴重品を収容した後、ホログラムラベル10を貼り付けした上記上蓋部22に本体部21を嵌め込みし、上蓋部22と本体部21間を接着剤で固定した。
【0044】
(判定具の実施例)
判定具25には、市販の右円偏光フィルム、左円偏光フィルムのそれぞれを入手し、紙製の判定具の窓部(20mm×20mm)25a,25bに嵌め込みして使用した。
【0045】
上記判定具25により、貴重品包装体1の上蓋部22の基材を介してホログラムラベル10を観察したところ、右側の窓部25aは黒色のチェック模様15pを観察できたが、左側の窓部25bは殆ど暗黒状態になってチェック模様15pを観察することはできなかった。
【0046】
(真贋判定装置の実施例)
真贋判定装置30は、図6のような外形とし、厚み3mmの黒色に着色したアクリル板を切断して組み立てした。挿入口33は、厚み5.2mm、幅29.2mmとし、上面側に設けた。挿入口33の真下にリミットスイッチ32を設け、貴重品包装体1を挿入して軽く押圧した際に、半導体レーザー4のスイッチが「ON」されるようにした。
半導体レーザー4には、赤色発光(波長650nm)の出力0.6mWのものを使用した。電源電池には、アルカリ乾電池を使用した。隠しホロパターン記録部に対するレーザー光ビーム5の入射角度αが、約10度〜15度となるようにし、ほぼ同じ角度で回折光が生じるようにした。隠しホロパターン10kが結像する真贋判定装置30の前面に磨りガラス製のスクリーン36を貼り付けした。なお、半導体レーザー4とホログラムラベル10の隠しホロパターン記録部間の距離が50mm〜70mm程度となるようにした。
【0047】
上記真贋判定装置30に、前記によりホログラムラベル10を貼り付けした貴重品包装体1を挿入口33から差し込みして軽く押圧すると、半導体レーザー4が発光し、ビーム径約1mmとなって隠しホロパターン記録部を照射した。それにより、所定の隠しホロパターン(「OK」の文字パターン)の赤色の再生像をスクリーン36面で確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】貴重品包装体の外観斜視図と構成を示す図である。
【図2】貴重品包装体の断面図である。
【図3】ホログラムラベルとその層構成を示す図である。
【図4】真贋判定具と真贋判定方法を説明する図である。
【図5】真贋判定装置を用いた判定方法を説明する図である。
【図6】真贋判定装置の外観図である。
【図7】真贋判定装置の筐体内部構成を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 貴重品包装体
2 筐体
3 貴重品
4 レーザー発光器
5 レーザー光ビーム
10 ホログラムラベル
11 基材
12 ホログラム形成層
12p ホログラムパターン
13 反射層
14 粘着剤層
15 コレステリック液晶印刷部
15p コレステリック液晶印刷によるパターン、チェック模様
25 判定具
30 真贋判定装置
31 遮光性筐体
32 リミットスイッチ
33 挿入口(検査穴)
36 スクリーン
38 電池電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴重品を収容する本体部と当該本体部を覆う透明な上蓋部とからなる貴重品包装体であって、上蓋部を本体部に嵌め込みし貴重品を収容部に納めて密閉した際の、上蓋部内面には、基材の片面にコレステリック液晶印刷部を有し、基材の他方の面にホログラム形成層と透明反射層と透明粘着剤層を有するホログラムラベルが貼付されていることを特徴とする貴重品包装体。
【請求項2】
ホログラム形成層が隠しホログラムパターンを含んでいて、透明な上蓋部基材を介してレーザー光を当該ホログラムラベルの隠しホログラムパターン記録部に照射することにより、レーザー光非照射時の白色光下で視認できるホログラム像とは異なる、隠しホログラムパターンの再生像を真贋判定装置のスクリーン上に再現することを特徴とする請求項1記載の貴重品包装体。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の貴重品包装体の真贋判定を行う方法であって、透明な上蓋部基材表面に光選択性フィルムからなる判定具を被せて前記ホログラムラベルを観察し、コレステリック液晶印刷部の外観変化により真正性を判断することを特徴とする真偽判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−286957(P2008−286957A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131142(P2007−131142)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】