説明

貼り合わせ積層PETフィルムのオリゴマ析出抑制接着剤層

【課題】接着剤層側のPET表面に塗布層やコーティング層を形成しなくてもオリゴマの析出を抑制する透明電極シートを提供する。
【解決手段】タッチパネルシートは、製造工程においてアニール処理される場合の熱収縮を防ぐために、アニール処理をする前に予め第一、第二の樹脂フィルム1、2を熱収縮させてプレアニール処理が行われる。プレアニール処理により第一、第二の樹脂フィルム1、2はガラス転移温度程度以上になると、第一、第二の樹脂フィルム1、2の中のオリゴマは析出し、拡散する。第一、第二の樹脂フィルム1、2から第一、第二の樹脂フィルム1、2と接着剤層3との界面を通過して、接着剤層3へ移動するオリゴマは、テレフタール酸とエチレングリコールを含有するポリエチレンから成る接着剤層3と混和して結晶として析出されない。オリゴマは、接着剤層3と混和しなくても、オリゴマと接着剤層3の光の屈折率が略等しいので目視されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層導電性透明フィルムを用いるタッチパネルの技術分野にかかり、特に、接着剤層中のオリゴマの析出を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルに用いられる透明導電性電極は、二つのフィルム状のPET(ポリエチレンテレフタレート)の間にアクリル系樹脂から成る接着剤層が配置された三層の積層フィルムから成り、さらに一方のPET表面にハードコート層を形成し、他方のPET表面にITO等から成る透明な電気導電性薄膜が形成されて多層フィルムとなる。通常、この多層フィルムは、タッチパネルの製造工程においてアニール処理されても熱変形しないように、予め、PETの熱収縮をさせるためのプレアニール処理を行う。プレアニールの処理温度がPETのガラス転移温度を超える場合、PET中に含まれるオリゴマの拡散が進行し、その拡散したオリゴマがPETと接着剤の界面で析出され、接着剤に相溶せずに結晶化して白濁して見えるという問題点があった。
【0003】
従来技術では、ラミネート時の接着性を得ることを優先し、充分な機械的強度が得られず、オリゴマの析出を回避するためにアニール温度をPETのガラス転移温度より低い温度でプレアニール処理を行っている。そのため、PETは充分に応力が緩和されず、タッチパネルの製造工程においてアニール処理を行ったときに多層フィルムが熱変形するという問題がある。
【0004】
下記に記載された特許文献1によると、積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリエステル樹脂、分子内にアセチレン基及び水酸基を有する化合物、及び鉱油の三成分からなる塗布層を形成することによりオリゴマの析出を抑制している。
【0005】
下記に記載された非特許文献1によると、PET表面に特殊コーティング層を形成することによりオリゴマの析出を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−281498号
【特許文献2】WO2004/070737
【特許文献3】特公平4−46752号
【特許文献4】特許第2667680号
【特許文献5】特開2006−56117号
【特許文献6】特開2007−95660号
【非特許文献1】「タッチパネル用表面保護材E−MASK/TP200」、日東電工技報、2008年、p.53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂フィルム中に含まれるオリゴマが目視されないタッチパネルを製作する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、ポリエチレンテレフタレートから成る第一の樹脂フィルムと、前記第一の樹脂フィルムの表面上に配置されたポリエステルから成る接着剤層と、前記接着剤層の表面上に配置されたポリエチレンテレフタレートから成る第二の樹脂フィルムとを有する多層ポリエステルフィルムであって、前記第一、第二の樹脂フィルムは、前記接着剤層で接着され、前記多層ポリエステルフィルムは、加熱処理されてタッチパネル用シートとして用いられる多層ポリエステルフィルムである。
本発明は、前記第一、第二の樹脂フィルムは、テレフタール酸とエチレングリコールが重合して得られ、前記接着剤層は、テレフタール酸とエチレングリコールを含有する接着剤から成る多層ポリエステルフィルムである。
本発明は、前記接着剤層のガラス転移温度が、65℃未満である多層ポリエステルフィルムである。
本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の多層ポリエステルフィルムと、前記第一の樹脂フィルムの裏面上に配置された酸化インジウム錫から成る第一の透明導電性薄膜と、前記第二の樹脂フィルムの表面上に配置された保護層とを有し、少なくとも前記多層ポリエステルフィルムは140℃以上の温度で加熱され、タッチパネルの押圧される面側に用いられる上側タッチパネルシートである。
本発明は、上側タッチパネルシートと、第二の透明導電性薄膜を有する下側タッチパネルシートとを有し、前記上側タッチパネルシートと前記下側タッチパネルシートは、前記第一、第二の透明導電性薄膜が、面するように対向して離間して配置され、前記上側タッチパネルシートが押圧されると、前記上側タッチパネルシートが湾曲して、前記上側タッチパネルシートの前記第一の透明導電性薄膜が前記下側タッチパネルシートの前記第二の透明導電性薄膜と接触して、電流が流れて、接触した面内の位置が求められるタッチパネルである。
本発明は、前記上側タッチパネルシートの前記接着剤層のヤング率が1.5MPa以上3.0MPa以下であるタッチパネルである。
本発明は、前記上側タッチパネルシートの前記接着剤層は、常温で反応する硬化剤を含有するタッチパネルである。
本発明は、タッチパネルと、液晶表示装置を有し、前記タッチパネルは、前記液晶表示装置上に配置される液晶付タッチパネルである。
本発明は、第一、第二の樹脂フィルムの間に、接着剤を接触して位置させ、前記接着剤を140℃未満の温度に昇温させて前記接着剤を介して前記第一、第二の樹脂フィルムを接着させて、多層ポリエステルフィルムを作成し、前記第一の樹脂フィルムの前記接着剤が配置された面と反対側の面に透明導電性薄膜を配置し、前記第二の樹脂フィルムの前記接着剤が配置された面と反対側の面に前記保護層を配置する上側タッチパネルシートの製造方法であって、前記多層ポリエステルフィルムを140℃以上の温度で加熱処理する加熱工程を有する上側タッチパネルシートの製造方法である。
【0009】
なお、この加熱工程は、多層ポリエステルフィルムを作成した後から、第一の樹脂フィルムの裏面上に透明導電性薄膜を配置するまでの間か、第一の樹脂フィルムの裏面上に透明導電性薄膜を配置してから、第二の樹脂フィルムの表面上に保護層を配置するまでの間か、又は第二の樹脂フィルムの表面上に保護層を配置した後のいずれかの時期に行う。
ここで、接着剤は、後述する接着剤層と接着フィルムを表している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上側タッチパネルシートの接着剤層は、PET同士を貼り合わせる接着強度があり、接着剤層側のPET表面に塗布層やコーティング層等を形成しなくても、接着剤層中のオリゴマが、接着剤層と混和して結晶化されないか、混和しなくても、オリゴマと接着剤層の光の屈折率が略等しいため目視されないので、タッチパネルシートの製造工程及びコストの削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第一の樹脂フィルムの断面図
【図2】第一の樹脂フィルムと、第一の樹脂フィルム上に配置された接着剤層の断面図
【図3】本発明の多層ポリエステルフィルムの断面図
【図4】本発明のタッチパネルシートの断面図
【図5】本発明の上側タッチパネルシートの断面図
【図6】本発明の液晶付タッチパネルの断面図
【図7】第一、第二の樹脂フィルムロールと接着剤フィルムロールによる本発明の多層ポリエステルフィルムの製造方法を説明するための図
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1の符号1は、PET(ポリエチレンテレフタレート)から成る第一の樹脂フィルムであり、プロセス対象物である。
【0013】
第一の樹脂フィルム1の表面にテレフタール酸とエチレングリコールを含むポリエステルから成る接着剤を含有する溶液が塗布され、溶液が溶剤の蒸発温度(110℃〜120℃程度)以上に昇温されると、溶剤は蒸発し、接着剤層3が第一の樹脂フィルム1の表面に形成され、第一の樹脂フィルム1の表面と接着剤層3の裏面は、接着する(図2)。
【0014】
第一の樹脂フィルム1上に形成された接着剤層3は、80℃程度に昇温され、接着剤層3の表面に、PETから成る第二の樹脂フィルム2の裏面が貼り合わされると、接着剤層3の表面と第二の樹脂フィルム2は接着して本発明の多層ポリエステルフィルム5が形成される(図3)。
【0015】
多層ポリエステルフィルム5の第一の樹脂フィルム1の裏面にITO(酸化インジウム錫)から成る第一の透明導電性薄膜7がスパッタリング等によって成膜されると、多層透明導電性シート10が形成される(図4)。
【0016】
尚、成膜される透明導電性薄膜は、ITOに限定されず、酸化錫、酸化亜鉛等の透明な電極であればよい。
【0017】
多層透明導電性シート10の第二の樹脂フィルム2の表面に窒化シリコン、アルミナ、シリカ、酸化チタン等の無機充填剤が含有された樹脂塗料が塗布され、溶液が溶剤の蒸発温度以上に昇温され、塗料が硬化すると、第二の樹脂フィルム2の表面に保護層としてハードコート層8が形成され、本発明のタッチパネルシート15が形成される(図5)。
【0018】
接着剤層3を介して第一、第二の樹脂フィルム1、2を積層させる順序、及び第一の透明導電性薄膜7、及びハードコート層8を形成させる時期は、本発明の目的の範囲で任意に選択できる。
【0019】
<加熱処理>
上側タッチパネルシート15は、タッチパネルの製造工程において140℃程度以上の温度で乾燥するアニール処理が行われると、上側タッチパネルシート15の第一、第二の樹脂フィルム1、2が熱収縮して第一の透明導電性薄膜7上にスクリーン印刷された配線が歪んでしまう。このアニール処理時の熱収縮を防ぐために、配線を印刷する前に予め、上側タッチパネルシート15を加熱して第一、第二の樹脂フィルム1、2を熱収縮させておくプレアニール処理が行われる。
【0020】
上側タッチパネルシート15は、プレアニール処理により140℃以上に加熱されると、第一、第二の樹脂フィルム1、2のガラス転移温度である110℃を超えるため、第一、第二の樹脂フィルム1、2の中に含まれるオリゴマの拡散が進行する。
【0021】
そしてオリゴマは、第一、第二の樹脂フィルム1、2から第一、第二の樹脂フィルム1、2と接着剤層3との界面を通過して、接着剤層3まで移動するが、接着剤層3の成分であるポリエステルと混和して結晶化が進まない。また、オリゴマは、オリゴマと接着剤層3とは共にポリエステルの成分であるため、光の屈折率が略等しく、結晶化しても、その部分の目視が困難である。
【0022】
接着剤層3は、140℃以上の温度でも、第一、第二の樹脂フィルム1、2と接着する接着強度が低下しない。
【0023】
多層ポリエステルフィルム5は、第一、第二の樹脂フィルム1、2と接着剤層3の合計の厚みと同じ厚みの単一のPETフィルムより柔軟性がある。
【0024】
<タッチパネル>
タッチパネル50は、上側タッチパネルシート15と、多層透明導電性シート10を有している。ここでは、多層透明導電性シート10は、下側タッチパネルシート10aとして使用される。
【0025】
上側タッチパネルシート15と下側タッチパネルシート10aは、上側タッチパネルシート15の第一の透明導電性薄膜7と下側タッチパネルシート10aの第二の透明導電性薄膜7aが、面するように対向して離間して配置される。
【0026】
図6は、液晶表示装置11の上にタッチパネル50が配置された液晶付タッチパネル55である。
【0027】
第一、二の透明導電性薄膜7、7aに電圧が印加され、上側タッチパネルシート15のハードコート層8が、ペン、又は指で押圧されると、上側タッチパネルシート15が湾曲して上側タッチパネルシート15の第一の透明導電性薄膜7と下側タッチパネルシート10aの第二の透明導電性薄膜7aが接触して電流が流れて、接触点の面内の位置が求められる。
【0028】
本発明の上側タッチパネルシート15は、押圧されても柔軟性及び耐衝撃性があるので、上側タッチパネルシート15のスクリーンの窓の端位置でも押圧されると湾曲して、上側タッチパネルシート15の第一の透明導電性薄膜7と下側タッチパネルシート10aの第二の透明導電性薄膜7aが接触して電流が流れ、面内の位置が求められる。
【0029】
<多層ポリエステルフィルムロールの製造方法>
図7の符号20は、多層ポリエステルロール製造装置であり、第一、第二の樹脂フィルムロール21、22と、接着剤層塗布部23と、第一、第二の貼り合わせロール24、25と、巻き取り装置26とを有している。
【0030】
第一、第二の樹脂フィルムロール21、22には、PETから成る第一、第二の樹脂フィルム31、32が巻き回され、接着剤層塗布部23より、テレフタール酸とエチレングリコールを含むポリエステルから成る接着剤を含有する溶液を第一の樹脂フィルム31上に塗布して、溶剤を蒸発させて接着剤層33を形成する。
【0031】
第一、第二の樹脂フィルムロール21、22と、接着剤層塗布部23は、第一、第二の貼り合わせロール24、25の前段に配置され、巻き取り装置26は、第一、第二の貼り合わせロール24、25の後段に配置されている。
【0032】
第一、第二の樹脂フィルムロール21、22から第一、第二の樹脂フィルム31、32を引き出し、接着剤層塗布部23で第一の樹脂フィルム31上に接着剤層33を塗布形成すると、第一、第二の貼り合わせロール24、25の間を通り、巻き取り装置26に巻き取られるように構成されている。
【0033】
第一の樹脂フィルムロール21と、接着剤層塗布部23と、第二の樹脂フィルムロール22は、下からこの順序で配置されており、第一、第二の樹脂フィルム31、32の先端を巻き取り装置26に保持させ、巻き取り装置26を動作させると、第一、第二の樹脂フィルム31、32が、第一、第二の樹脂フィルムロール21、22から引き出され、接着剤層33が接着剤層塗布部23から第一の樹脂フィルム31上に塗布形成される。
【0034】
引き出された第一、第二の樹脂フィルム31、32は、第一、第二の貼り合わせロール24、25の間で、第一の樹脂フィルム31上に塗布形成された接着剤層33を間に挟んで、張り合わされる。接着剤層33を介して張り合わされた第一、第二の樹脂フィルム31、32は、多層ポリエステルフィルム35と成り、巻き取り装置26に巻取られると、多層ポリエステルフィルムロール39が得られる。
【0035】
<実施例>
実施例1から実施例6では、ガラス転移温度が5℃、65℃、−20℃のポリエステル樹脂A、B、C及び硬化剤の配合比を変えて接着剤層3を形成し、接着剤層3のヤング率及びガラス転移温度(Tg)を測定した。また、接着剤層3を介して第一、第二の樹脂フィルム1、2を貼り合わせて、多層ポリエステルフィルム5を作成し、多層ポリエステルフィルム5を140℃以上の温度の条件でプレアニール処理後、接着剤層中のオリゴマの発生の評価と、180度剥離強度試験を行い接着剤層3と第一、第二の樹脂フィルム1、2との接着強度及び耐衝撃性を調べた。
なお、ヤング率の測定方法には、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製 RSA3)を使用した。
また、ガラス転移温度の測定方法には、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製 RSA)で与えられたタンデルタピーク値より測定した。
【0036】
比較例1から比較例4では、ポリエステル樹脂B、アクリル系樹脂及び光開始剤の配合比を変えて接着剤層3を形成し、接着剤層3を介して第一、第二の樹脂フィルム1、2を貼り合わせ、140℃以上の温度の条件でプレアニール処理後、接着剤層中のオリゴマの発生の評価を行い、180度剥離強度試験を行い接着剤層3と第一、第二の樹脂フィルム1、2との接着強度及び耐衝撃性を調べた。
【0037】
接着剤層3に対する接着剤層3のヤング率及びガラス転移温度、接着剤層中のオリゴマ発生の調査、多層ポリエステルフィルム5の接着強度、及び耐衝撃性の関係を示す表1を得た。
【0038】
【表1】

【0039】
<オリゴマ発生評価>
デジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製)を用いて倍率1000倍で接着剤層3の中で発生したオリゴマのサイズを観察した。発生したオリゴマの中で最大なものの最大径が5μm未満のものが観察された場合に○(好ましい)として、発生したオリゴマの中で最大なものの最大径が5μm以上のものが観察される場合に×(好ましくない)とした。
【0040】
<接着強度>
180度剥離強度が1N/cm以上である場合にA(好ましい)、180度剥離強度が1N/cm未満である場合にB(好ましくない)とした。
【0041】
<耐衝撃性>
180度剥離強度試験の剥離状態が界面破壊、凝集破壊、又は材料破壊である場合にC(好ましい)、180度剥離強度試験後の剥離状態がジャーキー剥離である場合にD(好ましくない)とした。
【0042】
実施例1から実施例6のオリゴマ発生の評価は、好ましく、オリゴマは、接着剤層3の成分であるポリエステルと混和して結晶化が進まないか、又はオリゴマと接着剤層3とは共にポリエステルの成分であるため、光の屈折率が略等しので結晶化しても、その部分の目視が困難であることを示している。
【0043】
実施例2の接着剤層3のヤング率は、硬化剤イソシアネートを加えたことにより、実施例1の接着剤層3のヤング率と比べて大きくなっている。このように硬化剤を加えても、本発明のヤング率の範囲であれば、接着強度、及び耐衝撃性が両立する。
【0044】
実施例5の接着剤層3のガラス転移温度は、他の実施例と比べて低いものの、接着強度、及び耐衝撃性が両立している。
【0045】
実施例6では、耐衝撃性がジャーキー剥離であり、接着剤層3の耐衝撃性は、実施例1から実施例5の耐衝撃性と比べて弱いので、上側タッチパネルシート15として使用することはできないが、オリゴマ発生の評価、及び接着強度が好ましいので、下側タッチパネルシート10aとして使用することができることを示している。
【0046】
実施例6では、オリゴマ発生の評価が好ましく、ヤング率が実施例1から実施例5と比較して大きいものの、接着強度が維持されているので下側タッチパネルシート10aとして使用することができることがわかる。
【0047】
比較例2では、接着剤層3にポリエステル樹脂を用いているものの、実施例1〜実施例6と比較してガラス転移温度が大きいため、接着強度及び耐衝撃性が好ましくない。
【0048】
比較例3の接着剤層のヤング率及びガラス転移温度は、実施例1から実施例5のヤング率及びガラス転移温度の好ましい範囲内にあるものの、発生したオリゴマの中で最大なものの最大径が5μm以上のものが観察されたので、目視される可能性があるので好ましくない。
【0049】
上記、実施例及び比較例により、上側タッチパネルシート15の接着剤層3のヤング率は、1.5MPa以上3.0MPa以下の範囲が好ましく、上側タッチパネルシート15及び下側タッチパネルシート10aの接着剤層3のガラス転移温度は、65℃未満の範囲が好ましいことを表している。
【符号の説明】
【0050】
1、31……第一の樹脂フィルム 2、32……第二の樹脂フィルム 3、33……接着剤層 5、35……多層ポリエステルフィルム 7……透明導電性薄膜 8……ハードコート層 10……多層透明導電性シート 10a……下側タッチパネルシート 11……液晶表示装置 15……上側タッチパネルシート 20……多層ポリエステルロール製造装置 21……第一の樹脂フィルムロール 22……第二の樹脂フィルムロール 23……接着剤層塗布部 24……第一の貼り合わせロール 25……第二の貼り合わせロール 26……巻き取り装置 39……多層ポリエステルフィルムロール 50……タッチパネル 55……液晶付タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートから成る第一の樹脂フィルムと、
前記第一の樹脂フィルムの表面上に配置されたポリエステルから成る接着剤層と、
前記接着剤層の表面上に配置されたポリエチレンテレフタレートから成る第二の樹脂フィルムとを有する多層ポリエステルフィルムであって、
前記第一、第二の樹脂フィルムは、前記接着剤層で接着され、
前記多層ポリエステルフィルムは、加熱されてタッチパネルに用いられる多層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記第一、第二の樹脂フィルムは、テレフタール酸とエチレングリコールが重合して得られ、前記接着剤層は、テレフタール酸とエチレングリコールを含有する接着剤から成る請求項1記載の多層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記接着剤層のガラス転移温度が、65℃未満である請求項1又は請求項2のいずれか一項記載の多層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の多層ポリエステルフィルムと、
前記第一の樹脂フィルムの裏面上に配置された酸化インジウム錫から成る第一の透明導電性薄膜と、
前記第二の樹脂フィルムの表面上に配置された保護層とを有し、
少なくとも前記多層ポリエステルフィルムは140℃以上の温度で加熱され、タッチパネルの押圧される面側に用いられる上側タッチパネルシート。
【請求項5】
請求項4記載の上側タッチパネルシートと、
第二の透明導電性薄膜を有する下側タッチパネルシートとを有し、
前記上側タッチパネルシートと前記下側タッチパネルシートは、前記第一、第二の透明導電性薄膜が、面するように対向して離間して配置され、前記上側タッチパネルシートが押圧されると、前記上側タッチパネルシートが湾曲して、前記上側タッチパネルシートの前記第一の透明導電性薄膜が前記下側タッチパネルシートの前記第二の透明導電性薄膜と接触して、電流が流れて、接触した面内の位置が求められるタッチパネル。
【請求項6】
前記上側タッチパネルシートの前記接着剤層のヤング率が1.5MPa以上3.0MPa以下である請求項5記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記上側タッチパネルシートの前記接着剤層は、常温で反応する硬化剤を含有する請求項5又は請求項6のいずれか一項記載のタッチパネル。
【請求項8】
請求項6乃至請求項8のいずれか一項記載のタッチパネルと、液晶表示装置を有し、前記タッチパネルは、前記液晶表示装置上に配置される液晶付タッチパネル。
【請求項9】
第一、第二の樹脂フィルムの間に、接着剤を接触して位置させ、前記接着剤を140℃未満の温度に昇温させて前記接着剤を介して前記第一、第二の樹脂フィルムを接着させて、多層ポリエステルフィルムを作成し、
前記第一の樹脂フィルムの前記接着剤が配置された面と反対側の面に透明導電性薄膜を配置し、
前記第二の樹脂フィルムの前記接着剤が配置された面と反対側の面に前記保護層を配置する上側タッチパネルシートの製造方法であって、
前記多層ポリエステルフィルムを140℃以上の温度で加熱処理する加熱工程を有する上側タッチパネルシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−708(P2011−708A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136530(P2009−136530)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】