説明

貼付剤入り包装袋及び薬物移行抑制方法

本発明の貼付剤入り包装袋(100)は、支持体(21)の少なくとも一方の面に粘着剤層(22)が積層され、粘着剤層(22)に剥離フィルム(23)が付着した貼付剤(2)を内部に収容した包装袋(1)であって、粘着剤層(22)は、式(1)で表される薬物又はその薬学的に許容される塩を含有し、貼付剤(2)が接する包装袋(1)の内面(31a、31b)の少なくとも一部がポリアクリロニトリルからなる。
【化1】


[式中、Rは、2−イソプロポキシエトキシメチル基、カルバモイルメチル基又は2−メトキシエチル基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤入り包装袋及び薬物移行抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貼付剤中の有機液状成分が包装材料内面に吸着移行することを防止する方法として、包装材料の内面を溶解度パラメーター9以上のプラスチック材料とする方法が知られている(特許文献1)。また、ビソプロロール等の薬物は、貼付剤の薬効成分として用いられているが、この場合、内面の材料がセロファン製であるセロニウム包装袋が使用されている。
【特許文献1】特開平5−305108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、本発明者等は溶解度パラメーターが9以上のプラスチック材料であっても、貼付剤が含有する成分によっては移行が顕著に生じることを見出した。特に薬物としてビソプロロールやそれに骨格が類似した化合物を用いる場合は、エチレン/ビニルアルコール共重合体やアクリロニトリル/メチルアクリレート共重合体等の溶解度パラメーターが9以上のフィルムを用いても付着を防止することはできない。
【0004】
そこで、本発明は、ビソプロロールやそれに骨格が類似した化合物を含有する貼付剤を収容した包装袋であって、包装袋内面に薬物が付着し難い、貼付剤入り包装袋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の貼付剤入り包装袋は、支持体の少なくとも一方の面に粘着剤層が積層され、該粘着剤層に剥離フィルムが付着した貼付剤を内部に収容した包装袋であって、前記粘着剤層は、下記一般式(1)で表される薬物又はその薬学的に許容される塩を含有し、前記貼付剤が接する前記包装袋の内面の少なくとも一部が、ポリアクリロニトリルからなることを特徴とする。
【0006】
【化1】

[式中、Rは、2−イソプロポキシエトキシメチル基、カルバモイルメチル基又は2−メトキシエチル基を示す。]
【0007】
このように構成された貼付剤入り包装袋においては、一般式(1)で表される薬物(以下「薬物(1)」という。)の移行を抑制することができる。すなわち、薬物(1)は、移行性が高く、支持体や剥離フィルム上を移行し、包装袋内層まで達した後、更に包装袋内層全体に広がる性質を有するが、内面をポリアクリロニトリルとすることによって、薬物の付着を防止することができる。従って、薬物の移行を最小限に食い止めることができる。
【0008】
薬物として一般式(1)のRが2−イソプロポキシエトキシメチル基、カルバモイルメチル基又は2−メトキシエチル基である薬物が挙げられる。これらの薬物は、交感神経系のβ受容体を選択的に遮断し、降圧作用を示す抗高血圧薬として有用であるにもかかわらず、従来の包装袋では顕著な薬物移行が認められていたため、使用が制限されていた。しかし、上記のような薬物を含む貼付剤であっても本発明で用いる包装袋を使用することにより、薬物移行が抑制されるため、長期間保管後も貼付剤中の薬物含有量は高く維持される。
【0009】
貼付剤の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として含む重合体を含有するアクリル系粘着剤、スチレン系ブロック共重合体を含有するブロック共重合体系粘着剤及び前記アクリル系粘着剤と前記ブロック共重合体系粘着剤とを含有する粘着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の粘着剤を含むことが好ましい。このような粘着剤は、上記薬物を含有させることができ、薬物の経皮吸収性を高めることもできることから基剤として有用である。
【0010】
また、包装袋が多層フィルムから構成され、該包装袋の内面となる多層フィルムの層がポリアクリロニトリルからなることが好ましい。内面のフィルムが薬物浸透性の高い材料からなるものである場合は、貼付剤保管中に多層フィルムの層間剥離が生じることもあるが、内面となる層をポリアクリロニトリルとすることにより、薬物(1)の付着そのものが抑制されるため、層間剥離の問題が生じない。特に、内面の層を全てポリアクリロニトリルとするとよく、これにより薬物の付着を効率良く抑制できる。すなわち、薬物を含む貼付剤が、包装袋の内部に収容された後、貼付剤が包装袋の内部で動いた場合等であっても薬物の付着を防止できる。
【0011】
次に、包装袋の外面となる多層フィルムの層はポリエチレンテレフタレートからなるのが好ましい。外面をポリエチレンテレフタレートとすることで、内面の層を物理的に保護するとともに、腐食等の包装袋外面の変性が生じるのを抑制することができる。
【0012】
更に、貼付剤入り包装袋は、内面となる前記多層フィルムの層と、外面となる前記多層フィルムの層との間に、アルミニウムからなる層を備えるのが好ましい。貼付剤入り包装袋がアルミニウム層を備えることによって、貼付剤に含まれる薬物の移行を抑制できるだけでなく、製剤中の揮発性成分が包装袋外へ揮散すること及び水分等が包装袋内へ浸入すること等を防止し、ガスバリヤー性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明は、薬物を含有する粘着剤層を備える貼付剤を収容する包装袋の内面に、前記薬物が移行することを抑制する薬物移行抑制方法であって、前記薬物は、一般式(1)で表される薬物又はその薬学的に許容される塩であり、前記内面の少なくとも一部がポリアクリロニトリルからなる面とする、薬物移行抑制方法を提供する。
【0014】
この方法によれば、薬物の包装袋内面への付着を防止することができ、貼付剤の製造時から使用時に至るまでの貼付剤の薬物含有量を維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の貼付剤入り包装袋によれば、貼付剤に含まれるビソプロロール等の薬物の移行を抑制することができる。特に、貼付剤の製造後、使用前において、貼付剤を包装袋の内部に収容させることにより、貼付剤に含まれる薬物含有量を維持することができ、使用に際しては、充分な量の薬物を皮膚等に移行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は第1実施形態に係る貼付剤入り包装袋を示す断面図である。
【図2】図2は第2実施形態に係る貼付剤入り包装袋を示す断面図である。
【図3】図3は第1態様に係る貼付剤の断面図である。
【図4】図4は第2態様に係る貼付剤の断面図である。
【図5】図5は第3態様に係る貼付剤の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
100・・・第1の貼付剤入り包装袋、110・・・第2の貼付剤入り包装袋、1・・・包装袋、2・・・貼付剤、4・・・乾燥剤、10a、10b・・・多層フィルム、11a、11b・・・内層、12a、12b・・・中間層、13a、13b・・・外層、21・・・支持体、22・・・粘着剤層、23・・・剥離フィルム、31a、31b・・・内面。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は第1実施形態に係る貼付剤入り包装袋の断面図である。図1に示す貼付剤入り包装袋100は、包装袋1の内部に貼付剤2を収容したものである。
【0020】
包装袋1は、内層11a、中間層12a及び外層13aがこの順に積層した多層フィルム10aと、内層11b、中間層12b及び外層13bがこの順に積層した多層フィルム10bとから構成されており、多層フィルム10a及び10bの周縁部において、対向した内層11a、11bが接着されている。
【0021】
貼付剤2は、支持体21、粘着剤層22及び剥離フィルム23がこの順に積層してなるものであり、粘着剤層22には、薬物(1)が含有されている。なお、貼付剤2は、包装袋1の内面31a及び31b、すなわち、内層11a及び内層11bの表面に接しており、貼付剤2が接している内層11a及び11bは、ポリアクリロニトリルからなっている。また、中間層12a、12bは、アルミニウムからなっており、外層13a、13bはポリエチレンテレフタレートからなっている。
【0022】
このように構成された貼付剤入り包装袋100を長期間保管していると、貼付剤2の粘着剤層22に含まれる薬物(1)は、粘着剤層22を構成する基剤から経時的にブリードアウトし、支持体21や剥離フィルム23に沿って移行する。薬物(1)が、内層11a及び11bの表面に移行すれば、次々に移行が生じて内面31a、31b全体が薬物(1)で覆われてしまうことがある。また、粘着剤層22中の薬物(1)の量が経時的に減少するとともに貼付剤2の表面や内面31a、31bが薬物(1)で汚染される。従って、包装袋1を密封して貼付剤2を保管しても、包装袋1内部で、貼付剤2からの薬物(1)の放出が大量に起こり、保管後の貼付剤2は使用に供し得ないものとなる。
【0023】
しかしながら、第1実施形態に係る貼付剤入り包装袋100によれば、内層11a、11bがポリアクリロニトリルからなっているため、薬物(1)の内層11a、11bの表面に対する移行が抑制され、粘着剤層22から放出される薬物(1)の量が低減される。従って、長期間保管後も貼付剤2中の薬物(1)の減少がなく好適に使用できる。
【0024】
第1実施形態に係る貼付剤入り包装袋100においては、中間層12a、12bがアルミニウムからなっているため、貼付剤に含まれる薬物の移行を抑制するだけでなく、揮発性成分が包装袋外へ揮散すること及び水分等が包装袋内へ浸入すること等を防止し、ガスバリヤー性を向上させることができる。また、外層13a、13bがポリエチレンテレフタレートからなっているため、中間層12a、12bを保護して、磨耗を防止でき、中間層12a、12bの厚みを非常に薄くすることもできる。
【0025】
上述した効果をより顕著に発揮させるために、貼付剤2と、貼付剤入り包装袋100内部との間に隙間が生じないようにすることもできる。一方、包装袋1内部に隙間があり、貼付剤2が動くような場合であっても、内層11a、11b全体をポリアクリロニトリルで構成することによって、薬物(1)の移行が抑制される。
【0026】
上述した第1実施形態に係る貼付剤入り包装袋100においては、包装袋1が多層フィルムからなっているが、包装袋1をポリアクリロニトリルの単層フィルムからなるものにしてもよい。また、外層13a、13bのポリエチレンテレフタレートを、他の樹脂にしてもよい。外層13a、13bに用いられる他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、セロファン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン・ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
【0027】
第1実施形態に係る貼付剤入り包装袋100においてはまた、内層11a、11bはいずれもポリアクリロニトリルからなっているが、内層11a、11bの一方だけをポリアクリロニトリルからなるようにしてもよい。更には、内層11a又は11bの一部、少なくとも貼付剤2と接する部分だけがポリアクリロニトリルになるようにしてもよい。
【0028】
多層フィルム10a又は10bの厚みは、気体透過性と包装袋としての取り扱いやすさの観点から、20〜100μmが好ましい。20μm未満であると強度不足で破損しやすくなり、気密性が悪くなる虞があり、100μmを超えるとフィルムの柔軟性が失われ、取り扱いにくくなる虞がある。
【0029】
包装袋1の多層フィルム10a、10bは、内層11a、11b、中間層12a、12b及び外層13a、13bを公知のヒートラミネート法や接着剤により貼り合わせることによって製造することができる。
【0030】
図2は第2実施形態に係る貼付剤入り包装袋の断面図である。貼付剤入り包装袋110は、包装袋1内部の空隙に乾燥剤4を収容した他は、第1実施形態と同様の構成を有する。
【0031】
第2実施形態は、乾燥剤4を収容したので薬物含有量を高い割合で維持することができる。本発明に用いる薬物(1)は、移行を起こしやすい他に、加水分解も起こしやすいことが知られている。従って、乾燥剤4を収容させることにより、長期間保管後も、貼付剤2の薬物含有量を維持することができる。
【0032】
乾燥剤4としては、特に限定されるものではないが、シリカゲル、合成又は天然ゼオライト、モンモリロナイト等の粘度鉱物等が挙げられる。
【0033】
図3〜5は、包装袋1内部に収容される貼付剤の第1〜第3の態様を示す断面図である。
【0034】
図3に示す、第1の態様に係る貼付剤2は、図1及び2に示した貼付剤2に相当し、支持体21と剥離フィルム23との間に、剥離フィルム23より面積が小さく、支持体21と等しい面積で粘着剤層22が挟持されてなるものである。図4に示す、第2の態様に係る貼付剤2aは、面積の等しい支持体21、粘着剤層22及び剥離フィルム23がこの順に積層したものである。図5に示す、第3の態様に係る貼付剤2bは、図3において、粘着剤層22が形成されていない剥離フィルム23の面に粘着剤層22及び支持体21をこの順に積層したものである。なお、図3〜5において、剥離フィルム23は、粘着剤層22上に剥離可能に積層されている。
【0035】
本発明によれば、図4のように、端部に粘着剤層22が露出しており、内層11a、11b表面への移行がより生じやすいような貼付剤2aを、包装袋1内部に収容した場合であっても、問題なく薬物(1)の移行を抑制することができる。
【0036】
粘着剤層22に含まれる薬物は、一般式(1)で表される薬物又はこの薬学的に許容される塩である。一般式(1)で表される薬物は、一般に交感神経系のβ1受容体を選択的に遮断し、降圧作用を有する。一般式(1)のRが2−イソプロポキシエトキシメチル基であると、特に本態性高血圧、狭心症、不整脈の改善を適応症とするため、好適に使用できる。なお、「この薬学的に許容される塩」とは、前記一般式(1)の薬物の塩であって、前記同様の薬理活性を示すものをいう。
【0037】
粘着剤層22中における薬物の含有量は、粘着剤層22の総質量基準で1〜50質量%であると好ましく、5〜20質量%であるとより好ましい。薬物の含有量が1質量%未満であると、粘着剤層22中から薬物が放出されにくくなり、使用時に適切な量の薬物を投与することが困難となる傾向にある。一方、50質量%を超えると、粘着剤層22中に薬物を保持しきれなくなり、粘着物性が劣るものとなる。
【0038】
粘着剤層22は、薬物(1)を含有した粘着剤組成物からなり、必要に応じて粘着付与剤及び軟化剤等を含有させることもできる。粘着剤組成物に含まれる粘着剤としては、粘着性に優れ、薬物の放出性に優れることから、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として含む重合体を含有するアクリル系粘着剤、スチレン系ブロック共重合体を含有するブロック共重合体系粘着剤又は前記アクリル系粘着剤と前記ブロック共重合体系粘着剤とを含有する粘着剤等が挙げられる。アクリル系粘着剤としては、アクリル酸、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル又はメタクリル酸−2−エチルヘキシル等に代表される(メタ)アクリル酸(エステル)を少なくとも一種含有させて共重合させたものであれば特にその限定はないが、例えば、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸共重合体又はアクリル酸−2−エチルヘキシル・メタクリル酸−2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体等が挙げられ、特に、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体が好ましい。スチレン系ブロック共重合体としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)又はスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)等が挙げられ、特にスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)が好ましい。また、更に好ましくは、SISとアクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸共重合体を混合した粘着剤である。
【0039】
軟化剤としては、石油系オイル(例えばパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル又は芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油又はラッカセイ油等)、オレフィン酸、シリコンオイル、二塩基酸エステル(例えばジブチルフタレート又はジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例えばポリブテン又は液状イソプレンゴム等)、液状脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル又はセバシン酸イソプロピル等)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル又はクロタミトン等が挙げられる。これらの中でも特に、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル及びセバシン酸ジエチルは皮膚への適度な付着性を付与できることから好適である。これらの軟化剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
粘着付与剤としては、脂環族飽和炭化水素樹脂、ロジン誘導体(例えばロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル又はロジンのペンタエリスリトールエステル等)、テルペン樹脂、石油樹脂又はマレイン酸レジン等が挙げられる。これらの中でも特に、脂環族飽和炭化水素樹脂、水添ロジンのグリセリンエステルが好適である。これらの粘着付与剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
支持体21としては、薬物の移行性を良好に維持しつつ柔軟性に優れるものが望ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はポリウレタン等からなるフィルム、不織布、織布又は編布が挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート又はエチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0042】
剥離フィルム23は、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレン等の樹脂フィルム、離型処理した紙等を用いることが可能であり、特にシリコン処理を施したポリエチレンテレフタレートのフィルムが好適に用いられる。
【0043】
貼付剤2の製造方法は特に限定されないが、例えば、薬物、粘着剤及び軟化剤を熱融解させ、剥離フィルム23又は支持体21に塗工し、粘着剤層22を形成後、支持体21又は剥離フィルム23と貼り合わせて貼付剤2を得ることができる。また、薬物、粘着剤及び軟化剤をトルエン、ヘキサン、ヘプタン又は酢酸エチル等の溶媒に溶解させ、剥離フィルム23又は支持体21上に伸展して溶剤を乾燥除去し、粘着剤層22を形成後、支持体21又は剥離フィルム23と貼り合わせて貼付剤2を得ることができる。
【0044】
貼付剤入り包装袋100、110は、貼付剤2又は貼付剤2及び乾燥剤4を包装袋1の中に収容し、多層フィルム10a、10bの周縁部を接着することによって製造される。従って、貼付剤2に含まれる薬物の含量安定性は、包装袋1の内部の空間の環境によっても左右される。空間の相対湿度を25%以下に維持することが好ましい。かかる条件は、製造工程時に調整するか、又は前記乾燥剤4等を収容させることにより、前記条件に含まれるように調整すればよい。
【0045】
また、本発明は、貼付剤2から包装袋1への薬物移行を抑制することができる薬物移行抑制方法である。内面がポリアクリロニトリルである包装袋1を使用すれば、貼付剤2に含まれる一般式(1)の薬物に対して、貼付剤2から包装袋1への移行を抑制することができる。この方法によれば、包装袋1の内面への薬物の付着を防止することができ、貼付剤の製造時から使用時に至るまでの貼付剤の薬物含有量を維持することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
(包装袋Aの作製)
ポリアクリロニトリルフィルム(PAN、厚さ20μm)、アルミニウム箔(Al、厚さ7μm)及びポリエステルフィルム(PET、厚さ12μm)がこの順に積層された多層フィルムA(縦85mm、横79mm、厚さ40μm)を準備した。
【0048】
次いで、多層フィルムAのポリアクリロニトリルからなる層を対向するように配置し、周縁部の3辺を熱融着によって接着し、空冷後、1辺が貼付剤収容のために開口した包装袋Aを得た。
【0049】
(貼付剤Aの作製)
【表1】

【0050】
上記表1に示す処方Aの成分のうち、ビソプロロール、流動パラフィン及びセバシン酸ジエチルを容器に取り、これらを十分に混合した。この混合物を、SIS、Duro-Tak 87-2194(アクリル系粘着剤溶液、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社製)、及びアルコンP-100(脂環族飽和炭化水素樹脂、荒川化学社製)をトルエンに溶解した溶液と混合して、塗工液を調製した。得られた塗工液をシリコン処理したポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム上に塗工し、溶剤を乾燥除去して粘着剤層を成膜し、ポリエチレンテレフタレート製支持体と貼り合わせて目的の貼付剤を得た。また、得られた貼付剤は、10cm(正方形)に裁断した。なお、貼付剤の粘着剤層の厚さは100μmであった。
【0051】
(貼付剤入り包装袋Aの作製)
上記包装袋A内に上記貼付剤Aを収容し、熱融着により開口した周縁部を接着し、密封状態とした貼付剤入り包装袋Aを得た。
【0052】
(実施例2)
実施例1に準じて包装袋A及び貼付剤Aを作製した。
【0053】
(貼付剤入り包装袋Bの作製)
上記包装袋A内に上記貼付剤A及び乾燥剤(シリカゲル(スード・ケミー社製))を収容し、熱融着により周縁部を接着し、密封状態とした貼付剤入り包装袋Bを得た。
【0054】
(比較例1)
上記包装袋Aの代わりに、市販のセロニウム包材(4層からなる包材であって、内側の3層は最内層から順にセロファンフィルム、ポリエチレンフィルム、アルミニウム箔からなり、最外層はポリエステルフィルムからなる)(凸版印刷社製)を使用した。
【0055】
(貼付剤入り包装袋Cの作製)
上記セロニウム包材内に上記貼付剤Aを収容し、熱融着により周縁部を接着し、密封状態とした貼付剤入り包装袋Cを得た。
【0056】
(比較例2)
上記包装袋Aの代わりに、市販のセロニウム包材(凸版印刷社製)を使用した。
【0057】
(貼付剤入り包装袋Dの作製)
上記セロニウム包材内に上記貼付剤A及び乾燥剤(シリカゲル(スード・ケミー社製))を収容し、熱融着により周縁部を接着し、密封状態とした貼付剤入り包装袋Dを得た。
【0058】
(評価方法)
(安定性試験)
実施例1、2及び比較例1、2で作製した直後の各貼付剤入り包装袋A〜Dの薬物の含有量(n0)を測定した。次いで、60℃の恒温恒湿槽中に保管し、1ヶ月後の薬物の含有量(n1)を測定した。そして、下記式(2)に示す関係から薬物の含有率(R)を算出した。
R=(n1/n0)×100・・・(2)
【0059】
得られた結果を表2に示す。
【表2】

【0060】
表2から明らかなように、実施例1及び2の本発明による貼付剤入り包装袋は、1ヶ月間、60℃の恒温恒湿槽で保管した後でも、薬物含有率は高く、特に乾燥剤を含んだ実施例2は、高い薬物含有率を維持することができた。これに対し、内面にポリアクリロニトリルを含まない比較例1及び2は、保管後の薬物含有率の低下が顕著であった。このことから、本発明の貼付剤入り包装袋は、貼付剤に含まれる薬物の移行を抑制し、かつ薬物含有量を維持するのに極めて有用であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも一方の面に粘着剤層が積層され該粘着剤層に剥離フィルムが付着した貼付剤を内部に収容した包装袋であって、
前記粘着剤層は、下記一般式(1)で表される薬物又はその薬学的に許容される塩を含有し、前記貼付剤が接する前記包装袋の内面の少なくとも一部が、ポリアクリロニトリルからなることを特徴とする貼付剤入り包装袋。
【化1】

[式中、Rは、2−イソプロポキシエトキシメチル基、カルバモイルメチル基又は2−メトキシエチル基を示す。]
【請求項2】
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー単位として含む重合体を含有するアクリル系粘着剤、スチレン系ブロック共重合体を含有するブロック共重合体系粘着剤及び前記アクリル系粘着剤と前記ブロック共重合体系粘着剤とを含有する粘着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の粘着剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項3】
前記包装袋が多層フィルムから構成され、該包装袋の内面となる前記多層フィルムの層がポリアクリロニトリルからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項4】
前記包装袋の外面となる前記多層フィルムの層がポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする請求項3に記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項5】
内面となる前記多層フィルムの層と、外面となる前記多層フィルムの層との間に、アルミニウムからなる層を備えることを特徴とする請求項4に記載の貼付剤入り包装袋。
【請求項6】
薬物を含有する粘着剤層を備える貼付剤を収容する包装袋の内面に、前記薬物が移行することを抑制する薬物移行抑制方法であって、
前記薬物は、下記一般式(1)で表される薬物又はその薬学的に許容される塩であり、
前記内面の少なくとも一部がポリアクリロニトリルからなる面とする、薬物移行抑制方法。
【化2】

[式中、Rは、2−イソプロポキシエトキシメチル基、カルバモイルメチル基又は2−メトキシエチル基を示す。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【国際公開番号】WO2005/072675
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517551(P2005−517551)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001348
【国際出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】