説明

貼着部材および光学部品の貼着方法

【課題】 粘着剤層の両面側に貼着されている剥離シートのうち、確実に一方の剥離シートのみを剥離することができ、かつ、その際に、粘着剤層の一部が欠損し、最初に剥離した剥離シートにくっついてしまうのを防止することができることが可能な貼着部材を提供すること、このような貼着部材を用いた光学部品の貼着方法を提供すること。
【解決手段】 貼着部材100は、粘着剤層3と、第1の剥離シート1と、第2の剥離シート2と有している。粘着剤層3は、両面が粘着性を有するものである。第1の剥離シート1は、第1の基材11上に、第1の剥離剤層12が形成された構成となっている。第2の剥離シート2は、第2の基材21上に、第2の剥離剤層22が形成された構成となっている。第2の剥離シート2は、第1の剥離シート1を剥離する際の剥離方向に対して垂直な方向の端部付近に、第2の剥離剤層22が設けられていない非剥離領域23を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼着部材および光学部品の貼着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、粘着剤層を、2枚の剥離シートで挟んで保護したテープ状の貼着部材(両面テープ)が知られている。
【0003】
このような貼着部材は、一方の剥離シート(第1の剥離シート)を剥がし、被着体に貼付し、その後、他方の剥離シート(第2の剥離シート)を剥がすことにより、被着体と他の被着体とを貼り合わせることができるものである。
【0004】
しかしながら、このような貼着部材は、第1の剥離シートを剥がす際に、粘着剤層と第2の剥離シートとが不本意に剥がれてしまうといった問題があった。このように粘着剤層と第2の剥離シートとが剥がれると、最初の被着体に貼付する際に、粘着剤層を均一に貼着するのが困難で、被着体との十分な密着性を得るのが困難となる場合があった。
【0005】
このような問題を解決するため、第2の剥離シートの粘着剤層からの剥離力を、第1の剥離シートの粘着剤層からの剥離力よりも大きくすることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、上記のような構成の貼着部材では、前述したような問題を十分に解決することができず、また、第1の剥離シート(剥離力の小さい剥離シート)を剥離した際に、第1の剥離シートに、粘着剤層の一部がくっついてしまい、粘着剤層の一部が欠損する、いわゆる、泣き別れ現象が生じるといった問題があった。特に、このような問題は、貼着部材の幅方向の端部付近において顕著であった。
【0007】
【特許文献1】特開平7−41736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、粘着剤層の両面側に貼着されている剥離シートのうち、確実に一方の剥離シートのみを剥離することができ、かつ、その際に、粘着剤層の一部が欠損し、最初に剥離した剥離シートにくっついてしまう、いわゆる泣き別れ現象が生じるのを防止することができることが可能な貼着部材を提供すること、このような貼着部材を用いた光学部品の貼着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
(1) 粘着剤層と、
第1の剥離剤層を備える第1の剥離シートと、
第2の剥離剤層を備える第2の剥離シートとを有し、
前記第1の剥離シートは、前記第1の剥離剤層を介して、前記粘着剤層の一方の面に貼着され、
前記第2の剥離シートは、前記第2の剥離剤層を介して、前記粘着剤層の他方の面に貼着されており、
前記第2の剥離シートの前記第2の剥離剤層が設けられた部位の、前記粘着剤層からの剥離力は、前記第1の剥離シートの前記粘着剤層からの剥離力よりも大きく、
前記第2の剥離シートは、少なくとも周縁部付近の一部に、前記第2の剥離剤層が設けられていない非剥離領域を有し、
前記非剥離領域と前記粘着剤層とが接触していることを特徴とする貼着部材。
【0010】
(2) 貼着部材は、テープ状であって、
前記非剥離領域は、前記第2の剥離シートの幅方向の端部付近に設けられている上記(1)に記載の貼着部材。
【0011】
(3) 前記第2の剥離シートは、第2の基材と前記第2の剥離剤層とを有し、
前記非剥離領域の幅は、前記第2の基材の幅の0.1〜5.0%である上記(1)または(2)に記載の貼着部材。
【0012】
(4) 前記第1の剥離シートの前記粘着剤層からの剥離力をF[mN/50mm]、前記第2の剥離シートの前記第2の剥離剤層が設けられている部位の前記粘着剤層からの剥離力をF[mN/50mm]としたとき、F−F≧10[mN/50mm]の関係を満足する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の貼着部材。
【0013】
(5) 光学部品を他の被着体に貼着するのに用いる上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の貼着部材。
【0014】
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の貼着部材から前記第1の剥離シートを剥がして、前記粘着剤層を光学部品に貼着した後、前記第2の剥離シートを剥離し、前記光学部品を他の被着体に貼着することを特徴とする光学部品の貼着方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、粘着剤層の両面側に貼着されている剥離シートのうち、確実に一方の剥離シートのみを剥離することができ、かつ、その際に、粘着剤層の一部が欠損し、最初に剥離した剥離シートにくっついてしまう、いわゆる泣き別れ現象が生じるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の貼着部材をロール状に巻き取った状態を示す斜視図、図2は、図1に示した貼着部材の幅方向における縦断面図、図3は、本発明の貼着部材に用いられる第2の剥離シートを示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図2および図3中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0017】
貼着部材100(本発明の貼着部材)は、図1および図2に示すように、粘着剤層3と、第1の剥離シート1と、第2の剥離シート2と有している。
【0018】
第1の剥離シート1は、粘着剤層3の一方の面に貼着されており、第2の剥離シート2は、粘着剤層3の第1の剥離シート1が貼着されている面とは反対側の面に貼着されている。
【0019】
本実施形態では、貼着部材100は、図1に示すように、テープ状の形態をなしている。
【0020】
貼着部材100では、第2の剥離シート2(後述する第2の剥離剤層22が設けられている部位)の粘着剤層3からの剥離力は、第1の剥離シート1の粘着剤層3からの剥離力よりも大きいものとなっている。
【0021】
このような構成とすることにより、貼着部材100は、粘着剤層3からの第1の剥離シート1の剥離しを剥離した後、被着体に貼着し、その後、第2の剥離シート2を剥離することにより、被着体を他の被着体に貼着するという使い方ができる。
【0022】
第2の剥離シート2は、図2および図3に示すように、第2の基材21上に、第2の剥離剤層22が形成された構成となっている。
【0023】
第2の剥離シート2は、第2の剥離剤層22を介して、後述する粘着剤層3に貼着されている。
【0024】
第2の基材21は、第2の剥離剤層22を支持する機能を有している。
第2の基材21は、主として合成樹脂材料で構成されているのが好ましい。
【0025】
第2の基材32を構成する合成樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂等のプラスチック等を用いることができる。
【0026】
中でも、第2の基材21を構成する材料として、ポリエステル樹脂を用いた場合、耐久性に優れ、また、種々の厚さやグレードのものが入手可能である。
【0027】
特に、貼着部材100を光学部品用途として用いる場合、ポリエステル樹脂として、配向角の最大値が15°以下ものを用いるのが好ましく、10°以下のものを用いるのがより好ましい。これにより、偏光板等の光学部品と貼り合わせた後に、不良がないか検品するのを行いやすくすることができる。
【0028】
第2の基材21の平均厚さは、12〜200μmであるのが好ましく、25〜100μmであるのがより好ましい。
第2の剥離剤層22は、第2の剥離シート2に剥離性を付与する機能を有している。
【0029】
第2の剥離剤層22を構成する材料としては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、長鎖アルキル樹脂あるいは、これらの混合物等が挙げられる。前述した中でもシリコーン樹脂は、剥離し易さを調整するのが容易であることから、好適に用いることができる。
【0030】
なお、第2の剥離剤層22を構成する材料は、第2の剥離シート2の第2の剥離剤層22が設けられている部位の粘着剤層3からの剥離力が、後述する第1の剥離シート1の粘着剤層3からの剥離力よりも大きくなるように適宜選択される。
【0031】
なお、第2の剥離剤層22には、後述する粘着剤層3からの剥離力が大きくなるような添加剤(重剥離添加剤)等を含んでいてもよい。
【0032】
ここで、剥離力とは、JIS−Z0237に準拠して測定され、巾50mm、長さ200mmの剥離シートと粘着剤層とを貼着し、引っ張り試験機を用いて、粘着剤層を固定した状態で、剥離シートを300mm/分の速度で180°方向に剥がした際の荷重を示す。
【0033】
第2の剥離剤層22の平均厚さは、特に限定されないが、0.02〜0.5μmであるのが好ましく、0.05〜0.2μmであるのがより好ましい。第2の剥離剤層22の平均厚さが前記下限値未満であると、粘着剤層3から剥離するのが困難となる場合がある。一方、第2の剥離剤層22の平均厚さが前記上限値を超えると、剥離力は変わらないが、生産性やコストを考えると無駄が生じる可能性がある。
【0034】
本実施形態では、図2に示すように、第2の剥離シート2の幅方向の端部付近、すなわち、第2の剥離シート2の面方向における、第1の剥離シート1を剥離する際の剥離方向(図1中の矢印の方向)に対して垂直な方向の端部付近には、前述した第2の剥離剤層22が設けられていない非剥離領域23が設けられている。
【0035】
非剥離領域23は、第2の剥離シート2の両端部付近に設けられているのが好ましい。
この非剥離領域23は、図示の構成のように、粘着剤層3と接触している。
【0036】
このような非剥離領域23においては、剥離剤層が設けられていないため、前述したような粘着剤層3との密着性が高くなっている。
【0037】
従って、上記ような第2の剥離シート2上に、後述するような粘着剤層3および第1の剥離シート1とを積層した貼着部材では、第1の剥離シート1を剥離した際の、第2の剥離シート2と粘着剤層3との間での不本意な剥がれ等を防止することができるとともに、後述する粘着剤層3の一部が欠損し、第1の剥離シート1にくっついてしまう、いわゆる泣き別れ現象が生じるのを防止することができる。特に、従来のこのような貼着部材では生じやすかった、貼着部材100の幅方向、すなわち、貼着部材100(第2の剥離シート2)の面方向における、第1の剥離シート1の剥離方向に対して垂直な方向の端部付近における泣き別れ現象を確実に防止することができる。さらに、非剥離領域23において、第2の剥離シート2と後述する粘着剤層3とが密着しているとともに、第2の剥離シート2の第2の剥離剤層22が設けられている部位は、第1の剥離シート1よりも粘着剤層3からの剥離力が大きくなっていることから、非剥離領域23以外の部位においても、第2の剥離シート2と粘着剤層3との不本意な剥離を確実に防止することができる。さらに、例えば、第1の剥離シート1を剥離した後に第1の剥離シート1を巻き取って回収した場合、巻き取りロールが第1の剥離シート1に付着した粘着剤によって汚染されるのを防止することができる。また、貼着部材を液晶セル、偏光板、位相差フィルム等の光学部品に用いる場合、前述したような粘着剤層に欠損等が生じると空気等が光学部品と粘着剤層との間に入り、光学部品の光学特性の低下が生じる場合があるが、上述したような貼着部材100(本発明の貼着部材)を用いた場合、そのような問題が生じない。
【0038】
なお、貼着部材100の非剥離領域に対応する部位は、第1の剥離シート1を剥離し、被着体に貼着した後に、切断等して除去してもよい。
【0039】
非剥離領域23の幅は、第2の基材21の幅の0.1〜5.0%であるのが好ましく、0.3〜4.0%であるのがより好ましい。非剥離領域23の幅が前記下限値未満であると、第2の剥離シート2を構成する第2の基材21や後述する粘着剤層3を構成する材料等によっては、非剥離領域23において粘着剤層3と第2の剥離シート2との密着性を十分に得ることができない場合がある。また、非剥離領域23の幅が前記上限値を超えると、非剥離領域23を設けることによる効果のさらなる増大が得られない場合がある。
【0040】
第2の剥離シート2の第2の剥離剤層22が設けられている部位の、後述する粘着剤層3からの剥離力は、後述する第1の剥離シート1の粘着剤層3からの剥離力よりも大きいものであれば特に限定されないが、60〜1000mN/50mmであるのが好ましく、100〜500mN/50mmであるのがより好ましい。これにより、第1の剥離シート1を剥離した際に、いわゆる泣き別れ現象をより効果的に防止することができる。
【0041】
また、後述する第1の剥離シート1の粘着剤層3からの剥離力をF[mN/50mm]、第2の剥離シート2の第2の剥離剤層22が設けられている部位の粘着剤層3からの剥離力をF[mN/50mm]としたとき、F−F≧10[mN/50mm]の関係を満足するのが好ましく、F−F≧30[mN/50mm]の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、第1の剥離シート1を剥離した際に、いわゆる泣き別れ現象をさらに効果的に防止することができる。
【0042】
また、第2の剥離シート2の引張強度は、特に限定されないが、第1の剥離シート1の引張強度よりも大きいのが好ましい。これにより、第1の剥離シート1を剥離した際に、いわゆる泣き別れ現象をより効果的に防止することができる。
【0043】
なお、上記説明では、第2の剥離シート2が、第2の剥離シート2の面方向における、第1の剥離シート1を剥離する際の剥離方向に対して垂直な方向の端部付近に非剥離領域23を有するものとして説明したが、これに限定されず、非剥離領域23は、第2の剥離シート2の周縁部付近の一部に設けられているものであればよい。
【0044】
第1の剥離シート1は、図1に示すように、第1の基材11上に、第1の剥離剤層12が形成された構成となっている。
【0045】
第1の基材11は、第1の剥離剤層12を支持する機能を有している。
第1の基材11は、主として合成樹脂材料で構成されているのが好ましい。
【0046】
第1の基材11を構成する合成樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂等のプラスチック等を用いることができる。
【0047】
中でも、第1の基材11を構成する材料として、ポリエステル樹脂を用いた場合、耐久性に優れ、また、種々の厚さやグレードのものが入手可能である。また、第1の剥離剤層12との密着性が向上する。
【0048】
第1の基材11の平均厚さは、前述した第2の剥離シート2を構成する第2の基材21の平均厚さよりも薄いのが好ましい。特に、第1の基材11と第2の基材21とを構成する材料が同じ場合には、このような関係を満足するのが好ましい。これにより、第1の剥離シート1の粘着剤層3からの剥がし易さと、後述する第2の剥離シート2の第2の剥離剤層22が設けられている部位の粘着剤層3からの剥がし易さとの差をより顕著なものとすることができる。その結果、第1の剥離シート1を粘着剤層3から剥離した際に、いわゆる泣き別れ現象が生じるのをより効果的に防止することができる。
【0049】
第1の基材11の平均厚さは、5〜125μmであるのが好ましく、12〜100μmであるのがより好ましい。第1の基材11の厚さがこのような範囲のものであると、第1の剥離シート1は、後述する粘着剤層3からより容易に剥離することができるものとなる。その結果、第1の剥離シート1を粘着剤層3から剥離した際に、いわゆる泣き別れ現象が生じるのをより効果的に防止することができる。
【0050】
第1の剥離剤層12は、第1の剥離シート1に剥離性を付与する機能を有し、第1の基材11の全面に設けられている。
【0051】
第1の剥離剤層12を構成する材料(剥離剤)としては、特に限定されず、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、長鎖アルキル樹脂あるいは、これらの混合物等が挙げられる。前述した中でもシリコーン樹脂は、第1の剥離剤層12の材料として用いた場合、優れた剥離性を発揮する。
【0052】
第1の剥離剤層12の平均厚さは、特に限定されないが、0.02〜0.5μmであるのが好ましく、0.05〜0.2μmであるのがより好ましい。第1の剥離剤層12の平均厚さが前記下限値未満であると、後述する粘着剤層3から剥離しにくくなり、第1の剥離剤層12を構成する材料や後述する第2の剥離シート2の構成によっては、いわゆる泣き別れ現象を十分に防止するのが困難となる場合がある。一方、第1の剥離剤層12の平均厚さが前記上限値を超えると、剥離力は変わらないが、生産性やコストを考えると無駄が生じる可能性がある。
【0053】
なお、第1の剥離剤層12は、他の樹脂成分や、可塑剤、安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0054】
第1の剥離シート1の粘着剤層3からの剥離力は、前述した第2の剥離シート2の第2の剥離剤層22が設けられている部位の剥離力よりも小さい値であれば特に限定されないが、10〜200mN/50mmであるのが好ましく、20〜100mN/50mmであるのがより好ましい。これにより、第1の剥離シート1を粘着剤層3から剥離した際に、後述する粘着剤層3の一部が欠損し、第1の剥離シート1にくっついてしまう、いわゆる泣き別れ現象が生じるのをより効果的に防止することができる。
【0055】
粘着剤層3は、図1に示すように、両面が粘着性を有するものである。
粘着剤層3は、粘着剤を主剤とした粘着剤組成物で構成されている。
【0056】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、光学部品用途としては、アクリル系粘着剤を用いるのが好ましい。
【0057】
例えば、粘着剤がアクリル系粘着剤である場合、粘着性を与える主モノマー成分、接着性や凝集力を与えるコモノマー成分、架橋点や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体から構成することができる。
【0058】
主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸メトキシエチル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0059】
コモノマー成分としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0060】
官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0061】
これらの各成分を含むことにより、粘着剤組成物の粘着力、凝集力が向上する。また、このようなアクリル系樹脂は、通常、分子中に不飽和結合を有しないため、光や酸素に対する安定性の向上を図ることができる。さらに、モノマーの種類や分子量を適宜選択することにより、用途に応じた品質、特性を備える粘着剤組成物を得ることができる。
【0062】
このような粘着剤組成物には、架橋処理を施す架橋型および架橋処理を施さない非架橋型のいずれのものを用いてもよいが、架橋型のものがより好ましい。架橋型のものを用いる場合、凝集力のより優れた粘着剤層3を形成することができる。
【0063】
架橋型粘着剤組成物に用いる架橋剤としては、エポキシ系化合物、イソシアナート化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物等が挙げられる。
【0064】
また、本発明に用いられる粘着剤組成物中には、必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、安定剤、シランカップリング剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0065】
また、本発明に用いられる粘着剤組成物中には、無機微粒子、樹脂粒子等の添加剤が含まれていてもよい。粘着剤層3にこのような無機微粒子等の添加剤が含まれていると、一般に前述したような泣き別れ現象が生じやすくなる傾向があるが、本発明によれば、このような無機微粒子等の添加剤が含まれている場合であっても、泣き別れ現象を効果的に防止することができる。
【0066】
粘着剤層3の厚さは、特に限定されないが、5〜100μmであるのが好ましく、15〜50μmであるのがより好ましい。
【0067】
また、偏光板等の光学部品と貼着する場合、粘着剤層3の23℃における貯蔵弾性率G’が、0.05〜1MPaのものを用いる場合がある。このような貯蔵弾性率の粘着剤であっても、泣き別れ現象を効果的に防止することができる。
【0068】
以上説明したような貼着部材100は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0069】
まず、テープ状の第2の基材21を用意し、この第2の基材21上に、前述したような剥離剤を塗布して第2の剥離剤層22を形成する。なお、このとき、第2の基材21の幅方向の端部付近には、剥離剤を塗布せず、非剥離領域23を形成する。これにより、第2の剥離シート2が得られる。
【0070】
剥離剤を塗布する方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等の既存の方法が使用できる。
【0071】
次に、得られた第2の剥離シート2上に、前述したような粘着剤組成物を塗布し、粘着剤層3を形成する。粘着剤組成物を塗布する方法としては、前述した剥離剤と同様の方法により行うことができる。
【0072】
一方、テープ状の第1の基材11を用意し、この第1の基材11上に、前述したような剥離剤を塗布して第1の剥離剤層12を形成する。これにより、第1の剥離シート1が得られる。剥離剤を塗布する方法としては、前述した第2の剥離シート2における剥離剤の塗布方法と同様の方法を用いることができる。
【0073】
以上のようにして得られた第1の剥離シート1を、第2の剥離シート2上に形成された粘着剤層3に貼り合わせる。これにより、貼着部材100が得られる。
【0074】
なお、第1の剥離シート1の第1の剥離剤層12上に、粘着剤層3を形成し、次いで、粘着剤層3上に第2の剥離シート2を貼合することにより貼着部材100を製造してもよい。
【0075】
以上のようにして得られた貼着部材100は、光学部品を他の被着体に貼着するのに用いるのが好ましい。これにより、光学部品の光学特性を保持しつつ、好適に光学部品を貼着することができる。
【0076】
光学部品の貼着は、例えば、以下のようにして行うことができる。
貼着部材100から、第1の剥離シート1を剥がして、露出した粘着剤層を光学部品に貼着する。
【0077】
次に、第2の剥離シート2を剥離し、光学部品を他の被着体に貼着する。
このように、貼着部材100を用いて光学部品を貼着することにより、光学部品の光学特性を保持しつつ、好適に光学部品を貼着することができる。
【0078】
なお、第2の剥離シート2を剥離する際に、非剥離領域23に対応する部分を切除してもよい。
【0079】
以上、本発明の貼着部材および光学部品の貼着方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0080】
また、前述した実施形態では、貼着部材としてテープ状のものについて説明したが、本発明の貼着部材は、これに限定されない。例えば、シート状のものであれば、周縁部の一部に非剥離領域を有していてもよいし、周縁部全体に非剥離領域を有していてもよい。
【0081】
また、前述した実施形態では、粘着剤層が、1層で構成されるものとして説明したが、粘着剤層は、2層または3層以上の積層体であってもよい。粘着剤層が積層体で構成されたものである場合、例えば、第1の剥離シートを貼着する側の粘着剤層の粘着力を、第2の剥離シートを貼着する側の粘着剤層の粘着力よりも小さくすることができる。これにより、本発明の効果をより顕著なものとすることができる。
【実施例】
【0082】
次に、本発明の貼着部材の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
[1]第2の剥離シートの作製
まず、第2の基材として、幅1040mm、平均厚さ38μmのテープ状の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステル社製:商品名「ダイアホイールT100」)を用意した。
【0083】
一方、剥離剤としてのシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製:商品名「BY24−561」):90重量部と、重剥離添加剤としてのレジン成分(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製:商品名「SD−7292」):5重量部とを用意し、これらをトルエンで希釈し、固形分濃度1.3重量%の第2の剥離剤層形成液を調製した。
【0084】
得られた第2の剥離剤層形成液を、前記第2の基材上にマイヤーバー#4にて塗工し、100℃、60秒間加熱して乾燥させ、平均厚さ0.1μmの第2の剥離剤層を形成し、第2の剥離シートを作製した。なお、第2の剥離剤層形成液の塗工の際に、第2の基材の幅方向における両端部に、各々幅10mm(第2の基材の幅の1%)の第2の剥離剤層形成液の未塗工部分(非剥離領域)を形成した。
【0085】
[2]粘着剤層の形成
まず、アクリル酸ブチル:96重量部と、アクリル酸:4重量部を含む重量平均分子量145万のアクリル酸エステル共重合体:100重量部と、架橋剤としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアナート(日本ポリウレタン社製:商品名「コロネートL」):0.3重量部およびN,N,N,N,−テトラグリシジルメタキシレンジアミン0.02重量部と、シランカップリング剤としてグリシジルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:商品名「KBM−403」):0.05重量部とを混合し、この混合液を2−ブタノンで希釈して、固形分濃度18%のアクリル系粘着剤を調整した。
【0086】
得られたアクリル系粘着剤を、第2の剥離シートの第2の剥離剤層および非剥離領域上に、ナイフコーターにより塗工し、110℃、60秒間加熱して乾燥させ、平均厚さ25μmの粘着剤層を形成した。
【0087】
[3]第1の剥離シートの作製
まず、第1の基材として、幅1040mm、平均厚さ38μmのテープ状の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステル社製:商品名「ダイアホイールT100」)を用意した。
【0088】
一方、剥離剤としてのシリコーン樹脂(信越化学工業株式会社製:商品名「KS−835」):100重量部と、白金触媒(信越化学工業株式会社製:商品名「PL−50T」):1重量部とを用意し、これらをトルエンで希釈し、固形分濃度1.3重量%の第1の剥離剤層形成液を調製した。
【0089】
得られた第1の剥離剤層形成液を、前記第1の基材全面にマイヤーバー#4にて塗工し、100℃、60秒間加熱して乾燥させ、平均厚さ0.1μmの第2の剥離剤層を形成し、第1の剥離シートを作製した。
【0090】
[4]貼着部材の作製
その後、得られた第1の剥離シートを、第2の剥離シート上に形成された粘着剤層に貼合し、貼着部材を得た。
【0091】
(実施例2)
第2の剥離シートの作製において、非剥離領域の幅を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして貼着部材を作製した。
【0092】
(実施例3)
第1の基材として、その平均厚さが表1に示すものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして貼着部材を作製した。
【0093】
(実施例4)
第1の基材として、平均厚さ:100μmのポリエチレンフィルム(PE)(アイセロ化学社製:商品名「スズロンL−105」)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして貼着部材を作製した。
【0094】
(実施例5)
アクリル系粘着剤の調整において、シリコーン樹脂微粒子(東芝シリコーン社製:商品名「トスパール#145」):5重量部をさらに添加した以外は、前記実施例1と同様にして貼着部材を作製した。
【0095】
(実施例6)
アクリル系粘着剤の調整において、シリコーン樹脂微粒子(東芝シリコーン社製:商品名「トスパール#145」):25重量部をさらに添加した以外は、前記実施例1と同様にして貼着部材を作製した。
【0096】
(比較例1)
非剥離領域を形成しなかった以外は、前記実施例1と同様にして貼着部材を作製した。
【0097】
(比較例2)
非剥離領域を形成しなかった以外は、前記実施例5と同様にして貼着部材を作製した。
【0098】
(比較例3)
非剥離領域を形成しなかった以外は、前記実施例6と同様にして貼着部材を作製した。
【0099】
上記各実施例および各比較例で作製した貼着部材における、第1の剥離シートの粘着剤層からの剥離力、第2の剥離シートの第2の剥離剤層が形成されている部位の粘着剤層からの剥離力、各剥離シートの引張強度(カタログ値)、各層(基材)の平均厚さ、粘着剤層の構成材料、平均厚さ、貯蔵弾性率G’等の製造条件等を表1にまとめた。
【0100】
なお、貯蔵弾性率G’は、厚さ25μmの粘着剤を積層して、直径8mm、厚さ3mmの円柱状の試験片を作成し、動的粘弾性測定装置(レオメトリック社製、DYNAMIC ANALYZER RDAII)を用いて周波数1Hz、温度23℃の条件で、ねじり剪断法により測定した。
【0101】
【表1】

【0102】
<評価>
[泣き別れ発生評価]
各実施例および各比較例の貼着部材(長さ200m)をそれぞれ20本ずつ用意し、第1の剥離シートを速度10m/minで剥がし、泣き別れが発生した数の割合を求めた。また、同様に、速度30m/minで剥がし、泣き別れが発生した数の割合を求めた。
【0103】
なお、泣き別れが発生した割合は、泣き別れが発生した貼着部材の数をX個としたとき、X/20×100の式により求めた。
これらの結果を、表2に示した。
【0104】
【表2】

【0105】
表2から明らかなように、各実施例の貼着部材は、泣き別れを防止する効果に優れていた。これに対し、各比較例の貼着部材は、満足する結果が得られなかった。
【0106】
また、前述した評価方法において、第1の剥離シートの剥離速度を上げていったところ、本発明の貼着部材では十分に満足のいく結果が得られた。また、粘着剤層にシリコーン樹脂微粒子を含む実施例5、6のように、泣き別れが生じやすい粘着剤層であっても優れた結果が得られた。このような貼着部材を用いて光学部品を貼着することにより、光学部品を備える電子機器等の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の貼着部材をロール状に巻き取った状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した貼着部材の幅方向における縦断面図である。
【図3】本発明の貼着部材に用いられる第2の剥離シートを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0108】
100 貼着部材
1 第1の剥離シート
11 第1の基材
12 第1の剥離剤層
2 第2の剥離シート
21 第2の基材
22 第2の剥離剤層
23 非剥離領域
3 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と、
第1の剥離剤層を備える第1の剥離シートと、
第2の剥離剤層を備える第2の剥離シートとを有し、
前記第1の剥離シートは、前記第1の剥離剤層を介して、前記粘着剤層の一方の面に貼着され、
前記第2の剥離シートは、前記第2の剥離剤層を介して、前記粘着剤層の他方の面に貼着されており、
前記第2の剥離シートの前記第2の剥離剤層が設けられた部位の、前記粘着剤層からの剥離力は、前記第1の剥離シートの前記粘着剤層からの剥離力よりも大きく、
前記第2の剥離シートは、少なくとも周縁部付近の一部に、前記第2の剥離剤層が設けられていない非剥離領域を有し、
前記非剥離領域と前記粘着剤層とが接触していることを特徴とする貼着部材。
【請求項2】
貼着部材は、テープ状であって、
前記非剥離領域は、前記第2の剥離シートの幅方向の端部付近に設けられている請求項1に記載の貼着部材。
【請求項3】
前記第2の剥離シートは、第2の基材と前記第2の剥離剤層とを有し、
前記非剥離領域の幅は、前記第2の基材の幅の0.1〜5.0%である請求項1または2に記載の貼着部材。
【請求項4】
前記第1の剥離シートの前記粘着剤層からの剥離力をF[mN/50mm]、前記第2の剥離シートの前記第2の剥離剤層が設けられている部位の前記粘着剤層からの剥離力をF[mN/50mm]としたとき、F−F≧10[mN/50mm]の関係を満足する請求項1ないし3のいずれかに記載の貼着部材。
【請求項5】
光学部品を他の被着体に貼着するのに用いる請求項1ないし4のいずれかに記載の貼着部材。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の貼着部材から前記第1の剥離シートを剥がして、前記粘着剤層を光学部品に貼着した後、前記第2の剥離シートを剥離し、前記光学部品を他の被着体に貼着することを特徴とする光学部品の貼着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−39510(P2007−39510A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223430(P2005−223430)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】