説明

賦形用シート

【課題】 賦形性が良好で、且つ、賦形後にシートと型が離れやすい賦形用シートを提供すること。
【解決手段】 シート状樹脂基材(A)に、重量平均分子量が8,000〜30,000の活性エネルギー線硬化型樹脂を含有し、且つ、塗膜形成成分の平均の重量平均分子量が5,000〜20,000である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の層(B)と、重量平均分子量が50,000以上の樹脂組成物を塗膜形成成分重量を基準として3重量%以上含有する樹脂組成物の層(C)とが(A)/(B)/(C)の順で積層されていることを特徴とする賦形用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズ、映写スクリーン、建装材用エンボスシート等の賦形物の製造に好適に用いることができる賦形用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズや映写スクリーンなどに用いられる光学シートは、射出成形法、押出成形法、プレス成形法などの製造方法により製造されている。しかしながら、これらの製造方法では、大きなサイズのシートの成形が困難である、大量生産のためには数多くの金型が必要となる、等の問題があった。
【0003】
このため、紫外線硬化型樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含有する樹脂層を、ポリエチレンテレフタレート等のシート状基材に積層させたシート(賦形用シート)を用い、該シートに円筒形のレンズ型等を押し当て(押圧し)てシートの片面または両面に連続的にレンズパターンを賦形する製造方法(押圧賦形法)が知られている。ここで用いられる樹脂組成物としては、例えば、熱可塑性ポリマー、分子内に一つ以上の不飽和二重結合を有するモノマーおよび光重合開始剤を含有する、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
前記特許文献1において円筒形の型の形状を正確に転写させるには熱可塑性ポリマーとして低分子量のアクリル樹脂等を用いる必要がある。しかしながら、低分子量の樹脂を用いることにより、型と密着性が良好となりすぎ、賦形用シートから型が離れにくい(型離れしにくい)問題が生じ、生産性を悪化させる原因となっている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−128503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の解決しようとする課題は、賦形性が良好で、且つ、賦形後にシートと型が離れやすい賦形用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、以下の(1)〜(3)の知見を見出した。
(1)前記特許文献1に開示されている賦形用シートのように単一の樹脂層が積層されている賦形用シートではなく、シート状樹脂基材(A)上に柔らかい樹脂層が積層され、更に、そのやわらかい樹脂層の上に硬い樹脂層が積層されている賦形用シートは柔らかい樹脂層により賦形性が良好で、且つ、硬い樹脂層により賦形後のシートから型が離れやすい。
(2)前記柔らかい樹脂層としては、重量平均分子量が8,000〜30,000の活性エネルギー線硬化型樹脂を含有し、且つ、塗膜形成成分の全体の重量平均分子量が5,000〜20,000である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の層(B)であれば型の形状を正確に転写することができる。
(3)前記硬い樹脂層としては、重量平均分子量が50,000以上の成分を塗膜形成成分重量を基準として3重量%以上含む樹脂組成物の層(C)であれば賦形後のシートから型が離れやすい。
本発明は上記知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、シート状樹脂基材(A)に、重量平均分子量が8,000〜30,000の活性エネルギー線硬化型樹脂を含有し、且つ、塗膜形成成分の全体の重量平均分子量が5,000〜20,000である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の層(B)と、重量平均分子量が50,000以上の樹脂組成物を塗膜形成成分重量を基準として3重量%以上含有する樹脂組成物の層(C)とが(A)/(B)/(C)の順で積層されていることを特徴とする賦形用シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の賦形用シートは、微細な賦形パターンを施すことか可能で、且つ賦形後の型離れも良好なため、生産性の向上にも貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるシート状樹脂基材(A)としては、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂からなるシート状樹脂基材、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル系樹脂からなるシート状樹脂基材、ポリカーボネート樹脂からなるシート状樹脂基材のように活性エネルギー線を透過する基材であることが、これら基材の両面または片面に積層され賦形された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の樹脂層に対して活性エネルギー線を照射する際に、シートの一方の側からの照射で硬化させることが可能となることから好ましい。シート状樹脂基材の厚さは、特に限定されるものではなく、用途に応じて決定されるが、38〜500μmのものが好ましく、50〜250μmのものがより好ましい。また、シート状樹脂基材は樹脂層との密着性を向上させるために、その表面について、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー処理等の易接着性処理を施したものが好ましい。
【0011】
本発明で層(B)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は重量平均分子量が8,000〜30,000の活性エネルギー線硬化型樹脂を含有し、且つ、塗膜形成成分の全体の重量平均分子量が5,000〜20,000である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である必要がある。重量平均分子量が5,000より大きい活性エネルギー線硬化型樹脂を含有しない活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の層では流動性があるため離型後、賦形形状を保持できないので好ましくない。重量平均分子量が30,000より大きい活性エネルギー線硬化型樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の層は硬すぎて十分に賦形形状を転写できないので好ましくない。層(B)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂は重量平均分子量が10,000〜20,000の成分を含むことがより好ましい。
【0012】
尚、本発明において塗膜形成成分の重量平均分子量とは樹脂等硬化後に塗膜を形成する成分をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定して得られるものを言う。
【0013】
また、前記層(B)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の塗膜形成成分の平均の重量平均分子量が5,000より小さい活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の層は流動性があるため離型後、賦形形状を保持できないので好ましくない。塗膜形成成分の全体の重量平均分子量が20,000より大きい活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の層は硬すぎて十分に賦形形状を転写できないので好ましくない。層(B)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の塗膜形成成分の全体の重量平均分子量は6,000〜15,000が好ましく、6,500〜13,000がより好ましい。
【0014】
前記層(B)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が含有する活性エネルギー線硬化型樹脂としては、重量平均分子量が8,000〜30,000の活性エネルギー線硬化型樹脂であれば特に制限はなく、例えば、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリル系アクリレート、シリコンアクリレート等が挙げられる。中でも、粘度調整が容易で、硬化物性に優れることからポリエステル系活性エネルギー線硬化型樹脂が好ましく、不飽和ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0015】
前記不飽和ポリエステル樹脂は、活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができ、好ましい。また、分岐状不飽和ポリエステル樹脂であってもよい。
【0016】
前記不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリカルボン酸成分とポリオール成分を必須成分として用いて得られるものが挙げられる。
【0017】
前記ポリカルボン酸成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、またはその無水物;トリメリット酸、トリメチン酸、ピロメリット酸等の三官能以上のカルボン酸、またはその無水物等が挙げられる。また、炭素原子数1以上4以下の低級アルキルカルボン酸エステル類をポリカルボン酸成分として使用することもできる。これらのポリカルボン酸成分は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、マレイン酸および/またはフマール酸をポリカルボン酸成分の一部乃至全部として用いた場合には、得られるポリエステル樹脂に不飽和二重結合を導入でき、また、重合性ビニル系化合物(V)との相溶性に優れるポリエステル樹脂が得られることから、より好ましい。なお、必要により安息香酸、p−トルイック酸、p−tert−ブチル安息香酸等のモノカルボン酸を併用することもできる。
【0018】
前記ポリオール成分としても、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール 、1,4−ブテンジオール 、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等の2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコ−ル類等が挙げられる。これらのポリオール成分は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、ビスフェノール類および/またはそのアルキレンオキサイド付加物をポリオール成分の一部乃至全部として用いた場合には、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η*)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が30℃以上で、且つ、周波数1Hzにおける複素粘性率(η*)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が100℃以下に制御しやすいポリエステル樹脂が得られることから、より好ましい。
【0019】
従って、前記ポリエステル樹脂(R)としては、例えば、ポリカルボン酸成分の一部乃至全部としてマレイン酸および/またはフマール酸を用い、かつ、ポリオール成分の一部乃至全部としてビスフェノール類および/またはそのアルキレンオキサイド付加物を用いて得られるものが特に好ましい。
【0020】
なお、これらのポリカルボン酸成分とポリオール成分を用いてポリエステル樹脂を製造する際には、ジブチル錫オキシド等のエステル化触媒を適宜使用することができる。
【0021】
層(B)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂が含有する活性エネルギー線硬化型樹脂として、例えばポリエステル樹脂を用いる場合、数平均分子量5,000〜20,000のポリエステル樹脂は、例えば、前記ポリカルボン酸成分とポリオール成分と必要に応じてエステル化触媒とをフラスコに入れ混合加熱し、窒素気流下で徐々に200〜250℃の範囲で攪拌しながら4〜48時間反応させ、エステル化反応を行う方法等により調製することができる。
【0022】
本発明で層(C)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は重量平均分子量が50,000以上の樹脂を塗膜形成成分重量を基準として3重量%以上含む樹脂組成物である必要がある。重量平均分子量が50,000以上の樹脂を3重量%以下しか含有しない樹脂組成物の層は賦形温度において金型付着性が発現するため、好ましくない。層(C)を構成する樹脂組成物としては数平均分子量80,000〜300,000を含有することがより好ましい。
【0023】
また、本発明で層(C)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は重量平均分子量が50,000以上の樹脂の含有率は塗膜形成成分重量を基準として5重量%以上が好ましい。
【0024】
従って、層(C)を構成する樹脂組成物は重量平均分子量が80,000〜300,000の樹脂を塗膜形成成分重量を基準として5重量%含有する樹脂組成物がより好ましい。
【0025】
前記層(C)を構成する樹脂組成物としては、例えば、重量平均分子量が50,000以上の熱可塑性樹脂を塗膜形成成分重量を基準として3重量%以上含有する樹脂組成物や重量平均分子量が50,000以上の活性エネルギー線硬化型樹脂を塗膜形成成分重量を基準として3重量%以上含有する樹脂組成物等が挙げられる。
【0026】
前記熱可塑性樹脂性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、前記活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば、層(B)を構成するのに用いる活性エネルギー線硬化型樹脂等が挙げられる。活性エネルギー線硬化型樹脂を用いる際には、層(B)を構成するのに用いる活性エネルギー線硬化型樹脂と同じものを使用しても良いし、異なるものを使用しても良い。前記層(C)を構成する樹脂組成物としては、重量平均分子量が50,000以上の熱可塑性樹脂を塗膜形成成分重量を基準として3重量%以上含有する樹脂組成物や重量平均分子量が50,000以上の活性エネルギー線硬化型樹脂を塗膜形成成分重量を基準として3重量%以上含有する樹脂組成物が好ましい。
【0027】
前記層(B)および層(C)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が不飽和ポリエステルと重合性ビニル系化合物を含有すると硬化物性が良好であることから好ましい。前記重合性ビニル系化合物としては、例えば、各種の重合性ビニルモノマーや重合性ビニルオリゴマー、例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレート等の(メタ)アクリル系モノマー;ポリエステル(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系オリゴマーなどが挙げられる。これら重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーはそれぞれ単独で用いることができるが、通常は重合性ビニルモノマーの単独使用、重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーの併用が好ましく、なかでも重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーの併用が特に好ましい。なお、重合性ビニルオリゴマーとしては、数平均分子量が200以上2,000以下で、かつポリエステル樹脂(R)の数平均分子量(Mn)よりも小さいオリゴマーが好ましい。
【0028】
また、これら重合性ビニル系化合物(V)のなかでも、活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができることから、分子中に不飽和二重結合を2〜6個有する(メタ)アクリル系化合物であるエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール骨格にアルキレンオキサイドが付加した化合物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレートを必須成分として用いることが好ましい。
【0029】
尚、本発明において塗膜形成成分とは、活性エネルギー線硬化型樹脂、添加剤等の硬化により塗膜を形成する成分であり、塗膜を構成しない溶剤等の成分は含まない。
【0030】
本発明で用いる層(B)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物や層(C)を構成する樹脂組成物には、必要において、光重合開始剤、その他の添加剤、溶剤等を含有することもできる。このとき、層(B)及び層(C)において同じものを用いても良いし、異なるものを用いても良い。
【0031】
前記光重合開始剤としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジェフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾインエチルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル等が挙げられ、なかでも1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジェフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。光重合開始剤の使用量は、通常前記ポリエステル樹脂(R)と重合性ビニル系化合物(V)の合計(または、活性エネルギー線照射で硬化する樹脂成分)100重量部に対して10重量部以下、好ましくは0.1〜6重量部である。
【0032】
前記その他の添加剤としては、例えば、離形工程における離形性を向上させるための離形剤、顔料、染料等の着色剤、酸化防止剤、光拡散剤、熱重合防止剤等が挙げられる。
【0033】
これらその他の添加剤のなかでも、本発明で用いる層(B)を構成する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物や層(C)を構成する樹脂組成物の製造時の熱重合防止や貯蔵安定性を保つために、熱重合防止剤を配合することが望ましい。熱重合防止剤としては、特に限定されないが、代表的なものを例示すれば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、p−ベンゾキノン、フェノチアジン等が挙げられる。熱重合防止剤の使用量は、通常前記ポリエステル樹脂(R)と重合性ビニル系化合物(V)の合計(または、加熱により硬化する樹脂成分)100重量部に対して2重量部以下、好ましくは0.05〜1重量部である。
【0034】
更に、本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には離型剤を含有させることもできる。離型剤を含有させることにより賦形用シートに金型を密着させて加圧して賦形を行った後、冷却することなく離型性を向上させることができるので、冷却工程を省略することができ、賦形シートの製造効率向上に貢献する。
【0035】
前記離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固型ワックス類;フッ素系あるいはリン酸エステル系の界面活性剤;フッ素含有樹脂;シリコーン化合物等が挙げられる。中でも、シリコーン化合物が好ましい。
【0036】
前記シリコーン化合物としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン化合物、ポリエステル変性シリコーン化合物、ポリエーテル変性及びポリエステル変性シリコーン化合物等のポリエーテル変性および/またはポリエステル変性シリコーン化合物を好ましく使用することができる。
【0037】
前記ポリエーテル変性および/またはポリエステル変性シリコーン化合物としては、ポリシロキサンの末端および/または側鎖に、ポリエーテル鎖および/またはポリエステル鎖が導入された化合物等が挙げられ、ポリシロキサンにポリエーテル鎖およびポリエステル鎖以外のエポキシ基、アミノ基の如き有機基の導入が併用された共変性シリコーン化合物であっても差し支えない。また、分子中に(メタ)アクリロイル基を有するものであれば、活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができ、好ましい。
【0038】
前記ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、例えば、KF−351、KF−352、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−618、KF−6011、KF−6015、KF−6004、X−22−4272、X−22−4952、X−22−6266、X−22−3667、X−22−4741、X−22−3939A、X−22−3908A〔以上;信越化学工業(株)製〕、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−310、BYK−320、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−344、BYK−375、BYK−377、BYK−UV3510、BYK−301、BYK−307、BYK−325、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348(以上;ビックケミー社製)、SILWET L−77、SILWET L−720、SILWET L−7001、SILWET L−7002、SILWET L−7604、SILWET Y−7006、SILWET FZ−2101、SILWET FZ−2104、FZ−2105、SILWET FZ−2110、SILWET FZ−2118、SILWET FZ−2120、SILWET FZ−2122、SILWET FZ−2123、SILWET FZ−2130、SILWET FZ−2154、SILWET FZ−2161、SILWET FZ−2162、SILWET FZ−2163、SILWET FZ−2164、SILWET FZ−2166、SILWET FZ−2191、SILWET FZ−2203、SILWET FZ−2207、SILWET 2208、SILWET FZ−3736、SILWET Y−7499、SILWET FZ−3789、SF8472、BY16−004、SF8428、SH3771、SH3746、BY16−036、SH3749、SH3748、SH8400、SF8410〔以上;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製〕、L032、L051、L066〔以上;旭化成ワッカーシリコーン(株)製〕等が挙げられる。また、特に分子中に一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものとしては、例えば、BYK−UV3500、BYK−UV3570、BYK−UV3530(以上;ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0039】
また、前記ポリエステル変性シリコーン化合物としては、例えば、BYK−310、BYK−315、BYK−370等が挙げられ、また、特に分子中に一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものとしては、例えば、BYK−UV3570(ビックケミー社製)等が挙げられる。これらポリエーテル変性またはポリエステル変性シリコーン化合物(S)はそれぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
前記ポリエーテル変性またはポリエステル変性シリコーン化合物は、光学部品用途にも好適な透明性を確保できるよう、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の相溶性が維持される範囲で用いられ、その配合量としては活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の塗膜形成成分における含有率が0.1〜15重量%となる範囲が好ましく、1〜10重量%となる範囲がより好ましい。この配合量は、一般的な注型重合等で用いられるシリコーン系化合物等の離型剤の場合と比較して多量である。これは、賦形性を維持しつつ賦形前後に樹脂層が流動しない程度に粘度が高くなるように配合された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である場合、一般的な注型重合の場合に比べて離型剤のブリード性(樹脂中の低分子成分が表面ににじみ出る性質)が乏しくなるため、そのような低ブリード性条件下でも離型性を発現出来るようするためである。
【0041】
本発明の賦形用シートは、シート状樹脂基材(A)に層(B)と層(C)とが(A)/(B)/(C)の順で配置されているものである。層(B)や層(C)を積層させるには、例えば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物等の樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール等の溶剤に溶かして均一な溶液とし、各種コーターを用いてシート状樹脂基材上に流延した後、乾燥炉等で溶剤を揮発させて除去する方法、均一に混合された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物等の樹脂組成物を加熱して粘度を下げてからシート状樹脂基材上に塗布し、冷却固化させる方法等が挙げられる。これらのうち前者では、特に厚膜塗工の際に完全な溶剤除去が困難であることから、後者がより好ましい。尚、溶剤を用いて溶液とする際には固形分換算で40重量%となるように溶解するのが好ましく、50重量%以上となるように溶解するのがより好ましい。
【0042】
本発明の賦形用シートはシート状樹脂基材(A)の片面にのみ層(B)と層(C)とが(A)/(B)/(C)の順で積層されていても良いし、両面に積層されていても良い。
【0043】
前記層(B)の厚さとしては、10〜1000μmが賦形シートの薄膜化、賦形性の点から好ましく、50〜200μmがより好ましい。また、前記層(C)の厚さとしては、5〜100μmが賦形性の点から好ましく、10〜50μmがより好ましい。このとき層(B)と層(C)との合計の厚さは通常10μm〜1mmであり、好ましくは50〜500μmである。金型の最大深さの1〜5倍とするのが好ましい。また、層(B)の厚さは金型形状再現性の点から層(C)の厚さの0.5〜5倍が好ましく、50〜200μがより好ましい。
【0044】
本発明の賦形用シートは、これを賦形した後、活性エネルギー照射により硬化させることにより賦形物とすることができる。賦形用シートの賦形は、シート状樹脂基材の片面または両面に積層された賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層を賦形することにより行われる。例えば、本発明の賦形用シートを、溶剤不含の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・sとなる温度、好ましくは周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・s前後、例えば0.63×10〜1.58×10dPa・sとなる温度まで加温し、平面状の賦形金型に接触させ、押圧により賦形し、その後活性エネルギー線を照射して硬化させ、離型して光学レンズシート等の賦形物を得る方法や、前記と同様に賦形用シートを加温し、前記特許文献1やその他の文献(例えば、特開平1−159627号公報等)に示されたようなロール状の賦形金型を用いた連続押圧による賦形と離型を行い、その後活性エネルギー線を照射して硬化させて光学レンズシート等の賦形物を得る方法などが挙げられる。この際に硬化に用いる活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧または高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボン・アーク灯などの各種のものが使用できる。
【実施例】
【0045】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。例中の部は、特に記載しない限り重量基準である。
【0046】
実施例1
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物〔日本乳化剤(株)製BAP2グリコール〕812部とフマール酸272部を、ジブチル錫オキシド1.1部の存在下、215℃で8時間反応させ、分子中に不飽和二重結合を有し、数平均分子量(Mn)2,300、軟化点100℃のポリエステル樹脂(R1)を得た。
【0047】
なお、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、東ソー(株)製高速GPC装置 HLC−8220GPCと、東ソー(株)製カラム(TSKgel SuperHZ4000、SuperHZ3000、SuperHZ2000、SuperHZ1000、各1本)により、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、流速0.350ml/min.の条件で測定して得られたポリスチレン換算の数平均分子量である(以下、同様である。)。
【0048】
次いで、セパラブルフラスコに、得られたポリエステル樹脂(R1)74部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド4モル付加物ジアクリレート〔第一工業製薬株式会社製 BPP−4〕13部、側鎖ポリエーテル変性ジメチルシロキサン〔信越化学工業株式会社製 KF−615A〕9部および、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE 651〕4部を120℃にて混合し、減圧脱泡して均一な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は重量平均分子量が11785の活性エネルギー線硬化型樹脂を含有し、且つ、塗膜形成成分の平均の数平均分子量は1260、塗膜形成成分の平均の重量平均分子量は7780であった。
【0049】
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム〔東洋紡績(株)製東洋紡エステルフィルム A4300〕の片面に、得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたアプリケーターによる塗布を行い、厚さ100μmの活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層がシート状樹脂基材の片面に積層された賦形用シート(S1)を得た。
【0050】
尚、この賦形用シート(S1)の調製に用いた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の分子量分布をGPCにより測定したところ、第1表(1)のようになった。塗膜形成成分の全体の重量平均分子量は7780であった。
【0051】
また、厚さ38μmの剥離処理ポリエチレンテレフタラートフィルム〔東セロ株式会社製セパレーター離型フィルムSP−PET−03−BU〕の片面に得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたアプリケーターによる塗布を行い、厚さ50μの賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層がシート状樹脂基材の片面に積層された賦形用シート(S2)を得た。更に、得られた賦形用シート(S2)に紫外線ランプにより50mJ/cm2の紫外線を照射して賦形用シート(S3)を得た。
【0052】
得られた賦形シート(S3)の樹脂層の一部をカッターナイフで切り取った。これの分子量分布をGPCにより分析したところ、第1表(1)のような重量平均分子量分布であった。この結果より、賦形用シート(S3)の樹脂層には、50mJ/cm2の紫外線照射により、重量平均分子量が50,000以上の活性エネルギー線硬化型樹脂を塗膜形成成分の重量を基準として5.4%含有することがわかる。
【0053】
【表1】

【0054】
得られた賦形用シート(S1)と賦形用シート(S3)との樹脂層面を張り合わせた後、セパレーター離型フィルムSP−PET−03−BUを剥がし、本発明の賦形用シートを作成した。これを賦形用シート(S4)と略記する。
【0055】
80℃に加温した金属ロールに樹脂組成物層が金型側となるように賦形シート(S4)を固定し、開口部幅144μm、深さ78μmのシリンドリカル形状の溝が平行に作成されている平面金型に1200kPaの圧力、2m/minの速度で85℃に加熱したロールを用いてロール賦形、金型離型を行ったところ、樹脂が金型に付着することなく、離型可能であった。次いで紫外線ランプにより1000mJ/cmの紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に金型のパターンが転写され、硬化した賦形シート(Sc4)を得た。
【0056】
硬化した賦形シート(Sc4)は金型深さ78μmのシリンドリカル形状の溝が平行に作成されている平面金型に対して約60μの賦形形状を転写することができた。
【0057】
実施例2
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物〔日本乳化剤(株)製BA−P4U〕669部とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物〔日本乳化剤(株)製PM8701L〕495部、イソフタル酸297部、フマール酸139部を、ジブチル錫オキシド1.1部の存在下、235℃で8時間反応させ、分子中に不飽和二重結合を有し、数平均分子量(Mn)2,500、軟化点85℃のポリエステル樹脂(R2)を得た。
【0058】
次いで、セパラブルフラスコに、得られたポリエステル樹脂(R2)75部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド4モル付加物ジアクリレート〔第一工業製薬株式会社製 BPP−4〕9部、側鎖ポリエーテル変性ジメチルシロキサン〔信越化学工業株式会社製 KF−615A〕9部および、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE 651〕4部を120℃にて混合し、減圧脱泡して均一な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物重量平均分子量が13521の活性エネルギー線硬化型樹脂を含有し、且つ、塗膜形成成分の全体の数平均分子量は1540、塗膜形成成分の平均の重量平均分子量は9220であった。また、得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)は15℃、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T5)は25℃、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)は44℃であり、温度差(T4−T6)は29℃であった。
【0059】
得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とポリエチレンテレフタレートフィルム A4300とアプリケーターとを予め95℃に加温し、95℃に制御されたホットプレート上でポリエチレンテレフタレートフィルムの片面上に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をアプリケーターで塗布して、厚さ100μmの活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層がシート状樹脂基材の片面に積層された賦形用シート(S5)を得た。
【0060】
尚、この賦形用シート(S5)の調製に用いた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の重量平均分子量分布をGPCにより測定したところ、第2表(1)のようになった。塗膜形成成分の平均の重量平均分子量は9221であった。
【0061】
また、アクリル樹脂LG21〔三菱化学(株)製〕9部をTHF41部に溶解し、樹脂溶液(Sol1)を得た。樹脂溶液(Sol1)を厚さ38μmの剥離処理ポリエチレンテレフタラートフィルム〔東セロ株式会社製セパレーター離型フィルムSP−PET−03−BU〕上でアプリケーターによる塗布を行い、乾燥後、樹脂層の厚さが10μmの賦形用シート(S6)を得た。
【0062】
得られた賦形用シート(S6)の樹脂層の一部をカッターナイフで切り取った。これの重量平均分子量分布をGPCにより分析したところ、第2表(2)のような重量平均分子量分布であった。この結果より、樹脂シート(S6)には、重量平均分子量が57267の樹脂を94.9%含有する樹脂組成物の層が積層されていることがわかる。
【0063】
【表2】

【0064】
得られた賦形用シート(S5)と賦形用シート(S6)との樹脂層面を張り合わせた後、セパレーター離型フィルムSP−PET−03−BUを剥がし本発明の賦形用シートを作成した。これを賦形用シート(S7)と略記する。
【0065】
室温の金属ロールに樹脂組成物層が金型側となるように賦形シート(S7)を固定し、開口部幅144μm、深さ78μmのシリンドリカル形状の溝が平行に作成されている平面金型に1200kPaの圧力、2m/minの速度で85℃に加熱したロールを用いてロール賦形、金型離型を行ったところ、樹脂が金型に付着することなく、離型可能であった。次いで紫外線ランプにより1000mJ/cmの紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に金型のパターンが転写され、硬化した賦形シート(Sc7)が得られた。
【0066】
硬化した賦形シート(Sc7)は金型深さ78μmのシリンドリカル形状の溝が平行に作成されている平面金型に対して約40μの賦形形状を転写することができた。
【0067】
実施例3
スチレン樹脂TS−20〔大日本インキ化学工業(株)製〕9部をTHF41部に溶解し、樹脂溶液(Sol2)を得た。樹脂溶液(Sol2)を厚さ38μmの剥離処理ポリエチレンテレフタラートフィルム〔東セロ株式会社製セパレーター離型フィルムSP−PET−03−BU〕上でアプリケーターによる塗布を行い、乾燥後、樹脂層の厚さが10μmの樹脂シート(S8)を得た。
【0068】
得られた賦形用シート(S8)の樹脂層の一部をカッターナイフで切り取った。これの重量平均分子量分布をGPCにより分析したところ、第3表(1)のような重量平均分子量分布であった。この結果より、樹脂シート(S6)には、重量平均分子量が塗膜形成成分重量を基準として256156の樹脂を98.16%含有する樹脂組成物の層が積層されていることがわかる。また、この層の数平均分子量は12200であった。
【0069】
実施例2で調製した賦形用シート(S5)と賦形用シート(S8)との樹脂層面を張り合わせた後、セパレーター離型フィルムSP−PET−03−BUを剥がして、本発明の賦形用シートを作成した。これを賦形用シート(S9)と略記する。
【0070】
賦形用シート(S8)の分子量分布を以下に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
室温の金属ロールに賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層が金型側となるように賦形シート(S9)を固定し、開口部幅144μm、深さ78μmのシリンドリカル形状の溝が平行に作成されている平面金型に1200kPaの圧力、2m/minの速度で85℃に加熱したロールを用いてロール賦形、金型離型を行ったところ、樹脂が金型に付着することなく、離型可能であった。次いで紫外線ランプにより1000mJ/cmの紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に金型のパターンが転写され、硬化した賦形シート(Sc9)を得た。
【0073】
硬化した賦形シート(Sc9)は金型深さ78μmのシリンドリカル形状の溝が平行に作成されている平面金型に対して約50μの賦形形状を転写することができた。
【0074】
実施例4
【0075】
フェノキシ樹脂PKHH〔巴工業(株)製〕9部をTHF41部に溶解し、樹脂溶液(Sol3)を得た。樹脂溶液(Sol3)を厚さ38μmの剥離処理ポリエチレンテレフタラートフィルム〔東セロ株式会社製セパレーター離型フィルムSP−PET−03−BU〕上でアプリケーターによる塗布を行い、乾燥後、樹脂層の厚さが約5μのと賦形用シート(S10)を得た。
【0076】
得られた賦形用シート(S10)の樹脂層の一部をカッターナイフで切り取った。これの重量平均分子量分布をGPCにより分析したところ、第4表(1)のような重量平均分子量分布であった。この結果より、樹脂シート(S10)には、重量平均分子量が塗膜形成成分重量を基準として51016の樹脂を94.9%含有する樹脂組成物の層が積層されていることがわかる。また、この層を形成する樹脂組成物の塗膜形成成分の平均の数平均分子量は12200で、数平均分子量は5200、重量平均分子量は48400であった。
【0077】
実施例2で調製した賦形用シート(S5)と賦形用シート(S10)との樹脂層面を張り合わせた後、セパレーター離型フィルムSP−PET−03−BUを剥がして本発明の賦形用シートを作成した。これを賦形用シート(S11)と略記する。
【0078】
賦形用シート(S10)の分子量分布を以下に示す。
【0079】
【表4】

【0080】
室温の金属ロールに賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層が金型側となるように賦形シート(S11)を固定し、開口部幅144μm、深さ78μmのシリンドリカル形状の溝が平行に作成されている平面金型に1200kPaの圧力、2m/minの速度で85℃に加熱したロールを用いてロール賦形、金型離型を行ったところ、樹脂が金型に付着することなく、離型可能であった。次いで紫外線ランプにより1000mJ/cmの紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に金型のパターンが転写され、硬化した賦形シート(Sc11)を得た。
【0081】
硬化した賦形シート(Sc11)は金型深さ78μmのシリンドリカル形状の溝が平行に作成されている平面金型に対して約40μの賦形形状を転写することができた。
【0082】
比較例1
紫外線照射前の賦形シート(S1)のみを用いた以外は実施例1と同様にして、Sc4と同様の方法にて賦形シート(Sc4´)を作成したが、賦形シート(Sc4´)は金型から離型することができず、所望の賦形シートを得ることはできなかった。
【0083】
比較例2
紫外線照射前の賦形シート(S5)のみを用いた以外は実施例1と同様にして、Sc4と同様の方法にて賦形シート(Sc5´)を作成したが、賦形シート(Sc5´)は金型から離型することができず、所望の賦形シートを得ることはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状樹脂基材(A)に、重量平均分子量が8,000〜30,000の活性エネルギー線硬化型樹脂を含有し、且つ、塗膜形成成分の全体の重量平均分子量が5,000〜20,000である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の層(B)と、重量平均分子量が50,000以上の樹脂を塗膜形成成分重量を基準として3重量%以上含有する樹脂組成物の層(C)とが(A)/(B)/(C)の順で積層されていることを特徴とする賦形用シート。
【請求項2】
前記シート状樹脂基材(A)がシート状ポリエチレンテレフタレート樹脂基材、シート状アクリル樹脂基材およびシート状ポリカーボネート樹脂基材からなる群から選ばれる1種以上のシート状樹脂基材である請求項1記載の賦形用シート。
【請求項3】
前記層(B)が重量平均分子量が10,000〜20,000の活性エネルギー線硬化型樹脂を含有し、且つ、塗膜形成成分の全体の重量平均分子量が6,000〜15,000である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の層であり、前記層(C)が重量平均分子量が50,000以上の樹脂を塗膜形成成分重量を基準として5重量%以上含有する樹脂組成物の層である請求項1記載の賦形用シート。
【請求項4】
前記層(B)を構成する樹脂組成物が不飽和ポリエステルと重合性ビニル系化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である請求項1記載の賦形用シート。
【請求項5】
重合性ビニル系化合物が不飽和二重結合を2〜6個有する(メタ)アクリル系化合物である請求項4記載の賦形用シート。
【請求項6】
前記層(B)が厚さ10〜1000μmの層で、前記層(C)が厚さ5〜100μmの層である請求項1〜5のいずれか1項記載の賦形用シート。

【公開番号】特開2007−144937(P2007−144937A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345629(P2005−345629)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】