説明

質量分析方法および質量分析システム

質量分析のシステムおよび方法が提供される。第1のイオン蓄積装置内および第2のイオン蓄積装置内に、イオン源からのイオンが蓄積される。第1の分析期間中に分析するために、第1の射出期間中、第1のイオン蓄積装置から第1の質量分析装置へイオンが射出される。第2の射出期間中、第2のイオン蓄積装置から第2の質量分析装置へイオンが射出される。イオン蓄積装置は、第1のイオン蓄積装置のイオン輸送開口が第2のイオン蓄積装置のイオン輸送開口と連通するように、直列に接続される。第1の分析期間と第2の射出期間は、少なくとも部分的に重なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析方法および同時に動作させるべき2つ以上の質量分析器を備える質量分析計(マススペクトロメーター)に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の独立した質量分析段を有する質量分析計を使用すると、普通なら不可避でかつ非現実的な要件を単一の分析器に課すことなく、高分解能の質量スペクトルを測定する際の処理能力、分析速度、および質量範囲(マスレンジ)を高めることができる。この要件は、APCI、API、ESI、MALDIのような大気圧イオン源、ならびにEI、CI、v−MALDI、レーザ脱離、SIMS、および多くの他の真空イオン源を含めて、多くの異なる種類のイオン源に当てはまる。並列分析は、分析のデューティーサイクルが低い場合、すなわち分析器の充填時間と分析時間の比が1よりはるかに小さい場合に、特に効果的である。無駄になるサンプル材料をできるだけ少なくするために、単一のイオン源によって生成されたイオンを、複数の段を使用して分析することができると有利である。
【0003】
質量分析器の順次動作により、分析の特定性または質量範囲を増大させることができるが、処理能力は、その順序で第1の質量分析器の容量によって制限される。対照的に、質量分析器の並列動作により、分析の処理能力および速度が高まる。
【0004】
特許文献1は、1列の諸並列質量分析計を使用してプロテオーム分析のサンプル処理能力を高めることに関する。柔軟性をもたせるために、これらの質量分析計は構成要素を共有せず、質量分析計はそれぞれ個別の発生源からイオンを受け取る。したがって、これらの質量分析計は、異なる種類のものとすることができる。
【0005】
質量分析段相互間で分析構成要素を共有すると、この適応性は犠牲にするが、効率を向上させかつコストを削減することができる。こうした柔軟性の損失の一例は、特許文献2であり、特許文献2は、単一のイオン源と並列の1列のRFイオントラップについて説明している。このイオン源は、単独のイオン源から1つ以上のトラップに充填するため、または複数のトラップに一度に充填するために使用される。この構成では、発生源およびトラップを同じ真空環境内に収容することができるが、トラップは並列で動作するため、デューティーサイクルが低いという問題には対処しない。
【0006】
特許文献3に示されるように、順次接続された質量分析器の並列動作により、処理能力を改善することができるが、性能は依然として、チェーン内で最も遅い検出器によって制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開公報第2002/068366号
【特許文献2】米国特許公報第6,762,406号
【特許文献3】国際公開公報第2005/031290号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、既存の方法および装置では、並列の質量分析器を使用して、単一のイオン源から効率的に質量スペクトルを提供することができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この背景に対して、本発明は、第1の態様で、イオン源内でイオンを生成するステップと、第1のイオン蓄積時間中、少なくとも1つのイオン輸送開口を有する第1のイオン蓄積装置内にイオン源からのイオンを蓄積するステップと、第1の分析期間中に分析するために、第1の射出期間中、第1のイオン蓄積装置から第1の質量分析装置へイオンを射出するステップと、第2のイオン蓄積時間中、少なくとも1つのイオン輸送開口を有する第2のイオン蓄積装置内にイオン源からのイオンを蓄積するステップと、第2の分析期間中に分析するために、第2の射出期間中、第2のイオン蓄積装置から第2の質量分析装置へイオンを射出するステップと、を含む質量分析の方法を提供する。これらのイオン蓄積装置は、第1および第2のイオン蓄積装置間のイオン伝達を可能にするために、第1のイオン蓄積装置のイオン輸送開口が第2のイオン蓄積装置のイオン輸送開口と連通するように、直列に接続される。さらに、第1の分析期間と第2の射出期間は、少なくとも部分的に重なる。
【0010】
イオン蓄積装置は、これらのイオン蓄積装置のうちの1つ、伝導イオン蓄積装置がイオン源からのイオンを受け取り、これらのイオンが別のイオン蓄積装置を通過しないように、接続される。対照的に、イオンは、この伝導イオン蓄積装置を通って、イオン源から他のイオン蓄積装置へ流れる。
【0011】
次いで任意選択で、この第1の態様によれば、第1のイオン蓄積装置のイオン輸送開口はイオン入口開口であり、また第2のイオン蓄積装置のイオン輸送開口はイオン出口開口であり、したがって第1のイオン蓄積時間より前に、イオンは、第2のイオン蓄積装置を通過することによって第1のイオン蓄積装置に入る。次いで、第2のイオン蓄積時間より前に、イオンは、第1のイオン蓄積装置を通過することなく第2のイオン蓄積装置に入る。
【0012】
別法として、この第1の態様によれば、第1のイオン蓄積装置のイオン輸送開口はイオン出口開口であり、また第2のイオン蓄積装置のイオン輸送開口はイオン入口開口であり、したがって第1のイオン蓄積時間より前に、イオンは、第2のイオン蓄積装置を通過することなく第1のイオン蓄積装置に入る。次いで、第2のイオン蓄積時間より前に、イオンは、第1のイオン蓄積装置を通過することによって第2のイオン蓄積装置に入る。
【0013】
任意選択で、第1および第2のイオン蓄積時間は重ならない。
【0014】
第2の態様では、本発明は、イオン源内でイオンを生成するステップと、第1のイオン蓄積時間中、イオン蓄積装置の第1の蓄積容積内にイオン源からのイオンを蓄積するステップと、第1の分析期間中に分析するために、第1の射出期間中、第1のイオン蓄積装置から第1の質量分析装置へイオンを射出するステップと、第2のイオン蓄積時間中、イオン蓄積装置の第2の蓄積容積内にイオン源からのイオンを蓄積するステップであって、第2の蓄積容積が、前記第1の蓄積容積に少なくとも部分的に重なるステップと、第2の分析期間中に分析するために、第2の射出期間中、イオン蓄積装置から第2の質量分析装置へイオンを射出するステップと、を含み、第1の分析期間と第2の射出期間が、少なくとも部分的に重なる、質量分析の方法を提供する。
【0015】
本発明のこの第2の態様によれば、任意選択で、イオン蓄積装置は、前記第1の蓄積容積および前記第2の蓄積容積への共通の入口開口を備え、イオン源からのイオンは、前記共通の入口開口を通ってイオン蓄積装置に入る。追加でまたは別法として、第1の質量分析装置へイオンを射出するステップおよび第2の質量分析装置へイオンを射出するステップは、イオン蓄積装置から単一のスリットを通じてイオンを射出するステップを含む。
【0016】
イオン蓄積装置の第1の蓄積容積とイオン蓄積装置の第2の蓄積容積は、完全に重なることが好ましい。複数のトラッピング場を使用できるので、必要というわけではないが、単一のトラッピング場も可能である。しかしそのような場合、第1の質量分析装置に対するイオンの蓄積容積が第2の質量分析装置に対するイオンの蓄積容積に少なくとも部分的に重なるように、イオンは規定のトラッピング容積内で保持され、それによって単一のイオン蓄積装置を規定する。
【0017】
本発明に係る全ての態様によれば、イオン源は、複数の質量分析器とともに効率的に使用することができる。並列に動作可能な複数のイオン源およびイオン蓄積装置を有する質量分析計より処理能力を低減することなく、2つ以上の質量分析装置間で共有される1つのイオン源およびイオン蓄積装置の使用を実現すると有利である。
【0018】
具体的には、これは、質量分析器によってイオンのサンプルを分析するのに必要な時間が、そのような分析に十分な数のイオンを蓄積するのに必要な時間より長いという認識によって実現される。したがって、1つの質量分析器にイオンを供給しながら別の質量分析器が分析を実行するイオン蓄積装置構成を使用することによって、効率が上がる。このようにして、並列の質量分析器は、単一のイオン源によって生成されたイオンを効率的に分析することができ、一方、この質量分析計を既存の技法より適応性があるものにすることができる。例えば、質量分析器は、異なる種類のものとすることができ、またはMSn実験用の装置の一部を形成することができる。さらに、イオン蓄積装置は、例えば、温度または圧力条件に関する、発生源から質量分析器への段階的な条件の変化をもたらすことができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、まず、第1のイオン蓄積期間中に、イオン蓄積装置内にイオンが蓄積される。次いでイオンは、第1のイオン射出期間中に、イオン蓄積装置から第1の質量分析装置へ射出される。質量分析装置は、第1の質量分析期間中に、射出されたイオンの分析を実行する。第2のイオン蓄積期間中に、イオン蓄積装置内にイオンが蓄積される。次いでイオンは、第2のイオン射出期間中に、イオン蓄積装置から第2の質量分析装置へ射出される。この第2のイオン射出期間は、第1の質量分析期間に少なくとも部分的に重なる。第1の分析期間と第2の射出期間は、少なくとも10%、任意選択で少なくとも25%、50%、または75%重なることが好ましい。好ましい実施形態では、第1の分析期間は、第2の分析期間が開始する前に始まり、第1の分析期間は、第2の分析期間が終了した後に終了する。
【0020】
任意選択で、第1の分析期間と第2の分析期間は、少なくとも部分的に重なる。この場合、第1の質量分析装置と第2の質量分析装置は、同時に分析を実行する。第2のイオン蓄積時間と第1の質量分析時間は、少なくとも部分的に重なると有利である。これにより、複数の質量分析装置の動作効率を上げることができる。
【0021】
任意選択で、イオン源は大気圧イオン源である。この場合、イオンを蓄積することで、質量分析のための減圧にイオンストリームを適合できるという追加の利点をもたらす。
【0022】
別法として、イオン源は、APCI、API、ESI、MALDI、EI、CI、レーザ脱離、SIMS EI/CIイオン源、または真空MALDIイオン源である。
【0023】
代替実施形態では、第1の質量分析装置へイオンを射出するステップは、イオン蓄積装置からイオンを射出するステップと、射出されたイオンを第1の質量分析装置内へ偏向させるステップとを含むことが好ましい。追加でまたは別法として、第2の質量分析装置へイオンを射出するステップは、イオン蓄積装置からイオンを射出するステップと、射出されたイオンを第2の質量分析装置内へ偏向させるステップとを含むことができる。第1の質量分析装置へイオンを射出するステップおよび第2の質量分析装置へイオンを射出するステップは、イオン蓄積装置から単一の開口部を通じてイオンを射出するステップを含むと有利である。
【0024】
第1の質量分析装置は、オービトラップ(Orbitrap)質量分析器であることが好ましいが、別法として、第1の質量分析装置は、RFイオントラップ、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器、多重反射またはマルチセクタ飛行時間質量分析器とすることもできる。好ましい実施形態では、第2の質量分析装置は、第1の質量分析装置と同じ種類のものである。別法として、第2の質量分析装置は、第1の質量分析装置とは異なる種類のものである。
【0025】
この方法は、任意選択で、N回のそれぞれの分析期間中に分析するために、N回のそれぞれの射出期間中、イオン蓄積装置からN個の質量分析装置へイオンを射出するステップに一般化することができる。Nは任意の正の整数とすることができ、N≧2とすることができる。これらの質量分析装置は順に配置され、したがって、1からNの番号を付けることができる。次いで、1≦n≦Nの場合、n回目の分析期間と(n+1)回目の射出期間は、少なくとも部分的に重なる。
【0026】
例えば、N=4の場合、イオンパケットはイオン蓄積装置から、第1の射出期間中は第1の質量分析装置へ、第2の射出期間中は第2の質量分析装置へ、第3の射出期間中は第3の質量分析装置へ、第4の射出期間中は第4の質量分析装置へ射出される。また、各質量分析器は、それぞれの分析期間を有する。
【0027】
前述のように、第1の分析期間と第2の射出期間は、少なくとも部分的に重なる。さらに、第2の分析期間と第3の射出期間、および第3の分析期間と第4の射出期間も、部分的に重なる。任意選択で、第1の分析期間と第3の射出期間も重ねることができる。
【0028】
任意選択で、この方法は、予備のイオン蓄積装置内にイオン源からのイオンを蓄積するステップと、予備のイオン蓄積装置内に蓄積されたイオンを分析するステップとをさらに含むことができる。したがって第1の分析期間および第2の分析期間中に実行される分析は、予備のイオン蓄積装置内に蓄積されたイオンを分析するステップの結果に基づいたものとすることができる。
【0029】
予備のイオン蓄積装置は、上記特許文献3に記載の装置と類似の形で、質量分析計として動作させることができ、この予備のイオン蓄積は、検出器を備える。予備のイオン蓄積装置は、第1のイオン蓄積装置と同じであることが好ましい。しかし任意選択で、予備のイオン蓄積装置は、異なるイオン蓄積装置とすることもでき、その場合、予備のイオン蓄積装置は、イオンのうちの少なくとも一部を別のイオン蓄積装置へ射出する。別のイオン蓄積装置は、本発明に係る第1の態様の第1のイオン蓄積装置もしくは第2のイオン蓄積装置、本発明に係る第2の態様のイオン蓄積装置、または異なるイオン蓄積装置とすることができる。
【0030】
予備のイオン蓄積装置を使用する際、この予備のイオン蓄積装置に関連する検出器、および追加でまたは別法として複数の質量分析装置に関連する検出器のいずれかを使用して、初期質量スペクトル情報を生成することができる。この初期質量スペクトル情報は、例えば、国際公開公報第2004/068523号に記載のAGC情報、または上記特許文献3に記載のプレビュー情報を含む情報を生成するために、後の走査で使用することができる。
【0031】
また、本発明は、イオン源内でイオンを生成するステップと、複数の質量分析装置のそれぞれに対して以下のステップを実行するステップとを含む質量分析の方法に見ることができる。これらのステップは、それぞれの蓄積期間中、イオン蓄積装置内にイオン源からのイオンを蓄積するステップと、イオン蓄積装置から、それぞれの分析期間中にそれぞれの射出されたイオンを分析するように構成されたそれぞれの質量分析装置へイオンを射出するステップとである。複数の質量分析装置を含む質量分析装置の数は、実質上、分析期間と代表蓄積期間の比以上であり、この代表蓄積期間は、複数の質量分析装置のそれぞれに対するそれぞれの蓄積期間のうち少なくとも1つに基づく。本発明の第1および第2の態様に共通の任意選択で、好ましく、有利で、かつさらなる特徴を、この方法および関連する装置にさらに組み込むことができる。
【0032】
任意選択で、代表蓄積期間は、複数の質量分析装置の平均蓄積期間である。別法として、代表蓄積期間は、複数の質量分析装置の最短蓄積期間、または複数の質量分析装置の最長蓄積期間である。別法として、代表蓄積期間は、複数の質量分析装置のうち少なくともいくつかに対する各蓄積期間の何らかの他の関数とすることができる。
【0033】
また、本発明は、イオン源と、第1の分析期間中にイオンを分析するように構成された第1の質量分析装置と、第2の分析期間中にイオンを分析するように構成された第2の質量分析装置と、イオンを蓄積するように構成されかつ少なくとも1つのイオン輸送開口を有する第1のイオン蓄積装置と、イオンを蓄積するように構成されかつ少なくとも1つのイオン輸送開口を有する第2のイオン蓄積装置であって、第1および第2のイオン蓄積装置間のイオンの伝達を可能にするために、第1のイオン蓄積装置のイオン輸送開口が第2のイオン蓄積装置のイオン輸送開口と連通するように、第1のイオン蓄積装置と直列に接続された、第2のイオン蓄積装置と、第1のイオン蓄積装置が、第1の蓄積時間中に第1のイオン蓄積装置内にイオンを蓄積し、かつ第1の射出期間中に前記イオンを第1の質量分析装置へ射出するのを制御するように構成されたシステム制御装置であって、第2のイオン蓄積装置が、第2の蓄積時間中に第2のイオン蓄積装置内にイオン源からのイオンを蓄積し、かつ第1の分析期間に少なくとも部分的に重なる第2の射出期間中に前記イオンを第2の質量分析装置へ射出するのを制御するようにさらに構成された、システム制御装置と、を備える質量分析システムにある。
【0034】
別法として、本発明は、イオン源と、第1の分析期間中にイオンを分析するように構成された第1の質量分析装置と、第2の分析期間中にイオンを分析するように構成された第2の質量分析装置と、第1の蓄積容積内にイオンを蓄積するように構成され、かつ第2の蓄積容積内にイオンを蓄積するようにさらに構成されたイオン蓄積装置であって、第2の蓄積容積が前記第1の蓄積容積に少なくとも部分的に重なるイオン蓄積装置と、イオン蓄積装置が、第1の蓄積時間中に第1の蓄積容積内にイオン源からのイオンを蓄積し、かつ第1の射出期間中に前記イオンを第1の質量分析装置へ射出するのを制御するように構成されたシステム制御装置であって、イオン蓄積装置が、第2の蓄積時間中に第2の蓄積容積内にイオン源からのイオンを蓄積し、かつ第1の分析期間に少なくとも部分的に重なる第2の射出期間中に前記イオンを第2の質量分析装置へ射出するのを制御するようにさらに構成された、システム制御装置と、を備える質量分析システムに見ることができる。
【0035】
どちらの形式の質量分析システムでも好ましい実施形態では、第1の質量分析装置と第2の質量分析装置は、共通の筐体を共有する。任意選択で、第1の質量分析装置と第2の質量分析装置は、共通のポンピング構成を共有することができる。
【0036】
任意選択で、システム制御装置は、複数の質量分析装置間でイオンを分配しかつ複数の質量分析装置間で分析作業をスケジュールするように構成される。分析作業は、測定を含むことができる。このシステム制御装置は、事前定義された条件に従って動作するスケジューラを含むことができる。別法として、システム制御装置は、イオンストリームおよび測定データに応じてシステムの利用を最適化する手段を備えることができる。これには、質量分析装置間の事象のスケジューリング、ならびに生成イオンの発生、およびイオン蓄積装置を含む別の検出器への生成イオンの分配を含むことができる。好ましい動作形態では、システムは、例えば、所望の親イオン、関心のない親イオン、中性損失質量のようなユーザ定義の制約、および期待もしくは検出されるクロマトグラフピーク幅または既に検出されたイオン間の関係のような方法ベースの制約に基づいて、最大イオン利用および情報出力の最良の形態を自動的に選択する。
【0037】
本発明は、様々な方法で実施することができ、そのうちの1つについて、例示のみを目的として、添付の図面を参照して次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による質量分析計の第1の実施形態を示す図である。
【図2】改善されたポンピングおよびトラッピング構成を有する図1の質量分析計の一部を示す図である。
【図3】さらに改善されたポンピングおよびトラッピング構成を有する、図2に示す質量分析計の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1に、本発明に係る質量分析計を示す。質量分析計は、イオン源10と、予備のイオン蓄積装置15と、第1のイオン蓄積装置20と、第1の質量分析装置30と、第2のイオン蓄積装置40と、第2の質量分析装置50と、第3のイオン蓄積装置60と、第3の質量分析装置70とを備える。米国特許公報第5,886,346号に記載のように、これらの質量分析装置はそれぞれ、オービトラップ質量分析器である。予備のイオン蓄積装置15は、イオントラップである。
【0040】
イオンは、イオン源10で生成され、このイオン源10から予備のイオン蓄積装置15へ射出され、かつそこから第1のイオン蓄積装置20へ射出される。第1のイオン蓄積装置20は、第1の蓄積期間中に第1の質量分析装置30によって分析すべきイオンを蓄積するように構成される。イオン蓄積装置20は、蓄積されたイオンが第1の質量分析装置30による分析に適するように、適切な圧力および温度を維持する。次いで第1のイオン蓄積装置20は、第1の射出期間中に、蓄積されたイオンを第1の質量分析装置30内へ射出する。
【0041】
次いで、第2のイオン蓄積装置40は、第2の蓄積期間中に第2の質量分析装置50によって分析するためのイオンを蓄積する。これらのイオンは、第1のイオン蓄積装置20内に蓄積されずに第1のイオン蓄積装置20の中を流れることが好ましいが、初めにこれらのイオンを第1のイオン蓄積装置20によって蓄積することもできる。第1の質量分析装置30は、第1の分析期間中に、射出されたイオンの何らかの分析を実行する。
【0042】
第2のイオン蓄積装置40は、第1のイオン蓄積装置20の出口開口から射出されたイオンを受け取る。図示のように、第2のイオン蓄積装置40は、第2の質量分析装置50によって分析すべきイオンを蓄積し、かつ、蓄積されたイオンが第2の質量分析装置50による分析に適するように、適切な圧力および温度を維持する。次いで第2のイオン蓄積装置40は、第2の射出期間中に、蓄積されたイオンを第2の質量分析装置50内へ射出する。第2の射出期間は、第1の分析期間に少なくとも部分的に重なる。したがって、第1の質量分析装置30が分析を実行している間に、第2の質量分析装置50にイオンが充填されている。これにより、効率を上げて質量分析計を動作させることができる。また、第2の蓄積期間も、第1の分析期間に重ねることができる。
【0043】
第3のイオン蓄積装置60は、第3の質量分析装置70のためのイオンを受け取る。第2の質量分析装置50は、第2の分析期間中に、射出されたイオンの何らかの分析を実行する。
【0044】
第3のイオン蓄積装置60は、第2のイオン蓄積装置40の出口開口から伝導されたイオンを受け取り、かつこれらのイオンを蓄積する。この場合も、これらのイオンは、第1の蓄積装置20および第2の蓄積装置40の中を蓄積されずに流れることが好ましいが、初めにこれらのイオンを第1の蓄積装置20および/または第2の蓄積装置40によって蓄積することもできる。第3のイオン蓄積装置60は、蓄積されたイオンが第3の質量分析装置70による分析に適するように、適切な圧力および温度を維持する。次いで第3のイオン蓄積装置60は、第3の射出期間中に、蓄積されたイオンを第3の質量分析装置70内へ射出する。第3の質量分析装置70は、第3の分析期間中に、射出されたイオンの何らかの分析を実行する。
【0045】
図1に示す構成は、別の好ましい形態で使用することもできる。イオンは、例えば、イオン源10から入ってくるイオンストリームの強度を求めるために、イオントラップ15内で処理され、検出される。
【0046】
最も簡単明瞭な実施形態では、イオンは、前述のように、異なる検出器に順に次々と分配される。検出器の最善の数は、この場合、総検出時間と比較したイオン蓄積のための時間およびオーバヘッドによって決定される。
【0047】
より精巧な実装形態では、全質量走査後に、先行する走査から決定された前駆イオンをイオントラップ15内で選択することができ、イオントラップ15内、または好ましくはイオントラップの下流の次のイオン修正装置内で、生成イオンを形成することができる。次いでこれらの生成イオンは、次の空いた質量分析装置内で検出される。
【0048】
それとも、イオントラップ15からの前段走査を、データ依存情報、または検出器のうちの1つからの完全なデータセット、もしくは検出器のうちの1つからの「プレビュー」データセットに使用することができる。
【0049】
代替動作形態では、第2の蓄積装置40に最初に充填し、第2の質量分析装置50を最初に動作させることもできる。第2の質量分析装置50が分析を実行している間、第1のイオン蓄積装置20に充填することができ、したがって、第1の蓄積期間と第2の質量分析期間が少なくとも部分的に重なる。別法として、第3の蓄積装置60に初めに充填することができ、第2の蓄積期間と第3の質量分析期間を少なくとも部分的に重ねることができる。
【0050】
単一のイオン蓄積装置を使用することによって、さらなる改善を加えることができる。単一のイオン蓄積装置は、異なる方法で実施することができる。図2に、図1の質量分析計の一部を示す。図2では、質量分析計は、単一のイオン蓄積装置100と、4つの質量分析装置110、120、130、140とを有する。
【0051】
イオン蓄積装置100にはガスが充填され、異なる方向にイオンを抽出することが可能である。イオン蓄積装置100は、切換可能なRF電源、例えば、国際公開公報第05124821号に記載の電源と類似の電源によって電力を供給される。
【0052】
単一のイオン蓄積装置を複数の質量分析器とともに使用することによって、図1に示す実施形態と比べたとき、著しいコストの節減が得られると有利である。イオン蓄積装置100は、蓄積されたイオンが質量分析装置110、120、130、および140のそれぞれによる分析に適するように、適切な圧力および温度を維持する。イオン蓄積装置100は、各質量分析装置内へ一度に1つずつ、イオンを射出する。十分なイオンが、質量分析装置、例えば、質量分析装置110内へ射出された後、この質量分析装置は、射出されたイオンの分析を始める。この例を続けて、質量分析装置110が分析を実行している間に、イオン蓄積装置100は、質量分析装置120内へイオンを射出する。この手順は、各質量分析装置に対して続けられる。
【0053】
各質量分析装置で高分解能のスペクトルを取得するには、通常、200〜1000ミリ秒を必要とし、一方、イオン蓄積装置内のイオン捕獲は、通常、5〜10ミリ秒で行うことができる(ただしイオンビームの強度が低い場合、100ミリ秒の可能性もある)。また、各質量分析装置内へイオンを射出するのに要する時間は、1ミリ秒以下である。したがって、少なくとも1つの他の質量分析装置が前に射出されたイオンに関する分析を実行している間に、イオン蓄積装置100が1つの質量分析装置内へイオンを射出するのに十分な時間がある。この手順により、質量分析計の効率が著しく高まる。
【0054】
しかし、この構成を使用して単一のイオン蓄積装置から複数の質量分析装置内へイオンを射出すると、ガスのキャリーオーバーが増大する可能性がある。したがって、ガスのキャリーオーバーを確実に最小限にするために、質量分析装置に対するポンピング要件を高めなければならない。さらに、各質量分析装置は、イオンビームをその入口に集束させるための独自のイオン光学系構成を必要とする。
【0055】
図3に、これらの問題に対処する、図2に示す質量分析計の一部の変形例を示す。この質量分析計は、イオン蓄積装置200と、イオン光学系210と、質量分析装置110、120、130、および140とを備える。
【0056】
図2に示すイオン蓄積装置100は、各質量分析装置に対して1つずつ、複数のスロットを備える。対照的に、イオン蓄積装置200は、単一のスロット205だけを備える。イオンは、ビームの状態で、イオン蓄積装置200からスロット205を通って射出される。射出されたイオンを質量分析計220のUHV部分内へ偏向させるためのイオン光学系210が設けられる。
【0057】
質量分析計のUHV部分は、4つの質量分析装置110、120、130、および140を備える。イオン光学系210は、イオン蓄積装置200から射出されたイオンビームを、一度に1つの質量分析装置へ向ける。さらに、イオンビームを各質量分析装置上に集束できるように、イオン光学系210のパラメータを変更して、イオンビームの焦点を変更することができる。そのような焦点距離の変更は、イオン光学系210および/またはイオン蓄積装置200が同心状でない弧をたどる場合に実現することができる。
【0058】
イオン蓄積装置を複数の並列質量分析装置とともに使用することによって、さらなる効率の向上が可能である。分析器および構造の種類に応じて、分析器は、電源、加熱または冷却、ポンピングなどを共有することができる。例えば、質量分析計内のオービトラップ質量分析装置には、同じ超安定中央電極電源によって電力を供給することができる。この結果、より小型の構成が得られる。それにもかかわらず、ランピング/パルシングおよび前置増幅電子機器は、各オービトラップに対して個別のものとするべきである。検出中に、1つのオービトラップ上で中央電極をパルシングする結果、他のオービトラップ上で電圧低下が生じた場合でも、この摂動の持続時間は1〜2ミリ秒未満しかなく、分析の総持続時間と比べると無視できるものである。この場合、ピークの広がりは、基線に近接するレベルでのみ生じるはずであり、したがって、質量スペクトルの外観には影響を与えないはずである。さらに、質量分析装置は、共通の入口、共通の冷却器、および共通の射出器のうちの1つ以上を共有することができる。
【0059】
また、各質量分析装置に対する検出システムは、例えば、並列処理を使用することによって、スケールメリットから利益を得ることができる。別法として、例えば、1つのオービトラップからの質量スペクトルを1から2MHzの範囲に変え、第2のオービトラップからの質量スペクトルを2から3MHzの範囲に変え、第3のオービトラップからの質量スペクトルを3から4MHzの範囲に変えることによって、周波数混合を利用することができる。次いで、複数の質量分析装置からの組み合わせた信号が、単一の高速アナログ−デジタル変換器(例えば、16ビット、20MHz)によってデジタル化される。
【0060】
特定の実施形態について本明細書にて説明してきたが、様々な変形および置換えが当業者には企図されるであろう。例えば、オービトラップの代わりに、任意の他のパルス質量分析装置、例えば、FT ICR、RFイオントラップ、多重反射またはマルチセクタ飛行時間分析器、および他の種類の静電トラップを使用できることが、当業者には理解されるであろう。さらに、複数の質量分析装置は、2種類以上の質量分析装置を含むこともできる。この構成により、これらの質量分析装置が並列で使用されるとき、異なる質量分析装置の利点を組み合わせることができる。
【0061】
使用される質量分析装置の種類にかかわらず、本明細書に記載のイオン蓄積装置が使用されるとき、複数の質量分析装置間で構成要素を共有できることも、当業者には理解されるであろう。例えば、電子、機械、真空の基盤を共有することができる。多くの場合、複数の質量分析装置を1つの構造内に組み込むことができる。したがって、この一体型の構造の異なる部分内へ、イオン蓄積装置からイオンを射出することができる。例えば、FT ICRの場合、これは、磁界内の同じ軸に沿っていくつかの独立したセルを有する分割型ICRセルとすることができる。多重反射システムでは、これは、異なる検出器へ入るように異なる角度で伝播する弾道上のイオンの射出とすることができる。
【0062】
上記の実施形態の任意の組合せも可能であることが、当業者には理解されるであろう。例えば、質量分析計は、それぞれイオンを2つの反対方向にパルシングする2つの連続したイオン蓄積装置を備えることができ、各方向に、2つの質量分析装置間でビームを切り換えるための偏向器を有する。そのような構成により、8つの質量分析装置の並列動作が潜在的に可能になるはずである。計器のイオン蓄積装置部分からのガス漏れは4倍に増大するが、関連するイオン光学系の全要素のポンピング伝導度をより良好にするには、ポンピング要件を約2倍にするだけでよいはずである。さらに、どちらのイオン蓄積装置にも、同じRF電源によって電力を供給することができる。
【0063】
さらに、複数の質量分析装置を異なる種類のものとする利点が、当業者には理解されるであろう。例えば、異なる種類には、軌道トラップ、多重反射トラップ、飛行時間検出器、FT/MS検出器、イオントラップなどを含むことができる。
【0064】
本発明による複数の質量分析装置の動作をスケジュールする代替方法には、以下を含むことができる。これらの質量分析装置は、「ラウンドロビン」手法に従って順番に動作させて、全質量スペクトルを生成することができる。代わりに、これらの質量分析装置は、自動利得制御で順番に動作させて、全質量スペクトルを生成することもできる。
【0065】
可能な代替実施形態では、異なる質量分析装置には、異なる役割を割り当てることができる。この一例では、質量分析器の種類は、実現できる質量範囲および質量分解能に従って選択される。例えば、MS−MS実験では、特定の実験に対する第1の質量選択段は、特に質量の大きなイオンを選択するように動作できる質量分析器を使用することによってのみ、可能であることがある。しかし、第2の質量分析段に対する当該の娘イオンの質量はより小さく、またはるかに小さい可能性があるが、正確な識別のために隣接する質量ピークから分離するには、より高い質量分解能を必要とする可能性がある。質量の大きなイオンの選択が可能な1つの質量分析器と、より低い質量範囲で高い質量分解能が可能な第2の質量分析器とを有することは、異なる質量分析器に異なる役割を割り当てる本発明の用途の一例である。
【0066】
追加でまたは別法として、本発明によれば、柔軟な分析期間をスケジュールすることができる。例えば、質量分析装置は、「ラウンドロビン」手法に従って順次動作させることができる。自動利得制御を実施することもでき、したがって初期測定を使用して、同じまたは異なる質量分析器で後に行われる測定を制御することができる。別法として、質量分析装置が非アクティブ状態になると直ちに、さらなる質量分析のためにイオンを供給することができる。したがって、質量分析装置の動作を厳密な順序でスケジュールする必要はない。これにより、自由なスケジューリングが可能になるが、より精巧なシステム制御装置が必要になる。
【0067】
質量分析装置に対する動作の順序は、検出器からのプレビュー走査の使用によって最適化することができる。プレビュー走査内の検出器からのデータが、イオンパケットが有用ではないことを示す場合、この走査を廃棄することができ、さらなるイオンパケットがさらなる分析を実行するために、検出器をより早く利用可能にすることができる。
【0068】
この柔軟なスケジューリングを、異なる質量分析器に割り当てられた役割と組み合わせることができる。例えば、4つの質量分析器を有する質量分析システムについて考慮することができる。全質量分析を分析器1および3で実施し、プレビュー情報に基づくデータ依存MSをトラップ2および4で実施し、また、AGC前段走査をイオントラップで実施することができる。別法として、全質量分析をトラップ1および3で実施し、プレビュー情報に基づくデータ依存質量分析をトラップ2および4で実施し、また、MS3をイオントラップで実施することもできる。別法として、全質量分析をトラップ1で実施し、MS2をトラップ2で実施し、また、MS3をトラップ3および4で実施することもできる。固定であるが異なる役割も可能であり、例えば、特定のトラップをより高い分解能で動作させることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源内でイオンを生成するステップと、
第1のイオン蓄積時間中、少なくとも1つのイオン輸送開口を有する第1のイオン蓄積装置内に前記イオン源からのイオンを蓄積するステップと、
第1の分析期間中に分析するために、第1の射出期間中、前記第1のイオン蓄積装置から第1の質量分析装置へイオンを射出するステップと、
第2のイオン蓄積時間中、少なくとも1つのイオン輸送開口を有する第2のイオン蓄積装置内に前記イオン源からのイオンを蓄積するステップと、
第2の分析期間中に分析するために、第2の射出期間中、前記第2のイオン蓄積装置から第2の質量分析装置へイオンを射出するステップと、
を含み、
前記イオン蓄積装置が、前記第1および第2のイオン蓄積装置間のイオンの伝達を可能にするために、前記第1のイオン蓄積装置の前記イオン輸送開口が前記第2のイオン蓄積装置の前記イオン輸送開口と連通するように直列に接続され、さらに、前記第1の分析期間と前記第2の射出期間が、少なくとも部分的に重なることを特徴とする質量分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1のイオン蓄積装置の前記イオン輸送開口がイオン入口開口であり、また、前記第2のイオン蓄積装置の前記イオン輸送開口がイオン出口開口であり、
前記第1のイオン蓄積時間より前に、イオンが、前記第2のイオン蓄積装置を通過することによって前記第1のイオン蓄積装置に入ることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1のイオン蓄積装置の前記イオン輸送開口がイオン出口開口であり、また、前記第2のイオン蓄積装置の前記イオン輸送開口がイオン入口開口であり、
前記第1のイオン蓄積時間より前に、イオンが、前記第2のイオン蓄積装置を通過することなく前記第1のイオン蓄積装置に入ることを特徴とする方法。
【請求項4】
イオン源内でイオンを生成するステップと、
第1のイオン蓄積時間中、イオン蓄積装置の第1の蓄積容積内に前記イオン源からのイオンを蓄積するステップと、
第1の分析期間中に分析するために、第1の射出期間中、前記第1のイオン蓄積装置から第1の質量分析装置へイオンを射出するステップと、
第2のイオン蓄積時間中、前記イオン蓄積装置の第2の蓄積容積内に前記イオン源からのイオンを蓄積するステップであって、前記第2の蓄積容積が、前記第1の蓄積容積に少なくとも部分的に重なるステップと、
第2の分析期間中に分析するために、第2の射出期間中、前記イオン蓄積装置から第2の質量分析装置へイオンを射出するステップと、
を含み、
前記第1の分析期間と前記第2の射出期間が、少なくとも部分的に重なることを特徴とする質量分析方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記イオン蓄積装置が、前記第1の蓄積容積および前記第2の蓄積容積への共通の入口開口を備え、
前記イオン源からのイオンが、前記共通の入口開口を通って前記イオン蓄積装置に入ることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の方法であって、
第1の質量分析装置へイオンを射出する前記ステップおよび第2の質量分析装置へイオンを射出する前記ステップが、前記イオン蓄積装置から単一のスリットを通じてイオンを射出するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の方法であって、
前記イオン蓄積装置の前記第1の蓄積容積と前記イオン蓄積装置の前記第2の蓄積容積が、完全に重なることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載の方法であって、
前記第1の分析期間の開始が、前記第2の射出期間の開始前に発生し、前記第1の分析期間の終了が、前記第2の射出期間の終了後に発生することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1にであって、
前記第2のイオン蓄積時間と第1の質量分析時間が、少なくとも部分的に重なることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1に記載の方法であって、
前記第2の分析期間と前記第1の射出期間が、少なくとも部分的に重なることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1に記載の方法であって、
前記イオン源が、大気圧で動作することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1に記載の方法であって、
前記第1の質量分析装置が、オービトラップ質量分析器であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1に記載の方法であって、
前記第1の質量分析装置が、RFイオントラップであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1に記載の方法であって、
前記第1の質量分析装置が、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか1に記載の方法であって、
前記第1の質量分析装置が、多重反射飛行時間質量分析器であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1から11のいずれか1に記載の方法であって、
前記第1の質量分析装置が、マルチセクタ飛行時間質量分析器であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1に記載の方法であって、
前記第2の質量分析装置が、前記第1の質量分析装置と同じ種類のものであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1に記載の方法であって、
N回のそれぞれの分析期間中に分析するために、N回のそれぞれの射出期間中、前記イオン蓄積装置からN個の質量分析装置へイオンを射出するステップをさらに含み、
N≧1であり、
(N−1)回目の分析期間とN回目の射出期間が、少なくとも部分的に重なり、0回目の分析期間が、前記第2の分析期間と同じであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1に記載の方法であって、
予備のイオン蓄積装置内に前記イオン源からのイオンを蓄積するステップと、
前記予備のイオン蓄積装置内に蓄積された前記イオンを分析するステップと、
をさらに含み、
前記第1の分析期間および第2の分析期間中に実行される前記分析が、前記予備のイオン蓄積装置内に蓄積された前記イオンを分析する前記ステップの結果に基づくことを特徴とする方法。
【請求項20】
イオン源内でイオンを生成するステップと、
複数の質量分析装置のそれぞれに対して以下のステップを実行するステップと、を含む質量分析の方法であって、前記以下のステップが、
それぞれの蓄積期間中、イオン蓄積装置内に前記イオン源からのイオンを蓄積するステップと、
前記イオン蓄積装置から、それぞれの分析期間中に前記それぞれの射出されたイオンを分析するように構成された前記それぞれの質量分析装置へイオンを射出するステップと、であり、
前記質量分析装置の数が、前記分析期間と代表蓄積期間の比以上であり、前記代表蓄積期間が、前記複数の質量分析装置のそれぞれに対する前記それぞれの蓄積期間のうちの少なくとも1つに基づくことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、
前記代表蓄積期間が、前記複数の質量分析装置の平均蓄積期間であることを特徴とする方法。
【請求項22】
イオン源と、
第1の分析期間中にイオンを分析するように構成された第1の質量分析装置と、
第2の分析期間中にイオンを分析するように構成された第2の質量分析装置と、
イオンを蓄積するように構成されかつ少なくとも1つのイオン輸送開口を有する第1のイオン蓄積装置と、
イオンを蓄積するように構成されかつ少なくとも1つのイオン輸送開口を有する第2のイオン蓄積装置であって、前記第1および第2のイオン蓄積装置間のイオンの伝達を可能にするために、前記第1のイオン蓄積装置の前記イオン輸送開口が前記第2のイオン蓄積装置の前記イオン輸送開口と連通するように、前記第1のイオン蓄積装置と直列に接続された、第2のイオン蓄積装置と、
前記第1のイオン蓄積装置が、第1の蓄積時間中に前記第1のイオン蓄積装置内にイオンを蓄積し、かつ第1の射出期間中に前記イオンを前記第1の質量分析装置へ射出するのを制御するように構成されたシステム制御装置であって、前記第2のイオン蓄積装置が、第2の蓄積時間中に前記第2のイオン蓄積装置内に前記イオン源からのイオンを蓄積し、かつ前記第1の分析期間に少なくとも部分的に重なる第2の射出期間中に前記イオンを前記第2の質量分析装置へ射出するのを制御するようにさらに構成された、システム制御装置と、
を備えることを特徴とする質量分析システム。
【請求項23】
イオン源と、
第1の分析期間中にイオンを分析するように構成された第1の質量分析装置と、
第2の分析期間中にイオンを分析するように構成された第2の質量分析装置と、
第1の蓄積容積内にイオンを蓄積するように構成され、かつ第2の蓄積容積内にイオンを蓄積するようにさらに構成されたイオン蓄積装置であって、前記第2の蓄積容積が前記第1の蓄積容積に少なくとも部分的に重なる、イオン蓄積装置と、
前記イオン蓄積装置が、第1の蓄積時間中に前記第1の蓄積容積内に前記イオン源からのイオンを蓄積し、かつ第1の射出期間中に前記イオンを前記第1の質量分析装置へ射出するのを制御するように構成されたシステム制御装置であって、前記イオン蓄積装置が、第2の蓄積時間中に前記第2の蓄積容積内に前記イオン源からのイオンを蓄積し、かつ前記第1の分析期間に少なくとも部分的に重なる第2の射出期間中に前記イオンを前記第2の質量分析装置へ射出するのを制御するようにさらに構成された、システム制御装置と、
を備えることを特徴とする質量分析システム。
【請求項24】
請求項23に記載の質量分析システムであって、
前記イオン蓄積装置が、前記第1の蓄積容積および前記第2の蓄積容積への共通の入口開口を備え、
前記イオン蓄積装置が、前記イオン源からのイオンを、前記共通の入口開口を通じて前記イオン蓄積装置に入れるようにさらに構成されることを特徴とする質量分析システム。
【請求項25】
請求項23または請求項24に記載の質量分析システムであって、
前記イオン蓄積装置が、単一の出口スリットを備え、
前記イオン蓄積装置が、前記単一のスリットを通じて、前記第1の質量分析装置へイオンを射出し、かつ前記第2の質量分析装置へイオンを射出するように構成されることを特徴とする質量分析システム。
【請求項26】
請求項23から25のいずれか1に記載の質量分析システムであって、
前記イオン蓄積装置の前記第1の蓄積容積と前記イオン蓄積装置の前記第2の蓄積容積が、完全に重なることを特徴とする質量分析システム。
【請求項27】
請求項22から26のいずれか1に記載の質量分析システムであって、
前記第1の質量分析装置が、オービトラップ質量分析器であることを特徴とする質量分析システム。
【請求項28】
請求項22から26のいずれか1に記載の質量分析システムであって、前記第1の質量分析装置が、RFイオントラップであることを特徴とする質量分析システム。
【請求項29】
請求項22から26のいずれか1に記載の質量分析システムであって、
前記第1の質量分析装置が、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器であることを特徴とする質量分析システム。
【請求項30】
請求項22から26のいずれか1に記載の質量分析システムであって、
前記第1の質量分析装置が、多重反射飛行時間質量分析器であることを特徴とする質量分析システム。
【請求項31】
請求項22から26のいずれかに記載の質量分析システムであって、前記第1の質量分析装置が、マルチセクタ飛行時間質量分析器であることを特徴とする質量分析システム。
【請求項32】
請求項22から31のいずれか1に記載の質量分析システムであって、
前記第2の質量分析装置が、前記第1の質量分析装置と同じ種類のものであることを特徴とする質量分析システム。
【請求項33】
請求項22から32のいずれか1に記載の質量分析システムであって、
前記第1の質量分析装置と第2の質量分析装置が、共通の筐体を共有することを特徴とする質量分析システム。
【請求項34】
請求項22から33のいずれか1に記載の質量分析システムであって、
前記第1の質量分析装置と第2の質量分析装置が、共通のポンピング構成を共有することを特徴とする質量分析システム。
【請求項35】
イオン源と、
イオンを蓄積するように構成されたイオン蓄積装置と、
複数の質量分析装置と、
前記イオン蓄積装置が、それぞれの蓄積期間中に前記イオン源からのイオンを蓄積し、かつそれぞれの射出期間中に前記イオン蓄積装置から前記それぞれの質量分析装置へイオンを射出するのを制御するように、ならびに、前記複数の質量分析装置がそれぞれ、それぞれの分析期間中に前記それぞれの射出されたイオンを分析するのを制御するように、前記複数の質量分析装置からの各質量分析装置に対して構成されたシステム制御装置とを備え、
前記複数の質量分析装置を含む質量分析装置の数が、実質上、前記分析期間と代表蓄積期間の比以上であり、前記代表蓄積期間が、前記複数の質量分析装置のそれぞれに対する前記それぞれの蓄積期間のうち少なくとも1つに基づくことを特徴とする質量分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−515210(P2010−515210A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543392(P2009−543392)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/011429
【国際公開番号】WO2008/080604
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508306565)サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー (20)
【Fターム(参考)】