説明

質量分析計

ガス噴霧器チューブ(2)に取り囲まれているキャピラリーチューブ(3)を備えたエレクトロスプレーイオン化イオン源が開示される。1つ以上のワイヤー(4)がキャピラリーチューブ(3)内に設けられている。被分析物溶液がキャピラリーチューブ(3)に供給され、噴霧ガスがガス噴霧器チューブ(2)に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン源に関し、好適には、エレクトロスプレーイオン化イオン源、質量分析計、サンプルをイオン化する方法、及び質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)は、液体クロマトグラフィ/質量分析(「LC/MS」)系用の最も広く使用されているイオン化技術として確立している。エレクトロスプレーイオン化には、隣接した質量分析計のイオンサンプリングオリフィスに対して比較的高い電圧で維持される開口管状キャピラリーへ液体を通すことを必要とする。液体の流速が高い場合(例えば、5〜1000ml/分)、脱溶媒和工程を助成するために高速噴霧ガスと加熱された脱溶媒和ガスとの同一中心流動の組み合わせを使用するのが一般的である。
【0003】
キャピラリー先端に静電及び電気流体力学的な力の組み合わさった作用により荷電小滴が形成される。前記小滴はその後、前記小滴内の増大する斥力が表面張力を上回る段階に達するまで脱溶媒和される。この、レイリーリミットと呼ばれる不安定な段階では、前記小滴は分裂工程にあり、子孫小滴(progeny droplets)と一般的に称される、より小さな荷電小滴を多数生成することとなる。前記脱溶媒和工程及び分裂工程はその後さらに進み、さらに小さい第二世代の荷電小滴が生成される。その後、イオン蒸発又は電荷残留工程(charge residue model)により、イオンが気相へと遊離する段階に至る。
【0004】
エレクトロスプレーイオン化の仕組みに関する理論の多くは、高い表面荷電密度を有する高荷電の小さな小滴から比較的高い効率のエレクトロスプレーイオン化が達成できると予測している。緩やかな脱溶媒和のみを必要とする第一世代又は初期世代の子孫小滴から、気相イオンが得られる。
【0005】
ナノスプレーイオン化は10〜100nl/分の流速で行われ、これは、ミクロン以下の高荷電の第一世代小滴が同一中心噴霧又は脱溶媒和のガスが無くても生成される、高効率のエレクトロスプレー工程の一例である。また、共溶出(co-eluting)サンプルマトリックス成分が脱溶媒和の間に濃縮され、利用可能な電荷を被分析物のイオンと奪い合う(compete with the analyte ions for the available charge)というマトリックス抑制効果から、初期世代の小滴からのナノスプレーイオン化が影響を受けることは少ない。
【0006】
逆に、比較的高い流速(例えば、100〜1000μl/分)での従来のエレクトロスプレーイオン化は、比較的大きな(>10μm)小滴が比較的低い表面荷電密度を有して形成されるので、比較的効率が悪い。後期世代の小滴からイオンを生成するためには、比較的高い脱溶媒和温度が必要であり、この工程はマトリックス抑制効果の影響を受けやすい。
【0007】
質量分析計用の市販のエレクトロスプレーイオン化イオン源は、所望の流速が高くなればなるほど前記開口管状液体キャピラリーの内径が大きくなるように設計されている。従来の高流速エレクトロスプレーイオン化用のキャピラリーの内径が通常約130μmであればよい一方で、ナノバイアルのエレクトロスプレーイオン化用のキャピラリーの内径は通常1μmである。高流速エレクトロスプレーイオン化では、平均小滴径は10〜20μmである一方、ナノスプレーの平均小滴径は通常ミクロン以下であることを、実験技術は裏付けている。もし、内腔の狭い(narrow bore)キャピラリーを高流速で使用しようとするならば、いくつかの実際的な問題に直面する。高流速での内腔の狭いキャピラリーは、必要な流速を維持するために大きな圧力を必要とし、より壊れやすい。内腔の狭いキャピラリーはまた、一貫したスプレー条件を作ることが困難であるため、再現性が劣るという問題がある。
【0008】
超高圧LC(UPLC)やモノリシックLCカラムなどの新世代の液体クロマトグラフィ(LC)カラムの出現は、高移動相流速(500〜3000μl/分)を使用した、滞留時間の短縮のための高クロマトグラフィ効率を容易にした。これらの技術は、LCカラム寸法と流速との両方を小さくするという以前の傾向を覆した。その結果、マトリックス抑制効果が低く、比較的高い流速で作動可能な、効率の高いエレクトロスプレーイオン化イオン源が必要となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、改良されたイオン源を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの様態によれば、
第1流動デバイスと、
前記第1流動デバイスの少なくとも一部を取り囲む第2流動デバイスと、
前記第1流動デバイス内に設置された1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物(obstruction)とを含むイオン源が提供される。
【0011】
前記第1及び第2流動デバイスは、好適には、同軸である。前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、好適には、前記第1流動デバイス内の中心に設置される。
【0012】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、好適には、(i)<10μm;(ii)10〜20μm;(iii)20〜30μm;(iv)30〜40μm;(v)40〜50μm;(vi)50〜60μm;(vii)60〜70μm;(viii)70〜80μm;(ix)80〜90μm;(x)90〜100μm;(xi)100〜110μm;(xii)110〜120μm;(xiii)120〜130μm;(xiv)130〜140μm;(xv)140〜150μm;(xvi)150〜160μm;(xvii)160〜170μm;(xviii)170〜180μm;(xix)180〜190μm;(xx)190〜200μm;(xxi)200〜250μm;(xxii)250〜300μm;(xxiii)300〜350μm;(xxiv)350〜400μm;(xxv)400〜450μm;(xxvi)450〜500μm;(xxvii)500〜600μm;(xxviii)600〜700μm;(xxix)700〜800μm;(xxx)800〜900μm;(xxxi)900〜1000μm;及び(xxxii)>1000μmからなる群から選択される外径を有する。
【0013】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、好適には、(i)<100μm2;(ii)100〜500μm2;(iii)500〜1000μm2;(iv)1000〜2000μm2;(v)2000〜3000μm2;(vi)3000〜4000μm2;(vii)4000〜5000μm2;(viii)5000〜6000μm2;(ix)6000〜7000μm2;(x)7000〜8000μm2;(xi)8000〜9000μm2;(xii)9000〜10000μm2;(xiii)10000〜15000μm2;(xiv)15000〜20000μm2;(xv)20000〜30000μm2;(xvi)30000〜40000μm2;(xvii)40000〜50000μm2;(xviii)50000〜60000μm2;(xix)60000〜70000μm2;(xx)70000〜80000μm2;(xxi)80000〜90000μm2;(xxii)90000〜100000μm2;及び(xxiii)>100000μm2からなる群から選択される断面積を有する。
【0014】
前記第1流動デバイスは、好適には、平均内部断面積Aを有し、前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、好適には、(i)<0.05A;(ii)0.05〜0.10A;(iii)0.10〜0.15A;(iv)0.15〜0.20A;(v)0.20〜0.25A;(vi)0.25〜0.30A;(vii)0.30〜0.35A;(viii)0.35〜0.40A;(ix)0.40〜0.45A;(x)0.45〜0.50A;(xi)0.50〜0.55A;(xii)0.55〜0.60A;(xiii)0.60〜0.65A;(xiv)0.65〜0.70A;(xv)0.70〜0.75A;(xvi)0.75〜0.80A;(xvii)0.80〜0.85A;(xviii)0.85〜0.90A;(xix)0.90〜0.95A;及び(xx)>0.95Aの組み合わせ断面積又は全断面積を有する。
【0015】
一実施の形態によれば、前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、前記第1流動デバイスの端部から距離lだけ延伸又は突出していてもよく、前記距離lは、好適には、(i)<0.25mm;(ii)0.25〜0.50mm;(iii)0.50〜0.75mm;(iv)0.75〜1.00mm;(v)1.00〜1.25mm;(vi)1.25〜1.50mm;(vii)1.50〜1.75mm;(viii)1.75〜2.00mm;及び(ix)>2.00mmからなる群から選択される。
【0016】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物の少なくとも一部又は概ね全体は、好適には、概ね円形、長円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形又は多角形の断面を有する。
【0017】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、好適には、ステンレス鋼、金属、導電体又は合金を含む。
【0018】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、先端にかけて比較的鋭突に形成されていてもよい。
【0019】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物が、先端半径rを有し、前記rは、(i)<1μm;(ii)1〜2μm;(iii)2〜3μm;(iv)3〜4μm;(v)4〜5μm;(vi)5〜6μm;(vii)6〜7μm;(viii)7〜8μm;(ix)8〜9μm;(x)9〜10μm;及び(xi)>10μmからなる群から選択されてもよい。
【0020】
一実施の形態によれば、前記第1流動デバイス内に、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は10個よりも多い数のワイヤー、ロッド又は障害物が設置されていてもよい。
【0021】
一実施の形態によれば、前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、異なるサイズ及び/又は断面形状もしくは領域(area)を有する複数のワイヤー、ロッド又は障害物を含んでいてもよい。
【0022】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、好適には、それらを前記第1流動デバイスの中心軸に近接して又は前記中心軸に概ね沿って位置決めする際に助けとなる、外側へ延伸した放射状の1つ以上の凸部(protrusion)を含む。
【0023】
一実施の形態によれば、前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、(i)<−10kV;(ii)−10〜−9kV;(iii)−9〜−8kV;(iv)−8〜−7kV;(v)−7〜−6kV;(vi)−6〜−5kV;(vii)−5〜−4kV;(viii)−4〜−3kV;(ix)−3〜−2kV;(x)−2〜−1kV;(xi)−1〜0kV;(xii)0〜1kV;(xiii)1〜2kv;(xiv)2〜3kV;(xv)3〜4kV;(xvi)4〜5kV;(xvii)5〜6kV;(xviii)6〜7kV;(xix)7〜8kV;(xx)8〜9kV;(xxi)9〜10kV;及び(xxii)>10kVからなる群から選択される電圧に維持される。
【0024】
前記第1流動デバイスは、好適には、エレクトロスプレーイオン化キャピラリーを含む。一実施の形態によれば、前記第1流動デバイスは、1つ以上のキャピラリーチューブを含む。
【0025】
前記第1流動デバイスは、好適には、(i)<50μm;(ii)50〜100μm;(iii)100〜150μm;(iv)150〜200μm;(v)200〜250μm;(vi)250〜300μm;(vii)300〜350μm;(viii)350〜400μm;(ix)400〜450μm;(x)450〜500μm;(xi)500〜550μm;(xii)550〜600μm;(xiii)600〜650μm;(xiv)650〜700μm;(xv)750〜800μm;(xvi)800〜850μm;(xvii)850〜900μm;(xviii)900〜950μm;(xix)950〜1000μm;及び(xx)>1000μmからなる群から選択される内径を有する。
【0026】
前記第1流動デバイスは、好適には、(i)<50μm;(ii)50〜100μm;(iii)100〜150μm;(iv)150〜200μm;(v)200〜250μm;(vi)250〜300μm;(vii)300〜350μm;(viii)350〜400μm;(ix)400〜450μm;(x)450〜500μm;(xi)500〜550μm;(xii)550〜600μm;(xiii)600〜650μm;(xiv)650〜700μm;(xv)750〜800μm;(xvi)800〜850μm;(xvii)850〜900μm;(xviii)900〜950μm;(xix)950〜1000μm;及び(xx)>1000μmからなる群から選択される外径を有する。
【0027】
前記第1流動デバイスは、好適には、概ね円形、長円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形又は多角形の断面を有する。
【0028】
前記第1流動デバイスは、好適には、ステンレス鋼製、金属製、導電体製又は合金製のチューブを含む。好適には、使用中に、被分析物溶液が、前記第1流動デバイスへ供給されるか、又は、前記第1流動デバイスに沿って通過する。好適には、使用中に、(i)<1μl/分;(ii)1〜10μl/分;(iii)10〜50μl/分;(iv)50〜100μl/分;(v)100〜200μl/分;(vi)200〜300μl/分;(vii)300〜400μl/分;(viii)400〜500μl/分;(ix)500〜600μl/分;(x)600〜700μl/分;(xi)700〜800μl/分;(xii)800〜900μl/分;(xiii)900〜1000μl/分;(xiv)1000〜1500μl/分;(xv)1500〜2000μl/分;(xvi)2000〜2500μl/分;及び(xvii)2500>μl/分からなる群から選択される流速で、前記被分析物溶液が供給されるか、又は、前記第1流動デバイスに沿って通過する。
【0029】
前記第1流動デバイスは、好適には、前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物を前記第1流動デバイスの中心軸に近接して又は前記中心軸に概ね沿って位置決めする際に助けとなる、内側へ延伸した放射状の1つ以上の凸部を含む。
【0030】
使用中に、前記第1流動デバイスは、好適には、(i)<−10kV;(ii)−10〜−9kV;(iii)−9〜−8kV;(iv)−8〜−7kV;(v)−7〜−6kV;(vi)−6〜−5kV;(vii)−5〜−4kV;(viii)−4〜−3kV;(ix)−3〜−2kV;(x)−2〜−1kV;(xi)−1〜0kV;(xii)0〜1kV;(xiii)1〜2kv;(xiv)2〜3kV;(xv)3〜4kV;(xvi)4〜5kV;(xvii)5〜6kV;(xviii)6〜7kV;(xix)7〜8kV;(xx)8〜9kV;(xxi)9〜10kV;及び(xxii)>10kVからなる群から選択される電圧に維持される。
【0031】
好適には、被分析物溶液が環状流動体として前記第1流動デバイスから放出される。好適には、前記環状流動体は、(i)<10μm;(ii)10〜20μm;(iii)20〜30μm;(iv)30〜40μm;(v)40〜50μm;(vi)50〜60μm;(vii)60〜70μm;(viii)70〜80μm;(ix)80〜90μm;(x)90〜100μm;(xi)100〜110μm;(xii)110〜120μm;(xiii)120〜130μm;(xiv)130〜140μm;(xv)140〜150μm;(xvi)150〜160μm;(xvii)160〜170μm;(xviii)170〜180μm;(xix)180〜190μm;(xx)190〜200μm;(xxi)200〜250μm;(xxii)250〜300μm;(xxiii)300〜350μm;(xxiv)350〜400μm;(xxv)400〜450μm;(xxvi)450〜500μm;(xxvii)500〜600μm;(xxviii)600〜700μm;(xxix)700〜800μm;(xxx)800〜900μm;(xxxi)900〜1000μm;及び(xxxii)>1000μmからなる群から選択される外径を有する。好適には、前記環状流動体は、(i)<10μm;(ii)10〜20μm;(iii)20〜30μm;(iv)30〜40μm;(v)40〜50μm;(vi)50〜60μm;(vii)60〜70μm;(viii)70〜80μm;(ix)80〜90μm;(x)90〜100μm;(xi)100〜110μm;(xii)110〜120μm;(xiii)120〜130μm;(xiv)130〜140μm;(xv)140〜150μm;(xvi)150〜160μm;(xvii)160〜170μm;(xviii)170〜180μm;(xix)180〜190μm;(xx)190〜200μm;(xxi)200〜250μm;(xxii)250〜300μm;(xxiii)300〜350μm;(xxiv)350〜400μm;(xxv)400〜450μm;(xxvi)450〜500μm;(xxvii)500〜600μm;(xxviii)600〜700μm;(xxix)700〜800μm;(xxx)800〜900μm;(xxxi)900〜1000μm;及び(xxxii)>1000μmからなる群から選択される内径を有する。
【0032】
好適には、前記環状流動体は、(i)<10μm;(ii)10〜20μm;(iii)20〜30μm;(iv)30〜40μm;(v)40〜50μm;(vi)50〜60μm;(vii)60〜70μm;(viii)70〜80μm;(ix)80〜90μm;(x)90〜100μm;(xi)100〜110μm;(xii)110〜120μm;(xiii)120〜130μm;(xiv)130〜140μm;(xv)140〜150μm;(xvi)150〜160μm;(xvii)160〜170μm;(xviii)170〜180μm;(xix)180〜190μm;(xx)190〜200μm;(xxi)200〜250μm;(xxii)250〜300μm;(xxiii)300〜350μm;(xxiv)350〜400μm;(xxv)400〜450μm;(xxvi)450〜500μm;(xxvii)500〜600μm;(xxviii)600〜700μm;(xxix)700〜800μm;(xxx)800〜900μm;(xxxi)900〜1000μm;及び(xxxii)>1000μmからなる群から選択される厚み(すなわち、内径と外径との間の距離)を有する。
【0033】
前記第2流動デバイスは、好適には、(i)<50μm;(ii)50〜100μm;(iii)100〜150μm;(iv)150〜200μm;(v)200〜250μm;(vi)250〜300μm;(vii)300〜350μm;(viii)350〜400μm;(ix)400〜450μm;(x)450〜500μm;(xi)500〜550μm;(xii)550〜600μm;(xiii)600〜650μm;(xiv)650〜700μm;(xv)750〜800μm;(xvi)800〜850μm;(xvii)850〜900μm;(xviii)900〜950μm;(xix)950〜1000μm;及び(xx)>1000μmからなる群から選択される内径を有する。
【0034】
前記第2流動デバイスは、好適には、概ね円形、長円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形又は多角形の断面を有する。
【0035】
前記第2流動デバイスは、好適には、ガス噴霧器キャピラリーを含み、かつ、好適には、1つ以上のキャピラリーチューブを含む。
【0036】
前記第2流動デバイスは、好適には、ステンレス鋼製、金属製、導電体製又は合金製のチューブを含む。
【0037】
好適には、使用中に、前記第2流動デバイスへ第1のガス(好適には窒素)が供給される。他の実施の形態によれば、窒素以外のガスである第1のガスが、前記第2流動デバイスに供給されてもよい。好適には、使用中に、前記第1のガスが、(i)<1l/時間;(ii)1〜10l/時間;(iii)10〜50l/時間;(iv)50〜100l/時間;(v)100〜150l/時間;(vi)150〜200l/時間;(vii)200〜250l/時間;(viii)250〜300l/時間;(ix)300〜350l/時間;(x)350〜400l/時間;(xi)400〜450l/時間;(xii)450〜500l/時間;及び(xiii)>500l/時間からなる群から選択される流速で供給される。前記第1のガスは、好適には、使用中に前記第1流動デバイスに供給される被分析物溶液の噴霧化を助ける。
【0038】
好適には、使用時に、前記第1のガスが、<1、1〜2、2〜3、3〜4、4〜5、5〜6、6〜7、7〜8、8〜9、9〜10又は>10barの圧力で供給される。
【0039】
好適には、使用中に、前記第2流動デバイスは、(i)<−10kV;(ii)−10〜−9kV;(iii)−9〜−8kV;(iv)−8〜−7kV;(v)−7〜−6kV;(vi)−6〜−5kV;(vii)−5〜−4kV;(viii)−4〜−3kV;(ix)−3〜−2kV;(x)−2〜−1kV;(xi)−1〜0kV;(xii)0〜1kV;(xiii)1〜2kv;(xiv)2〜3kV;(xv)3〜4kV;(xvi)4〜5kV;(xvii)5〜6kV;(xviii)6〜7kV;(xix)7〜8kV;(xx)8〜9kV;(xxi)9〜10kV;及び(xxii)>10kVからなる群から選択される電圧に維持される。
【0040】
前記イオン源は、好適には、エレクトロスプレーイオン化イオン源、及び/又は、大気圧イオン化イオン源を含む。
【0041】
前記イオン源は、好適には、気体を加熱して脱溶媒和ガス流を提供する脱溶媒和加熱器をさらに含む。
【0042】
本発明の別の様態によれば、上記のようなイオン源を含む質量分析計が提供される。
【0043】
前記質量分析計は、好適には、中心軸を有するイオン吸気円錐体を含む。前記イオン吸気円錐体は、好適には、前記イオン源の下流に配置されている。
【0044】
前記イオン源は、好適には中心軸を有し、前記イオン吸気円錐体の中心軸は、好適には前記イオン源の中心軸と交点で交差する。好適には、前記第1流動デバイスの端部から前記交点までの、前記イオン源の前記中心軸に沿った距離はxmmであり、前記xが、(i)<1;(ii)1〜5;(iii)5〜10;(iii)10〜15;(iv)15〜20;(v)20〜25;(vi)25〜30;(vii)30〜35;(viii)35〜40;(ix)40〜45;(x)45〜50;及び(xi)>50からなる群から選択される。
【0045】
好適には、前記イオン源が中心軸を有し、前記イオン吸気円錐体の前記中心軸が、好適には前記イオン源の前記中心軸と交点で交差する。好適には、前記イオン吸気円錐体の端部から前記交点までの、前記イオン吸気円錐体の前記中心軸に沿った距離がzmmであり、前記zが、(i)<1;(ii)1〜5;(iii)5〜10;(iii)10〜15;(iv)15〜20;(v)20〜25;(vi)25〜30;(vii)30〜35;(viii)35〜40;(ix)40〜45;(x)45〜50;及び(xi)>50からなる群から選択される。
【0046】
一実施の形態によれば、前記イオン源が中心軸を有し、前記イオン源の前記中心軸と前記イオン吸気円錐体の前記中心軸との間の角度θが、(i)0〜10°;(ii)10〜20°;(iii)20〜30°;(iv)30〜40°;(v)40〜50°;(vi)50〜60°;(vii)60〜70°;(viii)70〜80°;(ix)80〜90°;(x)90〜100°;(xi)100〜110°;(xii)110°〜120°;(xiii)120〜130°;(xiv)130〜140°;(xv)140〜150°;(xvi)150〜160°;(xvii)160〜170°;及び(xviii)170〜180°からなる群から選択される。
【0047】
一実施の形態によれば、好適には、使用中に、前記イオン吸気円錐体は、(i)<−10kV;(ii)−10〜−5kV;(iii)−5〜−4kV;(iv)−4〜−3kV;(v)−3〜−2kV;(vi)−2〜−1kV;(vii)−1000〜−900V;(viii)−900〜−800V;(ix)−800〜−700V;(x)−700〜−600V;(xi)−600〜−500V;(xii)−500〜−400V;(xiii)−400〜−300V;(xiv)−300〜−200V;(xv)−200〜−100V;(xvi)−100〜0V;(xvii)0〜100V;(xviii)100〜200V;(xix)200〜300V;(xx)300〜400V;(xxi)400〜500V;(xxii)500〜600V;(xxiii)600〜700V;(xxiv)700〜800V;(xxv)800〜900V;(xxvi)900〜1000V;(xxvii)1〜2kV;(xxviii)2〜3kV;(xxix)3〜4kV;(xxx)4〜5kV;(xxxi)5〜10kV;及び(xxxii)>10kVからなる群から選択される電圧に維持される。
【0048】
前記質量分析計は、好適には、(i)フーリエ変換(「FT」)質量分析器;(ii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器;(iii)飛行時間(「TOF」)質量分析器;(iv)直交加速式飛行時間(「oaTOF」)質量分析器;(v)軸方向加速式飛行時間質量分析器;(vi)磁場型質量分析器;(vii)ポール又は三次元四重極質量分析器;(viii)二次元又は線形四重極質量分析器;(ix)ペニングトラップ質量分析器;(x)イオントラップ質量分析器;(xi)フーリエ変換オービトラップ;(xii)静電イオンサイクロトロン共鳴質量分析器;(xiii)静電フーリエ変換質量分析器;及び(xiv)四重極ロッドセット質量フィルタ又は質量分析器からなる群から選択される質量分析器をさらに含む。
【0049】
本発明の別の様態によれば、第1流動デバイスに被分析物溶液を供給する工程と、前記第1流動デバイスの少なくとも一部を取り囲む第2流動デバイスに、第1のガスを供給する工程と、1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物を前記第1流動デバイス内に設ける工程とを含む、サンプルをイオン化する方法が提供される。
【0050】
本発明の別の様態によれば、上記のような、サンプルをイオン化する方法を含む質量分析方法が提供される。
【0051】
好適な実施の形態によれば、好適には中心導電性ワイヤーを利用するエレクトロスプレーイオン化(「ESI」)プローブが提供される。前記中心ワイヤーは、好適には、スプレー及び噴霧の前に液層又は液柱の断面寸法を減少させるために、開口管状エレクトロスプレーイオン化キャピラリーの内腔に挿入される。その結果、好適には、同じ断面積の従来の開口管状キャピラリーにおける同様の円筒状液柱領域の直径と比較して、層の厚さが小さい、環状の液層又は液柱が好適に形成される。
【0052】
前記中心導電性ワイヤーは、スプレー及び噴霧の領域において電界強度を上げるために、先端にかけて比較的鋭突に形成されていてもよい。縮小された液断面と増大された電界強度の組み合わせは、好適には、表面荷電密度のより高い、より小さな小滴を生じ、これによって今度は、好適には、初期世代の小滴の脱溶媒の効率が改善され、感度が高められ、マトリックス抑制効果に対する影響されやすさが低減される。
【0053】
好適な実施の形態における環状液層又は液柱は、より大きな断面積を有するため、同等の従来の円筒状液柱と比較すると、とりわけ有利である。その結果、所要の液体流速を維持するために必要な圧力が小さくて済む。前記好適な実施の形態におけるイオン源はまた、キャピラリーの閉塞が起こりにくい。
【0054】
一実施の形態によれば、中心導電性ワイヤーは円形でもよく、開口管状キャピラリーもまた円形でもよい。前記中心ワイヤーは、比較的太くてもよく、その長さに沿って2箇所以上でつまみ状にされ(be pinched)、小さい放射状の凸部が長さに沿って形成されるようにしてもよい。前記凸部は、好適には、中心ワイヤーを外側の開口管状キャピラリーから離間させることを助け、かつ、好適には、開口管状キャピラリーの中心軸に沿った前記ワイヤーの配置を維持することを助ける。その結果、中心ワイヤーと開口管状キャピラリーとの間の環状の隙間(opening)が好適に維持される。
【0055】
その代りに、及び/又は、それに加えて、前記エレクトロスプレー開口管状キャピラリーは、一箇所以上でつまみ状又はひだ状に(be crimped)されて、1つ以上の内側又は内部の凹部(dent)又は凸部がその長さに沿って形成されるようにしてもよい。前記内部の凹部又は凸部は、好適には、前記開口管状キャピラリーから前記ワイヤーを離間させることを助け、好適には、開口キャピラリーの中心軸に沿った前記ワイヤーの配置を維持することを助ける。これはまた、好適には、前記ワイヤーと前記外側の開口管状キャピラリーとの間の環状の隙間を維持することを助ける。
【0056】
別の実施の形態によれば、中心ワイヤーは、非円形の断面を有していてもよい。例えば、前記中心ワイヤーは、三角形、正方形、長方形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形又はその他の多角形の断面を有していてもよい。前記中心ワイヤーが比較的太く、かつ、非円形断面を有していれば、数箇所のみでエレクトロスプレー開口管状キャピラリーの内壁に接触する。このことは、好適には、前記中心ワイヤーと前記外側の開口管状キャピラリーとの間に、通路があいている状態にし、液体が流れるようにする。
【0057】
一実施の形態によれば、エレクトロスプレー開口管状キャピラリーは、非円形の断面を有していてもよい。例えば、エレクトロスプレー開口管状キャピラリーは、三角形、正方形、長方形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形又はその他の多角形の断面を有していてもよい。比較的太い中心ワイヤーが円形断面を有していれば、数箇所のみで、非円形断面を有する開口管状キャピラリーの内壁に接触し、このことは、好適には、内側の中心ワイヤーと外側の開口管状キャピラリーとの間に、通路があいている状態にし、液体が流れるようする。非円形断面を有する中心ワイヤーと、それとは異なる形状の非円形断面を有する開口管状キャピラリーとの場合も、これと同様である。
【0058】
一実施の形態によれば、1つ以上のワイヤー、ロッド又は突出物(protrusion)が、開口管状キャピラリー内に挿入されるか又は設けられていてもよい。前記ワイヤー、ロッド又は突出物は、中心導電性ワイヤー、ロッド又は突出物が設けられて、他のワイヤー、ロッド及び突出物が前記中心ワイヤーを囲むように構成されていてもよい。前記中心ワイヤー、ロッド又は突出物は、先端にかけて比較的鋭突に形成されていてもよい。一実施の形態によれば、均等な直径の7本のワイヤーが開口管状キャピラリーに挿入されていてもよい。前記ワイヤーのうちの1本が、エレクトロスプレーキャピラリーの中心軸に沿って配置され、それ以外の6本のワイヤーが前記中心ワイヤーの周りに密着して六角形に束ねられて配置されていてもよい。前記中心ワイヤーは、先端にかけて比較的鋭突に形成されていてもよい。それ以外のワイヤーも、先端にかけて比較的鋭突に形成されていてもよい。一実施の形態によれば、ワイヤーは、密着して束ねられて、ワイヤー間の液体の流動が最小限となるようにされてもよい。
【0059】
別の実施の形態によれば、複数のワイヤー、ロッド又は突出物が開口管状キャピラリー内に挿入されてもよい。前記ワイヤー、ロッド又は突出物は、異なる寸法及び/又は形状を有していてもよい。各ワイヤー、ロッド又は突出物は、前記開口管状キャピラリーの端部から突出又は延伸していても、しなくてもよい。一実施の形態によれば、少なくとも1本のワイヤー、ロッド又は突出物が中心導電性ワイヤー、ロッド又は突出物として配置され、少なくともこのワイヤー、ロッド又は突出物が、好適には、開口管状キャピラリーの端部から突出するか延伸していてもよい。前記中心ワイヤー、ロッド又は突出物は、好適には、先端にかけて比較的鋭突に形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
ここで、添付の図面を参照して、本発明の種々の実施の形態を、あくまで例として、説明する。
【0061】
図1は、好適な実施の形態におけるイオン源を示す。
【0062】
図2は、好適な実施の形態における、エレクトロスプレーキャピラリーチューブから突出する中心ワイヤーと、エレクトロスプレーキャピラリーチューブに沿って流れる溶液の環状流とを示す。
【0063】
図3は、従来のエレクトロスプレーイオン化イオン源を使用してレセルピンの[M+H]+イオンを観察して得られた温度応答(曲線(a))と、直径90μmの中心ワイヤーがキャピラリーチューブ内に挿入されているが噴霧ガスを使用していない本発明の実施の形態におけるイオン源を使用して得られた、同様の応答(曲線(b))とを示す。
【0064】
図4は、従来のエレクトロスプレーイオン化イオン源を使用してレセルピンの[M+H]+を観察して得られた流速の応答(曲線(a))を示し、直径90μmの鋭突な中心ワイヤーがエレクトロスプレーキャピラリーチューブ内に挿入され、かつ、プローブ位置及び電圧があらためて最適化される本発明の実施の形態におけるイオン源を使用して、いかに大幅に改善された応答が得られたかを、曲線(b)が示す。
【0065】
図5は、イオン抑制効果不在下の、変化する移動相勾配に対するテスト被分析物混合物の典型的な反応を示す。
【0066】
図6は、マトリックス干渉(すなわち、不純注入(contaminated injection))の存在下で従来のエレクトロスプレーイオン化プローブを使用して行われた実験の結果を示し、かつ、イオン抑制の効果を示す。
【0067】
図7は、90μmの鋭突な先端の中心ワイヤーがエレクトロスプレーキャピラリーに挿入され、かつ、イオン抑制効果が大幅に低減された、本発明の一実施の形態におけるイオン源を使用して行われた同等の実験の結果を示す。
【0068】
図8は、実験データを得るために使用された、好適な実施の形態における鋭突な先端の中心ワイヤーを有するエレクトロスプレープローブ先端を示す。
【0069】
図9Aは、中心ワイヤーが比較的大きく、円形の断面を有し、前記ワイヤーを中心に位置付けることを助ける数個の放射状凸部を備えた一実施の形態を示す。
【0070】
図9Bは、中心ワイヤーが正方形の断面を有する一実施の形態を示す。
【0071】
図9Cは、中心ワイヤーが六角形の断面を有する一実施の形態を示す。
【0072】
図9Dは、近接して束ねられた7本のワイヤーがエレクトロスプレーキャピラリー内に設けられた一実施の形態を示す。
【0073】
本発明の好適な一実施の形態におけるエレクトロスプレーイオン化イオン源を、図1に示す。前記イオン源は、好適には加熱された窒素ガスを放出する脱溶媒和加熱器と、エレクトロスプレーイオン化キャピラリー3を取り囲むガス噴霧器キャピラリー2を含むプローブとを備えている。ワイヤー4が、エレクトロスプレーイオン化キャピラリー3内の中心に位置付けられている。
【0074】
前記イオン源の下流に設けられた質量分析計のイオン吸気円錐体5が示されている。イオン吸気円錐体5は、好適には、直径0.36mmのイオン入口オリフィス6を備えている。イオンは、好適には、イオン吸気円錐体5に設けられたイオン入口オリフィス6を通って質量分析計の真空系へ引き込まれる。
【0075】
好適には、外側のガス噴霧器キャピラリー2、エレクトロスプレーイオン化キャピラリー3、及び中心ワイヤー4に電圧Vcが印加される。電圧Vcは、好適には、33MΩの抵抗器を介して制限された電流である。
【0076】
前記脱溶媒和加熱器は、好適には窒素ガスが導入されるガス吸入口を有する環状加熱器(周囲温度から500℃まで制御可能)を備えるのが好ましい。前記加熱器は、好適には18mmの直径を有するガス排気口を有するのが好ましい。前記質量分析計のガス排気口とイオン入口オリフィス6との間の距離は、好適には、18mmに構成される。
【0077】
ガス噴霧器キャピラリー2は、好適には、ステンレス鋼製のチューブを備え、かつ、好適には、約30mmの長さである。ガス噴霧器キャピラリー2は、好適には、330μmの内径と、630μmの外径とを有する。ガス噴霧器キャピラリー2の中に位置するエレクトロスプレーイオン化キャピラリー3は、好適には長さ約200mmのステンレス鋼製のチューブを備えているのが好ましい。エレクトロスプレーイオン化キャピラリー3は、好適には、127μmの内径と、230μmの外径とを有する。
【0078】
操作において、エレクトロスプレーイオン化キャピラリー3の内腔は、好適には被分析物溶液の導管として機能する一方、最も外側のガス噴霧器キャピラリー2の内腔は、好適には窒素ガスを、又は別のガスを、例えば150l/時間の流速で流す。望ましくない気体の適切な抽出系(extractor system)へのガス抜きを容易にするために、好適には排出口を備えたカバー(図示せず)によって境界面が取り囲まれていてもよい。
【0079】
噴霧ガス無しで、直径90μmの中心ワイヤー4を使用して、低流速実験が好適に行われた。図2に示すように、中心ワイヤー4は、好適にエレクトロスプレーイオン化キャピラリー3の端部から距離lだけ突出するように配置された。前記突出距離は、好適に0.2〜0.8mmであるように構成された。図1に示すように、エレクトロスプレーキャピラリーチューブ3の端部とイオン吸気口オリフィス6の中心軸との間の距離xは、好適には4mmであるように構成された。同様に、ワイヤー4の中心軸とイオン吸気口オリフィス6の表面との間の距離zは、好適には4mmであるように構成された。
【0080】
前記中心ワイヤーの先端は、標準的なワイヤー切断バサミで概ね四角く切断してもよく、外側のイオン源カバー(the outer source enclosure)は除去されてもよい(オープンソース)。中心ワイヤー4がエレクトロスプレーキャピラリー3内の中心に位置付けられたと仮定すると、前記好適な実施の形態によれば、結果として生じる環状液体流動体の厚さtは、(127μm−90μm)/2=18.5μmである。
【0081】
噴霧ガスが使用される高流速実験もまた行われた。中心ワイヤー4の直径は90μmに維持された。中心ワイヤー4は、エレクトロスプレーキャピラリー3の端部から1mmの距離だけ突出するように配置された。前記距離x及びzは、好適にそれぞれ16mm及び2mmとなるように構成された。高流速実験に対して、中心ワイヤー4の先端は、4〜8μmの先端半径を有する鋭突な先端となるように電解エッチングされた。中心ワイヤー4がエレクトロスプレーキャピラリー3内の中心に位置付けられたと仮定すると、液体流動体の厚さtは、(127μm−90μm)/2=18.5μmであった。
【0082】
Waters Quattro Premier(登録商標)三連四重極型質量分析計を使用して、低流速と高流速の両方で実験データを得た。その結果を以下に示す。
【0083】
図3の曲線(a)は、従来の(すなわち、中心ワイヤーが無い)エレクトロスプレーイオン化イオン源を使用し、噴霧ガス流が提供された、MSモードにおいてレセルピンの[M+H]+イオンを観察したときに得られる典型的な温度反応を示している。前記距離xは12mmに、前記距離zは2mmに設定されていた。被分析物サンプルは、609pg/μlの濃度で10μl/分という比較的低流速で吹き込まれた。かかる条件下では、m/z609信号を最適化するためには、300℃という比較的高い温度が必要とされる。
【0084】
図3の曲線(b)は、中心ワイヤー4がエレクトロスプレーイオン化キャピラリー3に挿入されているが、噴霧ガスは使用されない本発明の一実施の形態におけるイオン源を使用して得られた、同様の信号を示している。中心ワイヤー4は直径90μmであった。前記距離xが4mm、前記距離zが4mmとなるように構成された。ガス噴霧器チューブ2に電圧Vcが印加されると、エレクトロスプレーイオン化キャピラリー3及び中心ワイヤー4は3.5kVであった。
【0085】
好適な実施の形態における前記イオン源は、従来の噴霧されたエレクトロスプレーイオン化イオン源を流速10μl/分で作動させて使用して得られた信号の約3.7倍の信号を生成することが分かった。但し、ある臨界温度(Tc)を超えると、前記スプレーが不安定になって前記信号が失われるという、臨界温度(Tc)が存在することが明らかである。この挙動は、サーモスプレーイオン源の挙動と同じである。さらに行われた実験は、中心ワイヤー4の直径を25μmから50μm、75μm、90μmへと大きくすると、信号強度も逐次大きくなることを示した(データは図示せず)。
【0086】
図4の曲線(a)は、30μl/分から1000μl/分の範囲の様々な比較的高い流速で従来のエレクトロスプレーイオン化プローブを使用して、レセルピンの[M+H]+イオンを観察したときの、記録された信号を示している。各測定ごとに、プローブ電圧、噴霧ガス流速、並びに、脱溶媒ガス流速及び温度が最適化された。質量分析計のイオン吸気円錐体5に対する、プローブ及び脱溶媒ガス流アセンブリの位置決めもまた、各測定ごとに最適化された。
【0087】
図4の曲線(b)は、本発明の一実施の形態におけるエレクトロスプレーイオン化プローブを使用して、レセルピンの[M+H]+イオンを観察したときの、同様の記録された信号を示している。この実施の形態によれば、直径90μmの鋭突な中心ワイヤー4がエレクトロスプレーキャピラリー3に挿入されていた。30μl/分から1000μl/分の範囲の様々な流速に対して、得られた信号が記録された。記録信号を最適化するために、各測定ごとに、脱溶媒ガス流に対してプローブ先端を位置決めしなおした。さらに、各測定ごとに、プローブの電圧及び位置、噴霧ガス流速、並びに、脱溶媒ガス流速及び温度も最適化された。
【0088】
図4の曲線(a)及び(b)に示されるデータの比較から、開口管状キャピラリー3内に鋭突な中心ワイヤー4を設けることにより、30〜1000μl/分の流速範囲における感度が大幅に向上(2.6〜5.1倍)することが分かる。
【0089】
いくつかのマトリックス抑制実験を行い、好適な実施の形態におけるイオン源が、比較的高い流速でイオン抑制効果の影響を受けるかどうかを判断した。以下に示す実験データはすべて、Waters Acquity(登録商標)カラム(C18、1.7μm、2.1×100mm、カラムオーブン温度:40℃)を備えたWaters Acquity(登録商標)UPLCシステムを使用して得られた。これらの実験によれば、ドクセピン、アミトリプチリン、ベラパミル各100pg/μlが10μl/分〜600μl/分の移動相勾配で吹き込まれた。前記移動相は、2つの溶媒A及びBの混合物を含んでいた。溶媒Aは、水と0.005%の酢酸とを含み、溶媒Bは、メタノールと0.005%の酢酸とを含んでいた。前記溶媒の組成は、0〜3分の時間枠では90%A/10%Bで保持され、3〜7分の時間枠では10%A/90%Bへと直線的に変化した。その後の時間では、前記溶媒の組成は10%A/90%Bに一定に保持された。溶出マトリックス(eluting matrix)は、広範囲の低レベル皇后物(不純物(contaminant))を含有するメタノール10μlを注入することによって提供された。これにより、研究の間中、安定し再現性のあるイオン抑制が可能となった。抑制実験はすべて、脱溶媒加熱器温度500℃で行われた。
【0090】
図5は、イオン抑制の不在下、すなわち、カラムも不純メタノール注入も無い場合の、変化する移動相勾配に対する、テスト被分析物混合物の典型的な反応を示している。ステンレス鋼製のエレクトロスプレーキャピラリーに印加される電圧Vcは、2kVであった。信号は、3つの前駆体―生成物イオン遷移、すなわち、被分析物ごとの1つの遷移からの、総イオン電流を表す。抑制が無い場合、エレクトロスプレーイオン化信号は、約tmax=6.6分で最大値に達した。初期信号強度Iiに対する最大信号強度Imaxの比率Rは、約R=3であることが分かった。
【0091】
図6は、マトリックス干渉(すなわち、不純注入)の存在下で従来の(すなわち、中心ワイヤーの無い)エレクトロスプレーイオン化プローブを使用して行われた、同様の実験の結果を示している。Vc=1kVについて、イオン源が水分量の多い水性溶媒(high aqueous solvent)に対して最適化されたが、有機物の多い有機溶媒(high organic solvent)(すなわち、50%Aを超える)では信号の急激な減衰(すなわち、イオン抑制効果)を示している。有機物が多い場合での抑制量は、Vc=2kVではある程度改善されるが、R=1.9という低い値及びtmax=5.5分での低い値によって証明されるように、それでも良好ではない。
【0092】
90μmの鋭突な先端の中心ワイヤー4がエレクトロスプレーキャピラリーチューブ3に挿入された好適な実施の形態におけるイオン源を使用して、同じ実験が行われた。その反応が図7に示されている。Vc=1kV又はVc=2kVの電圧が前記好適な実施の形態におけるエレクトロスプレーイオン化イオン源に印加されると、それぞれ、R値が2.5及び3.3、並びに、tmax値が6.5分及び6.6分であることによって証明されるように、大幅に低いイオン抑制効果が観察された。但し、図7を図5と比べると、前記好適なイオン源は、有機物の量が最大の場合(10%A)ではイオン抑制効果に対して低い感受性を示すことが分かる。
【0093】
上記に示した実験データは、鋭突な中心ワイヤー4をエレクトロスプレーイオン化キャピラリー3の内腔へ導入することにより、イオンの感受性を大幅に増大させ、かつ、イオン抑制効果を大幅に低減させることを、明確に示している。これらの結果は、鋭突な中心ワイヤー4をエレクトロスプレーイオン化キャピラリー3の内腔へ導入することが、初期の小滴の直径を小さくし、及び/又は比較的高い流速での小滴荷電効率を上げるという有利な効果を有するという仮説を裏付けている。
【0094】
図8は、好適な実施の形態における鋭突な中心ワイヤー4を組み込んだエレクトロスプレープローブ先端を示している。図8に示されるようなエレクトロスプレープローブ先端は、図3の曲線(b)、図4の曲線(b)、及び図7に関連して上記に示され議論された実験データを提供するために使用されたものである。前記中心ワイヤー4は、直径90mmであり、先端にかけて鋭突に形成されている。中心ワイヤー4はステンレス鋼でできている。エレクトロスプレーキャピラリー3は、内径127μmであり、その周りの噴霧ガスキャピラリー2は内径330μmであった。
【0095】
図9A〜Dは、エレクトロスプレーキャピラリー3内の中心ワイヤー4が各種異なる断面形状(cross-sectional profile)を有する、本発明の各種異なる実施の形態を示している。図9Aは、中心ワイヤー4が円形の断面を有し、かつ、中心ワイヤー4の長さに沿って所々に、放射状に延伸した凸部を形成する、つまみ状部分又はひだ状部分を有する一実施の形態を示している。前記放射状に延伸した凸部は、好適には、開口管状キャピラリー3内に中心ワイヤー4を位置付ける、又は中心に位置させるのを助ける。図9Bは、中心ワイヤー4が正方形の断面を有し、前記正方形の対角線が開口管状キャピラリー3の内径よりも僅かだけ短い、別の実施の形態を示している。中心ワイヤー4は、好適には、中央に保持される一方で、液体の流動用の通路を提供する。図9Cは、六角形断面を有する中心ワイヤー4を備えた、同様の実施の形態を示している。図9Dは、複数のワイヤーが密接に束ねられた構成で設けられた、一実施の形態を示している。1本のワイヤー、好適には最も中心のワイヤーが、先端にかけて鋭突に形成されているのが好ましい。別の実施の形態においては、それ以外のワイヤーの数本又はすべてが、前記のワイヤーに加えて、及び/又は前記のワイヤーのかわりに、先端にかけて鋭突に形成されている。
【0096】
本発明は、好適な実施の形態を参照しながら説明されているが、添付の特許請求の範囲に記載されているような本発明の範囲から逸脱することなく形態や詳細において様々な変更が可能であることは、当業者に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、好適な実施の形態におけるイオン源を示す。
【図2】図2は、好適な実施の形態における、エレクトロスプレーキャピラリーチューブから突出する中心ワイヤーと、エレクトロスプレーキャピラリーチューブに沿って流れる溶液の環状流とを示す。
【図3】図3は、従来のエレクトロスプレーイオン化イオン源を使用してレセルピンの[M+H]+イオンを観察して得られた温度応答(曲線(a))と、直径90μmの中心ワイヤーがキャピラリーチューブ内に挿入されているが噴霧ガスを使用していない本発明の実施の形態におけるイオン源を使用して得られた、同様の応答(曲線(b))とを示す。
【図4】図4は、従来のエレクトロスプレーイオン化イオン源を使用してレセルピンの[M+H]+を観察して得られた流速の応答(曲線(a))を示し、直径90μmの鋭突な中心ワイヤーがエレクトロスプレーキャピラリーチューブ内に挿入され、かつ、プローブ位置及び電圧があらためて最適化される本発明の実施の形態におけるイオン源を使用して、いかに大幅に改善された応答が得られたかを、曲線(b)が示す。
【図5】図5は、イオン抑制効果不在下の、変化する移動相勾配に対するテスト被分析物混合物の典型的な反応を示す。
【図6】図6は、マトリックス干渉(すなわち、不純注入)の存在下で従来のエレクトロスプレーイオン化プローブを使用して行われた実験の結果を示し、かつ、イオン抑制の効果を示す。
【図7】図7は、90μmの鋭突な先端の中心ワイヤーがエレクトロスプレーキャピラリーに挿入され、かつ、イオン抑制効果が大幅に低減された、本発明の一実施の形態におけるイオン源を使用して行われた同等の実験の結果を示す。
【図8】図8は、実験データを得るために使用された、好適な実施の形態における鋭突な先端の中心ワイヤーを有するエレクトロスプレープローブ先端を示す。
【図9A】図9Aは、中心ワイヤーが比較的大きく、円形の断面を有し、前記ワイヤーを中心に位置付けることを助ける数個の放射状凸部を備えた一実施の形態を示す。
【図9B】図9Bは、中心ワイヤーが正方形の断面を有する一実施の形態を示す。
【図9C】図9Cは、中心ワイヤーが六角形の断面を有する一実施の形態を示す。
【図9D】図9Dは、近接して束ねられた7本のワイヤーがエレクトロスプレーキャピラリー内に設けられた一実施の形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流動デバイスと、
前記第1流動デバイスの少なくとも一部を取り囲む第2流動デバイスと、
前記第1流動デバイス内に設置された1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物とを含む、イオン源。
【請求項2】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、(i)<10μm;(ii)10〜20μm;(iii)20〜30μm;(iv)30〜40μm;(v)40〜50μm;(vi)50〜60μm;(vii)60〜70μm;(viii)70〜80μm;(ix)80〜90μm;(x)90〜100μm;(xi)100〜110μm;(xii)110〜120μm;(xiii)120〜130μm;(xiv)130〜140μm;(xv)140〜150μm;(xvi)150〜160μm;(xvii)160〜170μm;(xviii)170〜180μm;(xix)180〜190μm;(xx)190〜200μm;(xxi)200〜250μm;(xxii)250〜300μm;(xxiii)300〜350μm;(xxiv)350〜400μm;(xxv)400〜450μm;(xxvi)450〜500μm;(xxvii)500〜600μm;(xxviii)600〜700μm;(xxix)700〜800μm;(xxx)800〜900μm;(xxxi)900〜1000μm;及び(xxxii)>1000μmからなる群から選択される外径を有する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、(i)<100μm2;(ii)100〜500μm2;(iii)500〜1000μm2;(iv)1000〜2000μm2;(v)2000〜3000μm2;(vi)3000〜4000μm2;(vii)4000〜5000μm2;(viii)5000〜6000μm2;(ix)6000〜7000μm2;(x)7000〜8000μm2;(xi)8000〜9000μm2;(xii)9000〜10000μm2;(xiii)10000〜15000μm2;(xiv)15000〜20000μm2;(xv)20000〜30000μm2;(xvi)30000〜40000μm2;(xvii)40000〜50000μm2;(xviii)50000〜60000μm2;(xix)60000〜70000μm2;(xx)70000〜80000μm2;(xxi)80000〜90000μm2;(xxii)90000〜100000μm2;及び(xxiii)>100000μm2からなる群から選択される断面積を有する、請求項1又は2に記載のイオン源。
【請求項4】
前記第1流動デバイスは平均内部断面積Aを有し、前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、(i)<0.05A;(ii)0.05〜0.10A;(iii)0.10〜0.15A;(iv)0.15〜0.20A;(v)0.20〜0.25A;(vi)0.25〜0.30A;(vii)0.30〜0.35A;(viii)0.35〜0.40A;(ix)0.40〜0.45A;(x)0.45〜0.50A;(xi)0.50〜0.55A;(xii)0.55〜0.60A;(xiii)0.60〜0.65A;(xiv)0.65〜0.70A;(xv)0.70〜0.75A;(xvi)0.75〜0.80A;(xvii)0.80〜0.85A;(xviii)0.85〜0.90A;(xix)0.90〜0.95A;及び(xx)>0.95Aの組み合わせ断面積又は全断面積を有する、請求項1、2又は3に記載のイオン源。
【請求項5】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物のうちの1つ以上は、前記第1流動デバイスの端部から距離lだけ延伸又は突出し、前記距離lは、(i)<0.25mm;(ii)0.25〜0.50mm;(iii)0.50〜0.75mm;(iv)0.75〜1.00mm;(v)1.00〜1.25mm;(vi)1.25〜1.50mm;(vii)1.50〜1.75mm;(viii)1.75〜2.00mm;及び(ix)>2.00mmからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項6】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物の少なくとも一部又は概ね全体は、概ね円形、長円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形又は多角形の断面を有する、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項7】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、ステンレス鋼、金属、導電体又は合金を含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項8】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、先端にかけて比較的鋭突に形成されている、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項9】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物が、先端半径rを有し、前記rは、(i)<1μm;(ii)1〜2μm;(iii)2〜3μm;(iv)3〜4μm;(v)4〜5μm;(vi)5〜6μm;(vii)6〜7μm;(viii)7〜8μm;(ix)8〜9μm;(x)9〜10μm;及び(xi)>10μmからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項10】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物の数が、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は10個よりも多い、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項11】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、異なるサイズ及び/又は断面形状もしくは領域を有する複数のワイヤー、ロッド又は障害物を含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項12】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、それらを前記第1流動デバイスの中心軸に近接して又は前記中心軸に概ね沿って位置決めする際に助けとなる、外側へ延伸した放射状の1つ以上の凸部を含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項13】
前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物は、(i)<−10kV;(ii)−10〜−9kV;(iii)−9〜−8kV;(iv)−8〜−7kV;(v)−7〜−6kV;(vi)−6〜−5kV;(vii)−5〜−4kV;(viii)−4〜−3kV;(ix)−3〜−2kV;(x)−2〜−1kV;(xi)−1〜0kV;(xii)0〜1kV;(xiii)1〜2kv;(xiv)2〜3kV;(xv)3〜4kV;(xvi)4〜5kV;(xvii)5〜6kV;(xviii)6〜7kV;(xix)7〜8kV;(xx)8〜9kV;(xxi)9〜10kV;及び(xxii)>10kVからなる群から選択される電圧に維持される、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項14】
前記第1流動デバイスは、エレクトロスプレーイオン化キャピラリーを含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項15】
前記第1流動デバイスは、1つ以上のキャピラリーチューブを含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項16】
前記第1流動デバイスは、(i)<50μm;(ii)50〜100μm;(iii)100〜150μm;(iv)150〜200μm;(v)200〜250μm;(vi)250〜300μm;(vii)300〜350μm;(viii)350〜400μm;(ix)400〜450μm;(x)450〜500μm;(xi)500〜550μm;(xii)550〜600μm;(xiii)600〜650μm;(xiv)650〜700μm;(xv)750〜800μm;(xvi)800〜850μm;(xvii)850〜900μm;(xviii)900〜950μm;(xix)950〜1000μm;及び(xx)>1000μmからなる群から選択される内径を有する、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項17】
前記第1流動デバイスは、(i)<50μm;(ii)50〜100μm;(iii)100〜150μm;(iv)150〜200μm;(v)200〜250μm;(vi)250〜300μm;(vii)300〜350μm;(viii)350〜400μm;(ix)400〜450μm;(x)450〜500μm;(xi)500〜550μm;(xii)550〜600μm;(xiii)600〜650μm;(xiv)650〜700μm;(xv)750〜800μm;(xvi)800〜850μm;(xvii)850〜900μm;(xviii)900〜950μm;(xix)950〜1000μm;及び(xx)>1000μmからなる群から選択される外径を有する、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項18】
前記第1流動デバイスは、概ね円形、長円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形又は多角形の断面を有する、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項19】
前記第1流動デバイスは、ステンレス鋼製、金属製、導電体製又は合金製のチューブを含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項20】
使用中に、前記第1流動デバイスへ被分析物溶液が供給される、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項21】
使用中に、(i)<1μl/分;(ii)1〜10μl/分;(iii)10〜50μl/分;(iv)50〜100μl/分;(v)100〜200μl/分;(vi)200〜300μl/分;(vii)300〜400μl/分;(viii)400〜500μl/分;(ix)500〜600μl/分;(x)600〜700μl/分;(xi)700〜800μl/分;(xii)800〜900μl/分;(xiii)900〜1000μl/分;(xiv)1000〜1500μl/分;(xv)1500〜2000μl/分;(xvi)2000〜2500μl/分;及び(xvii)2500>μl/分からなる群から選択される流速で、前記被分析物溶液が供給される、請求項20に記載のイオン源。
【請求項22】
前記第1流動デバイスは、前記1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物を前記第1流動デバイスの中心軸に近接して又は前記中心軸に概ね沿って位置決めする際に助けとなる、内側へ延伸した放射状の1つ以上の凸部を含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項23】
使用中に、前記第1流動デバイスは、(i)<−10kV;(ii)−10〜−9kV;(iii)−9〜−8kV;(iv)−8〜−7kV;(v)−7〜−6kV;(vi)−6〜−5kV;(vii)−5〜−4kV;(viii)−4〜−3kV;(ix)−3〜−2kV;(x)−2〜−1kV;(xi)−1〜0kV;(xii)0〜1kV;(xiii)1〜2kv;(xiv)2〜3kV;(xv)3〜4kV;(xvi)4〜5kV;(xvii)5〜6kV;(xviii)6〜7kV;(xix)7〜8kV;(xx)8〜9kV;(xxi)9〜10kV;及び(xxii)>10kVからなる群から選択される電圧に維持される、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項24】
使用中に、被分析物溶液が環状流動体として前記第1流動デバイスから放出される、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項25】
前記環状流動体は、(i)<10μm;(ii)10〜20μm;(iii)20〜30μm;(iv)30〜40μm;(v)40〜50μm;(vi)50〜60μm;(vii)60〜70μm;(viii)70〜80μm;(ix)80〜90μm;(x)90〜100μm;(xi)100〜110μm;(xii)110〜120μm;(xiii)120〜130μm;(xiv)130〜140μm;(xv)140〜150μm;(xvi)150〜160μm;(xvii)160〜170μm;(xviii)170〜180μm;(xix)180〜190μm;(xx)190〜200μm;(xxi)200〜250μm;(xxii)250〜300μm;(xxiii)300〜350μm;(xxiv)350〜400μm;(xxv)400〜450μm;(xxvi)450〜500μm;(xxvii)500〜600μm;(xxviii)600〜700μm;(xxix)700〜800μm;(xxx)800〜900μm;(xxxi)900〜1000μm;及び(xxxii)>1000μmからなる群から選択される外径を有する、請求項24に記載のイオン源。
【請求項26】
前記環状流動体は、(i)<10μm;(ii)10〜20μm;(iii)20〜30μm;(iv)30〜40μm;(v)40〜50μm;(vi)50〜60μm;(vii)60〜70μm;(viii)70〜80μm;(ix)80〜90μm;(x)90〜100μm;(xi)100〜110μm;(xii)110〜120μm;(xiii)120〜130μm;(xiv)130〜140μm;(xv)140〜150μm;(xvi)150〜160μm;(xvii)160〜170μm;(xviii)170〜180μm;(xix)180〜190μm;(xx)190〜200μm;(xxi)200〜250μm;(xxii)250〜300μm;(xxiii)300〜350μm;(xxiv)350〜400μm;(xxv)400〜450μm;(xxvi)450〜500μm;(xxvii)500〜600μm;(xxviii)600〜700μm;(xxix)700〜800μm;(xxx)800〜900μm;(xxxi)900〜1000μm;及び(xxxii)>1000μmからなる群から選択される内径を有する、請求項24又は25に記載のイオン源。
【請求項27】
前記環状流動体は、(i)<10μm;(ii)10〜20μm;(iii)20〜30μm;(iv)30〜40μm;(v)40〜50μm;(vi)50〜60μm;(vii)60〜70μm;(viii)70〜80μm;(ix)80〜90μm;(x)90〜100μm;(xi)100〜110μm;(xii)110〜120μm;(xiii)120〜130μm;(xiv)130〜140μm;(xv)140〜150μm;(xvi)150〜160μm;(xvii)160〜170μm;(xviii)170〜180μm;(xix)180〜190μm;(xx)190〜200μm;(xxi)200〜250μm;(xxii)250〜300μm;(xxiii)300〜350μm;(xxiv)350〜400μm;(xxv)400〜450μm;(xxvi)450〜500μm;(xxvii)500〜600μm;(xxviii)600〜700μm;(xxix)700〜800μm;(xxx)800〜900μm;(xxxi)900〜1000μm;及び(xxxii)>1000μmからなる群から選択される厚みを有する、請求項24、25又は26に記載のイオン源。
【請求項28】
前記第2流動デバイスは、(i)<50μm;(ii)50〜100μm;(iii)100〜150μm;(iv)150〜200μm;(v)200〜250μm;(vi)250〜300μm;(vii)300〜350μm;(viii)350〜400μm;(ix)400〜450μm;(x)450〜500μm;(xi)500〜550μm;(xii)550〜600μm;(xiii)600〜650μm;(xiv)650〜700μm;(xv)750〜800μm;(xvi)800〜850μm;(xvii)850〜900μm;(xviii)900〜950μm;(xix)950〜1000μm;及び(xx)>1000μmからなる群から選択される内径を有する、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項29】
前記第2流動デバイスは、概ね円形、長円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形又は多角形の断面を有する、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項30】
前記第2流動デバイスは、ガス噴霧器キャピラリーを含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項31】
前記第2流動デバイスは、1つ以上のキャピラリーチューブを含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項32】
前記第2流動デバイスは、ステンレス鋼製、金属製、導電体製又は合金製のチューブを含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項33】
使用中に、前記第2流動デバイスへ第1のガスが供給される、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項34】
使用中に、前記第1のガスが、(i)<1l/時間;(ii)1〜10l/時間;(iii)10〜50l/時間;(iv)50〜100l/時間;(v)100〜150l/時間;(vi)150〜200l/時間;(vii)200〜250l/時間;(viii)250〜300l/時間;(ix)300〜350l/時間;(x)350〜400l/時間;(xi)400〜450l/時間;(xii)450〜500l/時間;及び(xiii)>500l/時間からなる群から選択される流速で供給される、請求項33に記載のイオン源。
【請求項35】
使用中に前記第1流動デバイスに供給される被分析物溶液の噴霧化を、前記第1のガスが助ける、請求項33又は34に記載のイオン源。
【請求項36】
使用時に、前記第1のガスが、<1、1〜2、2〜3、3〜4、4〜5、5〜6、6〜7、7〜8、8〜9、9〜10又は>10barの圧力で供給される、請求項33、34又は35に記載のイオン源。
【請求項37】
使用中に、前記第2流動デバイスは、(i)<−10kV;(ii)−10〜−9kV;(iii)−9〜−8kV;(iv)−8〜−7kV;(v)−7〜−6kV;(vi)−6〜−5kV;(vii)−5〜−4kV;(viii)−4〜−3kV;(ix)−3〜−2kV;(x)−2〜−1kV;(xi)−1〜0kV;(xii)0〜1kV;(xiii)1〜2kv;(xiv)2〜3kV;(xv)3〜4kV;(xvi)4〜5kV;(xvii)5〜6kV;(xviii)6〜7kV;(xix)7〜8kV;(xx)8〜9kV;(xxi)9〜10kV;及び(xxii)>10kVからなる群から選択される電圧に維持される、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項38】
前記イオン源が、エレクトロスプレーイオン化イオン源を含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項39】
前記イオン源が、大気圧イオン化イオン源を含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項40】
気体を加熱して脱溶媒和ガス流を提供する脱溶媒和加熱器をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載のイオン源。
【請求項41】
先行する請求項のいずれかに記載のイオン源を含む、質量分析計。
【請求項42】
中心軸を有するイオン吸気円錐体を含み、前記イオン吸気円錐体が前記イオン源の下流に配置されている、請求項41に記載の質量分析計。
【請求項43】
前記イオン源が中心軸を有し、
前記イオン吸気円錐体の中心軸が、前記イオン源の前記中心軸と交点で交差し、
前記第1流動デバイスの端部から前記交点までの、前記イオン源の前記中心軸に沿った距離がxmmであり、
前記xが、(i)<1;(ii)1〜5;(iii)5〜10;(iii)10〜15;(iv)15〜20;(v)20〜25;(vi)25〜30;(vii)30〜35;(viii)35〜40;(ix)40〜45;(x)45〜50;及び(xi)>50からなる群から選択される、請求項42に記載の質量分析計。
【請求項44】
前記イオン源が中心軸を有し、
前記イオン吸気円錐体の前記中心軸が、前記イオン源の前記中心軸と交点で交差し、
前記イオン吸気円錐体の端部から前記交点までの、前記イオン吸気円錐体の前記中心軸に沿った距離がzmmであり、
前記zが、(i)<1;(ii)1〜5;(iii)5〜10;(iii)10〜15;(iv)15〜20;(v)20〜25;(vi)25〜30;(vii)30〜35;(viii)35〜40;(ix)40〜45;(x)45〜50;及び(xi)>50からなる群から選択される、請求項42又は43に記載の質量分析計。
【請求項45】
前記イオン源が中心軸を有し、
前記イオン源の前記中心軸と前記イオン吸気円錐体の前記中心軸との間の角度θが、(i)0〜10°;(ii)10〜20°;(iii)20〜30°;(iv)30〜40°;(v)40〜50°;(vi)50〜60°;(vii)60〜70°;(viii)70〜80°;(ix)80〜90°;(x)90〜100°;(xi)100〜110°;(xii)110°〜120°;(xiii)120〜130°;(xiv)130〜140°;(xv)140〜150°;(xvi)150〜160°;(xvii)160〜170°;及び(xviii)170〜180°からなる群から選択される、請求項42、43又は44に記載の質量分析計。
【請求項46】
使用中に、前記イオン吸気円錐体は、(i)<−10kV;(ii)−10〜−5kV;(iii)−5〜−4kV;(iv)−4〜−3kV;(v)−3〜−2kV;(vi)−2〜−1kV;(vii)−1000〜−900V;(viii)−900〜−800V;(ix)−800〜−700V;(x)−700〜−600V;(xi)−600〜−500V;(xii)−500〜−400V;(xiii)−400〜−300V;(xiv)−300〜−200V;(xv)−200〜−100V;(xvi)−100〜0V;(xvii)0〜100V;(xviii)100〜200V;(xix)200〜300V;(xx)300〜400V;(xxi)400〜500V;(xxii)500〜600V;(xxiii)600〜700V;(xxiv)700〜800V;(xxv)800〜900V;(xxvi)900〜1000V;(xxvii)1〜2kV;(xxviii)2〜3kV;(xxix)3〜4kV;(xxx)4〜5kV;(xxxi)5〜10kV;及び(xxxii)>10kVからなる群から選択される電圧に維持される、請求項42〜45のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項47】
(i)フーリエ変換(「FT」)質量分析器;(ii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器;(iii)飛行時間(「TOF」)質量分析器;(iv)直交加速式飛行時間(「oaTOF」)質量分析器;(v)軸方向加速式飛行時間質量分析器;(vi)磁場型質量分析器;(vii)ポール又は三次元四重極質量分析器;(viii)二次元又は線形四重極質量分析器;(ix)ペニングトラップ質量分析器;(x)イオントラップ質量分析器;(xi)フーリエ変換オービトラップ;(xii)静電イオンサイクロトロン共鳴質量分析器;(xiii)静電フーリエ変換質量分析器;及び(xiv)四重極ロッドセット質量フィルタ又は質量分析器からなる群から選択される質量分析器をさらに含む、請求項41〜46に記載の質量分析計。
【請求項48】
第1流動デバイスに被分析物溶液を供給する工程と、
前記第1流動デバイスの少なくとも一部を取り囲む第2流動デバイスに、第1のガスを供給する工程と、
1つ以上のワイヤー、ロッド又は障害物を前記第1流動デバイス内に設ける工程とを含む、サンプルをイオン化する方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法を含む質量分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【公表番号】特表2009−534806(P2009−534806A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507145(P2009−507145)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001480
【国際公開番号】WO2007/125297
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】