説明

赤外線センサー

【課題】 赤外線センサーの窓材の汚れによる赤外線センサーの出力異常を未然に検出して安定して被加熱物の温度測定ができる赤外線センサーを提供する。
【解決手段】 赤外線透過窓材6を取り付けた赤外線光路を有するハウジング2と、受光面を前記赤外線透過窓材6に向けてハウジング2内に設けられた所定数の互いに受光赤外線波長領域の異なる赤外線受光素子10と、赤外線照射面を前記赤外線透過窓材に向けてハウジング2内に設けられた赤外線光源12とを有する赤外線センサー100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を用いて物質の温度を非接触で測定する赤外線センサー及び同センサーを備える加熱装置に関する。
【0002】
本センサーの応用例として、特に調理に用いられる家庭用、もしくは業務用の誘導加熱調理器、ガスコンロ等の加熱調理器に取り付けて、鍋等の被加熱物の温度検出を非接触で行う赤外線センサーがある。
【背景技術】
【0003】
従来、火災等の不測の事故を防止することを目的として、コンロ等の加熱装置に温度センサを取付け、鍋等の被加熱物の温度を監視することが行われている。
【0004】
特許文献1には、コンロのバーナの下方に赤外線検出素子を取付け、被加熱物の放射する赤外線を非接触で前記赤外線検出素子で検出することにより、被加熱物の温度を測定することが記載されている。上記コンロにおいては、コンロの使用時に、調理中の油零れや湯零れ、ゴミの落下等により、赤外線検出素子の受光部が汚染されて検出感度の減少や変化が生じることを防止するため、赤外線検出素子の上方に窓材が取付けられている。また、バーナーの斜め下方に赤外線検出素子を取付けて、油零れ等の影響を窓材ができる限り受けないようにすることも記載されている。しかし、一旦汚れた窓材の清浄方法に関する記載はない。従って、窓材が汚れた場合は、検出温度が不正確になる。
【0005】
赤外線検出素子の汚れを除去する方法としては、赤外線センサの開口部に、光触媒を有する赤外線集光用レンズを取付ける方法が開示されている(特許文献2)。この方法においては、発光器から光触媒に光を当て、レンズに付着した汚れを光分解反応により分解除去させる。しかし、光触媒、及び光触媒に照射する光の種類等の具体的記載はない。
【0006】
特許文献3には、焦電型赤外線検出装置の結像レンズの表面に結露した水滴による赤外線の反射や屈折を防止するため、結像レンズ基材の表面に赤外線が透過可能な光触媒性酸化チタン粒子を含有する表面層を形成することを開示している。この表面層に紫外線を照射することにより、レンズ表面の親水性を増加させ、これにより水滴を均一な吸着水層にさせるものである。しかし、光触媒により、レンズの汚れを分解することは記載されていない。従って、この文献は、本発明と直接的な技術的関係はない。
【0007】
特許文献4は、付着汚れを自動的に分解除去できる赤外線透過窓材、それを用いる赤外線センサユニット、及び前記赤外線ユニットを組み込んだ加熱装置を開示する。この赤外線センサーユニットは、赤外線透過窓材と紫外線発光ダイオードをハウジング中に備えており、紫外線発光ダイオードより紫外線を窓材に照射することによって窓材の汚れを自動的に分解することが出来ることが記載されている。
【0008】
しかし、上記赤外線センサーユニットでは、汚れを分解するまでに一定時間を要する欠点がある。すなわち煮零れ等、調理中に生じる汚れを分解するまで正確な温度を測定する事が困難である。特に、固形物の食材が窓材を覆った場合には温度測定が出来ず、致命的な状況となる。この対策方法として特許文献5には赤外線検出手段に対し、汚れ抑制手段が設けられ、汚れが付着し温度測定が不能になる事を防止する方法が提案されているが、汚れ抑制手段の耐久性に問題がある。
【0009】
更に、基本的には、安全性の観点から窓材の汚れを音声等で調理者に知らしめ、自動で炎を切る手段が必要である。
【特許文献1】特開2002−340339号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3202562号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平9−229767号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2006−266827号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2006−214653号公報 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは窓材の汚れによる赤外線センサーの出力異常を未然に検出して安定した被加熱物の温度測定ができる赤外線センサー及び、赤外線センサーに汚れが発生した場合には調理者等に汚れた事を知らしめ、自動で炎を消す機能を有する加熱装置を提供することにある。
【0011】
本発明は以下に記載するものである。
【0012】
〔1〕 赤外線透過窓材を取り付けた赤外線光路を有するハウジングと、受光面を前記赤外線透過窓材に向けてハウジング内に設けられた所定数の互いに受光赤外線波長領域の異なる赤外線受光素子と、赤外線照射面を前記赤外線透過窓材に向けてハウジング内に設けられた赤外線光源とを有する赤外線センサー。
【0013】
〔2〕 赤外線光源の周囲に断熱スリーブを設けてなる〔1〕に記載の赤外線センサー。
【0014】
〔3〕 赤外線光源が、赤外線透過窓材の赤外線受光素子の上方部分を照射してなる〔1〕に記載の赤外線センサー。
【0015】
〔4〕 赤外線光路を有するハウジングと、前記赤外線光路に所定の角度傾斜して取り付けられた赤外線透過窓材と、受光面を前記赤外線透過窓材に向けてハウジング内に設けられた所定数の互いに受光赤外線波長領域の異なる赤外線受光素子と、赤外線照射面を前記赤外線透過窓材に向けると共に、赤外線透過窓材に関して前記赤外線受光素子と反対側のハウジングに取り付けられた赤外線光源とを有する赤外線センサー。
【0016】
〔5〕 被加熱物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の加熱量の制御手段と、前記被加熱物から放射される赤外線の強さを検出する〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の赤外線センサーと、赤外線光源のオン・オフ制御を行い、オン時・オフ時それぞれのときの赤外線受光素子の出力より前記赤外線透過窓材の汚れの有無を検出する演算制御手段と表示手段とを備え、前記赤外線センサーにより検出される赤外線の強度に基づいて加熱量を制御すると共に表示手段を制御することを特徴とする加熱装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の赤外線センサーは、赤外線透過窓材に赤外線を照射して赤外線透過窓材の汚れを常時観測しているので、窓材に汚れが付着したことを確実に、かつ直ちに検出できる。その結果、この赤外線センサーの素子出力は長期間にわたり信頼性が高くなる。
【0018】
更に、窓材の汚れによる赤外線センサーの出力異常を検出できるので、この赤外線センサーを組み込んだ加熱装置は、汚れが発生した場合には調理者に汚れた事を直ちに知らしめ、自動で炎を消す機能を備えることができるので安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明につき、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の赤外線センサーの一例を示す側面断面図である。図1中、100は赤外線センサーで、2は内部が中空の筒状のハウジングである。前記ハウジング2の底部は底壁4で閉塞されている。前記ハウジング2の上部は赤外線透過窓材6により閉塞されている。前記底壁4と前記赤外線透過窓材6とにより、前記ハウジング2の中空部8は外部と隔離された赤外線光路を構成している。
【0021】
前記底壁4には、センサ搭載用基板9が立設されている。
【0022】
前記センサ搭載用基板9には、所定数(本図では2個)の赤外線検出素子10がその赤外線受光面を前記赤外線透過窓材6に向けて搭載され、前記赤外線検出素子10の光軸は、赤外線光路の光軸Xと平行になっている。前記赤外線受光素子10には1.5〜1.8、2〜2.4、3.1〜4.2、8〜17μの範囲の赤外線を選択的に透過させる光学フィルタ(不図示)のいずれかが装着されている。赤外線受光素子の数は2以上が好ましい。
【0023】
12は赤外線光源で、前記センサ搭載用基板9上に取り付けられ、前記赤外線光源12の照射する赤外線の光軸14は中空部8で構成する赤外線光路の光軸Xに対して所定角θ傾斜している。θは70°以下が好ましく、50°以下がより好ましく、30〜5°が特に好ましい。その結果、前記赤外線光源12の光軸14は、赤外線透過窓材6の赤外線受光素子10の上方部分16を照射している。
【0024】
赤外線光源12は熱線ヒータまたはPt、Ru等をパターン印刷した面状ヒータもしくは、ニクロム等のコイル線材で構成されており、赤外線波長依存性のないものが好ましい。また赤外線光源12への通電パターンはパルス通電で、具体的には1〜10Hzで十分である。
【0025】
18は前記赤外線光源12の周囲を覆って形成された筒状の断熱スリーブで、その上方は開口している。この前記断熱スリーブ18は、前記赤外線光源12の発熱が前記赤外線受光素子10に伝わって、前記赤外線受光素子10を加熱することを防いでいる。なお、20は前記赤外線受光素子10のリード線で、このリード線20を介して前記赤外線受光素子10に入射した赤外線量に対応する検出信号が外部に取り出される。
【0026】
22は前記赤外線光源12に電力を供給するリード線で、このリード線22を介して前記赤外線光源12に電力が供給され、赤外線が放射される。
【0027】
赤外線透過窓材6は、赤外線が透過できる材料で形成された平板である。その材質は、シリコン、ゲルマニウム、サファイヤ、石英、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム等が例示され、透過する赤外線の波長等に応じて適宜選択される。赤外線透過窓材6の寸法も特に制限が無く、用途に応じて適宜選択される。
【0028】
次に、上記赤外線センサー100の動作を説明する。
【0029】
温度が測定されるべき被加熱物(不図示)から、温度に応じて放射される赤外線は、赤外線センサー100の赤外線透過窓材6を通って中空部8内に入り、次いで、各赤外線受光素子10により被加熱物の温度に対応する赤外線量が検出される。
【0030】
赤外線透過窓材6の表面24は、時間の経過と共に、汚れ26により汚染される。
【0031】
一方、断熱スリーブ18で周囲を囲まれた赤外線光源12からは、赤外線が表面24に向けて照射されている。この照射される赤外線は、窓材表面24に付着した汚れ26によって反射される。この反射された赤外線は赤外線受光素子10により、検出され、赤外線量に対応する検出信号をリード線20を介して外部に送出する。この検出信号を観測することにより窓の汚れ状態がわかる。窓材表面24に汚れ26がない場合は、赤外線光源の光は外部へ放出される。従って、光源がONの時の出力は、汚れがない場合は殆ど変化がないが、汚れがある場合は、通常よりも大きな出力を現すことになる。
【0032】
また、赤外線光源12の温度は50〜1000℃が好ましい。
【0033】
赤外線光源12はパルス通電制御である。但し、電力としては、直流、交流、三角波、パルス波等任意の電力を供給できる。赤外線光源12の過熱を防止するためにはパルス波が好ましい。また、後述する被加熱物の温度測定と汚れに基づく赤外線量の測定とを区別して測定する為には、パルス波を用いることは好適である。
【0034】
図2は本発明赤外線センサーの他の例を示す側面断面図である。この例においては、赤外線光源12は、その光軸を中空部8の光軸と一致させて設けている。更に、断熱スリーブ18の上部側は傾斜して切欠いてあるが、その他の構成は図1と同様であるので同一箇所に同一符号を付けて、その説明を省略する。
【0035】
この例においては、断熱スリーブ18の上部側は赤外線受光素子10に近接する断熱スリーブ18の壁aが赤外線受光素子10から遠い断熱スリーブ18の壁bよりも低く形成されている。このため、赤外線光源12から照射される赤外線は赤外線受光素子10の上部部分16に到達しやすくなっている。その他の符号は図1と同様である。
【0036】
図3は本発明の赤外線センサーの更に他の例を示す側面断面図である。この例にあっては、赤外線透過窓材6は赤外線光路の光軸Xに対して90℃以下の挟角αでハウジング2内に取り付けてある。αとしては80°〜10°が好ましく、60°〜30°がより好ましい。更に、赤外線光源12は赤外線透過窓材6に対して赤外線受光素子10と反対側のハウジング2の壁2aに取り付けてられている。その他の符号は図1と同様である。図3の場合、赤外線透過窓材6に汚れがない時は赤外線光源から放射される赤外線は赤外線透過窓材6を通過して中空部8に入り、内壁で乱反射した赤外線が赤外線受光素子に入っていくため、出力が増大する。汚れがある時は赤外線は汚れにより反射されて中空部8に入らず、従って赤外線受光素子にも入らず、その結果赤外線受光素子の出力はそのままである。
【0037】
この場合、この例は、組み立て性、艤装性を考慮し、赤外線光源をハウジングに対し水平に配置し、赤外線透過窓材もしくはレンズを傾けて配置した例である。この場合赤外線受光素子は、赤外線光源からの赤外線エネルギーをハウジング内壁の反射光からもらうため、内壁の面粗度は可能な限り良いことが望ましい。尚、組み立て性、艤装性に制限が無い場合にはこの限りではなく、例えば赤外線光源を上部に赤外線受光素子と対向するように配置し、アーム等で移動可能な機構を設け、汚れ検知の時に目的の位置に移動するようにしても構わない。
(加熱装置)
図4は、本発明過熱装置の一例であるコンロ120を示すものである。
【0038】
図4中、42は天板で、加熱口44が形成されている。前記加熱口44の周りには、五徳46が配設されている。48は、加熱口44の下方に設けられたバーナで、環状ケーシング部50と、前記環状ケーシング部50に連結された混合管52と、混合管52に連結されたガスノズル54とからなる。ガス配管56から供給されるガスは、ノズル54を通って混合管52内で空気が混合された後、環状ケーシング部50に形成された炎口58から炎59となって放出される。これらは、加熱手段の一例を構成している。
【0039】
炎59により、被加熱物60は加熱され、被加熱物60の温度に対応した赤外線が被加熱物60から放射される。前記放射された赤外線は、環状ケーシング部50の下方に配設された汁受皿62の中央に穿設された赤外線透過孔64を通って赤外線センサー100に到達する。
【0040】
このセンサー100は、図1〜3に記載された構造を有するものである。以下、図1に示す赤外線センサーを例にして説明する。赤外線は図1に示す赤外線センサー100の赤外線透過窓材6を通って赤外線光路を構成する中空部8内に入り、次いで赤外線検出素子10により被加熱物の温度に対応する赤外線量が検出される。赤外線センサー100は検出波長が異なる複数の赤外線検出素子10を備えて、波長の異なる赤外線を同時に検出することにより、測定誤差を減少させている。この点に付、詳述すると、この方法(多色法)は、最低2個の異なる波長域の赤外線検出素子を用い、それらの出力比を算出することにより放射率をキャンセルし、放射率が異なっていても正確な温度を検出する方法である。
【0041】
赤外線検出素子10の出力は、演算制御手段65に送られ、信号処理が行われる。例えば、赤外線検出素子10の出力が被加熱物60の過熱状態や、被加熱物60が存在しないことを示す場合は、加熱量の制御手段である調整弁66に信号が送られ、調整弁66が閉じられ、コンロ120に供給される混合ガスの供給が停止される。即ち、これらは前記加熱手段の加熱量の制御手段の一例を構成している。
【0042】
図1において赤外線透過窓材6が汚れ26で汚染されていない場合は、赤外線光源12の放射する赤外線は、赤外線透過窓材6を透過して赤外線センサー100外部に放出され、赤外線受光素子10には赤外線光源12の照射する赤外線はほぼ検出されない。
【0043】
赤外線透過窓材6の表面24は、調理時に被加熱物60内の内容物があふれ出て汚染されることがある。
【0044】
この場合は、赤外線光源12から照射される赤外線が汚れ26により反射される。この赤外線は赤外線透過窓材6を通って赤外線受光素子10に入射する。赤外線受光素子10は、入射する赤外線量に応じた検出信号を演算制御手段65に送り、演算制御手段65が汚れが有ると判断すると、例えば調整弁66に信号が送られ、調整弁66が閉じられる。更に、警報等の表示手段68が作動して、赤外線透過窓材6が汚れていることを利用者に知らせる。利用者が窓材を清掃することにより、赤外線センサー100は最初の状態に復帰する。更に演算制御手段65は、赤外線光源のオン・オフ制御を行い、オン時とオフ時の赤外線受光素子の出力を検出し、これらの出力を比較する機能を有し、これにより、汚れの有無を検出するものである。
【0045】
赤外線光源より放射される赤外線は、パルス信号であり、被加熱物から常時発せられている赤外線に重畳されて受光素子で検出されるが、汚れ検知にはパルス信号のON、OFF時の差分を読み取ることで汚れ度合いを検知する。
【0046】
なお、上記説明においては、コンロを例として説明したが、これに限られず各種の加熱装置に同様にして赤外線センサユニットを組込める。更に、上記例においては図1に示される赤外線センサーを用いたが、これに限られず、図2、3に記載した赤外線センサーを用いても良い。
【0047】
また、赤外線透過窓材に特開2005−274559で示した光触媒機能を持たせても構わない。
【実施例】
【0048】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
実施例1
図1に示す赤外線センサーを製造した。直径4cm、厚さ2mmのシリコン製赤外線透過窓材をアルミ製の直径5cm、高さ8cmのハウジングに取付けた。赤外線透過窓材の下方6cmの位置に受光面が配置するように赤外線受光素子2個をセンサ搭載用基板に取付けた。赤外線受光素子はサーモパイルを用い3.7〜4.0μmと9.2〜9.7μmの赤外線透過領域を有するフィルターを装着した。
【0050】
受光素子と同様に赤外線光源(CAL−SENSOR社製商品名 赤外パルス光源)を取付けた。その際、赤外線光源の光軸を赤外線光路に対して20°傾けた。これにより、赤外線光源の光軸は赤外線受光素子の真上の赤外線透過窓材と交差した。更に、赤外線光源の周囲にステンレス製の円筒状の断熱スリーブを取付けた。
【0051】
なお、赤外線光源、赤外線受光素子の各リード線は、底壁を貫通して、赤外線センサーの外部に取出した。
【0052】
上記センサーを用いて、汚れ物質として水道水が窓材に付着した際の表示温度の変化を調べた。赤外線光源にパルス高0.9V、パルス幅0.5m秒、パルス間隔0.5m秒の連続パルスを供給した。このパルスに同期させて、受光素子から信号を取出した。
【0053】
その結果を図5に示す。尚、被測定物(熱源)の温度は180℃一定とした。仮に測定精度の規格を表示温度±15℃とした場合、汚れ物質が窓材の40%占有しただけで被加熱物から発せられる赤外線が遮断され、表示温度は公差範囲を逸脱した。
【0054】
次に、上記赤外線センサーを組込んで、図4に示す加熱装置を製造した。この加熱装置は、被加熱物の温度を正確に表示すると共に、センサーの赤外線透過窓材が汚れると、警報機が鳴り、汚れを警告した。
【0055】
実施例2
赤外線光源の取付け位置が相違する以外は実施例1と同様にして図3に示す赤外線センサを製造した。
【0056】
上記実施例1と同様に汚れ物質(水)の量を変化させた場合の赤外線受光素子の出力変化割合を測定した。変化割合とは、汚れが無い状態で赤外線光源を通電した際の赤外線受光素子の出力を1とし、汚れが付着した際の出力減少量を汚れが無い状態との比で表現したものである。その結果を図6に示す。汚れ物質の量が増すにつれ、赤外線光源がオン時に得られる赤外線受光素子の出力が減少することが分かった。精度規格±15℃を満足するためには、例えば閾値を0.5に設定することで汚れ度合いを確実に検知できた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の赤外線センサーの一例を示す側面断面図である。
【図2】本発明の赤外線センサーの他の一例を示す側面断面図である。
【図3】本発明の赤外線センサーの更に他の一例を示す側面断面図である。
【図4】本発明の加熱装置の構成の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の赤外線センサーの赤外線透過窓材に付着した汚れの占有率と表示温度との関係を示すグラフである
【図6】本発明の赤外線センサーの赤外線透過窓材に付着した汚れの占有率と赤外線受光素子出力変化割合との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
100 赤外線センサー
2 ハウジング
4 底壁
6 赤外線透過窓材
8 中空部
9 センサ搭載用基板
10 赤外線受光素子
12 赤外線光源
14 光軸
16 上方部分
18 断熱スリーブ
20 赤外線受光素子のリード線
22 赤外線光源のリード線
24 窓材表面
26 汚れ
a 、b 壁
2a ハウジング壁
X 光軸
α、θ 角度
42 天板
44 加熱口
46 五徳
48 バーナ
50 環状ケーシング部
52 混合管
54 ガスノズル
56 ガス配管
58 炎口
59 炎
60 被加熱物
62 汁受皿
64 赤外線透過孔
65 制御部
66 調整弁
68 表示手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線透過窓材を取り付けた赤外線光路を有するハウジングと、受光面を前記赤外線透過窓材に向けてハウジング内に設けられた所定数の互いに受光赤外線波長領域の異なる赤外線受光素子と、赤外線照射面を前記赤外線透過窓材に向けてハウジング内に設けられた赤外線光源とを有する赤外線センサー。
【請求項2】
赤外線光源の周囲に断熱スリーブを設けてなる請求項1に記載の赤外線センサー。
【請求項3】
赤外線光源が、赤外線透過窓材の赤外線受光素子の上方部分を照射してなる請求項1に記載の赤外線センサー。
【請求項4】
赤外線光路を有するハウジングと、前記赤外線光路に所定の角度傾斜して取り付けられた赤外線透過窓材と、受光面を前記赤外線透過窓材に向けてハウジング内に設けられた所定数の互いに受光赤外線波長領域の異なる赤外線受光素子と、赤外線照射面を前記赤外線透過窓材に向けると共に、赤外線透過窓材に関して前記赤外線受光素子と反対側のハウジングに取り付けられた赤外線光源とを有する赤外線センサー。
【請求項5】
被加熱物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の加熱量の制御手段と、前記被加熱物から放射される赤外線の強さを検出する請求項1乃至4のいずれかに記載の赤外線センサーと、赤外線光源のオン・オフ制御を行い、オン時・オフ時それぞれのときの赤外線受光素子の出力より前記赤外線透過窓材の汚れの有無を検出する演算制御手段と表示手段とを備え、前記赤外線センサーにより検出される赤外線の強度に基づいて加熱量を制御すると共に表示手段を制御することを特徴とする加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−298627(P2008−298627A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145811(P2007−145811)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】