赤外線センサ装置
【課題】人体を確実に検出できる赤外線センサ装置を提供する。
【解決手段】赤外線を検出する複数のセンサ素子52をマトリクス状に配列した赤外線センサ本体41を設ける。赤外線を赤外線センサ本体41の受光面に導く光学系を設ける。光学系により赤外線センサ本体41の受光面に導かれる赤外線の強度分布に応じて、各センサ素子52の感度を調整する感度調整手段61を設ける。感度調整手段61では、赤外線の強度が強い位置のセンサ素子52の感度を低く、赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子52の感度が高く調整し、各センサ素子52から出力する検出信号の強度を均等にする。
【解決手段】赤外線を検出する複数のセンサ素子52をマトリクス状に配列した赤外線センサ本体41を設ける。赤外線を赤外線センサ本体41の受光面に導く光学系を設ける。光学系により赤外線センサ本体41の受光面に導かれる赤外線の強度分布に応じて、各センサ素子52の感度を調整する感度調整手段61を設ける。感度調整手段61では、赤外線の強度が強い位置のセンサ素子52の感度を低く、赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子52の感度が高く調整し、各センサ素子52から出力する検出信号の強度を均等にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を検出する赤外線センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の検知エリア内の熱源である人体を検出して照明器具や警報器などを制御するための人感センサ用途に、人体から放出される赤外線を検出する赤外線センサが用いられている。
【0003】
この赤外線センサとしては、一般に焦電型赤外線センサが多く用いられているが、この焦電型赤外線センサの場合には、人体の動きに応じた赤外線エネルギの変化で検出するので、人体に動きがないと検出することができない。そのため、赤外線を検出する複数のセンサ素子が二次元に配列されて受光面が形成された赤外線センサを用い、人体の動きにかかわらず人体からの赤外線の有無を検出できるようにした赤外線センサ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、このような赤外線センサ装置では、検知エリア内の赤外線を赤外線センサに導くレンズやフィルタなどの光学系が用いられる。レンズとしては、複数のレンズを有する複眼レンズや、凸レンズあるいは凹レンズなどの単眼レンズが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−76424号公報(第11−13頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の赤外線センサ装置では、光学系の光学特性によって受光面に導かれる赤外線の強度分布に差が生じ、特に単眼レンズなどの場合には受光面の中央域と周辺域とで赤外線の強度分布に差が生じやすい。このように赤外線の強度分布に差がある場合には、例えば、人体が検知エリア内を横切る際、人体から放出される赤外線量は同じであるにもかかわらず、検知エリア内を横切る人体の場所によって、赤外線の強度が変化して誤動作し、人体を確実に検出できないことがあるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、熱源を確実に検出できる赤外線センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の赤外線センサ装置は、赤外線を検出する複数のセンサ素子が配列されて受光面が形成された赤外線センサ本体と;赤外線を赤外線センサ本体の受光面に導く光学系と;光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に応じて、各センサ素子の赤外線を検出する感度を調整する感度調整手段と;を具備しているものである。
【0009】
本発明および以下の各発明において、特に言及しない限り、各構成の定義または許容範囲は以下のとおりである。
【0010】
赤外線センサ本体は、複数のセンサ素子が二次元に配列されて受光面が形成されているが、イメージセンサではなく、熱源からの赤外線の有無を各センサ素子で検出するものである。そのため、センサ素子には、例えば、赤外線の有無に伴う温度変化により出力電流や出力電圧が変化する特性を有するボロメータやサーモパイルなどの熱電変換素子などが用いられる。出力電流が変化する場合には複数のセンサ素子を並列に接続することで検出でき、出力電圧が変化する場合には複数のセンサ素子を直列に接続することで検出できる。センサ素子の配列は、例えば、マトリクス状やライン状などいずれの配列でもよい。
【0011】
光学系は、例えば、赤外線を透過するフィルタ、所定の検知エリア内の赤外線を赤外線センサ本体の受光面に集光するレンズなどが含まれる。レンズとしては、複数のレンズを有する複眼レンズや、凸レンズあるいは凹レンズなどの単眼レンズを用いてもよい。このようなレンズの光学特性によって、各センサ素子に到達する赤外線の強度分布が決定される。光学系の光学特性には、レンズ自体が有する光学特性のほか、検知エリアのレンズ光軸に正対する中心部からレンズに到達する赤外線の強度が強く(高く)、周辺部からレンズに到達する赤外線の強度が弱く(低く)なるという光学特性なども含まれる。
【0012】
感度調整手段は、センサ素子が受光する赤外線量や熱伝導特性などを物理的に調整することでセンサ素子の感度を調整してもよいし、センサ素子に供給する電圧や電流を変化させることでセンサ素子の感度を電気的に調整してもよい。
【0013】
赤外線の強度に応じたセンサ素子の感度調整は、相対的なものであり、赤外線の強度が強い位置および弱い位置の両方のセンサ素子の感度を調整してもよいし、赤外線の強度が強い位置のセンサ素子の感度を一定として赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子についてのみ感度が高くなるように調整してもよい。
【0014】
赤外線センサ装置は、例えば、熱源として人体を検知して、照明状態を切り換える照明装置や、警報を発する防犯装置などの負荷制御装置に用いられる。
【0015】
請求項2記載の赤外線センサ装置は、請求項1記載の赤外線センサ装置において、感度調整手段は、少なくとも赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子の感度を高く調整するものである。
【0016】
このように、赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子の感度を高く調整すれば、赤外線センサ本体から出力する出力信号の強度を高いレベルで均等にできる。
【0017】
請求項3記載の赤外線センサ装置は、請求項1記載の赤外線センサ装置において、感度調整手段は、各センサ素子の感度を可変調整するものである。
【0018】
各センサ素子の感度を可変調整するには、例えば、各センサ素子に供給する電圧や電流を変えることにより、各センサ素子の感度を任意に可変調整できる。
【0019】
請求項4記載の赤外線センサ装置は、請求項3記載の赤外線センサ装置において、赤外線センサ本体の受光面の中央域より周辺域に位置するセンサ素子から出力される検出信号の強度が強くなるように感度調整手段を制御する第1の調整モードと、各センサ素子から出力される検出信号の強度が等しくなるように感度調整手段を制御する第2の調整モードとを有し、各センサ素子で赤外線を検出して出力する検出信号によって赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態では、感度調整手段を第1の調整モードで制御し、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、感度調整手段を第2の調整モードで制御する制御手段を具備しているものである。
【0020】
制御手段は、例えば、赤外線センサ装置の赤外線センサ本体を制御する赤外線センサ制御部で構成してもよいし、赤外線センサ装置を用いる電気機器の制御手段と兼用してもよい。
【0021】
閾値1は、検出対象の熱源の検出により得られる赤外線センサ本体の出力信号の最小となる強度の値より小さく、検知エリア内に存在する他の熱源の検出により得られる赤外線センサ本体の出力信号より大きい値とする。
【0022】
閾値2は、閾値1より大きく、かつ、検出対象の熱源の検出により得られる赤外線センサ本体の出力信号の最小となる強度より大きいとともに最大となる強度の値より小さい値とする。
【0023】
請求項5記載の赤外線センサ装置は、請求項4記載の赤外線センサ装置において、制御手段は、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、感度調整手段を第1の調整モードと第2の調整モードとで交互に切り換えて制御するものである。
【0024】
第1の調整モードと第2の調整モードとで交互に切り換える間隔は、使用条件などに応じて適宜設定され、特に限定されるものではない。
【0025】
請求項6記載の赤外線センサ装置は、赤外線を検出する複数のセンサ素子が配列されて受光面が形成された赤外線センサ本体と;赤外線を赤外線センサ本体の受光面に導く光学系と;光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子の光学系対応データを記憶する記憶部と;各センサ素子の駆動を制御し、各センサ素子から出力される検出信号を記憶部に記憶されている各センサ素子の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得する赤外線センサ制御部と;を具備しているものである。
【0026】
各センサ素子の光学系対応データは、例えば、光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布の逆数に相当する数値などがある。
【0027】
赤外線センサ制御部は、各センサ素子の駆動を制御して各センサ素子の検出信号を取得するものであり、例えば、各センサ素子から出力される検出信号を増幅手段で増幅して取得する場合、各センサ素子から出力される検出信号の増幅率を対応する光学系対応データに基づき可変して補正してもよいし、また、各センサ素子から出力される検出信号を増幅して演算手段に取り込んでから、演算手段の内部で各センサ素子の検出信号を対応する光学系対応データに基づき補正する演算をしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
請求項1記載の赤外線センサ装置によれば、感度調整手段にて、光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に応じて、各センサ素子の赤外線を検出する感度を調整できるため、赤外線の強度差の影響を補正し、熱源を確実に検出できる。
【0029】
請求項2記載の赤外線センサ装置によれば、請求項1記載の赤外線センサ装置の効果に加えて、感度調整手段にて、少なくとも赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子の感度を高く調整するため、各センサ素子から出力する検出信号の強度を等しく補正でき、熱源の位置にかかわらず、熱源を確実に検出できる。
【0030】
請求項3記載の赤外線センサ装置によれば、請求項1記載の赤外線センサ装置の効果に加えて、感度調整手段によって、各センサ素子の感度を可変調整するため、光学系の特性や制御条件などに応じて各センサ素子の感度を随時可変調整できる。
【0031】
請求項4記載の赤外線センサ装置によれば、請求項3記載の赤外線センサ装置の効果に加えて、各センサ素子で赤外線を検出して出力する検出信号によって赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態では、赤外線センサ本体の受光面の中央域より周辺域に位置するセンサ素子から出力する検出信号の強度が強くなるように感度調整手段を第1の調整モードで制御するため、熱源が検知エリア内に入ってきたことを確実に検出でき、また、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、各センサ素子から出力する検出信号の強度が等しくなるように感度調整手段を第2の調整モードで制御するため、検出エリア内の熱源を確実に検出できる。
【0032】
請求項5記載の赤外線センサ装置によれば、請求項4記載の赤外線センサ装置の効果に加えて、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、感度調整手段を第1の調整モードと第2の調整モードとで交互に切り換えて制御するため、複数の熱源が検知エリア内に入るのを確実に検出できる。
【0033】
請求項6記載の赤外線センサ装置によれば、光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子の光学系対応データを記憶部に予め記憶し、赤外線センサ制御部にて、各センサ素子の駆動を制御し、各センサ素子から出力される検出信号を記憶部に記憶されている各センサ素子の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得するため、赤外線の強度差の影響を補正し、熱源を確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す赤外線センサ装置の回路図である。
【図2】同上赤外線センサ装置の赤外線センサ本体の正面図である。
【図3】同上赤外線センサ装置の断面図である。
【図4】同上赤外線センサ装置を用いた照明装置の回路図である。
【図5】同上赤外線センサ装置の光学系に凹レンズを用いた場合の赤外線強度、センサ感度および出力信号強度を説明するもので、(a)はセンサ感度の均等とした場合(第1の調整モード)の説明図、(b)は出力信号強度を均等にするためにセンサ感度を調整した場合(第2の調整モード)の説明図である。
【図6】同上赤外線センサ装置の光学系に凸レンズを用いた場合の赤外線強度、センサ感度および出力信号強度を説明するもので、(a)はセンサ感度の均等とした場合の説明図、(b)は出力信号強度を均等にするためにセンサ感度を調整した場合の説明図である。
【図7】同上赤外線センサ装置による熱源の検出について、赤外線センサ本体から出力する出力信号の強度と時間との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示す赤外線センサ装置の1つのセンサ素子の正面図である。
【図9】同上1つのセンサ素子の断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態を示す赤外線センサ装置のブロック図である。
【図11】同上光学系の光学特性によって決定されるセンサ素子に到達する赤外線の強度分布を示す説明図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態を示す赤外線センサ装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0036】
図1ないし図7に第1の実施の形態を示す。
【0037】
まず、赤外線センサ装置を用いた照明装置について説明する。図4に示すように、照明装置11は、商用交流電源eを整流平滑する整流平滑部12に、ハーフブリッジ型のインバータ回路13が接続されている。このインバータ回路13は、整流平滑部12に対して、スイッチング素子としてのFETQ1,Q2が直列に接続されている。
【0038】
インバータ回路13の出力端となるFETQ2の両端間には、直流成分を遮断するコンデンサC1と、共振用巻線(共振用インダクタ)Lと、光源である放電灯、すなわち蛍光ランプ14のフィラメントFLa,FLbとの直列回路が接続され、これらフィラメントFLa,FLbの他端間には、フィラメント予熱としても機能する共振用コンデンサC2が接続されている。この結果、商用交流電源e、整流平滑部12、インバータ回路13、コンデンサC1、共振用巻線Lおよび共振用コンデンサC2などにより点灯回路16が構成されているとともに、この点灯回路16と蛍光ランプ14とが接続されることにより、主回路17が構成されている。
【0039】
さらに、FETQ1,Q2の制御端子であるゲートには、これらFETQ1,Q2のオンオフを切り換えるドライバ21が接続されている。このドライバ21は、点灯制御回路22により動作が制御される。
【0040】
点灯制御回路22は、状態センサ25および赤外線センサ装置26と接続されるA/D変換器27と、このA/D変換器27およびドライバ21と接続される制御手段としてのマイコン28とを有している。そして、点灯回路16、ドライバ21、点灯制御回路22、状態センサ25、赤外線センサ装置26、A/D変換器27およびマイコン28により、点灯制御装置29が構成されている。
【0041】
状態センサ25は、蛍光ランプ14の電流値を検出する電流センサ31と、蛍光ランプ14の電圧値を検出する電圧センサ32とを備え、これら検出した電流値および電圧値をアナログのデータ(シリアルデータ)としてA/D変換器27に出力するように構成されている。
【0042】
赤外線センサ装置26は、例えば廊下や部屋の天井面などの高所に設置され、所定の検知エリア内に存在する熱源である人体から放出される赤外線(遠赤外の放射エネルギ)を検出し、赤外線の検出に応じた赤外線センサ装置26からの出力信号をアナログのデータとしてA/D変換器27に出力するように構成されている。
【0043】
A/D変換器27は、状態センサ25、あるいは赤外線センサ装置26から入力されたアナログのデータをA/D変換してマイコン28へと出力するものである。なお、このA/D変換器27は、マイコン28の内部に搭載されていてもよい。
【0044】
マイコン28は、中央演算処理装置であるCPU34、A/D変換器27に接続されたI/Oポート35、CPU34などが参照するためのROM36、RAM37、およびドライバ21をPWM制御するPWM制御部38などを備えている。PWM制御部38は、数十kHz〜200kHz程度の周波数でドライバ21によりFETQ1,Q2を交互にオンオフすることで、FETQ2のドレイン−ソース間に所定の高周波交流を発生させるものである。
【0045】
次に、図3に示すように、赤外線センサ装置26は、赤外線センサ本体41、およびこの赤外線センサ本体41を収容するパッケージ42を備えている。
【0046】
このパッケージ42は、赤外線センサ本体41を配置する台座43、および赤外線センサ本体41を覆って台座43に取り付けられるカバー44を備え、赤外線センサ本体41が収容される内部が真空状態に密閉されている。台座43には赤外線センサ本体41に接続された給電用および信号出力用の複数の端子45が外部に突出され、カバー44には赤外線センサ本体41に対向して形成された開口部に赤外線を赤外線センサ本体41に導く光学系46が配置されている。
【0047】
光学系46は、赤外線を赤外線センサ本体41に集光するレンズ47、および赤外線を透過するフィルタ48を備えている。これらレンズ47およびフィルタ48は、赤外線のうち、例えば8μm〜12μmの波長を透過するゲルマニウム、シリコン、ポリエチレンおよび塩化カルシウムなどの材料で形成されている。レンズ47には、凸レンズあるいは凹レンズなどの単眼レンズが用いられている。
【0048】
また、図2に示すように、赤外線センサ本体41は、基体51、およびこの基体51上に二次元状であってマトリクス状に配列された赤外線を検出する複数のセンサ素子52を備え、これら複数のセンサ素子52によって赤外線を検出する受光面53が形成されている。この赤外線センサ本体41は、複数のセンサ素子52が二次元に配列されて受光面53が形成されているが、イメージセンサではなく、熱源からの赤外線の有無を各センサ素子52で検出するものである。センサ素子52には、例えば、温度により出力電流が変化する特性を有するとともに、供給電圧により感度つまり検出した赤外線強度に対して出力する検出信号強度の比が変化する特性を有する例えばボロメータやサーモパイルなどの熱電変換素子が用いられている。
【0049】
基体51には、複数のセンサ素子52に電源を供給する電源レギュレータ54、複数のセンサ素子52から出力する検出信号を入力して出力信号を出力する出力回路55、およびこれら電源レギュレータ54、出力回路55および各センサ素子52の動作を制御する制御手段としての制御回路56などが接続されている。なお、図2では、便宜的に、センサ素子52を5×5のマトリクス状に配列した例を示すが、これに限られるものではない。
【0050】
また、図1に示すように、各センサ素子52には、電源が供給される電源供給線である信号線59と、検出する赤外線強度に応じた検出信号を出力する信号出力線である信号線60とが接続されている。
【0051】
複数のセンサ素子52は、レンズ47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布に応じて、複数のグループに分けられ、すなわち、周辺域のグループ、周辺域と中央域との間の中央域のグループ、中央域のグループの3つのグループに分けられる。
【0052】
電源レギュレータ54は、複数のセンサ素子52のグループ毎に個別に用いられ、周辺域のグループの各センサ素子52に信号線59で並列に接続される第1の電源レギュレータ54a、中間域のグループの各センサ素子52に信号線59で並列に接続される第2の電源レギュレータ54b、中央域のグループのセンサ素子52に信号線59で接続される第3の電源レギュレータ54cを備えている。
【0053】
これら電源レギュレータ54a〜54cは、制御回路56から制御信号を入力して対応する領域のセンサ素子52に供給する電源電圧を個別に可変設定し、各領域にセンサ素子52の感度を可変調整する感度調整手段61として構成されている。
【0054】
出力回路55は、1つで、全てのセンサ素子52が信号線60で並列に接続され、これら全てのセンサ素子52の検出信号の和を出力信号として出力する。
【0055】
次に、第1の実施の形態の動作を説明する。
【0056】
まず、図4において照明装置11の動作を説明する。
【0057】
商用交流電源eは、整流平滑部12により整流平滑され、点灯制御回路22のPWM制御部38で生成したPWM信号をドライバ21に供給し、FETQ1,Q2を交互にオンオフすることで、FETQ2のドレイン−ソース間に高周波交流が発生し、共振用巻線Lと共振用コンデンサC2により蛍光ランプ14のフィラメントFLa,FLbの予熱制御および始動電圧印加制御が行われ、蛍光ランプ14が点灯する。
【0058】
同時に、状態センサ25の電流センサ31および電圧センサ32により検出する蛍光ランプ14の電流値および電圧値をA/D変換器27で変換してRAM37に格納する。また、赤外線センサ装置26からの出力信号をA/D変換器27で変換してRAM37に格納する。
【0059】
そして、CPU34は、ROM36に格納された点灯制御プログラムに従って、RAM37に格納された蛍光ランプ14の電流値および電圧値の出力結果を読み出し、設定された制御目標値との差分が小さくなるように、例えばPWM制御部38での点灯周波数データを変更する。この変更された点灯周波数データがPWM制御部38に渡されると、この点灯周波数データに応じてFETQ1,Q2を駆動するための信号をドライバ21に出力し、ドライバ21によりインバータ回路13の動作を制御する。
【0060】
また、CPU34は、ROM36に格納された判定プログラムに従って、RAM37に格納された赤外線センサ装置26からの出力信号の出力結果を解析し、蛍光ランプ14の点灯消灯を含む制御目標値を変更する。
【0061】
この結果、点灯回路16や蛍光ランプ14の動作状態と、赤外線センサ装置26により取得した人体からの赤外線の有無とに応じて、蛍光ランプ14が点灯制御される。
【0062】
次に、赤外線センサ装置26の動作を説明する。
【0063】
図5(a)に示すように、光学系46のレンズ47に凹レンズを用いた場合には、レンズ47によって赤外線センサ本体41の受光面53に導かれる赤外線の強度分布は、レンズ光軸を中心として、周辺域ほど赤外線強度が強く、中央域ほど赤外線強度が弱くなる光学特性を示す。この場合、全てのセンサ素子52の感度が均等であると、出力回路55から出力する出力信号の強度分布も同様の傾向を示す。
【0064】
このような光学特性において、所定の検知エリア内を人体が通過すると、人体から放出される赤外線量はかわらないにもかかわらず、人体が検知エリアの周辺域にいるときには出力信号の強度が強く、中央域にいるときには出力信号の強度が弱くなり、人体の検出が安定せず、誤検出が発生するおそれがある。
【0065】
このような場合には、図5(b)に示すように、制御回路56の制御で感度調整手段61によって、周辺域ほどセンサ素子52の感度を低く、中央域ほどセンサ素子52の感度を高くするように調整することにより、出力回路55から出力する出力信号の強度分布を均等にすることができる。
【0066】
図6(a)に示すように、光学系46のレンズ47に凸レンズを用いた場合には、レンズ47によって赤外線センサ本体41の受光面53に導かれる赤外線の強度分布は、レンズ光軸を中心として、周辺域ほど赤外線強度が弱く、中央域ほど赤外線強度が強くなる光学特性を示す。この場合、全てのセンサ素子52の感度が均等であると、出力回路55から出力する出力信号の強度分布も同様の傾向を示す。
【0067】
このような光学特性において、所定の検知エリア内を人体が通過すると、人体から放出される赤外線量はかわらないにもかかわらず、人体が検知エリアの周辺域にいるときには出力信号の強度が弱く、中央域にいるときには出力信号の強度が強くなり、人体の検出が安定せず、誤検出が発生するおそれがある。
【0068】
このような場合には、図6(b)に示すように、制御回路56の制御で感度調整手段61によって、周辺域ほどセンサ素子52の感度を高く、中央域ほどセンサ素子52の感度を低くするように調整することにより、出力回路55から出力する出力信号の強度分布を均等にすることができる。
【0069】
このように、制御回路56の制御で感度調整手段61によって、レンズ47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布に応じて、赤外線の強度が強い位置のセンサ素子52の感度を低く、赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子52の感度を高くするように調整するため、各センサ素子52から出力する検出信号の強度を均等に補正でき、検知エリア内での人体の場所にかかわらず、誤動作なく、人体を確実に検出できる。
【0070】
なお、赤外線の強度に応じたセンサ素子52の感度調整は、相対的なものであり、赤外線の強度が強い位置および弱い位置の両方のセンサ素子52の感度を調整してもよいし、赤外線の強度が強い位置のセンサ素子52の感度を一定として赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子52についてのみ感度が高くなるように調整してもよい。このように、赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子52についてのみ感度が高くなるように調整すれば、出力回路55から出力する出力信号の強度を高いレベルで均等にでき、人体を確実に検出できるようになる。
【0071】
また、赤外線センサ装置26を利用した熱源である人体の検出方法について、図7を参照して説明する。ここでは、人体が検知エリアを通過するものとする。
【0072】
この場合、レンズ47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布が、図5(a)に示すように、レンズ光軸を中心として、周辺域ほど赤外線強度が強く、中央域ほど赤外線強度が弱くなる光学特性にあり、出力回路55から出力する出力信号の強度分布も同様にある。なお、感度調整手段61によって、出力回路55から出力する出力信号の強度分布も同様になるように、各センサ素子52の感度を調整してもよい。
【0073】
そして、検知エリア内に人体が存在しないと、出力回路55の出力信号の強度が閾値1より小さい状態にあり、検知エリア内に人体が存在しないと判断できる。
【0074】
検知エリア内の周辺域に人体が入ってくると、出力回路55の出力信号の強度が閾値2より大きくなり、検知エリア内に人体が入ったと判断できる。
【0075】
検知エリア内の周辺域から中央域に人体が移動すると、出力回路55の出力信号の強度が閾値2より小さくなるが、閾値1より大きい状態を保つため、検知エリア内に人体が存在すると判断できる。
【0076】
検知エリア内から人体が出るとき、出力回路55の出力信号の強度が閾値2より大きくなった後、閾値1より小さくなり、検知エリア内から人体が出たと判断できる。
【0077】
また、このような人体の検出に際し、感度調整手段61による各センサ素子52の感度調整によって、より確実な人体の検出ができるようになる。
【0078】
この場合、制御回路56は、図5(a)に示したように、赤外線センサ本体41の受光面53の中央域より周辺域に位置するセンサ素子52から出力する検出信号の強度が強くなるように、つまり出力回路55から出力する出力信号の強度が中央域より周辺域で強くなるように、感度調整手段61(電源レギュレータ54a〜54c)を制御する第1の調整モードと、図5(b)に示したように、各センサ素子52から出力する検出信号の強度つまり出力回路55から出力する出力信号の強度が均等になるように、感度調整手段61(電源レギュレータ54a〜54c)を制御する第2の調整モードとを有し、これらモードを切換制御する。
【0079】
出力回路55から出力する出力信号が閾値1より小さい状態では、感度調整手段61を第1の調整モードで制御し、検知エリア内の周辺域に人体が入ってくるのを確実に検出できるようにする。
【0080】
検知エリア内の周辺域に人体が入ると、出力回路55から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値2より大きくなり、さらに、検知エリア内の周辺域から中央域に人体が移動し、出力回路55から出力する出力信号が閾値2より小さく閾値1より大きい状態となると、感度調整手段61を第2の調整モードに切り換える。これにより、検知エリア内での人体の場所にかかわらず、出力回路55から出力する出力信号の強度が均等になり、検知エリア内に存在する人体を確実に検出できる。なお、第2の調整モードにおいても、出力回路55から出力する出力信号は閾値1と閾値2との間にあるように調整される。
【0081】
検知エリア内から人体が出るとき、出力回路55の出力信号の強度が閾値1より小さくなり、検知エリア内から人体が出たと判断できる。
【0082】
さらに、検知エリア内に人体が存在していることを検出している期間中は、感度調整手段61を第1の調整モードと第2の調整モードとで交互に切り換えて制御するようにしてもよい。
【0083】
この場合、第2の調整モードの期間中には検知エリア内に存在する人体を検出し、第1の調整モードの期間中には検知エリア内に存在する人体とは別の人体が検知エリア内に入ってくるのを検出でき、複数の人体が検知エリア内に入るのを確実に検出できる。
【0084】
第1の調整モードの期間に出力回路55から出力する出力信号が閾値2より大きくなった後に閾値1より小さくなるか、第2の調整モードの期間に出力回路55から出力する出力信号が閾値1より小さい状態になれば、検知エリア内から人体が出たことを判断できる。その後は、感度調整手段61を第1の調整モードで制御し、次の人体の検出に待機する。
【0085】
次に、図8および図9に第2の実施の形態を示す。図8は赤外線センサ装置の1つのセンサ素子の正面図、図9は1つのセンサ素子の断面図である。
【0086】
赤外線センサ本体41の基体51の表面には、各センサ素子52を配置する複数の窪み部64が形成されている。この窪み部64内には、センサ素子52に接続された信号線59,60により、センサ素子52が基体51に対して非接触となる浮いた状態に支持されている。
【0087】
これは、センサ素子52では、吸収した赤外線エネルギが熱エネルギとなり、この熱エネルギをできるだけ放出しないようにしてセンサ素子52を温度上昇させることにより、赤外線の検出能力を高めることができるためである。
【0088】
次に、図10および図11に第3の実施の形態を示す。図10は赤外線センサ装置のブロック図、図11は光学系の光学特性によって決定されるセンサ素子に到達する赤外線の強度分布を示す説明図である。
【0089】
図10に示すように、赤外線センサ装置26は、赤外線センサ本体41、光学系46、および赤外線センサ本体41を制御する赤外線センサ制御部71を備えている。
【0090】
赤外線センサ本体41は、複数のセンサ素子52が行方向および列方向に沿ってマトリクス状に配列されたセンサ素子52群であり、赤外線センサ制御部71で制御される行方向のセンサ駆動手段72および列方向のセンサ駆動手段73によって各センサ素子52が個別に順次駆動され、駆動された各センサ素子52から順次出力される検出信号がセンサ信号出力手段74から赤外線センサ制御部71に順次出力される。
【0091】
赤外線センサ制御部71は、制御手段としての演算処理手段76を有し、この演算処理手段76は駆動信号生成手段77に対して各センサ素子52を順次駆動するための駆動信号のパルス列を生成させ、この駆動信号生成手段77から生成した駆動信号をセンサ駆動手段72,73に出力して各センサ素子52を順次駆動させる。
【0092】
さらに、赤外線センサ制御部71は、センサ信号出力手段74から順次出力される各センサ素子52の検出信号を増幅する増幅手段78、この増幅手段78で増幅された電圧値を保持するサンプル・ホールド回路(S/H)79、このサンプル・ホールド回路(S/H)79で保持された検出信号の電圧値を離散電圧値に変換するアナログ・デジタル変換器(ADC)80、拡散電圧値に変換された検出信号を格納する記憶部としてのメモリ素子81、および演算処理手段76の指令により増幅手段78で増幅する際の増幅率を可変させる増幅率制御信号を生成する増幅率制御信号生成手段82を有している。
【0093】
また、光学系46は、例えば、赤外線センサ本体41の受光面53から数m先の、数m角の検知エリアの範囲からの赤外線の放射エネルギを、数mm角の受光面53に到達させるような光学的特性をもつ。
【0094】
また、図11には、8mm四方のレンズ47により、レンズ47に対向する2m先の5m四方の平面状の黒体から、レンズ47に到達する赤外線の放射エネルギを計算した結果を示す。前提として、黒体の中心は、レンズ47の光軸上にある。x軸、y軸は黒体上の座標を、z軸は対応する座標(x、y)から到達する赤外線の放射エネルギを表す。x、yは、黒体の面を5cm四方の格子に区切り、各格子の中央の座標として計算した。その結果、黒体の中心位置からレンズ47の中心に到達する赤外線の放射エネルギが最も強く、黒体の中心から遠ざかる位置ほど弱くなり、その比率は中心/最遠点=10/1程度になる。つまり、黒体上の熱源が均一の温度であっても、レンズ47に到達する赤外線の放射エネルギが熱源の場所によって10倍程度異なってしまう。
【0095】
したがって、光学系46の光学特性には、上述したレンズ47自体が有する光学特性のほかに、検知エリアとレンズ47との位置関係による光学特性なども含まれる。
【0096】
このような光学系46の光学特定のままでは、検知エリアを人体が通過する場合に、検知エリアの中心部と周辺部とで同じ人体が異なる温度であると判断してしまう。
【0097】
そこで、赤外線センサ制御部71において、赤外線センサ本体41の各センサ素子52から出力される検出信号を、光学系47の光学特性に基づき補正する。
【0098】
そのために、メモリ素子81には、予め、光学系47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子52の光学系対応データを記憶しておく。この各センサ素子52の光学系対応データとしては、例えば、光学系47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布の逆数に相当する数値などがある。
【0099】
さらに、演算処理手段76は、駆動信号生成手段77から出力するどのパルスの駆動信号で赤外線センサ本体41の中のどのセンサ素子52を駆動しているか管理しているとともに、対応するセンサ素子52から出力される検出信号が、センサ信号出力手段74から出力される検出信号全体の中のどこに存在するかも管理している。
【0100】
そして、演算処理手段76は、各センサ素子52の駆動を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号をメモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得する。すなわち、演算処理手段76は、増幅率制御信号生成手段82を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号を増幅手段78で増幅する際の増幅率を、メモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき可変させる。具体的には、センサ素子52群がm行n列で構成されおり、あるセンサ素子52の座標を(i,j)とすると(1≦i≦m、1≦j≦n)、その座標(i,j)のセンサ素子52から出力される検出信号を、メモリ素子81に記憶されている座標(i,j)に対応する光学系対応データに基づき、増幅手段78の増幅率を制御する。
【0101】
これにより、検知エリアの中心部に位置する人体からの赤外線がレンズ47を通じて到達するセンサ素子52から出力される検出信号を増幅手段78で増幅する際の増幅率を低くし、検知エリアの周辺部に位置する人体からの赤外線がレンズ47を通じて到達するセンサ素子52から出力される検出信号を増幅手段78で増幅する際の増幅率を高くする。この結果、演算処理手段76が取得する検知エリア全体での検出信号の強度分布が均等化され、光学系46の光学特性の影響を除くことができ、温度情報を精度よく検出することができる。
【0102】
このように、光学系47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子52の光学系対応データをメモリ素子81に予め記憶し、赤外線センサ制御部71にて、各センサ素子52の駆動を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号をメモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得するため、赤外線の強度差の影響を補正し、検知エリア内の人体を確実に検出できる。
【0103】
次に、図12に第4の実施の形態を示す。図12は赤外線センサ装置のブロック図である。
【0104】
第3の実施の形態と同様に、赤外線センサ制御部71において、赤外線センサ本体41の各センサ素子52から出力される検出信号を、光学系47の光学特性を考慮して補正するものであって、演算処理手段76が、各センサ素子52の駆動を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号をメモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得する。
【0105】
第3の実施の形態では、演算処理手段76が、増幅率制御信号生成手段82を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号を増幅手段78で増幅する際の増幅率を、メモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき可変させるのに対して、第4の実施の形態では、演算処理手段76で、各センサ素子52から出力される検出信号を演算する際に、メモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき補正する。なお、これ以外は、第3の実施の形態と同様である。
【0106】
具体的には、センサ素子52群がm行n列で構成されおり、各センサ素子52の座標を(i,j)とし(1≦i≦m、1≦j≦n)、各センサ素子52から出力される検出信号をs(i,j)とし、対応するメモリ素子81の光学系対応データをm(i,j)とすると、演算処理手段76でのs(i,j)×m(i,j)という演算により、センサ素子52から出力される検出信号を補正する。
【0107】
これにより、検知エリアの周辺部に位置する人体からの赤外線がレンズ47を通じて到達するセンサ素子52から出力される検出信号を相対的に大きくなるような補正し、検知エリアの中心部に位置する人体からの赤外線がレンズ47を通じて到達するセンサ素子52からの出力される検出信号を相対的に小さくなるように補正する。この結果、光学系47の光学特性の影響を除くことができ、温度情報を精度よく検出することができる。
【0108】
このように、光学系47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子52の光学系対応データをメモリ素子81に予め記憶し、赤外線センサ制御部71にて、各センサ素子52の駆動を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号をメモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得するため、赤外線の強度差の影響を補正し、検知エリア内の人体を確実に検出できる。
【0109】
また、メモリ素子81内に、光学系対応データのm(i,j)だけでなく、過去のある時点でのセンサ素子52の検出信号sb(i,j)も格納しておいてもよい。この場合、現時点での検出信号s(i,j)と過去のある時点での検出信号sb(i,j)とについて、対応する座標同士で差分を検出することで、温度分布の変化の有無を検出することができる。つまり、差分がゼロとなる座標では、過去のある時点と現時点とでの温度が変化していないことを表し、差分がゼロ以外の値を示す座標では、過去のある時点と現時点とでの温度が変化したことを表す。
【0110】
この過去のある時点をキャリブレーションの時点とすることができる。ある時点での各センサ素子52の検出信号を基準温度データとしてメモリ素子81内に格納しておく。この基準温度データと現時点での検出信号との差分に対して、光学系対応データに基づき補正することで、基準温度に対する温度変化情報を取得できる。
【0111】
そして、過去のある時点を、時間の経過とともに、現時点に近い時点に更新し、その時点でのセンサ素子52の検出信号をメモリ素子81内に格納し、それまでのデータから置き換える。例えば、常に現時点の1秒前の検出信号をメモリ素子52に格納するように更新すれば、1秒前と現時点とでの検出信号の差分に対して光学系対応データに基づき補正することで、1秒毎の検知エリア内での人体の動きを取り出すことができる。
【符号の説明】
【0112】
26 赤外線センサ装置
41 赤外線センサ本体
46 光学系
52 センサ素子
53 受光面
56 制御手段としての制御回路
61 感度調整手段
71 赤外線センサ制御部
81 記憶部としてのメモリ素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を検出する赤外線センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の検知エリア内の熱源である人体を検出して照明器具や警報器などを制御するための人感センサ用途に、人体から放出される赤外線を検出する赤外線センサが用いられている。
【0003】
この赤外線センサとしては、一般に焦電型赤外線センサが多く用いられているが、この焦電型赤外線センサの場合には、人体の動きに応じた赤外線エネルギの変化で検出するので、人体に動きがないと検出することができない。そのため、赤外線を検出する複数のセンサ素子が二次元に配列されて受光面が形成された赤外線センサを用い、人体の動きにかかわらず人体からの赤外線の有無を検出できるようにした赤外線センサ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、このような赤外線センサ装置では、検知エリア内の赤外線を赤外線センサに導くレンズやフィルタなどの光学系が用いられる。レンズとしては、複数のレンズを有する複眼レンズや、凸レンズあるいは凹レンズなどの単眼レンズが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−76424号公報(第11−13頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の赤外線センサ装置では、光学系の光学特性によって受光面に導かれる赤外線の強度分布に差が生じ、特に単眼レンズなどの場合には受光面の中央域と周辺域とで赤外線の強度分布に差が生じやすい。このように赤外線の強度分布に差がある場合には、例えば、人体が検知エリア内を横切る際、人体から放出される赤外線量は同じであるにもかかわらず、検知エリア内を横切る人体の場所によって、赤外線の強度が変化して誤動作し、人体を確実に検出できないことがあるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、熱源を確実に検出できる赤外線センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の赤外線センサ装置は、赤外線を検出する複数のセンサ素子が配列されて受光面が形成された赤外線センサ本体と;赤外線を赤外線センサ本体の受光面に導く光学系と;光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に応じて、各センサ素子の赤外線を検出する感度を調整する感度調整手段と;を具備しているものである。
【0009】
本発明および以下の各発明において、特に言及しない限り、各構成の定義または許容範囲は以下のとおりである。
【0010】
赤外線センサ本体は、複数のセンサ素子が二次元に配列されて受光面が形成されているが、イメージセンサではなく、熱源からの赤外線の有無を各センサ素子で検出するものである。そのため、センサ素子には、例えば、赤外線の有無に伴う温度変化により出力電流や出力電圧が変化する特性を有するボロメータやサーモパイルなどの熱電変換素子などが用いられる。出力電流が変化する場合には複数のセンサ素子を並列に接続することで検出でき、出力電圧が変化する場合には複数のセンサ素子を直列に接続することで検出できる。センサ素子の配列は、例えば、マトリクス状やライン状などいずれの配列でもよい。
【0011】
光学系は、例えば、赤外線を透過するフィルタ、所定の検知エリア内の赤外線を赤外線センサ本体の受光面に集光するレンズなどが含まれる。レンズとしては、複数のレンズを有する複眼レンズや、凸レンズあるいは凹レンズなどの単眼レンズを用いてもよい。このようなレンズの光学特性によって、各センサ素子に到達する赤外線の強度分布が決定される。光学系の光学特性には、レンズ自体が有する光学特性のほか、検知エリアのレンズ光軸に正対する中心部からレンズに到達する赤外線の強度が強く(高く)、周辺部からレンズに到達する赤外線の強度が弱く(低く)なるという光学特性なども含まれる。
【0012】
感度調整手段は、センサ素子が受光する赤外線量や熱伝導特性などを物理的に調整することでセンサ素子の感度を調整してもよいし、センサ素子に供給する電圧や電流を変化させることでセンサ素子の感度を電気的に調整してもよい。
【0013】
赤外線の強度に応じたセンサ素子の感度調整は、相対的なものであり、赤外線の強度が強い位置および弱い位置の両方のセンサ素子の感度を調整してもよいし、赤外線の強度が強い位置のセンサ素子の感度を一定として赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子についてのみ感度が高くなるように調整してもよい。
【0014】
赤外線センサ装置は、例えば、熱源として人体を検知して、照明状態を切り換える照明装置や、警報を発する防犯装置などの負荷制御装置に用いられる。
【0015】
請求項2記載の赤外線センサ装置は、請求項1記載の赤外線センサ装置において、感度調整手段は、少なくとも赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子の感度を高く調整するものである。
【0016】
このように、赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子の感度を高く調整すれば、赤外線センサ本体から出力する出力信号の強度を高いレベルで均等にできる。
【0017】
請求項3記載の赤外線センサ装置は、請求項1記載の赤外線センサ装置において、感度調整手段は、各センサ素子の感度を可変調整するものである。
【0018】
各センサ素子の感度を可変調整するには、例えば、各センサ素子に供給する電圧や電流を変えることにより、各センサ素子の感度を任意に可変調整できる。
【0019】
請求項4記載の赤外線センサ装置は、請求項3記載の赤外線センサ装置において、赤外線センサ本体の受光面の中央域より周辺域に位置するセンサ素子から出力される検出信号の強度が強くなるように感度調整手段を制御する第1の調整モードと、各センサ素子から出力される検出信号の強度が等しくなるように感度調整手段を制御する第2の調整モードとを有し、各センサ素子で赤外線を検出して出力する検出信号によって赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態では、感度調整手段を第1の調整モードで制御し、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、感度調整手段を第2の調整モードで制御する制御手段を具備しているものである。
【0020】
制御手段は、例えば、赤外線センサ装置の赤外線センサ本体を制御する赤外線センサ制御部で構成してもよいし、赤外線センサ装置を用いる電気機器の制御手段と兼用してもよい。
【0021】
閾値1は、検出対象の熱源の検出により得られる赤外線センサ本体の出力信号の最小となる強度の値より小さく、検知エリア内に存在する他の熱源の検出により得られる赤外線センサ本体の出力信号より大きい値とする。
【0022】
閾値2は、閾値1より大きく、かつ、検出対象の熱源の検出により得られる赤外線センサ本体の出力信号の最小となる強度より大きいとともに最大となる強度の値より小さい値とする。
【0023】
請求項5記載の赤外線センサ装置は、請求項4記載の赤外線センサ装置において、制御手段は、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、感度調整手段を第1の調整モードと第2の調整モードとで交互に切り換えて制御するものである。
【0024】
第1の調整モードと第2の調整モードとで交互に切り換える間隔は、使用条件などに応じて適宜設定され、特に限定されるものではない。
【0025】
請求項6記載の赤外線センサ装置は、赤外線を検出する複数のセンサ素子が配列されて受光面が形成された赤外線センサ本体と;赤外線を赤外線センサ本体の受光面に導く光学系と;光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子の光学系対応データを記憶する記憶部と;各センサ素子の駆動を制御し、各センサ素子から出力される検出信号を記憶部に記憶されている各センサ素子の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得する赤外線センサ制御部と;を具備しているものである。
【0026】
各センサ素子の光学系対応データは、例えば、光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布の逆数に相当する数値などがある。
【0027】
赤外線センサ制御部は、各センサ素子の駆動を制御して各センサ素子の検出信号を取得するものであり、例えば、各センサ素子から出力される検出信号を増幅手段で増幅して取得する場合、各センサ素子から出力される検出信号の増幅率を対応する光学系対応データに基づき可変して補正してもよいし、また、各センサ素子から出力される検出信号を増幅して演算手段に取り込んでから、演算手段の内部で各センサ素子の検出信号を対応する光学系対応データに基づき補正する演算をしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
請求項1記載の赤外線センサ装置によれば、感度調整手段にて、光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に応じて、各センサ素子の赤外線を検出する感度を調整できるため、赤外線の強度差の影響を補正し、熱源を確実に検出できる。
【0029】
請求項2記載の赤外線センサ装置によれば、請求項1記載の赤外線センサ装置の効果に加えて、感度調整手段にて、少なくとも赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子の感度を高く調整するため、各センサ素子から出力する検出信号の強度を等しく補正でき、熱源の位置にかかわらず、熱源を確実に検出できる。
【0030】
請求項3記載の赤外線センサ装置によれば、請求項1記載の赤外線センサ装置の効果に加えて、感度調整手段によって、各センサ素子の感度を可変調整するため、光学系の特性や制御条件などに応じて各センサ素子の感度を随時可変調整できる。
【0031】
請求項4記載の赤外線センサ装置によれば、請求項3記載の赤外線センサ装置の効果に加えて、各センサ素子で赤外線を検出して出力する検出信号によって赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態では、赤外線センサ本体の受光面の中央域より周辺域に位置するセンサ素子から出力する検出信号の強度が強くなるように感度調整手段を第1の調整モードで制御するため、熱源が検知エリア内に入ってきたことを確実に検出でき、また、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、各センサ素子から出力する検出信号の強度が等しくなるように感度調整手段を第2の調整モードで制御するため、検出エリア内の熱源を確実に検出できる。
【0032】
請求項5記載の赤外線センサ装置によれば、請求項4記載の赤外線センサ装置の効果に加えて、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、感度調整手段を第1の調整モードと第2の調整モードとで交互に切り換えて制御するため、複数の熱源が検知エリア内に入るのを確実に検出できる。
【0033】
請求項6記載の赤外線センサ装置によれば、光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子の光学系対応データを記憶部に予め記憶し、赤外線センサ制御部にて、各センサ素子の駆動を制御し、各センサ素子から出力される検出信号を記憶部に記憶されている各センサ素子の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得するため、赤外線の強度差の影響を補正し、熱源を確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す赤外線センサ装置の回路図である。
【図2】同上赤外線センサ装置の赤外線センサ本体の正面図である。
【図3】同上赤外線センサ装置の断面図である。
【図4】同上赤外線センサ装置を用いた照明装置の回路図である。
【図5】同上赤外線センサ装置の光学系に凹レンズを用いた場合の赤外線強度、センサ感度および出力信号強度を説明するもので、(a)はセンサ感度の均等とした場合(第1の調整モード)の説明図、(b)は出力信号強度を均等にするためにセンサ感度を調整した場合(第2の調整モード)の説明図である。
【図6】同上赤外線センサ装置の光学系に凸レンズを用いた場合の赤外線強度、センサ感度および出力信号強度を説明するもので、(a)はセンサ感度の均等とした場合の説明図、(b)は出力信号強度を均等にするためにセンサ感度を調整した場合の説明図である。
【図7】同上赤外線センサ装置による熱源の検出について、赤外線センサ本体から出力する出力信号の強度と時間との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示す赤外線センサ装置の1つのセンサ素子の正面図である。
【図9】同上1つのセンサ素子の断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態を示す赤外線センサ装置のブロック図である。
【図11】同上光学系の光学特性によって決定されるセンサ素子に到達する赤外線の強度分布を示す説明図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態を示す赤外線センサ装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0036】
図1ないし図7に第1の実施の形態を示す。
【0037】
まず、赤外線センサ装置を用いた照明装置について説明する。図4に示すように、照明装置11は、商用交流電源eを整流平滑する整流平滑部12に、ハーフブリッジ型のインバータ回路13が接続されている。このインバータ回路13は、整流平滑部12に対して、スイッチング素子としてのFETQ1,Q2が直列に接続されている。
【0038】
インバータ回路13の出力端となるFETQ2の両端間には、直流成分を遮断するコンデンサC1と、共振用巻線(共振用インダクタ)Lと、光源である放電灯、すなわち蛍光ランプ14のフィラメントFLa,FLbとの直列回路が接続され、これらフィラメントFLa,FLbの他端間には、フィラメント予熱としても機能する共振用コンデンサC2が接続されている。この結果、商用交流電源e、整流平滑部12、インバータ回路13、コンデンサC1、共振用巻線Lおよび共振用コンデンサC2などにより点灯回路16が構成されているとともに、この点灯回路16と蛍光ランプ14とが接続されることにより、主回路17が構成されている。
【0039】
さらに、FETQ1,Q2の制御端子であるゲートには、これらFETQ1,Q2のオンオフを切り換えるドライバ21が接続されている。このドライバ21は、点灯制御回路22により動作が制御される。
【0040】
点灯制御回路22は、状態センサ25および赤外線センサ装置26と接続されるA/D変換器27と、このA/D変換器27およびドライバ21と接続される制御手段としてのマイコン28とを有している。そして、点灯回路16、ドライバ21、点灯制御回路22、状態センサ25、赤外線センサ装置26、A/D変換器27およびマイコン28により、点灯制御装置29が構成されている。
【0041】
状態センサ25は、蛍光ランプ14の電流値を検出する電流センサ31と、蛍光ランプ14の電圧値を検出する電圧センサ32とを備え、これら検出した電流値および電圧値をアナログのデータ(シリアルデータ)としてA/D変換器27に出力するように構成されている。
【0042】
赤外線センサ装置26は、例えば廊下や部屋の天井面などの高所に設置され、所定の検知エリア内に存在する熱源である人体から放出される赤外線(遠赤外の放射エネルギ)を検出し、赤外線の検出に応じた赤外線センサ装置26からの出力信号をアナログのデータとしてA/D変換器27に出力するように構成されている。
【0043】
A/D変換器27は、状態センサ25、あるいは赤外線センサ装置26から入力されたアナログのデータをA/D変換してマイコン28へと出力するものである。なお、このA/D変換器27は、マイコン28の内部に搭載されていてもよい。
【0044】
マイコン28は、中央演算処理装置であるCPU34、A/D変換器27に接続されたI/Oポート35、CPU34などが参照するためのROM36、RAM37、およびドライバ21をPWM制御するPWM制御部38などを備えている。PWM制御部38は、数十kHz〜200kHz程度の周波数でドライバ21によりFETQ1,Q2を交互にオンオフすることで、FETQ2のドレイン−ソース間に所定の高周波交流を発生させるものである。
【0045】
次に、図3に示すように、赤外線センサ装置26は、赤外線センサ本体41、およびこの赤外線センサ本体41を収容するパッケージ42を備えている。
【0046】
このパッケージ42は、赤外線センサ本体41を配置する台座43、および赤外線センサ本体41を覆って台座43に取り付けられるカバー44を備え、赤外線センサ本体41が収容される内部が真空状態に密閉されている。台座43には赤外線センサ本体41に接続された給電用および信号出力用の複数の端子45が外部に突出され、カバー44には赤外線センサ本体41に対向して形成された開口部に赤外線を赤外線センサ本体41に導く光学系46が配置されている。
【0047】
光学系46は、赤外線を赤外線センサ本体41に集光するレンズ47、および赤外線を透過するフィルタ48を備えている。これらレンズ47およびフィルタ48は、赤外線のうち、例えば8μm〜12μmの波長を透過するゲルマニウム、シリコン、ポリエチレンおよび塩化カルシウムなどの材料で形成されている。レンズ47には、凸レンズあるいは凹レンズなどの単眼レンズが用いられている。
【0048】
また、図2に示すように、赤外線センサ本体41は、基体51、およびこの基体51上に二次元状であってマトリクス状に配列された赤外線を検出する複数のセンサ素子52を備え、これら複数のセンサ素子52によって赤外線を検出する受光面53が形成されている。この赤外線センサ本体41は、複数のセンサ素子52が二次元に配列されて受光面53が形成されているが、イメージセンサではなく、熱源からの赤外線の有無を各センサ素子52で検出するものである。センサ素子52には、例えば、温度により出力電流が変化する特性を有するとともに、供給電圧により感度つまり検出した赤外線強度に対して出力する検出信号強度の比が変化する特性を有する例えばボロメータやサーモパイルなどの熱電変換素子が用いられている。
【0049】
基体51には、複数のセンサ素子52に電源を供給する電源レギュレータ54、複数のセンサ素子52から出力する検出信号を入力して出力信号を出力する出力回路55、およびこれら電源レギュレータ54、出力回路55および各センサ素子52の動作を制御する制御手段としての制御回路56などが接続されている。なお、図2では、便宜的に、センサ素子52を5×5のマトリクス状に配列した例を示すが、これに限られるものではない。
【0050】
また、図1に示すように、各センサ素子52には、電源が供給される電源供給線である信号線59と、検出する赤外線強度に応じた検出信号を出力する信号出力線である信号線60とが接続されている。
【0051】
複数のセンサ素子52は、レンズ47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布に応じて、複数のグループに分けられ、すなわち、周辺域のグループ、周辺域と中央域との間の中央域のグループ、中央域のグループの3つのグループに分けられる。
【0052】
電源レギュレータ54は、複数のセンサ素子52のグループ毎に個別に用いられ、周辺域のグループの各センサ素子52に信号線59で並列に接続される第1の電源レギュレータ54a、中間域のグループの各センサ素子52に信号線59で並列に接続される第2の電源レギュレータ54b、中央域のグループのセンサ素子52に信号線59で接続される第3の電源レギュレータ54cを備えている。
【0053】
これら電源レギュレータ54a〜54cは、制御回路56から制御信号を入力して対応する領域のセンサ素子52に供給する電源電圧を個別に可変設定し、各領域にセンサ素子52の感度を可変調整する感度調整手段61として構成されている。
【0054】
出力回路55は、1つで、全てのセンサ素子52が信号線60で並列に接続され、これら全てのセンサ素子52の検出信号の和を出力信号として出力する。
【0055】
次に、第1の実施の形態の動作を説明する。
【0056】
まず、図4において照明装置11の動作を説明する。
【0057】
商用交流電源eは、整流平滑部12により整流平滑され、点灯制御回路22のPWM制御部38で生成したPWM信号をドライバ21に供給し、FETQ1,Q2を交互にオンオフすることで、FETQ2のドレイン−ソース間に高周波交流が発生し、共振用巻線Lと共振用コンデンサC2により蛍光ランプ14のフィラメントFLa,FLbの予熱制御および始動電圧印加制御が行われ、蛍光ランプ14が点灯する。
【0058】
同時に、状態センサ25の電流センサ31および電圧センサ32により検出する蛍光ランプ14の電流値および電圧値をA/D変換器27で変換してRAM37に格納する。また、赤外線センサ装置26からの出力信号をA/D変換器27で変換してRAM37に格納する。
【0059】
そして、CPU34は、ROM36に格納された点灯制御プログラムに従って、RAM37に格納された蛍光ランプ14の電流値および電圧値の出力結果を読み出し、設定された制御目標値との差分が小さくなるように、例えばPWM制御部38での点灯周波数データを変更する。この変更された点灯周波数データがPWM制御部38に渡されると、この点灯周波数データに応じてFETQ1,Q2を駆動するための信号をドライバ21に出力し、ドライバ21によりインバータ回路13の動作を制御する。
【0060】
また、CPU34は、ROM36に格納された判定プログラムに従って、RAM37に格納された赤外線センサ装置26からの出力信号の出力結果を解析し、蛍光ランプ14の点灯消灯を含む制御目標値を変更する。
【0061】
この結果、点灯回路16や蛍光ランプ14の動作状態と、赤外線センサ装置26により取得した人体からの赤外線の有無とに応じて、蛍光ランプ14が点灯制御される。
【0062】
次に、赤外線センサ装置26の動作を説明する。
【0063】
図5(a)に示すように、光学系46のレンズ47に凹レンズを用いた場合には、レンズ47によって赤外線センサ本体41の受光面53に導かれる赤外線の強度分布は、レンズ光軸を中心として、周辺域ほど赤外線強度が強く、中央域ほど赤外線強度が弱くなる光学特性を示す。この場合、全てのセンサ素子52の感度が均等であると、出力回路55から出力する出力信号の強度分布も同様の傾向を示す。
【0064】
このような光学特性において、所定の検知エリア内を人体が通過すると、人体から放出される赤外線量はかわらないにもかかわらず、人体が検知エリアの周辺域にいるときには出力信号の強度が強く、中央域にいるときには出力信号の強度が弱くなり、人体の検出が安定せず、誤検出が発生するおそれがある。
【0065】
このような場合には、図5(b)に示すように、制御回路56の制御で感度調整手段61によって、周辺域ほどセンサ素子52の感度を低く、中央域ほどセンサ素子52の感度を高くするように調整することにより、出力回路55から出力する出力信号の強度分布を均等にすることができる。
【0066】
図6(a)に示すように、光学系46のレンズ47に凸レンズを用いた場合には、レンズ47によって赤外線センサ本体41の受光面53に導かれる赤外線の強度分布は、レンズ光軸を中心として、周辺域ほど赤外線強度が弱く、中央域ほど赤外線強度が強くなる光学特性を示す。この場合、全てのセンサ素子52の感度が均等であると、出力回路55から出力する出力信号の強度分布も同様の傾向を示す。
【0067】
このような光学特性において、所定の検知エリア内を人体が通過すると、人体から放出される赤外線量はかわらないにもかかわらず、人体が検知エリアの周辺域にいるときには出力信号の強度が弱く、中央域にいるときには出力信号の強度が強くなり、人体の検出が安定せず、誤検出が発生するおそれがある。
【0068】
このような場合には、図6(b)に示すように、制御回路56の制御で感度調整手段61によって、周辺域ほどセンサ素子52の感度を高く、中央域ほどセンサ素子52の感度を低くするように調整することにより、出力回路55から出力する出力信号の強度分布を均等にすることができる。
【0069】
このように、制御回路56の制御で感度調整手段61によって、レンズ47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布に応じて、赤外線の強度が強い位置のセンサ素子52の感度を低く、赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子52の感度を高くするように調整するため、各センサ素子52から出力する検出信号の強度を均等に補正でき、検知エリア内での人体の場所にかかわらず、誤動作なく、人体を確実に検出できる。
【0070】
なお、赤外線の強度に応じたセンサ素子52の感度調整は、相対的なものであり、赤外線の強度が強い位置および弱い位置の両方のセンサ素子52の感度を調整してもよいし、赤外線の強度が強い位置のセンサ素子52の感度を一定として赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子52についてのみ感度が高くなるように調整してもよい。このように、赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子52についてのみ感度が高くなるように調整すれば、出力回路55から出力する出力信号の強度を高いレベルで均等にでき、人体を確実に検出できるようになる。
【0071】
また、赤外線センサ装置26を利用した熱源である人体の検出方法について、図7を参照して説明する。ここでは、人体が検知エリアを通過するものとする。
【0072】
この場合、レンズ47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布が、図5(a)に示すように、レンズ光軸を中心として、周辺域ほど赤外線強度が強く、中央域ほど赤外線強度が弱くなる光学特性にあり、出力回路55から出力する出力信号の強度分布も同様にある。なお、感度調整手段61によって、出力回路55から出力する出力信号の強度分布も同様になるように、各センサ素子52の感度を調整してもよい。
【0073】
そして、検知エリア内に人体が存在しないと、出力回路55の出力信号の強度が閾値1より小さい状態にあり、検知エリア内に人体が存在しないと判断できる。
【0074】
検知エリア内の周辺域に人体が入ってくると、出力回路55の出力信号の強度が閾値2より大きくなり、検知エリア内に人体が入ったと判断できる。
【0075】
検知エリア内の周辺域から中央域に人体が移動すると、出力回路55の出力信号の強度が閾値2より小さくなるが、閾値1より大きい状態を保つため、検知エリア内に人体が存在すると判断できる。
【0076】
検知エリア内から人体が出るとき、出力回路55の出力信号の強度が閾値2より大きくなった後、閾値1より小さくなり、検知エリア内から人体が出たと判断できる。
【0077】
また、このような人体の検出に際し、感度調整手段61による各センサ素子52の感度調整によって、より確実な人体の検出ができるようになる。
【0078】
この場合、制御回路56は、図5(a)に示したように、赤外線センサ本体41の受光面53の中央域より周辺域に位置するセンサ素子52から出力する検出信号の強度が強くなるように、つまり出力回路55から出力する出力信号の強度が中央域より周辺域で強くなるように、感度調整手段61(電源レギュレータ54a〜54c)を制御する第1の調整モードと、図5(b)に示したように、各センサ素子52から出力する検出信号の強度つまり出力回路55から出力する出力信号の強度が均等になるように、感度調整手段61(電源レギュレータ54a〜54c)を制御する第2の調整モードとを有し、これらモードを切換制御する。
【0079】
出力回路55から出力する出力信号が閾値1より小さい状態では、感度調整手段61を第1の調整モードで制御し、検知エリア内の周辺域に人体が入ってくるのを確実に検出できるようにする。
【0080】
検知エリア内の周辺域に人体が入ると、出力回路55から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値2より大きくなり、さらに、検知エリア内の周辺域から中央域に人体が移動し、出力回路55から出力する出力信号が閾値2より小さく閾値1より大きい状態となると、感度調整手段61を第2の調整モードに切り換える。これにより、検知エリア内での人体の場所にかかわらず、出力回路55から出力する出力信号の強度が均等になり、検知エリア内に存在する人体を確実に検出できる。なお、第2の調整モードにおいても、出力回路55から出力する出力信号は閾値1と閾値2との間にあるように調整される。
【0081】
検知エリア内から人体が出るとき、出力回路55の出力信号の強度が閾値1より小さくなり、検知エリア内から人体が出たと判断できる。
【0082】
さらに、検知エリア内に人体が存在していることを検出している期間中は、感度調整手段61を第1の調整モードと第2の調整モードとで交互に切り換えて制御するようにしてもよい。
【0083】
この場合、第2の調整モードの期間中には検知エリア内に存在する人体を検出し、第1の調整モードの期間中には検知エリア内に存在する人体とは別の人体が検知エリア内に入ってくるのを検出でき、複数の人体が検知エリア内に入るのを確実に検出できる。
【0084】
第1の調整モードの期間に出力回路55から出力する出力信号が閾値2より大きくなった後に閾値1より小さくなるか、第2の調整モードの期間に出力回路55から出力する出力信号が閾値1より小さい状態になれば、検知エリア内から人体が出たことを判断できる。その後は、感度調整手段61を第1の調整モードで制御し、次の人体の検出に待機する。
【0085】
次に、図8および図9に第2の実施の形態を示す。図8は赤外線センサ装置の1つのセンサ素子の正面図、図9は1つのセンサ素子の断面図である。
【0086】
赤外線センサ本体41の基体51の表面には、各センサ素子52を配置する複数の窪み部64が形成されている。この窪み部64内には、センサ素子52に接続された信号線59,60により、センサ素子52が基体51に対して非接触となる浮いた状態に支持されている。
【0087】
これは、センサ素子52では、吸収した赤外線エネルギが熱エネルギとなり、この熱エネルギをできるだけ放出しないようにしてセンサ素子52を温度上昇させることにより、赤外線の検出能力を高めることができるためである。
【0088】
次に、図10および図11に第3の実施の形態を示す。図10は赤外線センサ装置のブロック図、図11は光学系の光学特性によって決定されるセンサ素子に到達する赤外線の強度分布を示す説明図である。
【0089】
図10に示すように、赤外線センサ装置26は、赤外線センサ本体41、光学系46、および赤外線センサ本体41を制御する赤外線センサ制御部71を備えている。
【0090】
赤外線センサ本体41は、複数のセンサ素子52が行方向および列方向に沿ってマトリクス状に配列されたセンサ素子52群であり、赤外線センサ制御部71で制御される行方向のセンサ駆動手段72および列方向のセンサ駆動手段73によって各センサ素子52が個別に順次駆動され、駆動された各センサ素子52から順次出力される検出信号がセンサ信号出力手段74から赤外線センサ制御部71に順次出力される。
【0091】
赤外線センサ制御部71は、制御手段としての演算処理手段76を有し、この演算処理手段76は駆動信号生成手段77に対して各センサ素子52を順次駆動するための駆動信号のパルス列を生成させ、この駆動信号生成手段77から生成した駆動信号をセンサ駆動手段72,73に出力して各センサ素子52を順次駆動させる。
【0092】
さらに、赤外線センサ制御部71は、センサ信号出力手段74から順次出力される各センサ素子52の検出信号を増幅する増幅手段78、この増幅手段78で増幅された電圧値を保持するサンプル・ホールド回路(S/H)79、このサンプル・ホールド回路(S/H)79で保持された検出信号の電圧値を離散電圧値に変換するアナログ・デジタル変換器(ADC)80、拡散電圧値に変換された検出信号を格納する記憶部としてのメモリ素子81、および演算処理手段76の指令により増幅手段78で増幅する際の増幅率を可変させる増幅率制御信号を生成する増幅率制御信号生成手段82を有している。
【0093】
また、光学系46は、例えば、赤外線センサ本体41の受光面53から数m先の、数m角の検知エリアの範囲からの赤外線の放射エネルギを、数mm角の受光面53に到達させるような光学的特性をもつ。
【0094】
また、図11には、8mm四方のレンズ47により、レンズ47に対向する2m先の5m四方の平面状の黒体から、レンズ47に到達する赤外線の放射エネルギを計算した結果を示す。前提として、黒体の中心は、レンズ47の光軸上にある。x軸、y軸は黒体上の座標を、z軸は対応する座標(x、y)から到達する赤外線の放射エネルギを表す。x、yは、黒体の面を5cm四方の格子に区切り、各格子の中央の座標として計算した。その結果、黒体の中心位置からレンズ47の中心に到達する赤外線の放射エネルギが最も強く、黒体の中心から遠ざかる位置ほど弱くなり、その比率は中心/最遠点=10/1程度になる。つまり、黒体上の熱源が均一の温度であっても、レンズ47に到達する赤外線の放射エネルギが熱源の場所によって10倍程度異なってしまう。
【0095】
したがって、光学系46の光学特性には、上述したレンズ47自体が有する光学特性のほかに、検知エリアとレンズ47との位置関係による光学特性なども含まれる。
【0096】
このような光学系46の光学特定のままでは、検知エリアを人体が通過する場合に、検知エリアの中心部と周辺部とで同じ人体が異なる温度であると判断してしまう。
【0097】
そこで、赤外線センサ制御部71において、赤外線センサ本体41の各センサ素子52から出力される検出信号を、光学系47の光学特性に基づき補正する。
【0098】
そのために、メモリ素子81には、予め、光学系47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子52の光学系対応データを記憶しておく。この各センサ素子52の光学系対応データとしては、例えば、光学系47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布の逆数に相当する数値などがある。
【0099】
さらに、演算処理手段76は、駆動信号生成手段77から出力するどのパルスの駆動信号で赤外線センサ本体41の中のどのセンサ素子52を駆動しているか管理しているとともに、対応するセンサ素子52から出力される検出信号が、センサ信号出力手段74から出力される検出信号全体の中のどこに存在するかも管理している。
【0100】
そして、演算処理手段76は、各センサ素子52の駆動を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号をメモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得する。すなわち、演算処理手段76は、増幅率制御信号生成手段82を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号を増幅手段78で増幅する際の増幅率を、メモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき可変させる。具体的には、センサ素子52群がm行n列で構成されおり、あるセンサ素子52の座標を(i,j)とすると(1≦i≦m、1≦j≦n)、その座標(i,j)のセンサ素子52から出力される検出信号を、メモリ素子81に記憶されている座標(i,j)に対応する光学系対応データに基づき、増幅手段78の増幅率を制御する。
【0101】
これにより、検知エリアの中心部に位置する人体からの赤外線がレンズ47を通じて到達するセンサ素子52から出力される検出信号を増幅手段78で増幅する際の増幅率を低くし、検知エリアの周辺部に位置する人体からの赤外線がレンズ47を通じて到達するセンサ素子52から出力される検出信号を増幅手段78で増幅する際の増幅率を高くする。この結果、演算処理手段76が取得する検知エリア全体での検出信号の強度分布が均等化され、光学系46の光学特性の影響を除くことができ、温度情報を精度よく検出することができる。
【0102】
このように、光学系47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子52の光学系対応データをメモリ素子81に予め記憶し、赤外線センサ制御部71にて、各センサ素子52の駆動を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号をメモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得するため、赤外線の強度差の影響を補正し、検知エリア内の人体を確実に検出できる。
【0103】
次に、図12に第4の実施の形態を示す。図12は赤外線センサ装置のブロック図である。
【0104】
第3の実施の形態と同様に、赤外線センサ制御部71において、赤外線センサ本体41の各センサ素子52から出力される検出信号を、光学系47の光学特性を考慮して補正するものであって、演算処理手段76が、各センサ素子52の駆動を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号をメモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得する。
【0105】
第3の実施の形態では、演算処理手段76が、増幅率制御信号生成手段82を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号を増幅手段78で増幅する際の増幅率を、メモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき可変させるのに対して、第4の実施の形態では、演算処理手段76で、各センサ素子52から出力される検出信号を演算する際に、メモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき補正する。なお、これ以外は、第3の実施の形態と同様である。
【0106】
具体的には、センサ素子52群がm行n列で構成されおり、各センサ素子52の座標を(i,j)とし(1≦i≦m、1≦j≦n)、各センサ素子52から出力される検出信号をs(i,j)とし、対応するメモリ素子81の光学系対応データをm(i,j)とすると、演算処理手段76でのs(i,j)×m(i,j)という演算により、センサ素子52から出力される検出信号を補正する。
【0107】
これにより、検知エリアの周辺部に位置する人体からの赤外線がレンズ47を通じて到達するセンサ素子52から出力される検出信号を相対的に大きくなるような補正し、検知エリアの中心部に位置する人体からの赤外線がレンズ47を通じて到達するセンサ素子52からの出力される検出信号を相対的に小さくなるように補正する。この結果、光学系47の光学特性の影響を除くことができ、温度情報を精度よく検出することができる。
【0108】
このように、光学系47の光学特性によって決定される各センサ素子52に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子52の光学系対応データをメモリ素子81に予め記憶し、赤外線センサ制御部71にて、各センサ素子52の駆動を制御し、各センサ素子52から出力される検出信号をメモリ素子81に記憶されている各センサ素子52の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得するため、赤外線の強度差の影響を補正し、検知エリア内の人体を確実に検出できる。
【0109】
また、メモリ素子81内に、光学系対応データのm(i,j)だけでなく、過去のある時点でのセンサ素子52の検出信号sb(i,j)も格納しておいてもよい。この場合、現時点での検出信号s(i,j)と過去のある時点での検出信号sb(i,j)とについて、対応する座標同士で差分を検出することで、温度分布の変化の有無を検出することができる。つまり、差分がゼロとなる座標では、過去のある時点と現時点とでの温度が変化していないことを表し、差分がゼロ以外の値を示す座標では、過去のある時点と現時点とでの温度が変化したことを表す。
【0110】
この過去のある時点をキャリブレーションの時点とすることができる。ある時点での各センサ素子52の検出信号を基準温度データとしてメモリ素子81内に格納しておく。この基準温度データと現時点での検出信号との差分に対して、光学系対応データに基づき補正することで、基準温度に対する温度変化情報を取得できる。
【0111】
そして、過去のある時点を、時間の経過とともに、現時点に近い時点に更新し、その時点でのセンサ素子52の検出信号をメモリ素子81内に格納し、それまでのデータから置き換える。例えば、常に現時点の1秒前の検出信号をメモリ素子52に格納するように更新すれば、1秒前と現時点とでの検出信号の差分に対して光学系対応データに基づき補正することで、1秒毎の検知エリア内での人体の動きを取り出すことができる。
【符号の説明】
【0112】
26 赤外線センサ装置
41 赤外線センサ本体
46 光学系
52 センサ素子
53 受光面
56 制御手段としての制御回路
61 感度調整手段
71 赤外線センサ制御部
81 記憶部としてのメモリ素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を検出する複数のセンサ素子が配列されて受光面が形成された赤外線センサ本体と;
赤外線を赤外線センサ本体の受光面に導く光学系と;
光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に応じて、各センサ素子の赤外線を検出する感度を調整する感度調整手段と;
を具備していることを特徴とする赤外線センサ装置。
【請求項2】
感度調整手段は、少なくとも赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子の感度を高く調整する
ことを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ装置。
【請求項3】
感度調整手段は、各センサ素子の感度を可変調整する
ことを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ装置。
【請求項4】
赤外線センサ本体の受光面の中央域より周辺域に位置するセンサ素子から出力される検出信号の強度が強くなるように感度調整手段を制御する第1の調整モードと、各センサ素子から出力される検出信号の強度が等しくなるように感度調整手段を制御する第2の調整モードとを有し、各センサ素子で赤外線を検出して出力する検出信号によって赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態では、感度調整手段を第1の調整モードで制御し、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、感度調整手段を第2の調整モードで制御する制御手段を具備している
ことを特徴とする請求項3記載の赤外線センサ装置。
【請求項5】
制御手段は、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、感度調整手段を第1の調整モードと第2の調整モードとで交互に切り換えて制御する
ことを特徴とする請求項4記載の赤外線センサ装置。
【請求項6】
赤外線を検出する複数のセンサ素子が配列されて受光面が形成された赤外線センサ本体と;
赤外線を赤外線センサ本体の受光面に導く光学系と;
光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子の光学系対応データを記憶する記憶部と;
各センサ素子の駆動を制御し、各センサ素子から出力される検出信号を記憶部に記憶されている各センサ素子の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得する赤外線センサ制御部と;
を具備していることを特徴とする赤外線センサ装置。
【請求項1】
赤外線を検出する複数のセンサ素子が配列されて受光面が形成された赤外線センサ本体と;
赤外線を赤外線センサ本体の受光面に導く光学系と;
光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に応じて、各センサ素子の赤外線を検出する感度を調整する感度調整手段と;
を具備していることを特徴とする赤外線センサ装置。
【請求項2】
感度調整手段は、少なくとも赤外線の強度が弱い位置のセンサ素子の感度を高く調整する
ことを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ装置。
【請求項3】
感度調整手段は、各センサ素子の感度を可変調整する
ことを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ装置。
【請求項4】
赤外線センサ本体の受光面の中央域より周辺域に位置するセンサ素子から出力される検出信号の強度が強くなるように感度調整手段を制御する第1の調整モードと、各センサ素子から出力される検出信号の強度が等しくなるように感度調整手段を制御する第2の調整モードとを有し、各センサ素子で赤外線を検出して出力する検出信号によって赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態では、感度調整手段を第1の調整モードで制御し、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、感度調整手段を第2の調整モードで制御する制御手段を具備している
ことを特徴とする請求項3記載の赤外線センサ装置。
【請求項5】
制御手段は、赤外線センサ本体から出力する出力信号が閾値1より小さい状態から閾値1よりも大きい閾値2より大きくなった後に閾値1より大きく閾値2より小さい状態となれば、感度調整手段を第1の調整モードと第2の調整モードとで交互に切り換えて制御する
ことを特徴とする請求項4記載の赤外線センサ装置。
【請求項6】
赤外線を検出する複数のセンサ素子が配列されて受光面が形成された赤外線センサ本体と;
赤外線を赤外線センサ本体の受光面に導く光学系と;
光学系の光学特性によって決定される各センサ素子に到達する赤外線の強度分布に対応した各センサ素子の光学系対応データを記憶する記憶部と;
各センサ素子の駆動を制御し、各センサ素子から出力される検出信号を記憶部に記憶されている各センサ素子の光学系対応データに基づき補正した検出信号を取得する赤外線センサ制御部と;
を具備していることを特徴とする赤外線センサ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図11】
【公開番号】特開2011−22118(P2011−22118A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182671(P2009−182671)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】
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