赤外線レンズ
【課題】、十分な明るさすなわち開口数を確保した上で、10μm前後の波長域においても色収差が残存せず、また、球面収差、コマ収差及び像面湾曲を十分に補正して、鮮明な結像をえることができる赤外線レンズを提供すること。
【解決手段】物体側から順に、正の第1レンズ群、負の第2レンズ群、正の第3レンズ群からなり、前記第2レンズ群の材料が第1レンズ群及び第3レンズ群の材料の分散より大きくなることを特徴とする赤外線レンズ。
【解決手段】物体側から順に、正の第1レンズ群、負の第2レンズ群、正の第3レンズ群からなり、前記第2レンズ群の材料が第1レンズ群及び第3レンズ群の材料の分散より大きくなることを特徴とする赤外線レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線レンズ、さらに詳しくは、赤外線による鮮明な結像を形成することによって赤外線サーモグラフィーや監視カメラに好適に使用できる赤外線レンズに関する。ここで、赤外線とは、波長が3000〜5000nmの中赤外線、及び波長が8000〜14000nmの遠赤外線を含む放射である。
【背景技術】
【0002】
医療用や工業用に用いられる、10μm前後の波長を使用する遠赤外線用の検知器やビジコンは、感度が低い。また、これらの光学系に使用されているゲルマニュウムは、一般の光学レンズに比較して透過率が低い。従って、これらの測定器の光学系は、小口径比のいわゆる明るいことが求められている。
【0003】
従来の赤外線レンズとしては、物体側から、凸面を物体側へ向けた凸メニスカスレンズの第1レンズ、凹レンズである第2レンズ、及び凹面を物体側に向けた凸メニスカスレンズの第3レンズからなる3群3枚構成に赤外線レンズにおいて、
f : 全系の焦点距離
f1: 第1レンズの焦点距離
ri: 物体側からi番目のレンズ面の曲率半径
di: 物体側からi番目のレンズ面間隔又は厚さ
とするとき、
0.79≦/f/f1<0.87
−0.43≦(r1+r5)/r3≦0.076
0.151f≦(d1+d3+d5)≦0.176f
の各条件を満足する赤外線レンズが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
他の従来技術の赤外線レンズとしては、2枚のメニスカスレンズにより構成し、所定の条件式を満足することにより、低コスト化および低重量化を図るとともに、コンパクトかつ実用上十分な結像性能を有する赤外線レンズが提供されている。すなわち、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズからなる第1レンズL1と第2レンズL2により構成される。また、以下の条件式(1)〜(4)を満足する。
0.8<R1凸/f<3.0 (1)
0.3<R2凸/f<1.2 (2)
0.8<D /f<1.4 (3)
N1>2.0、N2>2.0 (4)
但し、fは全系焦点距離、R1凸およびR2凸は第1レンズL1および第2レンズL2の凸面側曲率半径、Dは第1レンズL1と第2レンズL2との間隔、N1およびN2は第1レンズL1および第2レンズL2の屈折率であり、各レンズL1、L2の材料は、ゲルマニウムである(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−30208号公報
【特許文献2】特開2000−75203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の赤外線用レンズは、10μm前後の波長域において色収差が残存し、さらに、球面収差及び像面湾曲が十分に補正されておらず、改造性能が低く、鮮明な結像を得ることができない。
【0007】
特許文献2の赤外線用レンズは、10μm前後の波長域において色収差が残存し、解像性能が低く鮮明な結像を得ることができない。さらに、光学全長が長くなり、小型化に適さないという問題がある。
【0008】
(発明の目的)
本発明は、従来の赤外線レンズに関する上述した問題点に鑑みてなされたものであって、十分な明るさすなわち開口数を確保した上で、10μm前後の波長域においても色収差が残存せず、また、球面収差、コマ収差及び像面湾曲を十分に補正して、鮮明な結像をえることができる赤外線レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、物体側から順に、正の第1レンズ群、負の第2レンズ群、正の第3レンズ群からなり、前記第2レンズ群の材料が第1レンズ群及び第3レンズ群の材料の分散より大きくなることを特徴とする。
【0010】
ゲルマニウムの屈折率は、n(8μm):4.0074 / n(10μm):4.0052 / n(12μ):4.0039である。分散の演算式 [ n(8μm) - n(12μm) ] / [ n(10μm) - 1 ] によって演算すると、ゲルマニウムの分散は、0.0012である。
【0011】
セレン化亜鉛の屈折率は、n(8μm):2.5917 / n(10μm):2.5861 / n(12μ):2.5794である。分散の演算式 [ n(8μm) - n(12μm) ] / [ n(10μm) - 1 ] によって演算すると、セレン化亜鉛の分散は、0.0078である。
【0012】
セレン化亜鉛の屈折率は、n(8μm):2.4163 / n(10μm):2.4053 / n(12μ):2.3915である。分散の演算式 [ n(8μm) - n(12μm) ] / [ n(10μm) - 1 ] によって演算すると、セレン化亜鉛の分散は、0.0176である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分な明るさすなわち開口数を確保した上で、10μm前後の波長域においても色収差が残存せず、また、球面収差、コマ収差及び像面湾曲を十分に補正して、鮮明な結像をえることができる赤外線レンズを構成することができる。
【0014】
本発明の実施態様は、以下の通りである。
本発明において、前記第2レンズ群の材料が、カルコゲナイトであることを特徴とする。
このように構成することによって、光学特性や供給が安定して供給される材料を使用して、10μm前後の波長域においても色収差を十分に補正することができる効果を得ることができる。
【0015】
他の実施態様は、本発明において、前記第2レンズ群の材料が、セレン化亜鉛であることを特徴とする。
このように構成することによって、光学特性や供給が安定して供給される材料を使用して、10μm前後の波長域においても色収差を十分に補正することができる効果を得ることができる。
【0016】
他の実施態様は、本発明において、前記赤外線レンズの焦点距離をf、前記第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
0.8≦f/f1≦1.1 (1)
の条件を満たすことを特徴とする。
このように構成することによって、球面収差を良好に低減させ、特に軸上の解像性能を向上させることができる。
【0017】
他の実施態様は、本発明において、前記赤外線レンズのいずれか一面が、非球面であることを特徴とする。
このように構成することによって、コマ収差を良好に低減させることができる。
【0018】
他の実施態様は、本発明において、前記赤外線レンズのいずれか一面が、非球面回折素子であることを特徴とする。
このように構成することによって、色収差を良好に低減させることができる。
【0019】
他の実施態様は、本発明において、前記第3レンズ群を光軸に直交する方向に変位させて像振れを補正することを特徴とする。
前記第3レンズ群は、前記第1レンズ群より直径が小さく軽量であり、光軸に直交する方向により容易に変位させることができる。また、前記第3レンズ群を光軸と直交する方向へ変位させるための駆動機構は、レンズ系の中間部及び後方部に配置することができ、レンズ全体をコンパクトにまとめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の赤外線レンズの光学断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の赤外線レンズの球面収差図である。
【図3】本発明の第1実施形態の赤外線レンズの非点収差図ある。
【図4】本発明の第1実施形態の赤外線レンズのメリジオナルコマ収差図ある。
【図5】本発明の第1実施形態の赤外線レンズのサジタルコマ収差図である。
【図6】本発明の第2実施形態の赤外線レンズの光学断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の赤外線レンズの球面収差図である。
【図8】本発明の第2実施形態の赤外線レンズの非点収差図ある。
【図9】本発明の第2実施形態の赤外線レンズのメリジオナルコマ収差図ある。
【図10】本発明の第2実施形態の赤外線レンズのサジタルコマ収差図である。
【図11】本発明の第3実施形態の赤外線レンズの光学断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態の赤外線レンズの球面収差図である。
【図13】本発明の第3実施形態の赤外線レンズの非点収差図ある。
【図14】本発明の第3実施形態の赤外線レンズのメリジオナルコマ収差図ある。
【図15】本発明の第3実施形態の赤外線レンズのサジタルコマ収差図である。
【図16】本発明の第4実施形態の赤外線レンズの光学断面図である。
【図17】本発明の第4実施形態の赤外線レンズの球面収差図である。
【図18】本発明の第4実施形態の赤外線レンズの非点収差図ある。
【図19】本発明の第4実施形態の赤外線レンズのメリジオナルコマ収差図ある。
【図20】本発明の第4実施形態の赤外線レンズのサジタルコマ収差図である。
【図21】本発明の第1実施形態の赤外線レンズの光学断面図である。
【図22】本発明の第5実施形態の赤外線レンズの球面収差図である。
【図23】本発明の第5実施形態の赤外線レンズの非点収差図ある。
【図24】本発明の第5実施形態の赤外線レンズのメリジオナルコマ収差図ある。
【図25】本発明の第5実施形態の赤外線レンズのサジタルコマ収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の赤外線レンズの実施形態のレンズデータ等を示す。波長は、10μmである。
(第1実施形態)
焦点距離 99.95mm
全長 126.86mm
バックフォーカス 15.95mm
F/No 1.0
半画角 3.17°
像高 5.5mmr
【0022】
面番号 曲率半径 厚さ間隔 半径 屈折率 焦点距離
1 97.2692 6.0 56.1 4.0052 104.567(ゲルマニュウム)
2 134.355 57.92 55.9
s絞り 2.4 21.7
3 1783.56 4.93 20.7 2.5861 -77.984(カルコゲナイト)
4 115.472 31.66 19.6
5 31.5434 8.0 15.1 4.0052 48.7808(ゲルマニュウム)
6 32.5432 4.0 12.2
【0023】
第1実施形態の条件式の値は、以下の通りである。
条件式(1) 0.95585
【0024】
(第2実施形態)
焦点距離 99.94mm
全長 133.99mm
バックフォーカス 14.98mm
F/No 1.0
半画角 3.15°
像高 5.5mmr
【0025】
面番号 曲率半径 厚さ間隔 半径 屈折率 焦点距離
1 122.547 6.2 58.6 4.0052 110.146(ゲルマニュウム)
2 187.2 62.33 58.4
s絞り 2.4 20.6
3 -164.46 3.54 20.2 2.5861 -86.691(カルコゲナイト)
4 849.936 36.54 20.0
5 38.0357 8.0 15.3 4.0052 41.7968(ゲルマニュウム)
6 45.9462 4.0 13.0
【0026】
第2実施形態の第3面及び第4面は、以下の非球面式による非球面である。
【数1】
【0027】
第2実施形態の非球面係数は、以下の通りである。
面番号 K A B C
3 11.18 -2.6157E-07 1.3647E-09 -6.4802E-13
4 -133.59 -1.0171E-06 1.3567E-09 -6.5785E-13
【0028】
第2実施形態の条件式の値は、以下の通りである。
条件式(1) 0.90734
【0029】
(第3実施形態)
焦点距離 99.97mm
全長 134.23mm
バックフォーカス 15.99mm
F/No 1.03
半画角 3.16°
像高 5.5mmr
【0030】
面番号 曲率半径 厚さ間隔 半径 屈折率 焦点距離
1 122.56 7.4 48.6 4.0052 118.61(ゲルマニュウム)
2 178.322 7.05 47.4
s絞り 45.29 47.0
3 -247.09 5.2 30.3 2.5861 -278.32(カルコゲナイト)
4 -565.88 49.2 30.2
5 26.1384 4.1 14.3 4.0052 67.2485(ゲルマニュウム)
6 26.4879 4.0 12.6
【0031】
第3実施形態の非球面係数は、以下の通りである。
面番号 K A B C
3 41.052 -1.2762E-06 9.5458E-10 -1.1180E-13
4 235.153 -1.6921E-06 1.0090E-09 -1.9671E-13
【0032】
第3実施形態の第4面は、以下のDOE式によるDOE面である。
【数2】
【0033】
第3実施形態の第4面のDOE係数は、以下の通りである。
面番号 C1 C2 C3
4 -1.5364E-05 1.7070E-09 8.6709E-13
【0034】
第3実施形態の条件式の値は、以下の通りである。
条件式(1) 0.84285
【0035】
(第4実施形態)
焦点距離 99.97mm
全長 134.30mm
バックフォーカス 16.06mm
F/No 1.03
半画角 3.16°
像高 5.5mmr
【0036】
面番号 曲率半径 厚さ間隔 半径 屈折率 焦点距離
1 122.56 7.4 48.6 4.0052 118.61(ゲルマニュウム)
2 178.322 7.1 47.4
3絞り 45.3 47.0
4 -247.09 5.2 30.3 2.5861 -279.32(カルコゲナイト)
5 -565.88 49.2 30.2
6 26.1384 4.1 14.3 4.0052 67.2485(ゲルマニュウム)
7 26.4879 4.0 12.6
【0037】
第4実施形態の非球面係数は、以下の通りである。
面番号 K A B C
3 41.092 -1.2135E-06 8.6047E-10 -6.3565E-14
4 237.001 -1.6278E-06 9.1084E-10 -1.4261E-13
【0038】
第4実施形態の条件式の値は、以下の通りである。
条件式(1) 0.84285
【0039】
(第5実施形態)
焦点距離 99.91mm
全長 128.90mm
バックフォーカス 12.77mm
F/No 0.91
半画角 3.14°
像高 5.5mmr
【0040】
面番号 曲率半径 厚さ間隔 半径 屈折率 焦点距離
1 115.567 6.9 63.0 4.0052 102.653(ゲルマニュウム)
2 176.492 58.9 63.0
3絞り 2.4 21.0
4 -167.43 4.91 21.5 2.5861 -79.815(カルコゲナイト)
5 528.426 35.3124 20.832
6 35.2129 7.7 14.3 4.0052 40.2048(ゲルマニュウム)
7 41.5215 4.0 11.9
【0041】
第5実施形態の非球面係数は、以下の通りである。
面番号 K A B C
3 6.589 2.5359E-08 5.2297E-10 -1.3297E-13
4 -1486.6 1.4375E-07 -3.1084E-10 4.1217E-13
【0042】
第5実施形態の第3面のDOE係数は、以下の通りである。
面番号 C1 C2 C3
3 5.8600E-05 1.4624E-07 -2.1360E-10
【0043】
第5実施形態の条件式の値は、以下の通りである。
条件式(1) 0.97328
【符号の説明】
【0044】
1 第1レンズ群
2 第2レンズ群
3 第3レンズ群
r1 第1面
r2 第2面
s 絞り
r3 第3面
r4 第4面
r5 第5面
r6 第6面
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線レンズ、さらに詳しくは、赤外線による鮮明な結像を形成することによって赤外線サーモグラフィーや監視カメラに好適に使用できる赤外線レンズに関する。ここで、赤外線とは、波長が3000〜5000nmの中赤外線、及び波長が8000〜14000nmの遠赤外線を含む放射である。
【背景技術】
【0002】
医療用や工業用に用いられる、10μm前後の波長を使用する遠赤外線用の検知器やビジコンは、感度が低い。また、これらの光学系に使用されているゲルマニュウムは、一般の光学レンズに比較して透過率が低い。従って、これらの測定器の光学系は、小口径比のいわゆる明るいことが求められている。
【0003】
従来の赤外線レンズとしては、物体側から、凸面を物体側へ向けた凸メニスカスレンズの第1レンズ、凹レンズである第2レンズ、及び凹面を物体側に向けた凸メニスカスレンズの第3レンズからなる3群3枚構成に赤外線レンズにおいて、
f : 全系の焦点距離
f1: 第1レンズの焦点距離
ri: 物体側からi番目のレンズ面の曲率半径
di: 物体側からi番目のレンズ面間隔又は厚さ
とするとき、
0.79≦/f/f1<0.87
−0.43≦(r1+r5)/r3≦0.076
0.151f≦(d1+d3+d5)≦0.176f
の各条件を満足する赤外線レンズが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
他の従来技術の赤外線レンズとしては、2枚のメニスカスレンズにより構成し、所定の条件式を満足することにより、低コスト化および低重量化を図るとともに、コンパクトかつ実用上十分な結像性能を有する赤外線レンズが提供されている。すなわち、物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズからなる第1レンズL1と第2レンズL2により構成される。また、以下の条件式(1)〜(4)を満足する。
0.8<R1凸/f<3.0 (1)
0.3<R2凸/f<1.2 (2)
0.8<D /f<1.4 (3)
N1>2.0、N2>2.0 (4)
但し、fは全系焦点距離、R1凸およびR2凸は第1レンズL1および第2レンズL2の凸面側曲率半径、Dは第1レンズL1と第2レンズL2との間隔、N1およびN2は第1レンズL1および第2レンズL2の屈折率であり、各レンズL1、L2の材料は、ゲルマニウムである(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−30208号公報
【特許文献2】特開2000−75203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の赤外線用レンズは、10μm前後の波長域において色収差が残存し、さらに、球面収差及び像面湾曲が十分に補正されておらず、改造性能が低く、鮮明な結像を得ることができない。
【0007】
特許文献2の赤外線用レンズは、10μm前後の波長域において色収差が残存し、解像性能が低く鮮明な結像を得ることができない。さらに、光学全長が長くなり、小型化に適さないという問題がある。
【0008】
(発明の目的)
本発明は、従来の赤外線レンズに関する上述した問題点に鑑みてなされたものであって、十分な明るさすなわち開口数を確保した上で、10μm前後の波長域においても色収差が残存せず、また、球面収差、コマ収差及び像面湾曲を十分に補正して、鮮明な結像をえることができる赤外線レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、物体側から順に、正の第1レンズ群、負の第2レンズ群、正の第3レンズ群からなり、前記第2レンズ群の材料が第1レンズ群及び第3レンズ群の材料の分散より大きくなることを特徴とする。
【0010】
ゲルマニウムの屈折率は、n(8μm):4.0074 / n(10μm):4.0052 / n(12μ):4.0039である。分散の演算式 [ n(8μm) - n(12μm) ] / [ n(10μm) - 1 ] によって演算すると、ゲルマニウムの分散は、0.0012である。
【0011】
セレン化亜鉛の屈折率は、n(8μm):2.5917 / n(10μm):2.5861 / n(12μ):2.5794である。分散の演算式 [ n(8μm) - n(12μm) ] / [ n(10μm) - 1 ] によって演算すると、セレン化亜鉛の分散は、0.0078である。
【0012】
セレン化亜鉛の屈折率は、n(8μm):2.4163 / n(10μm):2.4053 / n(12μ):2.3915である。分散の演算式 [ n(8μm) - n(12μm) ] / [ n(10μm) - 1 ] によって演算すると、セレン化亜鉛の分散は、0.0176である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分な明るさすなわち開口数を確保した上で、10μm前後の波長域においても色収差が残存せず、また、球面収差、コマ収差及び像面湾曲を十分に補正して、鮮明な結像をえることができる赤外線レンズを構成することができる。
【0014】
本発明の実施態様は、以下の通りである。
本発明において、前記第2レンズ群の材料が、カルコゲナイトであることを特徴とする。
このように構成することによって、光学特性や供給が安定して供給される材料を使用して、10μm前後の波長域においても色収差を十分に補正することができる効果を得ることができる。
【0015】
他の実施態様は、本発明において、前記第2レンズ群の材料が、セレン化亜鉛であることを特徴とする。
このように構成することによって、光学特性や供給が安定して供給される材料を使用して、10μm前後の波長域においても色収差を十分に補正することができる効果を得ることができる。
【0016】
他の実施態様は、本発明において、前記赤外線レンズの焦点距離をf、前記第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
0.8≦f/f1≦1.1 (1)
の条件を満たすことを特徴とする。
このように構成することによって、球面収差を良好に低減させ、特に軸上の解像性能を向上させることができる。
【0017】
他の実施態様は、本発明において、前記赤外線レンズのいずれか一面が、非球面であることを特徴とする。
このように構成することによって、コマ収差を良好に低減させることができる。
【0018】
他の実施態様は、本発明において、前記赤外線レンズのいずれか一面が、非球面回折素子であることを特徴とする。
このように構成することによって、色収差を良好に低減させることができる。
【0019】
他の実施態様は、本発明において、前記第3レンズ群を光軸に直交する方向に変位させて像振れを補正することを特徴とする。
前記第3レンズ群は、前記第1レンズ群より直径が小さく軽量であり、光軸に直交する方向により容易に変位させることができる。また、前記第3レンズ群を光軸と直交する方向へ変位させるための駆動機構は、レンズ系の中間部及び後方部に配置することができ、レンズ全体をコンパクトにまとめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の赤外線レンズの光学断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の赤外線レンズの球面収差図である。
【図3】本発明の第1実施形態の赤外線レンズの非点収差図ある。
【図4】本発明の第1実施形態の赤外線レンズのメリジオナルコマ収差図ある。
【図5】本発明の第1実施形態の赤外線レンズのサジタルコマ収差図である。
【図6】本発明の第2実施形態の赤外線レンズの光学断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の赤外線レンズの球面収差図である。
【図8】本発明の第2実施形態の赤外線レンズの非点収差図ある。
【図9】本発明の第2実施形態の赤外線レンズのメリジオナルコマ収差図ある。
【図10】本発明の第2実施形態の赤外線レンズのサジタルコマ収差図である。
【図11】本発明の第3実施形態の赤外線レンズの光学断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態の赤外線レンズの球面収差図である。
【図13】本発明の第3実施形態の赤外線レンズの非点収差図ある。
【図14】本発明の第3実施形態の赤外線レンズのメリジオナルコマ収差図ある。
【図15】本発明の第3実施形態の赤外線レンズのサジタルコマ収差図である。
【図16】本発明の第4実施形態の赤外線レンズの光学断面図である。
【図17】本発明の第4実施形態の赤外線レンズの球面収差図である。
【図18】本発明の第4実施形態の赤外線レンズの非点収差図ある。
【図19】本発明の第4実施形態の赤外線レンズのメリジオナルコマ収差図ある。
【図20】本発明の第4実施形態の赤外線レンズのサジタルコマ収差図である。
【図21】本発明の第1実施形態の赤外線レンズの光学断面図である。
【図22】本発明の第5実施形態の赤外線レンズの球面収差図である。
【図23】本発明の第5実施形態の赤外線レンズの非点収差図ある。
【図24】本発明の第5実施形態の赤外線レンズのメリジオナルコマ収差図ある。
【図25】本発明の第5実施形態の赤外線レンズのサジタルコマ収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の赤外線レンズの実施形態のレンズデータ等を示す。波長は、10μmである。
(第1実施形態)
焦点距離 99.95mm
全長 126.86mm
バックフォーカス 15.95mm
F/No 1.0
半画角 3.17°
像高 5.5mmr
【0022】
面番号 曲率半径 厚さ間隔 半径 屈折率 焦点距離
1 97.2692 6.0 56.1 4.0052 104.567(ゲルマニュウム)
2 134.355 57.92 55.9
s絞り 2.4 21.7
3 1783.56 4.93 20.7 2.5861 -77.984(カルコゲナイト)
4 115.472 31.66 19.6
5 31.5434 8.0 15.1 4.0052 48.7808(ゲルマニュウム)
6 32.5432 4.0 12.2
【0023】
第1実施形態の条件式の値は、以下の通りである。
条件式(1) 0.95585
【0024】
(第2実施形態)
焦点距離 99.94mm
全長 133.99mm
バックフォーカス 14.98mm
F/No 1.0
半画角 3.15°
像高 5.5mmr
【0025】
面番号 曲率半径 厚さ間隔 半径 屈折率 焦点距離
1 122.547 6.2 58.6 4.0052 110.146(ゲルマニュウム)
2 187.2 62.33 58.4
s絞り 2.4 20.6
3 -164.46 3.54 20.2 2.5861 -86.691(カルコゲナイト)
4 849.936 36.54 20.0
5 38.0357 8.0 15.3 4.0052 41.7968(ゲルマニュウム)
6 45.9462 4.0 13.0
【0026】
第2実施形態の第3面及び第4面は、以下の非球面式による非球面である。
【数1】
【0027】
第2実施形態の非球面係数は、以下の通りである。
面番号 K A B C
3 11.18 -2.6157E-07 1.3647E-09 -6.4802E-13
4 -133.59 -1.0171E-06 1.3567E-09 -6.5785E-13
【0028】
第2実施形態の条件式の値は、以下の通りである。
条件式(1) 0.90734
【0029】
(第3実施形態)
焦点距離 99.97mm
全長 134.23mm
バックフォーカス 15.99mm
F/No 1.03
半画角 3.16°
像高 5.5mmr
【0030】
面番号 曲率半径 厚さ間隔 半径 屈折率 焦点距離
1 122.56 7.4 48.6 4.0052 118.61(ゲルマニュウム)
2 178.322 7.05 47.4
s絞り 45.29 47.0
3 -247.09 5.2 30.3 2.5861 -278.32(カルコゲナイト)
4 -565.88 49.2 30.2
5 26.1384 4.1 14.3 4.0052 67.2485(ゲルマニュウム)
6 26.4879 4.0 12.6
【0031】
第3実施形態の非球面係数は、以下の通りである。
面番号 K A B C
3 41.052 -1.2762E-06 9.5458E-10 -1.1180E-13
4 235.153 -1.6921E-06 1.0090E-09 -1.9671E-13
【0032】
第3実施形態の第4面は、以下のDOE式によるDOE面である。
【数2】
【0033】
第3実施形態の第4面のDOE係数は、以下の通りである。
面番号 C1 C2 C3
4 -1.5364E-05 1.7070E-09 8.6709E-13
【0034】
第3実施形態の条件式の値は、以下の通りである。
条件式(1) 0.84285
【0035】
(第4実施形態)
焦点距離 99.97mm
全長 134.30mm
バックフォーカス 16.06mm
F/No 1.03
半画角 3.16°
像高 5.5mmr
【0036】
面番号 曲率半径 厚さ間隔 半径 屈折率 焦点距離
1 122.56 7.4 48.6 4.0052 118.61(ゲルマニュウム)
2 178.322 7.1 47.4
3絞り 45.3 47.0
4 -247.09 5.2 30.3 2.5861 -279.32(カルコゲナイト)
5 -565.88 49.2 30.2
6 26.1384 4.1 14.3 4.0052 67.2485(ゲルマニュウム)
7 26.4879 4.0 12.6
【0037】
第4実施形態の非球面係数は、以下の通りである。
面番号 K A B C
3 41.092 -1.2135E-06 8.6047E-10 -6.3565E-14
4 237.001 -1.6278E-06 9.1084E-10 -1.4261E-13
【0038】
第4実施形態の条件式の値は、以下の通りである。
条件式(1) 0.84285
【0039】
(第5実施形態)
焦点距離 99.91mm
全長 128.90mm
バックフォーカス 12.77mm
F/No 0.91
半画角 3.14°
像高 5.5mmr
【0040】
面番号 曲率半径 厚さ間隔 半径 屈折率 焦点距離
1 115.567 6.9 63.0 4.0052 102.653(ゲルマニュウム)
2 176.492 58.9 63.0
3絞り 2.4 21.0
4 -167.43 4.91 21.5 2.5861 -79.815(カルコゲナイト)
5 528.426 35.3124 20.832
6 35.2129 7.7 14.3 4.0052 40.2048(ゲルマニュウム)
7 41.5215 4.0 11.9
【0041】
第5実施形態の非球面係数は、以下の通りである。
面番号 K A B C
3 6.589 2.5359E-08 5.2297E-10 -1.3297E-13
4 -1486.6 1.4375E-07 -3.1084E-10 4.1217E-13
【0042】
第5実施形態の第3面のDOE係数は、以下の通りである。
面番号 C1 C2 C3
3 5.8600E-05 1.4624E-07 -2.1360E-10
【0043】
第5実施形態の条件式の値は、以下の通りである。
条件式(1) 0.97328
【符号の説明】
【0044】
1 第1レンズ群
2 第2レンズ群
3 第3レンズ群
r1 第1面
r2 第2面
s 絞り
r3 第3面
r4 第4面
r5 第5面
r6 第6面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の第1レンズ群、負の第2レンズ群、正の第3レンズ群からなり、前記第2レンズ群の材料が第1レンズ群及び第3レンズ群の材料の分散より大きくなることを特徴とする赤外線レンズ。
【請求項2】
前記第2レンズ群の材料が、カルコゲナイト又はセレン化亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線レンズ。
【請求項3】
前記第1レンズ群及び前記第2レンズ群が、ゲルマニウムからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線レンズ。
【請求項4】
前記赤外線レンズの焦点距離をf、前記第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
0.8≦f/f1≦1.1 (1)
の条件を満たすことを特徴とする請求項1から3のうちの一項に記載の赤外線レンズ。
【請求項5】
前記赤外線レンズのいずれか一面が、非球面であることを特徴とする請求項1から4ののうちの一項に記載の赤外線レンズ。
【請求項6】
前記赤外線レンズのいずれか一面が、非球面回折素子であることを特徴とする請求項1から5のうちの一項に記載の赤外線レンズ。
【請求項7】
前記第3レンズ群を光軸に直交する方向に変位させて像振れを補正することを特徴とする請求項1から6のうちの一項に記載の赤外線レンズ。
【請求項1】
物体側から順に、正の第1レンズ群、負の第2レンズ群、正の第3レンズ群からなり、前記第2レンズ群の材料が第1レンズ群及び第3レンズ群の材料の分散より大きくなることを特徴とする赤外線レンズ。
【請求項2】
前記第2レンズ群の材料が、カルコゲナイト又はセレン化亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線レンズ。
【請求項3】
前記第1レンズ群及び前記第2レンズ群が、ゲルマニウムからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線レンズ。
【請求項4】
前記赤外線レンズの焦点距離をf、前記第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
0.8≦f/f1≦1.1 (1)
の条件を満たすことを特徴とする請求項1から3のうちの一項に記載の赤外線レンズ。
【請求項5】
前記赤外線レンズのいずれか一面が、非球面であることを特徴とする請求項1から4ののうちの一項に記載の赤外線レンズ。
【請求項6】
前記赤外線レンズのいずれか一面が、非球面回折素子であることを特徴とする請求項1から5のうちの一項に記載の赤外線レンズ。
【請求項7】
前記第3レンズ群を光軸に直交する方向に変位させて像振れを補正することを特徴とする請求項1から6のうちの一項に記載の赤外線レンズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−173561(P2012−173561A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36228(P2011−36228)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】
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