説明

赤外線検出器

【課題】広範囲の温度計測を行なうことが可能で、全ての検出温度範囲に対してノイズの影響を抑制した赤外線検出器を提供する。
【課題の解決手段】同一チップに、サーモパイル素子1、第1〜第6のPチャンネル電界効果トランジスタを備えた低雑音増幅器23を有する前置増幅回路部2、主増幅回路部3を備え、サーモパイル素子1の出力信号Voutをスイッチング部21又はスイッチング部22でチョッピングした後に低雑音増幅器23で増幅し、この増幅した出力信号を差動増幅器31で増幅する。クロック信号SCKがクロック信号入力端子5又はクロック信号入力端子6に供給されることでスイッチング部21,22を選択的に動作させ、また、帰還抵抗部32のスイッチ37,38をオン、オフ制御して差動増幅器31の利得を可変させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線検出器に関し、特に、熱型赤外線検出素子を備えた赤外線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線検出器は、例えば、火災検知のような高温の検出から、人体検知といった常温付近の温度の検出まで、幅広い温度範囲に対して利用されている。この広範囲の温度を測定する赤外線検出器としては、例えば、一定の基準電圧を発生させる基準電圧発生手段と、基準電圧が印加され、周囲温度を保証する信号を出力する周囲温度補償手段と、該周囲温度補償手段から出力された信号を増幅する第1の増幅手段と、該第1の増幅手段から出力される信号が印加されるとともに、赤外線放射エネルギーを電気信号に変換するサーモパイルを使用した赤外線検知手段と、該赤外線検知手段から出力される信号を増幅する第2の増幅手段と、を備えたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−144715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の赤外線検知手段としてサーモパイルを利用した赤外線検出器は、該赤外線検知手段の出力信号が増幅される第2の増幅手段において、ノイズに対する措置が講じられていないため、該赤外線検知手段の出力信号が微小であるときにノイズの影響を大きく受けてしまい、出力の精度がよくなかった。また、従来の赤外線検出器によって高温を検知するとき、赤外線検知手段の出力信号の大きさが前記増幅手段の出力に対する上限値を上回ってしまい、温度の測定が不可能になる場合があった。
【0005】
本発明は、以上の問題点に鑑み広範囲の温度を計測することが可能であり、全ての検出温度範囲に対してノイズの影響を抑制した赤外線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため本発明に係る赤外線検出器は、赤外線検出素子と、一方の入力端と他方の入力端にそれぞれ前記赤外線検出素子の出力信号又は基準電圧信号が入力される低雑音増幅器を備え、前記赤外線検出素子の出力信号をチョッピングした後に前記低雑音増幅器で増幅し、パルス信号を生成する前置増幅回路部と、該前置増幅回路部による前記パルス信号を増幅する主増幅回路部と、を同一の半導体チップに有し、前記低雑音増幅器は、ソースが電源に接続され、ゲートにバイアス信号が入力される第1のPチャンネル電界効果トランジスタと、ソースが相互に接続されるとともに前記第1のPチャンネル電界効果トランジスタのドレインに接続される第2のPチャンネル電界効果トランジスタ及び第3のPチャンネル電界効果トランジスタと、前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタ及び前記第3のPチャンネル電界効果トランジスタのそれぞれのドレインに一端が接続され、他端がともに接地される第1及び第2の負荷抵抗と、を有するものである。
【0007】
前記低雑音増幅器は、上述の構成に加えて、ソースが電源に接続され、ゲートにバイアス信号が入力される第4のPチャンネル電界効果トランジスタと、ソースが相互に接続されるとともに前記第4のPチャンネル電界効果トランジスタのドレインに接続される第5のPチャンネル電界効果トランジスタ及び第6のPチャンネル電界効果トランジスタと、前記第5のPチャンネル電界効果トランジスタ及び前記第6のPチャンネル電界効果トランジスタのそれぞれのドレインに一端が接続され、他端がともに接地される第3及び第4の負荷抵抗と、をさらに有してもよく、前記第5のPチャンネル電界効果トランジスタのゲートは前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタのドレインと前記第1の負荷抵抗の一端との接続点に接続され、前記第6のPチャンネル電界効果トランジスタのゲートは前記第3のPチャンネル電界効果トランジスタのドレインと前記第2の負荷抵抗の一端との接続点に接続されることを特徴とする。
【0008】
前記前置増幅回路部は、前記低雑音増幅器に加え、クロック信号の信号レベルに基づいて前記赤外線検出素子の出力信号又は前記基準電圧信号を出力する第1の出力端と、前記クロック信号の信号レベルに基づいて前記基準電圧信号又は前記赤外線検出素子の出力信号を出力する第2の出力端とを備える第1のスイッチング部と、前記クロック信号の信号レベルに基づいて前記低雑音増幅器の一方の入力端又は他方の入力端に前記第1の出力端の信号又は前記第2の出力端の信号を選択的に入力させる第2のスイッチング部と、を有していることが好ましく、前記クロック信号を前記第1のスイッチング部又は前記第2のスイッチング部へと選択的に供給することによって、前記低雑音増幅器からパルス信号を生成することを特徴とする。
【0009】
前記赤外線検出素子は、サーモパイルであってもよい。
【0010】
前記負荷抵抗は、薄膜抵抗であることが好ましい。
【0011】
前記主増幅回路部は、前記前置増幅回路部の前記パルス信号を増幅する差動増幅器と、該差動増幅器の利得を可変させる帰還抵抗部と、を有し、前記帰還抵抗部は、前記差動増幅器の入出力端子間に直列接続される複数の抵抗と、該複数の抵抗の各々にそれぞれ並列接続される抵抗選択スイッチと、を備えていてもよく、前記抵抗選択スイッチをオンオフすることによって前記差動増幅器の利得を選択的に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る赤外線検出器によれば、広範囲の温度を計測することが可能であり、全ての検出温度範囲に対してノイズの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る赤外線検出器の構成を示す回路図。
【図2】前置増幅回路部及び差動増幅器の動作を表すタイミングチャート。
【図3】前置増幅回路部における低雑音増幅器の構成例。
【図4】前置増幅回路部における低雑音増幅器の他の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本実施例に係る赤外線検出器の回路図である。赤外線検出器は、赤外線検出素子であるサーモパイル素子1、前置増幅回路部2、及び主増幅回路部3が同一チップ上に形成され、基準電圧信号入力端子4、クロック信号入力端子5,6、レジスタ7、及びシリアルインターフェイス8を有している。
【0015】
サーモパイル素子1は前置増幅回路部2に接続され、前置増幅回路部2に出力信号Voutを供給する。前置増幅回路部2は、第1のスイッチング部21(以下スイッチング部21という。)と、第2のスイッチング部22(以下スイッチング部22という。)と、低雑音増幅器23と、抵抗24,25を備え、サーモパイル素子1の出力信号をチョッピングした後に増幅し、パルス信号を生成する。主増幅回路部3は、差動増幅器31、帰還抵抗部32、及び抵抗33からなり、前置増幅部回路部2によって生成されるパルス信号を増幅する。
【0016】
スイッチング部21は、サーモパイル素子1の出力信号Vout又は基準電圧信号Vrefを出力する第1の出力端215(以下出力端215という。)と、基準電圧信号Vref又は前記サーモパイル素子1の出力信号Voutを出力する第2の出力端216(以下出力端216という。)とを有する回路であり、入力信号がHレベルの時にオンするCMOSスイッチ211〜214(以下スイッチ211〜214という。)を備える。スイッチ211の一端及びスイッチ212の一端にはサーモパイル素子1が接続され、スイッチ213の一端及びスイッチ214の一端には基準電圧入力端子4が接続される。スイッチ211のゲート及びスイッチ214のゲートには、クロック信号入力端子5からのクロック信号SCKが反転入力され、スイッチ212のゲート及びスイッチ213のゲートにはクロック信号入力端子5からのクロック信号SCKが入力される。出力端215には、スイッチ211の他端及びスイッチ213の他端が接続され、出力端216には、スイッチ212の他端及びスイッチ214の他端が接続される。
【0017】
スイッチング部22は、低雑音増幅器23の非反転入力端子に入力されるサーモパイル素子1の出力信号Vout及び基準電圧信号Vrefを切り替える回路であり、入力信号がLレベルの時にオンするCMOSスイッチ221(以下スイッチ221という。)と、入力信号がHレベルの時にオンするCMOSスイッチ222(以下スイッチ222という。)と、からなる。スイッチ221の一端は出力端215に接続され、スイッチ222の一端は出力端216に接続される。スイッチ221の他端とスイッチ222の他端は互いに接続されて、低雑音増幅器23の非反転入力端子に接続される。スイッチ221及びスイッチ222のゲートには、クロック信号入力端子6からクロック信号SCKが入力される。
【0018】
低雑音増幅器23は、スイッチング部21及びスイッチング部22の切り替え動作によって、二つの入力端に供給されるサーモパイル素子1の出力信号Vout又は基準電圧信号Vrefの差信号を増幅するものであり、非反転入力端子が、スイッチ221の他端とスイッチ222の他端との接続点に接続され、反転入力端子が抵抗25を介して出力端216に接続される。
【0019】
抵抗24及び抵抗25は低雑音増幅器23の利得を決める素子であり、抵抗24が低雑音増幅器23の出力端と反転入力端子間に接続される。抵抗25は、一端が低雑音増幅器23の反転入力端子と抵抗24の一端に接続され、他端が出力端216に接続される。
【0020】
差動増幅器31は、低雑音増幅器23の反転入力端子に入力される信号と、低雑音増幅器23によって増幅されたパルス信号との差信号を増幅するものであり、非反転入力端子が出力端216及び抵抗25の他端に接続され、反転入力端子が抵抗33を解して低雑音増幅器23の出力端子に接続される。
【0021】
帰還抵抗部32は、抵抗34,35,36と、複数の抵抗35,36にそれぞれ並列に接続されるスイッチ37,38からなり、差動増幅器31の利得を可変させる。
【0022】
抵抗34は差動増幅器31の反転入力端子と抵抗33との接続点に一端が接続され、他端が抵抗35の一端に接続される。抵抗35の他端は抵抗36の一端に接続され、抵抗36の他端は差動増幅器31の出力端子に接続される。スイッチ37及びスイッチ38は抵抗選択スイッチであり、入力信号がLレベルの時にオンするCMOSスイッチからなる。スイッチ37のゲート及びスイッチ38のゲートはレジスタ7に接続され、レジスタ7に接続されるシリアルインターフェイス8によってオン、オフ制御される。スイッチ37は、一端が抵抗35の一端に接続され、他端が抵抗35の他端に接続される。スイッチ38は、一端が抵抗36の一端に接続され、他端が抵抗36の他端に接続される。
【0023】
ここで、図2に基づいて、スイッチング部21,22、及び差動増幅器31の動作を説明する。図2はクロック信号入力端子6の入力信号をS1、クロック信号入力端子5の入力信号をS2、低雑音増幅器23の増幅率をA23、差動増幅器31の増幅率をA31としたときの差動増幅器31の出力信号S3を表すタイミングチャートである。
【0024】
クロック信号入力端子5及びクロック信号入力端子6の信号がともにLレベルであるとき、スイッチ211、スイッチ214、及びスイッチ221はオンし、スイッチ212、スイッチ213、及びスイッチ222はオフする。低雑音増幅器23の非反転入力端子には、出力端215,スイッチ221を介してサーモパイル素子1の出力信号Voutが入力され、低雑音増幅器23の反転入力端子及び差動増幅器の31の非反転入力端子には、出力端216を介して基準電圧信号Vrefが入力されることから、低雑音増幅器23はサーモパイル素子1の出力信号Voutと基準電圧信号Vrefの差信号を増幅率A23で増幅し、増幅された信号が差動増幅器31の反転入力端子に入力される。
【0025】
図2のT1において、クロック信号入力端子6にクロック信号SCKが入力されると、スイッチング部22によるチョッピングが行なわれる。
クロック信号入力端子6の信号がHレベルのとき、スイッチ221はオフし、スイッチ222はオンする。低雑音増幅器23の非反転入力端子、低雑音増幅器23の反転入力端子、及び差動増幅器31の非反転入力端子には、いずれも出力端216を介して基準電圧信号Vrefが入力され、差動増幅器31は基準電圧信号Vrefを増幅する。
【0026】
クロック信号入力端子6の信号が再びLレベルになると、低雑音増幅器23はサーモパイル素子1の出力信号Voutと基準電圧信号Vrefの差信号を増幅率A23で増幅し、増幅された信号が差動増幅器31の反転入力端子に入力される。
【0027】
このように、クロック信号入力端子6に供給されるクロック信号SCKに基づいて、スイッチ221及びスイッチ222が交互にオン、オフし、差動増幅器31は、A23×A31×VrefとA23×A31×(Vref−Vout)を振幅にもつパルス信号を出力する。
【0028】
T2において、クロック信号SCKがクロック信号入力端子5に供給されるように切り替えると、スイッチング部21によるチョッピングが行なわれる。
クロック信号入力端子5の信号がHレベルのとき、スイッチ212とスイッチ213はオンし、スイッチ211とスイッチ214はオフする。低雑音増幅器23の非反転入力端子には出力端215を介して基準電圧信号Vrefが入力され、反転入力端子には出力端216を介してサーモパイル素子1の出力信号Voutが入力されることから、低雑音増幅器23は基準電圧信号Vrefとサーモパイル素子1の出力信号Voutとの差信号を増幅率A23で増幅する。
【0029】
クロック信号入力端子5の信号が再びLレベルになると、低雑音増幅器23はサーモパイル素子1の出力信号Voutと基準電圧信号Vrefの差信号を増幅率A23で増幅し、増幅された信号が差動増幅器31の反転入力端子に入力される。
【0030】
このように、クロック信号入力端子5に供給されるクロック信号SCKに基づいて、スイッチ211とスイッチ214,スイッチ212とスイッチ213が交互にオン、オフし、差動増幅器31は、A23×A31×(Vref+Vout)とA23×A31×(Vref−Vout)を振幅にもつパルス信号を出力する。
【0031】
スイッチング部21及びスイッチング部22によって、クロック信号SCKに基づいたチョッピングを行なうことにより、低雑音増幅器23の入力信号の周波数に起因する1/fノイズが抑制され、オフセット電圧の影響に左右されなくなる。1/fノイズの大きさは、クロック信号SCKの周波数に基づくチョッピング周波数に反比例するため、クロック信号SCKの周波数が大きいほど、1/fノイズを抑制することができる。
【0032】
スイッチング部21によるチョッピング方式は、サーモパイル素子1の出力信号Voutと基準電圧信号Vrefとの差信号の振幅を2倍の大きさにすることができ、スイッチング部22によるチョッピング方式は、基準電圧信号Vrefに対してサーモパイル素子1の出力信号Voutの大きさを比較することができる。
【0033】
特に、スイッチング部21によるチョッピング方式は、スイッチング部22によるチョッピング方式に比較してS/N比が2倍になるため、サーモパイル素子1の出力信号Voutが微小である場合も、ノイズの影響を抑制し、精度のよい温度計測を行なうことが可能である。
【0034】
図3は低雑音増幅器23の構成例を示すもので、低雑音増幅器23は、第1のPチャンネル電界効果トランジスタ231(以下トランジスタ231という。)と、第2のPチャンネル電界効果トランジスタ232(以下トランジスタ232という。)と、第3のPチャンネル電界効果トランジスタ233(以下トランジスタ233という。)と、第1の負荷抵抗234(以下負荷抵抗234という。)と、第2の負荷抵抗235(以下負荷抵抗235という。)とから構成される。
【0035】
トランジスタ231は、ソースが電源に接続され、ゲートにバイアス信号Pbiasが入力されて、電流源を構成している。トランジスタ232及びトランジスタ233は差動入力段であり、トランジスタ232のソース及びトランジスタ233のソースは、トランジスタ231のドレインに接続される。トランジスタ232は、ゲートが非反転入力端子であり、ドレインが負荷抵抗234の一端に接続される。トランジスタ233は、ゲートが反転入力端子であり、ドレインが負荷抵抗235の一端に接続される。負荷抵抗234の他端及び負荷抵抗235の他端は接地される。
【0036】
低雑音増幅回路23は、Nチャンネル電界効果トランジスタを用いずに、Pチャンネル電界効果トランジスタと負荷抵抗のみの構成とすることで、さらに1/fノイズの低減を図ることができる。
【0037】
また、低雑音増幅器23は、図4に示すように、トランジスタ231〜233、負荷抵抗234,235に加え、第4のPチャンネル電界効果トランジスタ236(以下トランジスタ236という。)と、第5のPチャンネル電界効果トランジスタ237(以下トランジスタ237という。)と、第6のPチャンネル電界効果トランジスタ238(以下トランジスタ238という。)と、第3の負荷抵抗239(以下負荷抵抗239という。)と、第4の負荷抵抗230(以下負荷抵抗234という。)とを備えてもよい。
【0038】
トランジスタ236は、ソースが電源に接続され、ゲートにバイアス信号Pbiasが入力される。トランジスタ237及びトランジスタ238は差動入力段であり、トランジスタ237のソース及びトランジスタ238のソースは、トランジスタ236のドレインに接続される。トランジスタ237は、ゲートがトランジスタ232のドレインと負荷抵抗234の一端に接続され、ドレインが負荷抵抗239の一端に接続される。トランジスタ238は、ゲートがトランジスタ233のドレインと負荷抵抗235の一端に接続され、ドレインが負荷抵抗230の一端に接続される。負荷抵抗239の他端及び負荷抵抗230の他端は接地される。
【0039】
このように、低雑音増幅器23を2段に構成することで、利得の増加とともに、コモンモードノイズの低減を図ることができる。
【0040】
なお、負荷抵抗234,235,239,230に高精度の薄膜抵抗を用いると、工程や温度による変動が非常に小さくなることから、オフセット変動を低減させることが可能である。
【0041】
次に、帰還抵抗部32の動作を説明する。スイッチ37及びスイッチ38がオフの時は、帰還抵抗部32の合成抵抗値は、抵抗34〜36の抵抗値を加算した値になる。スイッチ37がオンすると、差動増幅器31の帰還電流は抵抗36、スイッチ37、抵抗34を経て反転入力端子に流れる。そのため、帰還抵抗部32の合成抵抗値は、抵抗34,36の抵抗値を加算した値になる。さらに、スイッチ38がオンすると、差動増幅器31の帰還電流はスイッチ38、スイッチ37、抵抗34を経て反転入力端子に流れることから、帰還抵抗部32の合成抵抗値は抵抗34の抵抗値になる。スイッチ37及びスイッチ38がオン、オフ制御されることで、帰還抵抗部32の合成抵抗値が切り替わり、差動増幅器31の利得は可変する。
【0042】
サーモパイル素子1の出力信号Voutが微小であるときは、スイッチ37及びスイッチ38をオフして差動増幅器31の利得を大きくする。サーモパイル素子1の出力信号Voutは前置増幅回路部2によってノイズが十分に抑制されているため、差動増幅器31によって高利得で増幅された信号S3のノイズの影響は無視できるため、正確な温度換算が可能となる。このとき、クロック信号SCKをクロック信号入力端子5に入力すると、S/N比を2倍にすることができるため、さらにノイズが抑制された正確な温度換算が可能となる。
【0043】
また、高温を測定するとき、すなわちサーモパイル素子1の出力信号Voutが大きいときは、スイッチ37及びスイッチ38をオンして差動増幅器31の利得を小さくする。差動増幅器31は、前置増幅回路部2から非常に大きな信号が入力されても、増幅器の出力上限値を超えることを防止できる。
【0044】
このように、検出温度に合わせてスイッチ37及びスイッチ38をオン、オフして差動増幅器31の利得を可変させることで、広範囲の温度を測定することができる。
【0045】
サーモパイル素子1、前置増幅回路部2、及び主増幅回路部3は同一チップに設けられることで、外来ノイズの影響を受けにくくなり、サーモパイル素子1の出力信号を効果的に増幅することができる。
【0046】
なお、本実施例では、帰還抵抗部32は、差動増幅器31の入出力端子間に直列接続された3個の抵抗のうち、2個の抵抗にそれぞれ抵抗選択スイッチが並列接続されたが、入出力端子間に直列接続される抵抗の数を追加し、追加された抵抗にそれぞれ抵抗選択スイッチを並列接続してもよい。並列に接続された抵抗選択スイッチと抵抗が増えると、差動増幅器31の利得をより多段階に設定することができる。
【0047】
また、本実施例では、スイッチ211〜214、スイッチ221,222、及びスイッチ37,38にCMOSスイッチを用いたが、これらのスイッチは本実施例の形態に限られるものではなく、例えば、スイッチ211〜214とスイッチ222を各々Nチャンネル電界効果トランジスタに、スイッチ221とスイッチ37,38を各々Pチャンネル電界効果トランジスタに変更してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 サーモパイル素子
2 前置増幅回路部
3 主増幅回路部
4 基準電圧入力端子
5,6
クロック信号入力端子
7 レジスタ
8 シリアルインターフェイス
21 第1のスイッチング部
22 第2のスイッチング部
23 低雑音増幅器
24,25,33〜36 抵抗
31 差動増幅器
37,38,211〜214,221,222 スイッチ
231〜233,236〜238 トランジスタ
234,235,239,230 負荷抵抗


【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線検出素子と、
一方の入力端と他方の入力端にそれぞれ前記赤外線検出素子の出力信号又は基準電圧信号が入力される低雑音増幅器を備え、前記赤外線検出素子の出力信号をチョッピングした後に前記低雑音増幅器で増幅し、パルス信号を生成する前置増幅回路部と、
該前置増幅回路部による前記パルス信号を増幅する主増幅回路部と、
を同一の半導体チップに有し、
前記低雑音増幅器は、
ソースが電源に接続され、ゲートにバイアス信号が入力される第1のPチャンネル電界効果トランジスタと、
ソースが相互に接続されるとともに前記第1のPチャンネル電界効果トランジスタのドレインに接続される第2のPチャンネル電界効果トランジスタ及び第3のPチャンネル電界効果トランジスタと、
前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタ及び前記第3のPチャンネル電界効果トランジスタのそれぞれのドレインに一端が接続され、他端がともに接地される第1及び第2の負荷抵抗と、
を有する
ことを特徴とする赤外線検出器。
【請求項2】
前記低雑音増幅器は、
ソースが電源に接続され、ゲートにバイアス信号が入力される第4のPチャンネル電界効果トランジスタと、
ソースが相互に接続されるとともに前記第4のPチャンネル電界効果トランジスタのドレインに接続される第5のPチャンネル電界効果トランジスタ及び第6のPチャンネル電界効果トランジスタと、
前記第5のPチャンネル電界効果トランジスタ及び前記第6のPチャンネル電界効果トランジスタのそれぞれのドレインに一端が接続され、他端がともに接地される第3及び第4の負荷抵抗と、
をさらに有し、
前記第5のPチャンネル電界効果トランジスタのゲートは前記第2のPチャンネル電界効果トランジスタのドレインと前記第1の負荷抵抗の一端との接続点に接続され、前記第6のPチャンネル電界効果トランジスタのゲートは前記第3のPチャンネル電界効果トランジスタのドレインと前記第2の負荷抵抗の一端との接続点に接続される
ことを特徴とする請求項1記載の赤外線検出器。
【請求項3】
前記前置増幅回路部は、
クロック信号の信号レベルに基づいて前記赤外線検出素子の出力信号又は前記基準電圧信号を出力する第1の出力端と、前記クロック信号の信号レベルに基づいて前記基準電圧信号又は前記赤外線検出素子の出力信号を出力する第2の出力端とを備える第1のスイッチング部と、
前記クロック信号の信号レベルに基づいて前記低雑音増幅器の一方の入力端又は他方の入力端に前記第1の出力端の信号又は前記第2の出力端の信号を選択的に入力させる第2のスイッチング部と、
をさらに有し、
前記クロック信号を前記第1のスイッチング部又は前記第2のスイッチング部へと選択的に供給することによって、前記低雑音増幅器からパルス信号を生成する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の赤外線検出器。
【請求項4】
前記赤外線検出素子は、サーモパイルであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項記載の赤外線検出器。
【請求項5】
前記負荷抵抗は、薄膜抵抗であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項記載の赤外線検出器。
【請求項6】
前記主増幅回路部は、
前記前置増幅回路部の前記パルス信号を増幅する差動増幅器と、
該差動増幅器の利得を可変させる帰還抵抗部と、
を有し、
前記帰還抵抗部は、
前記差動増幅器の入出力端子間に直列接続される複数の抵抗と、
該複数の抵抗の各々にそれぞれ並列接続される抵抗選択スイッチと、
を備え、
前記抵抗選択スイッチをオンオフすることによって前記差動増幅器の利得を選択的に切り替える
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項記載の赤外線検出器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−68265(P2012−68265A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280206(P2011−280206)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【分割の表示】特願2007−53090(P2007−53090)の分割
【原出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】