説明

赤血球の長期貯蔵

【課題】RBC貯蔵懸濁物を直接ヒトに輸血できるようにし、かつ容認できるRBCのインビボ回復の維持を可能にすると同時に、従来の溶液およびプロセスを超える、ヒトRBCの貯蔵時間を増加させる改善された添加溶液およびプロセスの必要性が依然としてある。
【解決手段】冷蔵条件下でヒト赤血球(RBC)の貯蔵に有用な新規な添加物溶液が開示される。適切な容量のこの添加物溶液を使用して、約1〜6℃にて10週間までRBCを保存する方法もまた開示される。本発明に従う添加物溶液およびプロセスは、ヒトにおいて直接的に注入可能である溶液において延長された時間、ヒトRBCの生存可能な貯蔵を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(諸言)
全血貯蔵は、1917年にRebertsonにより初めて示された。酸−クエン酸塩−デキストロース(ACD)およびクエン酸塩−リン酸塩−デキストロース溶液(CPD)は、引き続き、血液の21日間の貯蔵を立証した。アデニンを有するCPD(CPD−1)が後に導入され、そして貯蔵血液の有効期間を5週間まで延長するために使用された。これらの溶液中で貯蔵された赤血球(RBC)は、ヒトドナーに再注入して戻して24時間後に、このような細胞が循環中で生存できなかったことにより決定されるように、約5〜6週間後に確実に劣化を示した。代謝老廃物(すなわち、乳酸および水素イオン)の濃度が増加するにつれ、連続した冷蔵貯蔵の間に漸減速度でグルコースが消費されることが観察された。このようなグルコース代謝速度の減少は、アデノシン三リン酸(ATP)の枯渇を導く。このことは、この細胞が循環中に戻されたときのRBCの回復と直接、相関する。
【背景技術】
【0002】
全血から赤血球(RBC)を分離した後に、それらを保存するための添加溶液を開発することにより、特にRBCの必要性に合わせて調整される処方物の設計が可能になった。添加溶液(例えば、Adsol(登録商標)(AS−1)、Nutricel(登録商標)(AS−3)、Optosol(登録商標)(AS−5)およびErythro−Sol(登録商標))は、4℃でのRBCの貯蔵を延長するために設計された。
【0003】
いまや、採取された全血のほとんど全ては、成分に分けられ、そしてRBC画分は、濃縮RBCとして貯蔵される。添加溶液系中に引き上げられた血液に関しては、RBCは、遠心分離により濃縮され、血漿は、RBCの容積を80%にするように取り除かれ、次いで、100mlの添加溶液が無菌的に添加される。得られた懸濁液は約55%のRBC容積画分を有する。従来のFDA認可添加溶液中に貯蔵されたRBCは、容認され得る(acceptable)24時間でのインビボ回復に対しては、6週間だけ貯蔵できる。
【0004】
液体保存においてRBCのインビボ回復特性を増大させるために、添加溶液および貯蔵プロセスを改善する試みが行われた。「Studies In Red Blood Cell Presevation−7.In vivo and In vitro Studies With A Modified Phosphate−Ammonium Additive Solition」、Greenwaltら、Vox.Sang.:65.87−94(1993)において、その著者らは、mM濃度で以下を含む実験的添加溶液(EAS−2)が、ヒトRBCの貯蔵有効期間を、現在の標準である5〜6週間から改善れた標準である8〜9週間まで延長することにおいて有用であることを決定した:20 NH4Cl、30 Na2HPO4、2 アデニン、110 デキストロース、55 マンニトール、pH7.15。しかし、媒質中で貯蔵された濃縮RBCは、直接注入可能ではなく、添加溶液中のアンモニウムの存在に起因して、輸血の前に洗浄工程を用いた上清の除去が必要であった。
【0005】
「Studies In Red Blood Cell Presevation−8.Liquid Storage of Red Cells in Glycerol−Containing Additive Solition」、Vox.Sang.67:139−143(1994)において、Greenwaltらは、9週間で濃縮赤血球の73%の回復を可能にした実験的添加溶液(EAS−25)を記載した。しかし、得られたRBCユニットは約1%のグリセロールを含んでいたため、ヒトにおいて大量に輸血するためには安全ではなかった。
【0006】
「Extending the Storage of Red Cells at 4℃」、Transfus.Sci.15:105−115(1994)、Merymanらにおいて、27週間程度の期間にわたって低ヘマトクリットで非常に希釈された懸濁物中で貯蔵したRBCの容認され得る生存性が決定された。しかし、このような貯蔵RBC懸濁物は、それらのカリウムおよびアンモニウムの高含有量、ならびにそれらのRBCの低容積画分に起因して、直接輸血するには容認できなかった。
【0007】
結論として、RBC貯蔵懸濁物を直接ヒトに輸血できるようにし、かつ容認できるRBCのインビボ回復の維持を可能にすると同時に、従来の溶液およびプロセスを超える、ヒトRBCの貯蔵時間を増加させる改善された添加溶液およびプロセスの必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、上記で議論した必要性を満たす。本発明は、冷蔵条件下でヒト赤血球(RBC)の貯蔵に有用な新規な添加物溶液に関する。本発明はまた、この添加物溶液を使用して、約1〜6℃にて約10週間までRBCを保存する方法に関する。
【0009】
本発明に従う添加物溶液およびプロセスは、ヒトにおいては直接的には注入可能な溶液において延長された時間、ヒトRBCの生存可能な貯蔵を可能にする。
【0010】
それゆえ、本発明の目的は、ヒトRBCの貯蔵のための添加物溶液を提供することであり、この溶液は、RBCの容認され得る回復を維持しながら、約1〜約6℃でのRBCの貯蔵時間を実質的に増加する。
【0011】
本発明の目的はまた、ヒトRBCの貯蔵のための添加物溶液を提供することであり、この溶液は、生理学的に安全であり、かつ莫大な量でのヒトへの直接注入に適切である。
【0012】
本発明のなお別の目的は、ヒトRBCを約9〜約10週間、約1〜約6℃にて、RBCの容認され得る24時間インビボ部分回復(24−hour in vivo fractional recovery)を伴って貯蔵する方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的はまた、約1〜約6℃での約9〜10週間の貯蔵後には、ヒトに直接的に注入可能である、新規なRBC貯蔵懸濁物を提供することである。
【0014】
本発明の目的に従って前述および他の目的を達成するために、本発明者らは、RBCを保存するための新規な添加物溶液を開発した。この溶液は、RBCを保存するに十分な量のアデニン、デキストロース、Na2HPO4、マンニトール、および少なくとも1つの生理学的に受容可能なナトリウム塩を含む水溶液を含む。この添加物溶液は、RBCを貯蔵するための方法に有用であり、この方法は以
下の工程を含む:
(a)RBCおよび血漿を含む全血のサンプルを抗凝固剤溶液と混合し、それにより全血の懸濁物を形成する工程;
(b)全血懸濁物を処理して、血漿からRBCを分離し、それにより濃縮RBCを形成する工程;
(c)本発明に従って、濃縮RBCを、適切な量の添加物溶液と混合し、それによりRBCの懸濁物を形成する工程;
(d)RBCの懸濁物を、約1〜約6℃まで冷却する工程;ならびに (e)冷却したRBCの懸濁物を、標準的な血液バンク手順に従って、約9〜約10週間貯蔵する工程。
【0015】
本発明に従って生成されたRBC懸濁物は、貯蔵の約9〜約10週後に、治療的に十分な量の回復可能なRBCを提供し、そしてRBCの輸血のために確立された公知の標準に従うさらなる処理をせずに、ヒトに直接的に注入可能である。
(項目1) 約1〜6℃での赤血球の長期貯蔵のための添加物溶液であって、該溶液は、約1〜3mMのアデニン、約20〜115mMのデキストロース
、約4〜15mMのNa2HPO4、約15〜60mMのマンニトール、および約20〜130mMの生理学的に受容可能なナトリウム塩を含む、添加物溶液。
(項目2) 前記溶液が、約200〜約310の浸透圧モル濃度を有する、項目1に記載の懸濁媒質。
(項目3) 前記浸透圧モル濃度が、約221から約280mOsmである、項目2に記載の懸濁媒質。
(項目4) 前記浸透圧モル濃度が、約240から256mOsmである、項目3に記載の懸濁媒質。
(項目5) pHが約7〜約9である、項目1に記載の懸濁媒質。
(項目6) 前記pHが約8.0〜約8.8である、項目5に記載の懸濁媒質。
(項目7) 前記pHが約8.4〜8.6である、項目6に記載の懸濁媒質。
(項目8) 赤血球(RBC)を延長した時間保存する方法であって、以下:
(a)貯蔵されるべき該RBCおよび血漿を含む全血のサンプルを抗凝固剤溶液と混合し、それにより全血の懸濁物を形成する工程;
(b)該全血懸濁物を処理して、該血漿から該RBCを濃縮し、それにより濃縮RBCを形成する工程;
(c)該濃縮RBCを、適切な量の添加物溶液と混合し、それによりRBCの懸濁物を形成する工程であって、該溶液は、約1〜3mMのアデニン、約20〜115mMのデキストロース、約4〜15mMのNa2HPO4、約15〜60mMのマンニトール、および約20〜130mMの生理学的に受容可能なナトリウム塩を含み、約200〜約310mOsmの浸透圧モル濃度および約7〜約9のpHを有する、工程;
(d)該RBCの懸濁物を、約1〜約6℃まで冷却する工程;ならびに (e)該冷却したRBCの懸濁物を、標準的な血液バンク手順に従って、約9〜約10週間貯蔵する工程、
を包含する、方法。
(項目9) 前記浸透圧モル濃度が、約221から280mOsmである、項目8に記載の方法。
(項目10) 前記浸透圧モル濃度が、約240から256mOsmである、項目9に記載の方法。
(項目11) 前記pHが約8.0〜8.8である、項目8に記載の方法。
(項目12) 前記pHが約8.4〜8.6である、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記RBC懸濁物におけるRBCの濃度が、全懸濁物の約25〜約50%である、項目8に記載の方法。
(項目14) 前記RBC懸濁物におけるRBCの濃度が、全懸濁物の35〜約45である、項目13に記載の方法。
(項目15) 前記RBC懸濁物におけるRBCの濃度が、全懸濁物の約43%である、項目13に記載の方法。
(項目16) 赤血球(RBC)の貯蔵懸濁物であって、該懸濁物は、溶液中に懸濁された赤血球(RBC)を含み、該溶液は、約1〜3mMのアデニン、約20〜115mMのデキストロース、約4〜15mMのNa2HPO4、約15〜60mMのマンニトール、および約20〜130mMの生理学的に受容可能なナトリウム塩を含む、貯蔵懸濁物。
(項目17) 前記溶液が、約200〜約310mOsmの浸透圧モル濃度および約7〜約9のpHを有し、該溶液中に懸濁されたRBCの容量割合が、総溶液の25〜50%である、項目16に記載の赤血球(RBC)の貯蔵懸濁物。
(項目18) 前記懸濁物が、約1〜約6℃の温度にて約8〜約9週間貯蔵されている、項目17に記載の懸濁物。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、5〜8週の範囲の期間の種々の溶液中に貯蔵されたRBCの24時間インビボ回復を実証する。
【図2】図2は、8〜9週の範囲の期間のEAS−61(本発明に従う添加物溶液)中に貯蔵されたRBCの24時間インビボ回復を実証する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明の目的に関して、用語「回復」は、ヒトドナーに再注入した後の24時間にわたり、循環中に留まる貯蔵RBCの画分を示すために、本明細書中で使用される。
【0018】
用語「長期化した」または「延長した」貯蔵は、6週間より長く約10週間までの期間にわたって、容認されるRBCの回復を伴う、RBCの保存または貯蔵を示すために本明細書中で使用される。
【0019】
本発明に従う添加溶液は、RBCを保存するに適切な濃度の、アデニン、デキストロース、Na2HPO4、マンニトール、および少なくとも1つの生理学的に受容可能なナトリウム塩の水溶液を含む。概して、この溶液は、約1〜3mMのアデニン、約20〜115mMのデキストロース、約4〜15mMのNa2HPO4、約15〜60mMのマンニトール、および約20〜130mMの、少なくとも1つの生理学的に受容可能なナトリウム塩を含む。好ましくは、アデニンは、約2mMであり、デキストロースは約50〜110mMであり、Na2HPO4は約9〜12mMであり、マンニトールは約20〜50mMであり、そして少なくとも1つの生理学的に受容可能なナトリウム塩は約25〜75mMである。Na2HPO4およびNaH2PO4の組み合わせもまた使用され得る。
【0020】
本発明の媒質において有用な適切なナトリウム塩としては、ヒトにおいて生理学的に受容可能なナトリウム陽イオンを含有する塩化合物が挙げられる。好ましいナトリウム塩としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。最も好ましくは、この媒質は、約20〜100mMの塩化ナトリウムおよび0〜53mMの酢酸ナトリウムを含む。
【0021】
添加溶液のpHは、室温で約7〜9の範囲に維持される。好ましくは、本発明の添加溶液のpHは、約8〜8.8の範囲にある。最も好ましくは、この添加溶液のpHは、約8.4〜8.6である。
【0022】
本発明の懸濁媒質の浸透圧モル濃度は、約200〜310 mOsmの範囲にある。好ましくは、この浸透圧モル濃度は、約221〜280mOsmの範囲にある。最も好ましくは、この添加溶液の浸透圧モル濃度は、約240〜256mOsmである。
【0023】
本発明において有用なRBCは、血漿から分離され、かつ成分製造(component manufacture)の通常過程で抗凝固溶液中に再懸濁されたRBCである。簡潔に述べると、RBCおよび血漿を含む標準的全血サンプル(450±50ml)を抗凝固溶液(約63ml)と混合して、全血の懸濁物を形成する。その後、この全血懸濁物を遠心分離して、RBCと血漿とを分離し、このことによって濃縮RBCを形成する。
【0024】
適切な抗凝固剤としては、RBCの貯蔵に関して公知の従来の抗凝固剤が挙げられる。好ましくは、この抗凝固剤は、5.5〜8.0のpHを有するクエン酸塩抗凝固剤(例えば、CPD、半強度の(half−strength)CPDなどが挙げられる。最も好ましい抗凝固剤は、CPDである。
【0025】
本発明の方法に従って、添加溶液は、細胞懸濁物において回復可能なRBCの治療的に有効な量を提供するに十分な量で、濃縮RBC懸濁物に添加される。好ましくは、この添加溶液は、約140ml〜約400mlの範囲の容量、好ましくは約180ml〜約300mlの容量、最も好ましくは約200mlの容量で添加される。
【0026】
細胞懸濁物(すなわち、添加溶液の添加後)中のRBC容積画分は、総懸濁物の約27〜50%である。より好ましくは、細胞懸濁物中のRBC容積画分は、約35〜45%である。最も好ましくは、細胞懸濁物中のRBC容積画分は、総懸濁物の約43%である。
【0027】
次いで、RBC懸濁液を、保留したアリコートの容量に依存して、異なるサイズの収集バックまたはPVC輸送パックのいずれかを使用して、標準的なポリビニルクロライド(PVC)血液保留バックに保留する。このRBC懸濁液を、Clinical Practice of Blood Trasfucion(編集者ら:Petz&Swisher、Churchill−Livingston Publishers,N.Y.1981)に記載されるような標準的な血液バンク手順に従って、約1〜6℃で保留する。本明細書中の以下および先に引用される全ての文献は、本明細書によって、本明細書に対する参考として援用される。
【0028】
任意の特定の理論または説明に縛られることなく、本発明に従う高容量の添加溶液中に保留される場合、漸増容量の栄養溶液は、漸増質量の基質が、代謝性消費産物の希釈のために溶質を提供しそれによってグルコース代謝のフィードバック阻害を低下させつつ、受容可能な濃度にて送達されることを可能にする。
【0029】
本発明の添加溶液の別の特徴は、それらが保留の間に初めにRBCの腫脹、次いで赤血球容量の緩やかな減少を生じることであるとさらに仮定される。このようなプロセスは、「容量減少の調節」と呼ばれている。このプロセスの間、RBCに存在するチロシンホスファターゼ活性が抑制されるか、またはチロシンキナーゼが活性化されるかのいずれかであると想定される。これらの酵素の両方は、これらの細胞の膜に豊富であることが実証されている(Zipser,Y.およびKosower,N.S.(1996)Biochem.J.314:881;Mallozzi C.ら(1997)FASEB J.11:1281)。RBC膜におけるバンド3タンパク質の正味のリン酸化は、バンド3に対するそれらの結合状態からの細胞質におけるホスホフルクトキナーゼ、アルドラーゼおよびグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼの放出を生じると予測される(Harrison,M.L.ら(1991)J.Biol.Chem.266:4106;Cossins,A.R.およびGibson J.S.(1997)J.Exper.Biol.200:343;Low,P.S.ら(1993)J.Biol.Chem.268:14627;Low,P.S.ら(1995)Protoplasma 184:196)。解糖経路におけるこれらの3つの酵素のアベイラビリティーは、RBCによるグルコース代謝を増大させ、それによってRBCにおける受容可能なレベルのATPレベルを促進すると予期される。
【0030】
本明細書中に記載される実施例および実施態様は、例示の目的のみのためであり、そしてそれらを鑑みる種々の改変または変化は、本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【0031】
以下の材料および方法を、以下の実施例に使用した。
【0032】
(添加溶液の調製)本発明に従う添加溶液を、水溶液中で成分を混合することによって調製した。アデニンを、Sigma Chemical(St.Louis,Mo)から得た。使用された他の化学物質は、ACSグレードであり、そしてFicher Scientific(Cincinnati,OH)から得た。この添加溶液の無菌性を、充填ベル(filling bell)を有する0.22μmフィルター(Sterivex−GX、Millipore Corporation、Bedford,MA)を通じて1Lの無菌輸送パック(Baxter Healthcare,IL)中に濾過することによって達成
した。無菌性を培養によって確認した。
【0033】
Orion pHメーター(Model 900A Analytical Technology,Inc.、Orion,Boston,MA)を使用して、pHを測定した。浸透圧モル濃度を、凝固点降下によって測定した(Osmette TM Precision Systems,Sudbury,MA)。
【0034】
(血液サンプル)血液バンクアメリカ協会(American Association of Blood Banks)ならびに食品医薬品局の基準により容認され得る血液ドナーを使用した。血液の標準的なユニット(450ml)を、63mlのCPD ポリビニル−クロライドバックを用いて収集した。血液全体の各ユニットを遠心分離し、そして血小板に富む血漿を、サテライトバックに急いで移した。規定された容量における添加溶液を添加し、そしてこのユニットを、規定された期間にわたって1〜6℃で保留した。
【0035】
(インビボ試験)保留後、二重放射性同位体手順(Moroff,G.ら(1984)Transfucion 24:109〜114;International Committee on Standarization in Hematology.Recommended Method for Radioisotope Red−Cell Survival Studies.Brit.J.Haematology(1980)45:659〜666))を使用して、インビボでのRBC回復を、自系での再注入の24時間後に測定した。簡潔には、保留された血液サンプルを、51Crで標識した。同時に、新鮮な血液サンプルを、ボランティアから収集し、そして99mTc(テクネチウムTc−99mで標識された赤血球パッケージインサートの調製のためのUltratag RBCキット、Mallinckrodt Medical,St.Louis,MO)で標識した。放射性標識された赤血球の注意深く測定されたアリコートを混合し、そして迅速に再注入した。血液サンプルを、再注入のすぐ後に60分間の定期間隔で、そして再度24時間で収集した。このサンプルの放射活性を、γカウンター(Wallac CLINGAMMA Twin 2、Model 1272、Turku、Finland)で測定した。99mTc放射性標識細胞からのγ射出を、再注入の後30分間で収集したサンプルにおいて測定し、独立したRBC容量を決定するために使用した。51Cr標識細胞からの活性を、遅延したサンプルにおいて測定し、そして使用して、輸注したRBCの回復を算定した。この結果を、インビボでの24時間RBC回復百分率として表した。
【0036】
(実施例I)
保留後のRBC回復を、自系24時間回復画分として測定した。CPDA−1に5週間保留された全血、CPDA−1に5週間保留された濃縮赤血球、AS−3溶液に6および7週間保留された濃縮赤血球を、EAS−61(本発明に従う添加溶液)中に7〜8週間保留された濃縮赤血球と比較した。
【0037】
EAS−61の成分を、以下の表1に記載する。この溶液の室温でのpHは、8.58であり、そしてこの測定された総浸透圧モル濃度は、256mOsm/Kg H2Oであった。
【0038】
【表1】


10のボランティアは、添加溶液EAS−1中に7週間保留し、そして10人は、8週間であった。
【0039】
結果(図1に示される)は、本発明の200mlの添加溶液中に保留された、インビボでの24時間RBC回復百分率が、7および8週間の保留後に80%を超えることを示す。比較によって、7週間の保留後の、100mlのAS−3におけるRBC回復百分率は、約70%未満であり、そして添加溶液がないCPDAー1では、濃縮RBCの5週間のみの保留後には、80%未満であった。許可された溶液の値は、図1の説明文に見出される参照文献からである。
【0040】
(実施例2)
EAS−1中での8および9週間の保留後のRBC回復もまた、決定した。200mlの添加溶液を、1ユニットの血液に由来する濃縮細胞に添加し、そして1〜6℃で保留した。10ユニットの8週間での、および10ユニットの9週間でのインビボ試験の結果を、RBCのインビボでの24時間回復百分率として表し、そして図2に記録する。
【0041】
図2に示されるように、本発明の200mlの添加溶液中に保留されたRBCの百分率回復は、9週間の保留後には81%であった。
【0042】
結果は、RBCが本発明に従う200mlの添加溶液中で少なくとも9週間保留され得ること示し、これは、インビボでの満足のいく回復である。
【0043】
(実施例3)
保留されたRBCの有用な貯蔵期限を増大させる試みは、添加溶液の容量を増大させることによって、およびこの溶液において異なる塩(すなわち、NaClおよび酢酸Na)の濃度を変更することによっての両方で進行中である。
【0044】
インビトロ試験を、本発明に従う添加溶液で、種々の容量レベルにて実行する。インビトロ測定には、スパンへマトクリット、上清ヘモグロブリン、溶血百分率、添加溶液を血液と混合した後の添加溶液および上清のミリ浸透圧モル濃度、完全血球数(CBC)、平均血球容積(MCV)、平均血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、血球外pHおよび血球内pH、アデノシン−5−トリホスフェート(ATP)、DPG(2,3−ジホスホグリセレート)、グルコース、カリウム、無機リン酸(Pi)および乳酸の定量、ならびにRBC形態が含まれる。
以下の表2に記載されるような、漸増容量の添加溶液を使用するインビトロ研究は、現在進行中である。
【0045】
400mlまでの漸増容量のEAS−64中でのRBCの3週間までの保留についてのデータ(表3〜6に要約される)は、表2に記載される本発明に従う添加溶液が、ATP値の低下ならびに低い溶血およびカリウム漏出により示されるような保留の改善を示唆する。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
【表6】


これらの結果は、希釈が本発明の添加溶液で達成された優れた回復を少なくとも部分的に担うことを示す。さらに、インビトロおよびインビボ研究は、約11週間までのRBCの保留に最良の容量および組成を決定するために進行中である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−260872(P2010−260872A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179068(P2010−179068)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【分割の表示】特願2000−571014(P2000−571014)の分割
【原出願日】平成11年8月30日(1999.8.30)
【出願人】(501059578)ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンティド バイ ザ セクレタリー オブ ジ アーミイ,ウォルター リード アーミー インスティテュート オブ リサーチ (1)
【Fターム(参考)】