説明

走査型光ファイバ

【課題】光ファイバの中心軸とレンズの光軸とを容易かつ確実に行うことが可能であるとともに、ケーシングとの絶縁を確実に確保することが可能な走査型光ファイバを得る。
【解決手段】固定部材130の第2の内周面137は、その軸方向に対して直角をなす断面において、圧電アクチュエータ110及び電源ケーブル170による半田付け部180の断面積よりも大きい断面積を有する。圧電アクチュエータ110の近位端側端部と第2の内周面137との間に、接着剤160が充填される。これにより、圧電アクチュエータ110の近位端側端部から延びる電源ケーブル170とシングルモード光ファイバ120とが固定部材130に対して固定され、半田付け部180の絶縁を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型ファイバ内視鏡(SFE)に用いられる走査型光ファイバに関し、より詳しくは光ファイバの固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型光ファイバは、内視鏡スコープの遠位端部に格納されて使用される照明装置であって、照明光を内視鏡プロセッサから被写体に導く光ファイバと、光ファイバを駆動する駆動部材、例えば圧電素子と、照明光を被写体に集光するレンズと、これらを内部に格納するケーシングとから主に構成される。光ファイバの周囲には圧電素子が取り付けられ、光ファイバと圧電素子は固定部材を介して走査型光ファイバのケーシングに固定される。レンズは、光ファイバの先端に近接するように設けられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−43763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照明光を正確に被写体に照射するために、光ファイバの中心軸とレンズの光軸とを合わせる必要がある。この作業を光軸調芯作業という。光軸調芯作業を行うために、光ファイバを支持して、レンズの光軸に光ファイバの中心軸を合わせてから、固定部材とケーシングとを固定する。しかし、光ファイバは剛性が低いため、中心軸と光軸とを合わせるときに確実に光ファイバを支持できず、光ファイバが揺れてしまい、光軸調芯作業を安定的に行えない、すなわち中心軸と光軸とを確実に一致させることが出来ないおそれがある。
【0005】
さらに、圧電素子に電圧を印加するため、導電性ケーブルを圧電素子に半田付けする場合がある。多くの場合、ケーシングがステンレス等の導電性物質で構成されるため、ケーシングと半田付け部分との絶縁を確保する必要がある。このため、ケーシングと半田付け部分との間に樹脂を充填する構成が考えられる。しかし、この構成では、樹脂に気泡等が混入、又は充填不足が発生したときに、絶縁を十分に確保できない恐れがある。絶縁を十分に確保できなければ、被験者を危険にさらす恐れが生じるとともに、内視鏡の安全性を確保する各種規格に適合しなくなる恐れがある。
【0006】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、光ファイバの中心軸とレンズの光軸とを容易かつ確実に一致させることが可能であるとともに、ケーシングとの絶縁を確実に確保することが可能な走査型光ファイバを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明による走査型光ファイバは、内視鏡スコープに用いられる走査型光ファイバであって、導電性ケーブルが近位端に接続される筒状の駆動部材と、駆動部材の内側面に挿入される光ファイバと、絶縁部材から成る筒状の第1の筒部及び第2の筒部を有する固定部材とを備え、第2の筒部は、その延伸方向に対して直角をなす断面において、駆動部材と導電性ケーブルとの接続部における断面積よりも大きい断面積を有する第2の内側面を備え、第1の筒部は、接続部が第2の筒部の内側面の内側に位置するように駆動部材の近位端側を把持する第1の内側面を備え、固定部材が第1の筒部の近位端側端部と第2の筒部の遠位端側端部とを接続した形状であることを特徴とする。
【0008】
第1の筒部及び第2の筒部は円筒であり、第1の内側面と第2の内側面は円筒状であることが好ましい。
【0009】
前記駆動部材の近位端部と前記第2の内側面との間に充填される接着剤を備えることが好ましい。
【0010】
接着剤は絶縁性を有することが好ましい。
【0011】
第2の筒部の外径は第1の筒部の外径よりも大きいことが好ましい。
【0012】
レンズが取り付けられた円筒状のハウジングを備え、固定部材は、第1の筒部の外周がハウジングの内周面と係合するように、かつ光ファイバの軸がレンズの光軸と一致するように内視鏡先端部の内周に挿入されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバの中心軸とレンズの光軸とを容易かつ確実に行うことが可能であるとともに、ケーシングとの絶縁を確実に確保することが可能な走査型光ファイバを得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】走査型光ファイバの断面図である。
【図2】固定部材の正面図である。
【図3】固定部材の側面図である。
【図4】固定部材の背面図である。
【図5】固定部材の斜視図である。
【図6】光軸調芯作業を行っているときの走査型光ファイバを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明における走査型光ファイバ100について添付図面を参照して説明する。まず、図1から図5を用いて走査型光ファイバ100の構成について説明する。
【0016】
走査型光ファイバ100は、駆動部材である筒状の圧電アクチュエータ110と、シングルモード光ファイバ120と、絶縁部材、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)やセラミックから成る固定部材130と、これらの部材を格納する円筒形のケーシング140とを主に備える。
【0017】
ケーシング140は、ステンレスやチタンなどの金属から成り、その外周面141及び内周面142は円周面を形成する。図示しない内視鏡スコープの遠位端部の内周、すなわち観察対象物に最も接近する先端部の内周にケーシング140が格納される。
【0018】
ケーシング140の遠位端側端部には、複数のレンズ150が取り付けられる。複数のレンズ150は、光軸がケーシング140の中心軸Xと一致するように、ケーシング140の内周面142に嵌合する。
【0019】
ケーシング140の近位端側端部には、固定部材130の一部が嵌合する。固定部材130は、図3及び図5に示すように径の異なる2つの円筒を同軸に接続した形状を備える。小さい外径を有する円筒が第1の筒部131を成し、第1の筒部131よりも大きい外径及び内径を有する円筒が第2の筒部135を成す。第1の筒部131の外側面132がケーシング140の内周面142と係合する。以下、第1の筒部131の外側面132を第1の外周面132という。
【0020】
圧電アクチュエータ110は、第1の筒部131の内側面133と嵌合して、圧電アクチュエータ110と内側面133との間に設けられる接着剤により固定される。以下、第1の筒部131の内側面133を第1の内周面133という。圧電アクチュエータ110は円筒形状であって、遠位端側端部は円錐形状を有する。圧電アクチュエータ110は、その軸方向長さの半分以上が固定部材130の遠位端側端部から軸方向に突出するが、固定部材130の近位端側端部から突出しない。
【0021】
圧電アクチュエータ110の近位端側端部には、電源ケーブル170の遠位端が半田付けされる。電源ケーブル170の近位端は内視鏡スコープの近位端まで延びて内視鏡プロセッサに接続され、電力を受電する。
【0022】
シングルモード光ファイバ120は、圧電アクチュエータ110の内周面111と嵌合し、シングルモード光ファイバ120の外周面と圧電アクチュエータ110の内周面111との間に設けられる接着剤により固定される。シングルモード光ファイバ120は可撓性の円筒であって、その遠位端部は、圧電アクチュエータ110の遠位端側端部から複数のレンズ150の後玉の近辺まで圧電アクチュエータ110の遠位端側端部から軸方向に突出する。シングルモード光ファイバ120は、その軸が複数のレンズ150の光軸と一致するように取り付けられる。シングルモード光ファイバ120の近位端部は内視鏡スコープの近位端まで延びて内視鏡プロセッサに接続され、照明光を受光する。
【0023】
圧電アクチュエータ110の近位端側端部と第2の筒部135の内側面137との間には、絶縁性を有する樹脂から成る接着剤160が充填される。これにより、圧電アクチュエータ110の近位端側端部から延びる電源ケーブル170とシングルモード光ファイバ120とが固定部材130に対して固定され、半田付け部180の絶縁を確保できる。以下、第2の筒部135の内側面137を第2の内周面137と呼ぶ。
【0024】
次に固定部材130について詳細に説明する。
【0025】
第1の外周面132はケーシング140の内周面142よりもわずかに小さい径を有し、第1の内周面133は圧電アクチュエータ110の外周面112よりもわずかに大きい径を有する。シングルモード光ファイバ120の軸を複数のレンズ150の光軸と一致させることが可能となるように、言い替えると光軸調芯作業が可能となるように、第1の外周面132とケーシング140の内周面142との間に若干の遊びが設けられる。
【0026】
第2の筒部135の外側面である第2の外周面136は、ケーシング140の外周面141と略同じ径を有する。第2の内周面137は、その延伸方向、すなわち軸方向に対して直角をなす断面において、圧電アクチュエータ110及び電源ケーブル170による半田付け部180の断面積よりも大きい断面積を有する。これにより、第2の筒部135が半田付け部180を全周に渡って覆うことが可能となる。そして、第2の筒部135は絶縁体であるため、半田付け部180がケーシング140と電気的に接触することを防止できる。
【0027】
次に、図1及び6を用いて光軸調芯作業について説明する。ケーシング140には複数のレンズ150が取り付けられている。一方、電源ケーブル170とシングルモード光ファイバ120とが固定部材130に対し接着剤160により固定されている。このように形成された固定部材130とケーシング140の取り付けについて説明する。
【0028】
光軸調芯作業では、照射された光の位置を検出する光位置センサ210と、三軸方向に移動可能なXYZステージ220と、これらと電気的に接続される制御部230とを用いる。XYZステージ220は、第2の外周面136を把持するための把持部221を有する。制御部230は、光位置センサ210から送られる光の位置に基づいてXYZステージ220を駆動する。
【0029】
まず、光位置センサ210の位置検出面211における所定の点に対してレンズ150の光軸が直角となるように、図示しない治具でケーシング140を固定する。そして、第2の外周面136を把持部221で保持する。ついで、シングルモード光ファイバ120及び圧電アクチュエータ110が取り付けられた固定部材130の第1の筒部131を、ケーシング140の内周に挿入する。このとき、第2の筒部135の近位端部とケーシング140の遠位端側端部との間には遊びが設けられる。すなわち、固定部材130は、第2の筒部135がケーシング140と係合しない位置までケーシング140の内周に挿入される。
【0030】
次に、シングルモード光ファイバ120に光を送って、レンズ150に向けて光を照射する。レンズ150を介した光は、位置検出面211に照射される。このとき、レンズ150を通過した光が位置検出面211における所定の点に照射されるように、制御部230がXYZステージ220を駆動して、固定部材130の位置を調節する。前述のように、第1の外周面132とケーシング140の内周面142との間に若干の遊びが設けられているため、固定部材130の位置をケーシング140に対して移動させることができる。これにより、シングルモード光ファイバ120の軸がレンズ150の光軸と一致する。
【0031】
そして、両者の軸が一致した後、固定部材130の第1の外周面132とケーシング140の内周面142との隙間に絶縁性の接着剤を流入して固定部材130とケーシング140とを固定させ、光走査型ファイバ100を得る。
【0032】
本実施形態によれば、光軸調芯作業を安定的に行えるとともに、気泡等が接着剤160に混入しても十分な耐電圧を確保することができる。
【0033】
なお、第1及び第2の筒部131、135は円筒でなくても良く、角筒等であっても良い。
【0034】
また、駆動部材は圧電アクチュエータに限定されない。
【符号の説明】
【0035】
100 走査型光ファイバ
110 圧電アクチュエータ
120 シングルモード光ファイバ
130 固定部材
131 第1の筒部
132 第1の外周面
133 第1の内周面
135 第2の筒部
136 第2の外周面
137 第2の内周面
140 ケーシング
150 レンズ
160 接着剤
170 電源ケーブル
180 半田付け部
210 光位置センサ
211 位置検出面
220 XYZステージ
221 把持部
230 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡スコープに用いられる走査型光ファイバであって、
導電性ケーブルが近位端に接続される筒状の駆動部材と、
前記駆動部材の内側面に挿入される光ファイバと、
絶縁部材から成る筒状の第1の筒部及び第2の筒部を有する固定部材とを備え、
前記第2の筒部は、その延伸方向に対して直角をなす断面において、前記駆動部材と前記導電性ケーブルとの接続部における断面積よりも大きい断面積を有する第2の内側面を備え、
前記第1の筒部は、前記接続部が前記第2の筒部の内側面の内側に位置するように前記駆動部材の近位端側を把持する第1の内側面を備え、
前記固定部材が前記第1の筒部の近位端側端部と前記第2の筒部の遠位端側端部とを接続した形状であることを特徴とする走査型光ファイバ。
【請求項2】
前記第1の筒部及び前記第2の筒部は円筒であり、前記第1の内側面と前記第2の内側面は円筒状である請求項1に記載の走査型光ファイバ。
【請求項3】
前記駆動部材の近位端部と前記第2の内側面との間に充填される接着剤を備える請求項2に記載の走査型光ファイバ。
【請求項4】
前記接着剤は絶縁性を有する請求項3に記載の走査型光ファイバ。
【請求項5】
第2の筒部の外径は第1の筒部の外径よりも大きい請求項1に記載の走査型光ファイバ。
【請求項6】
レンズが取り付けられた円筒状のハウジングを備え、
前記固定部材は、前記第1の筒部の外周が前記ハウジングの内周面と係合するように、かつ前記光ファイバの軸が前記レンズの光軸と一致するように内視鏡先端部の内周に挿入される請求項1に記載の走査型光ファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−284261(P2010−284261A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139221(P2009−139221)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】