説明

走査型共焦点顕微鏡装置

【課題】高温多湿の培養容器により、光学系および機械系が熱影響を受けて歪み、得られる画像の輝度低下および不鮮明化を防止する。
【解決手段】標本Aを配置する空間の内部環境を特定の温度に恒温化し、かつ、高湿度を維持可能な培養容器6と、培養容器6に対して湿度的に分離された光学系空間5とを備え、該光学系空間5内に、レーザ光を標本A上で2次元的に走査する光走査手段22および走査光学系17と、走査されたレーザ光を標本Aに集光させ標本Aからの光を集光する対物レンズ15と、標本Aからの光を通過させる共焦点ピンホール25と、対物レンズ15を光軸方向に駆動制御する焦点調節機構16とが備えられるとともに、光学系空間5に、培養容器6内とほぼ同等の温度に恒温化する光学系空間恒温化手段30が備えられている走査型共焦点顕微鏡装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型共焦点顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、共焦点ピンホールを介した検出により3次元分解能のある観察を行うことができる共焦点顕微鏡装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、生きた細胞の経時変化を長時間観察する場合に、細胞を長生きさせる必要があり、そのために、細胞の高温高湿環境を維持する培養器を倒立顕微鏡のステージに載せ、培養器内の温度を37℃、湿度を100%に維持する観察装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004ー68009号公報
【特許文献2】特開2006ー115760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、倒立顕微鏡のステージに培養器を載せただけでは、培養器の温度と倒立顕微鏡との間に温度差が生じ、顕微鏡およびその走査ユニット内に温度勾配が生じる不都合がある。すなわち、光学部品に温度勾配が発生すると、光学系が歪み、長時間観察中に観察位置がずれてしまうという不都合が考えられる。
【0005】
特に、共焦点走査型顕微鏡の場合、通常の光学顕微鏡と比較して、光軸方向の分解能が高いことや、光走査手段であるガルバノミラーの振り角を小さくしていくことにより拡大倍率をかなり上げることができること、あるいは、照明側の光軸が検出側と同等に影響することなどから、熱による微細な歪みによって細胞の観察したい位置がずれてしまうことになる。また、光軸の角度ズレにより、共焦点ピンホールへの光の結像位置がずれると、暗くなるだけではなく、共焦点効果が得られなくなる不都合がある。
【0006】
例えば、共焦点レンズにより共焦点ピンホール上に結像する光のスポット径は、波長λ=520nm、ピンホールへの投影開口数NA=0.01とすると、d=1.22×λ/NA=63μmであり、ピンホール径はスポット径同程度の大きさに設定される。ここで、共焦点レンズの焦点距離を150mmとして共焦点レンズに入射する光の角度が光学系、機械系の歪みにより角度1′ずれたとすると、スポットは150mm×tan1′=47μmずれることになり、スポットの半分以上がピンホールから外れることになる。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、高温多湿の培養容器により、光学系および機械系が熱影響を受けて歪み、得られる画像の観察位置ズレ、輝度低下および不鮮明化を防止することができる走査型共焦点顕微鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、標本を配置する空間の内部環境を特定の温度に恒温化し、かつ、高湿度を維持可能な培養容器と、該培養容器に隣接し、該培養容器に対して湿度的に分離された光学系空間とを備え、該光学系空間内に、レーザ光を標本上で2次元的に走査する光走査手段および走査光学系と、前記光走査手段により走査されたレーザ光を標本に集光させる一方、標本からの光を集光する対物レンズと、該対物レンズにより集光され前記走査光学系および光走査手段を介して戻る光を通過させる共焦点ピンホールと、前記対物レンズを光軸方向に駆動制御する焦点調節機構とが備えられるとともに、該光学系空間に、該光学系空間内を前記培養容器内の温度とほぼ同等の温度に恒温化する光学系空間恒温化手段が備えられている走査型共焦点顕微鏡装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、培養容器内に収容された標本が内部環境を特定の温度に恒温化されかつ高湿度に維持されることにより、長時間にわたって健全な状態に維持される。一方、光学系空間が培養容器から湿度的に分離されているので、培養容器内の高湿度が走査光学系、対物レンズおよび共焦点ピンホール等の光学系や焦点調節機構等の機械系に影響を与えることを防止できる。そして、光学系空間内に設けられた光学系空間恒温化手段の作動により、光学系空間内も培養容器内の温度とほぼ同等の温度に恒温化されるので、光学系空間内の光学系および機械系に、培養容器の温度に基づく温度勾配が発生することが防止される。これにより、光学系および機械系に歪みが発生することを防止でき、得られる画像の低輝度化、不鮮明化を効果的に防止することができる。
【0010】
上記発明においては、前記光学系空間内に前記培養容器が内蔵されていることとしてもよい。
このようにすることで、簡易に培養容器内の温度と光学系空間内の温度とをほぼ同等の温度に恒温化することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記培養容器が、該培養容器に対して湿度的に分離された観察空間内に配置され、該観察空間に、該観察空間内を前記培養容器内の温度とほぼ同等の温度に恒温化する観察空間恒温化手段が備えられていることとしてもよい。
このようにすることで、光学系空間恒温化手段および観察空間恒温化手段の作動により、装置全体に温度勾配が発生することを効果的に防止することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記培養容器内の温度が37±1℃、湿度が90〜100%に設定されていることとしてもよい。
このようにすることで、標本が生細胞である場合に、これを長時間にわたって生きたままの健全な状態に維持することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記光学系空間恒温化手段が、前記光学系空間内の温度を計測する温度センサと、前記光学系空間内の空気を加温する加温手段とを備えることとしてもよい。また、前記観察空間恒温化手段が、前記光学系空間内の温度を計測する温度センサと、前記光学系空間内の空気を加温する加温手段とを備えることとしてもよい。
このようにすることで、温度センサにより温度を検出し、加温手段により光学系空間あるいは観察空間内の空気を加温するので、所望の温度に精度よく恒温化することができる。
【0014】
上記発明においては、前記加温手段が、恒温化された気体を供給する加温気体供給手段であることとしてもよい。このようにすることで、加温気体供給手段により所望の温度に恒温化された気体を供給するだけで、簡易に光学的空間内および/または観察空間内を所望の温度に恒温化することができる。
【0015】
また、上記発明においては、レーザ光を出射するレーザ光源および該レーザ光源からのレーザ光を光走査手段に導くレーザ導入光学系が、前記光学系空間内に配置されていることとしてもよい。
このようにすることで、レーザ光源およびレーザ導光光学系を含め、単一の光学系空間恒温化手段によって、恒温化を図ることができる。
【0016】
また、上記発明においては、レーザ光を出射するレーザ光源が前記光学系空間の外部に配置され、該レーザ光源からのレーザ光を光学系空間内に導く光ファイバが備えられていることとしてもよい。
このようにすることで、通常、発熱体となるレーザ光源を光学系空間の外部に配置して、レーザ光のみを光ファイバによって光学系空間内に導くことにより、レーザ光源の熱影響が他の光学系および機械系に及ぶのを防止し、さらに簡易に光学系空間内の恒温化を図ることができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記共焦点ピンホールを通過した光を検出する光検出器が前記光学系空間の外部に配置されていることとしてもよい。
このようにすることで、通常、発熱体となる光検出器を光学系空間の外部に配置して、光検出器の熱影響が他の光学系および機械系に及ぶのを防止し、さらに簡易に光学系空間内の恒温化を図ることができる。また、光検出器の温度上昇を防止して、電気ノイズにより画像のSN比が低下するのを防止することができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記光学系空間が、断熱材からなる外装カバーに覆われていることとしてもよい。
このようにすることで、外装カバーの作用により、外気の温度変化が光学系空間内の光学系や機械系に及ぶことを防止して、さらに精度よく恒温化を図ることができる。
【0019】
また、上記発明においては、前記走査光学系による標本上のレーザ光の走査範囲および走査位置、または、共焦点ピンホールの位置と共焦点ピンホールに結像する標本からの光のスポット位置とのズレを含む調整パラメータの設定が、前記光学系空間恒温化手段により光学系空間内の温度が使用時の温度に恒温化された状態で行われることとしてもよい。
【0020】
このようにすることで、光学系および機械系が、安定した変動の少ない状態で調節されるので、その後の長時間にわたる観察において取得される画像の画質の変動を防止することができる。また、調整パラメータの調節後の長時間にわたる観察において、レーザ光の走査範囲および走査位置、または、共焦点ピンホールの位置と共焦点ピンホールに結像する標本からの光のスポット位置とのズレを抑制することができる。
【0021】
また、上記発明においては、前記光学系空間内の温度と、前記調整パラメータとを対応づけて記憶するパラメータ記憶部を備えることとしてもよい。
このようにすることで、光学系空間内の温度を変化させて観察を行う場合に、パラメータ記憶部から調整パラメータを読み出すことにより、各温度に適した調整パラメータに迅速に設定することができる。
【0022】
また、上記発明においては、前記光学系空間内に、該光学系空間内に気流を生じさせるファンが備えられ、前記レーザ光の光路の周囲に防風部材が備えられていることとしてもよい。
このようにすることで、ファンの作動により発生する気流により光学系空間内の温度を均一化することができ、あるいは、光学系または機械系の冷却を促進することができる。この場合に、レーザ光の光路の周囲に設けられた防風部材の作動により、気流によってレーザ光が変動するのを防止することができる。
【0023】
また、上記発明においては、前記防風部材の外面が黒色処理されていることとしてもよい。
このようにすることで、黒色処理された防風部材の外面により、外部の熱を吸収し、防風部材の内部が比較的高温状態の光学系空間内の雰囲気から隔絶されて、温度勾配が発生することを防止することができる。
【0024】
また、上記発明においては、前記対物レンズの先端の金属部分を覆う樹脂製のカバーを備えることとしてもよい。
このようにすることで、対物レンズの先端の金属部分の熱が、対向する培養容器側に伝播しにくくすることができる。
【0025】
また、上記発明においては、前記レーザ光源が半導体レーザからなり、該レーザ光源の発熱を光学系空間の外部に導く熱伝導部材を備えることとしてもよい。
このようにすることで、半導体レーザからの発熱が熱伝導部材によって光学系空間の外部に導かれる。これにより、光学系空間内における発熱体となる半導体レーザの熱を光学系空間の外部に逃がすことで、光学系空間内の恒温化を容易にすることができる。
【0026】
また、上記発明においては、前記熱伝導部材がヒートパイプからなることとしてもよい。また、光学系空間の外部に配置される熱伝導部材の端部に放熱部材が設けられていることとしてもよい。
このようにすることで、半導体レーザからの発熱をより効率的に光学系空間の外部に逃がすことができる。
【0027】
また、上記発明においては、前記対物レンズと標本との間に液浸媒質を供給する液浸媒質供給手段を備えることとしてもよい。
このようにすることで、液浸媒質供給手段の作動により、対物レンズと標本との間に液心媒質が供給されるので、高分解能の観察を行うことが可能となる。
【0028】
また、上記発明においては、前記光検出器が、前記光学系空間内に配置された冷却型光電子増倍管からなり、該光検出器の発熱を光学系空間の外部に導く熱伝導部材を備えることとしてもよい。
このようにすることで、冷却型光電子増倍管からの発熱が熱伝導部材によって光学系空間の外部に導かれる。これにより、光学系空間内における発熱体となる冷却型光電子増倍管の熱を光学系空間の外部に逃がすことで、光学系空間内の恒温化を容易にすることができる。
【0029】
また、上記発明においては、前記走査光学系が瞳投影レンズと結像レンズとを備え、前記瞳投影レンズと前記結像レンズとの焦点距離の比により定まる瞳投影倍率を可変する瞳投影倍率可変手段を備えることとしてもよい。
このようにすることで、瞳投影倍率可変手段を作動させて、1つの対物レンズを用いて、低倍率から高倍率の広い倍率範囲にわたる観察を行うことが可能となる。
【0030】
また、上記発明においては、前記瞳投影倍率可変手段が、前記瞳投影レンズまたは前記結像レンズの少なくとも一方を構成するズームレンズからなることとしてもよい。
このようにすることで、ズームレンズの作動により、瞳投影倍率を連続的に変化させて、観察倍率を調節することができる。
【0031】
また、上記発明においては、前記観察空間と前記光学系空間との間を仕切る区画壁を備え、該区画壁におよび前記培養容器にレーザ光を通過させる貫通孔が形成され、前記培養容器の前記貫通孔を閉塞する位置に標本を収容した標本容器を配置することにより、培養容器と光学系空間とを湿度的に分離することとしてもよい。
このようにすることで、貫通孔を介して、培養容器内の標本容器を光学系空間の対物レンズとを直接的に対向させて近接配置することができ、しかも、培養容器と光学系空間とを簡易に湿度的に分離することができる。
【0032】
また、上記発明においては、前記培養容器を前記区画壁に吸着状態に支持させる吸着手段を備えることとしてもよい。
このようにすることで、培養容器を区画壁上に吸着状態として安定して支持することができる。
【0033】
また、上記発明においては、前記培養容器と前記光学系空間との間に区画壁を備え、該区画壁にレーザ光を通過させる貫通孔が形成され、該貫通孔に前記対物レンズが挿入され、該貫通孔の内面と前記対物レンズの外面との間に挟まれて両者間を密封する弾性部材を備え、該弾性部材により、培養容器と光学系空間とを湿度的に分離することとしてもよい。
このようにすることで、弾性部材を弾性変形させて区画壁の貫通孔内面と対物レンズ外面との間を密封し、簡易に培養容器と光学系空間とを湿度的に分離することができる。この場合に、弾性部材の摺動により対物レンズを光軸方向に容易に移動させることができ、合焦作業も容易に行うことができる。
【0034】
また、上記発明においては、標本近傍の参照面からのレーザ光の反射光が共焦点ピンホールを通過する光量が最大となる前記焦点調節機構の駆動位置と、実際に観察する標本のデータを取得する際の前記焦点調節機構の駆動位置とのオフセット量を予め入力し、一定のインターバルで観察を実行する前に、前記参照面からのレーザ光の反射光が最大となる焦点調節機構の駆動位置をサーチし、前記オフセット量を基に実際に観察したい標本部位に焦点調節機構を移動させる制御手段を備えることとしてもよい。
【0035】
このようにすることで、参照面を基準として実際に標本を観察する際の焦点位置まで迅速に対物レンズを光軸方向に移動させることができる。参照面としては、例えば、培養容器の表面等のようにサーチし易い部位を任意に選択することができる。
【0036】
また、上記発明においては、前記参照面に照射するレーザ光の波長が、前記標本を観察するときに使用するレーザ光の波長よりも長いこととしてもよい。
このようにすることで、参照面のサーチの際に標本に照射するレーザ光として、標本に対して光毒性の少ないレーザ光を利用することができ、標本の健全性を低下を防止することができる。
【0037】
また、上記発明においては、前記光学系空間と前記培養容器内を湿度的に分離する手段が、前記光学系空間内の気圧を高める加圧手段であることとしてもよい。
このようにすることで、培養容器内の高湿度の雰囲気が、加圧手段の作動により気圧を高められた状態の光学系空間内に入ることを防止し、これによって、培養容器と光学系空間とを簡易に湿度的に分離することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、高温多湿の培養容器により、光学系および機械系が熱影響を受けて歪み、得られる画像の観察位置ズレ、輝度低下および不鮮明化を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の一実施形態に係る走査型共焦点顕微鏡装置1について、図1を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る走査型共焦点顕微鏡装置1は、図1に示されるように、直方体の箱状の断熱材からなる外装カバー2の内部に、水平に配された区画壁3により上下に仕切られた観察空間4と光学系空間5とを備えている。
【0040】
上部の観察空間4には、培養容器6と、該培養容器6を支持する電動ステージ7と、ヒータ8とが備えられている。
培養容器6は電動ステージ7上に搭載されている。これにより、電動ステージ7の作動により、例えば、水平方向に移動可能に設けられている。
【0041】
前記培養容器6の底面、電動ステージ7および区画壁3には、上下方向に貫通し、培養容器6内の空間と光学系空間5とを連通する貫通孔9が設けられている。また、培養容器6内には、標本Aを収容する透明な材質からなる、例えば、シャーレ10aの平坦な底面にカバーガラス厚相当のガラス10bを貼ったもの(図8参照)やウェルプレート等の標本容器10が収容されている。標本容器10は、培養容器6の底面に設けられた貫通孔9に重なる位置に配置されることにより、貫通孔9を閉塞し、培養容器6内空間と、光学系空間5とを湿度的に分離するようになっている。
【0042】
また、培養容器6内には、該培養容器6内の温度を検出する温度センサ11が配置されるとともに、温度37℃、湿度90〜100%、CO濃度5%に調節された空気を循環させる環境制御部12がチューブ13を介して接続されている。
前記ヒータは、観察空間4内の温度を培養容器6の温度と同等の温度に加温するようになっている。
【0043】
前記光学系空間5には、顕微鏡本体14が配置されている。顕微鏡本体14は、標本容器10の底面下方に間隔をあけて対向配置され光軸を鉛直方向に配置された対物レンズ15と、該対物レンズ15を光軸方向に駆動制御する焦点調節機構16と、走査光学系17と、第1の波長のレーザ光を出射する第1の半導体レーザ18aと、第2の波長のレーザ光を出射する第2の半導体レーザ18bと、これらの半導体レーザ18a,18bからのレーザ光を略平行光にするコリメートレンズ19a,19bと、これらのレーザ光を同一の光路に合流させるミラー20およびダイクロイックミラー21と、レーザ光を2次元的に走査するガルバノミラーからなる光走査手段22とを備えている。
【0044】
また、顕微鏡本体14は、対物レンズ15、走査光学系17、光走査手段22を介して戻る標本Aからの蛍光を透過し、レーザ光を反射するダイクロイックミラー23と、該ダイクロイックミラー23を透過した蛍光を集光する共焦点レンズ24と、該共焦点レンズ24の焦点位置に配置された共焦点ピンホール25と、該共焦点ピンホール25を通過した蛍光内に含まれるレーザ光を遮断するバリアフィルタ26と、該バリアフィルタ26を透過した蛍光を検出する光検出器27とを備えている。図中符号28はミラーである。
【0045】
また、光学系空間5には、該光学系空間5内の温度を検出する温度センサ29と、光学系空間5内の空気を加温するヒータ30とが備えられている。
また、光学系空間5内には、コントロールユニット31が配置されている。
【0046】
前記走査光学系17は、2次元的に走査されたレーザ光を集光させて中間像を結像させる瞳投影レンズ17aと、中間像を結像したレーザ光を略平行光にして対物レンズ15に入射させる結像レンズ17bとを備えている。
前記ダイクロイックミラー23は、回転可能なターレット32に複数搭載され、ステッピングモータ33の作動により、任意のダイクロイックミラー23が択一的に光路上に配置されるようになっている。
前記共焦点ピンホール25は、ピンホール位置駆動手段34により、光軸と直交する2次元方向に位置調節可能に設けられている。
【0047】
前記ダイクロイックミラー23を切り替えると、各ダイクロイックミラー23毎の微妙な角度差によって共焦点レンズ24による焦点位置がずれるので、ダイクロイックミラー23毎に共焦点ピンホールの位置を補正することができるように、ピンホール位置駆動手段34による駆動位置をダイクロイックミラー23毎に対応づけてコントロールユニット31内の図示しないメモリに記憶している。
【0048】
前記コントロールユニット31は、半導体レーザ18a,18b、光走査手段22、光検出器27、電動ステージ7のモータ35、焦点調節機構16のモータ36、ターレット32のステッピングモータ33およびピンホール位置駆動手段34を駆動するようになっている。また、各機器を駆動する際には、コントロールユニット31が記憶している調整パラメータに従って駆動するようになっている。
【0049】
ここで、調整パラメータとは、各機器を正しく作動させるために必要とされる制御値であり、製造誤差を補正するためのもので個々の装置毎に相違している。
調整パラメータの具体例としては、例えば、半導体レーザ18a,18bの駆動電流と明るさの関係、光走査手段22による走査中心および走査幅、ダイクロイックミラー23毎の共焦点ビンホール25の位置、光検出器27である光電子増倍管のアナログオフセット等があり、これらは、光学系空間5内の各部位が使用時の温度に恒温化された状態で設定調整されている。
【0050】
また、この設定調整作業は、工場出荷時、または、納入場所に装置を最初にセットアップしたとき、あるいは保守点検時に行われるのが一般的である。
また、光学系空間5の恒温化温度を可変設定できる場合には、温度毎に最適化された調整パラメータを予め作成、保持しておき、使用時に設定された温度に対応する調整パラメータを読み出して使用してもよい。
【0051】
また、コントロールユニット31は、培養容器6内に配置された温度センサ11および光学系空間5内に配置された温度センサ29による検出信号に基づいて、ヒータ8,30を駆動し、各温度センサ11,29により検出される温度が37℃となるようにヒータ8,30を制御するようになっている。
【0052】
このように構成された本実施形態に係る走査型共焦点顕微鏡装置1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る走査型共焦点顕微鏡装置1を用いて標本Aの観察を行うには、標本容器10の底面に生細胞等の標本Aを接着させた状態として、標本容器10を培養容器6内に収容し、標本容器10の底面によって電動ステージ7の貫通孔9を閉塞する。
【0053】
この状態で、環境制御部12を作動させ、培養容器6内に培養環境に適した空気、すなわち、温度37℃、湿度100%、CO濃度5%の空気を循環させる。
また、コントロールユニット31を作動させ、ヒータ8,30の作動により培養容器6内および光学系空間5内の温度センサ11,29の出力が37℃となるようにそれぞれ加温する。
【0054】
そして、観察空間4内および光学系空間5内が37℃に恒温化された状態で、半導体レーザ18a,18bを作動させてレーザ光を出射させ、ダイクロイックミラー23によって反射させ、光走査手段22によって2次元的に走査させ、瞳投影レンズ17a、結像レンズ17bおよび対物レンズ15により集光して、標本容器10底面に配置されている標本Aに対しレーザ光を照射する。
【0055】
レーザ光が照射された標本A上の各位置においては、蛍光物質が励起されることにより蛍光が発せられる。発生した蛍光は、対物レンズ15によって集光されるとともに、結像レンズ17b、瞳投影レンズ17aおよび光走査手段22を介して戻り、ダイクロイックミラー23によりレーザ光から分岐されて共焦点レンズ24によって集光される。そして、集光された蛍光のうち、対物レンズ15の焦点面において発生した蛍光のみが共焦点ピンホール25を通過して光検出器27により検出される。
【0056】
コントロールユニット31には、光検出器27により検出された蛍光の輝度情報が入力されてくるので、その輝度情報が検出された時点における光走査手段22による走査位置情報と対応づけて記憶していくことにより、2次元的なフレーム画像を取得することができる。
【0057】
本実施形態に係る走査型共焦点顕微鏡装置1によれば、培養容器6および該培養容器6を含む観察空間4、並びに、光学系を含む光学系空間5が、全て37℃に恒温化されているので、培養容器6のみを恒温化していた従来の装置と比較して、培養容器6を中心とした温度勾配が発生せず、共焦点ピンホール25の位置ズレや、焦点位置ズレの発生を防止することができる。その結果、長時間にわたる観察においても、安定して適正な情報を含む蛍光画像を取得することができるという利点がある。
【0058】
また、本実施形態においては、各種の調整パラメータの設定が使用時の温度に恒温化された状態で行われているので、室温と異なる環境でも安定して適正な情報を含む蛍光画像を取得することができる。
また、培養容器6が、外装カバー2により構成される観察空間4内に配置されているので、外気温の変動により標本Aに温度変化が発生することを効果的に抑制することができる。
【0059】
また、同様にして、光学系空間5が外装カバー2により覆われているので、外気温変化の影響を光学系が受けて歪みが発生することを防止できる。
また、標本Aが配置されている培養容器6内の空間と光学系が配置されている光学系空間5とが湿度的に隔離されているので、半導体レーザ18a,18b、光走査手段22、対物レンズ15や走査光学系17等の各光学系構成要素に湿気が付着することがなく、常に安定した状態で長時間観察を行うことができる。
【0060】
さらに、観察空間4および光学系空間5が37℃に恒温化されるので、培養容器6内の標本が低温下に晒されることがなく、生細胞等の標本Aを生きたままの健全な状態に維持することができる。
【0061】
なお、本実施形態においては、光学系空間5への湿気の漏れを防止する手段として、標本容器10の底面に吸着質の物質、例えば、シリコーンゴム等を配置して標本容器10を培養容器6の内面に密着させる方法や、光学系空間5の気圧を培養容器6内の空間よりも高く設定することにしてもよい。
【0062】
また、本実施形態においては、光学系空間5の温度を培養容器6内の温度である37℃に設定することとしたが、これに代えて、30〜37℃の任意の温度に恒温化することとしてもよい。半導体レーザ18a,18b自体を図示しないペルチェ素子等により、例えば35℃に恒温化する場合には、周囲の温度と差を付けた方が出力が安定する。そこで、光学系空間5内の温度を30℃に設定することにより、半導体レーザ18a,18bの出力を安定させることができる。
【0063】
光学系空間5を30℃に恒温化することは、37℃に設定された培養容器6に対して温度差が7℃となるが、標本Aへの影響を許容できる範囲にあり、また温度勾配により光学系が受ける影響も許容範囲にある。
また、半導体レーザ18a,18b以外にも温度特性をもつ光検出器27および光走査手段22に対しても、最適な恒温化温度を30〜37℃の範囲内で設定することも可能である。
【0064】
また、標本Aの状態や優先する装置部位により、光学系空間5内の温度設定を任意に設定できるようにしてもよく、この場合には、各設定温度毎に各種調整パラメータを記憶しておき、採用する恒温化温度に合わせて、記憶しておいた調整パラメータを呼び出して設定することにしてもよい。
【0065】
また、光学系空間5内の恒温化温度を培養容器6内の恒温化温度とは異ならせる場合には、特に、対物レンズ15の筐体が金属製である場合に、対物レンズ15から培養容器6に熱が伝わり安いので、金属製の部分を被覆する樹脂製等の断熱効果を有する材質からなるキャップを設けることにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態に係る走査型共焦点顕微鏡装置1においては、図2に示されるように、半導体レーザ18a,18bの発熱が大きいため、冷却ファン37を使用してこれを空冷することとしてもよい。また、光学系空間5内にファン(図示略)を配置して、光学系空間5内の空気を攪拌し、温度を均等化することにしてもよい。
【0067】
これらの場合に、レーザ光の光路上に気流が発生すると、空気の屈折率分布が発生して光線が曲がり、共焦点ピンホール25の位置に結像しなくなる不都合が考えられる。また、半導体レーザ18a,18b、光走査手段22、光検出器27は温度特性を有するので、直接風が当たると出力変動、光軸ズレによる走査位置ズレあるいは感度変化などが発生し、適正な観察が阻害される不都合が考えられる。
【0068】
そこで、図2に示されるように、半導体レーザ18a,18b、光走査手段22、走査光学系17、共焦点レンズ24および光検出器27をカバー38で覆い、これらに気流が直接当たることを防止することとしてもよい。また、カバー38で覆う場合に、カバー38の内外で温度差が生じないようにするために、カバー38としては、金属等の熱伝導率の良好な材質を使用し、薄肉に形成することが好ましい。また、カバー38の外面を黒色処理、例えば、黒色塗料の塗布等することにより、外部の熱を迅速に吸収させてカバー38内部に放出させ、内外の温度勾配の発生を効果的に防止することができる。
【0069】
また、上記実施形態においては、観察空間4と光学系空間5とを区画壁3によって完全に仕切ることとしたが、これに代えて、図3に示されるように、観察空間4と光学系空間5とを同一の空間とし、その内部に培養容器6を収容することにしてもよい。
このようにすることで、ヒータ39を共通化することができる等、構造が簡単になり、全体の温度をより均一にすることができる。
【0070】
また、図4に示されるように、観察空間4全体を培養容器6としてもよい。すなわち、観察空間4全体に温度37℃、湿度100%、CO濃度5%の空気を循環させることにしてもよい。この場合には、高温多湿の観察空間4に対して区画壁3により湿度的に隔離された光学系空間5内にステージ7の駆動部7aを配置し、区画壁3に設けたスリット40を介して標本容器10を支持するアーム7bを観察空間4内に延ばし、アーム7bとスリット40との隙間を蛇腹41等の伸縮自在の部材により閉塞することとすればよい。
【0071】
また、対物レンズ15を区画壁3の貫通孔9に挿入し、対物レンズ15の筐体外面と、貫通孔9内面との間の隙間を、Oリング42によって密封することにすればよい。
対物レンズ15としては、低倍率高開口数のものを使用し、走査光学系17が、モータ43の作動により瞳投影倍率を変化させる電動ズーム機構を有するものを採用すればよい。
【0072】
このようにすることで、光走査手段22の振り角と、走査光学系17の焦点距離との比で定まる瞳投影倍率を変化させることができ、1本の対物レンズ15のみで、低倍率から高倍率までカバーすることができる。また、低倍率高開口数の対物レンズ15では瞳径が大きくなるので、瞳を満たして高解像の観察を行うためには瞳投影倍率を上げ、ビーム径を大きくする必要がある。この場合には、走査型共焦点顕微鏡装置1の通常の視野数を確保するだけの光走査手段22の振り角を確保することができない。そこで、低倍率時は解像度を犠牲にして瞳投影倍率を低めに設定して視野数を確保した観察を行い、高倍率時には瞳投影倍率を大きく設定して高解像度で観察することができる。
【0073】
瞳投影倍率を可変にする手段としては、焦点距離の異なる複数の瞳投影レンズ17aと結像レンズ17bの組み合わせを切替式に用意してもよい。
このようにすることで、ズーム式と比較して光学設計が容易になり、レンズ枚数を削減し、光量ロスが少なく、かつ、安価に構成することができるという利点がある。
【0074】
また、瞳投影倍率が異なる光路を2つ設け、ミラーなどの挿脱により光路を切り替える方式を採用してもよい。
このようにすることで、瞳投影レンズ17aと結像レンズ17bとを相互に固定することができ、切替による芯ズレや性能劣化が発生することはなく、再現性の高い観察を行うことができる。
【0075】
このようにすることで、観察空間4内の温度、湿度およびCO濃度を環境制御部12により直接的に制御するので、安定した環境条件を維持することができる。
また、対物レンズ15を交換しなくても、低倍観察と、高倍高解像度観察とを切り替えることができ、光学系空間5への湿気の混入がない。
【0076】
また、本実施形態においては、特に、半導体レーザ18a,18b、光走査手段22、光検出器27(冷却型の光電子増倍管)において高い発熱が発生するので、図5に示されるように、ヒートパイプ44を接続して外装カバー2の外部まで熱を導き、外装カバー2の外部に設置されたヒートシンク45により放熱することにしてもよい。
このようにすることで、冷却ファン37を用いなくても済み、光学系空間5内部の温度上昇を防止して安定的に温度制御することが可能となる。
【0077】
また、光検出器27を冷却型の光電子増倍管とすれば、比較的高い温度で恒温化させ、ノイズの少ない蛍光画像を取得することができる。
なお、発熱源となるレーザ光源については、光学系空間5の外部に配置し、図示しない光ファイバにより光学系空間5内に導光することにしてもよい。
【0078】
また、上記においては、顕微鏡本体14を構成する構成部品を光学系空間5内に全て配置することとしたが、これに代えて、図6に示されるように、恒温化する光学系空間5の外側に光検出器27を配置することにしてもよい。光検出器27を構成する光電子増倍管については、高い位置精度が要求されないので、光学系空間5外に配置することで、熱源として他の光学系や機械系に与える影響を低減することができる。また、光検出器27を光学系空間5の外部に配置することで、光学系空間5自体を小さく構成することができ、恒温化を容易に行うことが可能となる。
【0079】
また、走査型共焦点顕微鏡装置1においては、共焦点効果を確保するために、対物レンズ15として高い開口数を有するものが必要となるので、図7に示されるように、対物レンズ15と標本容器10との間に液浸媒体Bを供給する液浸対物レンズ15を採用することが好ましい。そこで、長時間観察においても液浸媒体Bが乾燥することなく常に満たされた状態に維持するために、図示しない液浸媒体供給装置からチューブ46を介して液浸媒体Bを供給することにしてもよい。
【0080】
この場合には、チューブ46はステッピングモータ47により駆動されるチューブ移動機構48によって、対物レンズ15の先端と標本容器10との間の液浸媒体供給位置(図7(b))と、対物レンズ15の半径方向外方に退避した退避位置(図7(a))との間で移動させることにすればよい。
【0081】
また、一定時間のインターバルを介して複数回の観察を繰り返す長時間タイムラプス観察の場合には、時間間隔をあけて同じ観察面を観察する必要があるので、その都度観察面を検出し、観察精度を上げることが望まれる場合がある。その場合には、図8に示すように、標本Aの観察を行うために観察面P1に対物レンズ15の焦点面を配置する観察位置(実線)と、標本A近傍の参照面P2、例えば、ガラス10bと標本Aとの境界面を検出する参照位置とのオフセット量Zを最初に求めて記憶しておくことが好ましい。
【0082】
このようにすることで、インターバルをあけて行われる観察毎に、焦点調節機構16を作動させて、その直前に参照面P2をサーチし、記憶されているオフセット量Zだけ対物レンズ15を移動させることにより、常に同一の観察面P1に対物レンズ15の焦点面を容易に設定することが可能となる。
この場合には、参照面P2のサーチ時に対物レンズ15から出射するレーザ光の波長を、観察時に出射するレーザ光の波長よりも十分に長い波長に設定することが好ましい。このようにすることで、生細胞のような標本Aにレーザ光が与える光毒性を低減して、標本Aの健全性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施形態に係る走査型共焦点顕微鏡装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の走査型共焦点顕微鏡装置の第1の変形例を示す全体構成図である。
【図3】図1の走査型共焦点顕微鏡装置の第2の変形例を示す全体構成図である。
【図4】図1の走査型共焦点顕微鏡装置の第3の変形例を示す全体構成図である。
【図5】図1の走査型共焦点顕微鏡装置の第4の変形例を示す全体構成図である。
【図6】図1の走査型共焦点顕微鏡装置の第5の変形例を示す全体構成図である。
【図7】図1の走査型共焦点顕微鏡装置の第6の変形例を示す図であり、(a)は液浸媒体を供給するチューブの退避位置、(b)は供給位置をそれぞれ示している。
【図8】図1の走査型共焦点顕微鏡装置の第7の変形例を示す部分的な拡大図である。
【符号の説明】
【0084】
A 標本
B 液浸媒質
1 走査型共焦点顕微鏡装置
2 外装カバー
3 区画壁
4 観察空間
5 光学系空間
6 培養容器
8 ヒータ(加温手段、観察空間恒温化手段)
9 貫通孔
10 標本容器
11 温度センサ(観察空間恒温化手段)
12 環境制御部(加温空気供給手段)
15 対物レンズ
16 焦点調節機構
17 走査光学系
17a 瞳投影レンズ
17b 結像レンズ
18a,18b 半導体レーザ(レーザ光源)
19a,19b コリメートレンズ(レーザ導入光学系)
20 ミラー(レーザ導入光学系)
21 ダイクロイックミラー(レーザ導入光学系)
22 光走査手段
23 ダイクロイックミラー(レーザ導入光学系)
25 共焦点ピンホール
29 温度センサ(光学系空間恒温化手段)
30 ヒータ (加温手段、光学系空間恒温化手段)
31 コントロールユニット(制御手段)
37 冷却ファン(ファン)
38 カバー(防風部材)
42 Oリング(弾性部材)
43 モータ(瞳投影倍率可変手段)
44 ヒートパイプ(熱伝導部材)
45 ヒートシンク(放熱部材)
46 チューブ(液浸媒質供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本を配置する空間の内部環境を特定の温度に恒温化し、かつ、高湿度を維持可能な培養容器と、該培養容器に隣接し、該培養容器に対して湿度的に分離された光学系空間とを備え、
該光学系空間内に、レーザ光を標本上で2次元的に走査する光走査手段および走査光学系と、前記光走査手段により走査されたレーザ光を標本に集光させる一方、標本からの光を集光する対物レンズと、該対物レンズにより集光され前記走査光学系および光走査手段を介して戻る光を通過させる共焦点ピンホールと、前記対物レンズを光軸方向に駆動制御する焦点調節機構とが備えられるとともに、
該光学系空間に、該光学系空間内を前記培養容器内の温度とほぼ同等の温度に恒温化する光学系空間恒温化手段が備えられている走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項2】
前記光学系空間内に前記培養容器が内蔵されている請求項1に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項3】
前記培養容器が、該培養容器に対して湿度的に分離された観察空間内に配置され、
該観察空間に、該観察空間内を前記培養容器内の温度とほぼ同等の温度に恒温化する観察空間恒温化手段が備えられている請求項1に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項4】
前記培養容器内の温度が37±1℃、湿度が90〜100%に設定されている請求項1から請求項3に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項5】
前記光学系空間恒温化手段が、前記光学系空間内の温度を計測する温度センサと、前記光学系空間内の空気を加温する加温手段とを備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項6】
前記観察空間恒温化手段が、前記光学系空間内の温度を計測する温度センサと、前記光学系空間内の空気を加温する加温手段とを備える請求項3に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項7】
前記加温手段が、恒温化された気体を供給する加温気体供給手段である請求項5または請求項6に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項8】
レーザ光を出射するレーザ光源および該レーザ光源からのレーザ光を光走査手段に導くレーザ導入光学系が、前記光学系空間内に配置されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項9】
レーザ光を出射するレーザ光源が前記光学系空間の外部に配置され、
該レーザ光源からのレーザ光を光学系空間内に導く光ファイバが備えられている請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項10】
前記共焦点ピンホールを通過した光を検出する光検出器が前記光学系空間の外部に配置されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項11】
前記光学系空間が、断熱材からなる外装カバーに覆われている請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項12】
前記走査光学系による標本上のレーザ光の走査範囲および走査位置、または、共焦点ピンホールの位置と共焦点ピンホールに結像する標本からの光のスポット位置とのズレを含む調整パラメータの設定が、前記光学系空間恒温化手段により光学系空間内の温度が使用時の温度に恒温化された状態で行われる請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項13】
前記光学系空間内の温度と、前記調整パラメータとを対応づけて記憶するパラメータ記憶部を備える請求項12に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項14】
前記光学系空間内に、該光学系空間内に気流を生じさせるファンが備えられ、
前記レーザ光の光路の周囲に防風部材が備えられている請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項15】
前記防風部材の外面が黒色処理されている請求項14に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項16】
前記対物レンズの先端の金属部分を覆う樹脂製のカバーを備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項17】
前記レーザ光源が半導体レーザからなり、
該レーザ光源の発熱を光学系空間の外部に導く熱伝導部材を備える請求項8に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項18】
前記熱伝導部材がヒートパイプからなる請求項17に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項19】
光学系空間の外部に配置される熱伝導部材の端部に放熱部材が設けられている請求項17または請求項18に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項20】
前記対物レンズと標本との間に液浸媒質を供給する液浸媒質供給手段を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項21】
前記光検出器が、前記光学系空間内に配置された冷却型光電子増倍管からなり、
該光検出器の発熱を光学系空間の外部に導く熱伝導部材を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項22】
前記走査光学系が瞳投影レンズと結像レンズとを備え、
前記瞳投影レンズと前記結像レンズとの焦点距離の比により定まる瞳投影倍率を可変する瞳投影倍率可変手段を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項23】
前記瞳投影倍率可変手段が、前記瞳投影レンズまたは前記結像レンズの少なくとも一方を構成するズームレンズからなる請求項22に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項24】
前記観察空間と前記光学系空間との間を仕切る区画壁を備え、
該区画壁および前記培養容器にレーザ光を通過させる貫通孔が形成され、
前記培養容器の前記貫通孔を閉塞する位置に標本を収容した標本容器を配置することにより、培養容器と光学系空間とを湿度的に分離する請求項3に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項25】
前記培養容器を前記区画壁に吸着状態に支持させる吸着手段を備える請求項24に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項26】
前記培養容器と前記光学系空間との間に区画壁を備え、
該区画壁にレーザ光を通過させる貫通孔が形成され、
該貫通孔に前記対物レンズが挿入され、
該貫通孔の内面と前記対物レンズの外面との間に挟まれて両者間を密封する弾性部材を備え、該弾性部材により、培養容器と光学系空間とを湿度的に分離する請求項1に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項27】
標本近傍の参照面からのレーザ光の反射光が共焦点ピンホールを通過する光量が最大となる前記焦点調節機構の駆動位置と、実際に観察する標本のデータを取得する際の前記焦点調節機構の駆動位置とのオフセット量を予め入力し、一定のインターバルで観察を実行する前に、前記参照面からのレーザ光の反射光が最大となる焦点調節機構の駆動位置をサーチし、前記オフセット量を基に実際に観察したい標本部位に焦点調節機構を移動させる制御手段を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項28】
前記参照面に照射するレーザ光の波長が、前記標本を観察するときに使用するレーザ光の波長よりも長い請求項27に記載の走査型共焦点顕微鏡装置。
【請求項29】
前記光学系空間と前記培養容器内を湿度的に分離する手段が、前記光学系空間内の気圧を高める加圧手段である請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査型共焦点顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−256927(P2008−256927A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98630(P2007−98630)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】