説明

走行車両

【課題】ステップ部の操作ペダルを利用してステップ蓋の起立姿勢保持を簡単な操作で速やかに行うと共に、ステップ蓋の開閉及び起立姿勢の保持を簡潔で廉価な構造によって行うことができる走行車両を提供する。
【解決手段】走行機台1に設置される操縦部4のステップ部7に、ステップフロアを形成する開閉自在なステップ蓋19と操作ペダル22を備える走行車両であって、ステップ蓋19を操作ペダル22により起立姿勢に保持させる構成とした。また起立姿勢にしたステップ蓋とペダル非操作姿勢の操作ペダルを側面視において重複させることにより、ステップ蓋19を操作ペダル22に係合させて起立姿勢に保持すると共に、操作ペダル22のペダル操作姿勢でステップ蓋19との係合を解除する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦部のステップ部にステップ蓋を開閉自在に設ける走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機台に設置される操縦部のステップ部に、表面にゴム材からなる広幅なフロアマットを一体的に有するステップ蓋を開閉自在に設け、ステップ部内に電装品等の補器類を収容設置するコンバインは既に公知である(例えば、特許文献1参照。)。
上記コンバインの操縦部は、ステップ蓋をフロアマットと共に上方に回動すると、開放された開口部から補器類の点検や修理,清掃等のメンテナンス作業を行うことができる。
【特許文献1】特開2000−50722公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示されるコンバインは、ステップ部内の補器類のメンテナンス作業を行う場合に、ステップ蓋がフロアマットと共に上方に回動し、ステップ部の開口部を大きく開放することができる利点がある。然し、このステップ部はステップ蓋の起立姿勢の支持を手又は身体の一部を接触させて人為的に保持しようとするとき、補器類のメンテナンス作業が行い難いものである。そのためステップ蓋の起立姿勢の固定を、例えば取付ネジ等の固定部材を用い、ステップ部の側方に立設される側操縦パネル等に取付固定するようにすると、ステップ蓋の固定を確実にできるが、固定部材の締め付け操作及び解除操作が煩雑になると共に、構造が複雑化しコスト高になる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため本発明による走行車両は、第1に、走行機台1に設置される操縦部4のステップ部7に、ステップフロアを形成する開閉自在なステップ蓋19と操作ペダル22を備える走行車両において、前記ステップ蓋19をステップ部7の一側を支点に上方に開動した状態で、操作ペダル22に係合させて起立姿勢に保持することを特徴としている。
【0005】
第2に、起立姿勢にしたステップ蓋19とペダル非操作姿勢の操作ペダル22を側面視において重複させることにより、ステップ蓋19を操作ペダル22に係合させて起立姿勢に保持すると共に、操作ペダル22をペダル操作姿勢にすることにより、ステップ蓋19との係合を解除する構成としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記構成を備えた走行車両は次のような効果を奏する。操縦部のステップ部に設置されるステップ蓋を起立姿勢にしたとき、ステップ部の操作ペダルを利用してステップ蓋の姿勢保持を簡単な操作で速やかに行うことができる。
【0007】
また起立姿勢にしたステップ蓋とペダル非操作姿勢の操作ペダルを側面視において重複させることにより、ステップ蓋の起立姿勢の保持を操作ペダルとの係合によって確実に行うと共に、ペダル操作姿勢でステップ蓋と操作ペダルの係合を解除するので、ステップ蓋の開閉及び起立姿勢の保持を簡潔で廉価な構造によって速やかに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図面において符号1は走行車両の一例として示すコンバインの走行機台であり、この走行機台1は前部に前処理部2を昇降自在に設け、後方左右に藁処理装置付の脱穀装置3と操縦部4を配設し、該操縦部4の後部にはグレンタンク5を載置している。また走行機台1の左右下部にクローラ方式の走行装置6を備えている。
【0009】
図1〜図3を参照し操縦部4について説明する。この操縦部4は従来のコンバインと略同様の配置構造からなり、走行機台1の右側前部に構成される立方体状のステップ部7の前側と左側に、操向レバー8等を備える前操縦パネル9と、主変速レバー10並びに作業機刈取クラッチレバー11等を備える側操縦パネル12とを平面視逆L字状に立設している。またステップ部7の後方には走行機台1に搭載されるエンジン13が位置し、該エンジン13は座席シート15を載置するエンジンカバー体16で覆っている。
【0010】
図示例のステップ部7は、走行機台1に方形状に枠組みしたステップフレーム17で覆うと共に、上面にステップ蓋19とフロアマット20を開閉自在に設け、内部スペースを利用して設置される電装品や油圧バルブ等の補器類21を囲って保護している。
【0011】
そして、この操縦部4はステップ部7内に、補器類21を操作したり点検や修理,清掃等のメンテナンス作業する際に、前操縦パネル9の下方左側に後述する構成によって設置される操作ペダル22によって、ステップ蓋19を上方に回動起立させた起立姿勢に保持し、この状態でメンテナンス作業をスムーズに行うことができるようにしている。
【0012】
即ち、図2,図3で示すようにステップ部7は、ステップフレーム17の上部の前後に横支持板23,23を張設して開口部25を形成し、該開口部25の左側に蝶番26によってステップ蓋19を上方に向け回動自在に取付け、閉じ状態でステップ蓋19の前後を横支持板23,23に載せ、且つ右側端をステップフレーム17に載せて支持するようにしている。またステップ蓋19は表面に、ゴム材又は合成樹脂材からなり可撓性を有するフロアマット20を取付ネジ等によって接合しており、このフロアマット20は開口部25を閉じた状態のステップ蓋19からはみ出し、横支持板23,23部分並びに左側スペースを覆う大きさにしている。尚、フロアマット20は可撓性及び重量を有してステップ蓋19を覆うので、ステップ蓋19の開口部25の閉鎖を防振性を有して行うことができる。
【0013】
次に図4〜図7を参照し操作ペダル22の設置構造について説明する。この操作ペダル22はパイプアーム22aの基部側に直交状に一体的に設けるペダル軸30を、ステップフレーム17に着脱自在に取付固定する取付板31と、ステップ部7の左側に配設される走行トランスミッション32に着脱自在に取付固定する取付片33とに、それぞれの取付孔35,35に挿入することにより回動自在に組み付ける。これにより操作ペダル22をユニット構造とし、取付板31と取付片33に対し簡単に着脱することができる構成にしている。
【0014】
即ち、操作ペダル22の取付構造は、ペダル軸30の右端側にクレビスピン36を右方に向けて突設した取付ブラケット37を前側に向けて設ける一方、ステップフレーム17に取付固定する取付板31には、上記クレビスピン36を側方から挿入して上下方向の操作を案内規制するピン孔39を、取付孔35を中心とする円弧状の長孔として形成している。尚、ピン孔39はクレビスピン36の小径なピン軸を案内する長孔の中途部に、鍔状の頭部36aを挿入する径大孔39aを形成している。
また取付片33は走行トランスミッション32を取付け部材として所定の軸取付間隔を有して取付固定され、その取付孔35にペダル軸30の左端を右側からスライド自在に挿入支持させる構成にしている。
【0015】
この構成により操作ペダル22は、先ずペダル軸30の左端を取付片33の取付孔35に深く挿入し仮支持した状態において、右端を取付板31の取付孔35に孔合わせして挿入しながら、クレビスピン36をピン孔39の径大孔39aに挿入する。これによりペダル軸30は左右の取付孔35,35を支点とし、またクレビスピン36をピン孔39に沿って案内規制しながら、クレビスピン36の鍔状の頭部及び取付ブラケット37によって軸方向の抜け止めを行い、操作ペダル22の回動操作をスムーズに行なわせることができる。
【0016】
また上記取付構造によれば取付板31と取付片33は、予めステップフレーム17と走行トランスミッション32側に部品組みをしておくことができ、操作ペダル22は組立てラインにおいてペダル軸30を取付板31と取付片33とに挿入することにより、操作ペダル22の組立てを能率よく簡単に行うことができる。
【0017】
また操作ペダル22の取り外しは、走行機台1から取付板31と取付片33を外すことなく、上記の逆順の作業によって簡単に行うことができ、走行トランスミッション32の走行HST32a上部にある、油圧バルブや圧力ゲージまたドレンポート等の整備も行い易くなる。そして、ステップ蓋19を開けて起立姿勢にするとき、開口部25からステップ部7内に臨んでいるクレビスピン36の頭部とピン孔39の係合解除の作業を行い易くすることができる等の特徴もある。
【0018】
そして図示例のペダル軸30は取付間隔内の軸上に複数の取付片40,41,42を突設しており、操作ペダル22を押し込み操作したペダル操作姿勢では、主変速レバー10の中立位置復帰操作と駐車ブレーキ操作を行うことができ、且つペダル非操作姿勢では側面視においてステップ蓋19の上方に操作ペダル22のペダル板22bを位置させる構成にしている。
【0019】
即ち、ペダル軸30の取付片40は、操作リンク45,46を介して、前記走行トランスミッション32の上部に設置される走行HST32aの前後進変速操作を司る主変速レバー10の基部側と連結させることにより、操作ペダル22のペダル操作姿勢において走行中立位置にすることができる。また取付片41は、スプリング及びワイヤ等の操作部材47を介して、走行トランスミッション32の駐車ブレーキのブレーキ杆49と連結させることにより、ペダル操作姿勢において走行トランスミッション32の両側に配置される左右の走行装置用駆動スプロケット50,50を制動することができる。
【0020】
そして、取付片42は操作ペダル22を戻し方向に付勢するスプリング51を連結しており、これにより戻し方向の上限をクレビスピン36とピン孔39の上端との接当で規制し、ペダル非操作姿勢時に側面視において、操作ペダル22のペダル板をステップ蓋19の上方に臨ませるようにしている。
【0021】
以上のように構成される操縦部4を備えたコンバインは、ステップ蓋19を閉じた状態でコンバイン作業が行われる。そして、ステップ蓋19を開けステップ部7内の補器類21のメンテナンス作業を行うときは、先ず操作ペダル22を押し込んでペダル操作姿勢となし、ステップ蓋19の上から操作ペダル22を退避させた状態において、ステップ蓋19をフロアマット20と共に上方に回動し、側操縦パネル12側に近接させて起立姿勢にする。
【0022】
次いで操作ペダル22の押し込みを解除し元のペダル非操作姿勢にすると、操作ペダル22は起立姿勢のステップ蓋19と側面視において重複する。これによりステップ蓋19は閉じ方向の傾倒を操作ペダル22のペダル板22bとの接当係合によって阻止され、起立姿勢を保持することができる。そして、作業者はステップ蓋19が不慮に閉じることを懸念することなく、大きく開放した開口部25内に手を差し込み、補器類21或いは操作ペダル22の調整,清掃,交換等のメンテナンス作業を能率よく確実に行うことができる。
【0023】
またメンテナンス作業終了時には、操作ペダル22をペダル操作姿勢に再度押し込むと保持を解除することができるので、この間にステップ蓋19を下降回動し開口部25を閉鎖し、次いで操作ペダル22を元のペダル非操作姿勢に復帰させる。
従って、上記構造によればステップ蓋19を起立姿勢にしたとき、その姿勢保持を操作ペダル22を利用して簡単な操作で速やかに行うことができる。また起立姿勢のステップ蓋19とペダル非操作姿勢の操作ペダル22とを側面視において重複させることにより、操作ペダル22のペダル操作姿勢とペダル非操作姿勢との切り換え操作によって、ステップ蓋19の開閉を特別な固定具等を要することなく、簡潔で廉価な構造によって速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】コンバインの全体構成を示す右側面図である。
【図2】図1のコンバインの操縦部の構成をステップ蓋を開動して示す平面図である。
【図3】図2の要部の構成を示す斜視図である。
【図4】図1のステップ部及び操作ペダルの構成を示す左前方斜視図である。
【図5】操作ペダルの全体構成を示す右側面図である。
【図6】図5の左後方斜視図である。
【図7】図6の左後方分解斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 走行機台
4 操縦部
7 ステップ部
17 ステップフレーム
19 ステップ蓋
20 フロアマット
22 操作ペダル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機台(1)に設置される操縦部(4)のステップ部(7)に、ステップフロアを形成する開閉自在なステップ蓋(19)と操作ペダル(22)を備える走行車両において、前記ステップ蓋(19)をステップ部(7)の一側を支点に上方に開動した状態で、操作ペダル(22)に係合させて起立姿勢に保持することを特徴とする走行車両。
【請求項2】
起立姿勢にしたステップ蓋(19)とペダル非操作姿勢の操作ペダル(22)を側面視において重複させることにより、ステップ蓋(19)を操作ペダル(22)に係合させて起立姿勢に保持すると共に、操作ペダル(22)をペダル操作姿勢にすることにより、ステップ蓋(19)との係合を解除する構成とした請求項1記載の走行車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−162421(P2008−162421A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354507(P2006−354507)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】