説明

走行輪独立操舵の無人車両及びその走行制御方法

【課題】目標経路及び目標方向に対してオフセットと姿勢ずれが同時に発生した場合に、スムーズですばやく安定して経路修正する。
【解決手段】
複数の走行輪が独立して操舵可能とする無人車両において、走行制御手段は、オフセット量Lとずれ角φとが同時に生じた際に、オフセット量Lをなくす方向に操舵角θを設定し、無人車両の中心1aから操舵角θに直交するずれ角φの反対側に旋回中心Mを設定し、旋回中心Mから各走行輪の中心までを結ぶ直線rに直交するように各走行輪3,4,5,6の方向を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の走行輪が独立して操舵可能とする無人車両において、予め設定された目標経路及び目標方向からずれが生じた際に経路修正する走行輪独立操舵の無人車両及びその走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物流倉庫等では、効率化及び省力化を向上するため、無人車両が荷物を運搬する。無人車両は、予め設定された目標経路に沿って自動走行する。無人車両は、自己位置及び自己方向(姿勢角)を検出する検出手段と、予め設定した目標経路と自己位置及び自己方向とを比較して経路誤差を算出する誤差算出手段と、算出された経路誤差から経路修正量を算出する修正量算出手段と、目標経路情報と経路修正量とに基づいて走行制御する走行制御手段とを備える(例えば、特許文献1及び特許文献2)。そして、無人車両は、所定時間間隔ごとに自己位置及び自己方向を検出して、経路誤差に基づく経路修正をしながら自動走行する。
【0003】
一般に、自己位置及び自己方向検出手段は、無人車両に設置したカメラからの画像と予め記憶された基準画像との比較に基づいて位置及び方向を検出する方式、無人車両から発するレーザーやGPS(Global Positioning System)等を用いて位置を検出する方式、ジャイロ等を用いて方向を検出する方式、等がある。
【0004】
ところで、それぞれが独立に回転して、それぞれ独立に操舵可能とする走行輪を備えた走行輪独立操舵の無人車両がある。この無人車両は、複数の誘導センサによる検知信号の誤差により、地上に設けた誘導路に対する自己の位置を検知して、車両の姿勢を制御し誘導路に沿って走行する(例えば、特許文献3)。従って、車両が走行時に何らかの要因によって誘導路に対する位置ずれが生じると、その位置ずれをすばやく検知して、位置ずれが0値になるように経路修正しながら走行する。
【0005】
無人車両が誘導路に対してオフセット(横にシフト)した場合、前方の走行輪を左(右)に操舵すると同時に、後方の走行輪も左(右)に操舵する(特許文献3、[0012]、図3等)。また、無人車両が誘導路に対して姿勢ずれした(傾いた)場合、前方の走行輪を右(左)に操舵すると同時に、他方側の前方の走行輪も同じ角度だけ右(左)に操舵する。さらに、後方の走行輪を左(右)に操舵すると同時に、他方側の後方の走行輪も左(右)に操舵する(特許文献3、[0011]、図2等)。
【0006】
上記の通り、従来の走行輪独立操舵の無人車両は、オフセットした場合と姿勢ずれした場合におけるそれぞれの走行輪の制御方法は提案されているが、オフセットと姿勢ずれが同時に発生した場合に、走行輪をどのように制御するかは考えられていない。そのため、従来の無人車両では、オフセットと姿勢ずれが同時に発生した場合、どちらかを優先して経路修正の制御を行うので、不安定で修正に長時間を要する問題がある。
【特許文献1】特開昭62−220006号公報
【特許文献2】特開昭63−62007号公報
【特許文献3】特開平8−123549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記問題に鑑みて、目標経路及び目標方向に対してオフセットと姿勢ずれが同時に発生した場合に、スムーズですばやく安定して経路修正することが可能な走行輪独立操舵の無人車両及びその走行制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、本発明に係る走行輪独立操舵の無人車両は、
複数の走行輪が独立して操舵可能とし、
自己位置及び自己方向を検出する検出手段と、予め設定された目標経路及び目標方向を記憶する経路情報記憶手段と、自己位置及び自己方向と目標経路及び目標方向とを比較してオフセット量及びずれ角を算出する誤差算出手段と、オフセット量及びずれ角に基づいて各走行輪を制御する走行制御手段とを備え、
走行制御手段は、オフセット量とずれ角とが同時に生じた際に、オフセット量をなくす方向に操舵角を設定し、操舵角に直交するずれ角の反対側に旋回中心を設定し、旋回中心から各走行輪の中心までを結ぶ直線に直交するように各走行輪の方向を設定する。
【0009】
また、本発明に係る走行輪独立操舵の無人車両の走行制御方法は、
複数の走行輪が独立して操舵可能とし、
無人車両は、自己位置及び自己方向を検出する検出手段と、予め設定された目標経路及び目標方向を記憶する経路情報記憶手段と、自己位置及び自己方向と目標経路及び目標方向とを比較してオフセット量及びずれ角を算出する誤差算出手段と、オフセット量及びずれ角に基づいて各走行輪を制御する走行制御手段とを備え、
走行制御手段が、オフセット量とずれ角とが同時に生じた際に、オフセット量をなくす方向に操舵角を設定し、操舵角に直交するずれ角の反対側に旋回中心を設定し、旋回中心から各走行輪の中心までを結ぶ直線に直交するように各走行輪の方向を設定する。
【0010】
好ましくは、操舵角は、オフセット量に比例して角度設定される。
【0011】
好ましくは、操舵角は、無人車両の走行速度に応じて段階的に上限が設定される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る走行輪独立操舵の無人車両は、オフセット量とずれ角とが同時に生じた際に、オフセット量をなくす方向に操舵角を設定し、操舵角に直交するずれ角の反対側に旋回中心を設定し、旋回中心から各走行輪の中心までを結ぶ直線に直交するように各走行輪の方向を設定する。
【0013】
これにより、無人車両は、路面不整等によって目標経路及び目標方向に対するオフセットと姿勢ずれが同時に発生した場合においても、各走行輪の方向を上記のように制御することで、姿勢ずれを修正しながらオフセット量をなくすように走行するので、スムーズですばやく安定した経路修正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る走行輪独立操舵の無人車両及びその走行制御方法を説明する。
【0015】
図1は、無人車両の主要構成を示すブロック図である。図2は、自己位置座標及び自己方向の算出方法を説明する平面図である。図3は、無人車両が目標経路に対してオフセットのみ生じた際の制御方法を説明する平面図である。図4は、無人車両が目標方向に対して姿勢ずれのみ生じた際の制御方法を説明する平面図である。図5〜図8は、無人搬送車が目標経路及び目標方向に対してオフセットと姿勢ずれが同時に生じた際の制御方法を説明する平面図である。図9は、オフセット量とずれ角に応じた制御方法をまとめたルール図である。
【0016】
[全体説明]
無人車両1は、自己位置及び自己方向(姿勢角)を検出する位置方向検出手段2を備える。位置方向検出手段2は、例えば、無人車両1に設置したカメラからの画像と予め記憶された基準画像との比較に基づいて自己位置及び自己方向を検出する。この自己位置及び自己方向は、例えば、基準となる所定のXY座標を設定して、座標及び角度を算出して求める。なお、位置方向検出手段2は、無人車両から発するレーザーやGPS(Global Positioning System)等を用いて位置を検出する方式、ジャイロ等を用いて方向を検出する方式、等がある。
【0017】
位置方向検出手段2は、所定検出時間単位Δt’(例えば、約500ms)ごとの検出時間Tn’において、検出位置座標データ及び検出方向データを検出する。
【0018】
無人車両1は、自己位置方位算出手段20を備える。自己位置方位算出手段20は、位置方向検出手段2からの検出位置座標データ及び検出方向データに基づいて、所定検出時間単位Δt’よりも短い制御時間単位Δt(例えば、22ms)ごとの制御時間Tnにおける、自己位置座標データ及び自己方向データを算出する。例えば、自己位置方位算出手段20は、図2の通り、検出時間T’における検出位置座標データ(X,Y)に基づいて、その後の制御時間T10,T11,T12・・・における自己位置座標データ(X10,Y10),(X11,Y11),(X12,Y12)・・・を算出し、続いて、検出時間T’における検出位置座標データ(X,Y)に基づいて、その後の制御時間T20,T21,T22・・・における自己位置座標データ(X20,Y20),(X21,Y21),(X22,Y22)・・・を算出していく。後述の通り、無人車両1は、ずれ角φがないときは直線運動をし、ずれ角φがあるときは円運動を行うので、無人車両1に備えたエンコーダー等(図示略)で制御時間単位Δtごとに進んだ距離を計測して、公知の算術法を用いて、自己位置座標データ及び自己方向データを求めることができる。
【0019】
高速走行等の際に、時間間隔の短い上記の制御時間単位Δtごとに制御を行うことにより、所定検出時間単位Δt’よりもきめ細かくスムーズに制御できる。また、位置方向検出手段2が、画像マッチングに失敗する等により、所定検出時間単位Δt’ごとに座標データ等を取得できない場合があるので、自己位置方位算出手段20による自己位置座標データ等を取得することにより、検出時間単位Δt’ごとの座標データ等を補間して、自己位置を見失わずに制御できる。
【0020】
無人車両1は、経路情報記憶手段10を備える。経路情報記憶手段10は、無人車両1が走行する予め設定された目標となる目標経路及び目標方向(姿勢角)を記憶する。即ち、経路情報記憶手段10は、複数の制御時間又は複数の所定位置における目標経路上の目標経路座標データ及び目標方向角度データが記憶される。
【0021】
無人車両1は、誤差算出手段11を備える。誤差算出手段11は、例えば、所定制御時間単位Δtごとの制御時間Tnにおいて、自己位置方向算出手段20から自己位置座標データ及び自己方向データが入力されると共に、経路情報記憶手段10から目標経路座標データ及び目標方向データが入力される。そして、誤差算出手段11は、自己位置座標データ及び自己方向データと、目標経路座標データ及び目標方向データとを比較して、目標経路に対する直角方向のオフセット量L(横ずれ量)及び目標方向に対するずれ角φ(姿勢ずれ角)を算出する。
【0022】
無人車両1は、走行制御手段12を備える。走行制御手段12は、誤差算出手段11からオフセット量L及びずれ角φが入力され、後述する制御方法1〜3に基づいて、無人車両1の各走行輪3,4,5,6をそれぞれ操舵する。なお、無人車両1を操舵する各走行輪3,4,5,6は、それぞれが独立に回転して、それぞれが独立に操舵可能となっている。
【0023】
[制御方法1]
先ず、図3に基づいて、無人車両が目標経路に対してオフセットのみ生じた際の制御方法を説明する。本実施形態では、以下の制御方法2及び3においても、Y軸が、目標経路S及び目標方向Suとなっている。なお、目標経路S及び目標方向Suは、直線に限らず曲線に設定することができる。自己位置方向算出手段20が、制御時間Tnにおける車両中心1aの自己位置座標(Xv,Yv)を検出する。そして、誤差算出手段11が、自己位置座標(Xv,Yv)と、経路情報記憶手段10からの制御時間Tnにおける目標経路S(Y軸)とを比較して、目標経路Sに対する直角方向のオフセット量L(=Xv−0)を算出する。
【0024】
自己位置方向算出手段20が、制御時間Tnにおける自己方向ψを検出する。そして、誤差算出手段11が、自己方向ψと、経路情報記憶手段10からの制御時間Tnにおける目標方向Suとを比較して、目標方向Su(Y軸方向)に対するずれ角φを算出する。この例では、オフセット(横ずれ)のみ生じているので、自己方向ψは目標方向Suと一致しており、ずれ角φ=0となる。
【0025】
そして、走行制御手段12は、オフセット量L≠0,ずれ角φ=0と判定した際、オフセット量Lに基づいて、無人車両1の操舵角θを設定する。なお、操舵角θは、オフセット量Lがなくなる(減少する)方向に設定され、目標方向Su(Y軸方向)に対して時計回り方向を「+」とし、反時計回り方向を「−」と設定される(図9)。
【0026】
操舵角θは、すばやく経路修正するために、オフセット量Lの比例関数として、次の(1)式のように設定される。
・θ=−0.01・θmax・Xv ・・・(1)
(但し、安定した経路修正を行うため、Xvが100mm以上のときXv=100mmとする上限を設定する。)
さらに、無人車両1は、高速走行時に大きく操舵するとふらつきが大きくなるので、次の表1のように、走行速度に応じた段階的な定数θmaxを設定する。これにより、操舵角θは、走行速度に応じて上限θmaxまでに設定される。
【0027】
【表1】

【0028】
従って、オフセット量Lが「+」(Xv>0)のとき、操舵角θは「−」(θ<0)に設定され、オフセット量Lが「−」(Xv<0)のとき、操舵角θは「+」(θ>0)に設定される(図9)。
【0029】
そして、走行制御手段12は、各走行輪3,4,5,6が操舵角θに向くように制御する。これにより、無人車両1は、自己方向ψはそのままで姿勢変更することなく、目標経路S(Y軸)へ向けて移動して自己位置が経路修正される。
【0030】
[制御方法2]
図4に基づいて、無人車両が目標方向に対して姿勢ずれのみ生じた際の制御方法を説明する。自己位置方向算出手段20は、制御時間Tnにおける車両中心1aの自己位置座標(Xv,Yv)を検出する。そして、誤差算出手段11が、自己位置座標(Xv,Yv)と、経路情報記憶手段10からの制御時間Tnにおける目標経路S(Y軸)と比較して、目標経路Sに対する直角方向のオフセット量Lを算出する。この場合では、姿勢ずれ(傾き)のみ生じているから、車両中心1aが目標経路S(Y軸)上にあってオフセット量L=0となる。
【0031】
自己位置方向算出手段20が、制御時間Tnにおける自己方向ψを検出する。そして、誤差算出手段11が、自己方向ψと、経路情報記憶手段10からの制御時間Tnにおける目標方向Suと比較して、目標方向Su(Y軸方向)に対するずれ角φを算出する。
【0032】
走行制御手段12は、オフセット量=0,ずれ角φ≠0と判定した際、車両中心1aから目標方向Suに直交するずれ角φの反対側に旋回中心Mを設定する。即ち、ずれ角φが「+」(時計回り方向)のとき、旋回中心MのX座標は「−」側に設定され、ずれ角φが「−」(反時計回り方向)のとき、旋回中心MのX座標は「+」側に設定される。そして、旋回中心Mは、車両中心1aから所定の旋回半径Rだけ離れた座標に設定される(図9)。
【0033】
走行制御手段12は、旋回中心Mから各走行輪3,4,5,6の中心までを結ぶ直線rに直交するように各走行輪3,4,5,6の方向を設定する。これにより、無人車両1は、旋回中心Mを中心として、ずれ角φがなくなる(減少する)方向へ向けて円移動する。
【0034】
[制御方法3]
図5〜図8に基づいて、無人搬送車が目標経路に対してオフセットと姿勢ずれが同時に生じた際の制御方法を説明する。自己位置方向算出手段20が、制御時間Tnにおける自己位置座標(Xv,Yv)及び自己方向ψを検出して、走行制御手段12が、オフセット量≠0,ずれ角φ≠0と判定した際に、下記の制御方法を行う。
【0035】
[オフセット量L>0,ずれ角φ>0]
図5に基づいて、オフセット量L>0,ずれ角φ>0のときの制御方法を説明する。走行制御手段12は、上記(1)式に基づいて、操舵角θを設定する。オフセット量L>0なので、操舵角θは「−」(反時計回り方向)に設定される(図9)。
【0036】
さらに、走行制御手段12は、車両中心1aから操舵角θに直交するずれ角φの反対側に旋回中心Mを設定する。ずれ角φが「+」(時計回り方向)なので、旋回中心MのX座標は「−」側に設定される。そして、旋回中心Mは、車両中心1aから所定の旋回半径Rだけ離れた座標に設定される(図9)。
【0037】
従って、旋回中心Mの座標(Xc,Yc)は、次の(2)式及び(3)式により算出される。なお、旋回半径Rの距離をRとする。
・Xc=Xv−R・cosθ ・・・(2)
(なお、下記ずれ角φ<0のときは、(2)式は、Xc=Xv+R・cosθとする。)
・Yc=Yv+R・sinθ ・・・(3)
(なお、下記ずれ角φ<0のときは、(3)式は、Yc=Yv−R・sinθとする。)
【0038】
走行制御手段12は、旋回中心Mから各走行輪3,4,5,6の中心までを結ぶ直線rに直交するように各走行輪3,4,5,6の方向を設定する。これにより、無人車両1は、旋回中心Mを中心として、ずれ角φがなくなる(減少する)方向へ向けて移動すると共に、目標経路S(Y軸)へ向けて移動して自己位置及び自己方向が経路修正される。
【0039】
[オフセット量L>0,ずれ角φ<0]
図6に基づいて、オフセット量L>0,ずれ角φ<0のときの制御方法を説明する。走行制御手段12は、上記(1)式に基づいて、操舵角θを設定する。オフセット量L>0なので、操舵角θは「−」(反時計回り方向)に設定される(図9)。
【0040】
さらに、走行制御手段12は、車両中心1aから操舵角θに直交するずれ角φの反対側に旋回中心Mを設定する。ずれ角φが「−」(反時計回り方向)なので、旋回中心MのX座標は「+」側に設定される。そして、旋回中心Mは、上記(2)式及び(3)式に基づいて、車両中心1aから所定の旋回半径Rだけ離れた座標(Xc,Yc)に設定される(図9)。
【0041】
走行制御手段12は、旋回中心Mから各走行輪3,4,5,6の中心までを結ぶ直線rに直交するように各走行輪3,4,5,6の方向を設定する。これにより、無人車両1は、旋回中心Mを中心として、ずれ角φがなくなる(減少する)方向へ向けて移動すると共に、目標経路S(Y軸)へ向けて移動する。
【0042】
[オフセット量L<0,ずれ角φ>0]
図7に基づいて、オフセット量L<0,ずれ角φ>0のときの制御方法を説明する。走行制御手段12は、上記(1)式に基づいて、操舵角θを設定する。オフセット量L<0なので、操舵角θは「+」(時計回り方向)に設定される(図9)。
【0043】
さらに、走行制御手段12は、車両中心1aから操舵角θに直交するずれ角φの反対側に旋回中心Mを設定する。ずれ角φが「+」(時計回り方向)なので、旋回中心MのX座標は「−」側に設定される。そして、旋回中心Mは、上記(2)式及び(3)式に基づいて、車両中心1aから所定の旋回半径Rだけ離れた座標(Xc,Yc)に設定される(図9)。
【0044】
走行制御手段12は、旋回中心Mから各走行輪3,4,5,6の中心までを結ぶ直線rに直交するように各走行輪3,4,5,6の方向を設定する。これにより、無人車両1は、旋回中心Mを中心として、ずれ角φがなくなる(減少する)方向へ向けて移動すると共に、目標経路S(Y軸)へ向けて移動する。
【0045】
[オフセット量L<0,ずれ角φ<0]
図8に基づいて、オフセット量L<0,ずれ角φ<0のときの制御方法を説明する。走行制御手段12は、上記(1)式に基づいて、操舵角θを設定する。オフセット量L<0なので、操舵角θは「+」(反時計回り方向)に設定される(図9)。
【0046】
さらに、走行制御手段12は、車両中心1aから操舵角θに直交するずれ角φの反対側に旋回中心Mを設定する。ずれ角φが「−」(反時計回り方向)なので、旋回中心MのX座標は「+」側に設定される。そして、旋回中心Mは、上記(2)式及び(3)式に基づいて、車両中心1aから所定の旋回半径Rだけ離れた座標(Xc,Yc)に設定される(図9)。
【0047】
走行制御手段12は、旋回中心Mから各走行輪3,4,5,6の中心までを結ぶ直線rに直交するように各走行輪3,4,5,6の方向を設定する。これにより、無人車両1は、旋回中心Mを中心として、ずれ角φがなくなる(減少する)方向へ向けて移動すると共に、目標経路S(Y軸)へ向けて移動する。
【0048】
[繰り返し制御]
上記の通り、走行制御手段12は、オフセット量L及びずれ角φに応じて、制御方法1〜3のいずれかを実行する(図9)。そして、所定制御時間単位Δtごとの制御時間Tn,Tn+1,Tn+2・・・において、制御方法1〜3のいずれかの選択・実行を繰り返し行うことにより経路修正する。本発明では、制御方法3に基づき、目標経路に対してオフセットと姿勢ずれが同時に発生した場合においても、姿勢ずれを修正しながらオフセット量をなくすことができるので、スムーズですばやく安定して経路修正できるように走行する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】無人車両の主要構成を示すブロック図である。
【図2】自己位置座標及び自己方向の算出方法を説明する平面図である。
【図3】無人車両が目標経路に対してオフセットのみ生じた際の制御方法を説明する平面図である。
【図4】無人車両が目標方向に対して姿勢ずれのみ生じた際の制御方法を説明する平面図である。
【図5】無人搬送車が目標経路及び目標方向に対してオフセットと姿勢ずれが同時に生じた際の制御方法を説明する平面図である。
【図6】無人搬送車が目標経路及び目標方向に対してオフセットと姿勢ずれが同時に生じた際の別の制御方法を説明する平面図である。
【図7】無人搬送車が目標経路及び目標方向に対してオフセットと姿勢ずれが同時に生じた際の別の制御方法を説明する平面図である。
【図8】無人搬送車が目標経路及び目標方向に対してオフセットと姿勢ずれが同時に生じた際の別の制御方法を説明する平面図である。
【図9】オフセット量とずれ角に応じた制御方法をまとめたルール図である。
【符号の説明】
【0050】
1 無人車両
2 位置方向検出手段
20 自己位置方向算出手段
3,4,5,6 走行輪
10 経路情報記憶手段
11 誤差算出手段
12 走行制御手段
1a 車両中心
Xv,Yv 自己位置
ψ 自己方向
S 目標経路
Su 目標方向
L オフセット量
φ ずれ角
θ 操舵角
M 旋回中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走行輪が独立して操舵可能とする無人車両において、
自己位置及び自己方向を検出する検出手段と、予め設定された目標経路及び目標方向を記憶する経路情報記憶手段と、前記自己位置及び前記自己方向と前記目標経路及び前記目標方向とを比較してオフセット量及びずれ角を算出する誤差算出手段と、前記オフセット量及び前記ずれ角に基づいて前記各走行輪を制御する走行制御手段とを備え、
前記走行制御手段は、前記オフセット量と前記ずれ角とが同時に生じた際に、前記オフセット量をなくす方向に操舵角を設定し、前記無人車両の中心から前記操舵角に直交する前記ずれ角の反対側に旋回中心を設定し、前記旋回中心から前記各走行輪の中心までを結ぶ直線に直交するように前記各走行輪の方向を設定することを特徴とする走行輪独立操舵の無人車両。
【請求項2】
前記操舵角は、前記オフセット量に比例して角度設定されることを特徴とする請求項1に記載した走行輪独立操舵の無人車両。
【請求項3】
前記操舵角は、前記無人車両の走行速度に応じて段階的に上限が設定されることを特徴とする請求項2に記載した走行輪独立操舵の無人車両。
【請求項4】
複数の走行輪が独立して操舵可能とする無人車両の走行制御方法において、
前記無人車両は、自己位置及び自己方向を検出する検出手段と、予め設定された目標経路及び目標方向を記憶する経路情報記憶手段と、前記自己位置及び前記自己方向と前記目標経路及び前記目標方向とを比較してオフセット量及びずれ角を算出する誤差算出手段と、前記オフセット量及び前記ずれ角に基づいて前記各走行輪を制御する走行制御手段とを備え、
前記走行制御手段が、前記オフセット量と前記ずれ角とが同時に生じた際に、前記オフセット量をなくす方向に操舵角を設定し、前記無人車両の中心から前記操舵角に直交する前記ずれ角の反対側に旋回中心を設定し、前記旋回中心から前記各走行輪の中心までを結ぶ直線に直交するように前記各走行輪の方向を設定することを特徴とする無人車両の走行制御方法。
【請求項5】
前記操舵角は、前記オフセット量に比例して角度設定されることを特徴とする請求項4に記載した無人車両の走行制御方法。
【請求項6】
前記操舵角は、前記無人車両の走行速度に応じて段階的に上限が設定されることを特徴とする請求項5に記載した無人車両の走行制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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