説明

超広視野撮像装置

【課題】凸面状ミラーとカメラを相対して配置した全方位撮影カメラでは、凸面状ミラーでカメラ光軸を中心とした360°視野範囲の全方位の被写体を撮像できるが、カメラ直下は撮影カメラが写り込み超広視野を撮像できない。
【解決手段】超広視野を撮像できる大型の凹面鏡7と小型の凸面鏡8とカメラ2とが光軸上に配設されて構成された広視野撮像装置であって、前記凹面鏡7は光軸上に貫通口4が穿設されてなり前方の被写体からの入射光を収束反射し、前記凸面鏡8は前記凹面鏡光軸上の貫通口4に配設されたカメラ2へ前記凹面鏡7で反射された光束をさらに収束反射するものであり、前記カメラ2は前記凸面鏡8からの光束に基づいて画像を記録するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の撮像装置が写り込まない超広視野撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全方位撮影カメラとして凸面状ミラーとカメラを相対して配置し、凸面状ミラーでカメラ光軸を中心とした360°視野範囲の全方位の被写体をカメラレンズに集光するようにした撮像装置が知られている。
【0003】
これらの撮像装置では、通常、凸面状ミラーを上部に、レンズを上に向けてテレビカメラを下部に配置し、凸面状ミラーを支えるために何らかの支持体を必要とし、そのため透明な円筒ガラスを使用し、円筒ガラス内面の反射防止のため、凸面状ミラー側を底面とする円錐形状の棒状体を取り付けたものがある。
【0004】
また、凸面状ミラー(全方位ミラー)の片側に、前記全方位ミラーの焦点または集光点に対して放射状に構成面を形成した透明支柱を立設し、撮像面に影響を与えないように工夫したものもある。
【特許文献1】特開平11−174603号
【特許文献2】特開平2005−257972号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、ドーム型の野球場などの天井に全方位撮像装置を配設しグラウンド全体を視野に納めようとしても、前記撮像装置そのものが画像中心部分に写り込み真下やその付近の被写体を撮像することはできなかった。このため、撮像装置が写り込まず、かつ360°の周囲のみならず真下の全てを撮像できる超広視野撮像装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記に鑑み鋭意研究の結果、次の手段によりこの課題を解決した。
(1)超広視野を撮像できる大型の凹面鏡と小型の凸面鏡と撮像装置とが光軸上に配設されて構成された広視野撮像装置であって、
前記凹面鏡は光軸上に貫通口が穿設されてなり前方の被写体からの入射光を収束反射し、前記凸面鏡は前記凹面鏡光軸上の貫通口に配設された撮像装置へ前記凹面鏡で反射された光束をさらに収束反射するものであり、前記撮像装置は前記凸面鏡からの光束に基づいて画像を記録するものであることを特徴とする超広視野撮像装置。
【0007】
(2)前記撮像装置が、前記光軸に沿って移動できる移動機構を備えてなることを特徴とする前項(1)に記載の超広視野撮像装置。
【0008】
(3)前記凸面鏡が、前記光軸に沿って移動できる移動機構を備えてなることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載の超広視野撮像装置。
【0009】
(4)前記凸面鏡が、前記凹面鏡の周囲端側を一方の支持端とし、複数本のワイヤで支持されてなることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の超広視野撮像装置。
【0010】
(5)前記凸面鏡が、前記凹面鏡の周囲端側を底面とする透明な円錐体形状のハウジングの下部中央に固設されてなることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の超広視野撮像装置。
【0011】
(6)前記凸面鏡が、反射面の形状を変えることによって光学特性を変化させることが可能な形状可変凸面鏡であることを特徴とする前項(1)〜(5)のいずれか1項に記載の超広視野撮像装置。
【0012】
(7)前記撮像装置にズームレンズを装着し、ズーム倍率の制御と同期して前記凸レンズの移動機構を制御してなることを特徴とする前項(1)〜(6)のいずれか1項に記載の超広視野撮像装置。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、次のような効果が発揮される。
1.本願発明の請求項1の発明によれば、
超広視野を撮像できる大型の凹面鏡と小型の凸面鏡と撮像装置とが光軸上に配設されて構成された広視野撮像装置であって、
前記凹面鏡は光軸上に貫通口が穿設されてなり前方の被写体からの入射光を収束反射し、前記凸面鏡は前記凹面鏡光軸上の貫通口に配設された撮像装置へ前記凹面鏡で反射された光束をさらに収束反射するものであり、前記撮像装置は前記凸面鏡からの光束に基づいて画像を記録するものなので、360°周囲の被写体だけではなく、前記凹面鏡前方の被写体からの入射光の全てを含む全視野が撮像でき、かつ前記超広視野撮像装置及び光軸上の撮像装置は写り込まない。
【0014】
魚眼レンズなど超広角レンズを使用せずに、使用フィルム又は撮像素子の大きさに適合した標準レンズ以上の焦点距離のレンズを使用して、周囲360°の被写体のみでなく、前記凹面鏡前方の被写体からの入射光の全ての被写体像を、即ち、例えば、サッカー場の中央上部に前記超広視野撮像装置を取り付ければ、観客席を含む全グラウンド風景を俯瞰したように自然の情景のまま捉えることができる。
【0015】
魚眼レンズなど超広角レンズを使用せずに、使用フィルム又は撮像素子の大きさに適合した標準レンズ等を使用できるので、画像歪みの全くない超広視野の撮像範囲の被写体像を撮像できる。
【0016】
前記凹面鏡及び凸面鏡の曲面の各設定値により、前記超広視野撮像装置の取付位置(取付高さ)を自由に設定できるので、例えば、ドーム型競技場や天蓋付き野球場のように高さ制限があっても、観客席を含む全グラウンド風景を歪み無く俯瞰したように自然の情景のまま捉えることができ、また、コンビニエンスストアのように低い天井に設置しても店内の全風景を歪み無く視野に収めることができる。
【0017】
2.本願発明の請求項2の発明によれば、
前記請求項1の効果に加えて、前記撮像装置が、前記光軸に沿って移動できる移動機構を備えているので、前記凹面鏡の周囲方向の視野角度及び光軸中心方向の視野角度が調整できる。
【0018】
3.本願発明の請求項3の発明によれば、
前記請求項1及び請求項2の効果に加えて、前記凸面鏡が、前記光軸に沿って移動できる移動機構を備えているので、前記凹面鏡の周囲方向の視野角度及び光軸中心方向の視野角度が調整できると同時に、前記撮像装置の移動機構と併せてさらに微調整を行うことができる。
【0019】
4.本願発明の請求項4の発明によれば、
前記請求項1〜請求項3の効果に加えて、前記凸面鏡が、前記凹面鏡の周囲端側を一方の支持端とし、複数本のワイヤで支持されているので、前記ワイヤは、レンズの焦点深度外にあるため、撮像画面に対する影響を無視することができる。
【0020】
5.本願発明の請求項5の発明によれば、
前記請求項1〜請求項3の効果に加えて、前記凸面鏡が、前記凹面鏡の周囲端側を底面とする透明な円錐体形状のハウジングの下部中央に固設されているので、防塵効果、耐久性に優れた超広視野撮像装置を提供できる。
【0021】
6.本願発明の請求項6の発明によれば、
前記請求項1〜請求項5の効果に加えて、前記凸面鏡が、反射面の形状を変えることによって光学特性を変化させることが可能な形状可変凸面鏡であるので、前記超広視野撮像装置を手の届かない位置に取り付けた後でも、光軸中心の被写体の視野調整を含め、前視野角を制御できる。
【0022】
7.本願発明の請求項7の発明によれば、
前記請求項1〜請求項6の効果に加えて、前記撮像装置にズームレンズを装着し、ズーム倍率の制御と同期して前記凸レンズの移動機構を制御することによって、ズーム倍率が望遠側へ移動し画角が狭まるに伴って前記凸レンズを撮像装置から遠ざかるように移動制御すれば、全視野角が狭まり通常のズームレンズ操作時と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本願発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本願発明の超広視野撮像装置の原理説明実施例図であり、図2は複数本のワイヤで前記凸面鏡を支持した超広視野撮像装置の実施例断面図であり、図3は同発明の透明な円錐体形状のハウジングの底部中央に凸面鏡を固設した超広視野撮像装置の実施例断面図である。
【0024】
図1において、超広視野撮像装置1は、光軸中心に穿孔されたカメラ2のための貫通口4を有し、鏡面の前方広視野からの入射光を収束反射し、かつ周囲からの外周部入射光5、中央下部からの入射光6を第1反射光5’、6’として出射する凹面鏡7と、該凹面鏡7と相対し凹面鏡7からの第1反射光5’、6’を反射し第2反射光5”、6”として前記レンズ3の光軸中心へ収束出射する凸面鏡8と、前記凹面鏡7に穿孔された貫通口4の光軸中心をレンズ3中心とし、前記凸面鏡8からの第2反射光5”、6”を受光し画像を記録するカメラ2の撮像装置と、前記凹面鏡7の周囲端側を一方の支持端とし前記凸面鏡8を支持する図示しない凸面鏡取付手段とで構成している。
【0025】
前記超広視野撮像装置1は、使用するカメラ2の撮像素子及びレンズ3と、被写体中央点9からカメラ2の結像面10までの撮像距離Dを決定し、さらに外周部入射光5の入射角Aの設定値を決定すると、凹面鏡7及び凸面鏡8のそれぞれの曲率(焦点距離)が公知の光学設計技法により算出できる。
【0026】
ここで、凸面鏡8の小型化を図るため、レンズ3の焦点距離は標準レンズ以上の画角の狭いレンズから選択することが好ましい。
【0027】
外周の入射角Aが決定され、前記入射角Aで入射した外周部入射光5は凹面鏡7で反射し、その反射光は第1反射光5’として凸面鏡8端でさらに反射し、反射光は第2反射光5”として反射されレンズ3へ入射しカメラ2の結像面10に結像される。
【0028】
一方、前記撮像距離Dだけ離れた被写体中央点9からの中央下部入射光6は凹面鏡7の中央部近辺で反射し、その反射光は第2反射光6’として凸面鏡8へ入射する。さらに、凸面鏡8で反射された第2反射光6”はレンズ3へ入射しカメラ2の結像面10に結像される。
【0029】
前記レンズ3による被写体中央点9の撮像は、凸面鏡8と凹面鏡7の曲率(焦点距離)が適切に設定され、撮像距離D位置にカメラ2が装着されれば、被写体中央点9一点を捉えることができるが、さらに、凸面鏡8、カメラ2のいずれか、又は双方に光軸に沿って若干移動できる移動機構を装着すれば、超広視野撮像装置1の設営後の前記移動機構の微調整により被写体中央点9一点を撮像するように調整することができる。
【0030】
図2において、カメラ2は、カメラ移動機構11が装着された取付金具12を介して凹面鏡7の背面部に取り付けられ、前記カメラ移動機構11は光軸に沿ってカメラ2を移動できる。また、防塵カバー13により保護されている。
【0031】
さらに、前記凹面鏡7の周囲端側を一方の支持端とし、複数本のワイヤ15による前記凸面鏡取付手段で凸面鏡移動機構14と凸面鏡8を支持している。前記凸面鏡移動機構14は光軸に沿って凸面鏡8を移動できる。
【0032】
ここで、前記ワイヤ15は、レンズ3の焦点深度外にあるため、撮像画面に対する影響を無視することができる。
【0033】
前記カメラ移動機構11及び凸面鏡移動機構14は、モーター等を使用しリモート制御可能な移動機構であることが好ましい。
【0034】
図3において、前記複数本のワイヤ15による前記凸面鏡取付手段に代えて、前記凹面鏡7の周囲端側を底面とする透明な円錐体形状のハウジング16の下部中央に凸面鏡移動機構14及び凸面鏡8を固設しているので、防塵効果、耐久性に優れた超広視野撮像装置1を提供できる。
【0035】
さらに、前記凸面鏡8には反射面の形状を変えることによって光学特性を変化させることが可能な形状可変凸面鏡を使用することが好ましい。
【0036】
前記形状可変凸面鏡の反射面は、その反射面がアルミコーティングされたシリコン膜内にエタノール等を封入し、これをピストンで圧力調整し反射面の曲率を制御するなど公知技術による形状可変できる凸面鏡を利用するとよい。
【0037】
さらにまた、前記撮像装置に図示しないズームレンズを装着し、ズーム倍率の制御と同時に前記凸レンズの移動機構を制御し、ズーム倍率が望遠側へ移動し画角が狭まるに伴って前記凸レンズを撮像装置から遠ざかるように移動制御すれば、撮像距離Dの被写体中央点9の結像状体を維持したままで、全視野角が狭まり通常のズームレンズ操作時と同様の効果を得ることができる。
【0038】
前記カメラは、フィルムカメラ等静止画用カメラや、ハイビジョンテレビカメラ等高解像度テレビカメラを使用することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
相対する凹面鏡と凸面鏡に標準レンズ付きカメラを装着するのみで、画面歪みの全くない超広視野撮像装置とすることができ、例えば、観客席を含むサッカー競技場を俯瞰したように全景を写すことができ、カメラにハイビジョンテレビカメラを使用すれば臨場感に優れた迫力ある画像を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本願発明の超広視野撮像装置の原理説明実施例図。
【図2】同発明の複数本のワイヤで前記凸面鏡を支持した超広視野撮像装置の実施例断面図。
【図3】同発明の透明な円錐体形状のハウジングの底部中央に凸面鏡を固設した超広視野撮像装置の実施例断面図。
【符号の説明】
【0041】
1:超広視野撮像装置
2:カメラ
3:レンズ
4:貫通口
5:外周部入射光
6:中央下部入射光
5’、6’:第1反射光
5”、6”:第2反射光
7:凹面鏡
8:凸面鏡
9:被写体中央点
10:結像面
11:カメラ移動機構
12:取付金具
13:防塵カバー
14:凸面鏡移動機構
15:ワイヤ
16:ハウジング
A:入射角
D:撮像距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超広視野を撮像できる大型の凹面鏡と小型の凸面鏡と撮像装置とが光軸上に配設されて構成された広視野撮像装置であって、
前記凹面鏡は光軸上に貫通口が穿設されてなり前方の被写体からの入射光を収束反射し、前記凸面鏡は前記凹面鏡光軸上の貫通口に配設された撮像装置へ前記凹面鏡で反射された光束をさらに収束反射するものであり、前記撮像装置は前記凸面鏡からの光束に基づいて画像を記録するものであることを特徴とする超広視野撮像装置。
【請求項2】
前記撮像装置が、前記光軸に沿って移動できる移動機構を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の超広視野撮像装置。
【請求項3】
前記凸面鏡が、前記光軸に沿って移動できる移動機構を備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の超広視野撮像装置。
【請求項4】
前記凸面鏡が、前記凹面鏡の周囲端側を一方の支持端とし、複数本のワイヤで支持されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超広視野撮像装置。
【請求項5】
前記凸面鏡が、前記凹面鏡の周囲端側を底面とする透明な円錐体形状のハウジングの下部中央に固設されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超広視野撮像装置。
【請求項6】
前記凸面鏡が、反射面の形状を変えることによって光学特性を変化させることが可能な形状可変凸面鏡であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の超広視野撮像装置。
【請求項7】
前記撮像装置にズームレンズを装着し、ズーム倍率の制御と同期して前記凸レンズの移動機構を制御してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の超広視野撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−209622(P2008−209622A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45695(P2007−45695)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(507062738)
【Fターム(参考)】