説明

超微粒子分散体およびその分散体を含有する樹脂組成物

【課題】超微粒子粉体を効率良く高濃度で分散させることができるとともに、分散安定性に優れ、しかも工業用途として汎用性の高い超微粒子分散体およびその分散体を含有する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】超微粒子分散体を、平均一次粒子径が100nm以下の超微粒子粉体と、この超微粒子粉体の溶剤としての分散媒と、前記超微粒子粉体の分散安定性を保持する分散剤と、前記超微粒子粉体に前記分散媒に対する親和性を付与する表面処理剤とを含む懸濁液からなるものとする。かかる超微粒子分散体と樹脂との溶融混練により、超微粒子粉体を高濃度に充填しても分散状態が良好な樹脂組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均一次粒子径が100nm以下の超微粒子粉体が分散されてなる超微粒子分散体およびその分散体を含有する樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂中に超微粒子粉体を一次粒子の状態まで分散させようとする試みは多くなされており、湿式法による疎水化処理を粉体に施す方法が一般的である。しかし、非常に凝集しやすい超微粒子粉体に対して、単純に湿式法による疎水化処理を行っても、充分な分散性が得られないことも既知の事実である。
【0003】
そこで、例えば、層状粘土鉱物にオニウムイオンを有する有機物で置換処理した処理粘土を水等の分散媒と共に溶融混練する方法により、熱可塑性樹脂中に層状粘土鉱物を超微分散させる技術が提案されている(特許文献1参照)。また、オニウムイオンを有する有機物を層状粘土鉱物の層間に挿入するインタカレーション法が、所謂ナノコンポジット(超微粒子粉体を一次粒子のレベルで基材樹脂に分散させたもの)の作製のための表面処理として広く知られている(特許文献2参照)。なお、インタカレーション法による疎水化処理を簡略化するものもある(特許文献3、非特許文献1参照)。
【0004】
また、特定の製法で得られた特定の溶融粘度を有するポリカーボネート樹脂だけが、カーボンナノチューブ等の無機導電性物質を高度に分散させ得ることが、特許文献4に開示されている。
【0005】
さらに、特許文献5には、貴金属または銅の化合物と分散剤とが溶解した溶媒中に、還元剤を投入することで、分散剤で保護されたコロイド粒子を形成し、これを溶剤除去することにより、微粒子貴金属または銅を含有した固体ゾルを得る方法、並びに、得られた固体ゾルを用いることで分散着色性の良い塗料組成物および樹脂組成物が得られることが開示されている。また、特許文献6には、超微粒子ITO、分散剤安定化剤、ポリビニラールに対する可塑剤およびアルコールを主成分とする溶剤からなる分散体をそのまま、あるいは、ある程度溶媒を除去した状態で、ポリビニラール樹脂に溶融混合させることで、超微粒子ITOが高度に分散したポリビニラール膜が得られることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特公平7−47644号公報
【特許文献2】特開平9−217012号公報
【特許文献3】特開2000−239397号公報
【特許文献4】特開平2003−55544号公報
【特許文献5】特開平2004−231708号公報
【特許文献6】特開2005−187226号公報
【非特許文献1】M.Alexander et al,Chem.Mater.,13,3830(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1および特許文献2に係る技術では、いずれも用いられる分散質として層状粘土鉱物に限定されるという問題点がある。また、前記特許文献3や非特許文献1に指摘される様に、インタカレーション法による疎水化処理は製造コストや工数の増大を招き、工業的に不利であるという問題点もある。また、前記特許文献4に係る技術では、完全に材料系が固定されるという問題点がある。さらに、前記特許文献5および特許文献6に係る技術では、いずれも材料の選定や工程が複雑であり、特に特許文献6に係る技術では、基材樹脂と分散の対象となる超微粒子粉体が固定されているにもかかわらず、3種以上の分散剤安定化剤を組み合わせて使用するなど、処方が非常に複雑であるという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、超微粒子粉体を効率良く高濃度で分散させることができるとともに、分散安定性に優れ、しかも工業用途として汎用性の高い超微粒子分散体およびその分散体を含有する樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前述の目的を達成すべく鋭意検討した結果、超微粒子粉体に分散媒に対する親和性を付与する表面処理剤を用いることにより、分散媒に効率良く高濃度で種々の超微粒子粉体を分散できることを見いだした。また、前記超微粒子粉体の分散安定性を保持する分散剤を用いることにより、そのままでも、あるいは一旦溶剤が除去された状態でも容易に再分散可能な優れた分散安定性を有する分散体が得られることを見いだした。
【0010】
すなわち、第1発明による超微粒子分散体は、
平均一次粒子径が100nm以下の超微粒子粉体と、この超微粒子粉体の溶剤としての分散媒と、前記超微粒子粉体の分散安定性を保持する分散剤と、前記超微粒子粉体に前記分散媒に対する親和性を付与する表面処理剤とを含む懸濁液からなることを特徴とするものである。
【0011】
第1発明において、前記超微粒子粉体の含有量が0.1〜80重量%、前記分散媒の含有量が0.1〜99.9重量%、前記分散剤の含有量が0.01〜60重量%、前記表面処理剤の含有量が0.002〜40重量%であるのが好ましい(第2発明)。
【0012】
また、第1発明または第2発明において、前記表面処理剤は、下記一般式
【化2】

にて示されるアルコキシシラン化合物であるのが好ましい(第3発明)。
【0013】
また、第1発明乃至第3発明において、前記分散媒として水またはアルコール類が用いられ、前記分散剤としてその水またはアルコール類に可溶な高分子化合物が用いられるのが好ましい(第4発明)。
【0014】
次に、第5発明による樹脂組成物は、
第1発明〜第4発明のいずれかの発明に係る超微粒子分散体を含有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、超微粒子粉体を効率良く高濃度で分散させることができるとともに、分散安定性に優れ、しかも工業用途として汎用性の高い超微粒子分散体を得ることができる。また、かかる超微粒子分散体を樹脂に配合することにより、超微粒子粉体が高度に分散された樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明による超微粒子分散体およびその分散体を含有する樹脂組成物の具体的な実施の形態について説明する。
【0017】
本発明の超微粒子分散体は、(a)平均一次粒子径が100nm以下の超微粒子粉体、(b)超微粒子粉体に分散媒に対する親和性を付与する表面処理剤、(c)超微粒子粉体の分散安定性を保持する分散剤および(d)超微粒子粉体の溶剤としての分散媒、を含む懸濁液からなるものである。
【0018】
前記(a)の超微粒子粉体としては、特に限定されるものではなく、無機粉体、有機粉体が挙げられる。中でも、汎用性の高い無機粉体を使用することが好ましく、用いる溶剤に溶解しない物質であれば特に限定されないが、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化第二鉄(α型)、酸化第二鉄(γ型)、酸化イットリウム、酸化マンガン、酸化ケイ素(シリカ)、酸化錫、酸化ホルミウム、酸化銅、酸化ビスマス、酸化コバルト、四三酸化鉄、酸化マグネシウム、インジウム・スズ酸化物、アンチモン・スズ酸化物、コバルトブルー等の単一または複合の金属酸化物;金、銀、白金等の金属;グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等のカーボン;スメクタイト、カオリン等のケイ酸塩粘土鉱物;リン酸ジルコニウム、チタン酸塩、塩化モリブデン、合成マイカ、リン酸ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。該超微粒子粉体の分散体に占める含有率は0.1〜80重量%の範囲で可能であるが、含有率が過度に多くなると超微粒子粉体によっては充分な分散が得られないため、含有率の上限を10〜50重量%の範囲に設定するのが好ましい。
【0019】
また、前記(b)の表面処理剤としては、下記一般式
【化3】

にて示されるアルコキシシラン化合物が用いられ、その被覆量は超微粒子粉体に対して50重量%以下とされ、被覆量を上げることで、水やアルコール類との親和性(親水性)が高くなり、より高分散かつ分散安定性の高い分散体を得ることができる。被覆量が少なくなると充分な分散が得られないため、含有率の下限を超微粒子粉体に対して2〜20重量%の範囲に設定するのが好ましい。なお、このアルコキシシラン化合物としては、例えば、デグサ(株)からDYNASYLAN4140の名称で、また信越化学工業(株)からKBM−641,KBM−713の名称で市販されているものが挙げられる。
【0020】
ここで、前記アルコキシシラン化合物を予め超微粒子粉体に表面被覆する場合の方法としては、特開2003−26958号公報に記載の次のような方法がある。
【0021】
まず、表面に被覆するべき所定量のアルコキシシラン化合物を濃度が約1〜20重量%となるように適当な溶剤に溶解する。これを適当なミキサー(例えばヘンシェルミキサー)に入れ、その後被覆されるべき超微粒子粉体を投入し、一定時間撹拌する。この後、撹拌しながらミキサーを加熱減圧して溶剤を除去した後、約100℃にて6時間加熱し、その後粉砕して目的とする親水性超微粒子粉体を得る。ここで用いられる溶剤としては、イソプロピルアルコール、アセトン、塩化メチレン等のアルコキシシランを溶解し得る極性有機溶剤が好ましい。
【0022】
こうして得られる親水性超微粒子粉体は、前記一般式にて示されるアルコキシシランがアルコールを脱離した形で化学結合して表面被覆されている。
【0023】
次に、前記(c)の分散剤としては、用いる分散媒に可溶な高分子量界面活性剤であれば、特に限定されるものではなく、天然または合成のアニオン系、ノニオン系およびカチオン系のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリオキシジプロピレン・ポリオキシエチレンブロック、ポリマーでんぷん等の高分子量界面活性剤が挙げられる。中でも、汎用性と安全性の点からポリエチレングリコール等のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることがより好ましい。該分散剤は0.01〜60重量%の間で自由に処方することができるが、好ましくは超微粒子粉体重量に対して0.1〜3倍程度がよく、残りに溶剤を使用する。
【0024】
また、前記(d)の分散媒としては、前記表面処理剤と相溶性の良いものであれば、特に限定されるものではないが、水や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類が選ばれ、これらの中から1種または2種以上を組み合わせて使用しても良い。しかし、親水性表面処理剤および分散剤との組み合わせから、より水と相溶性の良いものが好ましい。さらに、製造コスト、製造工程簡便性および安全性の観点から、水を単独で用いることがより好ましい。
【0025】
本発明の超微粒子分散体を調製する方法としては、まず、超微粒子粉体とその超微粒子粉体に対する表面処理剤、分散剤および分散媒を含む懸濁液を作製する。なお、表面処理剤は特に予め超微粒子粉体に施す必要はないが、分散媒に対し一部溶出する超微粒子粉体を用いる際には予め表面処理を施しておくことが好ましい。次に、前記懸濁液から超微粒子分散体を作製する分散機としては、ホモミキサー、ディスパー、コロイドミル、メディアミル、ロールミル、ニーダー、エクストルーダー等の各種分散機が使用できるが、超微粒子粉体に高せん断力を加えることができるホモミキサー、ディスパー、コロイドミル、メディアミル等の高速撹拌可能な湿式分散機を使用するのが好ましく、さらに、高せん断力に加え粉砕力も加わるコロイドミル、メディアミル等の湿式ミルを使用するのがより好ましい。特に、好ましいのはメディアミルの中でも、メディアに微細なビーズを用いた湿式ビーズミルであり、ビーズ径を微小化または分散時間を増加することで、超微粒子粉体をより効率良く分散させることができる。
【0026】
次に、本発明の超微粒子分散体を含有させる樹脂としては、特に限定されるものではなく、天然樹脂または合成の熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂、ゴム類が挙げられる。中でも押出混練法にて加工可能な熱可塑性樹脂を使用することが好ましく、熱可塑性の高分子化合物であれば特に限定しないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂)、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどの中から1種または2種以上が選択できる。また、環境負荷の観点から、今後ますます重要になると思われるポリカプロラクトン系、アルギン酸系、ポリビニルアルコール系、脂肪族ポリエステル系、糖類系、ポリウレタン系、ポリエーテル系などの生分解性樹脂等も使用できる。
【0027】
また、本発明の超微粒子分散体を含有する樹脂組成物を得る際に、特に予め溶剤を除去する必要はないが、高分子分散剤と樹脂との相溶性が乏しい場合や残留溶剤の問題、安全性の観点等から必要がある場合は予め溶剤を除去した上で樹脂に含有させることが好ましい。
【実施例】
【0028】
次に、本発明による超微粒子分散体およびその分散体を含有する樹脂組成物の具体的な実施例について説明するが、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
超微粒子酸化亜鉛(住友大阪セメント(株)製:ZnO−350/平均一次粒子径:10〜35nm)に対し、10wt%の濃度にて親水性表面処理剤(アルコキシシラン化合物)を処理して得られた親水性表面処理超微粒子酸化亜鉛55wt%とポリエチレングリコール(日本油脂(株)製:PEG#6000)10wt%、イソプロピルアルコール35wt%からなる懸濁液を、φ0.5のジルコニアビーズを80vol%充填した湿式ビーズミルにて、周速10m/s、流量300ml/minの条件で、1時間撹拌を実施して分散体を作製した。得られた分散体は溶剤を除去した後に粉砕し、φ2mm程度の分散体顆粒とした。該分散体顆粒とナイロン6樹脂(帝人ナイロンNH−8005)とを超微粒子酸化亜鉛の含有率が20wt%となるように、スクリューの直径(D)が30mm、スクリューの直径(D)に対する軸長さ(L)の比率(L/D)が35の同方向回転噛合式二軸押出機にて、スクリュー回転数200rpm、シリンダ温度250℃、吐出量15kg/hの条件で溶融混練を行い、該分散体を含有する樹脂組成物を作製した。
【0030】
(実施例2)
超微粒子酸化亜鉛(ZnO−350)に対する親水性表面処理剤(アルコキシシラン化合物)の濃度を8wt%とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0031】
(実施例3)
超微粒子酸化亜鉛(ZnO−350)に対する親水性表面処理剤(アルコキシシラン化合物)の濃度を5wt%とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0032】
(実施例4)
湿式ビーズミルの撹拌時間を2倍の2時間とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0033】
(実施例5)
超微粒子酸化亜鉛(ZnO−350)に代えて、シリカコートされた超微粒子酸化亜鉛(昭和電工(株)製:マックスライトZS−032/平均一次粒子径:25nm)を用いた以外は実施例4と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0034】
(実施例6)
超微粒子酸化亜鉛(ZnO−350)に代えて、シリカコートされた超微粒子酸化チタン(昭和電工(株)製:マックスライトTS−043/平均一次粒子径:30nm)を用いた以外は実施例4と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0035】
(比較例1)
超微粒子酸化亜鉛(ZnO−350)に対する親水性表面処理剤(アルコキシシラン化合物)の濃度を2wt%とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0036】
(比較例2)
超微粒子酸化亜鉛(ZnO−350)に対する親水性表面処理剤(アルコキシシラン化合物)の濃度を0wt%とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0037】
(実施例7)
超微粒子酸化亜鉛(ZnO−350)に対し、8wt%の濃度にて親水性表面処理剤(アルコキシシラン化合物)を処理して得られた親水性表面処理超微粒子酸化亜鉛54wt%とポリエチレングリコール(PEG#6000)20wt%、水26wt%からなる懸濁液を、φ0.5のジルコニアビーズを80vol%充填した湿式ビーズミルにて、周速10m/s、流量300ml/minの条件で、1時間撹拌を実施して分散体を作製した。得られた分散体はそのまま2連プランジャ式の液注ポンプにて超微粒子酸化亜鉛の含有率が20wt%となるように、スクリューの直径(D)が30mm、スクリューの直径(D)に対する軸長さ(L)の比率(L/D)が35の同方向回転噛合式二軸押出機にて、スクリュー回転数300rpm、シリンダ温度250℃、吐出量10kg/hの条件でナイロン6樹脂(帝人ナイロンNH−8005)との溶融混練を行い、該分散体を含有する樹脂組成物を作製した。
【0038】
(実施例8)
分散体作製に用いたポリエチレングリコール(PEG#6000)の濃度を10wt%とした以外は実施例7と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0039】
(実施例9)
分散体作製に用いたポリエチレングリコール(PEG#6000)の濃度を8wt%とした以外は実施例7と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0040】
(比較例3)
分散体作製に用いたポリエチレングリコール(PEG#6000)の濃度を6wt%とした以外は実施例7と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0041】
(比較例4)
分散体作製に用いたポリエチレングリコール(PEG#6000)の濃度を0wt%とした以外は実施例7と同様にして樹脂組成物を作製した。
【0042】
以上のようにして得られた実施例1〜9および比較例1〜4のそれぞれのナイロン6樹脂組成物について、コンパウンドペレット断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察し、その分散状態を評価した。その結果が表1,2に示されている。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
表1,2から明らかなように、実施例1〜9のものでは、比較例1〜4のものに比べて、超微粒子粉体を高濃度に充填しても分散状態が良好な樹脂組成物が得られることが分かる。また、処方も加工法も比較的単純であり、分散体作製にも時間を要しない。さらに、溶剤として安全な水を使用した実施例7〜9のものでは、液注加工が可能となり、溶剤の乾燥工程が省略できるという利点がある。
【0046】
以上のように、親水性表面処理剤を超微粒子粉体の表面処理に用いることで、安価かつ良好な分散状態の超微粒子分散体とその分散体を含有する樹脂組成物を作製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が100nm以下の超微粒子粉体と、この超微粒子粉体の溶剤としての分散媒と、前記超微粒子粉体の分散安定性を保持する分散剤と、前記超微粒子粉体に前記分散媒に対する親和性を付与する表面処理剤とを含む懸濁液からなることを特徴とする超微粒子分散体。
【請求項2】
前記超微粒子粉体の含有量が0.1〜80重量%、前記分散媒の含有量が0.1〜99.9重量%、前記分散剤の含有量が0.01〜60重量%、前記表面処理剤の含有量が0.002〜40重量%である請求項1に記載の超微粒子分散体。
【請求項3】
前記表面処理剤は、下記一般式
【化1】

にて示されるアルコキシシラン化合物である請求項1または2に記載の超微粒子分散体。
【請求項4】
前記分散媒として水またはアルコール類が用いられ、前記分散剤としてその水またはアルコール類に可溶な高分子化合物が用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の超微粒子分散体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の超微粒子分散体を含有してなることを特徴とする樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−182465(P2007−182465A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55(P2006−55)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】