説明

超臨界流体を利用した蛋白質微細粒子化装置及び微細粒子化方法

本発明は超臨界流体を利用した蛋白質の微細粒子化装置及び方法に関するものにして、本発明の装置は(a)超臨界流体供給手段;(b)蛋白質溶液供給手段;(c)前記超臨界流体と前記蛋白質溶液を一つの空間に受容して蛋白質微細粒子を生成し、その下段部分にテーパー状を有する沈殿槽;さらに、(d)前記超臨界流体供給手段及び蛋白質溶液供給手段に連結されており、超臨界流体を噴射する外側ノズル及び蛋白質溶液を噴射する内側ノズルからなされている同軸構造(coaxial arrangement)を有する噴射ノズル、前記内側ノズルの出口末端は外側ノズルの出口末端よりも沈殿槽内部にさらに突出されていて、前記超臨界流体と蛋白質溶液の接触は前記沈殿槽内部でなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超臨界流体を利用した蛋白質の微細粒子化装置及び方法(Apparatus and Method for Submicronization of Proteins using Supercritical Fluids)に関する。
【背景技術】
【0002】
蛋白質医薬品は一般的に有機合成化合物や天然物医薬品の有効成分に比べて分子量が大き過ぎて、胃腸管での吸収効率が低い問題点ばかりでなく、服用時に胃散による不活性化と蛋白質分解酵素による分解、さらに、人体を保護する免疫システムによる除去等の薬物伝達上の詭弱性の為、大部分の蛋白質医薬品は注射剤方式で投与される。注射剤の場合、使用者の立場では使用上、保管上、携帯上の多くの不便が伴う。さらに、注射に対する怖さや拒否感を起こし得る。従って、注射をせずに便利に蛋白質医薬品を投与することができ、さらに、蛋白質医薬品が高いBioavailabilityを有するようにする新なDelivery方法が活発に研究されつつある。その内の一つとして肺臓や鼻を通じた投入方法がある。その内、鼻を通じた投入は比較的吸収率が低く一般的な蛋白質の投入に使用される可能性が高くはないものの、1998年Hussainにより鼻の粘膜を通じて直接神経組織に少量の蛋白質を吸収させ得るとの研究結果が発表された(Hussain, A. A. Adv. Drug. Delivery Rew. 1998, 29-39)。
【0003】
肺臓を通じた投与方法である経肺剤は蛋白質医薬品のDeliveryにおいて最も有用な方法の一つとして抬頭されている。肺胞は表面積が極めて広く、血管に達する過程で存在する上皮組織が薄い為、血管との距離が短いばかりでなく、比較的代謝活動が低く毛細血管が発達していて、蛋白質のような軟弱な高分子物質の吸収に効率的である為、肺臓を通じた薬物伝達は蛋白質のような巨大分子の投与方式で有望である。ただ、経口剤の場合、胃腸、小腸、大腸等で吸収が生じ得るものの、経肺剤の場合には単に細胞でのみ満足する程の吸収を期待するより他はない。呼吸吸込みの際、肺胞まで達し得る粒子の径は、5μm以下の微細粒子である。さらに、一貫性のある肺胞までの伝達と肺胞における良い吸収効率を期待する為には、経肺剤の粒子の大きさが均一でなければならない。従って、蛋白質医薬品の経肺剤開発において、大きさが5μm以下の均一した粒子の製造が要求される。
【0004】
大部分の蛋白質医薬品を微細粒子に製造する時、既存のMillingやCrushing等の方法では微細粒子を得難く、有機溶媒を利用したEmulsion法を多く利用する。しかしながら、この工程も亦残余有機溶媒及び多量の廢有機溶媒及び廃水を発生させるばかりでなく、大量生産に適した工程の開発が前提されなければならない問題点等を抱えている。
【0005】
超臨界流体を利用して高圧における抽出後減圧させることにより、粒子を製造する方法がHanny and Hogarthにより知られ、最近再び超臨界流体技術に対する関心が急激に増加している(Hannay, J. B. Hogarth, J. Proc. Roy. Sec. London. 1879, 29, 324)。超臨界流体を使用する場合、既存の方法では得難い狭い粒子の大きさの分布図を有するMicronやSubmicron大の粒子を残余溶媒無しで製造することができ、さらに、大きさがより小さいNano大の粒子製造も可能である。
【0006】
しかしながら、実際的に超臨界流体を利用して蛋白質を成功的にナノ大の均一な粒子に製造した事例は殆どない。
【0007】
本明細書の全体に亙り多数の引用文献及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された文献及び特許の開示内容はその全体として本明細書に参照として挿入され、本発明が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は蛋白質医薬(protein drug)の経肺用製剤及び経口用製剤の製造を可能ならしめる微細粒子化装置及び方法を開発しようと鋭意研究努力した結果、物理化学的物性が均一なナノ大の均一な蛋白質粒子化を可能にする超臨界流体工程に基(based)づいた微細粒子化用装置及び方法を開発することにより、本発明を完成するに至った。
【0009】
従って、本発明の目的は蛋白質微細粒子化用装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は蛋白質微細粒子化方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的及び利点は下記発明の詳細な説明、請求範囲及び図面によりさらに明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、本発明は下記を含む蛋白質微細粒子化用装置を提供する:(a)超臨界流体供給手段(1);(b)蛋白質溶液供給手段(2);(c)前記超臨界流体と前記蛋白質溶液を一つの空間に収容して蛋白質微細粒子を生成し、その下段部分(362)にテーパー状を有する沈殿槽(36);さらに、(d)前記超臨界流体供給手段(1)及び蛋白質溶液供給手段(2)に連結されていて、超臨界流体を噴射する外側ノズル(351)及び蛋白質溶液を噴射する内側ノズル(352)からなされている同軸構造(coaxial arrangement)を有する噴射ノズル(35)、前記内側ノズル(352)の出口末端は外側ノズル(351)の出口末端より、沈殿槽(36)内部にさらに突出されており、前記超臨界流体と蛋白質溶液の接触は前記沈殿僧(36)内部においてなされる。
【0013】
本発明の蛋白質微細粒子化用装置により、微細粒子化し得る蛋白質は制限されず、好ましくはホルモン、ホルモン類似体、酵素、酵素阻害剤、信号伝達蛋白質又はその一部分、抗体又はその一部分、短鎖抗体、結合蛋白質又は結合ドメイン、抗原、付着蛋白質、構造蛋白質、調節蛋白質、毒素蛋白質、サイトカイン、転写調節因子、血液凝固因子及び植物生体防御誘導蛋白質で構成された群より選ばれる。さらに、本明細書における用語“蛋白質”とは、ペプチド結合からなる分子、例えば、オリゴペプチド及びポリペプチドを含むものと解釈される。
【0014】
最も好ましくは、本発明の蛋白質微細粒子化用装置は人間成長ホルモンの微細粒子化に適用される。
【0015】
本発明の装置は超臨界流体技術の中でSEDS(solution enhanced dispersion by supercritical fluids)方法を具現する為に作製されたものである。SEDS技術は同軸構造のノズルを通じて蛋白質溶液と超臨界流体を沈殿槽の中に注入及び混合させ、蛋白質溶液の過飽和を誘導することにより、蛋白質を微細粒子化する技術である(J. Jung, M. et al., Particle Design using Fluids: Literature and Patent Survey, J. Supercrit. Fluids, 20:179-219(2001))。
【0016】
本発明の装置で利用される超臨界流体は、好ましくは、二酸化炭素、エタン、エチレン、プロパン、サルファヘキサフルオライト、ニトラスオキサイド、クロロトリフルオロメタン、モノフルオロメタン、ゼノン及びその組合わせから構成された群より選ばれ、最も好ましくは二酸化炭素である。
【0017】
本発明の装置において利用される蛋白質溶液は、好ましくは、蛋白質を水、エタノール、メタノール、DMSO(dimethylsulfoxide)、イソプロパノール、アセトン、THF(tetrahydrofuran)、酢酸、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、N,N-ジメチルアニリン及びその組合わせで構成された群より選ばれる溶媒に溶解させ、製造されたものである。より好ましくは、蛋白質溶液は蛋白質を水とエタノールの混合物に溶解させて製造されたものであり、最も好ましくは、塩(最も好ましくは、NaPO4)又は塩とEDTAが溶解されている緩衝水溶液とエタノールの混合溶液を利用して蛋白質溶液を作る。
【0018】
本発明の好ましい具現例によれば、沈殿槽(36)の上段部分(361)の径は下段部分(362)の末端の径より1.2〜1.5倍大きく、より好ましくは約1.3倍大きい。このような形態の沈殿槽(36)は出口側が流線型に狭くなる形態を有するようになり、このような形態は生成された蛋白質微細粒子等が沈殿槽(36)に付着するのを最小化させる利点を有する。
【0019】
本発明の好ましい具現例に依れば、沈殿槽(36)の上段部分(361)の長さは下段部分(362)の長さより10-18倍大きく、より好ましくは13-17倍大きく、最も好ましくは約15.7倍大きい。
【0020】
本発明の好ましい具現例によれば、前記同軸構造を有する噴射ノズル(35)の外側ノズル(351)の径は、前記内側ノズル(352)の径より3-6倍大きく、より好ましくは3-5倍大きく、最も好ましくは約4.3倍大きい。
【0021】
本発明の好ましい具現例によれば、前記外側ノズル(351)は、その全長に対して径の変化がない。外側ノズル(351)とは異なり、内側ノズル(352)は、好ましくは、その出口末端にテーパー状を有する。つまり、内側ノズル(352)の出口末端は沈殿槽(36)方向に下がる程、径が連続的に小さくなる形状を有する。このような内側ノズル(352)のテーパー形状は、蛋白質溶液の噴射直前と直後の圧力差を極大化して噴射される蛋白質溶液のdroplet等を一層微細にし、噴射角をさらに広める効果があって、蛋白質溶液のdroplet等と超臨界流体間の物質伝達効果を増大させることにより、より微細な蛋白質粒子を製造し得る長点を有する。
【0022】
本発明の好ましい具現例によれば、前記内側ノズル(352)の上段部分の径は出口末端の径より、2-4倍大きく、より好ましくは約3.3倍大きい。
【0023】
本発明の蛋白質微細粒子化装置の独特な特徴の一つは、前記内側ノズル(352)の出口末端は外側ノズル(351)の出口末端より沈殿槽(36)内部にさらに突出されていることである。このような突出configurationにより、蛋白質噴射ノズル(つまり内側ノズル)が超臨界流体ノズル(外側ノズル)の前に在するようになり、蛋白質溶液のFlowが超臨界流体、つまり、二酸化炭素のFlowより遅れて同軸ノズルを抜出すことにより、先に出てくる二酸化炭素の噴射効果により、蛋白質溶液のJet breakupが早く起こることにより、より効果的に噴射される。従って、より短時間内により小さい粒子で噴射され、より効率的に物質交換がなされて、より微細でありながら均一な物理化学的性質を有する粒子の獲得が可能である。さらに、このような内側ノズル(352)の突出configurationにより、初期生成される蛋白質溶液のdroplet等が互いにぶっつからないようにして、蛋白質溶液の小さいdroplet等が超臨界流体(例えば、二酸化炭素)と交換される過程(つまり、蛋白質溶液での溶媒は超臨界流体側に拡散されて入り、超臨界流体は蛋白質溶液側に拡散されて入る過程)でdropletの形態が良く維持され、径が小さい粒子等をより多く効果的に生成できるようにする。
本発明の好ましい具現例によれば、内側ノズル(352)の出口末端は外側ノズル(351)の出口末端より1-10mm、より好ましくは1-5mm、より一層好ましくは1-3mm、最も好ましくは約1.5mm長く沈殿槽(36)内部に突出している。
本発明の好ましい具現例によれば、蛋白質微細粒子用装置は前記沈殿槽(36)に連結された粒子収集装置(4)を追加的に含む。粒子収集装置(4)はスクリーニング装置(41)及び粒子コレクター(42)を含む。本発明の装置により生成された微細粒子等は、概ねナノ大の粒子等であるものの、ミクロン大の粒子等も共存する。従って、このようなミクロン大の粒子等は効果的にfiltering outする為に、スクリーニング装置(41)が沈殿槽(36)に連結される。スクリーニング装置(41)を通過した微細粒子flowは粒子コレクター装置(42)に送られ、ここでナノ大の均一な粒子等が収集される。スクリーニング装置(41)には、所定の洞空大を有するフィルター(411、例えば、金属フリット)が装着されていて、このフィルターの洞空の大きさは好ましくは5-40μm、5-30μm、より好ましくは10-25μm、最も好ましくは約20μmである。粒子コレクター(42)には所定の洞空の大きさを有するフィルター(422、例えば、金属フリット)が装着されていて、このフィルターの洞空の大きさは、0.1-1μm、より好ましくは0.1-0.6μm、最も好ましくは0.2μmである。
【0024】
粒子コレクター(42)を通過した溶液は超臨界流体と蛋白質を溶解する為に、使用された溶媒に分離され、前記溶媒は排出溶液収集装置(5)に収集される。粒子コレクター(42)を通過した超臨界流体は、リサイクリングされるか又は気体として大気中に放出される。
【0025】
圧力の増加と比例して超臨界流体、例えば、二酸化炭素の密度が増加するようになり、従って、単位嵩当り受容できる蛋白質溶液の溶媒、例えば、エタノールと水中に二酸化炭素がより早く拡散されて、噴射により生成された小さい水滴等の中の溶質(例えば、人間成長ホルモン)がより早めに過飽和状態になり得る。過飽和過程が早く起こると、水滴の中の結晶液がより多く生成できる。しかしながら、圧力の変化にも拘らず生成された微細粒子の大きさが微々たる変化を示すのは、高圧力の超臨界流体、例えば、二酸化炭素内に噴射がなされ、水滴の表面積が減少する傾向が現れることもあって、これは超臨界流体、例えば、二酸化炭素と水滴内の溶媒、例えば、エタノールと水成分が交換される表面積を減少させる。さらに、生成された粒子と粒子間の凝集を引き起こし得る。従って、圧力を増加させると超臨界二酸化炭素と溶媒との物質交換量が増加する反面、物質交換が起こる表面積が減少する短所を有するようになる。従って、適切な超臨界流体の圧力を決定するのは、蛋白質の微細粒子化に重要な要素となる。
【0026】
本発明の好ましい具現例によれば、前記超臨界流体(特に、二酸化炭素)の圧力は90-130barである。圧力を90bar未満で使用する場合、超臨界相が壊れる恐れがあり、圧力を130bar以上に加える場合、蛋白質の構造変化に影響を与える恐れがある。より好ましくは、超臨界流体(特に、二酸化炭素)の圧力は約90-100bar、最も好ましくは約90barである。
【0027】
蛋白質微細粒子製造の際、噴射された蛋白質溶液の小さい水滴等の表面張力は温度に反比例するようになる。温度が増加すると、噴射された水滴の表面張力は減少し、超臨界流体が容易に水滴の中に浸透し、従って、小さい水滴等の中にある蛋白質溶液の溶媒成分と超臨界流体が交換される過程がより容易になるであろう。しかしながら、温度が高過ぎる場合、蛋白質粒子等が互いに絡み合うAggregationが容易に発生することができ、さらに、一定圧力下で温度の増加は超臨界流体の密度を減少させることにより、噴射により生成された小さい水滴等の中の溶質(例えば、人間成長ホルモン)の過飽和速度を減少させ、生成される粒子の大きさは増加するようになる問題点がある。従って、適切な沈殿槽の温度(超臨界流体の温度)を決定するのは、蛋白質の微細粒子化に重要な要素となる。
【0028】
本発明の好ましい具現例によれば、前記沈殿槽(36)内の温度、つまり、超臨界流体の温度は、好ましくは35℃-45℃、より好ましくは38℃-42℃、最も好ましくは約40℃である。
【0029】
微細粒子製造の際、噴射された蛋白質溶液の小さい水滴等の中にある溶媒成分が超臨界流体と交換される過程を経由するようになる時、小さい水滴の中で蛋白質は核を形成するようになる。この際、蛋白質溶液の濃度が低いと、結晶核生成が遅く起こり、形成された結晶核周囲に蛋白質が凝集するようになり、生成される粒子の大きさは大きくなる。一方、蛋白質溶液の濃度が高いと、結晶核が早くかつ多く生成され、生成された結晶核等が互いに結合して初期に生成された結晶核の数を減少させ、粒子の大きさは大きくなる問題点がある。従って、適切な蛋白質溶液の濃度を決定するのは、蛋白質の微細粒子化に重要な要素となる。
【0030】
本発明の好ましい具現例によれば、前記蛋白質溶液の濃度は10-300mg/L、より好ましくは20-150mg/L、よりさらに好ましくは20-35mg/L、さらに一層好ましくは20-26mg/L、最も好ましくは約24.4mg/Lである。
【0031】
本発明の好ましい具現例によれば、前記超臨界流体供給手段(1)により、生成された超臨界流体の流速対前記蛋白質溶液供給手段(2)により、生成された蛋白質溶液の流速の比は50:1-120:1、より好ましくは75:1-110:1、最も好ましくは約100:1である。
【0032】
本発明の好ましい具現例によれば、前記超臨界流体供給手段(1)により、生成された超臨界流体の流速は10-40ml/min、より好ましくは20-30ml/min、最も好ましくは約30ml/minである。
【0033】
本発明の好ましい具現例によれば、前記蛋白質溶液供給手段(2)により生成された蛋白質溶液の流速は0.2-0.8ml/min、より好ましくは0.3-0.5ml/min、最も好ましくは約0.3ml/minである。
【0034】
本発明の蛋白質微細粒子化用装置により、微細粒子化された蛋白質粒子の平均大きさはナノ大であり、好ましくは30-60nm、より好ましくは35-55nm、最も好ましくは約45nmである。
【0035】
本発明の微細粒子用装置の長所は、ナノ大の均一な蛋白質粒子を得られるということである。本発明の微細粒子用装置により微細粒子化された蛋白質粒子の大きさは35-55nm間で70%以上の大きさ分布、好ましくは80%以上の大きさ分布、より好ましくは90%以上の大きさ分布を示す。
【0036】
本発明の蛋白質微細粒子化用装置は特に人間の成長ホルモンの微細粒子化に有用に利用できる。本発明の好ましい具現例によれば、前記蛋白質は人間の成長ホルモンであって、前記超臨界流体は二酸化炭素であり、前記蛋白質溶液は人間成長ホルモンを水とエタノールの混合物に溶解させ製造されたものである。
【0037】
本発明の蛋白質微細粒子化用装置が人間成長ホルモンの微細粒子化に適用される場合、人間成長ホルモンの微細粒子化用装置に対する説明(description)は上述した蛋白質微細粒子化用装置に対する説明が適用される。例えば、沈殿槽(36)の構造と形状、外側ノズル(351)と内側ノズル(352) の構造と形状、超臨界流体の圧力と温度、蛋白質溶液の濃度、超臨界流体と蛋白質溶液の流速、さらに、最終産物の粒子の大きさ等は上述した蛋白質微細粒子化用装置に対する説明が人間成長ホルモンの微細粒子化用装置にそのまま適用される。
【0038】
本発明の他の態様によれば、本発明は(i)蛋白質溶液と超臨界流体を同軸構造を有する噴射ノズルを介して沈殿槽内部に噴射注入して前記蛋白質溶液と超臨界流体が混合するようにする段階;及び(ii)前記蛋白質溶液から沈殿され、形成された蛋白質微細粒子を拾得する段階を含み、前記超臨界流体は二酸化炭素であり、前記超臨界流体の圧力は90-130barであり、前記沈殿槽内の温度は35℃-45℃に維持され、前記蛋白質溶液の濃度は10-300mg/Lであることを特徴とする蛋白質微細粒子化方法を提供する。
【0039】
本発明の方法に対する説明は、上述した蛋白質微細粒子化用装置に対する説明が適用され、共通した内容は繰返し記載による本明細書の過度な複雑性を避ける為に省略する。
【0040】
例えば、適用される蛋白質の種類、蛋白質溶液の溶媒、超臨界流体の圧力と温度、蛋白質溶液の濃度、超臨界流体と蛋白質溶液の流速、さらに、最終的に生成される蛋白質粒子の大きさに対する説明は上述した蛋白質微細粒子化用装置に対する説明がそのまま適用される。
【0041】
本発明の好ましい具現例によれば、前記段階(i)で蛋白質溶液は同軸構造を有する噴射ノズルの内側ノズルを介して、超臨界流体は外側ノズルを介して噴射注入され、前記内側ノズルの出口末端は外側ノズルの出口末端よりも沈殿槽内部にさらに突出されている。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、蛋白質(特に、人間成長ホルモン)粒子の大きさを既存より顕著で均一に小さく製造することができ、蛋白質(特に、人間成長ホルモン)の経肺用製剤化を可能にする。一般的に、吸込みを通じて肺胞に達する為には、粒子の径が5μm以下でなければならず、さらに、肺胞に達した粒子が肺胞に止まる為には、粒子の径が1μm以上でなければならないと知られている。しかしながら、本発明者等の知識によれば(to our best knowledge)、前記経肺剤に対する粒子の大きさの要求は皮相的な観察に過ぎず、実際には吸込み後一定時間息を堪えることにより、1μm以下のナノ粒子等が肺胞に残る割合を著しく高め得る。さらに、蛋白質医薬をナノ粒子化すれば、薬物伝達効率と生体利用率を高めることができる。蛋白質医薬を大きい粒子に製剤化する場合には、完全溶解に要する時間が長く、免疫体系により除去されるか又は、抗体を生成させるか、若しくは残存粒子による副作用の確率が高くなることもあり得る。従って、蛋白質医薬のナノ粒子を経肺剤として使用するのが遥かに好ましい。
【0043】
さらに、本発明によれば、注射剤用蛋白質(特に、人間成長ホルモン)粉末の凍結乾燥の際、蛋白質の量が約15倍が添加される賦形剤を使用しなくとも、蛋白質固有の生物学的活性を保有する小嵩内の高濃度の蛋白質微細粒子粉末を製造することができて、蛋白質医薬(protein drug)の経口用製剤の開発を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、実施例を介して本発明をより詳細に説明する。これら実施例はひたすら本発明をより具体的に説明する為のものにして、本発明の要旨により本発明の範囲がこれら実施例により制限されないということは本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者において明らかなことであろう。
【実施例】
【0045】
実施例I:蛋白質微細粒子化装置の構築
超臨界流体を利用した蛋白質の微細粒子化の為、SEDS(solution enhanced dispersion by supercritical fluids)を最適の条件で実現できる装置を開発した。装置の概略図は図1aに示してある。
【0046】
この蛋白質微細粒子化装置は、供給部(Feeding part)、沈殿部(Precipitation part)及び粒子収集部(Particle collection unit)等の3部分に大別できる。
【0047】
供給部は超臨界流体供給手段(1)及び蛋白質溶液供給手段(2)を含む。超臨界流体供給手段(1)は、二酸化炭素シリンダー(11)、冷却循環器(12)及び液体二酸化炭素を移動し得るHigh pressure liquid pump(13) (model: NS-500, Nihon Seimitsu, Japan)を含む。二酸化炭素シリンダー(11)は、超臨界流体を維持する為の温度及び圧力条件を満足しながら一定量の二酸化炭素を受容する。二酸化炭素シリンダーの出口には二酸化炭素を引出す為のバルブが設置されている。冷却循環器(12)は二酸化炭素シリンダー(11)内の液体二酸化炭素がポンプ(13)に移動する過程で気体に変えてポンプのポンピングを妨げる現象を防止する。冷却循環器(12)が付着されたHigh pressure liquid pump(13)は高圧の液体状態の二酸化炭素が沈殿槽(36)に移送されるようにする。
【0048】
蛋白質溶液供給手段(2)は、hGH溶液が入れてある蛋白質溶液容器(21)と溶液を押してくれるHPLC pump(22)(model: SYSTEM GOLD Programmable Solvent Module 126, Beckman, USA)からなっている。HPLC pumpはhGH溶液が高圧で沈殿槽(36)内に噴射されるようにする。
【0049】
沈殿装置(3)は、再び液体二酸化炭素を望む超臨界流体状態に変換させる装置と、超臨界流体と溶液が混合され溶質の過飽和を誘発させる装置とに分けられる。沈殿装置(3)は熱交換器(31)を含む。熱交換器はHigh pressure liquid pump(13)と沈殿槽(36)間に位置し、ポンピングされた高圧二酸化炭素に所定の熱を加えて超臨界流体が形成されるようにする。沈殿装置(3)は0.1K範囲に温度が調節できるOven(32)(JASCO CO-95)、全体システムの圧力が測定できる圧力ゲージ(33)及びシステム全体の圧力が調節できるBack Pressure Regulator(34)(JASCO 880-81 BPR)を含む。
【0050】
溶質の過飽和を誘発させる装置は同軸ノズル(35)及び沈殿槽(36)(JASCO、Japan)からなされている。同軸ノズル(35)は本発明者等により、特別に作製されたものを使用した(参照:図1b)。同軸ノズル(35)の外側ノズル(351)の内径は2.13mmである。同軸ノズル(35)の内側ノズル(352)は出口末端にテーパー形状を有し、内側ノズルの上段部分の内径は0.50mmで、出口末端の内径は0.15mmである。前記内側ノズルの出口末端は外側ノズルの出口末端よりも沈殿槽内部に1.5mmさらに突出されている構造を有する。
【0051】
沈殿槽(36)は出口側(つまり、下段部分)が流線型に狭くなる形態を有している(参照:図1c)。このような形態は生成された微細粒子等が反応器にこびりつくのを最小化してくれた。沈殿槽の上段部分は内径が20mmであり、下段部分の内径は15mmである。沈殿槽の上段部分の長さは235mmであり、下段部分の長さは15mmである。このような沈殿反応器の内部容積は約80mLである。
粒子収集部(4)は大きい粒子等を効果的にfiltering outする為のスクリーニング装置(41)と均一な粒子が収集できる粒子コレクター(42)でなされている。スクリーニング装置(41)には20μmの洞空の大きさを有する金属frit(411)が装着されている(参照:図1d)。粒子コレクターには0.2μmの洞空の大きさを有する金属frit(422)が装着されていて、超臨界溶液により過飽和された溶質により生成された微細粒子を分離する。
粒子コレクター(42)を通過した溶液は、超臨界流体と蛋白質を溶解する為に使用された溶媒に分離され、前記溶媒は排出溶液収集装置(5)に収集される。粒子コレクター(42)を通過した超臨界流体は、リサイクリングされるか又は気体として大気中に放出される。
【0052】
実施例II:蛋白質微細粒子化装置を利用したhGHの微細粒子製造
超臨界流体を利用した微細粒子製造は、試料(hGH)溶液を沈殿槽内の高圧の超臨界二酸化炭素の中に噴射させることを介してなされる。
【0053】
超臨界流体をco-axial Nozzleの外側ノズルを介して沈殿槽の中に連続的に流し込む。試料(hGH)が溶解されている緩衝溶液(5-20mM NaPO4又は5-20mM NaPO4と1mM EDTA)と、エタノールの混合溶液を内側ノズルを介して外側ノズルの超臨界二酸化炭素と同時に噴射、注入され、この際、極めて小さい液滴(水滴、droplet)形態が形成される。
【0054】
このように微細な液滴で溶液を噴射すると、溶液と超臨界流体間に極めて広い界面が形成され、物質伝達効果は大きくなる。広く形成された界面から溶媒は超臨界流体側に、超臨界流体は溶液内部に拡散され、極めて早い瞬間高い過飽和を誘発して溶液に溶解されていた対象試料(hGH)は、微細粒子として再結晶をなす。
【0055】
実験過程は先ず、hGHをエタノールと水の混合溶液に溶解させ、望む濃度のhGH溶液を準備した。二酸化炭素の臨界温度以上の温度と圧力を設定し、液体二酸化炭素をHigh pressure liquid pump(13)を利用してco-axial Nozzle(35)の外側ノズル(351)を介してPrecipitator(36)内に注入した。本発明の装置が安定すると、準備されたhGH溶液をHPLC pump(22)を利用してco-axial Nozzleの内側ノズル(352)を介してPrecipitator(36)内に噴射させ、hGHを結晶化した。噴射が完了すると、結晶に残存し得る溶媒を除去する為に、超臨界二酸化炭素を1時間程さらに流して結晶を洗滌した。洗滌過程が終われば、本発明の装置でParticle collector(4)を分離して、生成された微細粒子を収去し、FE-SEMを利用して粒子の大きさと分布を観測した。
【0056】
生成される微細粒子等は、超臨界流体の温度と圧力、流速、hGH溶液の濃度等の種々の変数等により、大きさと模様等が決定されるので、超臨界流体を利用したhGH蛋白質微細粒子製造において最も最適な条件を決定した。
【0057】
超臨界流体を利用したhGHのナノ粒子化実験は一般的に使用される二酸化炭素(purity 99.9%)を超臨界流体として使用し、hGHはRegeron, Inc.(South Korea)より供給を受けた。Ethanol(HPLC grade, purity 99.9%)とH2O(HPLC grade, purity 99.9%)はAldrich (Milwaukee, WI)より購入して使用した。
【0058】
実施例III:超臨界流体圧力変数に伴う微細粒子の大きさ変化
超臨界二酸化炭素の密度は、圧力に極めて敏感に変化される。一般的に、圧力が高くなると、超臨界流体二酸化炭素の密度は高くなる。微細粒子製造の際、噴射された小さい水滴等の中にあるエタノールと水の成分は、超臨界二酸化炭素と交換される過程を経るようになる。この際、超臨界二酸化炭素の密度は極めて重要な役割をするようになる。
【0059】
圧力の増加と比例して超臨界二酸化炭素の密度が増加するようになり、従って、単位嵩当り受容できるエタノールと水の量が増加するようになり、噴射により生成された小さい水滴等の中の溶質(hGH)がより早い過飽和が誘発される。過飽和過程が早く行われると、水滴内の結晶核がより多く生成できるものの、圧力変化により生成された微細粒子の大きさが微々たる変化を表すのは、高圧力の超臨界二酸化炭素内に噴射がなされ、水滴の表面積が減少する傾向が表れることもあって、これは超臨界流体二酸化炭素と水滴内のエタノールと水の成分が交換される表面積を減少させる。さらに、生成された粒子と粒子間の凝集を引起こし得る。従って、圧力を増加させると超臨界二酸化炭素と溶媒との物質交換の量が増加する反面、物質交換が行われる表面積を減少させる両面性を有するようになる。
【0060】
本実験では、超臨界二酸化炭素の圧力を90bar、100bar、120bar、130barに変化させた結果、圧力に伴う生成される粒子の大きさをFE-SEMで分析してその結果を表1に表わした。圧力を90bar以下で使用する場合、超臨界相が壊れる虞があって、圧力を130bar以上に加える場合、蛋白質の構造変化に影響を及ぼす虞があって、これ以上の実験を進めなかった。
【0061】
臨界圧力付近における圧力の変化に伴う密度の変化量は大きく、従って、より低い圧力において高い密度の超臨界二酸化炭素を使用した結果、表1の実験1での通り小さい大きさの微細粒子を得て、さらに、2bのように狭い粒子分布を示した。FE-SEMで観測した結果を図2aに示した。
【0062】
臨界圧力付近を脱すると、圧力の変化に伴う密度の変化量は漸次減少するようになる。しかしながら、圧力の増加に伴う表面積の減少は密度増加に伴う溶解力の増加より効果が小さいであろう。従って、生成された粒子の大きさは実験2の通り、若干増加はするが、実験3と実験4で見せてくれるように微々たるものの、少しずつ減少するであろう。実験例3に対するFE-SEM分析結果を図2cに示した。
【0063】
【表1】

【0064】
実施例IV:超臨界流体温度変数に伴う微細粒子の大きさ変化
本実験では超臨界二酸化炭素の温度を40℃、50℃、60℃、70℃に変化させた結果、温度に伴う生成される粒子の大きさをFE-SEMで分析してその結果を表2に表した。
【0065】
超臨界二酸化炭素の温度変数の変化は、生成される粒子の大きさに大きな影響を及ぼすようになる。このような理由は微細粒子製造の際、噴射された小さい水滴等の表面張力は温度に反比例するようになる。温度が増加すれば、噴射された水滴の表面張力は減少して超臨界二酸化炭素が容易に水滴内に浸透し、従って、小さい水滴等の中にあるエタノールと水の成分と超臨界二酸化炭素と交換される過程がより容易になるであろう。
【0066】
しかしながら、温度が高すぎる場合、蛋白質粒子等が互いに絡み合うAggregationが容易に起こることもあり、さらに、一定圧力下で温度の増加は超臨界二酸化炭素の密度を減少させるので、噴射により生成された小さい水滴等中の溶質(hGH)の過飽和速度を減少させて生成される粒子の大きさは増加するようになる。
【0067】
表2の実験6と実験8のFE-SEMで分析した結果を察すれば、Aggregationが起こらない実験6のFE-SEMイメージである図3aと、Aggregationが起こらない実験8のFE-SEMイメージである図3bが観測できる。
【0068】
【表2】

【0069】
実施例V:蛋白質溶液濃度変数に伴う微細粒子の大きさ変化
超臨界流体を利用してhGH蛋白質の微細粒子を製造するにおいて、蛋白質溶液の濃度は重要な変数として作用する。
【0070】
これは、微細粒子製造の際、噴射された小さい水滴等の中にあるエタノールと水の成分が超臨界二酸化炭素と交換される過程を経る時、小さい水滴の中でhGHは核を形成するようになる。この際、hGH蛋白質の濃度が薄いと、結晶核生成が遅く起こるであろうし、形成された結晶核周囲にhGHは凝集するようになり、生成される粒子の大きさは大きくなる。さらに、hGH蛋白質の濃度が濃いと、結晶核が早く且つ多く生成され、生成された結晶核等が互いに結合して初期に生成された結晶核の数を減少させ、粒子の大きさは大きくなる。
【0071】
本実験で蛋白質溶液の濃度を12.2mg/L、24.4mg/L、48.8mg/mL、97.6mg/Lに変化させた結果、生成される粒子の大きさをFE-SEMで分析してその結果を表3に表した。
【0072】
hGH蛋白質の濃度が12.2mg/Lから24.4mg/Lに増加するに従い、生成されるhGH微細粒子の大きさが小さくなることが見られ、24.4mg/L以上にhGHの濃度を増加させると、生成されるhGH微細粒子の大きさが再び大きくなることが見られた。これはhGHの濃度が24.4mg/Lから最も好ましい速度で結晶核が生成されることが分かる。hGHの濃度を24.4mg/Lに設定して実験した実験10のFE-SEMで分析した写真を図4に示している。

【0073】
【表3】

【0074】
実施例VI:微細粒子化されたhGHの分析
本発明により前記実施例で製造されたhGH微細粒子の変形可否及び活性を分析した。hGH微細粒子粉末を30mM NaPO4 pH8.0に再溶解して、溶解されたhGHをHPLC(Shimadzu, 溶媒は0.1% TFA in acetonitrile:0.1% TFA in H2O, columeはC-18 Waters)で分析した。
【0075】
図5a-5bで見られるように、Retention time 15.5min付近のNIBSC標準人間成長ホルモンpeakと、本発明のhGHのpeakを比較すれば、本発明により微細粒子化されたhGHが大部分変形されていないことが分かる。本発明のhGH peakの前に瘤のように現れた小さいpeakはhGH試料溶液の保管中deamidationされたhGHであると推定される。本発明により微細粒子化されたhGHの活性をmouse Nb2細胞株を利用して分析した。Nb2ノーブルラットリンパ腫細胞株(noble rat lymphoma cell line, NIBSC ECACC #97041101)1x105細胞/ml 50μlがある96-ウェルプレートウェルにstandard hGH(標準人間成長ホルモン、Standard human growth hormone, NIBSC code 98/574)、本発明により、微細粒子化されたhGH(sample hGH)を添加した。5日間37℃、5%CO2で培養し、増殖された細胞の量をMTTを利用して測定した。
【0076】
図5cで見られる通り、NIBSC標準hGHと比較した場合、本発明のhGHは標準hGHの95%以上に相当する生物学的活性を表し、hGH固有の活性を殆どそのまま保有していることが分かる。
【0077】
さらに、本発明により微細粒子化されたhGH粒子は、最終粒子の大きさにより溶解度と生物学的活性が大きく影響を受けるものの、その結果を表4に表す。表4で実験13は圧力100bar、40℃、二酸化炭素流速30ml/min、試料溶液流速0.3ml/min及び試料hGH濃度0.018mg/mlの条件で実施されたものであって、実験14は圧力100bar、40℃、二酸化炭素流速30ml/min、試料溶液流速0.3ml/min、試料hGH濃度0.024mg/ml、実験15は圧力100bar、40℃、二酸化炭素流速40ml/min、試料溶液流速0.5ml/min、試料hGH濃度0.018mg/mlの条件で実施されたものである。
粒子の大きさが小さい程溶解度と生物学的活性が高く表れ、特に、55nm粒子の大きさでは97.7%の生物学的活性を表わした。

【0078】
【表4】

【0079】
以上で詳細に説明した通り、本発明は蛋白質微細粒子化用装置を提供する。さらに、本発明は蛋白質微細粒子化方法を提供する。本発明によれば、蛋白質(特に、人間成長ホルモン)粒子の大きさを既存より著しく均一に小さく製造することができて、蛋白質(特に、人間成長ホルモン)の経肺用製剤化を可能にする。さらに、本発明によれば、注射剤用蛋白質(特に、人間成長ホルモン)粉末の凍結乾燥の際、蛋白質の量の約15倍が添加される賦形剤を使用しなくとも、蛋白質固有の生物学的活性をそのまま、保有し得る小嵩内の高濃度の蛋白質微細粒子粉末が製造でき、蛋白質医薬(protein drug)の経口用製剤の開発を可能にする。のみならず、超臨界工程を利用してこのように製造された人間成長ホルモン粉末は、個別粒子がナノ大を維持しながらも最終含有水分の濃度(0.3%以下)を通常の凍結乾燥した粉末の水分の量(0.3%-10%)よりも、はるかに低め得るので、より長期間の保管が可能である。
【0080】
以上で本発明の特定した部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者において、このような具体的な技術は単に好ましい具体例であるのみで、ここに、本発明の範囲が制限されるものでない点は明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とその等価物により定義されると言い得る。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1a】本発明の微細粒子化用装置の具体的な一実施例を示す概略図である。図1aで1、2、3、4及び5は、それぞれ超臨界流体供給手段、蛋白質溶液供給手段、沈殿装置、粒子収集装置及び排出溶液収集装置を示す。11、12及び13は二酸化炭素シリンダー、冷却循環器及びHigh pressure liquid pumpをそれぞれ示す。21、22及び23は蛋白質溶液容器、HPLCポンプ及びバルブをそれぞれ示す。31、32、33、34、35及び36は、熱交換器、天火、圧力ゲージ、Back Pressure Regulator、同軸噴射ノズル及び沈殿槽をそれぞれ示す。41及び42はそれぞれスクリーニング装置及び粒子コレクターを示し、411及び422はmetal fritを示す。
【図1b】本発明の微細粒子化用装置にある同軸ノズルに対する詳細図である。351及び352はそれぞれ外側ノズル及び内側ノズルをそれぞれ示す。
【図1c】本発明の微細粒子化用装置にある沈殿槽に対する詳細図である。361及び362はそれぞれ沈殿槽の上段部分及び下段部分を示す。
【図1d】本発明の微細粒子化用装置にあるスクリーニング装置に対する詳細図である。
【図2a】実施例IIIの実験1の条件により、生成された人間成長ホルモン(hGH)微細粒子に対するFE-SEMイメージである。
【図2b】実施例IIIの実験1の条件により、生成されたhGH微細粒子に対する大きさ分布グラフである。y-軸は粒子収集装置に収集された全体の粒子量対比一定大きさの粒子量の割合を%で示すしたものである。
【図2c】は実施例IIIの実験3の条件により、生成されたhGH微細粒子に対するFE-SEMイメージである。
【図3a】実施例IVの実験6の条件により、生成されたhGH微細粒子に対するFE-SEMイメージである。
【図3b】実施例IVの実験8の条件により、生成されたhGH微細粒子に対するFE-SEMイメージである。
【図4】実施例Vの実験10の条件により、生成されたhGH微細粒子に対するFE-SEMイメージである。
【図5a】本発明に伴うNIBSC標準hGH(図5a)に対するHPLC分析結果ピークである。x-軸はretention time(min)を示し、y-軸はUV absorption intensityを示す。
【図5b】本発明に伴うhGH微細粒子(図5b)に対するHPLC分析結果ピークである。x-軸はretention time(min)を示し、y-軸はUV absorption intensityを示す。
【図5c】本発明に伴うhGH微細粒子及びNIBSC標準hGHに対する生物学的活性を分析した結果を示したグラフである。x-軸はhGH濃度(ng/ml)のlog値を示し、y-軸はcontrol mediumで成長した細胞の数に対比したhGHを含むmediumで成長した細胞数の値の%[(hGH-含有培養液で成長した細胞の数/hGHだけが無い培養液で成長した細胞の数)×100]を示す。“Submicronized hGH”は本発明により製造されたhGH微細粒子を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白質微細粒子化用装置であって、
(a)超臨界流体供給手段、
(b)蛋白質溶液供給手段、
(c)前記超臨界流体と前記蛋白質溶液を一つの空間に受容して蛋白質微細粒子を生成し、その下段部分にテーパー状を有する沈殿槽、及び、
(d)前記超臨界流体供給手段及び蛋白質溶液供給手段に連結されており、超臨界流体を噴射する外側ノズル及び蛋白質溶液を噴射する内側ノズルからなる同軸構造(coaxial arrangement)を有する噴射ノズル、を含み、
前記内側ノズルの出口末端は外側ノズルの出口末端より沈殿槽内部にさらに突出されており、前記超臨界流体と蛋白質溶液の接触が前記沈殿槽内部でなされる、
蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項2】
前記蛋白質はホルモン、ホルモン類似体、酵素、酵素阻害剤、信号伝達蛋白質又はその一部分、抗体又はその一部分、単鎖抗体、結合蛋白質又はその結合ドメイン、抗原、付着蛋白質、構造蛋白質、調節蛋白質、毒素蛋白質、サイトカイン、転写調節因子、血液凝固因子及び植物生体防御誘導蛋白質で構成された群より選ばれることを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項3】
前記蛋白質は人間成長ホルモンであることを特徴とする第2項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項4】
前記超臨界流体は二酸化炭素、エタン、エチレン、プロパン、サルファヘキサフルオライト、亜酸化窒素、クロロトリフルオロメタン、モノフルオロメタン、ゼノン及びその組合わせで構成された群より選ばれることを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項5】
前記超臨界流体は二酸化炭素であることを特徴とする第4項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項6】
前記蛋白質溶液は蛋白質を水、エタノール、メタノール、DMSO、イソプロパノール、アセトン、THF、酢酸、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、N,N−ジメチルアニリン及びその組合わせで構成された群より選ばれる溶媒に溶解させ製造されたことを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項7】
前記蛋白質溶液は蛋白質を水とエタノールの混合物に溶解させ製造されたことを特徴とする第6項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項8】
前記沈殿槽の上段部分の径は下段部分の末端の径よりも1.2−1.5倍大きいことを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項9】
前記沈殿槽の上段部分の長さは下段部分の長さよりも10−18倍大きいことを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。

【請求項10】
前記外側ノズルの径は前記内側ノズルの径よりも3−6倍大きいことを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項11】
前記外側ノズルはその全長に対して径の変化がないことを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項12】
前記内側ノズルはその出口末端にテーパー状を有することを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項13】
前記内側ノズルの上段部分の径は出口末端の径よりも2−4倍大きいことを特徴とする第12項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項14】
前記内側ノズルの出口末端は外側ノズルの出口末端よりも1−3mmが、より沈殿槽内部に突出していることを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項15】
前記蛋白質微細粒子用装置は前記沈殿槽に連結されており、5−40μmの洞空の大きさを有するフィルターが装着されたスクリーニング装置を追加的に含むことを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項16】
前記超臨界流体の圧力は90−130barであることを特徴とする第5項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項17】
前記超臨界流体の圧力は約90−100barであることを特徴とする第16項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項18】
前記沈殿槽内の温度は38℃−45℃に維持されることを特徴とする第5項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項19】
前記沈殿槽内の温度は約40℃に維持されることを特徴とする第18項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項20】
前記蛋白質溶液の濃度は10−300mg/Lであることを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項21】
前記蛋白質溶液の濃度は20−150mg/Lであることを特徴とする第20項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項22】
前記超臨界流体供給手段により生成された超臨界流体の流速対前記蛋白質溶液供給手段により生成された蛋白質溶液の流速の比は50:1−120:1であることを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項23】
前記超臨界流体供給手段により生成された超臨界流体の流速対前記蛋白質溶液供給手段により生成された蛋白質溶液の流速の比は75:1−110:1であることを特徴とする第22項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項24】
前記超臨界流体供給手段により生成された超臨界流体の流速は10−40ml/minであることを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項25】
前記超臨界流体供給手段により生成された超臨界流体の流速は20−30ml/minであることを特徴とする第24項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項26】
前記蛋白質溶液供給手段により生成された蛋白質溶液の流速は0.2−0.8ml/minであることを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項27】
前記蛋白質溶液供給手段により生成された蛋白質溶液の流速は0.3−0.5ml/minであることを特徴とする第26項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項28】
前記蛋白質微細粒子用装置により微細粒子化された蛋白質粒子の平均大きさは30−60nmであることを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項29】
前記蛋白質微細粒子用装置により微細粒子化された蛋白質粒子の大きさは35−55nm間で90%以上の分布を表すことを特徴とする第1項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項30】
前記蛋白質微細粒子用装置は、前記スクリーニング装置に連結されており、0.1−1μmの洞空の大きさを有するフィルターが装着された粒子コレクターを追加的に含むことを特徴とする第15項記載の蛋白質微細粒子化用装置。
【請求項31】
(i)蛋白質溶液と超臨界流体を同軸構造(coaxial arrangement)を有する噴射ノズルを介して沈殿槽内部に噴射注入して、前記蛋白質溶液と超臨界流体が混合されるようにする段階;及び(ii)前記蛋白質溶液から沈殿(precipitation)され形成された蛋白質微細粒子を収得する段階を含み、前記超臨界流体は二酸化炭素であり、前記超臨界流体の圧力は90−130barであり、前記沈殿槽内の温度は35℃−45℃に維持され、前記蛋白質溶液の濃度は10−300mg/Lであることを特徴とする蛋白質微細粒子化方法。
【請求項32】
前記蛋白質はホルモン、ホルモン類似体、酵素、酵素阻害剤、信号伝達蛋白質又はその一部分、抗体又はその一部分、単鎖抗体、結合蛋白質又はその結合ドメイン、抗原、付着蛋白質、構造蛋白質、調節蛋白質、毒素蛋白質、サイトカイン、転写調節因子、血液凝固因子及び植物生体防御誘導蛋白質で構成された群より選ばれることを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項33】
前記蛋白質は人間成長ホルモンであることを特徴とする第32項蛋記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項34】
前記蛋白質溶液は蛋白質を水、エタノール、メタノール、DMSO、イソプロパノール、アセトン、THF、酢酸、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、N,N−ジメチルアニリン及びその組合わせで構成された群より選ばれる溶媒に溶解させ製造されたことを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項35】
前記蛋白質溶液は蛋白質を水とエタノールの混合物に溶解させて製造されたことを特徴とする第34項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項36】
前記超臨界流体の圧力は90−100barであることを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項37】
前記沈殿槽内の温度は約40℃に維持されることを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項38】
前記蛋白質溶液の濃度は20−150mg/Lであることを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項39】
前記超臨界流体の流速対前記蛋白質溶液の流速の比は50:1−120:1であることを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項40】
前記超臨界流体の流速対前記蛋白質溶液の流速の比は75:1−110:1であることを特徴とする第39項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項41】
前記超臨界流体の流速は10−40ml/minであることを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項42】
前記超臨界流体の流速は20−30ml/minであることを特徴とする第41項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項43】
前記蛋白質溶液の流速は0.2−0.8ml/minであることを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項44】
前記蛋白質溶液の流速は0.3−0.5ml/minであることを特徴とする第43項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項45】
前記微細粒子化された蛋白質粒子の平均大きさは30−60nmであることを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項46】
前記微細粒子化された蛋白質粒子の大きさは35−55nm間で90%以上の分布を表すことを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。
【請求項47】
前記段階(i)で蛋白質溶液は同軸構造を有する噴射ノズルの内側ノズルを介して、超臨界流体は外側ノズルを介して噴射注入され、前記内側ノズルの出口末端は外側ノズル出口末端よりも沈殿槽内部にさらに突出されていることを特徴とする第31項記載の蛋白質微細粒子化方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2008−537738(P2008−537738A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502910(P2008−502910)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001051
【国際公開番号】WO2006/101352
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507313308)
【Fターム(参考)】