説明

超薄ポリマーフィルム製造方法

【課題】超薄ポリマーフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】該方法は次のステップを含む。押出機中でポリマー組成物またはナノコンポジット組成物を溶融ブレンドする。次に、溶融組成物を、小さなダイリップギャップを有するフラットダイを通して運搬する。メルトポンプを使用してダイを通して溶融組成物の一定な、脈動しない流れを提供することもできる。溶融組成物をろ過装置に通してフィルムの誘電性能に悪影響を与え得る異物を除去することができる。次に、フィルムを比較的高い巻取り速度で巻取りローラーに通すことによってフィルムを延伸する。次いで、組成物を冷却してフィルムまたはシートを形成する。フィルムの縁を切り取ることができ、張力調整装置付き巻取り機構を使用してフィルムをロールに巻く。加熱ロールを使用してフィルムをテンパー/アニールし、それにより凍結した内部応力を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に電子および自動車用途における使用のための種類などの超薄ポリマーフィルムを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー薄フィルムの製造は、伝統的に2つの方法、すなわち溶液流延およびスピンコーティングによって行われてきた。これらの2方法は、均一な厚さ、卓越した品質および清浄度(ゲルを含まない)のフィルムを製造し、その分子構造のために、溶融状態で薄フィルムに加工するのに粘性がありすぎるか高すぎる溶融温度を必要とするかのいずれかであるようなポリマーに最適の方法である。
【特許文献1】米国特許第6488721号
【特許文献2】米国特許第7144632号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの2つの方法は、しかしながら、遅く(低能力)、エネルギー集約型であり、蒸発工程の最後における大量の溶媒のリサイクルおよび精製を必要とする。
【0004】
溶液流延は、フラットダイから溶液を連続的に押し出すことによる加圧下の粘性ポリマー−溶媒溶液の展開、および回転する磨き上げたコンベヤーベルト上にそれを置くことを含む。この溶液は、次いで、加熱されたキャビネットを通って移動し、ここで、溶媒は加熱および真空の適用により除去され、ポリマーフィルム、およびフィルム中の比較的少量の残留溶媒だけが残る。蒸発した溶媒の大部分は、次いで、溶媒回収システムにおいて液化され回収される。フィルムの最終的な厚さは、ダイから押し出される溶液の圧力および回転するベルトの速度の組合せによって決定される。サイクルの最後に、フィルムは冷却され、乾燥したフィルムはベルトからはがされ芯に巻かれる。
【0005】
他方では、スピンコーティングは、固体表面または基板上へのポリマー−溶媒溶液の付着、溶液−表面のその最終回転速度への加速、(比較的高い)一定速度で回転して遠心作用によって液体を基板上に展開すること、および溶媒を蒸発させて最終フィルム中の溶媒の量を所望の濃度まで減少させることを含む。回転速度、ポリマー濃度、溶媒種類、および温度は全て、最終フィルムの厚さに影響を及ぼすと予想される。
【0006】
これらの課題に対応するためには、革新的な技術または既存方法の改変が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単に言うと、本発明の一態様は、
ポリマー組成物を押出機中で溶融するステップと;
溶融ポリマー組成物を、フラットダイを通して運搬するステップと;
溶融ポリマー組成物を、巻取りローラーを使用して延伸して超薄ポリマーフィルムを形成するステップと;
超薄ポリマーフィルムを冷却するステップと
を含み、これにより該超薄ポリマーフィルムは7ミクロン未満の厚さを有する、超薄ポリマーフィルムの製造方法を含む。
【0008】
本発明の別の態様は、
ナノコンポジット組成物を押出機中で溶融ブレンドするステップと;
溶融ナノコンポジット組成物を、フラットダイを通して運搬するステップと;
溶融ナノコンポジット組成物を、巻取りローラーを使用して延伸して超薄ポリマーフィルムを形成するステップと;
超薄ポリマーフィルムを冷却するステップと
を含み、これにより超薄ポリマーフィルムは7ミクロン未満の厚さを有する、超薄ポリマーフィルムの製造方法を含む。
【0009】
本発明の更に別の態様においては、
ポリマー組成物を押し出すステップと;
ポリマー組成物を、フラットダイを通して運搬するステップと;
ポリマー組成物を延伸するステップと;
ポリマー組成物を冷却して超薄ポリマーフィルムを形成するステップと
を含み、これにより超薄ポリマーフィルムは7ミクロン未満の厚さを有する、押出流延ポリマーフィルムの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書で使用される用語「第1の」、「第2の」、などは任意の順序、量、または重要性を意味するものではなく、むしろ1つの要素を他から区別するために使用されることを留意されたい。用語「1つの」は量の制限を意味するものではなく、むしろ少なくとも1つの参照項目の存在を示す。量に関係して使用される修飾語「約」は規定された値を含み、文脈により規定された意味を有する(例えば、特定の量の測定に関係する誤差の程度を含む)。本明細書中に開示される全ての範囲は包括的であり独立に組合せ可能であることを留意されたい。
【0011】
本明細書に開示されるのは、超薄ポリマーフィルムの製造方法である。本明細書で使用される用語「ポリマーフィルム」は、ナノ粒子と一緒にポリマー組成物を含むポリマー組成物またはナノコンポジット組成物を意味する。本明細書で使用される用語「超薄」は、約1ミクロンから10ミクロンの厚さを意味する。
【0012】
ポリマー組成物は、熱可塑性および/または熱硬化性ポリマーを含むことができる。一実施形態においては、ポリマー組成物は、約100℃以上の高いガラス転移点を有する熱可塑性ポリマーを含む。一実施形態においては、熱可塑性ポリマーが約150℃以上のガラス転移点を有することが望ましい。別の実施形態においては、熱可塑性ポリマーが約175℃以上のガラス転移点を有することが望ましい。更に別の実施形態においては、熱可塑性ポリマーが約200℃以上のガラス転移点を有することが望ましい。より更に別の実施形態においては、熱可塑性ポリマーが約225℃以上のガラス転移点を有することが望ましい。更に別の実施形態においては、熱可塑性ポリマーが約250℃以上のガラス転移点を有することが望ましい。
【0013】
ポリマー組成物中に使用することができる熱可塑性および/または熱硬化性ポリマーの例には、ポリアセタール、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリアルキド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、エポキシ、フェノール樹脂、シリコーン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリチミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリオキシインドール、ポリオキソイソインドリン、ポリジオキソイソインドリン、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリアンヒドリド、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリビニルハリド、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリスルホンアミド、ポリウレア、ポリホスファゼン、ポリシラザン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニリデン−フルオリド、ポリシロキサン、シアノレジンなど、または前述の熱可塑性ポリマーの少なくとも1つを含む組合せ(polyacetals, polyacrylics, polycarbonates, polyalkyds, polystyrenes, polyolefins, polyesters, polyamides, polyaramides, polyamideimides, polyarylates, polyurethanes, epoxies, phenolics, silicones, polyarylsulfones, polyethersulfones, polyphenylene sulfides, polysulfones, polyimides, polyetherimides, polytetrafluoroethylenes, polyetherketones, polyether etherketones, polyether ketone ketones, polybenzoxazoles, polyoxadiazoles, polybenzothiazinophenothiazines, polybenzothiazoles, polypyrazinoquinoxalines, polypyromellitimides, polyquinoxalines, polybenzimidazoles, polyoxindoles, polyoxoisoindolines, polydioxoisoindolines, polytriazines, polypyridazines, polypiperazines, polypyridines, polypiperidines, polytriazoles, polypyrazoles, polycarboranes, polyoxabicyclononanes, polydibenzofurans, polyphthalides, polyacetals, polyanhydrides, polyvinyl ethers, polyvinyl thioethers, polyvinyl alcohols, polyvinyl ketones, polyvinyl halides, polyvinyl nitriles, polyvinyl esters, polysulfonates, polysulfides, polythioesters, polysulfones, polysulfonamides, polyureas, polyphosphazenes, polysilazanes, polypropylenes, polyethylenes, polyethylene terephthalates, polyvinylidene-fluorides, polysiloxanes, cyanoresins, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing thermoplastic polymers)が含まれる。
【0014】
ポリマー組成物中に使用することができる熱可塑性および/または熱硬化性ポリマーの他の例には、ポリエーテルイミド、フルオレニルポリエステル(FPE)、ポリビニリデン−フルオリド、ポリビニリデン−フルオリド−トリフルオロエチレンP(VDF−TrFE)、ポリビニリデン−フルオリド−テトラフルオロエチレンコポリマーP(VDF−TFE)、ポリビニリデン−フルオリド−トリフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマーP(VDF−TFE−HFE)およびポリビニリデン−フルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマーP(VDF−HFE)、エポキシ、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアリレート、ポリフェニルスルホン、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、シリコーンなど、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せ(polyetherimide, fluorenyl polyester (FPE), polyvinylidene fluoride, polyvinylidine fluoride-trifluoroethylene P(VDF-TrFE), polyvinylidene-fluoride-tetrafluoroethylene copolymers P(VDF-TFE), polyvinylidine fluoride-trifluoroethylene hexafluoropropylene copolymers P(VDF-TFE-HFE) and polyvinylidine fluoride-hexafluoropropylene copolymers P(VDF-HFE), epoxy, polypropylene, polyester, polyimide, polyarylate, polyphenylsulfone, polystyrene, polyethersulfone, polyamideimide, polyurethane, polycarbonate, polyetheretherketone, silicone, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が含まれる。例示的なポリマーは、両方ともGeneral Electric Plastics(GE Plastics)から市販されているULTEM(登録商標)、ポリエーテルイミド、またはSILTEM(登録商標)、ポリエーテルイミド−ポリシロキサンコポリマーである。例示的なシアノレジンは、Shin−Etsu Chemical Co.,Ltdから市販されている。例示的な比較的高TのポリエーテルイミドはGE Plasticsから市販のEXTEM(登録商標)である。
【0015】
ポリマー組成物中に使用することができる熱可塑性および/または熱硬化性ポリマーの更なる例は、エポキシ/アミン、エポキシ/アンヒドリド、イソシアネート/アミン、イソシアネート/アルコール、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、不飽和ポリエステルおよびビニルエステルブレンド、不飽和ポリエステル/ウレタンハイブリッド樹脂、ポリウレタン−ウレア、反応性ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、反応性ポリアミドなど、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せの樹脂(resins of epoxy/amine, epoxy/anhydride, isocyanate/amine, isocyanate/alcohol, unsaturated polyesters, vinyl esters, unsaturated polyester and vinyl ester blends, unsaturated polyester/urethane hybrid resins, polyurethane-ureas, reactive dicyclopentadiene (DCPD) resin, reactive polyamides, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)である。例示的な熱硬化性ポリマーは、GE Plasticsから市販の熱硬化性NORYL(登録商標)(TSN NORYL(登録商標))、ポリフェニレンエーテルである。
【0016】
他の適切な熱硬化性および/または熱可塑性ポリマーには、エネルギー活性化可能な熱硬化性プレポリマー組成物から製造することができるポリマーが含まれる。例には、ウレタンポリエステルなどのポリウレタン、シリコーンポリマー、フェノールポリマー、アミノポリマー、エポキシポリマー、ビスマレイミド、ポリイミド、およびフランポリマー(urethane polyesters, silicone polymers, phenolic polymers, amino polymers, epoxy polymers, bismaleimides, polyimides, and furan polymers)が含まれる。エネルギー活性化可能な熱硬化性プレポリマー組成物はポリマー前駆体および硬化剤を含むことができる。ポリマー前駆体は熱活性化可能であってもよく、これは触媒の必要性を排除する。選択される硬化剤は、熱硬化性ポリマーを形成するのに必要なエネルギー源の種類を決定するのみならず、熱硬化性ポリマーの得られる性質にも影響を与え得る。硬化剤の例には、脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物など、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せ(aliphatic amines, aromatic amines, acid anhydrides, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が含まれる。エネルギー活性化可能な熱硬化性プレポリマー組成物は、より高い押出量およびより低い温度を含めた押出しの容易さのために、組成物の粘性を低下させるための溶媒または加工助剤を含むことができる。溶媒は、架橋反応を妨げる助けとなり得、重合中または重合後に部分的にまたは完全に蒸発し得る。
【0017】
ポリマー組成物は、種々様々な、熱可塑性ポリマーと熱可塑性ポリマーのブレンド、または熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーのブレンドから選択することができる。例えば、ポリマー組成物は、ホモポリマー、星形ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、交互ブロックコポリマーまたはランダムコポリマー、イオノマー、デンドリマーなどのコポリマー、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せ(a star block copolymer, a graft copolymer, an alternating block copolymer or a random copolymer, ionomer, dendrimer, or a combination comprising at least one of the foregoing)を含むことができる。ポリマー組成物は、ポリマー、コポリマー、ターポリマーなど、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せのブレンドであってもよい。
【0018】
熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーのブレンドの他の例には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド、ポリカーボネート/ポリエステル、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィンなど、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せ(acrylonitrile-butadiene-styrene/nylon, polycarbonate/acrylonitrile-butadiene-styrene, polyphenylene ether/polystyrene, polyphenylene ether/polyamide, polycarbonate/polyester, polyphenylene ether/polyolefin, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が含まれる。
【0019】
一実施形態においては、ナノコンポジット組成物のナノ粒子は無機酸化物である。ナノコンポジット組成物は、ナノ粒子を含まない組成物よりも優れた誘電率、破壊電圧、エネルギー密度、耐コロナ性、および機械的性質、例えば衝撃強さ、引張強さおよび延性を有する。ナノコンポジット組成物は、ポリマー組成物およびそのサイズがナノメートル領域の代わりにマイクロメートル領域にある粒子を含む組成物よりも優れた衝撃強さも有する。一実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、ポリマー組成物単独の誘電率より大きいまたはポリマー組成物およびそのサイズがマイクロメートル領域にある粒子を含む組成物より大きい誘電率を有する。ナノコンポジット組成物は、約300V/マイクロメートル以上の破壊電圧を有する。ナノコンポジット組成物は、有利には約1J/cmから約10J/cmのエネルギー密度を有する。ナノコンポジット組成物は、ナノ粒子を含まないポリマー組成物よりも改善された特性を有する。改善された特性には、より高い誘電率、改善された絶縁破壊強度および耐コロナ性、改善された衝撃強さおよび引張強さが含まれる。
【0020】
一実施形態においては、無機酸化物ナノ粒子はシリカを含む。無機酸化物の例には、酸化カルシウム、二酸化ケイ素など、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せ(calcium oxide, silicon dioxide, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)が含まれる。一実施形態においては、ナノ粒子は、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属、遷移金属、メタロイド、卑金属など、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せの金属酸化物(metal oxides of alkali earth metals, alkaline earth metals, transition metals, metalloids, poor metals, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)などの金属酸化物を含む。別の実施形態においては、ナノサイズ金属酸化物は、ペロブスカイトおよびペロブスカイト誘導体、例えばチタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、およびストロンチウムでドープしたマンガン酸ランタンなどを含む。別の実施形態においては、ナノサイズ金属酸化物は、高誘電率を有する組成物、例えば、チタン酸カルシウム銅(CaCuTi12)、チタン酸カドミウム銅(CdCuTi12)、Ca1−xLaMnO、および(Li、Ti)でドープしたNiOなど、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せ(calcium copper titanate (CaCu3Ti4O12), cadmium copper titanate (CdCu3Ti4O12), Ca1-xLaxMnO3, and (Li, Ti) doped NiO, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)などを含む。金属酸化物の適切な例は、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素(例えば、シリカおよび/またはヒュームドシリカ)、酸化銅、酸化アルミニウム(例えば、アルミナおよび/またはヒュームドアルミナ)、担体としての溶媒中に分散されたコロイドシリカなど、または前述の金属酸化物の少なくとも1つを含む組合せ(cerium oxide, magnesium oxide, titanium oxide, zinc oxide, silicon oxide (e.g., silica and/or fumed silica), copper oxide, aluminum oxide (e.g., alumina and/or fumed alumina), colloidal silicas dispersed in solvents as carriers, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing metal oxides)である。
【0021】
ナノサイズ無機酸化物の市販例は、NanoScale Materials Incorporatedより全て市販の、NANOACTIVE(商標)酸化カルシウム、NANOACTIVE(商標)酸化カルシウムプラス、NANOACTIVE(商標)酸化セリウム、NANOACTIVE(商標)酸化マグネシウム、NANOACTIVE(商標)酸化マグネシウムプラス、NANOACTIVE(商標)酸化チタン、NANOACTIVE(商標)酸化亜鉛、NANOACTIVE(商標)酸化ケイ素、NANOACTIVE(商標)酸化銅、NANOACTIVE(商標)酸化アルミニウム、NANOACTIVE(商標)酸化アルミニウムプラス、およびNissan Chemicalから市販のSNOWTEX(商標)である。
【0022】
別の実施形態においては、無機酸化物ナノ粒子は、金属酸化物、例えば、アルミナ、酸化セリウム、チタネート、ジルコニア、五酸化ニオブ、五酸化タンタルなど、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せ(alumina, ceria, titanate, zirconia, niobium pentoxide, tantalum pentoxide, or the like, or a combination comprising at least one of the foregoing)などを含む。無機酸化物を含むナノ粒子の例には、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、および酸化ジルコニウム(aluminum oxide, calcium oxide, cerium oxide, copper oxide, magnesium oxide, niobium oxide, silicon oxide, tantalum oxide, titanium oxide, yttrium oxide, zinc oxide, and zirconium oxide)が含まれる。
【0023】
一実施例においては、無機酸化物ナノ粒子は、約10ナノメートル(10−9メートル領域)以下の粒径を有する。別の実施形態においては、無機酸化物ナノ粒子は、約10ナノメートル以上の粒径を有する。別の実施形態においては、無機酸化物ナノ粒子は、ポリマー組成物中の分散を高めるために表面処理される。例えば、表面処理は無機酸化物ナノ粒子をシランカップリング剤などの有機材料でコーティングすることを含む。適切なシランカップリング剤の例には、テトラメチルクロロシラン(tetramethylchlorosilane)、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)、ガンマ−アミノプロポキシシラン(gamma-aminopropoxysilane)など、または前述のシランカップリング剤の少なくとも1つを含む組合せが含まれる。シランカップリング剤は、一般的に、ナノ粒子とポリマー組成物の相容性を高め、ポリマー組成物中のナノ粒子の分散を改良する。別の実施形態においては、約10ナノメートル以下の粒径を有するナノ粒子は表面処理されない。
【0024】
別の実施形態においては、ナノ粒子は、ポリマーまたはモノマーによるコーティング、例えば、in−situでの表面コーティング、ナノ粒子およびポリマー溶液の分散液の噴霧乾燥、ナノ粒子表面上の共重合、および溶融紡糸後の摩砕によって表面処理することができる。in−situでの表面コーティングの場合においては、ナノ粒子は溶媒、例えば、脱イオン水中に懸濁され、懸濁液のpHが測定される。pHは、酸(例えば、酢酸または希硝酸)または塩基(例えば、水酸化アンモニウムまたは希水酸化ナトリウム)の少量添加によって調節および安定化することができる。pH調節は、ナノ粒子の表面に帯電状態を生じる。所望のpHが達成され次第、対立する電荷を有するコーティング材料(例えば、ポリマーまたは他の適切な前駆体)を溶媒中に導入する。コーティング材料は、ナノ粒子の周りに結合されてナノ粒子の周りにコーティング層を提供する。コーティング層が形成次第、乾燥、ろ過、遠心分離、または固体−液体分離に適切な別の方法によって、ナノ粒子を溶媒から取り出す。ナノ粒子を、表面電荷を用いて別の材料でコーティングするこの技術は、種々のナノコンポジット組成物に使用することができる。
【0025】
上記に記載されたin−situでの表面コーティング方法におけるように、コーティングをするために溶媒を使用する場合、ポリマー組成物を、コーティング前またはコーティング中にその溶媒中に溶解し、最終のナノコンポジット組成物をその溶媒の除去によって形成することもできる。
【0026】
一実施形態においては、ポリマー組成物は、ナノコンポジット組成物の全重量の約5から約99.999重量%の量で使用される。別の実施形態においては、ポリマー組成物は、ナノコンポジット組成物の全重量の約10から約99.99重量%の量で使用される。別の実施形態においては、ポリマー組成物は、ナノコンポジット組成物の全重量の約30から約99.5重量%の量で使用される。別の実施形態においては、ポリマー組成物は、ナノコンポジット組成物の全重量の約50から約99.3重量%の量で使用される。
【0027】
上記の通り、ナノ粒子は、ナノメートル領域に少なくとも1つの次元を有する。ナノ粒子が約500nm以下の平均最大次元を有することが一般的に望ましい。次元は、直径、面の縁、長さなどであってよい。ナノ粒子は、その次元性が、整数によって規定される形状を有することができ、例えば、ナノ粒子は、形状において1、2または3次元のいずれかである。それらは、その次元性が整数によって規定されない形状を有することもできる(例えば、それらはフラクタルの形態で存在することができる)。ナノ粒子は、球、フレーク、繊維、ホイスカーなど、または前述の形態の少なくとも1つを含む組合せの形態で存在することができる。これらのナノ粒子は、円、楕円形、三角形、長方形、多角形、または前述の形状の少なくとも1つを含む組合せであってよい断面形状を有することができる。市販のナノ粒子は、ポリマー組成物への練込みの前に、またはポリマー組成物への練込み後でも凝集体または凝集塊の形態で存在し得る。凝集体は、互いの物理的接触において2個以上のナノ粒子を含み、凝集塊は、互いの物理的接触において2個以上の凝集体を含む。
【0028】
ナノ粒子の厳密なサイズ、形状および組成に関わりなく、それらは、必要に応じて、ナノコンポジット組成物の全重量の約0.0001から約50重量%の使用量でポリマー組成物中に分散させることができる。一実施形態においては、ナノ粒子は、ナノコンポジット組成物の全重量の約1重量%以上の量で存在する。別の実施形態においては、ナノ粒子は、ナノコンポジット組成物の全重量の約1.5重量%以上の量で存在する。別の実施形態においては、ナノ粒子は、ナノコンポジット組成物の全重量の約2重量%以上の量で存在する。一実施形態においては、ナノ粒子は、ナノコンポジット組成物の全重量の約40重量%以下の量で存在する。別の実施形態においては、ナノ粒子は、ナノコンポジット組成物の全重量の約30重量%以下の量で存在する。別の実施形態においては、ナノ粒子は、ナノコンポジット組成物の全重量の約25重量%以下の量で存在する。
【0029】
ポリマー組成物およびナノ粒子を含むナノコンポジット組成物は、ポリマー組成物単独またはポリマー組成物およびマイクロメートル領域の粒径を有する粒子を含む他の市販の組成物に比べて利点を有する。一実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、ポリマー組成物単独を含む組成物より少なくとも50%大きい誘電率を有する。別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、ポリマー組成物単独より少なくとも75%大きい誘電率を有する。別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、ポリマー組成物単独より少なくとも100%大きい誘電率を有する。
【0030】
ナノコンポジット組成物は、ポリマー組成物単独またはポリマー組成物およびマイクロメートル領域の粒径を有する粒子を含む他の市販の組成物に比べて有利により大きい破壊電圧も有する。一実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、少なくとも300ボルト/マイクロメートル(V/マイクロメートル)である破壊電圧を有する。絶縁破壊は、一般的にナノコンポジット組成物の厚さにおいて決定される。別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、少なくとも400V/マイクロメートルである破壊電圧を有する。別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、少なくとも500V/マイクロメートルである破壊電圧を有する。
【0031】
ナノコンポジット組成物は、ポリマー組成物単独またはポリマー組成物およびマイクロメートル領域の粒径を有する粒子を含む他の市販の組成物に比べて有利により大きい耐コロナ性も有する。一実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、約200から約2000時間印加される約1000ボルトから5000ボルトの電流に耐性がある耐コロナ性を有する。別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、約250から約1000時間印加される約1000ボルトから5000ボルトの電流に耐性がある耐コロナ性を有する。更に別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、約500から約900時間印加される約1000ボルトから5000ボルトの電流に耐性がある耐コロナ性を有する。
【0032】
別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、約5キロジュール/平方メートル(kJ/m)以上の衝撃強さも有する。別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、約10kJ/m以上の衝撃強さを有する。別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、約15kJ/m以上の衝撃強さを有する。別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物は、約20kJ/m以上の衝撃強さを有する。
【0033】
ポリマー組成物またはナノコンポジット組成物を超薄ポリマーフィルムに製造する方法が、これから記載される。一般的には、この方法は押出機中の組成物の溶融ブレンドを含む。組成物の溶融ブレンドは、せん断力、伸長力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギーまたは前述の力もしくはエネルギーの形態の少なくとも1つを含む組合せの使用を含み、加工装置において行われ、この加工装置で、前述の力が、一軸スクリュー、多軸スクリュー、かみ合い共回転もしくは逆回転スクリュー、非かみ合い共回転もしくは逆回転スクリュー、往復スクリュー、ピン付きスクリュー、ピン付きバレル、ロール、ラム、ヘリカルローター、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せによって発揮される。
【0034】
前述の力を含む溶融ブレンドは、機械、例えば、それだけには限らないが、一軸もしくは多軸スクリュー押出機、Bussニーダー、Henschel、ヘリコーン(helicone)、Rossミキサー、Banbury、練りロール機、成形機、例えば射出成形機、真空成形機、ブロー成形機など、または前述の機械の少なくとも1つを含む組合せにおいて行うことができる。押出し加工は、組成物の熱または機械的分解を引き起こし得る過剰な温度をもたらさない組成物のための環境を提供するよう設計される。
【0035】
組成物の溶融中に、組成物の約0.01から約10キロワット−時/キログラム(kwhr/kg)の比エネルギーを与えることが一般的に望ましい。この範囲内で、約0.05以上、好ましくは約0.08以上、より好ましくは約0.09kwhr/kg以上の比エネルギーが組成物のブレンドに一般的に望ましい。同様に望ましいのは、ナノコンポジット組成物のブレンドのための約9以下、好ましくは約8以下、より好ましくは約7kwhr/kg以下の比エネルギーの量である。
【0036】
一実施形態においては、粉末形態、ペレット形態、シート形態などのポリマー組成物を、溶融ブレンド装置、例えば押出機またはBussニーダー中に供給する前に、最初にHenschelまたは練りロール機でナノ粒子および所望に応じて他の任意選択の充てん剤とドライブレンドすることができる。別の実施形態においては、ナノ粒子をマスターバッチの形態で溶融ブレンド装置中に導入する。このような方法においては、マスターバッチをポリマー組成物の下流の溶融ブレンド装置中に導入することができる。
【0037】
マスターバッチが使用される場合、ナノ粒子は、マスターバッチの全重量の約1から約50重量%の量でマスターバッチ中に存在してよい。一実施形態においては、ナノ粒子は、マスターバッチの全重量の約1.5重量%以上の量で使用される。別の実施形態においては、ナノ粒子は、マスターバッチの全重量の約2重量%以上の量で使用される。別の実施形態においては、ナノ粒子は、マスターバッチの全重量の約2.5重量%以上の量で使用される。一実施形態においては、ナノ粒子は、マスターバッチの全重量の約30重量%以下の量で使用される。別の実施形態においては、ナノ粒子は、マスターバッチの全重量の約10重量%以下の量で使用される。別の実施形態においては、ナノ粒子は、マスターバッチの全重量の約5重量%以下の量で使用される。マスターバッチ中に使用することができるポリマー組成物の例は、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエステルなど、または前述のポリマー組成物の少なくとも1つを含む組合せである。
【0038】
ポリマーブレンドにおけるマスターバッチの使用に関する別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物の連続相を形成するポリマー組成物と同じであるポリマー組成物を含むマスターバッチを有することが時には望ましい。ポリマーブレンドにおけるマスターバッチの使用に関する更に別の実施形態においては、ナノコンポジット組成物中に使用される他のポリマーと化学的性質において異なるポリマー組成物を含むマスターバッチを有することが望ましいこともある。この場合、マスターバッチのポリマー組成物はブレンド中に連続相を形成する。
【0039】
次に、溶融組成物は、小さなダイリップギャップを有するフラットダイを通って運搬される。一実施形態においては、ダイリップギャップは約100ミクロンから約500ミクロンの間である。一実施形態においては、フラットダイに溶融組成物の一定な、均一な、脈動しない流れを供給するためにメルトポンプ(melt pump)を使用することもできる。別の実施形態においては、融解した組成物を、ろ過装置に通して、フィルムの誘電性能に悪影響を与え得る異物、例えばゲル、ブラックスペック(black speck)などを除去する。次に、フィルムを比較的高い巻取り速度で巻取りローラーに通すことによってフィルムを延伸する。一実施形態においては、巻取りローラーは200m/分までの速度で作動してよい。次いで、組成物を冷却してフィルムまたはシートを形成する。次いで、フィルムの縁を切り取ることができ、張力調整装置付き巻取り機構を使用してフィルムをロールに巻く。別の実施形態においては、フィルムをテンパー/アニールし、それにより凍結した内部応力を除去するために加熱ロールを使用することができる。任意選択の所望の充てん剤をポリマーマトリクス中にコンパウンディングして均一な分散を得ることは、単独の押出機または延伸工程の前に組成物を溶融するために使用される同じ押出機で行うことができる。本発明の方法を使用して、超薄の薄い部分が、約1ミクロンから約12ミクロンの範囲、好ましくは約1ミクロンから約5ミクロンの範囲、および最も好ましくは約1ミクロンから約3ミクロンの間で製造された。
[実施例]
次の実施例は、特許請求の範囲に記載された方法をいかに評価するかの詳細な説明と共に当分野の技術者に提供するために示され、本発明者らがその発明とみなすことの範囲を制限するものではない。別に示されない限り、部は重量により、温度は摂氏度である。
[実施例1]
General Electric Plasticsから市販のULTEM(登録商標)を含むポリマー組成物を使用して本発明の方法を試験した。ポリマー組成物を、約330〜370℃のバレル温度、約380〜390℃のダイプレート温度、および約355〜360℃の溶融温度を有する直径30mm(L/D=30)一軸スクリュー押出機を通して約1〜5lb/時間の速度で供給した。押出機のダイ圧力は約90〜120バールであり、スクリュー速度は約6〜9rpmであった。ポリマー組成物の流量は、スクリュー速度およびダイ圧力を変えることによって調節することができる。次に、押出されたポリマー組成物を、約200ミクロンのダイリップギャップを有する、3加熱帯、10インチ幅フィルムダイを通して運搬した。次いで、ポリマー組成物を約9〜16m/分の巻取り速度で350mm幅チルロール巻取機に供給した。サンプル条件の要約を表I、IIおよびIIIに示す。
表I
条件の要約
押出機(典型的な条件)
バレルT(℃):330、350、360、370、350、370、370
ダイプレートT(℃):390、380、390
溶融T(℃):355〜360
ダイ圧力(バール):90〜120
スクリュー速度(rpm):6〜9
スクリーンパック:20/50/100/200メッシュサイズ(841/297/149/74ミクロン)
ポリマー速度:約1〜5 lb/時間
フィルムダイ:
ダイリップギャップ(ミクロン):200
3加熱帯
チルロール:
冷却ロール:研削された(マット)、クロムメッキ(磨き:polished)仕上げ
テンパーロール不使用
巻取機:
巻取り速度(m/分):6〜16
カメラ:
光学系がフィルムを異物(ゲル、フィッシュアイ、ブラックスペック)について検査した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

超薄ULTEM(登録商標)フィルムについての約1ミクロンから12ミクロンの範囲のフィルム厚さの関数としての絶縁破壊強度を図1に示す。図1に示した結果は、フィルム厚さが約12ミクロンから約5ミクロンに減少する際に、絶縁破壊強度においてほんの少ししか増加がないことを明らかにしている。しかしながら、この結果は、厚さが約5ミクロンから約1ミクロンに減少する際に、フィルムの絶縁破壊強度は著しく増加することも明らかにしている。約1ミクロンから5ミクロンの範囲における絶縁破壊強度のこの著しい増加は、本発明の方法を使用して約1ミクロンから約5ミクロンの範囲の厚さを有する超薄フィルムを製造することの大きな動機を明らかにしている。1ミクロンの厚さを有するフィルムの断片で測定された絶縁破壊強度の驚くほど高い値は、部分的にはこの比較的薄いサンプルについてフィルム厚さを測定することに関係する誤差によるかもしれない。要約すれば、本発明の方法を使用した結果は、絶縁破壊強度が、おおよそフィルム厚さの平方根の逆数と共に変わることを示している。
【0042】
図2に示したとおり、本発明の方法を使用した約2ミクロンの厚さを有する超薄ULTEM(登録商標)フィルムの絶縁破壊強度(表II中の例11)は、約400(V/ミクロン)から約1200(V/ミクロン)の範囲に及んだ。同じ表示厚さのサンプルで測定された絶縁破壊強度の異なる値は、いくつかある要因のなかで特に、技術誤差、サンプルの表面仕上げにおける局所的な差異、粗さの差異、および恐らく微量異物の存在によるかもしれない。全体的に見て、これらの結果は、絶縁破壊強度が、より大きなフィルム厚さを有する通常のフィルムと比較して、本発明の方法を使用することによって著しく増加されたことを示している。
【0043】
ここで、図3を参照すると、本発明の方法を使用した約2ミクロンの厚さを有する超薄ULTEM(登録商標)フィルムの絶縁破壊強度(表II中の例11)のグラフは、約400(V/ミクロン)から約1200(V/ミクロン)の範囲に及んだ。例11の平均の絶縁破壊強度は872(V/ミクロン)であった。図3は、約3ミクロンの表示厚さを有する市販の溶液流延フィルムは、約525(V/ミクロン)の平均絶縁破壊強度を有することも示している。したがって、本発明の方法を使用した押出流延フィルムは、市販の溶液流延フィルムに比べて良くはないにしても、これと類似の誘電性能を生じる。
【0044】
更に、市販の溶液流延フィルムの購入価格は約$1000/lbである。市販の押出流延フィルムの購入価格は約$70/lbであり、これは市販の溶液流延フィルムより約15倍安価である。したがって、市販の押出流延フィルムは、市販の溶液流延フィルムと比較した場合に著しい費用節減を提供する。
【0045】
様々なフィルム厚さについてポリマー溶融物から異物を除去するために押出機に連結したろ過装置を使用することの効果を研究した。異物の量を、誘導結合プラズマ分光法を使用して求めた。結果の要約を表IIIに示す。
【0046】
【表3】

表IIIに示した通り、本発明の方法を使用した超薄ポリマーフィルム中の異物の量は、市販の押出機で製造されたULTEM(登録商標)フィルム中に見出された量に匹敵する。
【0047】
次の変更を除いて上記に記載された試験と類似した別の試験を行った。
− 高容量を有する一軸スクリュー押出機;
− 押出機は直径が20mmであり、これはより高いスクリュー速度による流れ制御を提供した;
− フィルムダイは、より良好なフィルム離型のための表面上の高熱コーティングを含んだ;
− フィルムダイは、より良好な溶融温度均一性およびフィルム厚さ制御のための追加の加熱ゾーンを含んだ;
− フィルムの縁を切り取るためのセラミックナイフ;
− チルロールは表面に特殊高温コーティングを有した;
− フィルム平面性改良のためにフィルムをチルロールに固定するための静電ピンニング装置。
【0048】
サンプル条件を下記の表IVに要約する。
【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

静電ピンニング装置は、高電圧であるが低電流を伝導する電線を使用して、フィルムウェブが巻取りロールの前で電線の近くを通過するときに、フィルムウェブ中に帯電を生じる。結果は、静電ピンニング装置の使用は、最小限のしわまたは表面波形を有する平坦な超薄ポリマーフィルムを製造することを示した。図4は、これらのフィルムで測定された高い絶縁破壊強度を示している。
【0051】
表Vは、本発明の方法は、平均値からの比較的小さな標準偏差を有する厚さが約5ミクロンのフィルムを製造することができることを明らかにしている。これらのフィルム厚さは、比較的正確な静電容量に基づく技術を使用して得られ、これは、異なる場所の12の測定を使用した場合に、約0.70ミクロンの標準偏差を生じた。
【0052】
【表6】

表VIは、本発明の方法を、比較的小さな厚さおよび1000メートルを超え得る長さのフィルムを製造するために継続的に運転することができることを明らかにしている。
【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
【表9】

図5に示した通り、本発明の方法を使用することによって製造された5ミクロンの厚さを有するフィルムのウェブの全域の位置の関数としての絶縁破壊強度(VDC/ミクロン)は、7ミクロンの厚さを有する通常のフィルムウェブと比較して実質的に同じである。図5は、5ミクロンの厚さを有するフィルムは、7ミクロンのより大きな厚さを有する市販のフィルムと比較してより高い絶縁破壊強度を有することも示している。
【0056】
本発明の方法を使用した上記に記載された試験は、ウェブの全域にわたり均一な厚さを有する、しわまたは表面波形のない平らな、異物を含まない超薄フィルム(厚さが約1ミクロンから約10ミクロン)を製造することができることを明らかにしている。本発明の方法によって製造され、絶縁破壊強度を試験したフィルムは、より大きな厚さの市販のフィルムと比較して同等以上の性能を示した。本発明の方法の使用では、溶融組成物の二軸延伸は必要ではない、しかしながら、本発明の方法は、必要に応じて溶融組成物の二軸延伸を可能にする。
【0057】
上記に記載した通り、本発明の方法は、一段階であり、より大きなサイズの装置へ拡張可能であり、溶媒の使用は全く必要としない。結果として、超薄ポリマーフィルムを、従来技術と比較して著しく節減された費用で製造することができる。本発明の方法によって製造された超薄ポリマーフィルムは、電子部品、例えば電池、スパークプラグキャップ、コンデンサ、スピーカダイアフラム、電気除細動器、または他の物品に有利に使用することができる。
【0058】
特定の実施形態および実施例を手段として本発明を説明してきたが、特許請求の範囲に記載された発明概念の意図および範囲を逸脱することなく、種々の変更形態、適合、および代替を当業者が思いつくことを理解されたい。上記に記載された特許、論文、および文書の全てを参照により本明細書に組み込む。また、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の方法を使用するフィルムの厚さの関数としての絶縁破壊強度(V/ミクロン)のグラフである。
【図2】本発明の方法を使用することによって製造された2ミクロン厚のフィルムについてのフィルム厚さの関数としての絶縁破壊強度(V/ミクロン)のグラフである。
【図3】通常の溶液流延フィルムと比較した本発明の方法を使用することによって製造された押出流延フィルムについてのフィルム厚さを関数としての絶縁破壊強度(kVDC/mm)のグラフである。
【図4】静電ピンニングを使用し冷却ロール温度を変えたフィルム厚さの関数としての絶縁破壊強度(VDC/ミクロン)のグラフである。
【図5】市販の押出流延フィルムウェブと比較した本発明の方法を使用した位置(cm、ウェブ全域)の関数としての絶縁破壊強度(VDC/ミクロン)のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超薄ポリマーフィルムの製造方法であって、
ポリマー組成物を押出機中で溶融するステップと;
溶融ポリマー組成物を、フラットダイを通して運搬するステップと;
溶融ポリマー組成物を、巻取りローラーを使用して延伸して超薄ポリマーフィルムを形成するステップと;
超薄ポリマーフィルムを冷却するステップと
を含み、これにより該超薄ポリマーフィルムは7ミクロン未満の厚さを有する方法。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が熱可塑性ポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が熱硬化性ポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
メルトポンプを使用して前記フラットダイに溶融組成物の一定かつ均一な流れを供給するステップを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ろ過装置を使用して前記溶融ポリマー組成物をろ過するステップを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記超薄ポリマーフィルムをトリミングするステップを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記超薄ポリマーフィルムをロールに巻くステップを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記フラットダイが約100ミクロンから約500ミクロンまでのダイリップギャップを有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記巻取りローラーが200m/分までの速度で作動する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
超薄ポリマーフィルムの製造方法であって、
ナノコンポジット組成物を押出機中で溶融ブレンドするステップと;
溶融ナノコンポジット組成物を、フラットダイを通して運搬するステップと;
溶融ナノコンポジット組成物を、巻取りローラーを使用して延伸して超薄ポリマーフィルムを形成するステップと;
超薄ポリマーフィルムを冷却するステップと
を含み、これにより該超薄ポリマーフィルムは7ミクロン未満の厚さを有する方法。
【請求項11】
ポリマー組成物をナノ粒子とブレンドして前記ナノコンポジット組成物を形成するステップを更に含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ粒子が、無機酸化物を含み、ここで、該無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化銅、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ペロブスカイトおよびペロブスカイト誘導体、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ストロンチウムでドープしたマンガン酸ランタン、チタン酸カルシウム銅、チタン酸カドミウム銅、式Ca1−xLaMnOを有する化合物、リチウム、チタンでドープした酸化ニッケル、コロイドシリカ、またはその任意の組合せからなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ粒子が、金属酸化物を含み、ここで、該金属酸化物が、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属、遷移金属、メタロイド、卑金属、ペロブスカイトおよびペロブスカイト誘導体、チタン酸カルシウム銅、(CaCuTi12)、チタン酸カドミウム銅(CdCuTi12)、Ca1−xLaMnO、および(Li、Ti)でドープしたNiO、またはその任意の組合せからなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
メルトポンプを使用して前記フラットダイに溶融組成物の一定かつ均一な流れを供給するステップを更に含む、請求項10記載の方法。
【請求項15】
ろ過装置を使用して溶融ポリマー組成物をろ過するステップを更に含む、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記超薄ポリマーフィルムをトリミングするステップを更に含む、請求項10記載の方法。
【請求項17】
前記超薄ポリマーフィルムをロールに巻くステップを更に含む、請求項10記載の方法。
【請求項18】
前記フラットダイが約100ミクロンから約500ミクロンまでのダイリップギャップを有する、請求項10記載の方法。
【請求項19】
前記巻取りローラーが200m/分までの速度で作動する、請求項10記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−45934(P2009−45934A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207986(P2008−207986)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】