説明

超電導ケーブルの端末接続システム

【課題】侵入熱に伴う損失を低減することができる超電導ケーブルの端末接続システムを提供する。
【解決手段】端末接続システム1は、超電導ケーブルの端部と常電導機器との間に配置される接続導体11と、接続導体11の一端部が導入される冷媒槽13とを有する端末接続構造10と、接続導体11を介して授受される電力の変動に対応する物理量を計測する物理量計測手段20と、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを変化させる液面調整手段21と、液面調整手段21を制御する制御手段22とを具える。端末接続システム1は、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを常時一定に保持するのではなく、負荷などの変動に応じて液面13fを下げることで、接続導体11を介して液体冷媒13lに伝えられる侵入熱を低減し、損失の低減を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温環境にある超電導ケーブルと常温環境にある常電導機器との間での電力の授受に利用される超電導ケーブルの端末接続システムに関するものである。特に、侵入熱に伴う損失を低減することができる超電導ケーブルの端末接続システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超電導材料は、超電導状態であると、電気抵抗を実質的にゼロとすることができる。そのため、例えば、超電導材料からなる超電導導体を具える超電導ケーブルを利用することで、銅といった常電導材料からなる導体を具える常電導電力ケーブルと比較して、ジュール熱などによる損失を非常に低減することができる。
【0003】
超電導ケーブルを利用する場合、その端部には、常温環境にある常電導電力ケーブルなどの常電導機器が接続されて、例えば、図8に示すような端末接続構造100が構築される(特許文献1の図5参照)。端末接続構造100は、超電導ケーブルの端部と常電導機器との間に配置されて、両者間の電力の授受に利用されるブッシング101と、ブッシング101における超電導ケーブル側の一端部が導入される終端接続箱102と、ブッシング101における常電導機器側の他端部が導入される碍管105とを具える。終端接続箱102は、上記ブッシング101が導入される冷媒槽103と、冷媒槽103の外周を覆う真空断熱槽104とを具え、上記碍管105は、この終端接続箱102に突設される。
【0004】
上記ブッシング101は、FRPなどの固体絶縁体101iに内蔵された接続導体101cを具える。接続導体101cの一端部は、超電導ケーブルの端部から引き出したケーブルコア200において露出された超電導導体(内側超電導層)201に、導体棒110及びジョイント部120を介して接続される。上記冷媒槽103には、液体窒素などの液体冷媒103lが充填され、冷媒槽103内に導入されたブッシング101における超電導ケーブル側の全域が液体冷媒103lに浸漬されて冷却される。冷媒槽103内の全体を液体冷媒で満たす他、冷媒槽103内における常電導機器側の領域、即ち、碍管105に近い領域を気相領域とすることもある。いずれにしても、通常、液体冷媒の液面は、一定となるように保持されている。
【0005】
上記接続導体101cは、通常、銅やアルミニウムといった常電導材料で構成され、一般に、所定の最大電流を流すことができ、かつ、侵入熱が最小限となるような断面積に設計される。
【0006】
例えば、火力発電や原子力発電などといった発電設備から需要側への電力供給線路に超電導ケーブルを利用する場合、発電電力がほぼ一定であることから、上記発電設備から超電導ケーブルに対して、ほぼ一定の大きさの電力が常時投入される。このように超電導ケーブルが受け取る電力が安定している用途(以下、電力安定用途と呼ぶ)では、超電導状態の維持が求められることから、超電導ケーブルや上記端末接続構造などを常時冷却する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-341767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記電力安定用途の他、太陽光発電や風力発電などといった発電設備から需要側への電力供給線路や、電車への電力供給線路(鉄道用き電線)に超電導ケーブルを利用することが検討されている。この用途では、上記発電設備といった電源や電車といった負荷が変動することから、超電導ケーブルが授受する電力が変動する。例えば、太陽光発電の場合は夜間、風力発電の場合は無風時に発電が行われないため、超電導ケーブルに実質的に電力が投入されない。また、電車が走行しない時間帯などでは、き電線となる超電導ケーブルに通電する必要がない。このような超電導ケーブルが授受する電力が変動する用途(以下、電力変動用途と呼ぶ)において従来の端末接続構造のように、常時、冷媒槽内の液体冷媒の量を一定に保持した構成とすると、侵入熱による損失が大きい。
【0009】
上述した端末接続構造では、上記接続導体を介して冷媒槽内の液体冷媒に侵入熱が伝えられ、この熱により液体冷媒の温度が上昇する恐れがある。そこで、液体冷媒の温度上昇を抑制しながら、冷媒槽内の液体冷媒の液面を一定に維持しようとすると、冷媒槽内の液体冷媒を冷凍機などにより冷却し続ける必要がある。その結果、端末接続構造全体として侵入熱に伴う損失が大きくなる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、侵入熱に伴う損失を低減することができる超電導ケーブルの端末接続システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、冷媒槽内の液体冷媒の液面を適宜変動させることで上記目的を達成する。本発明は、超電導ケーブルの端部と常電導機器との間に配置されて、電力の授受に利用される接続導体を具える超電導ケーブルの端末接続システムに係るものである。特に、本発明端末接続システムは、接続導体における上記超電導ケーブル側の一端部が導入されると共に、この端部を冷却する液体冷媒を貯留する冷媒槽と、上記接続導体を介して授受される電力の変動に対応する物理量を計測する物理量計測手段と、上記冷媒槽内の液体冷媒の液面を変化させる液面調整手段と、上記物理量計測手段からの情報に基づき、上記液体冷媒の液面を閾値以下にするように上記液面調整手段を制御する制御手段とを具える。
【0012】
本発明端末接続システムは、接続導体を介して授受される電力が変動する場合、例えば、電源からの電力が変動する場合や負荷が変動する場合において、上記電力の変動に応じて液体冷媒の液面を適宜変化させる。より具体的には、例えば、超電導ケーブルや超電導ケーブルに接続される接続導体において、ある程度の大きさの電力の授受が行われる通常運転時では、従来と同様に冷媒槽内の液体冷媒の液面を所定の位置に一定に保持する。一方、超電導ケーブルや接続導体において、小さな電力の授受が行われる、或いは電力の授受が実質的に行われないとき、例えば、低負荷時や無負荷時、非発電時などでは、接続導体などをあまり冷却しなくても問題にならないことから、冷媒槽内の液体冷媒の液面を閾値以下に下げる。冷媒槽内の液体冷媒の液面を閾値以下とすることで、接続導体において液体冷媒に接触しない箇所の長さを長くすることができる。即ち、接続導体における常電導機器側の端部と液体冷媒に接触している箇所との間の長さを長くすることができる。その結果、接続導体を介して冷媒槽内の液体冷媒に伝わる侵入熱量を小さくすることができる。従って、本発明端末接続システムによれば、所定の最大電流量を確保可能な接続導体、即ち、従来と同様の接続導体を利用していながらも、冷媒槽内の液体冷媒を所定の温度に維持するためのエネルギーを低減することができるため、結果として侵入熱による損失を低減することができる。また、上記電力変動用途では、超電導ケーブルや接続導体に投入される電流、又は超電導ケーブルや接続導体が供給する電流は、常時、最大電流ではなく、最大電流未満の大きさであることが多い。従って、本発明端末接続システムを利用して、上記電力の変動に応じて冷媒槽内の液体冷媒の液面を変化させる(閾値より下げる)ことで、侵入熱による損失を低減することができる。
【0013】
本発明において常電導機器とは、常温環境に配置されて、常電導状態で利用されるものを言う。代表的には、常電導機器は、銅や銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金と言った常電導材料からなる導体を具える電力ケーブルが挙げられ、電力ケーブルなどを介して超電導ケーブルからの電力の受け取りや超電導ケーブルへの電力の投入が可能な各種の電力機器、例えば、発電設備(電源)などを含む。本発明端末接続システムの用途には、上述のように接続導体を介して授受される電力が変動する用途、即ち、太陽光発電や風力発電などの発電設備と需要側との間での電力の授受、鉄道用き電線への電力の供給などの用途が挙げられる。そして、本発明端末接続システムでは、上記電力の変動に応じて、冷媒内の液体冷媒の液面を変化させる条件を設定しておき、この設定した条件に従って、上記液面を変化させる。
【0014】
本発明の一形態として、上記閾値は、上記接続導体において上記冷媒槽内に配置された箇所(以下、冷媒槽導入箇所と呼ぶ)の長さに対して50%の長さの地点である形態が挙げられる。
【0015】
接続導体が常電導材料、代表的には、銅、銅合金、アルミニウム、及びアルミニウム合金から選択される一種から構成される場合、接続導体は、超電導ケーブル側の一端部から常電導機器側の他端部に亘って一様な断面積で、かつ最大電流を流すことが可能な大きさに形成される。このような一様な断面積を有する接続導体の場合、上記電力の変動に応じて冷媒槽内の液体冷媒の液面を調整するとき、当該液体冷媒に浸漬される領域が接続導体における冷媒槽導入箇所の長さの半分以下となるように調整を行うことで、損失を効果的に低減することができる。上記閾値は、損失を低減するために冷媒槽内の液体冷媒の液面を調整した後、代表的には通常運転時の状態から液面を下げた後において、冷媒槽内に存在させ得る液体冷媒の最大量を示す。従って、液体冷媒の液面を閾値よりも下げるほど、損失の低減効果が大きく、冷媒槽内の液体冷媒を全て排出してもよい。例えば、超電導ケーブルの通電時だけ冷媒槽に液体冷媒を満たし、超電導ケーブルの非通電時には、冷媒槽内に液体冷媒が存在しないことを許容する。
【0016】
本発明の一形態として、接続導体が異種の材料により構成された形態が挙げられる。具体的には、上記接続導体は、上記常電導機器側に配置されると共に、常電導材料から構成された常電導部と、上記超電導ケーブル側に配置されると共に、常電導材料から構成された基部、及びこの基部に接合され、超電導材料により構成された超電導層を有する超電導部とを具える形態が挙げられる。特に、上記超電導部の断面積が上記常電導部の断面積よりも小さい形態が挙げられる。このような接続導体を具える場合、上記閾値を上記超電導部と上記常電導部との境界とする形態が挙げられる。
【0017】
ここで、侵入熱Wiは、物体の熱伝導率をλ、物体の断面積をA、物体の温度差をΔTとするとき、λとAとΔTとの積に比例する。従って、接続導体を介して冷媒槽内の液体冷媒への侵入熱を低減するには、接続導体の断面積Aを小さくすることが効果的である。しかし、接続導体を上述のように常電導材料のみで構成する場合、侵入熱の低減のために断面積Aを小さくすると、最大電流を流すための断面積が確保できない。そこで、最大電流による通電を可能にしつつ、断面積の低減を図るために、この形態では、接続導体を常電導材料のみで構成するのではなく、一部に超電導材料を利用し、当該超電導材料からなる超電導層を具える箇所(超電導部)の断面積を小さくする。上記超電導層は、常電導材料よりも電流密度が高い。従って、上述のように超電導部の断面積を小さくしても、最大電流の通電が可能な導体断面積を確保することができる。そして、最大電流の通電を含む通常運転時には、少なくとも、超電導部と常電導部との境界よりも液体冷媒の液面を上げて、超電導部が液体冷媒に浸漬された状態とすることで、超電導状態とすることができるため、最大電流を十分に流すことができる。このとき、超電導部における超電導層の電気抵抗が実質的にゼロであり、かつ基部の断面積が小さいことでジュール損も低減できるため、この形態は、損失の低減効果が大きい。一方、非発電時、低負荷時や無負荷時などの通電量が少ない場合や通電量が実質的に無い非通電時の場合には、少なくとも上記境界よりも超電導部側寄りに液体冷媒の液面を下げて、断面積が大きい常電導部から液体冷媒を遠ざけると共に、液体冷媒に浸漬された領域を断面積が小さい超電導部とすることで、接続導体を介した侵入熱を効果的に低減して、侵入熱に伴う損失を低減することができる。このとき、超電導部の超電導層は、液体冷媒に接触しないことで超電導状態を維持できないが、常電導材料からなる基部が存在することで、必要に応じて、基部の導体断面積に応じた電流を流すことができる。接続導体における超電導部と常電導部との割合は、適宜選択することができる。超電導部の割合が多いほど、接続導体における断面積が小さい領域が多くなり、侵入熱を更に低減することができる。接続導体における冷媒槽導入箇所の実質的に全てを超電導部としてもよい。
【0018】
本発明の一形態として、上記液面調整手段は、加圧気体を上記冷媒槽に導入する気体導入手段と、上記気体導入手段により導入された加圧気体により上記冷媒槽内の液体冷媒の液面を押し下げたとき、上記加圧気体により押し出された液体冷媒を貯留する第1タンクとを具える形態が挙げられる。
【0019】
上記液面調整手段としては、例えば、液体冷媒を貯留する第1タンクと、第1タンクから液体冷媒を冷媒槽に導入すると共に、冷媒槽から液体冷媒を第1タンクに排出するためのポンプとを具えた構成が挙げられる。上記ポンプを駆動することで、第1タンクと冷媒槽との間で液体冷媒の導入・排出を容易に行える。これに対して、上記形態では、加圧気体を冷媒槽に導入して、冷媒槽内から第1タンクに液体冷媒を押し出すことで移送する構成である。この構成では、加圧気体を冷媒槽から排出することで、第1タンクから冷媒槽内に液体冷媒を移送する(戻す)ことができる。冷媒槽内に加圧気体を導入することで、冷媒槽内に存在する液体冷媒を一定の加圧状態に維持することができる。上記液体冷媒が高圧状態であることで、液体冷媒の沸点を上げることができ、液体冷媒を気化し難くすることができる。また、この形態では、ポンプを用いて冷媒槽の内外に液体冷媒の移送を行う場合と比較して、液面が激しく揺れたり、液体冷媒が激しく流動したりしないため、液体冷媒の移送に伴う影響が冷媒槽内の収納物に及び難い。
【0020】
本発明の一形態として、上記液面調整手段は、上記冷媒槽に対して異なる高さ位置に連結される複数の配管と、上記各配管により上記冷媒槽と連通される第1タンクと、上記各配管に配置され、いずれかの配管の高さ位置で上記冷媒槽内の液体冷媒の液面を規定するように開閉状態の切り替えが行われる開閉弁とを具える形態が挙げられる。
【0021】
上記形態では、冷媒槽に対して連結された配管の高さ位置で冷媒槽内の液体冷媒の液面を規定するので、液面の位置を容易に調整することができる。その配管の連結箇所は、通常運転時における冷媒槽内の液体冷媒の液面位置と、この通常運転時の液面位置よりも低い所望の液面位置とに設けることが好ましい。このような配管の取り付け位置とすれば、液面計など、液面の位置を把握するための液面計測手段を別途取り付けることなく、簡易な液面調整手段にて正確に冷媒槽の液面調整を行うこともできる。
【0022】
本発明の一形態として、上記液面調整手段は、上記冷媒槽と連通する第2タンクと、上記第2タンク内の加圧気体を排出する気体排出手段とを具える形態が挙げられる。
【0023】
上記形態では、冷媒槽と連通する第2タンクを具え、この第2タンク内の加圧気体を排出することにより、冷媒槽から液体冷媒が第2タンクに導入される。その導入された液体冷媒の体積分、冷媒槽内の液体冷媒の液面は下がる。すなわち、第2タンク内の気体の圧力を変化させることによって、冷媒槽内の液体冷媒の液面を変化させることができる。この形態では、ポンプを用いて冷媒槽の内外に液体冷媒を移送する場合と比較して、液面が激しく揺れたり、液体冷媒が激しく流動したりしない。そのため、液体冷媒の移送に伴う影響が冷媒槽内の収納物に及び難い。
【発明の効果】
【0024】
本発明超電導ケーブルの端末接続システムは、侵入熱による損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施形態1の超電導ケーブルの端末接続システムの概略構成図であり、液面が初期位置にある状態(通常運転時)を示す。
【図2】図2は、実施形態1の超電導ケーブルの端末接続システムの概略構成図であり、液面を所定の位置に変化させた状態を示す。
【図3】図3は、実施形態1の超電導ケーブルの端末接続システムの機能ブロック図である。
【図4】図4は、実施形態2の超電導ケーブルの端末接続システムの概略構成図であり、液面が初期位置にある状態(通常運転時)を示す。
【図5】図5は、実施形態2の超電導ケーブルの端末接続システムの概略構成図であり、液面を所定の位置に変化させた状態を示す。
【図6】図6は、実施形態3の超電導ケーブルの端末接続システムの概略構成図であり、液面が初期位置にある状態(通常運転時)を示す。
【図7】図7は、実施形態3の超電導ケーブルの端末接続システムの概略構成図であり、液面を所定の位置に変化させた状態を示す。
【図8】図8は、従来の超電導ケーブルの端末接続構造の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面において同一符号は同一名称物を示す。
【0027】
(実施形態1)
図1に示す超電導ケーブルの端末接続システム1は、超電導ケーブルと常電導機器との間で電力の授受を行う端末接続構造10を具える。端末接続構造10は、図8で説明した従来の端末接続構造100と基本的構造は同様であり、超電導ケーブルの端部と常電導機器との間に配置される接続導体11と、接続導体11の一端部が導入される冷媒槽13を内蔵する終端接続箱12とを具える。この端末接続システム1の特徴とするところは、上記冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを変動させるための機構を具え、接続導体11を介して授受される電力の変動に応じて、上記液面13fを変動する点にある。以下、各構成をより詳細に説明する。
【0028】
《超電導ケーブル》
まず、超電導ケーブルを説明する。超電導ケーブルは、代表的には、超電導層を具えるケーブルコア200が真空断熱管に収納された構成である。ケーブルコア200は、代表的には、中心から順にフォーマ、内側超電導層201、電気絶縁層、外側超電導層、常電導層、保護層を具える。交流送電では、上記内側超電導層201が超電導導体、外側超電導層が超電導シールド層に利用され、直流送電では、例えば、上記内側超電導層及び外側超電導層の一方が正極層(往路層)、他方が負極層(帰路層)に利用される。上記真空断熱管には、一心又は複数心の上記ケーブルコア200が収納される。
【0029】
フォーマは、銅やアルミニウムなどの常電導材料にて形成された中実状体や中空状体(管体)が挙げられる。超電導層は、例えば、酸化物超電導体を具えるテープ状線材、例えば、Bi2223系超電導テープ線(Ag-Mnシース線)を単層又は多層に螺旋状に巻回した構成が挙げられる。その他、RE123系薄膜線材(RE:希土類元素、例えばY、Ho、Nd、Sm、Gdなど)も超電導層に利用できる。電気絶縁層は、クラフト紙などの絶縁紙テープや、クラフト紙とプラスチックとを複合した半合成絶縁紙テープ、例えば、住友電気工業株式会社製PPLP(登録商標)といったテープ状の絶縁性材料を巻回した構成が挙げられる。常電導層は、銅などの常電導材料、例えば、銅テープを螺旋状に巻回した構成が挙げられ、必要に応じて設けられる。保護層は、クラフト紙などを巻回した構成が挙げられる。ケーブルコアを収納する真空断熱管は、代表的にはステンレス鋼からなるコルゲート管の二重構造管であって、内管と外管との間が真空引きされた真空断熱構造のものが挙げられる。
【0030】
《超電導ケーブルと終端接続箱との接続部分》
超電導ケーブルの端部において真空断熱管から引き出されたケーブルコア200の端部を段剥ぎして露出された内側超電導層201に接続スリーブ202を介して導体棒110が接続され、この導体棒110の一端側が冷媒槽13に導入される。ケーブルコア200の端部及び露出された内側超電導層201、接続スリーブ202、導体棒110の外周には絶縁層203が設けられ、液体冷媒が充填された接続用冷媒槽204内に収納される。接続用冷媒槽204の外周には、接続用真空断熱槽205が設けられる。接続スリーブ202や導体棒110は、代表的には銅やアルミニウムなどの導電性材料で構成される。導体棒110は、その外周に配置されたエポキシユニット206により冷媒槽13に固定される。ここでは、導体棒110を利用した構成を示すが、ケーブルコアの超電導層を冷媒槽13に直接導入する構成としてもよい。
【0031】
《端末接続構造》
[接続導体]
上記超電導ケーブルの内側超電導層201には、導体棒110及びジョイント部120を介して接続導体11が接続される。接続導体11は、導電性材料から構成された棒状体であり、一端部側の領域は、冷媒槽13に導入され、一端部にジョイント部120を介して導体棒110が接続され、他端部側の領域は、終端接続箱12に突設された碍管15に収納される。
【0032】
接続導体11は、常電導材料と超電導材料とで構成されている。具体的には、接続導体11は、常電導機器側に配置される常電導部11nと、ジョイント部120に接続される側(超電導ケーブル側)に配置される超電導部11sとを具える。常電導部11nは、銅で構成されており、超電導部11sは、銅で構成された基部と、基部の外周に接合され、超電導材料により構成された超電導層とを有する。
【0033】
常電導部11n及び超電導部11sの基部は、異なる部材を圧着や溶接などにより接合して一体物としてもよいが、ここでは、一体の銅棒としている。一体の銅棒とすることで、強度に優れる上に、接続抵抗による損失が実質的に生じない。
【0034】
超電導部11sの超電導層は、例えば、超電導ケーブルの超電導層を構成する上述した超電導線材を上記基部の外周に半田などで接合することにより構成することができる。通常運転時などにおいて、この超電導層が冷媒槽13内の液体冷媒13lにより冷却されて超電導状態となるように、超電導部11sは、接続導体11において冷媒槽13内に導入される箇所(冷媒槽導入箇所)に設ける。接続導体11の冷媒槽導入箇所における超電導部11sの割合(接続導体11の全長LRにおける長さ割合)は、適宜選択することができる。ここでは、超電導部11sの長さLsは、冷媒槽導入箇所の全長LRの約60%(Ls≒0.6×LR)としている。
【0035】
そして、接続導体11では、常電導部11nの横断面積と超電導部11sの横断面積(基部と超電導層との合計面積)とが異なっており、超電導部11sの横断面積が常電導部11nの横断面積よりも小さい。但し、常電導部11nは、最大電流を流すことが可能な導体断面積を有し、超電導部11sは、基部を細くすると共に、最大電流を流すことが可能なように超電導層を設けている。ここでは、上述の銅棒において基部の構成箇所を切削などして、基部の横断面積を小さくしている(基部を細くしている)。上述した超電導線材は一般に非常に薄いため、細い基部に接合することで、常電導部11nよりも横断面積が小さい超電導部11sを容易に形成することができる。なお、接続導体は、その全体が中実体でもよいが、少なくとも一部、例えば超電導部の基部を中空体(管状体)としてもよい。この場合、接続導体の断面積を更に小さくし、軽量化することができる。ここでは、超電導部11sの外周に固体絶縁層を設けていないが、課電電圧に応じて適宜設けることができる。
【0036】
常電導部11nの外周には、FRP(繊維強化プラスチック)からなる筒状の固体絶縁体11iを具える。即ち、接続導体11と固体絶縁体11iとで従来のブッシング101(図8)に相当するものを構成する。この固体絶縁体11iは、中間部分にその外周から突出する環状のフランジ部11f1,11f2を離間して具える。一方のフランジ部11f1は、冷媒槽13に固定され、他方のフランジ部11f2は後述する真空断熱槽14にそれぞれ固定されることで、接続導体11が終端接続箱12に固定される。
【0037】
上記ジョイント部120には、例えば、銅製の編組材といった可撓性に優れる部材を利用すると、接続導体11と導体棒110との接続作業を行い易い。ジョイント部120と接続導体11、導体棒110との接続において常電導材料からなる部分同士の接続には、圧着接続や端子金具を利用することができ、常電導材料からなる部分と超電導材料からなる部分との接続には、半田などを用いることができる。
【0038】
[終端接続箱]
上記超電導ケーブルに接続された導体棒110の一端部と、上記接続導体11の超電導部11s側(超電導ケーブル側)の一端部とは、終端接続箱12に内蔵される冷媒槽13に導入される。冷媒槽13内には、通常運転時、液体窒素といった液体冷媒13lが充填されており、その液面13fは、接続導体11の超電導部11sが十分に浸漬できる位置に保持される。より具体的には、通常運転時、液体冷媒13lの液面13fは、超電導部11sと常電導部11nとの境界11bよりも常電導部11n寄り(ここでは境界11bよりも上方)になるように保持される。また、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fよりも常電導機器側の領域(ここでは液面13fよりも上方の領域)は、液体窒素といった液体冷媒ではなく、低温の気体窒素といった気体冷媒が存在する気相領域13gとする。気相領域13gを具える構成とすることで、接続導体11の温度の変化を緩やかにすることができる。通常運転時、この気相領域13gの気体に所定の圧力を付与することで、液面13fを所定の位置(ここでは、図1に示す位置)に維持する。
【0039】
冷媒槽13の外周には、真空断熱槽14が設けられている。図1に示す例では、接続導体11を覆う箇所(上記両フランジ部11f1,11f2間)を二重の真空構造とし、真空断熱槽14が高真空状態を維持し易いようにしているが、図8に示すように一重の真空構造でもよい。
【0040】
[碍管]
上記接続導体11の常電導機器側の領域は、終端接続箱12に突設された碍管15内に収納される。碍管15内には、絶縁油やSF6ガスなどの絶縁流体が充填される。なお、高電圧用途では、碍管15が設けられるが、低電圧用途では、碍管を設けない絶縁構造とすることができる。また、低電圧用途では、接続導体11の外周の絶縁層も簡略化することができる。
【0041】
なお、図1,2では、内側超電導層201と常電導機器とを接続する場合を示すが、外側超電導層も同様に常電導機器に接続される。
【0042】
《端末接続構造の組立手順》
上記接続導体11及び終端接続箱12を有する端末接続構造10は、従来の端末接続構造100と概ね同様の組立手順により構築することができる。例えば、固体絶縁体11iを具える接続導体11の一端部を終端接続箱12に挿入して固定し、他端部の外周には碍管15を配置して固定する。一方、超電導ケーブルの端部からケーブルコア200を引き出し、上述のようにコア200の端部を段剥ぎして、内側超電導層201に接続スリーブ202を介して導体棒110を接続し、導体棒110の一端部を終端接続箱12に挿入して固定する。そして、終端接続箱12に挿入された接続導体11と導体棒110とをジョイント部120で接続する。終端接続箱12にハンドホールを設けておくと、ジョイント部120の接続作業を行い易い。上記工程により、端末接続構造10が構築される。
【0043】
《液面の変動機構》
上記端末接続構造10を具える端末接続システム1は、更に、物理量計測手段20と、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを変化させる液面調整手段21と、液面調整手段21を制御する制御手段22とを具える。
【0044】
[物理量計測手段]
物理量計測手段20は、接続導体11を介して授受される電力の変動に対応する物理量を計測するものである。例えば、端末接続システム1を具える超電導ケーブル線路を、太陽光発電などによる発電電力を需要側に供給する電力供給線路に利用する場合、当該発電電力は、太陽光の放射量により変動することから、発電設備から超電導ケーブルに投入される電力(代表的には電流)が変化する。従って、この場合、例えば、超電導ケーブルに流れる電流を接続導体を介して授受される電力(ここでは太陽光発電などによる発電電力)の変動に対応する物理量として利用することができる。そこで、ここでは、物理量計測手段20として、電流計を用いる。電流計は、端末接続構造10の任意の箇所に取り付けられ、図1に示す取付箇所は例示である。
【0045】
[液面調整手段]
液面調整手段21は、冷媒槽13内の液体冷媒13lの量を積極的に変動させるためのものである。ここでは、冷媒槽13内の気相領域13gに取り付けられ、加圧気体を冷媒槽13に導入するコンプレッサといった気体導入手段21cと、冷媒槽13内の液相領域に取り付けられ、導入された上記加圧気体により冷媒槽13から押し出された液体冷媒を貯留する第1タンク24とを具える。
【0046】
加圧気体は、気体窒素や気体ヘリウムなどの絶縁性に優れる気体が挙げられ、液体冷媒13lと異種の材質でもよいが、同種の場合、液化した場合に液体冷媒13lに混合されても問題が無い。所望の加圧気体を貯留するボンベ(図示せず)を気体導入手段21cに併設する。気体導入手段21cと冷媒槽13とを連結する配管には適宜開閉弁(図示せず)を設けておくと、液体冷媒の逆流を防止できて好ましい。
【0047】
第1タンク24は、液体冷媒13lを所定の温度に保持可能な断熱構造(図示せず)であり、併設の冷凍機23を適宜駆動させて、液体冷媒13lを所定の温度に維持することができる。第1タンク24と冷媒槽13との間には、液体冷媒13lを移送するための、断熱構造(図示せず)の配管が連結され、この配管により第1タンク24と冷媒槽13との間は、常時連通された状態である。この配管は、冷媒槽13内において常時液相領域である箇所(図1では冷媒槽13の底面側)に配置する。
【0048】
この第1タンク24は、超電導ケーブルの冷却系統の一部を構成する場合と、超電導ケーブルの冷却系統とは独立した端末接続構造の冷却系統を構成する場合とがある。前者は、第1タンク24内の液体冷媒が冷媒槽13内及び超電導ケーブル内を冷却する液体冷媒として循環される。その循環経路として、第1タンク24内の液体冷媒は、超電導ケーブルの一端部を冷却するための冷媒槽13内に導入され、超電導ケーブル線路を冷却するためにその長手方向に沿って流通し、同ケーブルの他端部側の冷媒槽(図示せず)に導入され、その後第1タンク24内に戻される構成が挙げられる。後者は、第1タンク24内の液体冷媒が冷媒槽13内の液体冷媒13lとのみ循環される。その循環経路として、第1タンク24内の液体冷媒は、冷媒槽13内に導入され、その後第1タンク24内に戻される構成が挙げられる。両者とも、第1タンク24内に戻された液体冷媒は、冷凍機23で所定の温度に冷却され、再度循環される。
【0049】
この液面調整手段21は、気体導入手段21cにより加圧気体を冷媒槽13に導入することで、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを所定の位置まで押し下げ(図2参照)、この押圧により押し出された液体冷媒を第1タンク24に流入する構成である。また、気体導入手段21cは、導入した加圧気体を排出して、液面13fの押圧力を緩和する或いは除去することで、第1タンク24の液体冷媒を冷媒槽13内に自動的に戻す構成である。
【0050】
その他、冷媒槽13内に液面計測手段(図示せず)を取り付けて液面の位置を把握できるようにすると、液体冷媒13lの液面13fの位置の制御を精度良く行えて好ましい。例えば、冷媒槽13の所定の位置に熱電対といった温度計測手段を取り付け、当該取付箇所の温度を測定することで、液面13fの位置を把握することができる。具体的には、上記取付箇所の温度が液体冷媒の温度であれば、この位置に液体冷媒が存在する、即ち、液面13fは、当該取付箇所以上であると判断でき、液体冷媒の温度よりも高ければ、この位置に液体冷媒が存在せず気相領域となっている、即ち、液面は、当該取付箇所未満の位置であると判断できる。冷媒槽13内の複数の地点に液面計測手段を取り付け、当該各液面計測手段の位置情報と測定情報とにより、液面の位置を判断するように構成してもよい。その他、液面計測手段としては、液体窒素といった低温領域でも使用可能な市販の計測装置を適宜利用することができる。例えば、絶縁された電極棒をレベルセンサとして具える静電容量式液化ガス液面計などを利用することができる。
【0051】
[制御手段]
上記物理量計測手段20、液面調整手段21(気体導入手段21c)は、制御手段22に接続されて、情報の送受や動作の駆動の制御が行われる。より具体的には制御手段22は、図3に示すように物理量計測手段20からの測定結果情報が入力される入力インターフェース220と、所定の設定値を記憶する記憶手段221と、測定結果情報と設定値とを比較する情報比較手段222と、情報比較手段222の比較結果に基づき、液面調整手段21に駆動命令を出す命令手段223とを具える。その他、制御手段22には、上述した開閉弁や冷凍機23、適宜液面計測手段が接続され、開閉弁の開閉動作の制御や、冷凍機23の駆動の制御、液面の位置の把握なども行う構成とすることができる。このような制御手段22には、例えば、市販のコンピュータを利用することができる。また、制御手段22には、作業者が設定値の入力や制御状態などを把握し易いようにモニタ225や、設定値の入力が行えるキーボードなどの直接入力手段226を併設させると、設定値の入力などを容易に行える。
【0052】
《液面の調整手順》
次に、上記構成を具える超電導ケーブルの端末接続システム1において、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを調整する動作手順を説明する。ここでは、物理量として電流を利用する場合を例に説明する。
【0053】
まず、通常運転時から液体冷媒13lの液面13fを変化させるタイミング、通常運転時の冷媒槽内の液体冷媒の液面の位置(初期位置)、及び変化後の液面の位置(以下、変化後位置と呼ぶ)を設定する。ここでは、上記タイミングとして、非発電時などで超電導ケーブルに電流がほとんど流れないときに液面を変化させる場合を想定する。また、ここでは、接続導体11における超電導部11sと常電導部11nとの境界を閾値(基準)とし、上記液面13fの初期位置を当該境界よりも常電導部寄りの位置(図1参照)、変化後の位置を閾値以下の位置、即ち当該境界よりも超電導部寄りで、かつジョイント部120よりも上方の位置(図2参照)とする。つまり、電流値がI0A以下となったら、通常運転時(初期位置)よりも液面13fを下げて変化後位置とし、電流値がI0A超に戻ったら、上記液面13fを変化後位置から初期位置まで戻す。上記設定電流値(I0)は制御手段22の記憶手段221(図3参照)に入力しておけばよい。また、変化後の液面13fの位置まで冷媒槽13内の液体冷媒13lを押し下げるために必要な加圧気体を導入するように気体導入手段21cを調整しておく。なお、ここでは、冷媒槽13内の変化後の液面13f位置を上記境界から十分に離した位置としているが、少なくとも上記境界から離れた位置であれば液面13f位置は任意の位置を選択することができる。
【0054】
上記設定作業が終わったら、物理量計測手段20による電流の測定を始める。物理量計測手段20は、電流を随時測定し、測定結果情報を制御手段22に送る。制御手段22は、入力インターフェース220(図3参照)により上記送られた測定結果情報を取得した後、記憶手段221から呼び出した設定電流値と測定結果情報とを比較手段222により比較する。測定した電流Inが設定電流値I0よりも大きい場合(In>I0)、大きな電流を流せる状態を維持する必要がある、即ち、接続導体11をこのまま冷却しておく必要があると考えられるため、上記測定結果情報の取得及び比較を繰り返す。更に、上述した液面計測手段を具える構成としてもよい。例えば、冷媒槽において接続導体における超電導部と常電導部との境界が配置される位置に熱電対を取り付けて当該取付箇所の温度を測定し、液体冷媒の温度となっている、即ち、液体冷媒の液面が上記境界の位置よりも上の初期位置にあることを確認する構成とすることができる。特に、熱電対などの液面計測手段からの測定情報と、予め記憶手段に記憶された液体冷媒の温度とを比較して、測定した温度の判定を行うように制御手段22を構成しておくと、上記液面の確認が自動的に行える。
【0055】
一方、測定した電流Inが設定電流値I0以下となった場合(In≦I0)、液面の変動を行う。具体的には、制御手段22は、上記比較結果に基づき、命令手段223により気体導入手段21cに駆動命令を出す。また、制御手段22は、開閉弁を開くように命令を出す。上記命令を受けた気体導入手段21cは、設定された圧力及び量の加圧気体を冷媒槽に導入して冷媒槽内の液体冷媒の液面を所定の位置(図2参照)まで押し下げる。加圧気体により押圧されて冷媒槽から押し出された液体冷媒は第1タンク24に流入される。冷媒槽内の液体冷媒の液面が通常運転時よりも押し下げられた状態(変化後位置となった状態)となることで、接続導体の冷媒槽導入箇所において液体冷媒との接触領域を低減することができる。更に、上述のように冷媒槽内の上記境界の位置に熱電対を取り付けておき、加圧気体を導入した後、当該取付箇所の温度を測定し、液体冷媒の液面が上記境界から離れた所定の位置(ここでは設定変化位置)となっているかを確認するように制御手段22を構成すると、液面を確実に、かつ精度良く制御することができる。
【0056】
上記液面を押し下げた状態にした後も、物理量計測手段20により電流を測定し続け、In≦I0を満たす間は、上述のように冷媒槽内の液体冷媒の液面を押し下げた状態を維持するように、制御手段22は、液面調整手段21を制御する。また、この間、上述した液面計測手段により、液面の位置を確認するように制御手段22を構成してもよい。
【0057】
他方、In>I0となったら、再び、液面の変動を行う。即ち、冷媒槽内の液体冷媒の液面を通常運転時の位置(初期位置)に戻す。このとき、制御手段22は、気体導入手段21cに液面調整の命令を出し、上記命令を受けた気体導入手段21cは、冷媒槽内の加圧気体を排出して、冷媒槽内の液体冷媒の液面を押し付けている力を緩和する。上記加圧気体の排出に伴い、第1タンク24から液体冷媒が冷媒槽内に流入していき(戻っていき)、初期位置(図1参照)まで液面が上げられる。冷媒槽内の液体冷媒の液面が通常運転時の位置に戻されることで、少なくとも超電導部の全体が液体冷媒に浸漬されて、超電導状態になる。従って、所定の最大電流の通電が可能となる。加圧気体を排出した後、上述した液面計測手段により、液面の位置を確認するように制御手段22を構成してもよい。
【0058】
以下、物理量計測手段20により電流の測定を行い、電流値に基づいて上記手順を繰り返し行う。
【0059】
[効果]
上記構成を具える端末接続システム1によれば、接続導体11を介して授受される電力の変動に応じて、例えば、発電量が少ない場合や全く発電が行われていない場合に冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを変動する(下げる)ことで、接続導体を介した侵入熱が液体冷媒13lに伝えられる量を低減することができる。そのため、冷媒槽13内の液体冷媒13lを冷却するためのエネルギーを低減でき、端末接続システム1は、侵入熱に伴う損失を低減することができる。
【0060】
特に、端末接続システム1では、接続導体11の一部を超電導部11sとしていることで、通電時の損失をも効果的に低減することができる。かつ、超電導部11sを具えることで、接続導体11の一部の断面積を小さくすることができ、最大電流の通電を可能にしながら、侵入熱を効果的に低減できる。また、接続導体11では、冷媒槽導入箇所の全長の半分以上の領域が、残部の領域よりも断面積が小さいことで、侵入熱を更に効果的に低減することができる。
【0061】
更に、端末接続システム1では、液面調整手段21として加圧気体により液面を押し下げる手法を採用することで、冷媒槽13内の液体冷媒13lの圧力を高められ、沸点を上げられる。従って、液面13fが押し下げられて気相が多く存在する状態であっても、冷媒槽13内に残存する液体冷媒が気化し難く、液体状態を十分に維持できる。即ち、冷媒槽13内を十分に低温な状態に保持し易く、第1タンク24から液体冷媒が戻されたときにこの液体冷媒が気化することを抑制できる。
【0062】
なお、上記の例では、電源の電力が変動する場合を例にとり、液面を変化させるタイミングを決める電流値を一つ設定した場合を説明した。その他、上記タイミングを決める電流値を複数設定し、各電流値に応じて液面を変化させる構成としてもよい。例えば、最大発電時、中程度の発電時、非発電時といった段階に分けて、液面の変動を行うことができる。上述のように接続導体11は、超電導部11sに常電導材料からなる基部を具えることで、超電導部11sの一部が液体冷媒に浸漬されていない状態であっても、基部を利用して電流を流すことができる。従って、上記中程度の発電時の電流値が、基部の導体断面積で十分に流すことが可能な大きさであれば、このような段階的な液面の変動も可能である。
【0063】
(実施形態2)
次に、図4と図5を参照して、実施形態2の超電導ケーブルの端末接続システム2を説明する。実施形態2では、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを変化させる液面調整手段21の構成が、実施形態1と異なる。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は実施形態1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
[液面調整手段]
液面調整手段21は、冷媒槽13に対して異なる高さ位置に連結される2本の配管26と、これらの配管26により冷媒槽13と連通される第1タンク24とを具える。そして、いずれかの配管26の高さ位置で冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを規定するように開閉状態の切り替えが行われる開閉弁27が各配管26に配置されている。
【0065】
2本の配管26のうち、一方の配管26(以下、上配管26Uと呼ぶ)の一端は、冷媒槽13における通常運転時の液体冷媒13lの液面と対応する位置に連結され、もう一方の配管26(以下、下配管26Lと呼ぶ)の一端は、この通常運転時の液面位置よりも低い所望の液面と対応する位置に連結されている。本実施例では、2本の配管26Uと26Lを配置しているが、3本以上の配管を冷媒槽13における高さの異なる位置に連結することで、更に詳細に冷媒槽13内の液面13fを規定することができる。
【0066】
第1タンク24は、上記配管26により冷媒槽13と連通されている。第1タンク24は、液体冷媒13lを所定の温度に保持可能な断熱構造(図示せず)であり、併設の冷凍機23を駆動させて、第1タンク24内の液体冷媒13lを所定の温度に維持することができる。この第1タンク24は、実施形態1と同様に、超電導ケーブルの冷却系統の一部として構成しても、超電導ケーブルの冷却系統とは独立した端末接続構造の冷却系統として構成してもよい。
【0067】
上記の各配管26には、開閉弁27が配置されている。冷媒槽13に対して、上配管26Uに配置された開閉弁27(以下、上開閉弁27Uと呼ぶ)と、下配管26Lに配置された開閉弁27(以下、下開閉弁27Lと呼ぶ)との開閉状態の切り替えを行うことによって、冷媒槽13内の液面13fを規定する。冷媒槽13内の液面13fを通常運転時の位置にする場合(図4参照)、上開閉弁27Uを開け、下開閉弁27Lを閉める。通常運転時の液面位置よりも低い所望の液面位置にする場合(図5参照)、上開閉弁27Uを閉め、下開閉弁27Lを開ける。冷媒槽13内の液体冷媒13lは、開閉弁27の開いている配管26を流通するので、所望の液面13f位置に連結された配管26に配置された開閉弁27を開けることによって、冷媒槽13内の液面13fを規定することができる。
【0068】
[制御手段]
実施形態1と同様に、制御手段22は、物理量計測手段20と液面調整手段21とに接続され、情報の送受や動作の駆動の制御が行われる。制御手段22は、液面調整手段21の駆動制御の他、液体冷媒13lの流量調整の制御、冷媒槽13内の気相領域13gの圧力制御なども行う構成とすることができる。
【0069】
《液面の調整手順》
次に、実施形態2の超電導ケーブルの端末接続システム2において、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを調整する動作手順を説明する。ここでは、物理量として電流を利用する場合を例に説明する。
【0070】
まず、制御手段22への各種設定作業を行う。冷媒槽13内の液面13fを変化させるタイミングは、実施形態1と同様に、非発電時などで超電導ケーブルに電流がほとんど流れないときに液面を変化させる場合を想定する。冷媒槽13に対して、通常運転時における冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面位置(初期位置)に連結された上配管26Uに配置された上開閉弁27Uと、初期位置よりも低い所望の液面位置(変化後位置)に連結された下配管26Lに配置された下開閉弁27Lとの開閉状態の切り替えを行うように制御手段22を設定しておく。液面13fの初期位置(図4参照)と変化後位置(図5参照)とは実施形態1と同様である。また、それらの位置に冷媒槽13内の液面13fを変化させる条件も実施形態1と同様である。
【0071】
上記設定作業が終わったら、物理量計測手段20による電流の測定を始める。測定した電流Inが設定電流値I0よりも大きい場合(In>I0)、各配管26に配置された開閉弁27は、上開閉弁27Uが開けられ、下開閉弁27Lが閉められる。この状態は通常運転時の状態であり、初期設定時はこの状態であることが好ましい。
【0072】
一方、測定した電流Inが設定電流値I0以下となった場合(In≦I0)、液面の変動を行う。具体的には、制御手段22は、上記比較結果に基づき、命令手段223(図3参照)により液面調整手段21に駆動命令を出す。命令を受けた液面調整手段21は、各配管26に配置された開閉弁27の開閉状態の切り替えを行う。つまり、上開閉弁27Uが閉められ、下開閉弁27Lが開けられることにより、液体冷媒13lは下開閉弁27Lが配置された下配管26Lを流通することになり、冷媒槽13内の液面13fが所定の位置(図5参照)に変化する。このとき、上開閉弁27Uを閉めることで、液体冷媒13lが下配管26Lを流通した後、上配管27Uを介して冷媒槽13に流れ込むことを防止できて好ましい。また、制御手段22は、冷媒槽13内の液面13fが下がることに伴い、冷媒槽13内と連通して加圧気体を貯留するボンベ29の開閉弁を開き、冷媒槽13内の気相領域に加圧気体を導入し、例えば気相領域の圧力を一定に保持する。冷媒槽13内の液面13fが、通常運転時の液面位置よりも低い液面位置 (変化後位置)となることで、接続導体11の冷媒槽13への導入箇所において液体冷媒13lとの接触領域を低減することができる。
【0073】
上記液面13fを下げた状態にした後も、物理量計測手段20により電流を測定し続け、In≦I0を満たす間は、上述のように冷媒槽13内の液体冷媒13lは通常運転時の液面13fの位置よりも低い位置に連結された下配管26Lを流通するように、制御手段22は液面調整手段21を制御する。
【0074】
他方、In>I0となったら、再び、液面の変動を行う。即ち、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを通常運転時の位置(初期位置)に戻す。このとき、制御手段22は、液面調整手段21に液面調整の命令を出し、上記命令を受けた液面調整手段21は、各配管26に配置された開閉弁27の開閉状態の切り替えを行う。つまり、下開閉弁27Lが閉められ、上開閉弁27Uが開けられる。また、制御手段22は、液体冷媒13lの流量の調整を行うポンプ28の制御を行う。冷媒槽13内の液面13fを通常運転時の位置(初期位置)に戻すために、ポンプ28の駆動により冷媒槽13内に液体冷媒13lを供給する。通常、ポンプ28による液体冷媒13lの供給量は、配管26からの排出量と実質的に同量である。更に、制御手段22は、冷媒槽13内の液面13fが上がることに伴い、冷媒槽13内の気相領域13gの加圧気体を排出し、例えば気相領域13gの圧力を一定に保持する。液体冷媒13lが上配管26Uを流通することにより、冷媒槽13内の液面13fが初期位置(図4参照)に戻る。冷媒槽13内の液面13fが通常運転時の位置に戻されることで、少なくとも超電導部11sの全体が液体冷媒13lに浸漬されて、超電導状態になる。従って、所定の最大電流の通電が可能となる。
【0075】
以下、物理量計測手段20により電流の測定を行い、電流値に基づいて上記手順を繰り返し行う。
【0076】
[効果]
上記構成を具える端末接続システム2によれば、液面調整手段21として、冷媒槽13に対して連結された配管26の高さ位置で冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを規定するので、液面13fの位置を容易に調整することができる。このような配管26の取り付け位置とすれば、液面計など、液面13fの位置を把握するための液面計測手段を別途取り付けることなく、簡易な液面調整手段21にて正確に冷媒槽13の液面調整を行うこともできる。
【0077】
また、液面13fを変化させるタイミングとして電流値を複数設定し、各電流値に応じて液面13fを変化させる構成としてもよい。例えば、最大発電時、中程度の発電時、非発電時といった段階に分けて、液面13fの変動を行うことができる。冷媒槽13に連結される配管26の位置を各電流値に応じた液面13f位置に配置し、各配管26に配置された開閉弁27の開閉状態の切り替えを行うことによって、液面13fの位置を容易に調整することができる。
【0078】
更に、接続導体11を介して授受される電力の変動に応じて、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを変動する(下げる)ことで、接続導体11を介した侵入熱が液体冷媒13lに伝えられる量を低減することができるという実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0079】
(実施形態3)
次に、図6と図7を参照して、実施形態3の超電導ケーブルの端末接続システム3を説明する。実施形態3では、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを変化させる液面調整手段21が、実施形態1と異なる。以下、この相違点を中心に説明し、その他の構成は実施形態1の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
[液面調整手段]
液面調整手段21は、冷媒槽13と連通する第2タンク25と、冷媒槽13から第2タンク25への液体冷媒13lの移送により冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを下げるように、第2タンク25内の加圧気体を排出する気体排出手段21eとを具える。
【0081】
第2タンク25は、実施形態1で述べたような第1タンク24(超電導ケーブルや端末接続構造の冷却系統の一部として構成)とは別に、冷媒槽13と連通して設けられる。第2タンク25は、液体冷媒13lを所定の温度に保持可能な断熱構造(図示せず)であり、併設の冷凍機(図示せず)を駆動させて、第2タンク25内の液体冷媒13lを所定の温度に維持することもできる。
【0082】
第2タンク25内の加圧気体は、例えば液体冷媒13lが液体窒素の場合、気体窒素や気体ヘリウムなどが挙げられ、液体冷媒13lと異種の材質でもよいが、同種の場合、液化した場合に液体冷媒13lに混合されても問題が無い。第2タンク25から排出された加圧気体は、例えば気体排出手段21eに併設されるボンベ(図示せず)に貯留すればよい。気体排出手段21eと第2タンク25とを連結する配管には適宜開閉弁(図示せず)を設けておくと、液体冷媒13lの逆流を防止できて好ましい。
【0083】
この液面調整手段21は、気体排出手段21eにより加圧気体を第2タンク25から排出することで同タンク内を減圧し、第2タンク25へ冷媒槽13から液体冷媒13lを移送することができ、それに伴い冷媒槽13内の液面13fを所定の位置まで下げる構成(図7参照)である。また、気体排出手段21eは、上記ボンベから第2タンク25内に加圧気体を導入する気体導入手段の機能をも備えている。つまり、この加圧気体の導入により、第2タンク25内の液体冷媒13lの液面13fを押圧することで、第2タンク25内の液体冷媒13lを冷媒槽13内に戻すことができる。それに伴い冷媒槽13内の液面13fを通常運転時の位置まで戻すことができる(図6参照)。
【0084】
その他、実施形態1と同様に、冷媒槽13内に液面計測手段(図示せず)を取り付けて液面の位置を把握できるようにすると、液体冷媒13lの液面13fの位置の制御を精度良く行えて好ましい。また、第2タンク25内にも液面計測手段(図示せず)を取り付けて、第2タンク25内の液面の位置を把握できるようにする構成としてもよい。更に、第2タンク25内の気相領域に圧力計測手段(図示せず)を取り付けて気体の圧力を把握できるようにする構成としてもよい。
【0085】
[制御手段]
実施形態1と同様に、制御手段22は、物理量計測手段20と液面調整手段21とに接続され、情報の送受や動作の駆動の制御が行われる。制御手段22は、液面調整手段21の駆動制御の他、冷媒槽13内の気相領域13gの圧力制御や冷媒槽13内の液面13fの位置把握、第2タンク25内の液面の位置把握なども行う構成とすることができる。
【0086】
《液面の調整手順》
次に、実施形態3の超電導ケーブルの端末接続システム3において、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを調整する動作手順を説明する。ここでは、物理量として電流を利用する場合を例に説明する。
【0087】
まず、制御手段22への各種設定作業を行う。冷媒槽13内の液面13fを変化させるタイミングは、実施形態1と同様に、非発電時などで超電導ケーブルに電流がほとんど流れないときに液面を変化させる場合を想定する。冷媒槽13内の液面13fが初期位置にあるときに対する第2タンク25内の液体冷媒の液面位置(第2タンク内の初期位置)と冷媒槽13内の液面13fが変化後位置にあるときに対する第2タンク25内の液体冷媒の液面位置(第2タンク内の変化後位置)を設定する。そして、気体排出手段21eが、第2タンク25内の液体冷媒13lの液面を同タンク25内の変化後位置まで変化させるために必要な加圧気体を排出できるように制御手段22を設定しておく。更に、圧力計測手段又は液面計測手段の計測結果に基づいて気体排出手段21eを動作させ、所定の設定圧力又は所定の液面位置とできるように制御手段22が設定されている。そうすることで、第2タンク25内の液面を確実に、かつ精度良く制御することができ、冷媒槽13内の液面13fを精度よく制御できる。上記初期位置(図6参照)と変化後位置(図7参照)とは実施形態1と同様である。また、それらの位置に冷媒槽13内の液面13fを変化させる条件も実施形態1と同様である。
【0088】
上記設定作業が終わったら、物理量計測手段20による電流の測定を始める。物理量計測手段20は、電流を随時測定し、測定結果情報を制御手段22に送る。制御手段22は、入力インターフェース220(図3参照)により上記送られた測定結果情報を取得した後、記憶手段221から呼び出した設定電流値と測定結果情報とを比較手段222により比較する。測定した電流Inが設定電流値I0よりも大きい場合(In>I0)、大きな電流を流せる状態を維持する必要がある、即ち、接続導体11をこのまま冷却しておく必要があると考えられるため、上記測定結果情報の取得及び比較を繰り返す。
【0089】
一方、測定した電流Inが設定電流値I0以下となった場合(In≦I0)、液面の変動を行う。具体的には、制御手段22は、上記比較結果に基づき、命令手段223(図3参照)により気体排出手段21eに駆動命令を出す。また、制御手段22は、気体排出手段21eに併設されたボンベの開閉弁を開くように命令を出す。上記命令を受けた気体排出手段21eは、第2タンク25内の気相領域が設定された圧力となるように、或いは所定の液面位置になるように、所定量の加圧気体を第2タンク25から排出する。第2タンク25内の液体冷媒13lの液面が減圧されることによって、第2タンク25へ冷媒槽13から液体冷媒13lを移送することができ、それに伴い冷媒槽13内の液面13fが所定の位置まで(図7参照)下がる。また、制御手段22は、冷媒槽13内の液面13fが下がることに伴い、冷媒槽13内と連通して加圧気体を貯留するボンベ29の開閉弁を開き、冷媒槽13内の気相領域13gに加圧気体を導入する。冷媒槽13内の液面13fが、通常運転時の液面位置よりも低い液面位置(変化後位置)となることで、接続導体11の冷媒槽13への導入箇所において液体冷媒13lとの接触領域を低減することができる。更に、実施形態1のように、冷媒槽13内の超電導部11sと常電導部11nとの境界位置に熱電対を取り付けておき、第2タンク25内の加圧気体を排出した後、冷媒槽13内の当該取り付け箇所の温度を測定し、液体冷媒13lの液面13fが上記境界から離れた所定の位置(ここでは設定変化位置)となっているかを確認するように制御手段22を構成すると、液面13fを確実に、かつ精度良く制御することができる。
【0090】
冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを下げた状態にした後も、物理量計測手段20により電流を測定し続け、In≦I0を満たす間は、その状態を維持するように、制御手段22は、液面調整手段21を制御する。
【0091】
他方、In>I0となったら、再び、液面の変動を行う。即ち、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを通常運転時の位置(初期位置)に戻す。このとき、制御手段22は、気体排出手段21eに液面調整の命令を出し、上記命令を受けた気体排出手段21eは、第2タンク25内に加圧気体を導入して、第2タンク25内の液体冷媒の液面13fを押圧することで、第2タンク25内の液体冷媒を冷媒槽13内に戻す。それに伴い、冷媒槽13内の液面13fを初期位置(図1参照)まで上げられる。冷媒槽13内の液面13fが通常運転時の位置に戻されることで、少なくとも超電導部11sの全体が液体冷媒13lに浸漬されて、超電導状態になる。従って、所定の最大電流の通電が可能となる。
【0092】
以下、物理量計測手段20により電流の測定を行い、電流値に基づいて上記手順を繰り返し行う。
【0093】
[効果]
上記構成を具える端末接続システム3によれば、液面調整手段21として、冷媒槽13と連通する第2タンク25内の加圧気体を排出することにより冷媒槽13内の液面13fを下げる手法を採用することで、冷媒槽13内の構成を簡易にできる。また、ポンプを用いて冷媒槽13の内外に液体冷媒13lを移送する場合と比較して、液面13fが激しく揺れたり、液体冷媒13lが激しく流動したりしない。そのため、液体冷媒13lの移送に伴う影響が冷媒槽13内の収納物に及び難い。
【0094】
また、接続導体11を介して授受される電力の変動に応じて、冷媒槽13内の液体冷媒13lの液面13fを変動する(下げる)ことで、接続導体を介した侵入熱が液体冷媒13lに伝えられる量を低減することができるという実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0095】
(変形例1)
上記実施形態1では、電力の変動に対応する物理量として電流を利用したが、その他、時間や温度、放射照度、風速、発電量などを利用することができる。例えば、物理量を時間とし、端末接続システム1を鉄道用き電線に利用する場合、電車が走行しない時間、太陽光発電の電力供給線路に利用する場合、夜間の所定時間に、冷媒槽内の液体冷媒の液面を閾値以下にするように液面調整手段を制御すると、上述のように損失を低減することができる。この場合、物理量計測手段としてタイマを具えておき、制御手段の記憶手段には、液面を調整する時刻(例えば、夜間)を入力しておく。タイマは、随時カウントを行い、記憶手段に記憶されたスタート時刻になったら、液面調整手段により、冷媒槽内の液体冷媒の液面を閾値以下に調整させ、記憶手段に記憶された停止時刻になったら、液面調整手段により、冷媒槽内の液体冷媒の液面を通常運転時の位置までに戻すように制御手段を制御するとよい。上述のように液面の調整時刻が明確である用途には、このタイマを使用した形態を好適に利用することができる。
【0096】
その他、物理量計測手段は、物理量として温度を利用する場合:温度計、放射照度(太陽光発電)を利用する場合:放射照度計、風速(風力発電)を利用する場合:風速計、発電量(太陽光発電、風力発電)を利用する場合、発電量測定装置などを利用することができる。いずれの場合も、液面を変動するタイミングの基準値を設定して記憶手段に入力しておく。
【0097】
(変形例2)
上記実施形態1の構成に加えて、更に、接続導体の常電導部の任意の箇所にコールドヘッドやペルチェ素子などを装着して適宜常電導部を冷却する構成とすることができる。この冷却は、接続導体における急激な温度変化を緩和するために行う。即ち、液体冷媒の温度から常温までの温度範囲において、接続導体における温度勾配が緩やかになるように、常電導部を冷却する温度を適宜選択する。この構成により、温度差ΔTを小さくすることができるため、侵入熱を更に効果的に小さくすることができる。
【0098】
(実施形態4)
上記実施形態1では、接続導体が異なる複数種の材料から形成された形態を説明した。その他、従来の端末接続構造に利用されている接続導体と同様に、銅といった常電導材料のみから構成された形態とすることができる。この場合、接続導体は、一端側から他端側の全長に亘って一様な断面積であって、最大電流を流すことが可能な断面積を有する棒状体とする。
【0099】
上述のように一様な断面積を有する接続導体を利用した場合であっても、実施形態1で説明したように、接続導体を介して授受される電力の変動に応じて、冷媒槽内の液体冷媒の液面を適宜調整することで、特に、非発電時や無負荷時などにおいて、接続導体を介して上記液体冷媒に伝えられる侵入熱量を低減することができる。そのため、この形態も、侵入熱による損失を低減することができる。
【0100】
この形態では、非発電時や無負荷時などにおいて冷媒槽内の液体冷媒の液面の位置を、接続導体の冷媒槽導入箇所の長さに対する50%の長さの地点以下とすることが好ましい。そして、非発電時や無負荷時などでは、上記地点よりも上記液面を下げることで、接続導体において液体冷媒に浸漬された箇所までの距離を十分に長くすることができる。このように熱絶縁距離を長く確保することでも、侵入熱による損失を低減することができる。
【0101】
なお、上述した変形例1,2は、実施形態2,3,4についても適用することができる。
【0102】
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明超電導ケーブルの端末接続システムは、超電導ケーブルと常電導機器との間での電力の授受に好適に利用することができる。特に、接続導体を介して授受される電力が変動する用途、例えば、太陽光発電や風力発電に接続される電力供給線路や電車のき電線などに利用される場合に好適に利用することができる。また、本発明超電導ケーブルの端末接続システムは、直流送電、交流送電のいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1,2,3 超電導ケーブルの端末接続システム
10 超電導ケーブルの端末接続構造 11 接続導体 11s 超電導部
11n 常電導部 11b 超電導部と常電導部との境界
11i 固体絶縁体 11f1,11f2 フランジ部 12 終端接続箱
13 冷媒槽 13l 液体冷媒
13f 液面 13g 気相領域 14 真空断熱槽 15 碍管
20 物理量計測手段
21 液面調整手段 21c 気体導入手段 21e 気体排出手段
22 制御手段 23 冷凍機 24 第1タンク 25 第2タンク
26 配管 26U 上配管 26L 下配管
27 開閉弁 27U 上開閉弁 27L 下開閉弁
28 ポンプ 29 ボンベ
220 入力インターフェース 221 記憶手段 222 情報比較手段
223 命令手段 225 モニタ 226 直接入力手段
100 超電導ケーブルの端末接続構造
101 ブッシング 101c 接続導体 101i 固体絶縁体
102 終端接続箱 103 冷媒槽 103l 液体冷媒
104 真空断熱槽 105 碍管 110 導体棒 120 ジョイント部
200 ケーブルコア 201 内側超電導層 202 接続スリーブ
203 絶縁層 204 接続用冷媒槽 205 接続用真空断熱槽
206 エポキシユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導ケーブルの端部と常電導機器との間に配置されて、電力の授受に利用される接続導体を具える超電導ケーブルの端末接続システムであって、
前記接続導体における前記超電導ケーブル側の一端部が導入されると共に、この端部を冷却する液体冷媒を貯留する冷媒槽と、
前記接続導体を介して授受される電力の変動に対応する物理量を計測する物理量計測手段と、
前記冷媒槽内の液体冷媒の液面を変化させる液面調整手段と、
前記物理量計測手段からの情報に基づき、前記液体冷媒の液面を閾値以下にするように前記液面調整手段を制御する制御手段とを具えることを特徴とする超電導ケーブルの端末接続システム。
【請求項2】
前記接続導体は、
前記常電導機器側に配置されると共に、常電導材料から構成された常電導部と、
前記超電導ケーブル側に配置されると共に、常電導材料から構成された基部と、この基部に接合され、超電導材料により構成された超電導層とを有する超電導部とを具え、
前記超電導部の断面積が前記常電導部の断面積よりも小さく、
前記閾値は、前記超電導部と前記常電導部との境界であることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの端末接続システム。
【請求項3】
前記閾値は、前記接続導体において前記冷媒槽内に配置された箇所の長さに対する50%の長さの地点であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブルの端末接続システム。
【請求項4】
前記液面調整手段は、加圧気体を前記冷媒槽に導入する気体導入手段と、前記気体導入手段により導入された加圧気体により前記冷媒槽内の液体冷媒の液面を押し下げたとき、前記加圧気体により押し出された液体冷媒を貯留する第1タンクとを具えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの端末接続システム。
【請求項5】
前記液面調整手段は、
前記冷媒槽に対して異なる高さ位置に連結される複数の配管と、
これらの配管により前記冷媒槽と連通される第1タンクと、
前記各配管に配置され、いずれかの配管の高さ位置で前記冷媒槽内の液体冷媒の液面を規定するように開閉状態の切り替えが行われる開閉弁とを具えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの端末接続システム。
【請求項6】
前記液面調整手段は、
前記冷媒槽と連通する第2タンクと、
前記冷媒槽から第2タンクへの液体冷媒の移送により冷媒槽内の液面を下げるように、前記第2タンク内の加圧気体を排出する気体排出手段とを具えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの端末接続システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−40705(P2011−40705A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5541(P2010−5541)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】