説明

超電導ケーブル機器用電源

【課題】超電導ケーブルの運転のために用いる電気機器に供給する電力が、超電導ケーブルの通電の有無に関係なく、確実に得られる信頼性の高い超電導ケーブル機器用電源を提供する。
【解決手段】超電導導体を有するケーブルコア10と、ケーブルコア10が収納されるとともに冷媒が充填される冷媒充填部51と、冷媒充填部51の外側に形成される真空空間を有する断熱部52とを備える超電導ケーブル100の前記断熱部52の内部に熱電発電部6を設けて電源を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルに用いる冷凍機、加圧ポンプ、安全弁などの超電導用機器を稼動させるために用いる超電導ケーブル機器用電源およびこの電源を備える超電導ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルとして、図4に記載の超電導ケーブルが提案されている。この超電導ケーブル100は、3条のケーブルコア10を撚り合わせた多芯コアを断熱管20内に収納した構成である。
【0003】
各ケーブルコア10は、中心から順にフォーマ11、超電導導体12、絶縁層13、外部導体層14、保護層15を具えている。超電導導体12及び外部導体層14は、いずれも超電導線材にて形成されている。
【0004】
一方、断熱管20は、内管21と外管22とからなる二重管の間に断熱材(図示せず)が配置され、かつ二重管の間の空間が真空引きされた構成である。断熱管20の外側には、防食層23が形成されている。このようなケーブルにおいて、通常、内管21の内面と各ケーブルコア10の外面とで形成される空間が冷媒の流路となる。
【0005】
ところで、上記構造の超電導ケーブルを用いて長距離の線路を形成しようとするとき、以下の理由から所定の長さの超電導ケーブルを接続しながら長距離線路を形成する必要がある。
【0006】
超電導ケーブルでは、外部からの熱侵入が生じ、さらに、交流ケーブルの場合には、ケーブル内部での交流損失による発熱が生じる。この熱侵入と発熱を冷却するために、通常は、特許文献1に示すように、超電導ケーブル内に液体窒素などの冷媒を循環させている。
【0007】
しかし、冷媒は下流に行くに従って温度が上昇するので、循環距離には制約がある。この循環距離の制約のために、一定の距離ごとに線路途中において冷媒を冷却し、超電導ケーブル内を流れる冷媒温度を一定にする必要がある。そして、冷媒を冷却する冷凍機は、配置の利便性から、ケーブルを接続するマンホール或いはその近傍に通常は設置する。
【0008】
また、超電導ケーブルの中を冷媒が循環すると、この冷媒と、断熱管の内面又はケーブルコアとの摩擦損失により圧力損失が生じる。そして、冷媒の圧力が減少すると電気絶縁性能が低下するので、特許文献1に示すように、所定の距離ごとに加圧ポンプをおいてこの圧力損失を補う必要がある。従って、超電導ケーブルでは、一定の距離ごとに圧力損失を補う加圧ポンプが設けられており、加圧ポンプを設ける場合も、配置の利便性から、ケーブルを接続するマンホール或いはその近傍に通常は設置する。
【0009】
超電導ケーブルでは、事故が発生した時、ケーブルコアが発熱して冷媒が気化し、超電導ケーブルの内圧が上昇する。この圧力上昇は、長距離ケーブルに対しては線路の両端で安全弁を開放するだけでは、線路中央部の圧力上昇を抑制できない。従って、一定の距離ごとに安全弁が必要となる。このように一定距離毎に安全弁を設ける場合、通常は、特許文献2に示すように、接続部に安全弁を設けている。さらに、安全弁は、遠隔で復帰させることができるよう、自動弁を用いている。
【0010】
【特許文献1】特開2002-056729号公報
【特許文献2】特開2005-032698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
短距離の線路を形成する場合、冷凍機や加圧ポンプや安全弁は、線路の端部に設置しても十分ケーブルとして安全な運転が行える。ところが、長距離線路になると、線路の端部のみでの冷却、加圧、弁開放では冷媒の温度上昇、圧力低下、異常時の圧力上昇が大きくなり過ぎて、ケーブルとして安定した運転ができなくなる。そのため、前記したように一定の距離ごとに冷凍機等の機器を設置している。
【0012】
しかし、冷凍機や加圧ポンプや安全弁(自動弁)を稼動させるためには、電源が必要であり、これら複数の機器を稼動させるための電源は、超電導ケーブルに沿って複数箇所設ける必要がある。また、冷凍機、加圧ポンプ、自動弁は、動作しない場合が生ずるとケーブルを安定して運転することができなくなる。従って、これら機器に供給される電力は高い信頼性が要求される。
【0013】
そして、これら機器に供給する電力は、以下の3つの電源から供給することが考えられる。
【0014】
(1)接続部が設置されるマンホール近傍の配電線からマンホールへ新たに分岐をとる。
【0015】
(2)マンホールの近傍に配電線がない場合には、分岐電源がとれるところから、超電導ケーブルに沿って、配電ケーブルを敷設して、該当のマンホールまで電源をもってくる。
【0016】
(3)超電導ケーブルの各相コアは、一般的には超電導シールド(図4の外部導体層14)を有しているので、各相コアの外部には通電電流による磁界が存在しない。しかしながら、ケーブルの接続部では、超電導シールドの区間区分点を設けて、その区分点において、磁界を外部に出す構造とすることができる。この磁界にコイルをカップリングさせて電力を外部に取り出すことにより、超電導ケーブル分岐電源を形成し、この分岐電源から電力を供給する(特願2004-349164、非公開)。
【0017】
この超電導ケーブル分岐電源の構成は、交流超電導ケーブルの場合に容易に実現できる。しかし、直流超電導ケーブルであっても、直流電流に残存するリップル成分、もしくは強制的に重畳させた交流成分を用いることにより、同様の分岐電源を構成することができる。
【0018】
しかしながら、上記したように、(1)マンホール近傍の配電線から分岐させて電源を確保したり、(2)超電導ケーブルに沿って配電ケーブルを敷設して電源を確保したりする場合には、これら電源は、超電導ケーブルとは別ルートの電源であるため、信頼性が十分に高いとはいえない。
【0019】
そして、上記した(3)の超電導ケーブル分岐電源を構成して、超電導ケーブル自体から電力が得られれば、より信頼性の高い電源となる。しかしながら、この超電導ケーブル分岐電源は、超電導ケーブルに電流が流れている限り、ほぼ健全な動作が期待できる信頼性を有するが、電流が流れていない場合には、この分岐電源から電力を得ることはできなくなる。即ち、このような超電導ケーブルが無負荷状態であっても、熱侵入は存在するので、超電導ケーブルの通電の有無に関係なく、冷凍機、加圧ポンプ、弁は、稼動が保証されることが必要となる。従って、通電電流から電力を得る分岐電源では、たとえ、ある程度のバッテリーを具備していても、冷凍機等の稼動を保証できない。
【0020】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、超電導ケーブルの運転のために用いる電気機器に供給する電力が、超電導ケーブルの通電の有無に関係なく、確実に得られる信頼性の高い超電導ケーブル機器用電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の超電導ケーブル機器用電源は、超電導導体を有するケーブルコアと、ケーブルコアが収納されるとともに冷媒が充填される冷媒充填部と、冷媒充填部の外側に形成される真空空間を有する断熱部とを備える超電導ケーブルの前記断熱部の内部に熱電発電部を設けて電源を構成したことを特徴とする。
【0022】
ケーブルコアは、フォーマ、超電導導体、絶縁層を有することを基本構成とする。
【0023】
ケーブルコアは、その長手中間部を、内管と外管で形成される二重断熱管の内管の内部に収納させる。この断熱管の内管の内部には、さらに冷媒が充填され、内管により冷媒充填部を形成する。そして、内管と外管の間の空間を真空にし、この真空空間を断熱層として、二重断熱管により断熱部を形成する。真空空間には、断熱効果を上げるために、プラスチック製網状体と金属箔を積層したいわゆるスーパーインシュレーションを配置することが好ましい。
【0024】
さらに、ケーブルコアの端部は、他のケーブルコアの端部と接続する場合には、ケーブルコアの接続部分を、超電導ケーブルの接続部を構成する接続箱に収納する。この接続箱は、内側の冷媒槽と外側の真空槽により形成される。この冷媒槽の内部には、ケーブルコアが収納されるとともに、冷媒が充填され、冷媒槽により冷媒充填部を形成する。そして、冷媒槽と真空槽の間の空間を真空にして、この真空空間を断熱層として、冷媒槽と真空槽により断熱部を形成する。接続箱の真空空間にも、断熱効果を上げるために、スーパーインシュレーションを配置することが好ましい。
【0025】
そして、本発明の超電導ケーブル機器用電源は、断熱部の内部、即ち、真空空間に熱電発電部を設けて電源を構成する。この熱電発電部は、熱電変換素子モジュールと、このモジュールの電極取出し口に接続されるリード線とを備える構成とすることが好ましい。
【0026】
熱電発電部は、前記した二重断熱管の外管と内管との間に設けてもよいし、ケーブルコアの端部同士を接続する超電導ケーブルの接続部における断熱部の内部に設けてもよい。超電導ケーブルの接続部の断熱部内部に設ける場合には、接続箱の冷媒槽と真空槽の間に形成される真空空間の内部に設ける。組み付け性、および、冷凍機等の重要機器の設置箇所を考慮すると、熱電発電部は、接続箱の断熱部に設けることが好ましい。
【0027】
熱電変換素子モジュールは、熱電変換素子を備え、素子の両端に温度差をつけて、ゼーベック効果により、温度差に比例した電位差(電圧)を発生させて、電力を得るものである。本発明では、断熱部の外気側温度と断熱部の冷媒充填部側の温度との温度差で発電させる。
【0028】
さらに、熱電変換素子モジュールは、大きな電力を得るために、p型の熱電変換素子とn型の熱電変換素子とを導電材料(電極)を介して交互に直列接続した構成とすることが好ましい。この場合、高温側の電極を絶縁板に固定し、低温側の電極を他の絶縁板に固定して、これら絶縁板と、複数の電極と、複数のp型の熱電変換素子と複数のn型の熱電変換素子により熱電変換素子モジュールを構成する。
【0029】
熱電変換素子を形成する材料は、例えば、ビスマス・テルル(BiTe)化合物、鉛・テルル合金、シリコン・ゲルマニウム合金、コバルト・アンチモン化合物、亜鉛・アンチモン化合物などが挙げられる。
【0030】
熱電変換素子は、ゼーベック係数が大きいほど、大きな電力が得られるので、金属よりも半導体を用いることが好ましい。
【0031】
そして、本発明の超電導ケーブル機器用電源の熱電発電部は、熱電変換素子モジュールを、熱電変換素子モジュールの低温側が冷媒充填部側に、熱電変換素子モジュールの高温側が外気側になるように断熱部内に配置して、熱電発電部をその温度差で発電させる構成とする。
【0032】
ところで、現状の熱電変換素子の効率は、高温であるほど効率が良くなるので、効率を高めるためには、できるだけ高温側に熱電変換素子を設置するのが良い。さらに、現状の熱電材料のゼーベック係数は、低温では低下する。従って、熱電変換素子の高温側の温度をできるだけ高く取るのが高効率を得るために好ましい。
【0033】
そこで、熱電発電部を断熱部に設ける場合には、熱電変換素子モジュールを断熱部の外気側壁面の近傍に配置することが好ましい。
【0034】
さらに、熱電変換素子モジュールの高温部側および低温部側の少なくとも一方に熱伝導率の高い部材を設けることが好ましい。このように熱伝導率の高い部材を設けることにより、熱電変換素子に、外気の熱または冷媒の熱が伝わり易くなる。
【0035】
熱伝導率の高い部材としては、アルミニウム、銅、ステンレスなどの金属や、炭素繊維、セラミックを充填した樹脂などが挙げられる。
【0036】
特に、熱電変換素子モジュールの高温部側に設ける熱伝導率の高い部材は、熱電変換素子モジュールの絶縁板よりも面積が大きい板状部材とすることが、熱電変換素子から断熱部の外気側壁面への熱抵抗を下げられ、熱電変換素子の高温側の温度をできるだけ外気温度に近くできるので好ましい。
【0037】
さらに、熱電変換素子モジュールは、熱伝導率の高い部材を介して断熱部の壁面に接触させることが好ましい。このように熱電変換素子モジュールを熱伝導率の高い部材を介して断熱部の壁面に接触させることにより、熱電変換素子の温度を外気温度または冷媒温度に近い温度とすることができる。その結果、熱電変換素子での温度差をより大きくでき、発電効率が良好になる。
【0038】
そして、熱電変換素子モジュールを、熱伝導率の高い部材を介して断熱部の壁面に接触させる場合、熱電変換素子モジュールを断熱部の外気側壁面の近傍に配置し、熱電変換素子モジュールの高温部側と低温部側とに熱伝導率の高い部材を設け、さらに、これら熱伝導率の高い部材を断熱部の壁面に接触させることが好ましい。このように構成することにより、熱電変換素子の高温側の温度をほぼ外気温度とし、熱電変換素子の低温側の温度を冷媒温度に近い温度にすることができるので、熱電変換素子での温度差を最大にでき、発電効率を最大にできる。
【0039】
なお、本発明の超電導ケーブル機器用電源は、直流送電用の超電導ケーブル線路、または、交流送電用の超電導ケーブル線路のいずれにおいても構成できる。
【0040】
さらに、本発明は、上記した超電導ケーブル機器用電源を用いて、この電源と、超電導導体を有するケーブルコアと、ケーブルコアが収納されるとともに冷媒が充填される冷媒充填部と、冷媒充填部の外側に形成される真空空間を有する断熱部とを備える超電導ケーブルを構成する。
【発明の効果】
【0041】
超電導ケーブルでは液体窒素などの冷媒を用いて循環冷却を行っているので、ケーブル内には、常に冷媒が存在する。本発明の超電導ケーブル機器用電源および超電導ケーブルによれば、超電導ケーブルに熱電発電部を設けて電源を構成しているので、超電導ケーブルを冷却する冷媒が、超電導ケーブル内を流れる限り、冷媒温度と外気温度との温度差により電気出力が得られ、信頼性が非常に高い電源を得ることができる。すなわち、本発明に係る超電導ケーブル機器用電源は、熱電発電の温度差として外気温から冷媒温度までを利用できる。
【0042】
ところで、冷凍機、加圧ポンプ等の重要機器は、通常、マンホールに設置される。さらに、マンホールには、ケーブルコアの端部同士を接続する超電導ケーブルの接続部も配置される。本発明の超電導ケーブル機器用電源の熱電発電部をこの接続部に設ける場合には、電力を必要とする機器に最も近い位置に熱電発電部を配置することができるので、電力の供給が行い易く、熱電変換素子モジュールの組み付けも行い易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の超電導ケーブル機器用電源の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、図1に示すように、マンホールに配置される超電導ケーブルの接続部に熱電発電部を設けて、超電導ケーブルを流れる冷媒温度と外気温度との温度差による熱電変換により電力を得る超電導ケーブル機器用電源を構成する。なお、超電導ケーブルは、直流ケーブルでも、交流ケーブルであってもよい。
【0044】
(全体構成)
図1は、超電導ケーブル100の接続部の構成を示す概略構成図である。本実施形態に示す接続部の構成は、超電導導体を有するケーブルコア10を複数備える多相超電導ケーブル100のケーブルコア10同士を接続する中間接続部における構成である。超電導ケーブル100の接続部の構成は、内部にケーブルコア10が収納される断熱管20と、断熱管20の端部が接続され、ケーブルコア10の端部が収納される接続箱30とを備える。本実施形態では、3本のケーブルコア10を備える三心一括型の三相超電導ケーブル100を用いている。
【0045】
(ケーブルコア)
各ケーブルコア10は、図1では簡略化して示しているが、図4のコアと同様の構成を有する。ケーブルコアは、中心から順に、フォーマ、超電導導体、絶縁層、外部導体層、保護層を備える。
【0046】
フォーマには、素線絶縁された複数本の銅素線を撚り合せた撚り線を用いている。超電導導体および外部導体層には、Bi2223系Ag-Mnシーステープ線材を用いている。このテープ線材を、フォーマの上に螺旋状に多層に巻回して超電導導体を構成し、絶縁層の上に多層に巻回して外部導体層を構成する。また、絶縁層は、PPLP(登録商標)を巻回して構成している。保護層は絶縁紙を巻回して形成している。
【0047】
ここで、各ケーブルコア10の端部は、接続スリーブ40を介して圧縮接続されている。各ケーブルコア10は、3本撚り合わせて断熱管20内に収納されている。
【0048】
(断熱管)
断熱管20は、管径の異なる内管21と、外管22とを重ね合わせた金属製の二重管から構成されている。これらの金属管は、それぞれステンレス鋼で形成したコルゲート管で構成されている。外管22と内管21との間に形成される空間には、図示していないが、プラスチック製網状体と金属箔を積層したいわゆるスーパーインシュレーション(断熱材)を配置し、この空間を真空引きして真空断熱部52を構成している。さらに、この内管21内には、液体窒素などの冷媒を流通させて、内管21内部に冷媒充填部51を形成している。
【0049】
(接続箱)
2本のケーブルコア10の端部同士が接続されて収納される接続箱30は、冷媒が充填されてケーブルコア10の端部が収納される冷媒槽31と、この冷媒槽31を収納する真空槽32とを備える二重構造となっている。
【0050】
冷媒槽31は、ステンレスにより形成され、ケーブルコア10および接続スリーブ40を冷却するために液体窒素などの液体冷媒が充填される。この冷媒槽31により冷媒充填部51を形成する。
【0051】
真空槽32も、ステンレスにより形成しており、前記冷媒槽31が所定の隙間を介して収納される。そして、冷媒槽31と真空槽32との間に形成される空間を真空引きすることで断熱層を形成する。この真空空間にも、図2に示すように、積層断熱材33(スーパーインシュレーション)を配置させている。このように、接続箱30においても、冷媒槽31と真空槽32とにより断熱部52を形成している。
【0052】
なお、本実施形態では、図示していないが、接続箱30には、冷媒槽31の内部と、接続箱30の外部とを連通可能にする圧力調整弁を設けている。この圧力調整弁は、本発明の超電導ケーブル機器用電源からの電力により稼動するようになっている。超電導ケーブルにおいて、短絡などの事故が生じて超電導導体が発熱し、この熱により周囲の冷媒が気化されて接続箱30の冷媒槽31内の圧力が上昇したとき、この圧力調整弁により、冷媒槽31内部の圧力を外部に逃がして、圧力の異常上昇を防止するようになっている。
【0053】
さらに、図示していないが、接続箱30の冷媒槽31の内部および断熱管20の内管21の内部に充填される冷媒は、接続箱30から一端外部に取り出して冷凍機で冷却したり、加圧ポンプで加圧した後、再度、接続箱30の冷媒槽31に戻すようになっている。
【0054】
これら冷凍機と加圧ポンプは、接続箱30の配設位置近くに配置され、本発明の超電導ケーブル機器用電源からの電力により稼動するようになっている。但し、冷凍機と加圧ポンプは、それぞれ別のマンホールに配置することが好ましい。例えば、マンホール(ケーブル接続部)はほぼ500m毎に設けられるので、10箇所のマンホールに対して1箇所程度、即ち、ほぼ5kmごとに1箇所、圧力調整弁用の電源を設ける。そして、他のマンホールにおいて、冷凍機と加圧ポンプとを別々にマンホール10個置きになるように配置し、これら機器が配置されるマンホールに対して機器用電源を設ける。このように、別々に機器を配置することにより、それぞれのマンホールに設けた機器用電源で個別に各機器を稼動させることができるので、一つの電源の電力を非常に大きくする必要が無くなる。
【0055】
以上の構成において、本実施形態では、図1に示すように、接続箱30の冷媒槽31と真空槽32との間に形成される真空空間で形成される断熱部52の内部に、熱電発電部6を設けて超電導ケーブル機器用電源を構成している。このように、熱電発電部6を接続箱30に設けたのは、熱電発電部6を構成する熱電変換素子モジュールなどの組み付け性が良く、冷凍機等の重要機器の設置箇所の近くに電源を形成できるからである。
【0056】
熱電発電部6は、接続箱30の長手方向中間部に配置している。この熱電発電部6は、図2および図3に示すように、熱電変換素子モジュール7と、このモジュール7の電極取出し口71(2箇所)に接続されるリード線8とを備える構成となっている。リード線8を介して熱電変換素子モジュール7を備える電源回路(図1)を構成する。この電源回路の外部負荷が冷凍機や加圧ポンプなどの各機器に該当し、これら各機器を熱電発電部6で発電した電力で稼動させる。
【0057】
本実施形態では、熱電変換素子モジュール7は、図3に示すように、大きな電力を得るために、ブロック状のp型熱電変換素子72と、同じくブロック状のn型熱電変換素子73とを板状の電極74を介して交互に直列接続した構成としている。そして、高温側の電極74を高温側絶縁板75に固定し、低温側の電極74を低温側絶縁板76に固定して、これら絶縁板75,76と、複数の電極74と、複数のp型熱電変換素子72と複数のn型熱電変換素子73により平面板状の熱電変換素子モジュール7を構成している。
【0058】
熱電変換素子を形成する材料は、ビスマス・テルル(BiTe)化合物、鉛・テルル合金、シリコン・ゲルマニウム合金、コバルト・アンチモン化合物、亜鉛・アンチモン化合物などが挙げられるが、本実施実施形態では、ゼーベック係数が大きいビスマス・テルル(BiTe)系半導体素子を用いている。
【0059】
高温側絶縁板75および低温側絶縁板76は、熱抵抗の小さいアルミシリカプレートで形成されている。
【0060】
そして、熱電変換素子モジュール7は、絶縁板75,76が接続箱30の真空槽32の内面に沿うように配置されている。
【0061】
さらに、前記熱電変換素子モジュール7の真空槽32と対向する高温側絶縁板75の外面に、熱伝導率の高い板状部材91を設置している。この板状部材91は、アルミニウム製で、厚みが薄く高温側絶縁板75の面積よりも大きい薄板で形成されている。この板状部材91は、アルミニウムに限らず、銅、ステンレスなどの熱伝導率の大きい金属や、炭素繊維、セラミックを充填した熱伝導率の大きい樹脂を用いて形成してもよい。
【0062】
また、前記熱電変換素子モジュール7の冷媒槽31と対向する低温側絶縁板76の外面に、熱伝導率の高いブロック部材92を設置している。このブロック部材92は、前記した板状部材91と同様に、アルミニウム製で、低温側絶縁板76の面積と同じ面積を有し、熱電変換素子モジュール7の高温側を板状部材91を介して真空槽32の内面に接触させたとき、ブロック部材92が冷媒槽31の外面に接触する高さを有する大きさとしている。
【0063】
なお、ブロック部材92も、アルミニウムに限らず、銅、ステンレスなどの金属や、炭素繊維、セラミックを充填した樹脂を用いて形成してもよい。
【0064】
そして、板状部材91、熱電変換素子モジュール7、ブロック部材92を積層させて、板状部材91を真空槽32の内面に接触させ、ブロック部材92を冷媒槽31の外面に接触させる。
【0065】
このように、各部材を断熱部52内に配置することにより、板状部材91は、薄く、熱電変換素子モジュール7の絶縁板よりも面積が大きいので、熱電変換素子から真空槽32壁面への熱抵抗を下げられ、しかも、熱電変換素子モジュール7を、薄肉の前記板状部材91を介して真空槽32壁面に接触させるので、熱電変換素子の高温側の温度をほぼ外気温度とすることができる。
【0066】
また、熱電変換素子モジュール7を、熱伝導率の高いブロック部材92を介して冷媒槽31の外面に接触させているので、冷媒槽31内の冷媒の温度が、このブロック部材92を介して熱電変換素子の低温側に伝わり易くなる。従って、熱電変換素子の低温側の温度を冷媒温度に近い温度にできる。
【0067】
以上のように、本実施形態では、熱電変換素子をできるだけ外気に近い真空槽32の内面近くに設置して、熱電変換素子の効率を高めながら、しかも、低温側の温度もブロック部材92を介して冷媒温度に近くできるので、熱電変換素子での温度差を最大にできる。このように、熱電発電部6を外気温度と冷媒温度との温度差で発電させることができるので、発電効率を最大にできる。
【0068】
なお、本発明の超電導ケーブル機器用電源を備える超電導ケーブルは、超電導導体を有するケーブルコアを1本備える単相超電導ケーブルでもよいし、本実施形態のようにケーブルコアを複数備える多相超電導ケーブルとしてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の超電導ケーブル機器用電源に係る実施例について説明する。本実施例では、熱電発電部の熱電変換素子モジュールとして以下の寸法のものを用いて、熱電性能を調べてみた。
【0070】
熱電変換素子モジュールは、p型熱電変換素子とn型熱電変換素子を電極を介して交互に直列接続したものを用いた。p型熱電変換素子とn型熱電変換素子は、幅3mm、長さ2mm、厚み2mmのBiTe系チップを用い、これらチップを2500個使用して、電極を介して直列に接続した。そして、これらp型熱電変換素子とn型熱電変換素子と電極を2枚のアルミナシリカプレートで挟んで、幅10cm×長さ15cm×厚み0.6cmの熱電変換素子モジュールを構成した。
【0071】
接続箱の冷媒槽の直上に、熱電変換素子モジュールのアルミナシリカプレートと同じ面積のアルミニウム均熱体(ブロック部材)を設置し、このアルミニウム均熱体の直上に熱電変換素子モジュールを設置した。
【0072】
次に、熱電変換素子モジュールを広くて薄いアルミニウム均熱体(板状部材)を介して真空槽の内面に接触させた。このアルミニウム均熱体(板状部材)を介して熱電変換素子モジュールを真空槽の内面に接触させることにより、モジュール表面温度が外気温度になるように保証した。
【0073】
このような構成の熱電発電部により、熱電性能を調べたところ、電気出力が25V,12Wで、熱侵入が600W、効率が2%となった。
【0074】
本実施例の場合、以上のように電気出力は小さいが冷媒が存在するかぎり、この出力が得られるので、いつでも安全弁の開閉を行うことができる。従って、過大な圧力が発生するのを安全弁を開放することにより抑制してケーブルの損傷を防止するとともに、圧力が健全に戻れば弁を閉じて、ケーブルの正常運転を準備することができる。
【0075】
さらに、大きな電気出力を得ようとする場合には、熱電変換素子モジュールの熱電変換素子の個数を多くして、これら熱電変換素子を直列に接続すればよい。
【0076】
また、この出力をバッテリーに貯蔵しておいて、他の電源がダウンしたときのバックアップに使用することも可能である。
【0077】
なお、前記均熱体は、各熱電変換素子の温度の均一化を図るだけでなく、熱電変換素子の動作温度を調節して最大の効率が得られることも目的としている。BiTe系の熱電変換素子は、低温において効率が低下するため、できるだけ高温(外気)側に配置している。
【0078】
なお、本例では、600Wの熱侵入が増加することになるが、5kmで1回の冷却を行う場合には、ケーブルへの通常の熱侵入は、10kW程度(2W/m)であるので、600Wの増加は大きな影響を与えない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明超電導ケーブル機器用電源は、直流送電用の超電導ケーブル線路、または、交流送電用の超電導ケーブル線路に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明超電導ケーブル機器用電源に係る超電導ケーブルの接続部における部分概略断面図である。
【図2】図1の点線の円(A)の範囲内の拡大断面図である。
【図3】図2に示す熱電変換素子モジュールの分解斜視図である。
【図4】超電導ケーブルの横断面図である。
【符号の説明】
【0081】
100 超電導ケーブル
10 ケーブルコア
11 フォーマ 12 超電導導体
13 絶縁層 14 外部導体層 15 保護層
20 断熱管
21 内管 22 外管 23 防食層
30 接続箱
31 冷媒槽 32 真空槽 33 断熱材
40 接続スリーブ
51 冷媒充填部 52 断熱部
6 熱電発電部
7 熱電変換素子モジュール
71 電極取出し口 72 p型熱電変換素子 73 n型熱電変換素子
74 電極 75 高温側絶縁板 76 低温側絶縁板
8 リード線
91 板状部材 92 ブロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導導体を有するケーブルコアと、ケーブルコアが収納されるとともに冷媒が充填される冷媒充填部と、冷媒充填部の外側に形成される真空空間を有する断熱部とを備える超電導ケーブルの前記断熱部の内部に熱電発電部を設けて電源を構成したことを特徴とする超電導ケーブル機器用電源。
【請求項2】
ケーブルコアの端部同士を接続する超電導ケーブルの接続部における断熱部の内部に熱電発電部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル機器用電源。
【請求項3】
熱電発電部は、
熱電変換素子モジュールを備え、この熱電変換素子モジュールを断熱部の外気側壁面の近傍に配置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超電導ケーブル機器用電源。
【請求項4】
熱電発電部は、
熱電変換素子モジュールを備え、熱電変換素子モジュールの高温部側および低温部側の少なくとも一方に熱伝導率の高い部材を設けていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超電導ケーブル機器用電源。
【請求項5】
熱電変換素子モジュールを熱伝導率の高い部材を介して断熱部の壁面に接触させたことを特徴とする請求項4に記載の超電導ケーブル機器用電源。
【請求項6】
超電導導体を有するケーブルコアと、ケーブルコアが収納されるとともに冷媒が充填される冷媒充填部と、冷媒充填部の外側に形成される真空空間を有する断熱部と、前記断熱部の内部に設けられる熱電発電部を有する超電導ケーブル機器用電源とを備えることを特徴とする超電導ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−173176(P2007−173176A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372964(P2005−372964)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】