説明

超電導ケーブル

【課題】超電導導体及び断熱管に張力を加えることなく管路等に布設できるとともに、冷却による熱収縮時にも超電導導体及び断熱管に応力が発生するのを防止することが可能な超電導ケーブルを提供する。
【解決手段】内管121と外管122とを有する断熱管120と、内管121の内側に収納されたケーブルコア110とを備え、さらに内管121の外表面にテンションメンバー140を配置している。テンションメンバー140は、断熱管120の可撓性を損なわないよう、一方の端部のみで内管121に固定するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの技術分野に関し、特に管路や洞道内への布設に好適な超電導ケーブルの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、例えば発電所から需要地まで電力を送る送電線の一部に使用されており、特に都市部近郊の地中施設(管路、洞道)に布設されるケースが多い。従来の超電導ケーブルの一例を図7に示す。同図に示すように、超電導ケーブル900は、フォーマ911、超電導導体912、電気絶縁層913及び保護層914を備えたケーブルコア910と、これを内部に収納する断熱管920とから構成されている。
【0003】
断熱管920は、二本の可撓性同軸管をそれぞれ内管921と外管922とし、この内管921と外管922との間に断熱層923を配置して構成されている。内管921と外管922とで形成された空間は、ケーブルコア910が冷却されているときは真空引きされて断熱性が高められている。
【0004】
超電導ケーブル900が使用可能となる状態では、ケーブルコア910と断熱管920の内管921との間の空間に液体窒素等の冷媒が充填され、これによりケーブルコア910及び内管921が極低温状態に維持されている。このような冷却状態では、ケーブルコア910が熱収縮するが、このときケーブルコア910に過大な張力が作用しないよう、断熱管920の内管921及び外管922には波付け加工を施して可撓性を持たせている。
【0005】
上記のような構成の超電導ケーブルを管路などの地中部に布設する際には、超電導ケーブルの一端から張力をかけて管路や洞道に超電導ケーブルを引き込む方法がとられる。このとき、超電導ケーブルの先端には大きな張力が加えられるため、ケーブルコアが損傷してしまったり、断熱管の内管及び外管に施された波付け加工が延伸してしまって、超電導ケーブルを好ましい状態で管路等の内部に引き込むのが困難といった問題があった。
【0006】
そこで、超電導ケーブルを良好な状態で管路等の内部に引き込めるよう、特許文献1では、ステンレスまたはアラミド樹脂で形成されたテンションメンバーを断熱管の外表面に設けた超電導ケーブルが開示されている。これにより、超電導ケーブルを管路等に布設する際に加えられる張力をテンションメンバーが分担するようにすることができ、ケーブルコアや断熱管の内管、外管に張力がかからないようにすることが可能となっている。
【特許文献1】特開2006−059695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術では以下のような問題があった。
超電導ケーブルを超電導状態にするために、ケーブルコアと断熱管の内管との間に液体窒素等を充填して冷却すると、超電導導体と内管とは室温から液体窒素温度まで冷却されることによる熱収縮を起こす。このとき、超電導導体や内管に張力が発生しないようにするために、外管も同時に収縮できるように可撓性を持たせておく必要がある。そのため、外管に対しても波付け加工が施されている。
【0008】
しかし、特許文献1では、断熱管の外管の外表面に可撓性の低いテンションメンバーを固定させるようにしたことから、超電導導体や内管の熱収縮に従って外管が収縮しようとしても、テンションメンバーに引っ張られて容易に収縮することができない。超電導導体、内管及び外管はケーブル端部で固定されていることから、熱収縮が容易でない外管が、熱収縮する超電導導体及び内管に対しケーブル端部で引き伸ばすような応力を加えてしまい、これにより超電導導体が機械的なダメージを受けて性能が劣化してしまうといった問題があった。
【0009】
また、内管と外管とを連結しているケーブル端部に上記の応力が集中することから、ケーブル端部にクラックが発生する可能性があり、クラックが発生するとそこから内管と外管との間の真空部に空気が漏洩し、その結果真空状態が劣化して断熱性能が低下してしまうといった問題がある。さらには、断熱管とケーブルコアとを固定している部分にも引張り応力が集中し、これによりケーブルコアが固定部分から外れてしまうおそれがあるといった問題もあった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、超電導導体及び断熱管に張力を加えることなく管路等に布設できるとともに、冷却による熱収縮時にも超電導導体及び断熱管に応力が発生するのを防止することが可能な超電導ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の超電導ケーブルの第1の態様は、それぞれ波付け加工された円筒状の内管と外管とを有する断熱管と、前記内管の内側に収納された超電導導体と、を備える超電導ケーブルであって、前記内管の外表面にテンションメンバーを備えることを特徴とする。内管の外表面にテンションメンバーを備えることで、冷却による熱収縮時にはテンションメンバーも熱収縮させることができ、超電導導体及び断熱管に応力が発生するのを防止することができる。
【0012】
本発明の超電導ケーブルの他の態様は、前記テンションメンバーは、少なくともいずれか一方の端部で前記内管に固定されていることを特徴とする。このようにテンションメンバーが固定されることにより、断熱管の可撓性を損なわないようにテンションメンバーを設置することができる。
【0013】
本発明の超電導ケーブルの他の態様は、本体と固定金具とを有するプーリングアイを、前記テンションメンバーが前記内管に固定された前記一方の端部に備え、前記本体に前記テンションメンバーの端部を接続し、前記固定金具に前記外管の端部を接続していることを特徴とする。このように備えられたプーリングアイでテンションメンバーと外管とを牽引すると、ケーブルコアに張力を加えることなく、内管に固定されたテンションメンバーでケーブルコア及び内管を管路等に引き込むことが可能となる。また、固定金具で外管を同時に牽引するようにすることにより、内管と外管との間に応力が生じるのを防止することができる。
【0014】
本発明の超電導ケーブルの他の態様は、前記超電導導体は、前記テンションメンバーより小さいヤング率を有する円筒形状のフォーマの外周に配置され、前記フォーマが前記プーリングアイに接続されていることを特徴とする。フォーマに応力をほとんどかけない状態で、フォーマもプーリングアイに接続させるように構成することが可能となる。
【0015】
本発明の超電導ケーブルの他の態様は、前記テンションメンバーは、ステンレステープをピッチ300mm以上2000mm以下として前記内管に螺旋状に巻付けて形成されていることを特徴とする。このようにピッチ300mm以上2000mm以下とした場合、超電導ケーブルが曲折した状態でもテンションメンバーに均等に力をかけることができる。
【0016】
本発明の超電導ケーブルの他の態様は、前記テンションメンバーは、高張力高分子繊維を撚って形成された1以上の繊維テープを前記内管の外表面に配置して形成されていることを特徴とする。このように金属に比べて熱伝導率が小さい高分子繊維を用いることで、内管と外管の間でスペーサとしての機能を有することもできる。
【0017】
本発明の超電導ケーブルの他の態様は、前記テンションメンバーは、高張力高分子繊維を網状に撚り合わせて形成したものを前記内管の外表面を覆うように配置して形成されていることを特徴とする。このように網状に撚り合わせて形成されたテープ状のものを巻きつけて施工するということにより、簡単にテンションメンバーを形成することが可能である。
【0018】
本発明の超電導ケーブルの他の態様は、前記テンションメンバーは、厚さ又は直径が前記内管と前記外管との間隔に略等しい断面を有する線状体を前記内管と前記外管との間に略等間隔に4本以上10本以下配置して形成されていることを特徴とする。このようにテンションメンバーを配置することで、テンションメンバーは牽引の役割とともに、内管と外管との間隔を一定にするためのスペーサの役割を果たすことができる。
【0019】
本発明の超電導ケーブルの他の態様は、前記内管及び前記外管は、それぞれの直径の5%以上20%以下の波高でかつ前記波高の1倍以上4倍以下のピッチとなるよう波付け加工されていることを特徴とする。内管、外管は、ともにこのように波付け加工されることによって高い可撓性を有する。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、テンションメンバーを断熱管の内管外表面に設けることにより、超電導導体及び断熱管に張力を加えることなく管路等に布設できるとともに、超電導導体及び断熱管に応力が発生するのを防止することが可能な超電導ケーブルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態における超電導ケーブルについて、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0022】
本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルの構造を、図1及び図2を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態の超電導ケーブル100を示す長手方向断面図であり、図2は、超電導ケーブル100に備えられたケーブルコア110を示す側面図である。超電導ケーブル100は、断熱管120の内部にケーブルコア110を収納した構成としている。
【0023】
ケーブルコア110は、フォーマ111の外周に超電導導体112を配置し、その外周に電気絶縁層113と保護層114とを設けた構造としている。本実施形態では、超電導導体112として例えばBi系やY系超電導材料を用いることができ、これをテープ状に形成したテープ状線をフォーマ111上に螺旋状に巻付けて配置することができる。
【0024】
フォーマ111は、超電導導体112の形状を保持するのに用いられるものであり、例えば非磁性の金属材料を用いることができる。電気絶縁層113は、クラフト紙等の絶縁紙を超電導導体112の上部に巻付けて形成することができる。保護層114は、導電性の紙あるいは銅の編組線を用いて形成することができる。図1には省略しているが、保護層114と電気絶縁層113の間に、超電導導体を配置することもできる。この場合、超電導体は、超電導導体112と逆向きの電流を流すことで、ケーブルから発生する磁界を閉じ込めて、漏洩磁界を下げることができる。
【0025】
また、断熱管120は、同軸管である内管121と外管122、及びその間に配置された断熱層123を備えている。内管121及び外管122には、例えばステンレスあるいはアルミニウム等の金属を用いることができ、断熱層123には、アルミ蒸着の高分子材フィルムとポリエチレンネットとを積層させて構成されたスーパーインシュレーションを用いることができる。
【0026】
超電導ケーブル100が超電導状態にあるとき、内管121の内側は液体窒素で冷却されて極低温状態に維持される一方、外管122の外側は例えば室温状態となっていることから、極低温状態と室温状態との間の熱移動をできるだけ低減させるよう、断熱管120を用いて高い断熱性を実現する必要がある。そこで、内管121と外管122との間に断熱層123を設けるとともに、内管121と外管122との間を例えば0.1MPa以下の高真空状態に排気維持している。このような高真空状態を維持させるために、断熱管120には溶接不良やクラック、ピンホール等がないようにして、高い気密性を実現している。
【0027】
内管121及び外管122は、ともに波付けされて高い可撓性を有しており、これにより冷却時及び極低温状態において超電導導体112に大きな応力を加えるのを防止している。すなわち、超電導ケーブル100が使用可能となる状態では、ケーブルコア110と断熱管120の内管121との間の空間に液体窒素等の冷媒が充填され、例えば77Kの極低温状態に冷却される。これによりケーブルコア110及び内管121はともに熱収縮するが、冷却によって両者が必ずしも等しい長さだけ収縮するとは限らず、両者の熱収縮する長さが異なる場合にはケーブルコア110に大きな応力を加えてしまうことになる。
【0028】
また、外管122の外側は例えば室温状態であることから、外管122には上記のような熱収縮は発生しない。その結果、ケーブルコア110と内管121と外管122との間で熱収縮の大きさが異なることになり、相互に引っ張り合う応力が発生してしまうおそれがある。本実施形態では、断熱管120の内管121及び外管122に対し波付け加工して可撓性を持たせることで、このような応力が発生するのを防止している。
【0029】
内管121に可撓性を持たせることにより、ケーブルコア110と内管121との間で熱収縮に差があっても、内管121の伸縮によりケーブルコア110に張力が作用しないようにすることができる。また、外管122に可撓性を持たせることにより、ケーブルコア110及び内管121の熱収縮に伴って断熱管120も容易に収縮できるようにすることで、ケーブルコア110に応力が加わらないようにするとともに、内管121と外管122との接合部にも応力が加わらないようにすることで、クラックが発生するのを防止している。
【0030】
断熱管120の構成を、製造工程手順により説明する。ステンレスまたはアルミニウムの他に、銅あるいはこれらを主成分とする合金のいずれかの金属からなる厚さ0.5mmから2mmまでの板を用い、ケーブルコア110を収納するように円筒状に形成する。その後、外部から波つけ加工を施して、内管121を形成する。その後、内管121の外側に、断熱層123を内管に隙間なく巻きつけて形成する。さらにその外側に、厚さ0.5mmから2mmまでの金属板を、円筒状に形成して、その外部に波つけ加工を施して、外管122を形成する。波付け加工は、内管121又は外管122の直径に対し5から20%の深さの波高とし、ひとつの山谷のピッチ(波周期)を波高の1倍から4倍となるよう行われている。
【0031】
布設時に超電導ケーブル100を管路等に引き込むときに摩擦等によって損傷するのを防止したり、布設後の腐食を防止するために、断熱管120の外周には保護被覆部130が設けられている。保護被覆部130は、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ナイロンなどの樹脂を用いて形成することができる。
【0032】
本実施形態では、上記のような構造の超電導ケーブル100に対し、さらに内管121の外表面にテンションメンバー140を配置するようにしている。テンションメンバー140は、断熱管120の可撓性を損なわないように設置する必要があり、特にテンションメンバー140が固定される内管121に対して、冷却時等にも大きな応力を加えることのないよう設置する必要がある。
【0033】
そこで、本実施形態ではテンションメンバー140を超電導ケーブル100の一方の端部のみで内管121に固定するようにしている。図1では、テンションメンバー140を固定部141で内管121に固定していることを示している。テンションメンバー140は、ステンレス、Ni合金等の高張力合金、またはアラミド樹脂やアラミド繊維等の高張力スーパー繊維、等を用いて形成し、張力を高めることができる。
【0034】
本実施形態のテンションメンバー140は、断熱管120の可撓性を損なわないようにするために、テープ状に形成されたステンレステープを内管121の外表面に螺旋状に巻付けて形成されている。これに限らず、例えば内管121に沿って長手方向に配置してもよい。ステンレステープを螺旋状に巻付けてテンションメンバー140を形成する場合には、巻付けのピッチを300mm以上2000mm以下とするのが好ましい。ここで、巻付けのピッチとは、1本のステンレステープを内管121の外周に螺旋状に1回転周回させたときの長手方向の移動距離としている。
【0035】
テンションメンバー140の形状は、テープ形状に限らず、例えば四角線や丸線等とすることができ、これを内管121に沿って配置したり、螺旋状に巻きつけて設置することができる。また、テンションメンバー140に用いる材料として、上記のステンレステープの他に、ステンレス線やインバー線等を用いてもよい。これらのステンレステープ又は線材を内管121の外表面に1層だけ巻付けてもよく、あるいは逆方向に2層巻付けてテンションメンバー140を形成してもよい。2層巻付けた場合には、それぞれの層がお互いに逆向きの回転方向に引っ張られることから、断熱管120にねじれが発生するのを防止することができる。
【0036】
テンションメンバー140に用いるさらに別の材料として、ケブラー(米国デュポン社の登録商標)やアリレート繊維等の高張力高分子繊維を用いることも可能である。これらを用いる場合、上記のように内管121に直接巻付けてテンションメンバー140を形成する他に、各繊維を用いて事前にテープ状に撚っておき、これを内管121の外表面に設置することも可能である。このように、テープ状に撚った後に内管121の外表面に設置したテンションメンバーの実施形態を図3に示す。テンションメンバー240は、上記のような高張力高分子繊維を撚って形成された複数の繊維テープ241で構成されている。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態のテンションメンバーとして、内管121の外表面に網状に撚り合わせて形成することも可能である。このようにして形成されたテンションメンバーの実施例を図4に示す。テンションメンバー340は、高張力高分子繊維を用いて網状に撚り合わせて形成したものであり、これを内管121の外表面を覆うようにして設置している。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態のテンションメンバーを、図5を用いて説明する。本実施形態のテンションメンバー440は、厚さ又は直径が内管121と外管122との間隔に略等しい断面を有する線状に形成されており、これを4本から10本程度、内管121と外管122との間に略等間隔に配置して内管121に巻付けている。このように設置されたテンションメンバー440は、超電導ケーブル100の布設時にこれを牽引するとともに、内管121と外管122との間隔を一定にするためのスペーサの役割を果たすことができる。
【0039】
なお、図5に示す実施形態では、テンションメンバー440が内管121だけでなく外管122にも接触することから、外管122からテンションメンバー440を経由して内管121に熱が伝わるのをできるだけ低減するために、できるだけ熱伝導の低い材料を用いてテンションメンバー440を形成するのがよい。
【0040】
内管121と外管122との間に設置される断熱層123は、内管121の外表面に設置されたテンションメンバー140のさらに外周に配置されている。断熱層123には、例えばアルミニウムを樹脂フィルムに蒸着させて形成したものを用いることができる。なお、テンションメンバー140が断熱層123を損傷させるおそれがある場合には、テンションメンバー140の外周に金属鋼帯や繊維テープなどを巻付け、その上に断熱層123を設置するようにすることができる。
【0041】
上記のように構成された超電導ケーブル100では、管路等に布設された後内管121の内部に液体窒素が充填されると、ケーブルコア110と内管121、及びその外表面に設置されたテンションメンバー140が、ともに液体窒素温度まで冷却されて略等しい長さだけ熱収縮する。その結果、内管121及びテンションメンバー140がケーブルコア110に応力を加えてこれを破損させたり特性を変化させてしまうといったおそれがなくなる。
【0042】
また、ケーブルコア110と内管121とで熱収縮する長さが異なる場合でも、内管121に可撓性を持たせていることから、内管121がケーブルコア110と略等しい長さに収縮される。また、テンションメンバー140が熱収縮する長さがケーブルコア110や内管121と異なる場合でも、テンションメンバー140が固定部141の一端のみで内管121のみで固定されていることから、テンションメンバー140が内管121に応力を加えることはない。
【0043】
さらに、上記のようにテンションメンバー140が容易に収縮できるような形状で内管121に設置されていることから、テンションメンバー140も内管121やケーブルコア110と略等しい長さに収縮することができる。その結果、内管121及びテンションメンバー140がケーブルコア110に応力を加えてこれを破損させたり特性を変化させてしまうといったおそれがなくなる。
【0044】
一方、断熱管120の外管122は、その温度が室温程度に維持されているため熱収縮することは無いものの、波付け加工されて高い可撓性を有していることから、内管121等の熱収縮に伴って容易に収縮することができる。このように、冷却によるケーブルコア110等の熱収縮に伴い、断熱管120の内管121と外管122、及びテンションメンバー140のいずれもが、ほとんど相互に応力を加えることなく収縮することができる。その結果、冷却時に外管がテンションメンバーに引っ張られて容易に収縮できないといった従来の問題を解消することが可能となり、ケーブルコア110及びこれに設置された超電導導体112を損傷するのを防止することができる。
【0045】
次に、本実施形態の超電導ケーブル100を管路等に引き込むためのプーリングアイについて説明する。超電導ケーブル100を管路等に引き込むために、超電導ケーブル100の端部にプーリングアイを接続し、これにロープ等を繋いで牽引する方法がとられるが、プーリングアイに大きな張力が加えられることから、プーリングアイと超電導ケーブル100との接続が適切でないと、超電導ケーブル100の一部に大きな張力を加えてこれを破損してしまったり超電導性能を劣化させてしまう等の問題が発生する。なお、プーリングアイは、テンションメンバー140が内管121に固定された固定部141のある一方の端部で超電導ケーブル100に接続される。
【0046】
そこで、上記の一方の端部にプーリングアイが好適に接続された本発明の実施形態に係る超電導ケーブル500を、図6を用いて説明する。図6は、端部にプーリングアイ550が接続された本実施形態の超電導ケーブル500の長手方向断面図を示す。本実施形態では、超電導ケーブル本体501の端部にプーリングアイ550を接続しており、このプーリングアイ550は本体551に固定金具552をネジ接続した構造としている。本体551には、布設時にロープ等を接続するための引張り帽551aが設けられている。なお、超電導ケーブル本体501として、例えば第1の実施形態である超電導ケーブル100を用いることができる。
【0047】
超電導ケーブル本体501の端部にプーリングアイ550を接続する方法は、本体551にテンションメンバー140を溶接接続するとともに、固定金具552に断熱管120の外管122を溶接接続している。このような接続により、プーリングアイ550が牽引されると、ケーブルコア110と断熱管120の内管121とがテンションメンバー140を介してプーリングアイ550に牽引され、それと同時に外管122が固定金具552を介してプーリングアイ550に牽引される。
【0048】
上記のように、プーリングアイ550でテンションメンバー140と外管122とを牽引するようにした結果、ケーブルコア110に張力を加えることなく、内管121に固定されたテンションメンバー140でケーブルコア110及び内管121を管路等に引き込むことが可能となる。また、固定金具552で外管122を同時に牽引するようにすることにより、内管121と外管122との間に応力が生じるのを防止することができ、内管121と外管122との接合部に損傷を与えて真空度を低下させてしまうといった事態を防止することができる。
【0049】
なお、ケーブルコア110のフォーマ111もプーリングアイ550に接続させるように構成することも可能であるが、この場合にはヤング率がテンションメンバー140より小さいフォーマ111を用いるのが好ましい。これにより、プーリングアイ550から超電導ケーブル本体501に加えられる応力がテンションメンバー140にかかるようにし、フォーマ111には応力がほとんどかからないようにすることができる。
【0050】
超電導ケーブル本体501にプーリングアイ550を接続する工程を以下に説明する。まず、プーリングアイ550の本体であるプーリングアイ本体551の第1溶接部551bにテンションメンバー140の端部を溶接して接合する。その後、固定金具552を本体551のネジ部にねじ込んで固定し、固定金具552の先端にある第2溶接部552aに外管122を溶接接合する。これにより、プーリングアイ550が超電導ケーブル本体501と一体化されて超電導ケーブル500を形成する。なお、第2溶接部552aの溶接は全周溶接とするのがよく、これにより外部から水などが浸入しないよう気密化するのがよい。
【0051】
本実施形態の超電導ケーブル500を布設した一実施例として、長さ500mの超電導ケーブル500を所定の管路に引き込んだとき、プーリングアイ550には最大で170kNの張力が加えられたが、超電導導体112にはその張力が全く加えられなかった。その結果、超電導導体112の超電導性能には全く影響を与えることはなかった。本実施形態では、ケーブルコア110に張力が加えられることはないため、管路に沿って超電導ケーブル本体501が屈曲されている部分でも、これが断熱管120に押し付けられて側圧が加えられるといった事態を避けることができる。これにより、超電導導体112の外周を取り巻いている電気絶縁層113に対しても、つぶれや擦れ等の損傷を加えることはなく、電気絶縁性能上の問題が発生することはなかった。
【0052】
また、超電導ケーブル500を所定の管路に布設した後、超電導ケーブル本体501の端部を所定の終端接続部に接続して液体窒素を充填し、これによりケーブルコア110を所定の極低温状態まで冷却したところ、長さ500mのケーブルコア110は1.5m熱収縮した。ケーブルコア110とともに内管121及びテンションメンバー140も同様に熱収縮しており、それとともに外管122もスムーズに収縮されたことで、超電導ケーブル本体501が途中で座屈することもなく、また端部でクラックが発生してリークが生じるといった事態も回避できた。さらに、超電導導体112の臨界電流が低下することもなく、健全に布設及び冷却を行うことができたことを確認した。
【0053】
上記実施形態では、電力送電用の超電導電力ケーブルを例に説明したが、これに限定されず、例えば超電導電力貯蔵装置、あるいは核融合炉などで使用する大型超電導マグネットに電力供給する超電導バスラインなどに適用することも容易に可能である。本実施の形態における記述は、本発明に係る超電導ケーブルの一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における電導ケーブルの細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る超電導ケーブルの長手方向断面図である。
【図2】本実施形態の超電導ケーブルに内蔵されるケーブルコアの側面図である。
【図3】本発明の別の実施形態で用いられるテンションメンバーを示す斜視図である。
【図4】本発明のさらに別の実施形態で用いられるテンションメンバーを示す斜視図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態で用いられるテンションメンバーを示す断面図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態に係る超電導ケーブルの長手方向断面図である。
【図7】従来の超電導ケーブルの一例を示す長手方向断面図である。
【符号の説明】
【0055】
100、500、900 超電導ケーブル
110、910 ケーブルコア
111、911 フォーマ
112、912 超電導導体
113、913 電気絶縁層
114、914 保護層
120、920 断熱管
121、921 内管
122、922 外管
123、923 断熱層
130 保護被覆部
140、240、340、440 テンションメンバー
501 超電導ケーブル本体
550 プーリングアイ
551 プーリングアイ本体
552 固定金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ波付け加工された円筒状の内管と外管とを有する断熱管と、前記内管の内側に収納された超電導導体と、を備える超電導ケーブルであって、
前記内管の外表面にテンションメンバーを備える
ことを特徴とする超電導ケーブル。
【請求項2】
前記テンションメンバーは、少なくともいずれか一方の端部で前記内管に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項3】
本体と固定金具とを有するプーリングアイを、前記テンションメンバーが前記内管に固定された前記一方の端部に備え、
前記本体に前記テンションメンバーの端部を接続し、
前記固定金具に前記外管の端部を接続している
ことを特徴とする請求項2に記載の超電導ケーブル。
【請求項4】
前記超電導導体は、前記テンションメンバーより小さいヤング率を有する円筒形状のフォーマの外周に配置され、
前記フォーマが前記プーリングアイに接続されている
ことを特徴とする請求項3に記載の超電導ケーブル。
【請求項5】
前記テンションメンバーは、ステンレステープをピッチ300mm以上2000mm以下として前記内管に螺旋状に巻付けて形成されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導ケーブル。
【請求項6】
前記テンションメンバーは、高張力高分子繊維を撚って形成された1以上の繊維テープを前記内管の外表面に配置して形成されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の超電導ケーブル。
【請求項7】
前記テンションメンバーは、高張力高分子繊維を網状に撚り合わせて形成したものを前記内管121の外表面を覆うように配置して形成されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の超電導ケーブル。
【請求項8】
前記テンションメンバーは、厚さ又は直径が前記内管と前記外管との間隔に略等しい断面を有する線状体を前記内管と前記外管との間に略等間隔に4本以上10本以下配置して形成されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の超電導ケーブル。
【請求項9】
前記内管及び前記外管は、それぞれの直径の5%以上20%以下の波高でかつ前記波高の1倍以上4倍以下のピッチとなるよう波付け加工されている
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の超電導ケーブル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−287896(P2008−287896A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128825(P2007−128825)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】