説明

超電導接合素子および超電導接合回路

【課題】臨界電流密度さらには臨界電流を高精度で制御可能な超電導接合素子および超電導接合回路を提供する。
【解決手段】超電導接合回路10は、上部電極18が形成するインダクタを直列に接続した複数の超電導接合素子201〜205からなり、超電導接合素子201〜205は、上部電極18と下部電極14とこれらに挟まれた障壁層17からなる超電導接合部161〜165のゼロ電圧状態と有限電圧状態とのスイッチングにより磁束量子を伝搬する。超電導接合素子201〜205は、下部電極14の面積に基づいて臨界電流密度が制御される。超電導接合素子201〜205の各々の下部電極14の面積を略同等に設定することで、超電導接合素子201〜205間の臨界電流密度のばらつきを抑制する。さらには、下部電極14と超電導磁気遮蔽膜とを接続する接続窓14aの面積を所定の範囲に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導接合素子および超電導接合回路に関する。
【背景技術】
【0002】
常伝導状態から超電導状態に相転移する臨界温度は、金属合金型では23K以下であったが、1987年に臨界温度が92KのYBa2Cu37-x(YBCO)の銅酸化物超電導体が発見されて以来、酸化物超電導体の研究が盛んに行われている。酸化物超電導体は、常電導体から超電導体に換わる臨界温度が液体窒素よりも高く、冷却媒体として液体窒素や、冷却器を使用できるため冷却コストが液体Heと比較して大幅に低減できる。また、磁場を印加した場合の臨界電流の低下も従来の金属超電導体と比較して大幅に小さいという特長も有する。
【0003】
このような超電導体は多岐に亘る用途が期待されている。その一つとして、超電導エレクトロニクスの分野での超電導接合素子からなる超電導接合回路が挙げられる(例えば非特許文献1参照。)。超電導接合素子は、2つの超電導体を弱い超電導性をもった超電導接合部で結合した構造をしている。超電導接合素子は、例えば、超電導現象に特有な磁束量子を、外部から印加した電圧により制御できるようにしたものなので、超電導接合回路は、巨視的量子効果に起因する高速応答性および低雑音性という特長を有する。
【0004】
図1に示す、2つの超電導接合素子201a,201bからなる超電導接合回路200を例に、超電導接合回路の動作を説明する。2つの超電導接合素子201a,201bはそれぞれ1個の超電導接合202a,202bを有し、直流電流源203から一方の超電導体を介して超電導接合202a,202bに直流電流(バイアス電流Ib)を供給する。これと共に、入力側から磁束量子φ0に伴う電流パルスを供給すると、超電導接合202aを流れるバイアス電流Ibに重畳され、超電導接合部202aを流れる電流が増加する。このとき、超電導接合部202aは、図2に示すように、超電導状態である“ゼロ電圧状態A”から、超電導接合部202aに流れる電流が臨界電流Icを超え、“有限電圧状態B”へのスイッチングが起こる。さらに、超電導接合部202aの“有限電圧状態B”へのスイッチングにより次の超電導接合部202bに磁束量子に伴う電流パルスが流れ、同様の動作で、“ゼロ電圧状態A”から“有限電圧状態B”へのスイッチングが起こる。このようにして磁束量子は次々と超電導接合素子201a,201bを伝送される。超電導接合部202a,202bのスイッチングはトンネル現象に基づいているので、スイッチング時間は1ps以下である。また、動作レベルが極めて低いので1個の超電導接合素子201a,201bの消費電力は数nWであることが見積もられており、超高速で低消費電力のスイッチング素子が実現できることが期待されている。
【0005】
図3は、図1の等価回路図に対応する超電導接合回路の平面図であり、図4は、図3に示すA−A線断面図である。なお、図3では直流電流源を省略している。
【0006】
図3および図4を参照するに、超電導接合回路200は、基板205上に下部電極206と、下部電極206の端面に形成された障壁層208と、障壁層208に接する上部電極209と、下部電極と上部電極との絶縁膜200や、上部電極209を覆う保護膜211等が設けられている。2つの超電導接合素子201a,201bの上部電極209は互いに接続されており、障壁層208が超電導接合部202a,202bを形成している。図示されていない直流電流源から上部電極209および障壁層208を介して下部電極206a,206bにバイアス電流が流される。2つの下部電極206a,206bはそれぞれ接地されている。
【0007】
ところで、超電導接合回路の各々の超電導接合部の臨界電流は、障壁層208の接合面積に依存することが知られている。図4に示すように、各々の超電導素子間で、下部電極206の厚さと障壁層208の傾斜角がそれぞれ略同等の場合、接合面積は、上部電極209の幅(図3に示す幅JW)に依存する。各々の上部電極209の幅を略同等となるように設定することで、臨界電流は略同等になり、超電導回路動作が安定することが期待される。
【非特許文献1】IEEE Trans.Appl.Supercond.vol.13,pp.809−812,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図3および図4に示す超電導接合回路200では、各々の超電導接合素子201a,201bの臨界電流(図2に示すIc)のばらつきが大きいため、磁束量子に伴う電流パルスを供給しても、スイッチングしない超電導接合素子があり、あるいはスイッチングしてもその電流マージンが極めて狭い超電導接合素子がある。そのため、少数の超電導接合素子により構成された基本的な論理回路や超電導線路でも安定して動作しないという問題がある。さらにこの問題は素子数が多くなればなるほど深刻化する。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、臨界電流密度さらには臨界電流を高精度で制御可能な超電導接合素子および超電導接合回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者等は、鋭意検討の結果、超電導接合回路において、超電導接合部を形成する一方の電極である下部電極の面積に基づいて超電導接合部の臨界電流密度を制御できることを知得したものある。すなわち、本願発明者等は、超電導接合部の接合面積を複数の超電導接合部間で同等としても、超電導臨界電流のばらつきが動作しないほど大きな原因として、下部電極の面積が互いに異なるためであることを知得したものである。例えば先に示した図3および図4に示す超電導接合回路では、超電導接合部202a,202bの下部電極の面積が互いに異なるため、それらの臨界電流密度が異なってくる。そのため、接合面積を同等としても臨界電流が異なり、超電導接合素子201a,201bが動作しなかった。そこで、本発明は、下部電極の面積に基づいて臨界電流密度を制御することで、安定して動作する超電導接合素子および超電導接合回路を実現したものである。
【0011】
本発明の一観点によれば、超電導膜からなる下部電極と、前記下部電極の一部の表面に形成された障壁層と、前記障壁層を覆う超電導膜からなる上部電極と、を備え、前記下部電極、障壁層、および上部電極により形成された超電導接合部を有する超電導接合素子であって、前記超電導接合部は、その臨界電流密度が下部電極の面積に基づいて制御されてなることを特徴とする超電導接合素子が提供される。
【0012】
本発明によれば、下部電極の面積に基づいて超電導接合部の臨界電流密度を制御することで、従来不可能であった、超電導接合素子の臨界電流を高精度で設定できる。
【0013】
本発明の他の観点によれば、磁束量子を信号の担体とし、基板上に超電導膜からなる下部電極と、前記下部電極の一部の表面に形成された障壁層と、前記障壁層を覆う超電導膜からなる上部電極と、を備え、前記下部電極、障壁層、および上部電極により形成された複数の超電導接合部を有する超電導接合回路であって、前記複数の超電導接合部はそれぞれ、その臨界電流密度が下部電極の面積に基づいて制御されてなることを特徴とする超電導接合回路が提供される。
【0014】
本発明によれば、下部電極の面積に基づいて超電導接合部の臨界電流密度を制御することで、超電導接合回路の多数の超電導接合部の臨界電流密度を高精度で制御でき、所望の臨界電流に設定できるようになる。その結果、安定して動作する超電導接合回路を実現できる。
【0015】
前記複数の下部電極は略同一形状であってもよく、さらに矩形の形状を有してもよい。さらに、前記複数の超電導接合部は、その臨界電流密度が下部電極の幅および/または奥行きに基づいて制御される構成としてもよい。
【0016】
さらに、前記下部電極に絶縁膜を介して電気的に接地された超電導接地膜をさらに備え、前記下部電極は、絶縁膜に形成された接続窓を介して超電導接地膜と電気的に接続されてなる構成としてもよく、さらに前記超電導接合部は、その臨界電流密度が接地窓の面積に基づいてさらに制御されてなる構成としてもよい。これによりさらに高精度に臨界電流密度を設定できる。
【0017】
前記下部電極および上部電極は、酸化物超電導体からなる構成としてもよく、磁気遮蔽層は、酸化物超電導体からなる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、臨界電流密度さらには臨界電流を高精度で制御可能な超電導接合素子および超電導接合回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面を参照しつつ実施の形態を説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る超電導接合回路の平面図、図6は、図5に示すB−B線断面図、図7は、第1の実施の形態に係る超電導接合回路の等価回路図である。
【0021】
図5〜図7を参照するに、第1の実施の形態に係る超電導接合回路10は、5つの超電導接合素子201〜205を接続した超電導接合線路である。超電導接合回路10は、図7に示すように、超電導接合素子201〜205が、それぞれのインダクタ21が直列になるように接続され、インダクタ21同士の接続点で直流電流源22と超電導接合部161〜165とが接続されている。
【0022】
超電導接合回路10(超電導接合素子201〜205)は、基板11と、基板11上に形成された、超電導磁気遮蔽膜12と、第1層間絶縁膜13と、下部電極14と、下部電極13を覆う第2層間絶縁膜18と、下部電極14の端面に形成された障壁層17と、障壁層17に接し、第1層間絶縁膜13および第2層間絶縁膜15の一部を覆う上部電極18と、上部電極18を覆う保護膜19から構成される。
【0023】
基板11としては、MgO、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、SrTiO3、(LaAlO30.3−(SrAl0.5Ta0.530.7(LSAT)、LaAlO3、およびSrTiO3等を用いることができる。
【0024】
超電導磁気遮蔽膜12、下部電極14、および上部電極18としては、超電導材料であれば特に限定されず、例えばNb、Pb等の単元素や合金の超電導材料、Nb3Sn、V3Si等の化合物超電導材料、酸化物超電導材料等が挙げられる。これらの超電導材料うち、超電導臨界温度が高く、冷却コストを低減できる点で、酸化物超電導材料を用いることが好ましい。酸化物超電導材料としては、例えば、YBCO(YBa2Cu37-X)、YBCOのイットリウムの一部あるいは全部を一種以上の希土類金属元素で置換した材料、Hg−M−Cu−O(元素MがBa、Sr、およびCaのうち少なくとも1つの元素からなる。)等の水銀系超電導材料、Bi2Sr2Ca2Cu310等のビスマス系超電導体が挙げられる。
【0025】
下部電極14、障壁層17、および上部電極18により形成される超電導接合部16は、いわゆるジョセフソン接合を形成する。本発明のジョセフソン接合の形態としては、積層型、粒界接合型、ステップエッジ型、およびランプエッジ型のいずれでもよいが、第1の実施の形態ではランプエッジ型を例に説明する。
【0026】
障壁層17は、絶縁膜を下部電極14の表面に成長させてもよく、絶縁膜を設ける代わりに、下部電極14の表面の一部をイオンビーム、例えばアルゴンイオンビームを照射して、数原子層の損傷層を形成する等の改質を行ってもよい。
【0027】
第1層間絶縁膜13および第2層間絶縁膜15としては、例えば、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3−(SrAl0.5Ta0.530.7(LSAT)、および(SrAl0.5Ta0.530.7(SAT)が挙げられる。
【0028】
また、超電導接合回路10を構成する各層12〜15,18は、スパッタ法、レーザアブレーション法、蒸着法、化学的気相成長(CVD)法等を用いて形成される。また、下部電極14や上部電極18のパターニングや下部電極14の傾斜面の形成は、イオンミリング等の公知のドライエッチング法、例えばイオンミリングが用いられる。
【0029】
図5に示すように、上部電極18の各々は、所定の接合幅を有して、障壁層17を介して下部電極14との間に超電導接合部16を形成している。上部電極18は、各々の超電導接合素子201〜205同士を接続し、インダクタ21を形成している。また、超電導接合部161〜165には、直流電流源22により下部電極18を介してバイアス電流が供給されている。なお、直流電流源22は超電導接合素子202〜205にも接続されているがその図示を省略している。
【0030】
下部電極14は、第1層間絶縁膜13の一部に形成された厚さ方向に貫通する開口部を介して超電導磁気遮蔽膜12に接触している。なお、図6に示すように、下部電極14と第1層間絶縁膜13との界面において、下部電極14が平坦な状態から第1層間絶縁膜13の膜厚方向に傾斜を開始する位置を境界として、その境界の内側の領域を接続窓14aと称する。なお、ランプエッジ型以外のジョセフソン接合の場合は、接合窓は第1層間絶縁膜13に形成された下部電極14と超電導磁気遮蔽膜12とを電気的に接続する配線のために形成された開口部の領域である。さらに接続窓の面積は、接続窓を平面視した場合の面積である。
【0031】
また、下部電極14の各々は、超電導接合素子201〜205毎に1つずつ設けられている。各々の超電導接合部161〜165の臨界電流密度は、下部電極14の面積に基づいて制御される。次に詳細を説明するが、超電導接合部161〜165の臨界電流密度は、下部電極14の面積に対して負の相関を有する。したがって、超電導接合回路10の超電導接合部161〜165の下部電極14の面積を同等に設定することで、各々の超電導接合部161〜165の臨界電流密度を互い同等とすることができる。なお、下部電極14の面積は、超電導接合回路10を平面視した場合(例えば図5に示す場合)の下部電極14の面積である。
【0032】
また、図5には示されていないが、一つの下部電極14に、2つ以上の超電導接合部を形成しても、超電導接合部161〜165の臨界電流密度は、一つの超電導接合部を形成した場合の臨界電流密度と同等である。
【0033】
さらに、超電導接合部161〜165の各々は、その接合面積に基づいて臨界電流を制御する。接合面積は、ランプエッジ型の場合、下部電極18の幅(接合幅)、下部電極14の膜厚、および障壁層17が形成された下部電極14の端面の基板面に対する角度の積である。超電導接合部161〜165の各々で、下部電極14の膜厚、および下部電極14の障壁層17が形成された端面の基板面に対する角度を同等に設定することで、下部電極18の幅(接合幅)に基づいて超電導接合部161〜165の各々の臨界電流を制御できる。すなわち、下部電極14の面積と下部電極18の幅(接合幅)に基づいて超電導接合部161〜165の臨界電流を制御できる。例えば、超電導接合部161〜165の各々について、下部電極14の面積、下部電極14の膜厚、下部電極14の障壁層17が形成された端面の基板面に対する角度、および下部電極18の幅(接合幅)のそれぞれを互いに同等に設定することで、超電導接合部161〜165の臨界電流を同等に設定することができる。
【0034】
超電導接合回路10の基本的な動作は先の図1に示す超電導接合回路と同様である。すなわち、入力側から磁束量子に伴う電流パルスを供給すると、超電導接合部161を流れるバイアス電流Ibに重畳され、先の図2に示すように、超電導状態である“ゼロ電圧状態A”から、超電導接合部161に流れる電流が臨界電流Icを超え、“有限電圧状態B”へのスイッチングが起こる。さらに、超電導接合部161の“有限電圧状態B”へのスイッチングにより次の超電導接合部162に磁束量子に伴う電流パルスが流れ、同様の動作で、“ゼロ電圧状態A”から“有限電圧状態B”へのスイッチングが起こる。このようにして磁束量子は次々と超電導接合素子201〜205を伝送される。超電導接合回路10は、下部電極14の面積が各々の超電導接合部161〜165で同等に設定され、さらに接合幅が同等に設定されているので、超電導接合部161〜165の臨界電流が同等となる。したがって、各々の超電導接合部161〜165のスイッチング動作が安定し、超電導接合回路10は磁束量子の伝搬を安定して行うことができ、回路動作が安定する。
【0035】
次に、臨界電流(臨界電流密度)と下部電極14の面積との関係を調べるために、下部電極14の幅および奥行きをそれぞれ異ならせて回路を形成し、臨界電流を測定する試験を行った。
【0036】
図8は、臨界電流と下部電極の幅との関係を調べるための超電導接合回路の平面図である。図8を参照するに、一つの基板上に、下部電極の幅(X軸方向の長さ)だけが互いに異なる6個の超電導接合素子TPW1〜TPW6を形成した。各々の超電導接合素子の断面構成は図6の第1の実施の形態に係る超電導接合素子と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0037】
超電導接合素子TPW1〜TPW6は、下部電極の幅WDを10μm〜100μmの範囲で異ならせて形成されている。また、超電導接合素子TPW1〜TPW6の各々の下部電極14の奥行きDP(Y軸方向の長さ)、超電導接合部の接合幅JW、接合窓14aの大きさを、それぞれ同一に設定した。奥行きDPは25μm、接合幅JWは5μm、接合窓14aの下部電極14は5μm×5μmに設定し、接合窓と超電導接合部との距離は10μmとした。また、上部電極18が2つの分かれているのは、一方に直流電流源を、他方に電圧計を接続するためである。
【0038】
また、超電導接合素子TPW1〜TPW6を構成する材料は、基板11がMgO、超電導磁気遮蔽膜12、下部電極14および上部電極18がLa0.20.9Ba1.9Cu3x、第1層間絶縁膜13および第2層間絶縁膜15がSrSnO3、保護膜19がAuである。また、下部電極14の膜厚を200nm、上部電極18の膜厚を200nm、障壁層17が形成された傾斜面を基板面に対して約30度に設定し、接合面積を約2μm2とした。なお、超電導磁気遮蔽膜12および下部電極14はDCスパッタ法を用いて形成した。また、上部電極18はパルスレーザ蒸着法を用いて形成した。第1層間絶縁膜13、第2層間絶縁膜15、および保護膜19はRFスパッタ法を用いて形成した。また、障壁層17を下部電極14の端面(傾斜面)にArイオンを照射して形成した。
【0039】
図9は、臨界電流と下部電極の幅との関係を示す図である。ここで、縦軸は臨界電流であるが、TPW1〜TPW6の接合面積は同等であるので、臨界電流密度と下部電極の幅との関係をも示していることになる。
【0040】
図9を参照するに、臨界電流は、下部電極の幅に対して負の相関を有することが分かる。すなわち、下部電極の幅が増加するほど臨界電流(臨界電流密度)は減少することが分かる。
【0041】
図9の臨界電流と下部電極の幅との関係の回帰式を、下部電極の幅WD、臨界電流Icとして表すと、下記式(1)となる。
Ic=(WD×1500)-0.19 … (1)
上記式(1)において、所望の幅WDに対して、変化割合ΔWDに設定した場合の臨界電流Icの変化割合ΔIcは、上記式(1)から、
ΔIc=(ΔWD+1)-0.19−1 … (2)
となる。例えば、ΔWDが−0.3、すなわち、所望の幅WDの70%に設定した場合、上記式(2)によればΔIc=0.7-0.19−1=0.07となり、所望の臨界電流Icに対して7%の増加になる。
【0042】
一方、ΔWDが+0.3、すなわち、所望の幅WDの130%に設定した場合、上記式(2)によればΔIc=1.3-0.19−1=−0.049となり、所望のIcに対して4.9%の増加になる。
【0043】
このように、上記式(2)によれば、所望の臨界電流Icに対して、臨界電流Icのばらつき(標準偏差σ/平均値Avg)を±5%以内の範囲に設定するためには、下部電極14の幅WDのばらつき(標準偏差σ1/平均値Avg1)を±23%以内の範囲に設定すればよいことが分かる。
【0044】
この臨界電流Icと下部電極14の幅WDとの関係は臨界電流密度と下部電極14の幅WDとの関係においても同様である。したがって、下部電極14の幅WDにより臨界電流密度のばらつき(標準偏差σ1/平均値Avg1)を同様にして制御し、さらに、超電導接合部の接合幅JWにより所望の臨界電流となるように設定することができる。
【0045】
次に、臨界電流(臨界電流密度)と下部電極の奥行きとの関係を調べるために次のような試験を行った。
【0046】
図10は、臨界電流と下部電極の奥行きとの関係を調べるための超電導接合回路の平面図である。図10を参照するに、一つの基板上に、下部電極の奥行き(Y軸方向の長さ)だけが互いに異なる5個の超電導接合素子TPD1〜TPD5を形成した。各々の超電導接合素子TPD1〜TPD5の構成、材料、および膜厚は図8の試験パターンと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0047】
超電導接合素子TPD1〜TPD5は、下部電極14の奥行きを15μmから105μmまで異ならせて形成されている。また、超電導接合素子TPD1〜TPD5の各々の下部電極14の幅WD、超電導接合部16の接合幅JW、接合窓14aの大きさを、それぞれ同一に設定した。幅WDを15μm、接合幅JWを5μm、接合窓の大きさを5μm×5μmに設定し、接合窓と超電導接合部との距離を10μmとした。
【0048】
図11は、臨界電流と下部電極の奥行きとの関係を示す図である。ここで、縦軸は臨界電流であるが、TPD1〜TPD5の接合面積は同等であるので、臨界電流密度と下部電極の奥行きとの関係をも示していることになる。
【0049】
図11を参照するに、臨界電流は、下部電極の奥行きに対して負の相関を有することが分かる。すなわち、下部電極の奥行きが増加するほど臨界電流(臨界電流密度)は減少することが分かる。
【0050】
図11の臨界電流と下部電極の奥行きとの関係の回帰式を、下部電極の奥行きDP、臨界電流Icとして表すと、下記式(3)となる。
Ic=(DP×1300)-0.19 … (3)
上記式(3)において、所望の奥行きDPに対して、変化割合ΔDPに設定した場合の臨界電流Icの変化割合ΔIcは、上記式(3)から、
ΔIc=(ΔDP+1)-0.19−1 … (4)
となる。上記式(4)は、上記式(2)のΔWDをΔDPに置き換えた以外は同等である。したがって、上記式(4)を用いると、所望の臨界電流Icに対して、臨界電流Icのばらつき(標準偏差σ2/平均値Avg2)を±5%以内の範囲に設定するためには、下部電極14の奥行きDPのばらつき(標準偏差σ2/平均値Avg2)を±23%以内の範囲に設定すればよいことが分かる。
【0051】
この臨界電流Icと下部電極14の奥行きDPとの関係は臨界電流密度と下部電極14の奥行きDPとの関係においても同様である。したがって、下部電極14の奥行きDPにより臨界電流密度のばらつき(標準偏差σ2/平均値Avg2)を同様にして制御し、さらに、超電導接合部16の接合幅JWにより所望の臨界電流となるように設定することができる。
【0052】
さらに、以上のことから下部電極14の幅WDおよび奥行きDPの両方に基づいて、臨界電流密度および臨界電流を高精度で制御できる。すなわち、超電導接合回路において、設計値として様々な臨界電流の超電導接合部を備える場合であっても、下部電極の幅および奥行きを略同等として、臨界電流密度を略同等とし、さらに、接合幅JWにより臨界電流を設定することができる。
【0053】
また、上記式(2)および(4)は、ΔWDとΔDPとが異なるだけで、他は同一であることから、ΔIcに与える影響は下部電極の幅WDと奥行きDPとで同じ程度であることが分かる。したがって、幅WDと奥行きDPとの積、すなわち下部電極14の面積に基づいて、臨界電流密度および臨界電流を高精度で制御できることが十分に期待できる。
【0054】
なお、上記2つの試験では、下部電極14が矩形(正方形を含む。)の場合について行ったが、菱形やその他の多角形、円形、楕円形等の他の形状の場合も同様に、下部電極14の面積に基づいて臨界電流密度および臨界電流を高精度で制御できることが十分に期待できる。
【0055】
さらに、本願発明者等は、上述した下部電極14の幅WDや奥行きDPの他に、下部電極14を超電導磁気遮蔽膜と接続する接続窓の面積が臨界電流(臨界電流密度)に影響を与えることを知得した。臨界電流(臨界電流密度)と下部電極の接合窓の面積との関係を調べるために次のような試験を行った。
【0056】
図12は、臨界電流と下部電極の接合窓の面積との関係を調べるための超電導接合回路の平面図である。図12を参照するに、一つの基板上に、下部電極の接続窓の大きさだけが互いに異なる5個の超電導接合素子TPC1〜TPC5を形成した。接合窓は、先の図6において説明したように、下部電極14と第1層間絶縁膜13との界面において、下部電極14が平坦な状態から第1層間絶縁膜13の膜厚方向に傾斜を開始する位置を境界として、その境界の内側の領域である。各々の超電導接合素子TPC1〜TPC5の構成、材料、および膜厚は図8の試験パターンと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0057】
超電導接合素子TPC1〜TPC5は、下部電極の接合窓14aの面積を、16μm2〜400μm2まで異ならせ形成されている。具体的には、超電導接合素子TPC1〜TPC5の接合窓14aの大きさは、それぞれ、幅×奥行きで表すと、4μm×4μm、8μm×8μm、12μm×12μm、16μm×16μm、20μm×20μmである。また、超電導接合素子TPC1〜TPC5の各々の下部電極14の幅WDおよび奥行きDP、超電導接合部16の接合幅JWを、それぞれ同一に設定した。幅WDは35μm、奥行きDPは35μm、接合幅JWは5μmに設定し、接合窓と超電導接合部との距離は8μmとした。
【0058】
図13は、臨界電流と下部電極の接合窓の面積との関係を示す図である。ここで、縦軸は臨界電流であるが、TPD1〜TPD5の接合面積は同等であるので、臨界電流密度と下部電極の接合窓の面積との関係をも示していることになる。
【0059】
図13を参照するに、臨界電流は、下部電極の接合窓の面積が100μm2以下ではほとんど変化せず、100μm2を超えると次第に減少する傾向となっている。この曲線の傾向から下部電極の接合窓14aの面積が16μm2より小さい場合でも臨界電流の変化は少なく、16μm2より小さい面積に設定してもよい。但し、下部電極の接合窓14aを容易に形成できる観点からは、下部電極の接合窓14aの面積を16μm2以上に設定することが好ましい。
【0060】
なお、下部電極の接合窓14aの面積が臨界電流(臨界電流密度)に影響を与えるメカニズムについては明らかではないが、本願発明者等は、下部電極の接合窓14aの大きさにより、下部電極14を形成する際の下部電極14の放熱状態が変化して、下部電極14に生じる内部応力の大きさが変化することに原因があるのでないかと推察している。
【0061】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、下部電極の面積に基づいて超電導接合部の臨界電流密度および臨界電流を制御することができる。特に、下部電極の面積を超電導接合素子間で実質的に同等とすることで、超電導接合素子間の超電導接合部の臨界電流密度および臨界電流のばらつきを抑制できる。その上、超電導接合素子間で超電導接合部の接合幅を制御することで、所望の臨界電流を有する超電導接合素子からなる超電導接合回路を形成できる。
【0062】
さらに、下部電極の接合窓の面積を上記の所定の範囲(100μm2以下)に設定することで、超電導接合素子間において超電導接合部の臨界電流密度および臨界電流のばらつきをいっそう抑制できる。よって、安定して動作する超電導接合回路を実現できる。
【0063】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の超電導接合回路の応用例を説明する。第2の実施の形態に係る超電導接合回路は、いわゆるトグルフリップフロップ回路を備える超電導接合回路である。
【0064】
図14は、本発明の第2の実施の形態に係る超電導接合回路の平面図、図15は、図14に示す超電導接合回路の等価回路図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図14および図15を参照するに、第2の実施の形態に係る超電導接合回路30は、電気信号から磁束量子信号への変換を行う入力側変換回路31、磁束量子を伝搬する入力側超電導線路32、磁束量子が供給されると出力状態が順次変化するトグルフリップフロップ回路33、磁束量子を伝搬する出力側超電導線路34、および磁束量子信号から電気信号への変換を行う出力側変換回路35からなる。これらの要素回路31〜35からなる超電導接合回路30は、超電導接合部J1〜J15、インダクタ21、および直流電流源221〜225が組み合わされて形成されている。次に、超電導接合回路30の動作を説明する。
【0066】
入力側変換回路31では、入力部Inに電流パルスが供給されると、超電導接合部J2に流れる電流が増加する。直流電流源221からのバイアス電流と電流パルスの和が臨界電流を超えると超電導接合部J2がスイッチして、磁束量子に伴う電流パルスを発生する。発生した磁束量子は、入力側超電導線路32に伝搬する。なお、ここで「スイッチする」を、説明の便宜上、“ゼロ電圧状態A”から“有限電圧状態B”へ転移する意味で使用する。
【0067】
入力側超電導線路32では、磁束量子を超電導接合部J3およびJ4を順次高速で伝搬すると共に、磁束量子に伴う電流パルスの波形整形を行う。
【0068】
トグルフリップフロップ回路33では、磁束量子に伴う電流パルスが供給される以前の状態は、直流電流源223からのバイアス電流が超電導接合部J6→超電導接合部J5→超電導接合部J7→グランドの方向と、超電導接合部J8→グランドの方向に流れている。このとき、磁束量子がトグルフリップフロップ回路33に供給されると、磁束量子に伴う電流パルスにより、超電導接合部J5はバイアス電流と電流パルスとが同方向なのでスイッチし、超電導接合部J6はバイアス電流と電流パルスとが逆方向なのでスイッチしない。超電導接合部J6を通った電流パルスは超電導接合部J8に流れる。超電導接合部J8ではバイアス電流と電流パルスとが同方向に流れるので、超電導接合部J8がスイッチし、磁束量子が出力側超電導線路34に出力される。
【0069】
この磁束量子の出力と同時に、磁束量子がインダクタ211→超電導接合部J7およびインダクタ211→超電導接合部J5→超電導接合部J6の方向に伝搬するが、超電導接合部J5〜J7のいずれもがスイッチしないため磁束量子が保持される(持続電流が流れる)。このとき、バイアス電流の方向は超電導接合部J8→インダクタ211→超電導接合部J7に変わっている。そして、インダクタ211が共通するループのインダクタ211→超電導接合部J5→超電導接合部J6の方向に循環電流が流れる。
【0070】
次の磁束量子がトグルフリップフロップ回路33に供給されると、循環電流と磁束量子に伴う電流パルスが同方向となる超電導接合部J6をスイッチして、電流パルスを止め、超電導接合部J5は打ち消し合い電流パルスを通す。また、超電導接合部J7では持続電流と電流パルスが同方向に流れるのでスイッチし、回路外に出力される。また、超電導接合部J7→インダクタ211→超電導接合部J8の方向にも電流パルスが流れるが、いずれの超電導接合部も臨界電流を超えないためスイッチせず、インダクタ211に流れる電流を打ち消して初期状態に戻す。
【0071】
以上を繰り返して、時系列で供給される2つの磁束量子のうちの1つを出力側超電導線路34に出力する。
【0072】
出力側超電導線路34では、入力側超電導線路32と同様にして、磁束量子が超電導接合部J9〜J11を順次高速で伝搬すると共に、磁束量子に伴う電流パルスの波形整形を行う。
【0073】
出力側変換回路35では、磁束量子に伴う電流パルスが供給されると、超電導接合部J12がスイッチし、超電導接合部J12→L2→超電導接合部J13に磁束量子が保持される。L2を共通するループのL2→超電導接合部J14→超電導接合部J15の方向に循環電流が流れるが、超電導接合部J14およびJ15の臨界電流が超電導接合部J12およびJ13よりも低く設定されているのでスイッチし、有限電圧状態になる。このときリセット信号入力部RSからのリセット信号がJ13に入力されると、磁束量子が外部に出されるため有限電圧状態は終了し、出力信号がパルス状となる。
【0074】
図16は、第2の実施の形態に係る超電導接合回路の波形図である。図16を図14および図15と共に参照するに、入力側変換回路31の入力部Inにパルス状の入力電流を供給する。また、出力側変換回路35のリセット信号入力部RSにパルス状のリセット電流を供給する。出力側変換回路35の出力部Outには、入力電流のパルスの一つおきに、パルス状の出力信号が出力される。図16では、入力電流のパルスの立ち上がりに対して略同じタイミングで出力信号のパルスが生成されているが、これは、時間のスケールの一目盛り(1msec)に対して、信号の伝搬が極めて高速なためである。
【0075】
図14に戻り、超電導接合部J1〜J15の各々の下部電極14は、超電導接合部J1の下部電極14を除き、略同等の幅および奥行きに設定されている。したがって、第1の実施の形態において説明したように、超電導接合部J2〜J15の臨界電流密度が略同等となっている。これにより、超電導接合部J2〜J15のそれぞれについて所定の接合幅を設定することで、回路動作に必要な臨界電流を、そのばらつきを抑制して設定できる。
【0076】
なお、超電導接合部J1の場合は、下部電極14にインダクタが形成されているため、他の下部電極よりも総面積が大きくなっている。その面積が他の下部電極の面積の約2倍に設定している。このような場合は、上述した臨界電流密度と下部電極の面積との関係および臨界電流と接合幅との関係から所望の臨界電流に設定できる。
【0077】
第2の実施の形態によれば、多数の超電導接合素子を組み合わせた超電導接合回路30において、下部電極14の面積に基づいて臨界電流密度を設定でき、さらに、下部電極の面積を略同等に形成することにより、超電導接合部の臨界電流密度を略同等にすることができる。さらに、接合幅を設定することで、臨界電流を制御することができる。
【0078】
次に、第2の実施の形態に係る実施例、および本発明によらない比較例を説明する。
【0079】
図17は、第2の実施の形態に係る実施例の超電導接合回路の平面図、図18は比較例に係る超電導接合回路の平面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
図17を参照するに、実施例の超電導接合回路40は、図14に示す超電導接合回路の入力側超電導線路32および出力側超電導線路34において、各々、超電導接合素子を1つおよび2つ追加した以外は同様の構成を有する。その他の構成は同様であるので説明を省略する。下部電極14は、入力側変換回路31の超電導接合部Ja1の下部電極以外の下部電極14は、221μm2に設定されている。なお、超電導接合部Ja1の下部電極14の面積は、332μm2に設定されている。
【0081】
また、図18を参照するに、比較例の超電導接合回路220は、下部電極2261〜2267が異なる面積で形成されている以外は、図17に示す実施例の超電導接合回路と略同様に構成されている。下部電極2261〜2267の面積は、それぞれ、332μm2、2320μm2、221μm2、221μm2、5600μm2、221μm2、221μm2に設定されている。
【0082】
図19は、図16に示す実施例の超電導接合回路の臨界電流を測定するための回路、図20は、図18に示す比較例に係る超電導接合回路の臨界電流を測定するための回路である。
【0083】
図19および図20を先の図17および図18と共に参照するに、実施例および比較例の臨界電流を測定するための回路40A,120Aは、それぞれ、磁束量子が伝搬する線路が断線され、各々の超電導接合素子の臨界電流が測定可能に形成されている。図示を省略するが上部電極18には可変電流電源を接続し、下部電極14,2261〜2267に電気的に接続されている超電導磁気遮蔽膜(隠れて図示されず。)を接地し、超電導接合部Ja1〜Ja16,Jb1〜Jb16に並列に電圧計を接続した。但し、入力側変換回路31では、下部電極14と超電導磁気遮蔽膜を電気的に接続せずに、入力部Inを接地した。
【0084】
図21は、実施例および比較例の臨界電流密度を示す図である。図21を参照するに、比較例では、超電導接合部Jb1〜Jb16の平均値は56.8kA/cm2、標準偏差は15.4kA/cm2となり、標準偏差/平均値は27.1%となる。これに対して、実施例では、超電導接合部Ja1〜Ja16の平均値は121kA/cm2、標準偏差は10.5kA/cm2となり、標準偏差/平均値は8.7%となる。したがって、標準偏差/平均値により比較すると、実施例の超電導接合回路は比較例の超電導接合回路よりも臨界電流密度のばらつきが極めて低減されたことが分かる。
【0085】
(第3の実施の形態)
図22は、本発明の第3の実施の形態に係る超電導接合回路の平面図、図23は図22に示すC−C線断面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。0
図22および図23を参照するに、第3の実施の形態に係る超電導接合回路70は、図5等に示す第1の実施の形態に係る超電導接合回路の変形例である。超電導接合回路70は、下部電極14の表面に接触して、各々の下部電極14を接続する下部電極接続膜71と、下部電極接続膜71を覆う保護膜72をさらに設けた以外は第1の実施の形態に係る超電導接合回路と略同様に構成されている。
【0086】
下部電極接続膜71は、超電導材料からなり、下部電極14の辺部分に形成された傾斜面、および第1および第2層間絶縁膜13,15の一部の表面を覆うように、各々の下部電極14に亘って形成されている。下部電極接続膜71の超電導材料は、下部電極や上部電極と同様の材料から選択される。また、下部電極接続膜71は、上部電極18とは接触しない位置に形成されている。下部電極接続膜71を設けることで上部電極18から超電導接合部161〜165を介して下部電極14に流れ込んだ電流を、超電導磁気遮蔽膜12を介して流れるだけでなく、下部電極接続膜71を介しても流れるので、下部電極14間を接続するインダクタンスを低減できる。これにより、超電導接合回路70は磁束量子をさらに高速で伝搬することができる。
【0087】
なお、保護膜72は、保護膜19と同様の材料からなる。また、下部電極14と下部電極接続膜71との間に障壁層73が形成されている。これは、製造容易性の点から、障壁層17を形成する際に下部電極14の表面全体にイオンビーム照射したことによる。障壁層73は下部電極14と下部電極接続膜71とにより超電導接合部を形成するが、回路動作上は、常にゼロ電圧状態であり、スイッチすることはない。それは、接合幅が、超電導接合部161〜165の接合幅よりも極めて大きいので、臨界電流が超電導接合部161〜165の臨界電流よりも極めて大きいからである。なお、障壁層73を設けることは必須ではない。
【0088】
超電導接合素子201〜205の各々は下部電極接続膜71を設けても、下部電極14の面積に基づいて超電導接合部の臨界電流密度および臨界電流を制御することができる。
【0089】
なお、下部電極接続膜71と下部電極14とが接触する領域が下部電極14の面積に占める割合には特に制限はないが、下部電極接続膜71は、下部電極14の四つの辺のうちできるだけ多くの辺と接触することが好ましい。但し、下部電極接続膜71は、上部電極18と接触しない程度に離隔して設ける必要がある。下部電極接続膜71は、上部電極18の下部電極接続膜71側の辺から、例えば5μm離隔することが好ましい。
【0090】
第3の実施の形態によれば、下部電極接続膜71を設けることにより、下部電極間のインダクタンスを低減でき、超電導接合回路70は磁束量子をさらに高速に伝搬することができる。また、第3の実施の形態に係る超電導接合回路70は、第1の実施の形態と同様の効果を有することはいうまでもない。
【0091】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る超電導接合回路は、図14に示す第2の実施の形態に係る超電導接合回路と、第3の実施の形態に係る超電導接合回路を組み合わせたものである。
【0092】
図24は、本発明の第4の実施の形態に係る超電導接合回路の平面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
図24を参照するに、第4の実施の形態に係る超電導接合回路80は、トグルフリップフロップ回路を含む超電導接合回路80である。超電導接合回路80は、下部電極接続膜81を設けた以外は、図14の第2の実施の形態に係る超電導接合回路30と同様に構成される。
【0094】
超電導接合回路80は、下部電極14のそれぞれを接続する超電導材料からなる下部電極接続膜81が設けられている。下部電極接続膜81は、先の図23に示す下部電極接続膜71と同様に、下部電極14の一部の表面および下部電極14間の第1層間絶縁膜13の一部の表面を覆うように、各々の下部電極14に亘って形成されている。本願発明者等の検討によれば、下部電極間のインダンクタンスは、下部電極接続膜81を設けない場合は0.7pHであったが、下部電極接続膜81を設けた場合は0.4pHに低減された。
【0095】
第4の実施の形態によれば、このように下部電極接続膜81を設けることで、下部電極間14のインダクタンスを低減でき、高速の超電導接合回路80を実現できる。また、超電導接合回路80は、第2の実施の形態に係る超電導接合回路と同様の効果を有する。
【0096】
なお、超電導接合回路80は、一つの下部電極接続膜81により下部電極14間を接続しているが、超電導接合回路の回路パターンに応じて、複数の下部電極接続膜71を配置してもよい。
【0097】
図25は、第4の実施の形態の変形例に係る超電導接合回路の平面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0098】
図25を参照するに、第4の実施の形態の変形例に係る超電導接合回路85は、下部電極接続膜81a,81bが2つに分離されている以外は、図24に示す第4の実施の形態に係る超電導接合回路80と同様に構成される。このように、下部電極膜を2つに分離して設けることで、回路パターンの冗長性が増し、回路設計が容易になる。
【0099】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る第1例〜第4例の超電導接合回路において、第1の実施の形態の超電導接合回路の応用例を説明する。
【0100】
図26は、本発明の第5の実施の形態に係る第1例の超電導接合回路の平面図、図27は図26に示す超電導接合回路の等価回路図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0101】
図26および図27を参照するに、第5の実施の形態に係る第1例の超電導接合回路90は、2つの出力部Out1,Out2を有するトグルフリップフロップ回路93を備える超電導接合回路である。超電導接合回路90は、電気信号から磁束量子信号への変換を行う入力側変換回路91、磁束量子を伝搬する入力側超電導線路92、トグルフリップフロップ回路93、磁束量子を伝搬する出力側超電導線路94a,94bおよび磁束量子信号から電気信号への変換を行う出力側変換回路95a,95bからなる。超電導接合回路90は、入力部Inに供給される電流パルスに応じて、2つの出力部Out1,Out2からパルス状の出力信号が交互に出力される。超電導接合回路90の基本的な構成は図14の第2の実施の形態に係る超電導接合回路と同様であるので、その構造および動作の詳細な説明を省略する。
【0102】
超電導接合回路90は、超電導接合部の各々の下部電極14が、入力側変換回路91の入力部In側の下部電極14−1を除き、略同等の幅および奥行きに設定されている。したがって、第1の実施の形態において説明したように、超電導接合部の臨界電流密度が略同等となっている。これにより、超電導接合部のそれぞれについて所定の接合幅を設定することで、回路動作に必要な臨界電流を設定できると共に臨界電流のばらつきを抑制できる。
【0103】
図28は、第5の実施の形態に係る第2例の超電導接合回路の平面図、図29は図28に示す超電導接合回路の等価回路図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0104】
図28および図29を参照するに、第5の実施の形態に係る第2例の超電導接合回路100は、セットリセットフリップフロップ回路を備える超電導接合回路である。超電導接合回路100は、電気信号から磁束量子信号への変換を行う入力側変換回路101a,101b、磁束量子を伝搬する入力側超電導線路102a,102b、セットリセットフリップフロップ回路103、磁束量子を伝搬する出力側超電導線路104、および磁束量子信号から電気信号への変換を行う出力側変換回路105からなる。
【0105】
超電導接合回路100の動作を簡単に説明する。入力部Setから電流パルス入力されると入力側変換回路101aにおいて磁束量子に変換され、入力側超電導線路102aを伝搬し、セットリセットフリップフロップ回路103の超電導接合部J21がスイッチする。これにより磁束量子が超電導接合部J21、インダクタ21a、超電導接合部J22およびグランドからなるループ内に保持される。
【0106】
このとき、入力部Resetから電流パルス入力されると超電導接合部J22がスイッチされ、保持された磁束量子が、出力側超電導線路104および出力側変換回路105を介して出力される。なお、超電導接合部J23は磁束量子の逆流を防止するために設けられている。また、超電導接合部J24は、入力部Setに連続して2つの電流パルスが供給された場合に、2つ目の電流パルスに起因する磁束粒子が超電導接合部J21、インダクタ21a、超電導接合部J22およびグランドからなるループ内に保持された磁束量子への関与を防止する。
【0107】
なお、超電導接合回路100の基本的な構成は図14の第2の実施の形態に係る超電導接合回路と同様であるので、その構造および動作の詳細な説明を省略する。
【0108】
超電導接合回路100は、超電導接合部の各々の下部電極14が、入力側変換回路101a,101bの入力部Set,Reset側の下部電極14−2a,14−2bを除き、略同等の幅および奥行きに設定されている。したがって、超電導接合回路100は、第1の実施の形態において説明したように、超電導接合部の臨界電流密度が略同等となっている。これにより、超電導接合部のそれぞれを所定の接合幅の設定することで、回路動作に必要な臨界電流を設定できると共に臨界電流のばらつきを抑制できる。
【0109】
図30は、第5の実施の形態に係る第3例の超電導接合回路の平面図、図31は図30に示す超電導接合回路の等価回路図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0110】
図30および図31を参照するに、第5の実施の形態に係る第3例の超電導接合回路110は、コンフルエンスバッファ回路を備える超電導接合回路である。超電導接合回路110は、電気信号から磁束量子信号への変換を行う入力側変換回路111a,111b、磁束量子を伝搬する入力側超電導線路112a,112b、コンフルエンスバッファ回路113、磁束量子を伝搬する出力側超電導線路114、および磁束量子信号から電気信号への変換を行う出力側変換回路115からなる。
【0111】
超電導接合回路110の動作を簡単に説明する。入力部In1および入力部In2のいずれかに電流パルスが入力されると入力側変換回路111aまたは111bにおいて磁束量子に変換され、入力側超電導線路112aまたは112bを伝搬し、コンフルエンスバッファ回路113の超電導接合部J31あるいはJ32がスイッチする。そして、磁束量子は出力側超電導線路114を介して出力部Outから出力される。コンフルエンスバッファ回路113は、量子信号が入力部In1,In2側に逆流することを防止する。また、入力部In1および入力部In2に同時に流パルスが入力された場合は、一つの量子信号のみが出力部Outに伝搬される。
【0112】
なお、超電導接合回路110の基本的な構成は図14の第2の実施の形態に係る超電導接合回路と同様であるので、その構造および動作の詳細な説明を省略する。
【0113】
超電導接合回路110は、超電導接合部の各々の下部電極14が、入力側変換回路111a,111bの入力部In1,In2側の下部電極14−3を除き、略同等の幅および奥行きに設定されている。したがって、超電導接合回路110は、第1の実施の形態において説明したように、超電導接合部の臨界電流密度が略同等となっている。これにより、超電導接合部のそれぞれを所定の接合幅の設定することで、回路動作に必要な臨界電流を設定できると共に臨界電流のばらつきを抑制できる。
【0114】
図32は、第5の実施の形態に係る第4例の超電導接合回路の平面図、図33は図32に示す超電導接合回路の等価回路図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0115】
図32および図33を参照するに、第5の実施の形態に係る第4例の超電導接合回路110は、インバータ回路を備える超電導接合回路である。超電導接合回路120は、電気信号から磁束量子信号への変換を行う入力側変換回路121a,121b、磁束量子を伝搬する入力側超電導線路122a,122b、インバータ回路123、磁束量子を伝搬する出力側超電導線路124、および磁束量子信号から電気信号への変換を行う出力側変換回路125からなる。
【0116】
超電導接合回路120の動作を簡単に説明する。入力部Inに電流パルスが入力されると入力側変換回路121aにおいて磁束量子に変換され、入力側超電導線路122aを伝搬し、インバータ回路123の超電導接合部J41がスイッチして、超電導接合部J41、インダクタ21b、超電導接合部J42からなるループに図33に示す矢印の方向に流れる電流パルスを伴う磁束量子が保持される。このとき、入力部Clockに電流パルスが入力され磁束量子がインバータ回路123に供給されると、超電導接合部J42がスイッチして保持されていた磁束量子が打ち消され、超電導接合部J41、インダクタ21b、超電導接合部J42からなるループがリッセットされる。かかるループに磁束量子が保持されていないときに入力部Clockに電流パルスが入力されると、超電導接合部J43がスイッチして磁束量子が出力側超電導線路124を介して出力部Outから出力される。
【0117】
なお、超電導接合回路120の基本的な構成は図14の第2の実施の形態に係る超電導接合回路と同様であるので、その構造および動作の詳細な説明を省略する。
【0118】
超電導接合回路120は、超電導接合部の各々の下部電極14が、入力側変換回路112a,121bの入力部In,Clock側の下部電極14−4a,14−4bおよびインバータ回路123の下部電極14−5を除き、略同等の幅および奥行きに設定されている。したがって、超電導接合回路120は、第1の実施の形態において説明したように、超電導接合部の臨界電流密度が略同等となっている。これにより、超電導接合部のそれぞれを所定の接合幅の設定することで、回路動作に必要な臨界電流を設定できると共に臨界電流のばらつきを抑制できる。
【0119】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】従来の超電導接合回路の等価回路図である。
【図2】超電導接合回路の動作を説明するための図である。
【図3】図1の等価回路図に対応する超電導接合回路の平面図である。
【図4】図3に示すA−A線断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る超電導接合回路の平面図である。
【図6】図5に示すB−B線断面図である。
【図7】第1の実施の形態に係る超電導接合回路の等価回路図である。
【図8】臨界電流と下部電極の幅との関係を調べるための超電導接合回路の平面図である。
【図9】臨界電流と下部電極の幅との関係を示す図である。
【図10】臨界電流と下部電極の奥行きとの関係を調べるための超電導接合回路の平面図である。
【図11】臨界電流と下部電極の奥行きとの関係を示す図である。
【図12】臨界電流と下部電極の接合窓の面積との関係を調べるための超電導接合回路の平面図である。
【図13】臨界電流と下部電極の接合窓の面積との関係を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る超電導接合回路の平面図である。
【図15】図14に示す超電導接合回路の等価回路図である。
【図16】第2の実施の形態に係る超電導接合回路の波形図である。
【図17】第2の実施の形態に係る実施例の超電導接合回路の平面図である。
【図18】比較例に係る超電導接合回路の平面図である。
【図19】実施例の超電導接合回路の臨界電流密度を測定するための回路である。
【図20】比較例に係る超電導接合回路の臨界電流密度を測定するための回路である。
【図21】実施例および比較例の臨界電流密度を示す図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る超電導接合回路の平面図である。
【図23】図22に示すC−C線断面図である。
【図24】本発明の第4の実施の形態に係る超電導接合回路の平面図である。
【図25】第4の実施の形態に係る変形例の超電導接合回路の平面図である。
【図26】本発明の第5の実施の形態に係る第1例の超電導接合回路の平面図である。
【図27】図26に示す超電導接合回路の等価回路図である。
【図28】第5の実施の形態に係る第2例の超電導接合回路の平面図である。
【図29】図28に示す超電導接合回路の等価回路図である。
【図30】第5の実施の形態に係る第3例の超電導接合回路の平面図である。
【図31】図30に示す超電導接合回路の等価回路図である。
【図32】第5の実施の形態に係る第4例の超電導接合回路の平面図である。
【図33】図32に示す超電導接合回路の等価回路図である。
【符号の説明】
【0121】
10,30,40,70,80,85,90,100,110,120 超電導接合回路
11 基板
12 超電導磁気遮蔽膜
13 第1層間絶縁膜
14,14−1,14−2a,14−2b,14−3,14−4a,14−4b,14−5 下部電極
14a 接続窓
15 第2層間絶縁膜
16,161〜165,J1〜J15,Ja1〜Ja16 超電導接合部
17,73 障壁層
18 上部電極
19,72 保護膜
20,201〜205 超電導接合素子
21,211,212,21a,21b インダクタ
22,221〜225 直流電流源
31,91,101a,101b,111a,111b,121a,121b 入力側変換回路
32,92,102a,102b,112a,112b,122a,122b 入力側超電導線路
33,93,103 トグルフリップフロップ回路
34,94a,94b,104,114,124 出力側超電導線路
35,95a,95b,105,115,125 出力側変換回路
40A 臨界電流密度を測定するための回路
71,81,81a,81b 下部電極接続膜
113 コンフルエンスバッファ回路
123 インバータ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導膜からなる下部電極と、
前記下部電極の一部の表面に形成された障壁層と、
前記障壁層を覆う超電導膜からなる上部電極と、を備え、
前記下部電極、障壁層、および上部電極により形成された超電導接合部を有する超電導接合素子であって、
前記超電導接合部は、その臨界電流密度が下部電極の面積に基づいて制御されてなることを特徴とする超電導接合素子。
【請求項2】
前記下部電極は矩形の形状を有することを特徴とする請求項1記載の超電導接合素子。
【請求項3】
前記超電導接合部は、その臨界電流密度が下部電極の幅および/または奥行きに基づいて制御されてなることを特徴とする請求項2記載の超電導接合素子。
【請求項4】
前記下部電極に絶縁膜を介して電気的に接地された超電導接地膜をさらに備え、
前記下部電極は、絶縁膜に形成された接続窓を介して超電導接地膜と電気的に接続されてなることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか一項記載の超電導接合素子。
【請求項5】
前記超電導接合部は、その臨界電流密度が接地窓の面積に基づいてさらに制御されてなることを特徴とする請求項4記載の超電導接合素子。
【請求項6】
前記下部電極および上部電極は、酸化物超電導材料からなることを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか一項記載の超電導接合素子。
【請求項7】
磁束量子を信号の担体とし、基板上に超電導膜からなる下部電極と、前記下部電極の一部の表面に形成された障壁層と、前記障壁層を覆う超電導膜からなる上部電極と、を備え、前記下部電極、障壁層、および上部電極により形成された複数の超電導接合部を有する超電導接合回路であって、
前記複数の超電導接合部はそれぞれ、その臨界電流密度が下部電極の面積に基づいて制御されてなることを特徴とする超電導接合回路。
【請求項8】
前記複数の超電導接合部を構成する下部電極は、その面積が実質的に同等に設定されてなることを特徴とする請求項7記載の超電導接合回路。
【請求項9】
前記複数の超電導接合部を構成する下部電極は、略同一形状であることを特徴とする請求項7または8記載の超電導接合回路。
【請求項10】
前記複数の超電導接合部を構成する下部電極は、矩形の形状を有することを特徴とする請求項7〜9のうち、いずれか一項記載の超電導接合回路。
【請求項11】
前記複数の超電導接合部は、その臨界電流密度が下部電極の幅および/または奥行きに基づいて制御されてなることを特徴とする請求項10記載の超電導接合回路。
【請求項12】
前記複数の超電導接合部の下部電極は、その幅の平均値Avg1と標準偏差σ1との比である標準偏差σ1/平均値Avg1が、±23%以内の範囲に設定されてなることを特徴とする請求項11記載の超電導接合回路。
【請求項13】
前記複数の超電導接合部の下部電極は、その奥行きの平均値Avg2と標準偏差σ2との比である標準偏差σ2/平均値Avg2が、±23%以内の範囲に設定されてなることを特徴とする請求項12記載の超電導接合回路。
【請求項14】
前記下部電極に絶縁膜を介して電気的に接地された超電導接地膜をさらに備え、
前記下部電極は、絶縁膜に形成された接続窓を介して超電導接地膜と電気的に接続されてなることを特徴とする請求項7〜13のうち、いずれか一項記載の超電導接合回路。
【請求項15】
前記超電導接合部は、その臨界電流密度が接地窓の面積に基づいてさらに制御されてなることを特徴とする請求項14記載の超電導接合回路。
【請求項16】
前記複数の下部電極を互いに電気的に接続する超電導膜からなる下部電極接続膜をさらに備えることを特徴とする請求項14または15記載の超電導接合回路。
【請求項17】
前記下部電極接続膜は下部電極上に設けられてなることを特徴とする請求項16記載の超電導接合回路。
【請求項18】
前記下部電極接続膜が複数設けられてなり、該複数の下部電極接続膜は、各々異なる下部電極を互いに電気的に接続することを特徴とする請求項16または17記載の超電導接合回路。
【請求項19】
前記接続窓の面積が100μm2以下に設定されることを特徴とする請求項14〜18のうち、いずれか一項記載の超電導接合回路。
【請求項20】
前記下部電極および上部電極は、酸化物超電導材料からなることを特徴とする請求項7〜19のうち、いずれか一項記載の超電導接合回路。
【請求項21】
前記超電導接地膜または下部電極接続膜は、酸化物超電導体からなることを特徴とする14〜20のうち、いずれか一項記載の超電導接合回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2007−115930(P2007−115930A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306499(P2005−306499)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低消費電力型超電導ネットワークデバイスの開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)」
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】