説明

超電導線材の接続構造体

【課題】超電導線材の接続部の柔軟性を確保することにより、歪みの影響による臨界電流値等の超電導特性の劣化を抑制することができる超電導線材の接続構造体を提供する。
【解決手段】超電導線材の端部の両面を被覆する補強材を剥がして超電導線材の露出部を形成し、2本の超電導線材の露出部同士を半田層を介して重ね合わせ、重ね合わされた露出部の外側を柔軟で薄肉の接続補強材により被覆するとともに、接続補強材の両端部を露出部近傍の補強材に貼り付けることにより形成されている超電導線材の接続構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの超電導線材を接続するための超電導線材の接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導機器等に用いられる超電導線材は、十分な長さが要求されるため、超電導線材同士を接続して用いられるものであり、超電導線材同士を簡易に接続する場合には、超電導線材の端部同士を重ね合わせて半田で接続する(特許文献1)。
【0003】
図4は、従来の超電導線材の接続部分である接続構造体Aを示す図である。図4において、1は超電導線材、2は銅合金、SUS、ニッケル合金などの補強材、2aは半田層である。
【0004】
図4に示すように、2つの超電導線材1の端部を互いに重ね合わせて半田層2aにより接続した場合、接続された部分の厚さが大きくなるため、柔軟性に欠ける。このため、接続部分は曲げ難く、接続部以外の部分と同様に強制的に曲げた場合には大きな歪みが発生して臨界電流値等の超電導特性が劣化することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表特許WO01/33580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、超電導線材の接続部の柔軟性を確保することにより、歪みの影響による臨界電流値等の超電導特性の劣化を抑制することができる超電導線材の接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記の課題を解決するため、補強材に着目して超電導線材の接続部に工夫を凝らしたものである。以下、各請求項の発明を説明する。
【0008】
請求項1に記載の発明は
両面が補強材により被覆されて成る2本の超電導線材の端部同士を重ね合わせて半田により接続されている超電導線材の接続構造体であって、
前記超電導線材の前記端部の両面を被覆する前記補強材を剥がして前記超電導線材の露出部を形成し、
2本の前記超電導線材の前記露出部同士を半田層を介して重ね合わせ、
重ね合わされた前記露出部の外側を柔軟で薄肉の接続補強材により被覆するとともに、前記接続補強材の両端部を前記露出部近傍の前記補強材に貼り付けることにより形成されていることを特徴とする超電導線材の接続構造体である。
【0009】
請求項1の発明の超電導線材の接続構造体においては、超電導線材の端部の両面を被覆する補強材を剥がして超電導線材の露出部を形成し、2本の超電導線材の露出部同士を半田層を介して重ね合わせるため、超電導線材の接続構造体には補強材が存在しなくなる。このため、補強材の層厚の分だけ接続構造体の厚みを小さくして柔軟性を確保することができ、曲げに伴う歪みへの影響による臨界電流値等の超電導特性の低下を抑制することができる。また、接続抵抗を低くすることができる。一方、重ね合わされた露出部の外側を柔軟で薄肉の接続補強材により被覆するとともに、接続補強材の両端部を露出部近傍の補強材に貼り付けるため、補強材を剥がすことによる接続部の強度の低下を接続補強材が補うことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
前記接続補強材の材質が、超電導線材よりも高強度の金属材料であることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の接続構造体である。
【0011】
請求項2に記載の発明の超電導線材の接続構造体においては、接続補強材の材質が、超電導線材よりも高強度の金属材料であるため、接続部で補強材を剥がすことによる強度の低下を接合補強材で補うことができ、接続部の強化を図ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
前記接続補強材の材質が、SUSであることを特徴とする請求項2に記載の超電導線材の接続構造体である。
【0013】
銀合金よりも高強度の金属材料の中でも、特にSUSは柔軟性と強度を兼ね備えているため、接続補強材として好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超電導線材の接続部の柔軟性を確保することにより、歪みの影響による臨界電流値等の超電導特性の劣化を抑制することができる超電導線材の接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る超電導線材の接続構造体の実施の形態1を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明に係る超電導線材の接続構造体の製造工程を説明する断面図であって、(a)は超電導線材の断面図、(b)は超電導線材の端部の補強材を剥がして超電導線材を露出させた断面図、(c)は露出した超電導線材を重ね合わせて半田で接続した断面図である。
【図3】本発明に係る超電導線材の接続構造体の実施の形態2を示す断面図である。
【図4】従来の超電導線材の接続構造体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を一実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
〈実施の形態1〉
図1は、この発明の超電導線材の接続構造体を示す断面図である。図2(a)〜(c)は、本発明に係る超電導線材の接続構造体の製造工程を説明する断面図である。
【0018】
超電導線材1は、テープ状であって、超電導線材1の両面は銅合金からなるシート状の補強材2により被覆され、超電導線材1の両面と補強材2とは半田層(図示略)により貼り合わされている。
【0019】
超電導線材の接続構造体Bは、2つの超電導線材1の端部同士を重ね合わせて接続されるものであるが、重ね合わせる超電導線材1の端部の両面にある補強材2は剥がされて超電導線材1の露出部3が形成され、露出部3同士は半田層2aによって接続されている。
【0020】
重ね合わされた露出部3の外側は、半田層5を介して柔軟で薄肉の接続補強材4により被覆されている。接続補強材4の両端部は露出部3近傍の補強材2の切断端部に重ね合わされ、接続補強材4は露出部3を跨ぐようにして配置されている。
【0021】
本実施の形態においては、接続補強材4の材質はSUS304であり、接続補強材4の厚さを0.02mmに設定することにより接続補強材4が強度や柔軟性を発揮できる。
【0022】
次に、超電導線材の接続構造体Bの製造工程を図2に基づいて説明する。図2(a)に示すように超電導線材1の両面は補強材2により補強されており、本製造工程においては、まず、図2(b)に示すように補強材2の段剥ぎ処理によって超電導線材1の端部を露出させる。
【0023】
具体的には、例えば半田ごてにより補強材2を外側から加熱しながら補強材2を剥がし、剥がした補強材2をカッターで切断することにより超電導線材1の露出部3を形成する。
【0024】
次に、図2(c)に示すように2つの超電導線材1の露出部3を半田層2aを挟んで重ね合わせ、この状態で加熱することにより2つの超電導線材1の端部同士を接続する。
【0025】
そして、図1に示すように露出部3の重なり部分の外側を半田材料により被覆し、その上から柔軟なシート状の接続補強材4を被覆し、接続補強材4の両端部を露出部3近傍の補強材2の切断端部に重ね合わせて半田材料により貼り付けることにより接続構造体Bを作製する。
【0026】
このように、超電導線材1の接続構造体Bは、銅合金の補強材2を剥がし、高強度のシート状のSUS製の接続補強材を配置する構成であるため、超電導線材1の接続部分の柔軟性を発揮させる一方、十分な強度を確保することができるものである。
【0027】
〈実施の形態2〉
図3は、本発明に係る超電導線材1の接続構造体Bの実施の形態2を示す断面図である。実施の形態2の接続構造体Bの構成にあっては、外側に位置する補強材2の端部6を、曲げ歪みが超電導特性に悪影響を与えない範囲内において、露出部3の重ね合わせ部まで延長させている。このように構成すれば、大きな曲げ力が加わる露出部3の根元部分の補強がされるため、超電導線材1の接続部分に特に大きな力が加わる場合に有利になる。しかも、補強材2の切断寸法を変えるだけで良いため、製造が複雑化しない。
【0028】
〈実施の形態1に対応する実施例〉
図1に示す超電導線材の接続構造体を以下の条件で作製した。すなわち、超電導線材の厚みを0.23mm、超電導線材を被覆する銅合金製の補強材の厚みを0.05mm、超電導線材に補強材を接続する半田層の厚みを0.015mm、SUS製のシート状の接続補強材の厚みを0.02mmにそれぞれ設定し、また、幅寸法をいずれも4.5mmに設定し、接続補強材と超電導線材の補強材との重なり長さL1を2.5cm、露出部の重なり部分の長さL2を5cmに設定した。
【0029】
このように構成された超電導線材の接続構造体について超電導特性の試験を行った結果、超電導特性の劣化が十分に抑えられることを確認できた。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以上の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 超電導線材
2 補強材
2a 半田層
3 露出部
4 接続補強材
5 半田層
6 補強材の端部
A、B 接続構造体
L1 接続補強材と超電導線材の補強材との重なり長さ
L2 露出部の重なり部分の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面が補強材により被覆されて成る2本の超電導線材の端部同士を重ね合わせて半田により接続されている超電導線材の接続構造体であって、
前記超電導線材の前記端部の両面を被覆する前記補強材を剥がして前記超電導線材の露出部を形成し、
2本の前記超電導線材の前記露出部同士を半田層を介して重ね合わせ、
重ね合わされた前記露出部の外側を柔軟で薄肉の接続補強材により被覆するとともに、前記接続補強材の両端部を前記露出部近傍の前記補強材に貼り付けることにより形成されていることを特徴とする超電導線材の接続構造体。
【請求項2】
前記接続補強材の材質が、超電導線材よりも高強度の金属材料であることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の接続構造体。
【請求項3】
前記接続補強材の材質が、SUSであることを特徴とする請求項2に記載の超電導線材の接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−165435(P2011−165435A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25573(P2010−25573)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】