説明

超音波モータ

【課題】全体構成を簡略化することができ、かつ、配線の数を減らすことのできる超音波モータを提供する。
【解決手段】中心軸に垂直な断面が矩形状の長さ比率を有する振動子と、振動子の楕円振動発生面に接して振動子の楕円振動発生面と直交する中心軸を回転軸として回転駆動されるロータと、を少なくとも備えた超音波モータであって、振動子の回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、回転軸をねじれ軸とするねじれ共振振動と、を合成することにより、楕円振動を形成してなり、振動子の回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、回転軸をねじれ軸とするねじれ共振振動と、の共振周波数がほぼ一致するように、振動子の矩形状の長さ比率を設定し、振動検出電極層を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動子の縦振動と捻れ振動を合成して楕円振動を発生させ、ロータを回転させる超音波モータが提案されている。
例えば特許文献1に記載の超音波振動子では、1対もしくは複数対の積層型圧電素子が、基本弾性体と一体的に設けられた、積層型圧電素子を挿入可能な凹部を持つ保持用弾性体との間に保持され、かつ保持用弾性体を圧電素子に突き当てて圧縮応力を印加した状態で基本弾性体にビスで固定される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−85172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の超音波振動子の構造では、圧電素子を固定するための保持用弾性体が必要になる、保持用弾性体と圧電素子を配置するために弾性体に斜めの凹部を形成しなければならない等、全体として振動子の構成が複雑となると言う課題があった。
【0005】
また、前記複数対の積層圧電素子と保持用弾性体との間に複数の振動検出用の圧電素子が設けられた構成となっており、この振動子を駆動する際には、1つの相あたり、駆動用に2本、振動検出用に2本、少なくとも合わせて8本の配線が必要となり、配線数が多く小型化に不利であるという課題もあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、全体構成を簡略化することができ、かつ、配線の数を減らすことのできる超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る超音波モータは、中心軸に垂直な断面が矩形状の長さ比率を有する振動子と、振動子の楕円振動発生面に接して振動子の楕円振動発生面と直交する中心軸を回転軸として回転駆動されるロータと、を少なくとも備えた超音波モータであって、振動子の回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、回転軸をねじれ軸とするねじれ共振振動と、を合成することにより、楕円振動を形成してなり、振動子の回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、回転軸をねじれ軸とするねじれ共振振動と、の共振周波数がほぼ一致するように、振動子の矩形状の長さ比率を設定し、振動検出電極層を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る超音波モータにおいて、ねじれ共振振動はねじれ2次共振振動であることが好ましい。
【0009】
本発明に係る超音波モータにおいて、ねじれ共振振動はねじれ3次共振振動であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る超音波モータにおいて、振動子は、圧電シートを積層してなり、振動検出電極層は、圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置に内部電極が形成された圧電シートと、圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置に形成された内部電極同士が短絡されている圧電シートとで構成されており、圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置の分極の方向が互いに同一であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る超音波モータにおいて、振動子は、圧電シートを積層してなり、振動検出電極層は、圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置に内部電極が形成された圧電シートと、圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置に形成された内部電極同士が短絡されている圧電シートとで構成されており、圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置の分極の方向が互いに逆であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る超音波モータにおいて、駆動電極層は、少なくともねじれ共振振動の節部を含む位置に形成され、駆動電極層の積層方向と同一の軸上に振動検出電極層が形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る超音波モータにおいて、駆動電極層はねじれ共振振動の節部を含む位置に形成され、振動検出電極層は、節部とは位置の異なるねじれ共振振動の節部を含む位置に形成されることが好ましい。
【0014】
本発明に係る超音波モータにおいて、駆動電極層は、ねじれ共振振動と縦1次共振振動の共通の節部を含む位置に形成されることが好ましい。
【0015】
本発明に係る超音波モータにおいて、振動子において、振動検出電極及び駆動電極と導通するように設けられた外部電極のうち、駆動時に接続される、振動検出電極及び駆動電極と導通した外部電極が振動子の外側面の同一面に形成され、分極時のみ使用する外部電極が外側面の対向面に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る超音波モータは、単一部材で振動子を形成できるため、振動体の構成を簡略化することができる。また、振動検出用の内部電極を導通させた層を設けたため、特別な回路なしに容易にねじれ共振振動成分を検出できるとともに、モータ駆動時に振動子に接続が必要な配線数を削減することができ、超音波モータの小型化に有利となる。さらに、ねじれ共振振動成分の検出信号は振動検出層を直列接続した信号であるため、信号電圧を大きくすることができ、これにより、振動速度が低下する低速駆動時に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波モータの構成を示す正面図である。
【図2】(a)は、第1実施形態に係る振動子の概略構成を示す斜視図、(b)は、ねじれ1次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図、(c)は、縦1次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図、(d)は、ねじれ2次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図、(e)は、ねじれ3次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図である。
【図3】振動子の高さを一定として、横軸を短辺の長さ/長辺の長さとしたときの各モードの共振周波数を表したグラフである。
【図4】第1実施形態に係る積層圧電素子の構成を示す分解斜視図である。
【図5】(a)は第1実施形態に係る第2圧電シートの構成を示す平面図、(b)は第3圧電シートの構成を示す平面図、(c)は第4圧電シートの構成を示す平面図、(d)は第5圧電シートの構成を示す平面図である。
【図6】第1実施形態に係る積層圧電素子から振動子をカットする位置を示す斜視図である。
【図7】(a)は、第1実施形態に係る積層圧電素子からカットされた振動子の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。
【図8】(a)は、第1実施形態の変形例に係る振動子の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。
【図9】第2実施形態に係る積層圧電素子の構成を示す分解斜視図である。
【図10】(a)は第2実施形態に係る第2圧電シートの構成を示す平面図、(b)は第3圧電シートの構成を示す平面図、(c)は第4圧電シートの構成を示す平面図、(d)は第5圧電シートの構成を示す平面図である。
【図11】第2実施形態に係る積層圧電素子から振動子をカットする位置を示す斜視図である。
【図12】(a)は、第2実施形態に係る積層圧電素子からカットされた振動子の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。
【図13】(a)は、第2実施形態の変形例に係る振動子の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。
【図14】第3実施形態に係る積層圧電素子の構成を示す分解斜視図である。
【図15】(a)は第3実施形態に係る第2圧電シートの構成を示す平面図、(b)は第3圧電シートの構成を示す平面図、(c)は第4圧電シートの構成を示す平面図、(d)は第5圧電シートの構成を示す平面図である。
【図16】第3実施形態に係る積層圧電素子から振動子をカットする位置を示す斜視図である。
【図17】(a)は、第3実施形態に係る積層圧電素子からカットされた振動子の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。
【図18】(a)は、第3実施形態の変形例に係る振動子の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る超音波モータの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波モータ100の構成を示す正面図である。
【0020】
超音波モータ100は、振動子101及びロータ102を備える。振動子101は、中心軸100c(回転軸)に垂直な断面が矩形状の長さ比率を有する、略直方体形状の圧電素子である。振動子101(圧電素子)の節近傍には、振動子を囲むように配置されたホルダ110から延びる支持部材110a、110bが固着される。
【0021】
ロータ102は、略円板状をなし、その下面が振動子101の上面の楕円振動発生面101aに設けた摩擦接触部材103a、103bに接する。ロータ102の上面中央からは、中心軸100cに沿うようにシャフト105が延びる。このシャフト105は、ホルダ110に保持されたベアリング107に結合される。
【0022】
一方、振動子101の下面101bには、中心軸100cに沿うように延びる第2シャフト106が当接している。この第2シャフト106は、一端がホルダ110の内面に固定されているとともに、押圧バネ108及びバネ押さえリング109に挿通されている。
【0023】
バネ押さえリング109と第2シャフト106はネジ溝によって互いに螺合されており、バネ押さえリング109を回転させて第2シャフト106に対する位置を変更することにより、押圧バネ108の力量を調節することができ、これにより、ロータ102の摩擦接触部材103a、103bへの押圧力量を調節することができる。
【0024】
以上の構成により、振動子101を駆動すると、ロータ102は、振動子101の楕円振動発生面101aと直交する中心軸100cを回転軸として回転駆動される。
【0025】
次に、図2及び図3を参照して、超音波モータ10に使用される振動子101(圧電素子)の固有周波数の一致に関して説明する。図2(a)は、第1実施形態に係る振動子101の概略構成を示す斜視図、(b)は、ねじれ1次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図、(c)は、縦1次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図、(d)は、ねじれ2次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図、(e)は、ねじれ3次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図である。
【0026】
図2(a)に示されるように、振動子101の略直方体形状であり、中心軸100cに直交する矩形状の断面の短辺101sの長さをa、長辺101fの長さをb、中心軸100cに沿った高さをcとしている。以下の説明では、高さ方向を、縦1次振動モードの振動の方向、かつ、ねじれ振動のねじれの軸方向とする。また、a、b、cの大小関係はa<b<cとする。
【0027】
振動子101においては、a、b、cの各寸法を適切な値とすることで、縦1次振動モードの共振周波数とねじれ2次振動モード、若しくはねじれ3次振動モードの、共振周波数をほぼ一致させている。
【0028】
ここで、図2(b)〜(e)には、ねじれ振動の方向p1、p2、縦振動の方向q、及び振動の節Nを示している。節Nは、ねじれ1次振動(図2(b))及び縦1次振動(図2(c))では高さ方向の中心位置に1つ存在し、ねじれ2次振動(図2(d))では高さ方向の2つの位置に存在し、ねじれ3次振動(図2(d))では高さ方向の3つの位置に存在する。
【0029】
また、図2(b)〜(e)において、実線は振動前の振動子101の形状を示しており、破線は振動後の振動子101の形状を示している。
【0030】
図3からわかるように、a/bを変化させた場合には、縦1次振動モードの共振周波数はa/bに依存せず、ほぼ一定の値をとるが、ねじれ振動の共振周波数は、a/b値の増加とともに大きくなっていく。
【0031】
また、ねじれ1次振動モードの共振周波数は、a/bがどのような値をとっても、縦1次振動モードの共振周波数と一致する条件はない。これに対して、ねじれ2次振動モードの共振周波数は、a/b値が0.6となる近傍で、縦1次振動モードの共振周波数と一致する。また、ねじれ3次振動モードの共振周波数は、a/b値が0.3の近傍となるところで、縦1次振動モードの共振周波数と一致する。したがって、第1実施形態の振動子101においては、縦1次ねじれ3次振動ではa/bが0.25〜0.35、縦1次ねじれ2次振動ではa/bが0.55〜0.65、となるように長さa、bをそれぞれ設定する。図6に示す積層圧電素子120では、a/bを約0.3としている。
【0032】
超音波モータ100においては、振動子101の中心軸100c(回転軸)方向に沿って伸縮する縦1次共振振動と、中心軸100cをねじれ軸とするねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動と、を合成することにより、楕円振動を形成する。長さa、bの比(比率)は、振動子101の中心軸100c方向に伸縮する縦1次共振振動と、中心軸100cをねじれ軸とするねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動と、の共振周波数がほぼ一致するように設定する。
【0033】
振動子101は、複数の圧電シートを積層した積層圧電素子120からなり、圧電シートの厚み方向に分極されてなる活性化領域により、縦1次共振振動と、ねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動と、を発生する。
【0034】
以下に、図4〜図7を参照して、振動子101、積層圧電素子120の構成について説明する。ここで、図4は、積層圧電素子120の構成を示す分解斜視図である。図5(a)は第2圧電シート140の構成を示す平面図、(b)は第3圧電シート150の構成を示す平面図、(c)は第4圧電シート160の構成を示す平面図、(d)は第5圧電シート170の構成を示す平面図である。図6は、積層圧電素子120から振動子101をカットする位置を示す斜視図である。図7(a)は、第1実施形態に係る積層圧電素子からカットされた振動子101の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。図6においては、内部の電極を透過的に示しており、図6及び図7では、各圧電シートの詳細な積層状態の図示を省略している。
【0035】
図4に示すように、積層圧電素子120は、高さ方向(図5の矢印S1方向)の最も上側から順に、第1圧電シート130、第2圧電シート140、第3圧電シート150、第2圧電シート140、複数の第1圧電シート130、第4圧電シート160、第5圧電シート170、第4圧電シート160、及び、複数の第1圧電シート130、を積層してなる。
【0036】
なお、積層圧電素子120を構成する圧電シートの数及び配置は、振動子101の仕様に合わせて任意に選択することができる。
【0037】
図5に示すように、第2圧電シート140、第3圧電シート150、第4圧電シート160、及び、第5圧電シート170は、矩形板状の同一形状を備える。さらに、第1圧電シート130も、第2〜第5圧電シートと同一の矩形板状の形状を備える。
【0038】
第1、第2、第3、第4、及び第5圧電シートとしては、例えば、ハード系のチタン酸ジルコン酸鉛の圧電素子を用いる。こららの圧電セラミックスシートは、厚さ10μmから100μm程度のPZT材料からなることが好ましく、内部電極は、例えば、厚さ約4μmの銀パラジウム合金からなっている。内部電極を含む、第2、第3、第4、及び第5圧電シートは、厚み方向に分極されてなる活性化領域を有する。
【0039】
以下、内部電極及び外部電極の具体的な構成について説明する。
まず、内部電極は、第2、第3、第4、及び第5圧電シートの上面に対して、印刷によって、2つずつ形成されている。
【0040】
図5(a)に示すように、第2圧電シート140には、その長手方向(図5の左右方向)の略中央に、振動検出のための振動検出電極層を構成する、第1内部電極141a(D+)と第2内部電極142a(C+)が、互いに対向するように離間して配置されている。尚、内部電極名の後ろの括弧内の記述は、その内部電極が構成する電極層(後述する)の名称と分極の極性を示している。
【0041】
第1内部電極141a(D+)、第2内部電極142a(C+)は、その端部141b、142bが第2圧電シート140の長辺140U、140Lに露出するようにそれぞれ延びている。また、端部141b、142bは、第2圧電シート140の長手方向において、互いに対応する位置に配置されている。
【0042】
図5(b)に示すように、第3圧電シート150については、その長手方向の略中央に、振動検出のための振動検出電極層を構成する、第3内部電極151a(D−)と第4内部電極152a(C−)が、互いに対向するように配置されている。第3内部電極151a(D−)と第4内部電極152a(C−)は、その間に配置された接続電極153により互いに短絡されている。
第4内部電極152a(C−)は、その端部152bが第3圧電シート150の長辺150Lに露出するように延びている。
【0043】
図5(c)に示すように、第4圧電シート160には、長手方向の略中央に、駆動のための駆動電極層を構成する、第5内部電極161a(B+)と第6内部電極162a(A+)が、互いに対向するように離間して配置されており、第5内部電極161a(B+)、第6内部電極162a(A+)は、その端部161b、162bが第4圧電シート160の長辺160U、160Lに露出するようにそれぞれ延びている。また、端部161b、162bは、第4圧電シート160の長手方向において、互いに対応する位置に配置されている。
【0044】
図5(d)に示すように、第5圧電シート170には、その長手方向の略中央に、駆動のための駆動電極層を構成する、第7内部電極171a(B−)と第8内部電極172a(A−)が、互いに対向するように離間して配置されている。
【0045】
第7内部電極171a(B−)、第8内部電極172a(A−)は、その端部171b、172bが第5圧電シート170の長辺170U、170Lに露出するようにそれぞれ延びている。また、端部171b、172bは、第5圧電シート170の長手方向において、互いに対応する位置に配置されている。
【0046】
第1内部電極141a(D+)と第3内部電極151a(D−)、第2内部電極142a(C+)と第4内部電極152a(C−)は、第2圧電シート140と第3圧電シート150を積層したときに、それぞれ互いに対応する位置に形成されており、それぞれが振動検出のための分極領域を形成する。これらの分極領域は振動検出電極層であり、それぞれをD相、C相とする。
【0047】
また、第5内部電極161a(B+)と第7内部電極171a(B−)、第6内部電極162a(A+)と第8内部電極172a(A−)についても、第4圧電シート160と第5圧電シート170を積層したときに、それぞれ互いに対応する位置に形成されており、それぞれが駆動のための分極領域を形成する。これらの分極領域は駆動電極層であり、それぞれをB相、A相とする。
【0048】
各内部電極の端部141b、142b、152b、161b、162b、171b、172bには、例えば銀ペーストの印刷によって、外部電極が形成される。
【0049】
端部142b同士を短絡するように、振動子101の前面101F上の第1外部電極181(C+:C相の+電極)を形成し、端部152b同士を短絡するように、振動子101の前面101F上の第2外部電極182(CD−:C相、D相共通の一電極)を形成する(図7(a))。
【0050】
また、端部141b同士を短絡するように、振動子101の背面101R上の第3外部電極183(D+)を形成する(図7(b))。第1外部電極181(C+)、及び、第3外部電極183(D+)は、振動検出電極層(C相もしくはD相)と接続された外部電極である。これらの外部電極は、超音波モータ100の外部の検出器(不図示)にそれぞれ接続される。接続には、例えばFPC(flexible print circuit)を用い、各電極群にFPCの一端を固着する。尚、第2外部電極182(CD−)は、分極時にのみ使用するもので、超音波モータ100の駆動時には接続しない。
【0051】
一方、端部162b同士を短絡するように、振動子101の前面101F上の第4外部電極191(A+)を形成し、端部172b同士を短絡するように、振動子101の前面101F上の第5外部電極192(A−)を形成する。また、端部161b同士を短絡するように、振動子101の背面101R上の第6外部電極193(B+)を形成し、端部171b同士を短絡するように、振動子101の背面101R上の第7外部電極194(B−)を形成する。
【0052】
第4外部電極191(A+)、第5外部電極192(A−)、第6外部電極193(B+)、及び、第7外部電極194(B−)は、駆動電極層(A相もしくはB相)と接続された外部電極である。これらの外部電極は、超音波モータ100の外部の電源(不図示)にそれぞれ接続される。接続には、例えばFPCを用い、各電極群にFPCの一端を固着する。
なお、図1、図2においては外部電極の図示を省略している。
【0053】
図6、図7(a)に示すように、第1外部電極181(C+)、第2外部電極182(CD−)、第4外部電極191(A+)、第5外部電極192(A−)は、第1圧電シート130、第2圧電シート140、第3圧電シート150、第4圧電シート160、及び第5圧電シート170を積層することによって形成される面の一方の側面である前面101F上に形成されている。一方、図7(b)に示すように、第3外部電極183(D+)、第6外部電極193(B+)、第7外部電極194(B−)は、他方の側面である背面101R上に形成されている。
【0054】
振動子101は、第1圧電シート130、第2圧電シート140、第3圧電シート150、第4圧電シート160、及び第5圧電シート170の積層方向S1に対して中心軸100cが所定角度傾斜する方向に沿って、積層圧電素子120をカットすることで形成する。ここで、第1圧電シート130、第2圧電シート140、第3圧電シート150、第4圧電シート160、及び第5圧電シート170の一方の長辺140U、150U、160U、170Uが連なってでき、各外部電極群が露出した側面は、カットされずに前面101Fとなり、他方の長辺140L、150L、160L、170Lが連なってでき、各外部電極群が露出した側面は、カットされずに背面101Rとなる。また、摩擦接触部材103a、103bは、カットされた後の振動子101の上面に接着固定される。
【0055】
積層圧電素子120から振動子101を切り出す角度は、積層方向S1に対して45度(図6)とすることが好ましく、縦振動を強くしたい場合には積層方向S1に沿うような角度(45度未満の角度)に、ねじり振動を強くしたい場合は積層方向S1に対する角度を45度よりも大きくするとよい。
【0056】
駆動電極層である、A相、B相は、カットされた後の振動子101の縦1次共振振動(図2(c))とねじれ3次共振振動(図2(e))の節位置に対応する位置であって、振動時の応力が最大となる振動子101の長手方向(中心軸100c方向)の中央部を含む位置に配置する。
【0057】
これに対して、振動検出電極層である、C相、D相は、それぞれ駆動電極層であるA相、B相の積層方向延長線上に配置される。
【0058】
(作用)
以上の構成の振動子101を用いた超音波モータ100のA相、B相に所定の交流電圧を印加すると、振動子101の前面101F、背面101R内の対角方向に変位成分を有する振動が発生する。
【0059】
A相、B相に振動体の1次縦振動あるいは3次捻れ振動の共振周波数と一致させた周波数で同位相の交流電圧を印加すると、A相、B相の圧電素子は同相で振動し、その結果、振動体は縦振動を行う。このとき、振動検出電極層であるC相、D相の領域には、同一振幅で同位相の電位が発生する。これに対して、同様の周波数で、A相とB相に逆位相(180度)の交流電圧を印加すると、A相、B相の圧電素子は逆相で振動し、その結果、振動体101は捻れ振動を行うことになる。このとき、振動検出電極層である、C相、D相の領域には、同一振幅で逆位相の電位が発生する。
【0060】
このような振動体101のA相とB相に、互いに位相の異なる(例えば位相差が90度の)交流電圧を印加することで、1次縦振動と3次捻れ振動が同時に励起され、振動体101の上端面である楕円振動発生面101aに楕円振動が形成され、振動体101に押圧保持されたロータ102が回転駆動される。また、A相とB相に印加する交流電圧の位相差を反転することで、振動体101に発生する楕円振動の回転方向を反転することできる。これによりロータ102の回転方向を制御することができる。
【0061】
また、上述したように、振動検出層であるC相、D相の領域は、縦1次共振振動モードでは同一の電位を発生し、ねじれ3次共振振動モードでは、同一振幅で逆位相の電位を発生する。このため、縦1次共振振動、ねじれ3次共振振動が同時に励起された状態では、C相、D相の領域において発生した電位の差を演算することにより同相成分である縦1次共振振動成分がキャンセルされねじれ3次共振振動成分のみを検出することができる。
【0062】
また、振動検出層を構成する第3圧電シート150の第3内部電極151a(D−)と第4内部電極152a(C−)は、接続電極153により、内部で互いに導通されているため、外部での配線接続なしに外部電極181(C+)と外部電極183(D+)との間にC相、D相の領域において発生した電位の差であるねじれ3次共振振動成分が現れる。
【0063】
(効果)
上述の超音波モータ100によれば、単一部材で振動子101を形成できるため、振動体101の構成を簡略化できる。また、振動検出用の内部電極である、第3内部電極151a(D−)、第4内部電極152a(C−)を、接続電極153により互いに導通させた層を設けたため、外部でこれらの電極間を接続する配線を設けることなく容易に周波数追尾に必要なねじれ共振振動成分を検出できる。さらに、モータ駆動時に振動子101に接続が必要な配線数を削減することができるため、モータの小型化に有利となる。また、ねじれ共振振動成分の検出信号は振動検出層を直列接続した信号であるため、信号電圧を大きくすることができる。したがって、振動速度が低下する低速駆動時に有利となる。
【0064】
尚、振動検出層であるC相、D相の分極の方向を互いに逆にしても良い。この場合、外部電極181(C+)と外部電極183(D+)との間には、C相、D相の領域において発生した電位の和である縦1次共振振動成分が現れるようにすることができる。
【0065】
図8(a)は、第1実施形態の変形例に係る振動子の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。図8に示す振動子は、積層圧電素子の中心軸100cに垂直な略長方形断面の長辺(a)と短辺(b)の長さの比を約0.6となるように形成した縦1次ねじれ2次共振振動子である。この振動子においても、図1〜図7に示す振動子101と同様の効果が得られる。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る超音波モータにおいては、振動子における振動検出電極層の形成位置が第1実施形態に係る超音波モータと異なる。その他の構成は第1実施形態に係る超音波モータと同様であって、振動子以外の構成についての詳細な説明は省略する。
【0067】
以下、図9〜図12を参照して、振動子201、積層圧電素子220の構成について説明する。ここで、図9は、第2実施形態に係る積層圧電素子の構成を示す分解斜視図である。図10(a)は第2圧電シート240の構成を示す平面図、(b)は第3圧電シート250の構成を示す平面図、(c)は第4圧電シート260の構成を示す平面図、(d)は第5圧電シート270の構成を示す平面図である。図11は、積層圧電素子220から振動子201をカットする位置を示す斜視図である。図12(a)は、第2実施形態に係る積層圧電素子からカットされた振動子201の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。図10においては、内部の電極を透過的に示しており、図10及び図11では、各圧電シートの詳細な積層状態の図示を省略している。
【0068】
図9に示すように、積層圧電素子220は、第1実施形態の積層圧電素子120と同様に、高さ方向(図9の矢印S2方向)の最も上側から順に、第1圧電シート230、第2圧電シート240、第3圧電シート250、第2圧電シート240、複数の第1圧電シート230、第4圧電シート260、第5圧電シート270、第4圧電シート260、及び、複数の第1圧電シート230、を積層してなる。
【0069】
図10に示すように、第2圧電シート240、第3圧電シート250、第4圧電シート260、及び、第5圧電シート270は、矩形板状の同一形状を備える。さらに、第1圧電シート230も、第2〜第5圧電シートと同一の矩形板状の形状を備える。これらの圧電シートの材質及び特性は、第1実施形態の圧電シートと同様である。
【0070】
内部電極及び外部電極は、第1実施形態と同様の手法により形成される。
図10(a)に示すように、第2圧電シート240には、その長手方向(図10の左右方向)の右側に、振動検出のための振動検出電極層を構成する、第1内部電極241a(D+)と第2内部電極242a(C+)が、互いに対向するように離間して配置されている。
【0071】
第1内部電極241a(D+)、第2内部電極242a(C+)は、その端部241b、242bが第2圧電シート240の長辺240U、240Lにそれぞれ露出するように延びている。また、端部241b、242bは、第2圧電シート240の長手方向において、互いに対応する位置に配置されている。
【0072】
図10(b)に示すように、第3圧電シート250には、その長手方向の右側に、振動検出のための振動検出電極層を構成する、第3内部電極251a(D−)と第4内部電極252a(C−)が、互いに対向するように配置されている。第3内部電極251a(D−)と第4内部電極252a(C−)は、その間に配置された接続電極253により互いに短絡されている。
【0073】
第4内部電極252a(C−)は、その端部252bが第3圧電シート250の長辺250Lに露出するように延びている。
【0074】
第1内部電極241a(D+)と第3内部電極251a(D−)、第2内部電極242a(C+)と第4内部電極252a(C−)は、第2圧電シート240と第3圧電シート250を積層したときに、それぞれ互いに対応する位置に形成されており、それぞれが振動検出のための分極領域を形成する。これらの分極領域は振動検出電極層であり、それぞれをD相、C相とする。
【0075】
第4圧電シート260は、第1実施形態の第4圧電シート160と同じ構成であり、第4圧電シート260の長辺260U、260L、第5内部電極261a(B+)、端部261b、第6内部電極262a(A+)、端部262bは、第1実施形態の第4圧電シート160の長辺160U、160L、第5内部電極161a(B+)、端部161b、第6内部電極162a(A+)、端部162b、にそれぞれ対応する。
【0076】
また、第5圧電シート270は、第1実施形態の第5圧電シート170と同じ構成であり、第5圧電シート270の長辺270U、270L、第7内部電極271a(B−)、端部271b、第8内部電極272a(A−)、端部272bは、第1実施形態の第5圧電シート170の長辺170U、170L、第7内部電極171a(B−)、端部171b、第8内部電極172a(A−)、端部172b、にそれぞれ対応する。
【0077】
また、第1実施形態と同様に、第5内部電極261a(B+)と第7内部電極271a(B−)、第6内部電極262a(A+)と第8内部電極272a(A−)についても、第4圧電シート160と第5圧電シート170を積層したときに、それぞれ互いに対応する位置に形成されており、それぞれが駆動のための分極領域を形成する。これらの分極領域は駆動電極層であり、それぞれをB相、A相とする。
【0078】
端部242b同士を短絡するように、振動子201の前面201F上の第1外部電極281(C+)を形成し、端部252b同士を短絡するように、振動子201の前面201F上の第2外部電極282(CD−)を形成する(図12(a))。
【0079】
また、端部241b同士を短絡するように、振動子201の背面201R上の第3外部電極283(D+)を形成する(図12(b))。第1外部電極281(C+)、及び、第3外部電極283(D+)は、振動検出電極層(C相もしくはD相)と接続された外部電極である。
【0080】
これらの外部電極は、超音波モータ100の外部の検出器(不図示)にそれぞれ接続される。接続には、例えばFPCを用い、各電極群にFPCの一端を固着する。尚、第2外部電極282(CD−)は、分極時にのみ使用するもので、超音波モータ100の駆動時には接続しない。
【0081】
振動子201の前面201F上に形成された、第4外部電極291(A+)及び第5外部電極292(A−)は、第1実施形態の第4外部電極191(A+)及び第5外部電極192(A−)にそれぞれ対応する。また、振動子201の背面201R上に形成された、第6外部電極293(B+)及び第7外部電極294(B−)は、第1実施形態の第6外部電極193(B+)及び第7外部電極194(B−)にそれぞれ対応する。第4外部電極291(A+)、第5外部電極292(A−)、第6外部電極293(B+)、及び、第7外部電極294(B−)は、駆動電極層である。これらの外部電極は、超音波モータ100の外部の電源(不図示)にそれぞれ接続される。接続には、例えばFPCを用い、各電極群にFPCの一端を固着する。
【0082】
振動子201は、第1実施形態の振動子101と同様に、第1圧電シート230、第2圧電シート240、第3圧電シート250、第4圧電シート260、及び第5圧電シート270の積層方向S2に対して中心軸200cが所定角度傾斜する方向に沿って、積層圧電素子220をカットすることで形成する。第1圧電シート230、第2圧電シート240、第3圧電シート250、第4圧電シート260、及び第5圧電シート270の一方の長辺240U、250U、260U、270Uが連なってでき、各外部電極群が露出した側面が、カットされずに前面201Fとなり、他方の長辺240L、250L、260L、270Lが連なってでき、各外部電極群が露出した側面が、カットされずに背面201Rとなるのも第1実施形態と同様である。また、摩擦接触部材103a、103bは、カットされた後の振動子201の上面に接着固定される。
【0083】
駆動電極層である、A相、B相は、振動子201の縦1次共振振動(図2(c))とねじれ3次共振振動(図2(e))の節位置に対応する位置であって、振動時の応力が最大となる振動子201の長手方向(中心軸200c方向)の中央部を含む位置に配置する点も第1実施形態と同様である。
【0084】
これに対して、振動検出電極層である、C相、D相は、前記駆動電極層であるA相、B相の積層方向の延長線上ではない位置に配置される。具体的には、駆動電極層を配置した位置とは異なる別のねじれ3次振動の節位置(振動子201の上端面もしくは下端面から長手方向長さの約1/6中央部に寄った箇所)を含む位置に配置される。
【0085】
(効果)
以上の構成によれば、駆動用電極と別の節位置に振動検出用電極を設けるため、駆動用電極の層数を減らさずに振動検出電極層を設けることができる。また、振動検出層をねじれ振動時に応力が最大となるねじれ3次振動の節を含む位置に積層できるため、ねじれ振動検出信号の出力を大きくすることができ、低速駆動時等、振動が小さくなる場合の信号検出に有利となる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0086】
図13(a)は、第2実施形態の変形例に係る振動子の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。図13に示す振動子は、積層圧電素子の中心軸に垂直な略長方形断面の長辺(a)と短辺(b)の長さの比を約0.6となるように形成した縦1次ねじれ2次共振振動子である。この振動子においても、図11〜図12に示す振動子201と同様の効果が得られる。
【0087】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る超音波モータにおいては、駆動電極層及び振動検出電極層と接続された外部電極のうち、超音波モータ駆動時に配線が必要となるすべての外部電極を積層圧電素子の前面に形成し、それ以外の外部電極を積層圧電素子の背面に形成する点が第1実施形態に係る超音波モータと異なる。その他の構成は第1実施形態に係る超音波モータと同様であって、振動子以外の構成についての詳細な説明は省略する。
【0088】
以下、図14〜図17を参照して、振動子301、積層圧電素子320の構成について説明する。ここで、図14は、第3実施形態に係る積層圧電素子の構成を示す分解斜視図である。図15(a)は第2圧電シート340の構成を示す平面図、(b)は第3圧電シート350の構成を示す平面図、(c)は第4圧電シート360の構成を示す平面図、(d)は第5圧電シート370の構成を示す平面図である。図16は、積層圧電素子320から振動子301をカットする位置を示す斜視図である。図17(a)は、第3実施形態に係る積層圧電素子からカットされた振動子301の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。図16においては、内部の電極を透過的に示しており、図16及び図17では、各圧電シートの詳細な積層状態の図示を省略している。
【0089】
図14に示すように、積層圧電素子320は、第1実施形態の積層圧電素子120と同様に、高さ方向(図9の矢印S3方向)の最も上側から順に、第1圧電シート330、第2圧電シート340、第3圧電シート350、第2圧電シート340、複数の第1圧電シート330、第4圧電シート360、第5圧電シート370、第4圧電シート360、及び、複数の第1圧電シート330、を積層してなる。
【0090】
図15に示すように、第2圧電シート340、第3圧電シート350、第4圧電シート360、及び、第5圧電シート370は、矩形板状の同一形状を備える。さらに、第1圧電シート330も、第2〜第5圧電シートと同一の矩形板状の形状を備える。これらの圧電シートの材質及び特性は、第1実施形態の圧電シートと同様である。
【0091】
内部電極及び外部電極は、第1実施形態と同様の手法により形成される。
【0092】
図15(a)に示すように、第2圧電シート340には、その長手方向(図15の左右方向)の右側に、振動検出のための振動検出電極層を構成する、第1内部電極341a(D+)と第2内部電極342a(C+)が、互いに対向するように離間して配置されている。
【0093】
第2圧電シート340の一方の長辺340U側に配置された第1内部電極341a(D+)は、その端部341bが他方の長辺340Lに露出し、かつ、第2内部電極342a(C+)と接触しないように引き回されている。
【0094】
長辺340L側に配置された第2内部電極342a(C+)は、その端部342bが第2圧電シート340の長辺340Lに露出するように延びている。したがって、端部341bと端部342bは同一の長辺340L上に配置される。
【0095】
図15(b)に示すように、第3圧電シート350については、その長手方向の右側に、振動検出のための振動検出電極層を構成する、第3内部電極351a(D−)(第3圧電シート350の一方の長辺350U側)と第4内部電極352a(C−)(長辺350Uに対向する長辺350L側)が、互いに対向するように配置されている。第3内部電極351a(D−)と第4内部電極352a(C−)は、その間に配置された接続電極353により互いに短絡されている。
【0096】
第3内部電極351a(D−)は、その端部351bが第3圧電シート350の長辺350Uに露出するように延びている。
【0097】
図15(c)に示すように、第4圧電シート360には、その長手方向の略中央に、駆動のための駆動電極層を構成する、第5内部電極361a(B+)と第6内部電極362a(A+)が、互いに対向するように離間して配置されている。
【0098】
第4圧電シート360の一方の長辺360U側に配置された第5内部電極361a(B+)は、その端部361bが他方の長辺360Lに露出し、かつ、第6内部電極362a(A+)と接触しないように引き回されている。
【0099】
長辺360L側に配置された第6内部電極362a(A+)は、その端部362bが第4圧電シート360の長辺360Lに露出するように延びている。したがって、端部361bと端部362bは同一の長辺360L上に配置される。
【0100】
図15(d)に示すように、第5圧電シート370には、その長手方向の略中央に、駆動のための駆動電極層を構成する、第7内部電極371a(B−)と第8内部電極372a(A−)が、互いに対向するように離間して配置されている。
【0101】
第5圧電シート370の一方の長辺370U側に配置された第7内部電極371a(B−)は、その端部371bが他方の長辺370Lに露出し、かつ、第8内部電極372a(A−)と接触しないように引き回されている。
【0102】
長辺340L側に配置された第8内部電極372a(A−)は、その端部372bが第5圧電シート370の長辺370Lに露出するように延びている。したがって、端部371bと端部372bは同一の長辺340L上に配置される。
【0103】
第1内部電極341a(D+)と第3内部電極351a(D−)、第2内部電極342a(C+)と第4内部電極352a(C−)は、第2圧電シート340と第3圧電シート350を積層したときに、それぞれ互いに対応する位置に形成されており、それぞれが振動検出のための分極領域を形成する。これらの分極領域は振動検出電極層であり、それぞれをD相、C相とする。
【0104】
また、第5内部電極361a(B+)と第7内部電極371a(B−)、第6内部電極362a(A+)と第8内部電極372a(A−)についても、第4圧電シート360と第5圧電シート370を積層したときに、それぞれ互いに対応する位置に形成されており、それぞれが駆動のための分極領域を形成する。これらの分極領域は駆動電極層であり、それぞれをB相、A相とする。
【0105】
端部341b同士を短絡するように、振動子301の前面301F上の第2外部電極382(D+)を形成し、端部342b同士を短絡するように、振動子301の前面301F上の第1外部電極381(C+)を形成する(図17(a))。
【0106】
また、端部351b同士を短絡するように、振動子301の背面301R上の第3外部電極383(CD−)を形成する(図17(b))。第1外部電極381(C+)、第2外部電極382(D+)、及び、第3外部電極383(CD−)は、振動検出電極層(C相もしくはD相)に接続された外部電極である。これらの外部電極は、超音波モータ100の外部の検出器(不図示)にそれぞれ接続される。接続には、例えばFPCを用い、各電極群にFPCの一端を固着する。尚、第3外部電極383(CD−)は、分極時にのみ使用するもので、超音波モータ100の駆動時には接続しない。
【0107】
一方、端部361b同士を短絡するように、振動子301の前面301F上に第4外部電極391(A+)を形成し、端部362b同士を短絡するように、振動子301の前面301F上に第5外部電極392(A−)を形成する。さらに、端部372b同士を短絡するように、振動子301の前面301F上に、第6外部電極393(B+)を形成し、端部371b同士を短絡するように、振動子301の前面301F上に第7外部電極394(B−)を形成する(図17(a))。
【0108】
第4外部電極391(A+)、第5外部電極392(A−)、第6外部電極393(B+)、及び、第7外部電極394(B−)は、駆動電極層(A相もしくはB相)に接続された外部電極である。これらの外部電極は、超音波モータ100の外部の電源(不図示)にそれぞれ接続される。接続には、例えばFPCを用い、各電極群にFPCの一端を固着する。
【0109】
図16、図17(a)に示すように、第1外部電極381(C+)、第2外部電極382(D+)、第4外部電極391(A+)、第5外部電極392(A−)、第6外部電極393(B+)、第7外部電極394(B−)、すなわち、超音波モータ100の駆動時に電源や検出回路と接続が必要な外部電極はすべて、第1圧電シート330、第2圧電シート340、第3圧電シート350、第4圧電シート360、及び第5圧電シート370を積層することによって形成される側面の一方の前面301F上に形成されている。一方、図17(b)に示すように、超音波モータ100の駆動時には接続しない第3外部電極383(CD−)は、他方の側面である背面301R上に形成されている。
【0110】
振動子301は、第1実施形態の振動子101と同様に、第1圧電シート330、第2圧電シート340、第3圧電シート350、第4圧電シート360、及び第5圧電シート370の積層方向S3に対して中心軸300cが所定角度傾斜する方向に沿って、積層圧電素子320をカットすることで形成する。ここで、第1圧電シート330、第2圧電シート340、第3圧電シート350、第4圧電シート360、及び第5圧電シート370の一方の長辺340U、350U、360U、370Uが連なってでき、各外部電極群が露出した側面は、カットされずに前面301Fとなり、他方の長辺340L、350L、360L、370Lが連なってでき、各外部電極群が露出した側面は、カットされずに背面301Rとなる。また、摩擦接触部材103a、103bは、カットされた後の振動子301の上面に接着固定される。
【0111】
駆動電極層である、A相、B相は、振動子301の縦1次共振振動(図2(c))とねじれ3次共振振動(図2(e))の節位置に対応する位置であって、振動時の応力が最大となる振動子301の長手方向(中心軸300c方向)の中央部を含む位置に配置する点も第1実施形態と同様である。
【0112】
これに対して、振動検出電極層である、C相、D相は、前記駆動電極層であるA相、B相の積層方向の延長線上ではない位置に配置される。具体的には、駆動電極層を配置した位置とは異なる別のねじれ3次振動の節位置(振動子301の上端面もしくは下端面から長手方向長さの約1/6中央部に寄った箇所)を含む位置に配置される。尚、振動検出電極層であるC相、D相は、第1実施形態と同様に駆動電極層であるA相、B相の積層方向延長線上に配置しても良い。
【0113】
(効果)
以上の構成の超音波モータによれば、モータ動作時(駆動時)に配線が必要となる電極が積層圧電素子の1面に配置されるため、組み立て性が良い。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0114】
図18(a)は、第3実施形態の変形例に係る振動子の構成を示す、前方上方側から見た斜視図、(b)は後方上方側から見た斜視図である。図18に示す振動子は、積層圧電素子の中心軸に垂直な略長方形断面の長辺(a)と短辺(b)の長さの比を約0.6となるように形成した縦1次ねじれ2次共振振動子である。この振動子においても、図16〜図17に示す振動子301と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上のように、本発明に係る超音波モータは、構成の簡略化や小型化に有用である。
【符号の説明】
【0116】
100 超音波モータ
100c 中心軸
101 振動子
101a 楕円振動発生面
101F 前面
101R 背面
102 ロータ
103a、103b 摩擦接触部材
105 シャフト
106 第2シャフト
107 ベアリング
108 押圧バネ
109 バネ押さえリング
110 ホルダ
110a、110b 支持部材
120 積層圧電素子
130 第1圧電シート
140 第2圧電シート
141a 第1内部電極(D+)(振動検出電極層)
142a 第2内部電極(C+)(振動検出電極層)
150 第3圧電シート
151a 第3内部電極(D−)(振動検出電極層)
152a 第4内部電極(C−)(振動検出電極層)
153 接続電極
160 第4圧電シート
161a 第5内部電極(B+)(駆動電極層)
162a 第6内部電極(A+)(駆動電極層)
170 第5圧電シート
171a 第7内部電極(B−)(駆動電極層)
172a 第8内部電極(A−)(駆動電極層)
181 第1外部電極(C+)
182 第2外部電極(CD−)
183 第3外部電極(D+)
191 第4外部電極(A+)
192 第5外部電極(A−)
193 第6外部電極(B+)
194 第7外部電極(B−)
200c 中心軸
201 振動子
220 積層圧電素子
230 第1圧電シート
240 第2圧電シート
241a 第1内部電極(D+)(振動検出電極層)
242a 第2内部電極(C+)(振動検出電極層)
250 第3圧電シート
251a 第3内部電極(D−)(振動検出電極層)
252a 第4内部電極(C−)(振動検出電極層)
253 接続電極
260 第4圧電シート
261a 第5内部電極(B+)(駆動電極層)
262a 第6内部電極(A+)(駆動電極層)
270 第5圧電シート
271a 第7内部電極(B−)(駆動電極層)
272a 第8内部電極(A−)(駆動電極層)
281 第1外部電極(C+)
282 第2外部電極(CD−)
283 第3外部電極(D+)
291 第4外部電極(A+)
292 第5外部電極(A−)
293 第6外部電極(B+)
294 第7外部電極(B−)
300c 中心軸
301 振動子
320 積層圧電素子
330 第1圧電シート
340 第2圧電シート
341a 第1内部電極(D+)(振動検出電極層)
342a 第2内部電極(C+)(振動検出電極層)
350 第3圧電シート
351a 第3内部電極(D−)(振動検出電極層)
352a 第4内部電極(C−)(振動検出電極層)
353 接続電極
360 第4圧電シート
361a 第5内部電極(B+)(駆動電極層)
362a 第6内部電極(A+)(駆動電極層)
370 第5圧電シート
371a 第7内部電極(B−)(駆動電極層)
372a 第8内部電極(A−)(駆動電極層)
381 第1外部電極(C+)
382 第2外部電極(D+)
383 第3外部電極(CD−)
391 第4外部電極(A+)
392 第5外部電極(A−)
393 第6外部電極(B+)
394(B−) 第7外部電極(B−)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に垂直な断面が矩形状の長さ比率を有する振動子と、前記振動子の楕円振動発生面に接して前記振動子の前記楕円振動発生面と直交する前記中心軸を回転軸として回転駆動されるロータと、を少なくとも備えた超音波モータであって、
前記振動子の前記回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、前記回転軸をねじれ軸とするねじれ共振振動と、を合成することにより、前記楕円振動を形成してなり、
前記振動子の前記回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、前記回転軸をねじれ軸とするねじれ共振振動と、の共振周波数がほぼ一致するように、前記振動子の前記矩形状の長さ比率を設定し、
振動検出電極層を備えることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記ねじれ共振振動はねじれ2次共振振動であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記ねじれ共振振動はねじれ3次共振振動であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記振動子は、圧電シートを積層してなり、前記振動検出電極層は、前記圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置に内部電極が形成された圧電シートと、前記圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置に形成された内部電極同士が短絡されている圧電シートとで構成されており、前記圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置の分極の方向が互いに同一であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記振動子は、圧電シートを積層してなり、前記振動検出電極層は、前記圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置に内部電極が形成された圧電シートと、前記圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置に形成された内部電極同士が短絡されている圧電シートとで構成されており、前記圧電シートの幅方向中心を挟んだ位置の分極の方向が互いに逆であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波モータ。
【請求項6】
駆動電極層は、少なくとも前記ねじれ共振振動の節部を含む位置に形成され、前記駆動電極層の積層方向と同一の軸上に前記振動検出電極層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項7】
駆動電極層は前記ねじれ共振振動の節部を含む位置に形成され、前記振動検出電極層は、前記節部とは位置の異なるねじれ共振振動の節部を含む位置に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項8】
駆動電極層は、ねじれ共振振動と縦1次共振振動の共通の節部を含む位置に形成されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の超音波モータ。
【請求項9】
前記振動子において、振動検出電極及び駆動電極と導通するように設けられた外部電極のうち、駆動時に接続される、振動検出電極及び駆動電極と導通した外部電極が前記振動子の外側面の同一面に形成され、分極時のみ使用する外部電極が前記外側面の対向面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−172452(P2011−172452A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36338(P2010−36338)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】