説明

超音波内視鏡及び超音波内視鏡装置

【課題】小型で、かつ、超音波トランスデューサ部の出力を増加したり撮像素子を取り付けたりしても挿入部の表面の温度上昇が小さい超音波内視鏡を提供する。
【解決手段】この超音波内視鏡は、超音波の送受信を行う複数の超音波トランスデューサを有する超音波トランスデューサ部と、冷却面と放熱面とを有し、冷却面が超音波トランスデューサ部と結合されるペルチェ素子と、超音波トランスデューサ部とペルチェ素子とを支持し屈曲可能な屈曲部と、屈曲部を操作部に連結する連結部と、少なくとも屈曲部及び連結部を被覆する被覆材と、被覆材の内側に設けられ、少なくともペルチェ素子の放熱面から操作部までを外部と断熱する断熱材と、断熱材の内側に設けられ、ペルチェ素子の放熱面と結合されて、超音波トランスデューサ部において発生した熱を操作部に伝達する熱伝導部材とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部消化器官や気管支等の体腔検査に用いる超音波内視鏡、及び、そのような超音波内視鏡を備えた超音波内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、被検体の内部を観察して診断を行うために、様々な撮像技術が開発されている。それらの中でも、特に、超音波を送受信することによって被検体の内部情報を取得する超音波撮像は、リアルタイムで画像観察を行うことができる上に、X線写真やRI(radio isotope)シンチレーションカメラ等の他の医用画像技術と異なり、放射線による被曝がない。そのため、超音波撮像は、安全性の高い撮像技術として、産科領域における胎児診断の他、婦人科系、循環器系、消化器系等を含む幅広い領域において利用されている。
【0003】
超音波撮像とは、音響インピーダンスが異なる領域の境界(例えば、構造物の境界)において超音波が反射される性質を利用する画像生成技術である。通常、超音波診断装置には、被検体に接触させて用いられる体表用超音波探触子や、被検体の体腔内に挿入して用いられる体腔内用超音波探触子が備えられている。さらに、近年においては、被検体内を光学的に観察する内視鏡と体腔内用の超音波探触子とが組み合わせられた超音波内視鏡が使用されている。
【0004】
そのような超音波内視鏡を用いて、人体等の被検体に向けて超音波ビームを送信し、被検体において生じた超音波エコーを受信することにより、超音波画像情報が取得される。この超音波画像情報に基づいて、被検体内に存在する構造物(例えば、内臓や病変組織等)の超音波画像が、超音波内視鏡に接続された超音波内視鏡装置本体の表示部に表示される。
【0005】
超音波を送信及び受信する超音波トランスデューサとしては、圧電効果を発現する材料(圧電体)の両面に電極を形成した振動子(圧電振動子)が、一般的に用いられている。圧電体としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電材料等が用いられる。
【0006】
そのような振動子の電極に電圧を印加すると、圧電効果により圧電体が伸縮して超音波が発生する。そこで、複数の振動子を1次元又は2次元状に配列し、それらの振動子を順次駆動することにより、所望の方向に送信される超音波ビームを形成することができる。また、振動子は、伝播する超音波を受信することによって伸縮して電気信号を発生する。この電気信号は、超音波の検出信号として用いられる。
【0007】
超音波を送信する際には、大きなエネルギーを有する駆動信号が超音波トランスデューサに供給されるが、駆動信号のエネルギーの全てが音響エネルギーに変換される訳ではなく、かなりのエネルギーが熱となってしまうので、超音波内視鏡の使用中にその温度が上昇するという問題が生じている。しかしながら、超音波内視鏡の挿入部は、人体等の生体に直接接触させて用いられるので、低温火傷防止等の安全上の理由から、超音波内視鏡の挿入部の表面温度を所定の温度以下にすることが要請されている。
【0008】
関連する技術として、特許文献1には、内部の発熱箇所から外部への放熱箇所に渡って、熱の流れに関して複数個のペルチェ素子を縦続に配した放熱手段を有することを特徴とする超音波探触子が開示されている。しかしながら、特許文献1の方式では遠赤外線による放射を利用するので、2個のペルチェ素子の間での放熱を確保するために、ペルチェ素子の放熱面の面積を広くとる必要があり、ペルチェ素子が大型化して超音波内視鏡内部に設置することは困難である。また、超音波内視鏡において、複数のペルチェ素子を設置し、複数のペルチェ素子間の熱放射による熱伝達を可能とする空間を確保することは困難である。
【0009】
また、特許文献2には、超音波プローブにおいて、振動子部及び回路基板で発生した熱を、熱伝導部を介してシールドケースに伝達し、シールドケースに伝達された熱を吸熱部が吸収して振動子部を冷却することが開示されている。しかしながら、特許文献2には、超音波内視鏡の振動子部を冷却することに関しては開示されていない。
【特許文献1】特開2005−13461号公報
【特許文献2】特開2006−204552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
患者の体腔内に挿入して用いられる超音波内視鏡においては、検査される患者の身体的負担を軽減するために、挿入部の小径化が求められている。特に、上部消化管や気管支等の体腔検査においては、小径の内視鏡が使用されており、患者の身体的負担を軽減する観点から、超音波内視鏡をさらに小型化することが課題となっている。
【0011】
また、超音波内視鏡において、超音波トランスデューサを積層化して受信感度を高めることにより、診断精度を向上することが検討されている。しかしながら、超音波トランスデューサを積層化して超音波の送信出力を増加させると、超音波トランスデューサからの放熱量が大きくなる。従来の超音波内視鏡の構造によれば、超音波トランスデューサを積層化して超音波の送信出力を増加させると、超音波トランスデューサの発熱により、体腔内壁と接する挿入部の温度が上昇し、高熱により体腔内壁を損傷するという問題が生じる。超音波内視鏡の小型化にともない、超音波トランスデューサの発熱に伴う挿入部の温度上昇が益々重大な問題となり、この問題を解決することが課題となっている。
【0012】
さらに、超音波内視鏡の挿入部に撮像素子(CCD等)およびライトガイドを取り付けた場合には、撮像素子やライトガイド出射部からの発熱によって挿入部の温度が上昇し、高熱により体腔内壁を損傷するという問題が生じるので、この問題を解決することが課題となっている。
【0013】
本発明は、上記のような事情を考慮してなされたものであり、小型で、かつ、超音波トランスデューサ部の出力を増加したり撮像素子を取り付けたりしても挿入部の温度上昇が小さい超音波内視鏡、及び、そのような超音波内視鏡を備えた超音波内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る超音波内視鏡は、超音波の送受信を行う複数の超音波トランスデューサを有する超音波トランスデューサ部と、冷却面と放熱面とを有し、冷却面が超音波トランスデューサ部と結合されるペルチェ素子と、超音波トランスデューサ部とペルチェ素子とを支持し屈曲可能な屈曲部と、屈曲部を操作部に連結する連結部と、少なくとも屈曲部及び連結部を被覆する被覆材と、被覆材の内側に設けられ、少なくともペルチェ素子の放熱面から操作部までを外部と断熱する断熱材と、断熱材の内側に設けられ、ペルチェ素子の放熱面と結合されて、超音波トランスデューサ部において発生した熱を操作部に伝達する熱伝導部材とを具備する。
【0015】
また、本発明の1つの観点に係る超音波内視鏡装置は、本発明に係る超音波内視鏡と、超音波内視鏡からの信号を処理して超音波画像を表示すると共に、熱伝導部材を冷却するための冷却装置を含む超音波内視鏡装置本体とを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、超音波内視鏡の挿入部にペルチェ素子が設けられ、超音波トランスデューサ部の発熱がペルチェ素子の冷却面に放熱され、さらにペルチェ素子の放熱面から挿入部を被覆する被覆材の内側に設けられた熱伝導部材に放熱され、被覆材と熱伝導部材の間には断熱材が設けられるので、小型で、かつ、超音波トランスデューサ部の出力を増加したり撮像素子を取り付けたりしても挿入部の表面の温度上昇が小さい超音波内視鏡を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の各実施形態に係る超音波内視鏡の外観を示す模式図である。図1に示すように、超音波内視鏡40は、挿入部41と、操作部42と、接続コード43と、ユニバーサルコード44と、冷却ケーブル45とを含んでいる。挿入部41は、被検体の体内に挿入することができるように、可撓性を有する部材によって形成された細長い管によって構成され、先端に超音波トランスデューサ部1を備えている。
【0018】
操作部42は、挿入部41の基端に設けられており、接続コード43、ユニバーサルコード44、及び、冷却ケーブル45を介して超音波内視鏡装置本体に接続される。操作部42に設けられた処置具挿入口46は、穿刺針や鉗子等の処置具を導入する孔であり、操作部42においてこれらの処置具を操作することにより、被検体の体腔内において種々の処置が行われる。
【0019】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る超音波内視鏡の挿入部の先端を示す図である。図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る超音波内視鏡の挿入部の先端は、超音波を送受信する超音波トランスデューサ部1と、超音波トランスデューサ部1と超音波内視鏡装置本体との間で信号を伝送する信号線2と、患部を光学的に撮像する撮像素子部3と、超音波トランスデューサ部1を冷却するペルチェ素子5と、超音波トランスデューサ部1、撮像素子部3、及びペルチェ素子5を支持し屈曲可能な屈曲部11と、屈曲部11を操作部42(図1)に連結する連結部15と、少なくとも屈曲部11及び連結部15を被覆する被覆材6と、少なくとも屈曲部11及び連結部15において被覆材6の内側に設けられ内外を断熱する断熱材7とを有している。
【0020】
超音波トランスデューサ部1は、例えば、バッキング材上に配置された64個の超音波トランスデューサを有する。信号線2は、例えば、64個の複数個の超音波トランスデューサにそれぞれ接続される複数のシールド線により構成される。屈曲部11は、ピン13によって互いに変位可能に接続された複数のアングルリング12を含んでいる。連結部15は、螺旋状部材16を含んでいる。螺旋状部材16は、一般に、ステンレス鋼で形成されているが、本実施形態においては、放熱の観点から、銅又は銅合金で形成されることが好ましい。被覆材6は、例えば、フッ素ゴムのような絶縁材料で形成される。断熱材7は、例えば、グラスファイバー、電子線架橋ポリオレフィンフォーム、又は、フェノールフォームのような断熱材料で形成される。断熱材7は、これらの断熱材料をシート形状に加工して形成されても良い。
【0021】
超音波トランスデューサ部1を冷却するペルチェ素子5は、P型及びN型の異種半導体又は異種金属等により形成される接合部と、接合部の一端に設けられた冷却ブロック5aと、接合部の他端に設けられた放熱ブロック5bとを有し、接合部に所定の方向で電流を流すことにより、冷却ブロック5aの冷却面において冷却を行うと共に、放熱ブロック5bの放熱面において放熱を行う。
【0022】
超音波トランスデューサ部1と冷却ブロック5aとの間の熱抵抗を下げ、熱伝達を効率的に行うために先端部熱伝導部材8が設けられている。先端部熱伝導部材8は、高い熱伝導性と柔軟性及び屈曲に対する耐久性を有し、金属及び/又はグラファイトを含む材料を用いて、厚さ30μm〜数100μmの箔、ワイヤ、メッシュ、又は、シート形状に形成される。その場合に、金属材料は、熱伝導性の良い銅又は銅合金を含むことが好ましい。なお、先端部熱伝導部材8を薄い層として形成することにより、超音波トランスデューサ部1と先端部熱伝導部材8とを小径の内視鏡チューブ内に収納することが可能となる。
【0023】
先端部熱伝導部材8の一端は、超音波トランスデューサ部1の側面に接続され、先端部熱伝導部材8の他端は、ペルチェ素子5の冷却面に設けられた冷却面放熱ブロック5aに接続されている。ペルチェ素子5の放熱面5bは、ヒートシンク9の一端に接続される。ヒートシンク9の他端を、第1のヒートシンク熱伝導部材9aを用いて支持部熱伝導部材10に接続することにより、超音波トランスデューサ部1において発生した熱を、ヒートシンク9を介して支持部熱伝導部材10に伝達するようにしても良い。あるいは、ヒートシンク9の他端を、第2のヒートシンク熱伝導部材9bを用いて支持部熱伝導部材10に接触しているアングルリング12に接続することにより、超音波トランスデューサ部1において発生した熱を、ヒートシンク9から更に屈曲部11のアングルリング12を介して支持部熱伝導部材10に伝達するようにしても良い。
【0024】
本実施形態に係る超音波内視鏡においては、少なくとも屈曲部11及び連結部15において、被覆材6の内側に設けられた断熱材7のさらに内側に、支持部熱伝導部材10が配置される。支持部熱伝導部材10は、操作部42(図1)の一部まで延在しても良い。支持部熱伝導部材10は、高い熱伝導性と柔軟性及び屈曲に対する耐久性を有し、金属及び/又はグラファイトを含む材料を用いて、箔、ワイヤ、メッシュ、又は、シート形状に形成される。その場合に、金属材料は、熱伝導性の良い銅又は銅合金を含むことが好ましい。これにより、挿入部41(図1)の先端から操作部42方向への放熱が行われる。本実施形態に係る超音波内視鏡においては、ペルチェ素子5が設けられるので、超音波トランスデューサ部1からペルチェ素子5への放熱が促進されて、超音波トランスデューサ部1の温度上昇が抑制される。しかし、ペルチェ素子5が設けられることにより、ペルチェ素子5が設けられない場合と比較して、ペルチェ素子5から操作部42への放熱は増加する。また、被覆材6の内側に断熱材7が設けられるので、被覆材6を介して外気への放熱も抑制される。このようななかで、支持部熱伝導部材10により、ペルチェ素子5から操作部42方向への放熱が行われる。
【0025】
また、支持部熱伝導部材10は、被覆材6の内側のシールド層と兼用して設けられても良い。また、超音波内視鏡の挿入部の径を小さくするために、被覆材6の内側にシールド層は設けずに、支持部熱伝導部材10が設けられても良い。超音波内視鏡装置本体からの誘導ノイズを低減するために、支持部熱伝導部材10は、超音波内視鏡装置本体の接地線から絶縁されて設けられても良い。
【0026】
屈曲部11は、例えば、内視鏡の先端付近の位置に設けられる。屈曲部11は、複数の駒状のアングルリング12を屈曲させる支点を互い違いに90度ずらして配置することにより構成される。それらのアングルリング12は、ピン13によって互いに変位可能に接続されて、ヒンジ構造を形成している。アングルリング12の内側には、複数のワイヤが設けられ、屈曲部11全体が関節のように屈曲して動作する。アングルリング12は、銅又は銅合金等の高熱伝導性材料で形成されることが好ましい。
【0027】
しかしながら、複数のアングルリング12を接続しているピン13の部分においては、ピン13を介する熱伝導となるので、十分な放熱が達成されない。そこで、本実施形態においては、各々のアングルリング12が、固定部14によって屈曲性がある支持部熱伝導部材10に固定され、固定部14を介して支持部熱伝導部材10に放熱が行われる。固定部14は、半田等で固定してもよく、また、例えば、金属製のリングを用いてもよい。
【0028】
図3は、図2に示す超音波内視鏡の挿入部における超音波トランスデューサ部周辺の構成を示す図である。図3の(a)は、超音波トランスデューサ部周辺の側面図であり、図3の(b)は、超音波トランスデューサ部周辺の平面図である。
【0029】
図3の(b)に示すように、超音波内視鏡の挿入部には、超音波トランスデューサ部1と、観察窓31と、照明窓32と、処置具挿通口33と、ノズル孔34とが設けられている。図3の(b)において、観察窓31には、対物レンズが装着されており、この対物レンズの結像位置には、CCDカメラ等の固体撮像素子、又は、イメージガイドの入力端が配置されている。これらは、観察光学系を構成する。また、照明窓32には、光源装置からライトガイドを介して供給される照明光を出射させるための照明用レンズが装着されている。これらは、照明光学系を構成する。
【0030】
処置具挿通口33は、処置具等を導出させる孔である。この孔から穿刺針や鉗子等の処置具(図示せず)を突出させ、被検体の体腔内において種々の処置が行われる。ノズル孔34は、観察窓31及び照明窓32を洗浄するための液体(水等)を噴射するために設けられている。
【0031】
超音波トランスデューサ部1は、例えば、コンベックス型の多列アレイであり、例えば、5列に配置された複数の超音波トランスデューサ1aと、それらの超音波トランスデューサ1aが配置されるバッキング材1bとを含んでいる。先端部熱伝導部材8は、バッキング材1bの側面に接合されるようにしても良い。あるいは、先端部熱伝導部材8が、超音波トランスデューサ部1のバッキング材1bの側面及び複数の超音波トランスデューサ1aの側面に接合されるようにしても良い。その場合に、超音波トランスデューサ1aの個別電極は、絶縁膜によって先端部熱伝導部材8から絶縁する必要がある。超音波トランスデューサ1aの共通電極は、先端部熱伝導部材8に接続しても良いし、先端部熱伝導部材8から絶縁しても良い。
【0032】
図4は、本発明の各実施形態に係る超音波内視鏡と超音波内視鏡装置本体とを含む超音波内視鏡装置を示す図である。超音波トランスデューサ部1(図2)に含まれている複数の超音波トランスデューサは、複数のシールド線により、挿入部41、操作部42、及び、接続コード43を介して、超音波内視鏡装置本体50に電気的に接続される。それらのシールド線は、超音波内視鏡装置本体50において生成される複数の駆動信号をそれぞれの超音波トランスデューサに伝送すると共に、それぞれの超音波トランスデューサから出力される複数の受信信号を超音波内視鏡装置本体50に伝送する。
【0033】
超音波内視鏡装置本体50は、超音波制御部51と、駆動信号生成部52と、送受信切換部53と、受信信号処理部54と、画像生成部55と、超音波画像表示部56と、冷却装置70と、光源60と、撮像制御部61と、撮像素子駆動信号生成部62と、ビデオプロセス部63と、撮像表示部64とを含んでいる。また、超音波内視鏡装置本体50は、冷却装置70を含んでいても良い。
【0034】
超音波制御部51は、超音波トランスデューサ部1を用いた撮像動作を制御する。駆動信号生成部52は、例えば、複数の駆動回路(パルサー等)を含み、複数の超音波トランスデューサをそれぞれ駆動するために用いられる複数の駆動信号を生成する。送受信切換部53は、超音波トランスデューサ部1への駆動信号の出力と、超音波トランスデューサ部1からの受信信号の入力とを切り換える。
【0035】
受信信号処理部54は、例えば、複数のプリアンプと、複数のA/D変換器と、ディジタル信号処理回路又はCPUとを含み、複数の超音波トランスデューサから出力される受信信号について、増幅、整相加算、検波等の所定の信号処理を施す。画像生成部55は、所定の信号処理が施された受信信号に基づいて、超音波画像を表す画像データを生成する。超音波画像表示部56は、そのようにして生成された画像データに基づいて、超音波画像を表示する。
【0036】
光源60は、被検体の照明に使用する光を発生する。光源60から出た光は、ユニバーサルコード44を介して、挿入部41の照明窓32(図3(b))を通して被検体を照明する。照明された被検体は、挿入部41の観察窓31(図3(b))を通して撮像素子部3によって撮像され、撮像素子部3から出力される映像信号が、接続コード43を介して、超音波内視鏡装置本体50のビデオプロセス部63に入力される。
【0037】
撮像制御部61は、撮像素子部3を用いた撮像動作を制御する。撮像素子駆動信号生成部62は、撮像素子部3に供給される駆動信号を生成する。ビデオプロセス部63は、撮像素子部3から入力される映像信号に基づいて画像データを生成する。撮像表示部64は、ビデオプロセス部63から画像データを入力して、被検体の画像を表示する。
【0038】
冷却装置70は、冷却媒体を所定の温度に冷却し、冷却された冷却媒体を、冷却ケーブル45内の第1のチューブを介して超音波内視鏡40の操作部42に供給することにより、操作部42において支持部熱伝導部材10を冷却する。これにより、支持部熱伝導部材10を介して、挿入部41に含まれている超音波トランスデューサ部1及び/又は撮像素子部3(図2)が冷却される。本実施形態では、ペルチェ素子を設けることにより、超音波トランスデューサ部1からの放熱は促進されるが、ペルチェ素子から支持部熱伝導部材10への放熱量が増大するので、支持部熱伝導部材10を冷却する必要性が増大する場合もある。超音波トランスデューサ部1及び/又は撮像素子部3の発熱によって加熱された冷却媒体は、再び冷却ケーブル45内の第2のチューブを介して冷却装置70に回収される。このようにして、冷却媒体が循環する。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る超音波内視鏡の挿入部の先端を模式的に示す図である。本発明の第2の実施形態においては、本発明の第1の実施形態と同様に、屈曲部11の複数のアングルリング12がピン13によって接続されるが、ピン13による接続では十分な放熱が達成されない。そこで、固定部14を介して複数のアングルリング12から支持部熱伝導部材10に放熱が行われると共に、それらのアングルリング12の間で熱伝達を促進するために、屈曲部熱伝導部材21が設けられている。
【0040】
屈曲部熱伝導部材21は、高い熱伝導性と柔軟性及び屈曲に対する耐久性を有し、金属及び/又はグラファイトを含む材料を用いて、箔、ワイヤ、メッシュ、又は、シート形状に形成される。その場合に、金属材料は、熱伝導性の良い銅又は銅合金を含むことが好ましい。第2の実施形態によれば、屈曲部熱伝導部材21を介して、複数のアングルリング12の間で熱伝達が行われるので、第1の実施形態と比較して、支持部熱伝導部材10への放熱が効率良く行われる。
【0041】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る超音波内視鏡の挿入部の先端を模式的に示す図である。本発明の第3の実施形態においては、超音波トランスデューサ部1から屈曲部11までの外径が、屈曲部11より操作部42(図1)側にある連結部15の外径よりも小さくされている。ここで、屈曲部11を漸次細くするのではなく、屈曲部11を一様に細く形成しているので、挿入性が良い。また、連結部15における支持部熱伝導部材10の断面積が、屈曲部11における支持部熱伝導部材10の断面積よりも大きくされている。これにより、超音波トランスデューサを積層化して超音波の送信出力を増加させた場合及び/又はペルチェ素子を設置することによりペルチェ素子からの放熱量が増加した場合に不十分となる連結部15の放熱性が高められ、大出力化と放熱性とを両立させることができる。
【0042】
本発明の第3の実施形態においても、本発明の第2の実施形態において説明した屈曲部熱伝導部材21を追加しても良い。屈曲部熱伝導部材21を追加することにより、屈曲部熱伝導部材21を介して、複数のアングルリング12の間で熱伝達が行われるので、支持部熱伝導部材10への放熱がさらに効率良く行われる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、上部消化器官や気管支等の体腔検査に用いる超音波内視鏡、及び、そのような超音波内視鏡を備えた超音波内視鏡装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の各実施形態に係る内視鏡の外観を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る超音波内視鏡の先端を示す図である。
【図3】図2に示す超音波内視鏡の挿入部における超音波トランスデューサ部周辺の構成を示す図である。
【図4】本発明の各実施形態に係る超音波内視鏡と超音波内視鏡装置本体とを含む超音波内視鏡装置を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る超音波内視鏡の先端を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る超音波内視鏡の先端を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 超音波トランスデューサ部
1a 超音波トランスデューサ
1b バッキング材
2 信号線
3 撮像素子部
5 ペルチェ素子
5a 冷却ブロック
5b 放熱ブロック
6 被覆材
7 断熱材
8 先端部熱伝導部材
9 ヒートシンク
9a 第1のヒートシンク熱伝導部材
9b 第2のヒートシンク熱伝導部材
10 支持部熱伝導部材
11 屈曲部
12 アングルリング
13 ピン
14 固定部
15 連結部
16 螺旋状部材
21 屈曲部熱伝導部材
31 観察窓
32 照明窓
33 処置具挿通口
34 ノズル孔
40 超音波内視鏡
41 挿入部
42 操作部
43 接続コード
44 ユニバーサルコード
45 冷却ケーブル
46 処置具挿入口
50 超音波内視鏡装置本体
51 超音波制御部
52 駆動信号生成部
53 送受信切換部
54 受信信号処理部
55 画像生成部
56 超音波画像表示部
60 光源
61 撮像制御部
62 撮像素子駆動信号生成部
63 ビデオプロセス部
64 撮像表示部
70 冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送受信を行う複数の超音波トランスデューサを有する超音波トランスデューサ部と、
冷却面と放熱面とを有し、冷却面が前記超音波トランスデューサ部と結合されるペルチェ素子と、
前記超音波トランスデューサ部と前記ペルチェ素子とを支持し屈曲可能な屈曲部と、
前記屈曲部を操作部に連結する連結部と、
少なくとも前記屈曲部及び前記連結部を被覆する被覆材と、
前記被覆材の内側に設けられ、少なくとも前記ペルチェ素子の放熱面から前記操作部までを外部と断熱する断熱材と、
前記断熱材の内側に設けられ、前記ペルチェ素子の放熱面と結合されて、前記超音波トランスデューサ部において発生した熱を前記操作部に伝達する熱伝導部材と、
を具備する超音波内視鏡。
【請求項2】
被検体を光学的に撮像する撮像素子部をさらに具備する、請求項1記載の超音波内視鏡。
【請求項3】
前記断熱材が、グラスファイバー、電子線架橋ポリオレフィンフォーム、又は、フェノールフォームを含む、請求項1又は2記載の超音波内視鏡。
【請求項4】
前記熱伝導部材が、金属もしくはグラファイトを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の超音波内視鏡。
【請求項5】
前記超音波トランスデューサ部の側面と前記ペルチェ素子の冷却面とに接続されて、前記超音波トランスデューサ部において発生した熱を前記ペルチェ素子の前記冷却面に伝達する第2の熱伝導部材をさらに具備する、請求項1〜4のいずれか1項記載の超音波内視鏡。
【請求項6】
前記第2の熱伝導部材が、金属もしくはグラファイトを含む、請求項5記載の超音波内視鏡。
【請求項7】
前記屈曲部が、複数のアングルリングと、前記複数のアングルリングを互いに変位可能に接続する複数のピンとを含み、前記複数のアングルリングの内の少なくとも1つが、前記ペルチェ素子及び前記熱伝導部材と結合されて、前記超音波トランスデューサ部において発生した熱を前記ペルチェ素子から前記熱伝導部材に伝達する、請求項1〜6のいずれか1項記載の超音波内視鏡。
【請求項8】
前記複数のアングルリングを前記熱伝導部材に固定し、前記超音波トランスデューサ部において発生した熱を前記複数のアングルリングから前記熱伝導部材に伝達する複数の固定部をさらに具備する、請求項7記載の超音波内視鏡。
【請求項9】
隣接する2つのアングルリングの間に接続された第3の熱伝導部材をさらに具備する、請求項7又は8記載の超音波内視鏡。
【請求項10】
前記第3の熱伝導部材が、金属もしくはグラファイトを含む、請求項9記載の超音波内視鏡。
【請求項11】
前記超音波トランスデューサ部から前記屈曲部までの外径が、前記連結部から前記操作部までの外径よりも小さい、請求項1〜10のいずれか1項記載の超音波内視鏡。
【請求項12】
前記連結部における前記熱伝導部材の断面積が、前記屈曲部における前記熱伝導部材の断面積よりも大きい、請求項1〜11のいずれか1項記載の超音波内視鏡。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載の超音波内視鏡と、
前記超音波内視鏡からの信号を処理して超音波画像を表示すると共に、前記熱伝導部材を冷却するための冷却装置を含む超音波内視鏡装置本体と、
を具備する超音波内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−301893(P2008−301893A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149499(P2007−149499)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】