超音波実装装置
【課題】実装時に実装部品に対して加える荷重を増加させた場合であっても、実装部品の電極全てで好適な接合が得られる超音波実装装置を提供する。
【解決手段】ボイスコイルモータからの駆動力を超音波ホーンに伝えるホーン支持部材について、該超音波ホーンと振動子が連結される近傍にてホーン支持部材に支持される超音波ホーンの一方の端部に対して、該超音波ホーンの他方の端部に対しても該ホーン支持部材から駆動力を伝達可能なホーン他端付勢部材を配置することとした。また、ホーン支持部材が超音波ホーンを支持する位置及びホーン他端付勢部材が超音波ホーンに駆動力を伝達する位置を、該超音波ホーンに発生する定在波の節と一致させ、ボンディングツールが実装部品に荷重を付与する荷重付加軸をこれら節の間の定在波の腹と一致させた。
【解決手段】ボイスコイルモータからの駆動力を超音波ホーンに伝えるホーン支持部材について、該超音波ホーンと振動子が連結される近傍にてホーン支持部材に支持される超音波ホーンの一方の端部に対して、該超音波ホーンの他方の端部に対しても該ホーン支持部材から駆動力を伝達可能なホーン他端付勢部材を配置することとした。また、ホーン支持部材が超音波ホーンを支持する位置及びホーン他端付勢部材が超音波ホーンに駆動力を伝達する位置を、該超音波ホーンに発生する定在波の節と一致させ、ボンディングツールが実装部品に荷重を付与する荷重付加軸をこれら節の間の定在波の腹と一致させた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂ICチップ等の電子部品を基板に実装する際に用いられる実装装置に関する。より詳細には、該チップに設けられた電極を基板上の配線に対して接合する際等に用いられ、チップに対して基板方向に向かう荷重を付加しつつ該チップに対して当該荷重の付加方向とは異なる方向に沿った超音波振動を更に加える、所謂フリップチップボンディングを行う超音波実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波実装装置は、例えば特許文献1において従来の技術として示されるように、荷重の付加軸と連結され且つ該付加軸とは平行であって当該付加軸から離れた軸線上にて超音波ホーンを保持するブラケットを有する。より詳細には、チップに対する荷重は、ボイスコイルモータにより該付加軸と一致した軸線に沿った駆動力として発生される。当該ボイスコイルモータの駆動軸は、当該軸線に沿って駆動力即ち荷重を伝える。前述したブラケットはL字形状を有し、当該駆動軸と直交する方向に延在するL字の一方の直線部の一端で連結され、該軸線と平行な他方の直線部にて超音波ホーンを保持する。即ち、ボイスコイルモータ駆動軸の発する駆動力は、該軸線とは離れた位置に存在するL字ブラケットの直線部を介して、超音波ホーンに対して該軸線と平行な方向に荷重を伝える。超音波ホーンは、該ブラケットから受けた荷重を荷重の付加方向とは直交する方向に伝達し、再度荷重を付加軸に沿ったものとしてボンディングツールに伝える。該ボンディングツールは、超音波ホーンを介して伝えられた付加荷重を受け、該荷重の付加方向を前述した荷重の付加軸上に戻した上で、これをチップに伝える。従来構成では、前述した経路を経た荷重をチップに付加した状態で超音波ホーンから該ボンディングツールに対して荷重付加軸と異なる方向に超音波振動を加えることによって、チップの電極と基板の電極との接合を得ている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−097493号公報
【特許文献2】特開2000−077480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、実装されるチップが複合部品となりチップ形状が複雑になること、或いはチップの要接合電極の数が増加すること、に伴って電極接合の難易度が増し、接合の安定性の向上、接合強度自体の向上等が求められている。当該要求に対応するためには、接合時の付加荷重の増加が最も適当且つ適切な対応となる。しかし、特許文献1に開示する構成の場合のように、所謂L字ブラケットを使用した従来の所謂片持ちの超音波ホーンを用いた構成で付加荷重を大きくした場合、該ホーンやこれを支持するブラケットが撓んでしまう、或いは撓む方向への応力が発生してしまうといった現象が生じる恐れがある。このような現象が生じることによって、実装時にチップが傾いて実装位置がずれてしまう、実装状態が不安定な接合電極が生じる、等、更に極端な場合にはチップ等の損傷が生じる恐れもあった。また、このようなブラケットの撓み、或いは付加荷重に対して抗力となり得るモーメントの発生は、ボイスコイルモータから発せられる駆動力と実際にチップに対して加えるべき荷重との間に誤差を生じさせ、適正な荷重の制御が困難となるという問題も発生させる恐れがあった。
【0005】
引用文献2においては、このような課題に対処するために、ボイスコイルモータから発せられる駆動力を荷重ベースで一旦受けることとし、該荷重ベースから直接的にボンディングツールに荷重を付加する構成が用いられている。当該構成によれば、荷重ベースを介してブラケットとボンディングツールに等しく駆動力の付加が為されることから前述したモーメント自体の発生は、かなり抑制されると考えられる。しかしながら、当該構成においても、荷重ベースからの荷重の付加が、荷重ベースの端部に配置されたボンディングツールを介して行われることとなり、実装部品に加えられるべき荷重がある程度以上増加した場合には、やはり、上述したL字ブラケット或いは超音波ホーンの撓み或いは当該荷重に起因した前述したモーメントの発生を考慮する必要があると思われる。また、荷重ベースから荷重が付与されるボンディングツール端部、即ちボンディングツールにおける荷重ベースとの接触部分は球面として形成されているため、接触点を中心としたホーン側の撓み、傾き等の生じる可能性も大きくなる恐れがある。
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みて為されたものであり、実装部品に対して加えるべき荷重が高荷重となった場合であっても、L字ブラケット及び超音波ホーンの撓み、及び所謂ボンディングツールに加えられ得るモーメントの発生を抑制し、実装部品に対して加える荷重の調整を正確に行うことを可能とする所謂超音波実装装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る超音波実装装置は、所定の付加軸に沿って荷重を付加した状態で実装部品の電極を基板上の配線電極に対して押圧すると共に該付加軸とは異なる方向の成分を有する超音波振動を該電極に加えることによって、該電極と該配線電極との接合を為す超音波実装装置であって、付加軸に沿って配置されて該付加軸に沿った下端部にて電子部品を保持するボンディングツールと、超音波振動を発生する振動子と、該付加軸とは異なる方向に延在して所定の位置にて超音波振動を伝達可能にボンディングツールを保持し、一方の端部において振動子と接続される超音波ホーンと、該超音波ホーンの一方の端部近傍にて該超音波ホーンを支持するホーン支持部材と、該所定の付加軸と平行な駆動力を発生する駆動手段と、該駆動手段及びホーン支持部材と連結されてホーン支持部材に駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、ホーン支持部材と連結されて超音波ホーンの所定の位置を挟んで一方の端部に対する他方の端部において超音波ホーンと当接するホーン他端付勢部材と、を有し、当該超音波ホーンにおける一方の端部は超音波ホーンに伝達された超音波振動から生じる定在波の節に位置し、他方の端部も定在波の節に位置することを特徴としている。
【0008】
なお、上述した超音波実装装置では、該ボンディングツールが保持される超音波ホーン上の所定の位置は、超音波ホーンに伝達された超音波振動から生じる定在波の腹の位置であることが好ましい。更に、当該超音波ホーンは、延在する方向の軸を有して振動子との連結部分での該軸と垂直な平面での断面積が最大であり該連結部分から離れるにつれて断面積が連続的に小さくなる縮径部と、該縮径部の断面積が最も小さくなった部分の断面形状を常に有し且つ縮径部と同軸で連結された筒部と、を有することが好ましい。また、この場合、当該断面形状が縮径部及び筒部において常に相似形であることがより好ましい。更に、所定の位置は縮径部における断面積が最小となる位置に配置されることが好ましい。また、当該超音波ホーンは、所定の位置において付加軸に一致してボンディングツールを保持する貫通孔と、該付加軸及び超音波ホーンが延在する軸を含む平面内に含まれて縮径部から筒部に延在して該超音波ホーンを貫通するスリットと、を有することがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チップに加えられる荷重が増加した場合であっても、超音波ホーン或いはブラケット等のたわみを抑制し、且つ前述したモーメントも抑制した状態にて、ボンディングツールの軸線に沿って直接チップへの荷重付加を行うことが可能となる。また、本発明によれば、前述したモーメント等の影響を排除することが可能となる効果により、チップに加えるべき荷重を細かく且つ正確に調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る超音波実装装置の部分断面を含んだ主要部の側面概略図である。本実施形態に係る超音波実装装置100は、実装ヘッド本体10、Z軸本体駆動手段50、及びX軸駆動手段60を有する。Z軸本体駆動手段50は、本体駆動用モータ51、ボールネジ53、Z軸ガイドレール55、及びZ軸スライダ57を有する。実装ヘッド本体10はZ軸スライダ57に固定され、該Z軸スライダ57はZ軸ガイドレール55によりZ軸方向に摺動自在に支持されると共に、ボールネジ53と係合している。本体駆動用モータ51はボールネジ53を軸中心に回転させ、Z軸スライダ57はボールネジ53の回転に伴ってZ軸ガイドレール55上を摺動する。Z軸ガイドレール55はX軸駆動手段60におけるX軸スライダ61によって支持される。X軸スライダ61(X軸駆動手段60)は公知のボールネジ等からなる一軸の駆動機構によって構成される。
【0011】
実装ヘッド本体10は、ボンディングツール11、超音波ホーン13、振動子15、前述したL字ブラケットでホーン支持部材17、回動・摺動部材39、一対の回転軸受21、ボイスコイルモータに例示される駆動手段25、ロック手段27、超音波ホーン13に付勢力を加えるホーン他端付勢部材41、スライドブロック31、及び直動軸受33を有する。スライドブロック31は、前述したZ軸スライダ57により直接支持される部材となり、上下方向(駆動手段の駆動方向であるZ軸方向)に貫通孔を有する筐体或いは枠状の構造を有する。スライドブロック31の上部には駆動手段25が配置され、該駆動手段25と上方端部が連結された略円筒形状の回動・摺動部材39は、前述したスライドブロック31の上下の貫通孔を介してスライドブロック31の内部から外部下方に向けてZ軸方向に延在する。
【0012】
ボンディングツール11は略パイプ構造を有する部材であって、回動・摺動部材39と同軸となるようにZ軸方向に延在するように配置される。ボンディングツール11は上端部において不図示の真空排気系と連通する排気ポート11aを有し、下端部の開口においてICチップ等の実装部品1を吸着保持する。また、当該ボンディングツール11は所定の付加軸に沿って実装部品1に対して押圧荷重を付加する。超音波ホーン13は、Z軸に直交するY軸方向に軸心が延在するように配置される略円錐状を有する円錐部13aと、該円錐部13aの径の細くなった部分と連結されて該円錐部13aと同軸に延在し且つ連結部分と同じ径を有する円筒部13bとを有する。ここで、超音波ホーン13を図1中の面2−2を矢印方向から見た状態を図2に示す。円錐部13a先端の細くなった部分において前述したボンディングツール11と連結されこれを保持する。また、円錐部13aの先端近傍には、略パイプ状のボンディングツール11が貫通可能となるように、ボンディングツール11が配置される位置に超音波ホーン13の延在方向と垂直な方向に貫通穴13cが形成される。また、該貫通穴13cの軸を含み且つ超音波ホーン13の延在方向に延在するスリット13dが、超音波ホーン13を貫通すると共に貫通孔13cをスリット面内に含むように形成される。なお、スリット13dは円錐部13aの先端部分のみならず円筒部13b内部まで延在する。なお、ボンディングツール11の貫通穴13cへの固定は、所謂ネジによる締め付けによって行われる。具体的には、超音波ホーン13における貫通孔13cの近傍に、スリット13dの延在面に垂直な方向に形成された不図示のネジ穴が配置される。当該ネジ穴は円錐部13a側或いは円筒部13bの何れに配置されても良いが、ボンディングツール11に対して所望の超音波振動を伝達する上では、円筒部13b側にこれを配置することが好ましい。当該ネジ穴を用いて不図示の締結ボルトによる締め付けを行うことで、ボンディングツール11の超音波ホーン13への固定が為される。
【0013】
該超音波ホーン13は、後端において超音波振動を発する振動子15と連結される。該振動子15の発した超音波振動は超音波ホーン13に与えられ、先端に伝わってゆくにつれて形状効果によって増幅されてボンディングツール11まで伝達される。伝達される超音波振動はZ軸に対して直交するY軸方向の振動であり、当該振動がボンディングツール11を介して実装部品1の下部電極1aに伝達される。実装対象である基板3上の電極3aに対して下部電極1aが所定の付加荷重を伴って押圧された状態で当該超音波振動が与えられることによって、これら電極の接合が為される。ここで、ボンディングツール11は使用に伴う摩耗等の影響によって比較的頻繁な交換が必要となることが知られている。しかし、前述したスリット13dが存在しない場合、超音波ホーン13とボンディングツール11との間で該超音波周波数での振動(摺動)を受けることからこれら部材が固着してしまうことがある。本実施形態の如くスリット13dを配することにより、上述した不図示の締結ボルトによる締め付けを為していない状態では、貫通穴13cは開いた状態となってボンディングツール11の外周面と貫通穴13cの内周面との間に隙間を生じる。したがって、ボンディングツール11の取り外し時では、締結ボルトを外すことによって超音波ホーン13の復元力が作用し、ボンディングツール11の外周面と貫通穴13cの内周面との間の隙間が再度生じることとなって、これら両部材間での固着の可能性を低減することが可能となる。また、該スリット13dの長さを長くすることによって、スリット13dの超音波ホーン13のX方向(スリット13dの幅方向)での変位可能領域(撓み可能な領域)が大きくなり、超音波ホーン13自体のより大きな変形が可能となる。即ち、スリット13dの端部が開口した場合に近い超音波ホーン13の挙動が得られることとなる。従って、不図示の締結ボルトを外した場合のスリット13d及び貫通穴13cの復元力がより大きくなり、一旦これらが固着した場合であっても、締結ボルトの除去によってこの固着を引き離す効果が得られ、結果として固着可能性を低減することもできる。しかし、円錐部13a内部でスリット13dを大きくした場合、超音波振動の円錐部拡径部から縮径部への適切な伝播、増幅が阻害される恐れがある。本形態の如く円筒部13bを配し且つ該円筒部13b内にスリット13dを延在させることによって、このような超音波振動の伝播等に対する該スリット13dの影響を低減させることも可能となる。また、従来はスリットの長さが短いために超音波ホーンの端部(円錐部の頂部に当たる領域)にスリットが開口するようにしなければ固着の防止ができなかった。このため、逆にボンディングツールを確実に固定することが難しくなっていた。しかし、本発明では円筒部を付加したことによってスリット長さを延長させることが可能となり、ボンディングツールの固着の防止と確実且つ容易な固定との両立を図ることが可能となった。
【0014】
ホーン支持部材17は、前述したようにYZ平面(図の紙面に平行な面)に延在するように配置されるL字形状を有する。ホーン支持部材17は、Z軸方向に延在するように配置された該L字の一方の直線部の端部(Z軸下方端部)において超音波ホーン13の後端近傍を支持する。ホーン支持部材17のY軸方向に延在する他方の直線部の端部は回動・摺動部材39のZ軸下方端部と連結される。該回動・摺動部材39はZ軸方向に延在し、且つボンディングツール11と同軸となるように配置される円筒状の部材である。該回動・摺動部材39は、同じく同軸にてZ軸方向に延在する直動軸受33によって、Z軸方向に摺動可能に支持される。また、直動軸受33はZ軸に延在した状態での上端部及び下端部において、回転軸受21を介して、スライドブロック31によりZ軸(回動・摺動部39の軸心を中心として)周りに回転可能に支持される。
【0015】
また、ホーン支持部材17は、前述した回動・摺動部材39との連結部分(L字形状の他方の直線部端部)から該直線部を延在するように配置されたホーン他端付勢部材41とも連結される。該ホーン他端付勢部材41は、ホーン支持部材17の直線部を延在してなる直線領域41aと、Z軸方向に延在し且つ該直線領域41aに一方の端部が固定されると共に、他方の端部が超音波ホーン13の円筒部13bの端部近傍に当接する付勢バー41bと、を有する。なお、付勢バー41bは直線領域41aの延在方向に対してその固定位置を変化させることが可能となっている。当該ホーン他端部付勢部材41を配することによって、超音波ホーン13は、ボンディングツール11を略中央に配置して超音波ホーン13の一方の端部と他方の端部との両端において駆動手段25から付与された荷重を受けることとなる。従って、従来構成のような所謂片持ち梁的な荷重の付加状態となることは無く、超音波ホーン13に対する撓み、曲げモーメント等の発生は無くなる。
【0016】
実装ヘッド本体10は、X軸駆動手段及びZ軸駆動手段により実装部品1を吸着保持した状態にてX軸及びZ軸各々の方向に駆動される。ここで、上述したように回動・摺動部材39からボンディングツール11に至る構成が重力に対して凡そフリーといえる状態に維持された場合、当該駆動操作時において個々の構成の慣性により実装ヘッド10に対して該構成が不測の動作を行う可能性がある。このような不測の動作の発生を防止する観点から、本実施形態においてはロック手段27を配することとしている。該ロック手段27は、エアシリンダ27aと、該エアシリンダ27aと連結して伸縮可能なシリンダピン27bとから構成される。シリンダピン27aは、回動・摺動部材39の軸方向中央部に配された外方に拡径してなるフランジ部39aに当接可能であり、上方側の回転軸受21と協働して該フランジ部39aを挟持することで、スライダブロック31に対する回動・摺動部材39の固定を為している。尚、エアシリンダ27aにはエアの供給及び排出を為す構成が付随するが、図面の簡略化のために図示を省略する。
【0017】
なお、超音波ホーン13を介してボンディングツール11にY軸方向の縦の超音波振動を伝達した場合、該ボンディングツール11には該超音波ホーンとの接合部分を中心とした所謂定在波(超音波振動の伝達方向から見た場合の横振動)が発生する。超音波振動を効率的に用いて電極間の接合を行おうとした場合、ボンディングツール11に保持された実装部品1の電極1aは、当該定在波において最も振幅の大きな所謂振動の腹の位置に配置されることが好ましい。従って、超音波ホーン13との接合位置からボンディングツール11が保持する実装部品1の電極1aまでの距離は、当該定在波の周期上当該条件を満たす長さとなるように設計される。
【0018】
また、振動子15から超音波ホーン13に加えられる振動は、ホーン円錐部13aにおい振幅の変化等を生じるが基本的には該超音波ホーン13を振動させる定在波として伝えられる。この場合、該超音波ホーン13中に定在波を最も効果的に存在させようとした場合、当該超音波ホーン13の支持は該定在波の振動の所謂節の部分で為されることが好ましい。このため、ホーン支持部材17は、超音波ホーン13の一方の端部(円錐部13aの拡径側の端部)近傍に存在する該定在波の節において、これ支持する。また、ホーン他端付勢部材41も、超音波ホーン13の他方の端部(円筒部13bにおける円錐部13aと連結される側とは他方の端部)近傍に存在する該定在波の節において、当該円筒部13bに当接する。以上述べたように、ホーン支持部材17及びホーン端部付勢部材41ともに、ボンディングツール11を略中心として超音波ホーン13の両端部の定在波の節の位置において、当該超音波ホーン13に対するZ軸下方向への荷重を付加することとなる。
【0019】
このため、当該両端部から受ける荷重の大きさが振動によってバランスを崩すということが無くなり、超音波ホーン13に対する回転モーメントの付加が存在しなくなり、実装部品1に対してZ軸に沿った荷重の付加を行うことが可能となる。また、ホーン支持部材17が超音波ホーン13を支持する位置は、振動子15との接合の兼ね合いから適当な位置を求めることは比較的容易である。しかし、通常振動が超音波ホーン13の円錐部13aを伝播する際に超音波の振幅の変化等が生じることから、先端部での定在波の節を正確に求めることは困難な場合が多い。また、円錐部13aにて何等かの部材を軸心と垂直な方向から当接させ且つ振動が存在した状態でこの当接状態を維持することは、該円錐部13aでは軸方向に径が変化してゆくことからも、非常に困難である。本実施形態では円筒部13bを配することとし、当該円筒部13bにおいて存在する節の部分でホーン端部付勢部材41との当接状態を得ることとしている。該円筒部13bではホーンの外径の変化が無いことから当接維持が容易であると共に、節の位置を確保することも円錐部の場合と比較して容易である。また、本形態にける超音波ホーンでは、円錐部13aの軸とは垂直な断面での形状と円筒部13bの軸とは垂直な断面での形状とは相似とされている。従って、定在波における振動の成分も該超音波ホーン13の両端部の付勢位置において変化する可能性が極めて小さく、定在波における振動の所謂縦成分及び横成分の振動方向、比率等は一定に保たれる。
【0020】
なお、上記実施形態において、ホーン支持部材17が超音波ホーン13を支持する位置は、該超音波ホーン13の拡径部端部であることが好ましいが、実際には該超音波ホーン13と振動子15との接合部分との兼ね合いから完全な端部とはならないことから、当該支持位置は該超音波ホーン13の一方の端部近傍と表現されることが好ましい。また、同軸・摺動部材39については、本実施形態では直動軸受33等によりスライドブロック39に対して摺動可能に支持され且つ回転軸受21により回動可能にも支持されることから当該名称としている。しかし、駆動手段25の駆動力を伝達するために駆動手段25とホーン支持部材17とに連結されており、駆動力の伝達部材としても作用する。当該構成は回動及び摺動が他の構成によって担われることが可能であれば、駆動力伝達部材としてのみ構築することも可能である。また、本実施形態では、超音波ホーン13における軸とは垂直な面での断面の形状は円形としているが、当該超音波ホーンの形態はこれに限定されない。即ち、超音波ホーンが延在する方向の軸を中心軸として有して振動子との連結部分での軸と垂直な平面での断面積が最大であり該連結部分から離れるにつれてこの断面積が連続的に小さくなる縮径部と、当該縮径部での断面積が最も小さくなった部分の断面形状を常に有し且つ当該縮径部と同軸で連結された筒部と、を有する超音波ホーンであれば、本発明に含まれる。また、この場合、これら断面形状は縮径部と筒部とにおいて常に相似であればより好ましい。また、超音波ホーン13がボンディングツール11を保持する所定位置は、縮径部での断面積最小位置がより好ましい。
【0021】
次に、上述した実施形態からなる超音波実装装置100が実際に基板3に対して実装部品1を実装する際の各構成の動作について述べる。実装工程に際し、実装ヘッド本体10は、Z軸本体駆動手段50及びX軸駆動手段60によって実装部品1の供給位置まで搬送される。その際、ロック手段27は、回転軸受21と共にフランジ部39aを挟持することによって、回動・摺動部材39、ホーン支持部材17、振動子15、ホーン端部付勢部材41、超音波ホーン13及びボンディングツール11の実装ヘッド10に対する不測の移動を規制する。実装ヘッド本体10がボンディングヘッド11の先端部にて実装部品1を吸着保持すると、該実装ヘッド本体10は、Y軸方向についての基板搬送を行う不図示の基板搬送系によって所定位置まで駆動された基板3の上方所定位置まで、Z軸本体駆動手段50及びX軸駆動手段60によって搬送される。なお、基板3の上方に実装部品1が搬送される間に、不図示の画像処理系等により、基板の配置、所定のXY軸に対するズレの程度、実装部品1の保持姿勢等が求められ、ボンディング時に実装部品1がとるべき姿勢に対するズレの総量が求められる。実装ヘッド本体10がZ軸本体駆動手段によって下降する際に、個々の軸方向の駆動手段によるXY平面内での位置補正、及び不図示のθ駆動系により回動部材19を回動させてなる、所謂θ補正と称呼された保持姿勢の補正操作が為される。
【0022】
下降が進行して実装部品1の電極1aが基板3上の電極3aと当接する直前位置である所定高さまで下降したことが不図示のセンサにより検知されると、ロック手段27による回動・摺動部材39の固定が解除される。実装部品の下降は更に継続され、実装部品1が基板3に当接すると、該下降操作が停止される。なお、当接時においては駆動手段25として所謂ボイスコイルモータを用いることによって実装部品1と基板3との当接による衝撃は抑制されている。また、これにより実装部品1の電極1aは、無負荷に近い状態で基板上電極3aと当接するとなる。ここで、あらためて駆動手段25が回動・摺動部材39を駆動させ、ホーン支持部材17及びホーン端部付勢部材41が超音波ホーン13の両端部に対して略均等に付加荷重を加え、更にボンディングツール11を介して所定の荷重を実装部品1に加えることとなる。所定の荷重が実装部品1に加えられた状態で、超音波ホーン13を介して振動子15が超音波振動をボンディングツール11に与えることにより、実装部品電極1aと基板電極3aとの接合が為される。
【0023】
以上述べたように、本発明においては、従来は超音波ホーン13の一方の端部から荷重付加を為していたものを、当該端部から見てボンディングツールが配置される側とは反対側にホーン端部付勢手段41を配することによって、超音波ホーン13の他方の端部からも荷重の付加を為すこととしている。従って、従来技術で問題となる荷重の増加に伴うL字状ブラケットの撓みや超音波ホーン作用する回転モーメントを無くすることが可能となる。更に、超音波ホーン13の円錐部13aの頂部に同一径且つ同軸で延在する円筒部13bを配し、他方端部の荷重付加を当該円筒部13bで行い、且つ荷重の付加位置を該超音波ホーン13における定在波の節となるように設定している。従って、ホーン端部付勢部材41から超音波ホーン13への荷重の付加が安定的且つ正確に実行されることとなり、実際に付加する荷重は駆動力とほぼ同じ値であって、実際の荷重の大きさを把握した状態でこれを微調整することも可能となる。
【0024】
なお、ホーン端部付勢部材41における超音波ホーン13の円筒部31bに当接する、付勢バー41bの先端部と、円筒部31bの被当接部とは、荷重の伝播、振動に対する当接状態の維持の観点から種々の形態が考えられる。当該形態について、次に述べる。図3Aは図1における付勢バー41bと円筒部31bの当接部分近傍のみを拡大して示す図である。また、図3Bは図3Aに示す断面3B−3Bを矢印方向から見た状態を示す図である。本形態においては、付勢バー41bの先端部は、超音波ホーン13の軸心に垂直であって且つYZ平面に垂直な軸を有する円筒の側面を構成している。即ち、付勢バー41bの先端部は、円筒外周面上において軸方向に引かれる直線上の一点においてホーン円筒部13bと接触する。また、ホーン円筒部13b側の当接点も、当該円筒部の外周面上の軸方向に引かれる直線上の一点において付勢バー41bの先端部と接触する。従って、両部材は常に点接触をするが当接状態においてホーン円筒部13bの軸及び付勢バー41b先端部の円筒部の軸を含む面内での接触点のズレの影響を受けることが無く、常に好適には当接状態を維持することが可能となる。従って、付勢バー41bから円筒部13bに荷重を付加する際に、当該実施形態が最も安定的にこれを行うことが可能であると考えられる。
【0025】
しかしながら、上記形態の場合、荷重の付加が一点において為されることから所謂応力集中による付勢バー41b或いは円筒部13bの摩耗、破損等の劣化による短寿命化が懸念される。このような応力の集中を防止するためには、付勢バー41bの先端部を例えば図4A及び4Bに示す形態としても良い。なお、図4A及び図4Bは図3A及び図3Bと同様の様式にて当該形態を示している。本形態では、付勢バー41bの先端部を単なる平面としている。当該形態の場合、当接部が円筒部13bの長手方向に延在する線状となることから、所謂縦振動の影響を受ける可能性がある。しかし、応力は当該線上に分散されることから、これら部材の長寿命化を図ることが可能となる。また、図5A及び5Bに示すように、付勢バー41bの先端部を曲率半径の大きな(円筒部13bの外径と比較して)ものとしても良い。点接触の維持が図れると共に、付勢バー41b先端部の形状効果によって集中する応力の緩和を図ることが可能となる。しかしながら、当接部分が円筒部13bの円周面に沿ったずれを生じた場合、荷重の付加伝達が困難になる可能性を考慮する必要がある。
【0026】
なお、接触部分が円筒部13bの円周面に沿ってずれた場合には、本発明の効果が殆ど得られなくなる恐れがある。従って、このようなずれは特に抑制する必要がある。当該観点に立った場合、図6A及び6B或いは図7A及び7Bに示すような、付勢バー41bの端部形状、更には対応する円筒部13bの形状とする形態も考えられる。尚、これら図面は上述した図3A及び3Bと同様の様式にて当該形態を示すものである。図6A及び6Bに示す実施形態では、付勢バー41bの先端部を、円筒部13bの外周面に密着可能となるように、当該円筒部13bに対応する円筒の内周面となるように加工を施している。当該形状とすることによって、付勢バー41b先端部の円筒部の円周面に沿ったずれは防止できる。また、接触が面によるものとなることから、前述した応力集中を効果的に抑制できる。しかしながら、接触が面によるものであることから、所謂縦振動の影響を考慮することが必要となると考えられる。更に図7A及び7Bに示す実施形態では、付勢バー41bの先端部分を球面からなることとし、更にホーン円筒部13bにおける当接領域及びその周辺に対してこれら領域を平面とする加工を施している。超音波ホーン13側の当接部分が平面となることから、前述した周面に沿ったずれの発生は防止され、接触部分のずれの抑制という観点に立った場合好適に実施形態と言える。しかし、超音波ホーン13に余計な加工を施すこととなり、ホーンの振動特性の変化に留意する必要がある。
【0027】
なお、以上述べた付勢バー41bの先端部及びホーン円筒部13bの形状に関し、図3A〜7Aにおいて符号Sとして示される付勢バー41bの軸心は、超音波ホーン13における超音波振動に基づく定在波上の節の位置に対応している。本形態においては、上述したように、付勢バー41bとホーン円筒部13bとを連結させず各々単に当接しただけの状態で荷重の伝達を行うこととしている。従って、超音波ホーン13上で伝達される超音波振動に対して、付勢バー41bから受ける影響を抑制することが可能となる。即ち、本発明によれば、ボンディングツール11から実装部品に加えられる荷重に対して傾きの応力となるモーメントの抑制のための構成について、当該構成からの超音波振動への影響を排除しつつ該モーメントの抑制を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上述べたように、本発明はICチップ等の電子部品を基板に実装する際、即ち所謂フリップチップボンディングの工程に用いられる実装装置に対して好適に用いられる。しかしながら、本発明の適用対象は当該フリップチップボンディングの工程のみに限定されず、チップに設けられた電極を基板上の配線に対して接合する際等に用いられ、チップに対して基板方向に向かう荷重を付加しつつ該チップに対して当該荷重の付加方向とは異なる方向に沿った超音波振動を更に加えることによって所謂実装が為される種々の構成の接合工程にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る実装装置の主要部に関するものであって、当該装置を側面から見た状態の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す実施形態に係る実装装置の主要部に関するものであって、超音波ホーンを平面2−2において矢印方向から見た状態を示す図である。
【図3A】図1に示す実施形態における付勢バー41bと円筒部13bとの当接部分近傍を拡大して示す図であって、付勢バー41bの先端部の一態様を示す図である。
【図3B】図3Aにおける付勢バー41b及び円筒部13bを図中切断面3B−3Bを矢印方向から見た状態を示す図である。
【図4A】図1に示す実施形態における付勢バー41bと円筒部13bとの当接部分近傍を拡大して示す図であって、付勢バー41bの先端部の他の態様を示す図である。
【図4B】図4Aにおける付勢バー41b及び円筒部13bを図中切断面4B−4Bを矢印方向から見た状態を示す図である。
【図5A】図1に示す実施形態における付勢バー41bと円筒部13bとの当接部分近傍を拡大して示す図であって、付勢バー41bの先端部の更なる態様を示す図である。
【図5B】図5Aにおける付勢バー41b及び円筒部13bを図中切断面5B−5Bを矢印方向から見た状態を示す図である。
【図6A】図1に示す実施形態における付勢バー41bと円筒部13bとの当接部分近傍を拡大して示す図であって、付勢バー41bの先端部の更なる態様を示す図である。
【図6B】図6Aにおける付勢バー41b及び円筒部13bを図中切断面6B−6Bを矢印方向から見た状態を示す図である。
【図7A】図1に示す実施形態における付勢バー41bと円筒部13bとの当接部分近傍を拡大して示す図であって、付勢バー41bの先端部の更なる態様を示す図である。
【図7B】図7Aにおける付勢バー41b及び円筒部13bを図中切断面7B−7Bを矢印方向から見た状態を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1:実装部品、 3:基板、 10:実装ヘッド本体、 11:ボンディングツール、13:超音波ホーン、 15:振動子、 17:ホーン支持部材、 21:回転軸受、 25:駆動手段、 27:ロック手段、 29:付勢手段、 31:スライドブロック、 33:直動軸受、 35:回転モータ、 37:タイミングベルト、 39:回動・摺動部材、 41:ホーン他端付勢部材、 50:Z軸本体駆動手段、 51:本体駆動用モータ、 53:ボールネジ、 55:Z軸ガイドレール、 57:Z軸スライダ、 60:X軸駆動系、 61:X軸スライダ、 101:超音波実装装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂ICチップ等の電子部品を基板に実装する際に用いられる実装装置に関する。より詳細には、該チップに設けられた電極を基板上の配線に対して接合する際等に用いられ、チップに対して基板方向に向かう荷重を付加しつつ該チップに対して当該荷重の付加方向とは異なる方向に沿った超音波振動を更に加える、所謂フリップチップボンディングを行う超音波実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波実装装置は、例えば特許文献1において従来の技術として示されるように、荷重の付加軸と連結され且つ該付加軸とは平行であって当該付加軸から離れた軸線上にて超音波ホーンを保持するブラケットを有する。より詳細には、チップに対する荷重は、ボイスコイルモータにより該付加軸と一致した軸線に沿った駆動力として発生される。当該ボイスコイルモータの駆動軸は、当該軸線に沿って駆動力即ち荷重を伝える。前述したブラケットはL字形状を有し、当該駆動軸と直交する方向に延在するL字の一方の直線部の一端で連結され、該軸線と平行な他方の直線部にて超音波ホーンを保持する。即ち、ボイスコイルモータ駆動軸の発する駆動力は、該軸線とは離れた位置に存在するL字ブラケットの直線部を介して、超音波ホーンに対して該軸線と平行な方向に荷重を伝える。超音波ホーンは、該ブラケットから受けた荷重を荷重の付加方向とは直交する方向に伝達し、再度荷重を付加軸に沿ったものとしてボンディングツールに伝える。該ボンディングツールは、超音波ホーンを介して伝えられた付加荷重を受け、該荷重の付加方向を前述した荷重の付加軸上に戻した上で、これをチップに伝える。従来構成では、前述した経路を経た荷重をチップに付加した状態で超音波ホーンから該ボンディングツールに対して荷重付加軸と異なる方向に超音波振動を加えることによって、チップの電極と基板の電極との接合を得ている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−097493号公報
【特許文献2】特開2000−077480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、実装されるチップが複合部品となりチップ形状が複雑になること、或いはチップの要接合電極の数が増加すること、に伴って電極接合の難易度が増し、接合の安定性の向上、接合強度自体の向上等が求められている。当該要求に対応するためには、接合時の付加荷重の増加が最も適当且つ適切な対応となる。しかし、特許文献1に開示する構成の場合のように、所謂L字ブラケットを使用した従来の所謂片持ちの超音波ホーンを用いた構成で付加荷重を大きくした場合、該ホーンやこれを支持するブラケットが撓んでしまう、或いは撓む方向への応力が発生してしまうといった現象が生じる恐れがある。このような現象が生じることによって、実装時にチップが傾いて実装位置がずれてしまう、実装状態が不安定な接合電極が生じる、等、更に極端な場合にはチップ等の損傷が生じる恐れもあった。また、このようなブラケットの撓み、或いは付加荷重に対して抗力となり得るモーメントの発生は、ボイスコイルモータから発せられる駆動力と実際にチップに対して加えるべき荷重との間に誤差を生じさせ、適正な荷重の制御が困難となるという問題も発生させる恐れがあった。
【0005】
引用文献2においては、このような課題に対処するために、ボイスコイルモータから発せられる駆動力を荷重ベースで一旦受けることとし、該荷重ベースから直接的にボンディングツールに荷重を付加する構成が用いられている。当該構成によれば、荷重ベースを介してブラケットとボンディングツールに等しく駆動力の付加が為されることから前述したモーメント自体の発生は、かなり抑制されると考えられる。しかしながら、当該構成においても、荷重ベースからの荷重の付加が、荷重ベースの端部に配置されたボンディングツールを介して行われることとなり、実装部品に加えられるべき荷重がある程度以上増加した場合には、やはり、上述したL字ブラケット或いは超音波ホーンの撓み或いは当該荷重に起因した前述したモーメントの発生を考慮する必要があると思われる。また、荷重ベースから荷重が付与されるボンディングツール端部、即ちボンディングツールにおける荷重ベースとの接触部分は球面として形成されているため、接触点を中心としたホーン側の撓み、傾き等の生じる可能性も大きくなる恐れがある。
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みて為されたものであり、実装部品に対して加えるべき荷重が高荷重となった場合であっても、L字ブラケット及び超音波ホーンの撓み、及び所謂ボンディングツールに加えられ得るモーメントの発生を抑制し、実装部品に対して加える荷重の調整を正確に行うことを可能とする所謂超音波実装装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る超音波実装装置は、所定の付加軸に沿って荷重を付加した状態で実装部品の電極を基板上の配線電極に対して押圧すると共に該付加軸とは異なる方向の成分を有する超音波振動を該電極に加えることによって、該電極と該配線電極との接合を為す超音波実装装置であって、付加軸に沿って配置されて該付加軸に沿った下端部にて電子部品を保持するボンディングツールと、超音波振動を発生する振動子と、該付加軸とは異なる方向に延在して所定の位置にて超音波振動を伝達可能にボンディングツールを保持し、一方の端部において振動子と接続される超音波ホーンと、該超音波ホーンの一方の端部近傍にて該超音波ホーンを支持するホーン支持部材と、該所定の付加軸と平行な駆動力を発生する駆動手段と、該駆動手段及びホーン支持部材と連結されてホーン支持部材に駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、ホーン支持部材と連結されて超音波ホーンの所定の位置を挟んで一方の端部に対する他方の端部において超音波ホーンと当接するホーン他端付勢部材と、を有し、当該超音波ホーンにおける一方の端部は超音波ホーンに伝達された超音波振動から生じる定在波の節に位置し、他方の端部も定在波の節に位置することを特徴としている。
【0008】
なお、上述した超音波実装装置では、該ボンディングツールが保持される超音波ホーン上の所定の位置は、超音波ホーンに伝達された超音波振動から生じる定在波の腹の位置であることが好ましい。更に、当該超音波ホーンは、延在する方向の軸を有して振動子との連結部分での該軸と垂直な平面での断面積が最大であり該連結部分から離れるにつれて断面積が連続的に小さくなる縮径部と、該縮径部の断面積が最も小さくなった部分の断面形状を常に有し且つ縮径部と同軸で連結された筒部と、を有することが好ましい。また、この場合、当該断面形状が縮径部及び筒部において常に相似形であることがより好ましい。更に、所定の位置は縮径部における断面積が最小となる位置に配置されることが好ましい。また、当該超音波ホーンは、所定の位置において付加軸に一致してボンディングツールを保持する貫通孔と、該付加軸及び超音波ホーンが延在する軸を含む平面内に含まれて縮径部から筒部に延在して該超音波ホーンを貫通するスリットと、を有することがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チップに加えられる荷重が増加した場合であっても、超音波ホーン或いはブラケット等のたわみを抑制し、且つ前述したモーメントも抑制した状態にて、ボンディングツールの軸線に沿って直接チップへの荷重付加を行うことが可能となる。また、本発明によれば、前述したモーメント等の影響を排除することが可能となる効果により、チップに加えるべき荷重を細かく且つ正確に調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る超音波実装装置の部分断面を含んだ主要部の側面概略図である。本実施形態に係る超音波実装装置100は、実装ヘッド本体10、Z軸本体駆動手段50、及びX軸駆動手段60を有する。Z軸本体駆動手段50は、本体駆動用モータ51、ボールネジ53、Z軸ガイドレール55、及びZ軸スライダ57を有する。実装ヘッド本体10はZ軸スライダ57に固定され、該Z軸スライダ57はZ軸ガイドレール55によりZ軸方向に摺動自在に支持されると共に、ボールネジ53と係合している。本体駆動用モータ51はボールネジ53を軸中心に回転させ、Z軸スライダ57はボールネジ53の回転に伴ってZ軸ガイドレール55上を摺動する。Z軸ガイドレール55はX軸駆動手段60におけるX軸スライダ61によって支持される。X軸スライダ61(X軸駆動手段60)は公知のボールネジ等からなる一軸の駆動機構によって構成される。
【0011】
実装ヘッド本体10は、ボンディングツール11、超音波ホーン13、振動子15、前述したL字ブラケットでホーン支持部材17、回動・摺動部材39、一対の回転軸受21、ボイスコイルモータに例示される駆動手段25、ロック手段27、超音波ホーン13に付勢力を加えるホーン他端付勢部材41、スライドブロック31、及び直動軸受33を有する。スライドブロック31は、前述したZ軸スライダ57により直接支持される部材となり、上下方向(駆動手段の駆動方向であるZ軸方向)に貫通孔を有する筐体或いは枠状の構造を有する。スライドブロック31の上部には駆動手段25が配置され、該駆動手段25と上方端部が連結された略円筒形状の回動・摺動部材39は、前述したスライドブロック31の上下の貫通孔を介してスライドブロック31の内部から外部下方に向けてZ軸方向に延在する。
【0012】
ボンディングツール11は略パイプ構造を有する部材であって、回動・摺動部材39と同軸となるようにZ軸方向に延在するように配置される。ボンディングツール11は上端部において不図示の真空排気系と連通する排気ポート11aを有し、下端部の開口においてICチップ等の実装部品1を吸着保持する。また、当該ボンディングツール11は所定の付加軸に沿って実装部品1に対して押圧荷重を付加する。超音波ホーン13は、Z軸に直交するY軸方向に軸心が延在するように配置される略円錐状を有する円錐部13aと、該円錐部13aの径の細くなった部分と連結されて該円錐部13aと同軸に延在し且つ連結部分と同じ径を有する円筒部13bとを有する。ここで、超音波ホーン13を図1中の面2−2を矢印方向から見た状態を図2に示す。円錐部13a先端の細くなった部分において前述したボンディングツール11と連結されこれを保持する。また、円錐部13aの先端近傍には、略パイプ状のボンディングツール11が貫通可能となるように、ボンディングツール11が配置される位置に超音波ホーン13の延在方向と垂直な方向に貫通穴13cが形成される。また、該貫通穴13cの軸を含み且つ超音波ホーン13の延在方向に延在するスリット13dが、超音波ホーン13を貫通すると共に貫通孔13cをスリット面内に含むように形成される。なお、スリット13dは円錐部13aの先端部分のみならず円筒部13b内部まで延在する。なお、ボンディングツール11の貫通穴13cへの固定は、所謂ネジによる締め付けによって行われる。具体的には、超音波ホーン13における貫通孔13cの近傍に、スリット13dの延在面に垂直な方向に形成された不図示のネジ穴が配置される。当該ネジ穴は円錐部13a側或いは円筒部13bの何れに配置されても良いが、ボンディングツール11に対して所望の超音波振動を伝達する上では、円筒部13b側にこれを配置することが好ましい。当該ネジ穴を用いて不図示の締結ボルトによる締め付けを行うことで、ボンディングツール11の超音波ホーン13への固定が為される。
【0013】
該超音波ホーン13は、後端において超音波振動を発する振動子15と連結される。該振動子15の発した超音波振動は超音波ホーン13に与えられ、先端に伝わってゆくにつれて形状効果によって増幅されてボンディングツール11まで伝達される。伝達される超音波振動はZ軸に対して直交するY軸方向の振動であり、当該振動がボンディングツール11を介して実装部品1の下部電極1aに伝達される。実装対象である基板3上の電極3aに対して下部電極1aが所定の付加荷重を伴って押圧された状態で当該超音波振動が与えられることによって、これら電極の接合が為される。ここで、ボンディングツール11は使用に伴う摩耗等の影響によって比較的頻繁な交換が必要となることが知られている。しかし、前述したスリット13dが存在しない場合、超音波ホーン13とボンディングツール11との間で該超音波周波数での振動(摺動)を受けることからこれら部材が固着してしまうことがある。本実施形態の如くスリット13dを配することにより、上述した不図示の締結ボルトによる締め付けを為していない状態では、貫通穴13cは開いた状態となってボンディングツール11の外周面と貫通穴13cの内周面との間に隙間を生じる。したがって、ボンディングツール11の取り外し時では、締結ボルトを外すことによって超音波ホーン13の復元力が作用し、ボンディングツール11の外周面と貫通穴13cの内周面との間の隙間が再度生じることとなって、これら両部材間での固着の可能性を低減することが可能となる。また、該スリット13dの長さを長くすることによって、スリット13dの超音波ホーン13のX方向(スリット13dの幅方向)での変位可能領域(撓み可能な領域)が大きくなり、超音波ホーン13自体のより大きな変形が可能となる。即ち、スリット13dの端部が開口した場合に近い超音波ホーン13の挙動が得られることとなる。従って、不図示の締結ボルトを外した場合のスリット13d及び貫通穴13cの復元力がより大きくなり、一旦これらが固着した場合であっても、締結ボルトの除去によってこの固着を引き離す効果が得られ、結果として固着可能性を低減することもできる。しかし、円錐部13a内部でスリット13dを大きくした場合、超音波振動の円錐部拡径部から縮径部への適切な伝播、増幅が阻害される恐れがある。本形態の如く円筒部13bを配し且つ該円筒部13b内にスリット13dを延在させることによって、このような超音波振動の伝播等に対する該スリット13dの影響を低減させることも可能となる。また、従来はスリットの長さが短いために超音波ホーンの端部(円錐部の頂部に当たる領域)にスリットが開口するようにしなければ固着の防止ができなかった。このため、逆にボンディングツールを確実に固定することが難しくなっていた。しかし、本発明では円筒部を付加したことによってスリット長さを延長させることが可能となり、ボンディングツールの固着の防止と確実且つ容易な固定との両立を図ることが可能となった。
【0014】
ホーン支持部材17は、前述したようにYZ平面(図の紙面に平行な面)に延在するように配置されるL字形状を有する。ホーン支持部材17は、Z軸方向に延在するように配置された該L字の一方の直線部の端部(Z軸下方端部)において超音波ホーン13の後端近傍を支持する。ホーン支持部材17のY軸方向に延在する他方の直線部の端部は回動・摺動部材39のZ軸下方端部と連結される。該回動・摺動部材39はZ軸方向に延在し、且つボンディングツール11と同軸となるように配置される円筒状の部材である。該回動・摺動部材39は、同じく同軸にてZ軸方向に延在する直動軸受33によって、Z軸方向に摺動可能に支持される。また、直動軸受33はZ軸に延在した状態での上端部及び下端部において、回転軸受21を介して、スライドブロック31によりZ軸(回動・摺動部39の軸心を中心として)周りに回転可能に支持される。
【0015】
また、ホーン支持部材17は、前述した回動・摺動部材39との連結部分(L字形状の他方の直線部端部)から該直線部を延在するように配置されたホーン他端付勢部材41とも連結される。該ホーン他端付勢部材41は、ホーン支持部材17の直線部を延在してなる直線領域41aと、Z軸方向に延在し且つ該直線領域41aに一方の端部が固定されると共に、他方の端部が超音波ホーン13の円筒部13bの端部近傍に当接する付勢バー41bと、を有する。なお、付勢バー41bは直線領域41aの延在方向に対してその固定位置を変化させることが可能となっている。当該ホーン他端部付勢部材41を配することによって、超音波ホーン13は、ボンディングツール11を略中央に配置して超音波ホーン13の一方の端部と他方の端部との両端において駆動手段25から付与された荷重を受けることとなる。従って、従来構成のような所謂片持ち梁的な荷重の付加状態となることは無く、超音波ホーン13に対する撓み、曲げモーメント等の発生は無くなる。
【0016】
実装ヘッド本体10は、X軸駆動手段及びZ軸駆動手段により実装部品1を吸着保持した状態にてX軸及びZ軸各々の方向に駆動される。ここで、上述したように回動・摺動部材39からボンディングツール11に至る構成が重力に対して凡そフリーといえる状態に維持された場合、当該駆動操作時において個々の構成の慣性により実装ヘッド10に対して該構成が不測の動作を行う可能性がある。このような不測の動作の発生を防止する観点から、本実施形態においてはロック手段27を配することとしている。該ロック手段27は、エアシリンダ27aと、該エアシリンダ27aと連結して伸縮可能なシリンダピン27bとから構成される。シリンダピン27aは、回動・摺動部材39の軸方向中央部に配された外方に拡径してなるフランジ部39aに当接可能であり、上方側の回転軸受21と協働して該フランジ部39aを挟持することで、スライダブロック31に対する回動・摺動部材39の固定を為している。尚、エアシリンダ27aにはエアの供給及び排出を為す構成が付随するが、図面の簡略化のために図示を省略する。
【0017】
なお、超音波ホーン13を介してボンディングツール11にY軸方向の縦の超音波振動を伝達した場合、該ボンディングツール11には該超音波ホーンとの接合部分を中心とした所謂定在波(超音波振動の伝達方向から見た場合の横振動)が発生する。超音波振動を効率的に用いて電極間の接合を行おうとした場合、ボンディングツール11に保持された実装部品1の電極1aは、当該定在波において最も振幅の大きな所謂振動の腹の位置に配置されることが好ましい。従って、超音波ホーン13との接合位置からボンディングツール11が保持する実装部品1の電極1aまでの距離は、当該定在波の周期上当該条件を満たす長さとなるように設計される。
【0018】
また、振動子15から超音波ホーン13に加えられる振動は、ホーン円錐部13aにおい振幅の変化等を生じるが基本的には該超音波ホーン13を振動させる定在波として伝えられる。この場合、該超音波ホーン13中に定在波を最も効果的に存在させようとした場合、当該超音波ホーン13の支持は該定在波の振動の所謂節の部分で為されることが好ましい。このため、ホーン支持部材17は、超音波ホーン13の一方の端部(円錐部13aの拡径側の端部)近傍に存在する該定在波の節において、これ支持する。また、ホーン他端付勢部材41も、超音波ホーン13の他方の端部(円筒部13bにおける円錐部13aと連結される側とは他方の端部)近傍に存在する該定在波の節において、当該円筒部13bに当接する。以上述べたように、ホーン支持部材17及びホーン端部付勢部材41ともに、ボンディングツール11を略中心として超音波ホーン13の両端部の定在波の節の位置において、当該超音波ホーン13に対するZ軸下方向への荷重を付加することとなる。
【0019】
このため、当該両端部から受ける荷重の大きさが振動によってバランスを崩すということが無くなり、超音波ホーン13に対する回転モーメントの付加が存在しなくなり、実装部品1に対してZ軸に沿った荷重の付加を行うことが可能となる。また、ホーン支持部材17が超音波ホーン13を支持する位置は、振動子15との接合の兼ね合いから適当な位置を求めることは比較的容易である。しかし、通常振動が超音波ホーン13の円錐部13aを伝播する際に超音波の振幅の変化等が生じることから、先端部での定在波の節を正確に求めることは困難な場合が多い。また、円錐部13aにて何等かの部材を軸心と垂直な方向から当接させ且つ振動が存在した状態でこの当接状態を維持することは、該円錐部13aでは軸方向に径が変化してゆくことからも、非常に困難である。本実施形態では円筒部13bを配することとし、当該円筒部13bにおいて存在する節の部分でホーン端部付勢部材41との当接状態を得ることとしている。該円筒部13bではホーンの外径の変化が無いことから当接維持が容易であると共に、節の位置を確保することも円錐部の場合と比較して容易である。また、本形態にける超音波ホーンでは、円錐部13aの軸とは垂直な断面での形状と円筒部13bの軸とは垂直な断面での形状とは相似とされている。従って、定在波における振動の成分も該超音波ホーン13の両端部の付勢位置において変化する可能性が極めて小さく、定在波における振動の所謂縦成分及び横成分の振動方向、比率等は一定に保たれる。
【0020】
なお、上記実施形態において、ホーン支持部材17が超音波ホーン13を支持する位置は、該超音波ホーン13の拡径部端部であることが好ましいが、実際には該超音波ホーン13と振動子15との接合部分との兼ね合いから完全な端部とはならないことから、当該支持位置は該超音波ホーン13の一方の端部近傍と表現されることが好ましい。また、同軸・摺動部材39については、本実施形態では直動軸受33等によりスライドブロック39に対して摺動可能に支持され且つ回転軸受21により回動可能にも支持されることから当該名称としている。しかし、駆動手段25の駆動力を伝達するために駆動手段25とホーン支持部材17とに連結されており、駆動力の伝達部材としても作用する。当該構成は回動及び摺動が他の構成によって担われることが可能であれば、駆動力伝達部材としてのみ構築することも可能である。また、本実施形態では、超音波ホーン13における軸とは垂直な面での断面の形状は円形としているが、当該超音波ホーンの形態はこれに限定されない。即ち、超音波ホーンが延在する方向の軸を中心軸として有して振動子との連結部分での軸と垂直な平面での断面積が最大であり該連結部分から離れるにつれてこの断面積が連続的に小さくなる縮径部と、当該縮径部での断面積が最も小さくなった部分の断面形状を常に有し且つ当該縮径部と同軸で連結された筒部と、を有する超音波ホーンであれば、本発明に含まれる。また、この場合、これら断面形状は縮径部と筒部とにおいて常に相似であればより好ましい。また、超音波ホーン13がボンディングツール11を保持する所定位置は、縮径部での断面積最小位置がより好ましい。
【0021】
次に、上述した実施形態からなる超音波実装装置100が実際に基板3に対して実装部品1を実装する際の各構成の動作について述べる。実装工程に際し、実装ヘッド本体10は、Z軸本体駆動手段50及びX軸駆動手段60によって実装部品1の供給位置まで搬送される。その際、ロック手段27は、回転軸受21と共にフランジ部39aを挟持することによって、回動・摺動部材39、ホーン支持部材17、振動子15、ホーン端部付勢部材41、超音波ホーン13及びボンディングツール11の実装ヘッド10に対する不測の移動を規制する。実装ヘッド本体10がボンディングヘッド11の先端部にて実装部品1を吸着保持すると、該実装ヘッド本体10は、Y軸方向についての基板搬送を行う不図示の基板搬送系によって所定位置まで駆動された基板3の上方所定位置まで、Z軸本体駆動手段50及びX軸駆動手段60によって搬送される。なお、基板3の上方に実装部品1が搬送される間に、不図示の画像処理系等により、基板の配置、所定のXY軸に対するズレの程度、実装部品1の保持姿勢等が求められ、ボンディング時に実装部品1がとるべき姿勢に対するズレの総量が求められる。実装ヘッド本体10がZ軸本体駆動手段によって下降する際に、個々の軸方向の駆動手段によるXY平面内での位置補正、及び不図示のθ駆動系により回動部材19を回動させてなる、所謂θ補正と称呼された保持姿勢の補正操作が為される。
【0022】
下降が進行して実装部品1の電極1aが基板3上の電極3aと当接する直前位置である所定高さまで下降したことが不図示のセンサにより検知されると、ロック手段27による回動・摺動部材39の固定が解除される。実装部品の下降は更に継続され、実装部品1が基板3に当接すると、該下降操作が停止される。なお、当接時においては駆動手段25として所謂ボイスコイルモータを用いることによって実装部品1と基板3との当接による衝撃は抑制されている。また、これにより実装部品1の電極1aは、無負荷に近い状態で基板上電極3aと当接するとなる。ここで、あらためて駆動手段25が回動・摺動部材39を駆動させ、ホーン支持部材17及びホーン端部付勢部材41が超音波ホーン13の両端部に対して略均等に付加荷重を加え、更にボンディングツール11を介して所定の荷重を実装部品1に加えることとなる。所定の荷重が実装部品1に加えられた状態で、超音波ホーン13を介して振動子15が超音波振動をボンディングツール11に与えることにより、実装部品電極1aと基板電極3aとの接合が為される。
【0023】
以上述べたように、本発明においては、従来は超音波ホーン13の一方の端部から荷重付加を為していたものを、当該端部から見てボンディングツールが配置される側とは反対側にホーン端部付勢手段41を配することによって、超音波ホーン13の他方の端部からも荷重の付加を為すこととしている。従って、従来技術で問題となる荷重の増加に伴うL字状ブラケットの撓みや超音波ホーン作用する回転モーメントを無くすることが可能となる。更に、超音波ホーン13の円錐部13aの頂部に同一径且つ同軸で延在する円筒部13bを配し、他方端部の荷重付加を当該円筒部13bで行い、且つ荷重の付加位置を該超音波ホーン13における定在波の節となるように設定している。従って、ホーン端部付勢部材41から超音波ホーン13への荷重の付加が安定的且つ正確に実行されることとなり、実際に付加する荷重は駆動力とほぼ同じ値であって、実際の荷重の大きさを把握した状態でこれを微調整することも可能となる。
【0024】
なお、ホーン端部付勢部材41における超音波ホーン13の円筒部31bに当接する、付勢バー41bの先端部と、円筒部31bの被当接部とは、荷重の伝播、振動に対する当接状態の維持の観点から種々の形態が考えられる。当該形態について、次に述べる。図3Aは図1における付勢バー41bと円筒部31bの当接部分近傍のみを拡大して示す図である。また、図3Bは図3Aに示す断面3B−3Bを矢印方向から見た状態を示す図である。本形態においては、付勢バー41bの先端部は、超音波ホーン13の軸心に垂直であって且つYZ平面に垂直な軸を有する円筒の側面を構成している。即ち、付勢バー41bの先端部は、円筒外周面上において軸方向に引かれる直線上の一点においてホーン円筒部13bと接触する。また、ホーン円筒部13b側の当接点も、当該円筒部の外周面上の軸方向に引かれる直線上の一点において付勢バー41bの先端部と接触する。従って、両部材は常に点接触をするが当接状態においてホーン円筒部13bの軸及び付勢バー41b先端部の円筒部の軸を含む面内での接触点のズレの影響を受けることが無く、常に好適には当接状態を維持することが可能となる。従って、付勢バー41bから円筒部13bに荷重を付加する際に、当該実施形態が最も安定的にこれを行うことが可能であると考えられる。
【0025】
しかしながら、上記形態の場合、荷重の付加が一点において為されることから所謂応力集中による付勢バー41b或いは円筒部13bの摩耗、破損等の劣化による短寿命化が懸念される。このような応力の集中を防止するためには、付勢バー41bの先端部を例えば図4A及び4Bに示す形態としても良い。なお、図4A及び図4Bは図3A及び図3Bと同様の様式にて当該形態を示している。本形態では、付勢バー41bの先端部を単なる平面としている。当該形態の場合、当接部が円筒部13bの長手方向に延在する線状となることから、所謂縦振動の影響を受ける可能性がある。しかし、応力は当該線上に分散されることから、これら部材の長寿命化を図ることが可能となる。また、図5A及び5Bに示すように、付勢バー41bの先端部を曲率半径の大きな(円筒部13bの外径と比較して)ものとしても良い。点接触の維持が図れると共に、付勢バー41b先端部の形状効果によって集中する応力の緩和を図ることが可能となる。しかしながら、当接部分が円筒部13bの円周面に沿ったずれを生じた場合、荷重の付加伝達が困難になる可能性を考慮する必要がある。
【0026】
なお、接触部分が円筒部13bの円周面に沿ってずれた場合には、本発明の効果が殆ど得られなくなる恐れがある。従って、このようなずれは特に抑制する必要がある。当該観点に立った場合、図6A及び6B或いは図7A及び7Bに示すような、付勢バー41bの端部形状、更には対応する円筒部13bの形状とする形態も考えられる。尚、これら図面は上述した図3A及び3Bと同様の様式にて当該形態を示すものである。図6A及び6Bに示す実施形態では、付勢バー41bの先端部を、円筒部13bの外周面に密着可能となるように、当該円筒部13bに対応する円筒の内周面となるように加工を施している。当該形状とすることによって、付勢バー41b先端部の円筒部の円周面に沿ったずれは防止できる。また、接触が面によるものとなることから、前述した応力集中を効果的に抑制できる。しかしながら、接触が面によるものであることから、所謂縦振動の影響を考慮することが必要となると考えられる。更に図7A及び7Bに示す実施形態では、付勢バー41bの先端部分を球面からなることとし、更にホーン円筒部13bにおける当接領域及びその周辺に対してこれら領域を平面とする加工を施している。超音波ホーン13側の当接部分が平面となることから、前述した周面に沿ったずれの発生は防止され、接触部分のずれの抑制という観点に立った場合好適に実施形態と言える。しかし、超音波ホーン13に余計な加工を施すこととなり、ホーンの振動特性の変化に留意する必要がある。
【0027】
なお、以上述べた付勢バー41bの先端部及びホーン円筒部13bの形状に関し、図3A〜7Aにおいて符号Sとして示される付勢バー41bの軸心は、超音波ホーン13における超音波振動に基づく定在波上の節の位置に対応している。本形態においては、上述したように、付勢バー41bとホーン円筒部13bとを連結させず各々単に当接しただけの状態で荷重の伝達を行うこととしている。従って、超音波ホーン13上で伝達される超音波振動に対して、付勢バー41bから受ける影響を抑制することが可能となる。即ち、本発明によれば、ボンディングツール11から実装部品に加えられる荷重に対して傾きの応力となるモーメントの抑制のための構成について、当該構成からの超音波振動への影響を排除しつつ該モーメントの抑制を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上述べたように、本発明はICチップ等の電子部品を基板に実装する際、即ち所謂フリップチップボンディングの工程に用いられる実装装置に対して好適に用いられる。しかしながら、本発明の適用対象は当該フリップチップボンディングの工程のみに限定されず、チップに設けられた電極を基板上の配線に対して接合する際等に用いられ、チップに対して基板方向に向かう荷重を付加しつつ該チップに対して当該荷重の付加方向とは異なる方向に沿った超音波振動を更に加えることによって所謂実装が為される種々の構成の接合工程にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る実装装置の主要部に関するものであって、当該装置を側面から見た状態の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す実施形態に係る実装装置の主要部に関するものであって、超音波ホーンを平面2−2において矢印方向から見た状態を示す図である。
【図3A】図1に示す実施形態における付勢バー41bと円筒部13bとの当接部分近傍を拡大して示す図であって、付勢バー41bの先端部の一態様を示す図である。
【図3B】図3Aにおける付勢バー41b及び円筒部13bを図中切断面3B−3Bを矢印方向から見た状態を示す図である。
【図4A】図1に示す実施形態における付勢バー41bと円筒部13bとの当接部分近傍を拡大して示す図であって、付勢バー41bの先端部の他の態様を示す図である。
【図4B】図4Aにおける付勢バー41b及び円筒部13bを図中切断面4B−4Bを矢印方向から見た状態を示す図である。
【図5A】図1に示す実施形態における付勢バー41bと円筒部13bとの当接部分近傍を拡大して示す図であって、付勢バー41bの先端部の更なる態様を示す図である。
【図5B】図5Aにおける付勢バー41b及び円筒部13bを図中切断面5B−5Bを矢印方向から見た状態を示す図である。
【図6A】図1に示す実施形態における付勢バー41bと円筒部13bとの当接部分近傍を拡大して示す図であって、付勢バー41bの先端部の更なる態様を示す図である。
【図6B】図6Aにおける付勢バー41b及び円筒部13bを図中切断面6B−6Bを矢印方向から見た状態を示す図である。
【図7A】図1に示す実施形態における付勢バー41bと円筒部13bとの当接部分近傍を拡大して示す図であって、付勢バー41bの先端部の更なる態様を示す図である。
【図7B】図7Aにおける付勢バー41b及び円筒部13bを図中切断面7B−7Bを矢印方向から見た状態を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1:実装部品、 3:基板、 10:実装ヘッド本体、 11:ボンディングツール、13:超音波ホーン、 15:振動子、 17:ホーン支持部材、 21:回転軸受、 25:駆動手段、 27:ロック手段、 29:付勢手段、 31:スライドブロック、 33:直動軸受、 35:回転モータ、 37:タイミングベルト、 39:回動・摺動部材、 41:ホーン他端付勢部材、 50:Z軸本体駆動手段、 51:本体駆動用モータ、 53:ボールネジ、 55:Z軸ガイドレール、 57:Z軸スライダ、 60:X軸駆動系、 61:X軸スライダ、 101:超音波実装装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の付加軸に沿って荷重を付加した状態で実装部品の電極を基板上の配線電極に対して押圧すると共に前記付加軸とは異なる方向の成分を有する超音波振動を前記電極に加えることによって、前記電極と前記配線電極との接合を為す超音波実装装置であって、
前記付加軸に沿って配置されて前記付加軸に沿った下端部にて前記電子部品を保持するボンディングツールと、
前記超音波振動を発生する振動子と、
前記付加軸とは異なる方向に延在して所定の位置にて前記超音波振動を伝達可能に前記ボンディングツールを保持し、一方の端部において前記振動子と接続される超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記一方の端部近傍にて前記超音波ホーンを支持するホーン支持部材と、
前記所定の付加軸と平行な駆動力を発生する駆動手段と、
前記駆動手段及び前記ホーン支持部材と連結されて前記ホーン支持部材に前記駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、
前記ホーン支持部材と連結されて前記超音波ホーンの前記所定の位置を挟んで前記一方の端部に対する他方の端部において前記超音波ホーンと当接するホーン他端付勢部材と、を有し、
前記超音波ホーンにおける前記一方の端部は前記超音波ホーンに伝達された超音波振動から生じる定在波の節に位置し、前記他方の端部も定在波の節に位置することを特徴とする超音波実装装置。
【請求項2】
前記ボンディングツールが保持される前記超音波ホーン上の前記所定の位置は、前記超音波ホーンに伝達された前記超音波振動から生じる前記定在波の腹の位置であることを特徴とする請求項1に記載の超音波実装装置。
【請求項3】
前記超音波ホーンは、前記延在する方向の軸を有して前記振動子との連結部分での前記軸と垂直な平面での断面積が最大であり前記連結部分から離れるにつれて前記断面積が連続的に小さくなる縮径部と、前記縮径部の前記断面積が最も小さくなった部分の断面形状を常に有し且つ前記縮径部と同軸で連結された筒部と、を有することを特徴とする請求項1或いは2何れかに記載の超音波実装装置。
【請求項4】
前記断面形状が前記縮径部及び前記筒部において常に相似形であることを特徴とする請求項3に記載の超音波実装装置。
【請求項5】
前記所定の位置は前記縮径部における前記断面積が最小となる位置に配置されることを特徴とする請求項3或いは4何れかに記載の超音波実装装置。
【請求項6】
前記超音波ホーンは、前記所定の位置において前記付加軸に一致して前記ボンディングツールを保持する貫通孔と、前記付加軸及び前記超音波ホーンが延在する軸を含む平面内に含まれて前記縮径部から前記筒部に延在して前記超音波ホーンを貫通するスリットと、を有することを特徴とする請求項3乃至5何れかに記載の超音波実装装置。
【請求項1】
所定の付加軸に沿って荷重を付加した状態で実装部品の電極を基板上の配線電極に対して押圧すると共に前記付加軸とは異なる方向の成分を有する超音波振動を前記電極に加えることによって、前記電極と前記配線電極との接合を為す超音波実装装置であって、
前記付加軸に沿って配置されて前記付加軸に沿った下端部にて前記電子部品を保持するボンディングツールと、
前記超音波振動を発生する振動子と、
前記付加軸とは異なる方向に延在して所定の位置にて前記超音波振動を伝達可能に前記ボンディングツールを保持し、一方の端部において前記振動子と接続される超音波ホーンと、
前記超音波ホーンの前記一方の端部近傍にて前記超音波ホーンを支持するホーン支持部材と、
前記所定の付加軸と平行な駆動力を発生する駆動手段と、
前記駆動手段及び前記ホーン支持部材と連結されて前記ホーン支持部材に前記駆動力を伝達する駆動力伝達部材と、
前記ホーン支持部材と連結されて前記超音波ホーンの前記所定の位置を挟んで前記一方の端部に対する他方の端部において前記超音波ホーンと当接するホーン他端付勢部材と、を有し、
前記超音波ホーンにおける前記一方の端部は前記超音波ホーンに伝達された超音波振動から生じる定在波の節に位置し、前記他方の端部も定在波の節に位置することを特徴とする超音波実装装置。
【請求項2】
前記ボンディングツールが保持される前記超音波ホーン上の前記所定の位置は、前記超音波ホーンに伝達された前記超音波振動から生じる前記定在波の腹の位置であることを特徴とする請求項1に記載の超音波実装装置。
【請求項3】
前記超音波ホーンは、前記延在する方向の軸を有して前記振動子との連結部分での前記軸と垂直な平面での断面積が最大であり前記連結部分から離れるにつれて前記断面積が連続的に小さくなる縮径部と、前記縮径部の前記断面積が最も小さくなった部分の断面形状を常に有し且つ前記縮径部と同軸で連結された筒部と、を有することを特徴とする請求項1或いは2何れかに記載の超音波実装装置。
【請求項4】
前記断面形状が前記縮径部及び前記筒部において常に相似形であることを特徴とする請求項3に記載の超音波実装装置。
【請求項5】
前記所定の位置は前記縮径部における前記断面積が最小となる位置に配置されることを特徴とする請求項3或いは4何れかに記載の超音波実装装置。
【請求項6】
前記超音波ホーンは、前記所定の位置において前記付加軸に一致して前記ボンディングツールを保持する貫通孔と、前記付加軸及び前記超音波ホーンが延在する軸を含む平面内に含まれて前記縮径部から前記筒部に延在して前記超音波ホーンを貫通するスリットと、を有することを特徴とする請求項3乃至5何れかに記載の超音波実装装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【公開番号】特開2009−267238(P2009−267238A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117366(P2008−117366)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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