説明

超音波振動付与体

【課題】 機械加工装置により加工される被加工物に超音波振動を与え、機械加工速度および加工精度を向上させることを提供すること。
【解決手段】シリコンインゴットの両端面には、超音波振動付与体1である圧電セラミック6をエポキシ樹脂で接着している。シリコンインゴットと接着されている圧電セラミック6の面はアース電極面である。電気配線を容易にするためアース電極面と接続する折り返し電極8を設けている。そしてスラリー液などにより電気的ショートしないように圧電セラミック6の表面の表電極7と折り返し電極8とともに絶縁塗料によりコートされている。なお圧電セラミック6は厚さ方向に分極されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、セラミック、シリコーン、チタン、超硬金属などの難切削材料および一般の金属材料、有機材料、無機材料およびそれらを複合化した材料の切断、研削及び研磨加工に用いられる超音波振動付与体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガラス、セラミック、シリコーン、チタン、超硬金属などの硬度が高い脆性材料を切断、研削等の加工を施すことは、非常に困難であり従来から工具に超音波振動を加え加工することが行われている。このような超音波切削加工は、切削抵抗が低減するため、切削ツールの摩擦熱が少なく加工面の熱歪が少なくなり、切削ツールの寿命が長くなると共に、加工精度の向上につながってくる。なお超音波切削加工について非特許文献1に詳しく記載されている。
【0003】
また、被加工物を固定するテーブルに振動を与え、これを被加工物に伝播させ、振動切削加工を行うことは、よく知られていることである。例えば、図10に示す特許文献1の超音波振動テーブルは、工作機械のベッドに取り付けられ加工される被加工物を固定可能にするテーブル装置であり、その概略の構成は以下の通りである。
まず、振動を発生する超音波振動子がある。そしてその超音波振動を増幅し、振動テーブルに伝達するためのアルミニム製の伝達ホーンがある。この伝達ホーンは超音波振動子と接する面は超音波振動子と同じ直径であるが外フランジより上部ではそれよりも直径は小さくなっている。そして、ケーシングの内フランジに外フランジをゴム板を挟んだ状態でボルト部材によって締結固定されている。また、振動テーブルの下部から下方に突き出し、ケーシングの外側に形成された案内用凹部に挿入されて振動テーブルの横移動を制限しながら上下方向に案内するガイド部材を有している。
【0004】
さらに別の方式として特許文献2には、被加工物を固定保持するテーブルの下面に3個のボルト締めランジュバン型超音波振動子2が固定され、テーブルの下面が本体ケースに接続されている構成の振動テーブルが開示されている。そしてこれらのボルト締めランジュバン型超音波振動子2によって円盤状のテーブルの上側表面に仮固定された加工対象物に超音波振動を付与することにより、硬脆材料から形成された加工対象物の極微小径穴あけ加工や溝入れ加工が容易になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2002−355726号 公報
【特許文献2】 特開2003−220530号 公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】超音波便覧編集委員会、「超音波便覧」、丸善株式会社、平成11年8月、p679−684
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2の超音波振動テーブルは、超音波振動テーブルの固有振動モードで振動する。超音波振動テーブルの被加工物を載せるテーブルは、被加工物より面積が広く、一般的に複雑な振動モードになる。このため、被加工物が載るテーブル位置によっては被加工物に十分に超音波振動が伝搬しない。
【0008】
また、上記被加工物を載せるテーブルは、一般的に平面形状であり、例えば球面体をテーブルに保持することができない。そのため例えば球面体を保持するための保持治具を用いて保持するが、先に述べたようにテーブルの位置により超音波振動の大きさが異なり、保持治具で球面体を固定できても、被加工物に十分に超音波振動が伝搬しない。
【0009】
さらに、特許文献2の超音波振動テーブルは、テーブルの下面の外周部が本体ケースに接続されているため、特許文献1の超音波振動テーブルと同様に振動するテーブルと本来振動してはならない本体ケースが固着しているため、テーブルの振動が抑制され、本体ケースまたはベースに振動が漏れる。このため同じ振動変位をテーブルが持つためにより多くの電力を投入しなければならないため発熱の問題が生じる。そして超音波振動テーブルを取り付けた加工装置に不要な振動が伝達してしまい加工装置の性能を低下させてしまうという問題点もある。
【0010】
また、一般に超音波振動テーブルは、高さが約100mm以上であり、小型の機械加工装置によっては、取付けることが困難になる。
【0011】
本発明の目的は上述の問題点を解消する超音波振動付与体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、機械加工装置により機械加工される被加工物に、超音波振動を付与する超音波振動付与体を接合するものである。
【0013】
本発明はまた、機械加工装置により機械加工される被加工物に、ダミー部材と超音波振動付与体を接合し、被加工物とダミー部材を機械加工するものである。
【0014】
本発明はまた、前記超音波振動付与体に超音波発振回路を電気的に接続し、15KHz以上100KHz未満の電圧を印加するものである。
【0015】
本発明はまた、超音波振動付与体が超音波発生素子であること、超音波振動付与体が超音波発生素子とフロント部材であること、超音波振動付与体が超音波発生素子とリア部材であること、超音波振動付与体が超音波発生素子とフロント部材とリア部材であることのいずれかの構成とするものである。
【0016】
本発明はまた、リア部材を、機械加工装置の加工台に接触させ、取付けるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の超音波振動付与体は、被加工物に直接接合するので、被加工物の形状によらず、超音波振動の伝搬損失を少なくすることが可能であり、被加工物の加工速度を向上させ、そして加工精度の向上をさせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明の第1の構成の超音波振動付与体などを示す斜視図である。
【図2】 超音波振動付与体の詳細を示す斜視図である。
【図3】 ワイヤソーの概略を示す斜視図である。
【図4】 切断溝の振動モードを示す断面図である。
【図5】 本発明の第2の構成の超音波振動付与体などを示す平面図である。
【図6】 図5の側面を示す図である。
【図7】 本発明の第3の構成の超音波振動付与体などを示す平面図である。
【図8】 図7の側面を示す図である。
【図9】 本発明の第4の構成の超音波振動付与体などを示す斜視図である。
【図10】 超音波振動テーブルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の超音波振動付与体1を、添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の構成の斜視図である。超音波振動付与体1が超音波発生素子18だけで構成されている場合である。そして超音波発生素子18は、圧電セラミック6である。
【0020】
被加工物2は例えば直径200mm、長さ400mmのシリコンインゴットである。これを切断するため、機械加工装置であるワイヤソーを用いる。ワイヤソーの加工台4に図示しないクランプ装置によりステンレス製の取付け台15を固定する。ステンレス製の取付け台15に保持治具3をエポキシ樹脂により取付ける。保持治具3はカーボン製である。前記保持治具3に被加工物2であるシリコンインゴットをエポキシ樹脂で接着する。
【0021】
予めシリコンインゴットの両端面には、超音波振動付与体1である斜視図である図2で示す圧電セラミック6をエポキシ樹脂で接着している。シリコンインゴットと接着されている圧電セラミック6の面はアース電極面である。電気配線を容易にするためアース電極面と接続する折り返し電極8を設けている。そしてスラリー液などにより電気的ショートしないように圧電セラミック6の表面の表電極7と折り返し電極8とともに絶縁塗料によりコートされている。なお圧電セラミック6は厚さ方向に分極されている。そして、ここでは圧電セラミック6が超音波発生素子18である。
【0022】
次にこの超音波振動付与体1を用いたワイヤソーの動作例について斜視図である図3を用いて説明する。ワイヤソーの加工台4に取付け台15をクランプする。加工台4に取付け台15を保持固定する他の方法には、ワックスによる接着、テーブルにネジ等により固定する、磁気的に固定する、静電的に固定する、冷凍して固定するなどがある。
【0023】
次に、シリコンインゴットの両端面にエポキシ樹脂で接着された超音波振動付与体1である圧電セラミック6と超音波発振回路を電気的に接続する。そして、約55KHzの交流電圧を印加する。超音波振動付与体1は超音波振動する。
【0024】
次に図示しないスラリー供給ノズルから加工用ローラ9a、9b間のワイヤ5にスラリーを供給しつつ、加工用ローラ9a、9b、9cを回転させてワイヤ5を線方向に進退走行させることでシリコンインゴットをウェハ状にスライス加工する。
【0025】
シリコンインゴットに直接接合した超音波振動付与体1の超音波振動により、シリコンインゴットは、超音波振動する。この振動により、300μm以下の切断溝10でもスラリー液は、シリコンインゴットの直径が100mm以上になっても切断溝10の中に侵入することができる。この理由は、図4の断面図で示すような切断溝10でのスラリー液の表面張力をシリコンインゴットの図4の2点鎖線で示す超音波振動11が乱し、スラリー液を切断溝10の奥に侵入させることができるためと考えられる。この考察の検証として、シリコンウェハ上の水滴に、シリコンウェハの下面より超音波振動を与え、水滴がシリコンウェハ上を拡がることを確認している。また、ビデオによる観察により、水滴とシリコンウェハの接触角が超音波振動を与えているときには、小さくなっていることも確認している。
【0026】
またシリコンインゴットの超音波振動により、ワイヤ5とシリコンインゴットの接触時間は小さくなり、ワイヤ5とシリコンインゴットの摩擦により発熱は減少する。このためワイヤ5の寿命は長くなり、かつシリコンインゴットの加工精度は高くなる。そして、ワイヤ5とシリコンインゴットの摩擦が、ほぼ半減するため加工速度を2倍にすることも可能である。
【0027】
上記においては、超音波発生素子に印加する周波数を約55KHzの1つの周波数を用いたが、もちろん、2周波数以上でも良い。さらに、例えば、約35KHz、約45KHz、約55KHzの3周波数でも良い。
【0028】
図5は本発明の第2の構成を示す平面図、図6は図5の側面図である。ここで超音波振動付与体1は、フロント部材16、超音波発生素子18、リア部材17から構成されている。そして超音波発生素子18は、圧電セラミック6である。
【0029】
被加工物2は例えば直径40mm、厚さ0.5mmの石英ガラス板である。これを直径0.1mmの貫通孔を設けるため、フライス盤に取り付けたドリルを用いる。フライス盤の加工台に図示しないクランプ装置により鋼製の取付け台15を固定する。取付け台15に多孔質金属製ブロック12を接合する。多孔質金属製ブロック12は、超音波振動の伝搬を小さくするものであり、金属ブロックに孔やスリットを設けたもの、または多孔質セラミックなどでもよい。一方、超音波振動付与体1は、40mmφそして2mm厚さの圧電セラミック6の上にフロント部材16、下にリア部材17である2mm厚のガラス繊維複合材料板を配置してエポキシ樹脂により接合して組み立てた。ここで、フロント部材16は、圧電セラミック6の電極と金属部品などの電気的ショートを防止するためと、超音波振動を伝搬させるものである。したがって、ガラス繊維複合材料板の他、ガラス、絶縁性セラミックなどでもよい。また、被加工物2と圧電セラミック6の間に位置するフロント部材16は、超音波振動の伝搬をできるだけ損失無く行わせるため、超音波伝搬方向の厚さは5mm以下が好ましい。より好ましくは2mm以下である。リア部材17は、被加工物2に対して超音波振動付与体1の最も後方に位置する構成体である。リア部材17は、超音波伝搬については、どちらかというとロスが大きくてもよく、多部品との電気的ショートの虞を無くするため電気的絶縁性であったほうがよい。そしてこの超音波振動付与体1を多孔質金属製ブロック12に接着剤で接合する。
【0030】
被加工物2と共に孔加工されるダミー部材14である2mm厚のガラス繊維複合材料板に石英ガラス板を、ワックスを用いて接着する。このワックスは約80℃に加熱することで石英ガラス板をガラス繊維複合材料板から外すことができる。ワックスのような接着材を用いることで、超音波振動付与体1を再使用することができるのでドリル加工コストを安価にできる。
【0031】
次にこの超音波振動付与体1を用いたフライス盤の動作例について説明する。石英ガラス板を接着したダミー部材14である2mm厚のガラス繊維複合材料板をフロント部材16にワックスを用いて接着する。フライス盤の加工台に鋼製の取付け台15をクランプ装置により取付ける。
【0032】
超音波振動付与体1を構成している圧電セラミック6と超音波発振回路を電気的に接続する。そして、約50KHzの交流電圧を印加する。超音波振動付与体1は超音波振動する。
【0033】
次に研削液を供給しつつ、フライス盤に取り付けたドリルを回転させつつ下降させ、石英ガラス板に孔加工する。
【0034】
石英ガラスに接合した超音波振動付与体1の超音波振動により、石英ガラスは、超音波振動する。この超音波振動により、ドリル直径が100μmの加工孔でも研削液は、石英ガラスの加工孔深さが100μm以上になっても加工孔の中に侵入することができる。この理由は、加工孔での研削液の表面張力を石英ガラスの超音波振動が乱し、研削液を加工孔の奥に侵入させることができるためと考えられる。
【0035】
また石英ガラスの超音波振動により、ドリルと石英ガラスの接触時間は小さくなり、ドリルと石英ガラスの摩擦により発熱は減少する。このためドリルの寿命は長くなり、かつ石英ガラスのチッピングは少なくなり、そして加工精度は高くなる。そして、ドリルと石英ガラスの摩擦が、ほぼ半減するため加工速度を2倍にすることも可能である。
【0036】
図7は本発明の第3の構成を示す平面図である。そして図8は、図7の側面図である。ここで超音波振動付与体1は、フロント部材16、超音波発生素子18、リア部材17から構成されている。そして超音波発生素子18は、圧電セラミック6である。
【0037】
回転軸に円盤状の切断ブレードを取り付け、回転させながら被加工物2を切断または溝入れする切断装置に超音波振動付与体1を用いたものについて説明する。
【0038】
切断ブレードは、金属製の円形基板に電着砥粒層を形成することにより作成する。電着砥粒層の形成は、硫酸ニッケル液にダイヤモンド砥粒が混入したメッキ液中で円形基板にニッケルメッキすることによるものである。
【0039】
被加工物2は長さ50mm、幅35mmそして厚さ12mmの着磁前のネオジ鉄のブロックである。これを幅方向に1.2mmの板厚の薄板を得るために、1.0mm厚の切断ブレードより切断加工する。切断加工により長さ35mm、幅1mmそして厚さ12mmの薄板を作成する。切断装置の加工台に図示しない電磁チャック装置により鋼製の取付け台15を固定する。
【0040】
超音波振動付与体1は、以下のように作成する。長さ50mm、幅35mmそして厚さ1mmのリア部材17であるガラス繊維複合材料板に長さ38mm、幅22mmそして厚さ1mmの超音波発生素子18である圧電セラミック6を2枚エポキシ樹脂により接合する。そして、圧電セラミック6の表面に同じく長さ50mm、幅35mmそして厚さ1mmのフロント部材16であるガラス繊維複合材料板をエポキシ樹脂により接合する。
【0041】
一方、ダミー部材14である長さ50mm、幅35mmそして厚さ0.5mmのガラス繊維複合材料板の両面にワックスを塗り、片面に長さ50mm、幅35mmそして厚さ12mmの着磁前のネオジ鉄を接着し、他方の面を超音波振動付与体に接着する。なお、ここで用いたワックスは約80℃に加熱することでネオジ鉄のブロックをダミー部材14であるガラス繊維複合材料板から外すことができる。ワックスのような接着材を用いることで、超音波振動付与体1を再使用することができるので切断加工コストを安価にできる。
【0042】
次にこの超音波振動付与体1を用いた切断装置の動作例について説明する。鋼製の取付け台15と超音波振動付与体1を、エポキシ接着剤を用いて接着する。超音波振動付与体1にワックスによりダミー部材14と石英ガラス板を保持固定する。そして、切断装置の加工台4に鋼製の取付け台15を電磁チャック装置により取付ける。
【0043】
ネオジ鉄のブロックが接着された超音波振動付与体1を構成する圧電セラミック6と超音波発振回路を電気的に接続する。そして、約36KHzの交流電圧を印加する。超音波振動付与体1は超音波振動する。
【0044】
次に切削液を供給しつつ、切断ブレードを約毎分5000回転させつつ下降させ、加工台4を切断方向に移動させることによりネオジ鉄のブロックを切断加工する。なお、切断深さは、12.1mmであり、長さ50mm、幅35mmそして厚さ0.5mmのダミー部材14であるガラス繊維複合材料板には、0.1mmの溝ができた。
【0045】
ネオジ鉄のブロックに接合した超音波振動付与体1の超音波振動により、ダミー部材14を介してネオジ鉄のブロックは、超音波振動する。この超音波振動により、切断溝10の中の切削液が超音波振動することにより、ネオジ鉄のブロックの切断溝10の中の切断屑の排出が容易になり、切断加工の摩擦抵抗が小さくなる。
【0046】
またネオジ鉄のブロックの超音波振動により、切断ブレードとネオジ鉄のブロックの接触時間は小さくなり、切断ブレードとネオジ鉄のブロックの摩擦による発熱は減少する。このため切断ブレードの寿命は長くなり、かつネオジ鉄のブロックのチッピングは少なくなり、加工精度は高くなる。そして、切断ブレードとネオジ鉄のブロックの摩擦が、ほぼ半減するため加工速度を2倍にすることも可能である。
【0047】
図9は本発明の第4の構成を示す斜視図である。ここで超音波振動付与体1は、フロント部材16、超音波発生素子18から構成されている。そして超音波発生素子18は、圧電セラミック6である。
【0048】
被加工物2は50mm角、高さ100mmの炭化珪素である。この上面を研磨するため、グラインダ装置に取り付けた円環状の砥石を用いる。グラインダ装置の回転する加工台に図示しない電磁チャック装置により鋼製の取付け台15を固定する。取付け台15に多孔質金属製ブロック12を溶接により接合する。一方、超音波振動付与体1は、長さ45mm、幅25mmそして2mm厚さの超音波発生素子18である圧電セラミック6に長さ45mm、幅25mmそして厚さ1mmのフロント部材16であるガラス繊維複合材料板13をエポキシ樹脂により接合して組み立てた。そしてこの超音波振動付与体1を炭化珪素の側面に4個の超音波振動付与体1を、ワックスを用いて接着する。ここで、フロント部材16は、超音波振動付与体1の再使用及び被加工物2との音響インピーダンスのマッチングを考慮して用いた。また、被加工物2との音響インピーダンスのマッチングを考慮して超音波振動付与体1は、リア部材17、超音波発生素子18から構成される場合もある。
【0049】
前記ワックスは約80℃に加熱することで炭化珪素を超音波振動付与体1から外すことができる。ワックスのような接着材を用いることで、超音波振動付与体1を再使用することができるので研磨コストを安価にできる。
【0050】
次にこの超音波振動付与体1を用いたグラインダ装置の動作例について説明する。フライス盤の毎分10回転する加工台に鋼製の取付け台15を電磁チャック装置により取付ける。
【0051】
超音波振動付与体1を構成している圧電セラミック6と超音波発振回路をスリップリングを用いて電気的に接続する。そして、約40KHzの交流電圧を印加する。超音波振動付与体1は超音波振動する。
【0052】
次に冷却液を供給しつつ、グラインダ装置に取り付けた砥石を毎分2500回転させつつ下降させ、炭化珪素を研磨加工する。
【0053】
超音波振動付与体1の超音波振動により、炭化珪素は、超音波振動する。この振動により、砥石と炭化珪素の接触時間は小さくなり、砥石と炭化珪素の摩擦により発熱は減少する。このため砥石の寿命は長くなり、かつ炭化珪素の加工精度は高くなる。そして、砥石と炭化珪素の摩擦が、ほぼ半減するため加工速度を2倍にすることも可能である。
【0054】
なお超音波振動付与体は、振動数が15KHz以下になってしまうと騒音が大きくなってしまい、100KHzを超えると被加工物の振動振幅は小さなり、超音波加工の効果が薄れる。
【0055】
したがって、超音波振動付与体は、印加する交流電圧の周波数が15KHz以上、100KHz以下であることが望ましい。
【0056】
本発明の最も大きな特徴は、被加工物のどの位置にも超音波振動付与体を接合することができることである。
【符号の説明】
【0057】
1 超音波振動付与体
2 被加工物
3 保持治具
4 加工台
5 ワイヤ
6 圧電セラミック
7 表電極
8 折り返し電極
9 加工用ローラ
10 切断溝
11 超音波振動
12 多孔質金属製ブロック
13 ガラス繊維複合材料板
14 ダミー部材
15 取付け台
16 フロント部材
17 リア部材
18 超音波発生素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械加工装置により機械加工される被加工物に、超音波振動を付与する超音波振動付与体を接合していることを特徴とする。
【請求項2】
機械加工装置により機械加工される被加工物に、ダミー部材と超音波振動付与体を接合し、被加工物とダミー部材を機械加工することを特徴とする。
【請求項3】
超音波振動付与体に超音波発振回路を電気的に接続し、15KHz以上100KHz未満の電圧を印加する請求項1及び請求項2に記載の超音波振動付与体。
【請求項4】
超音波振動付与体が超音波発生素子であること、超音波振動付与体が超音波発生素子とフロント部材であること、超音波振動付与体が超音波発生素子とリア部材であること、超音波振動付与体が超音波発生素子とフロント部材とリア部材であることのいずれかの構成であることを特徴とする請求項1、2及び請求項3に記載の超音波振動付与体。
【請求項5】
リア部材を、機械加工装置の加工台に接触させ、取付けることを特徴とする請求項4に記載の超音波振動付与体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−31382(P2011−31382A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194774(P2009−194774)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(500222021)
【Fターム(参考)】