説明

超音波探触子およびこれを含む非破壊検査装置、さらに超音波探触子の製造方法

【課題】 製造が容易であって、簡易な構成により、超音波モジュールをハウジング内において正確にセンタリングを行うことができる超音波探触子およびこれを含む非破壊検査装置、さらに超音波探触子の製造方法を提供すること。
【解決手段】 超音波を発生させる振動子26が支持体25によって支持されて構成される超音波モジュール23と、この超音波モジュール23を内部に収納する筒状の収納部16とを備える超音波探触子であって、前記支持体25の外壁と前記収納部16の内壁との間に、前記超音波モジュール23を前記収納部16と同芯状に設置するためのスペーサ部材29が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を発生させる超音波探触子およびこれを含む非破壊検査装置、さらに超音波探触子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、探傷のための非破壊検査装置には、被検体に押し当てて傷を検出する探触子が設けられており、これら探触子の中には、超音波を発して、この超音波の反射の変化によって傷を検出する超音波探触子が知られている。
この超音波探触子として、上面に開口部が形成されたハウジング内に、超音波送受信面を有する超音波モジュールを設置したものが紹介されている(例えば、特許文献1参照。)。そして、超音波モジュールに形成された係合部と、ハウジング内に形成された被係合部とを係合させることにより、ハウジング内において、超音波送受信面に直交する方向の超音波モジュールの位置が決められて、超音波送受信面が開口部から露出するようになっている。
【0003】
ここで、超音波探触子を使って探傷する際に、傷の位置を正確に特定するためには、超音波モジュールの位置を特定する必要があるが、この超音波モジュールの位置は、ハウジングを基準として特定されるのが一般的である。そのため、超音波モジュールを、ハウジング内の中央に正確にセンタリングして設置する必要がある。
【特許文献1】特開平10−286236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような超音波探触子によると、係合部、被係合部および開口部などを高精度に形成するだけでなく、係合部と被係合部とを正確に係合させる必要があるため、センタリング精度が出しにくく、それら部品の製造も極めて困難になるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、製造が容易であって、簡易な構成により、超音波モジュールをハウジング内において正確にセンタリングを行うことができる超音波探触子およびこれを含む非破壊検査装置、さらに超音波探触子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、超音波を発生させる振動子が支持体によって支持されて構成される超音波モジュールと、この超音波モジュールを内部に収納する筒状の収納部とを備える超音波探触子であって、前記支持体の外壁と前記収納部の内壁との間に、前記超音波モジュールを前記収納部と同芯状に設置するためのスペーサ部材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この発明に係る超音波探触子においては、支持体の外壁と収納部の内壁との間のスペーサ部材によって、超音波モジュールが、収納部内において、収納部と同芯状に設置される。
これにより、従来のように被係合部等を設けることなく、収納部内において超音波モジュールを容易にセンタリング(収納部横断面の中央に設置)することができる。
なお、超音波モジュールは中心軸線を有する形状とされ、ここで「同芯状」とは、その超音波モジュールの中心軸線と収納部の軸線とが一致して配されることをいう。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の超音波探触子において、前記スペーサ部材が、前記支持体の外壁に設けられた突起部を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明に係る超音波探触子においては、支持体の外壁に突起部が設けられ、この突起部が収納部の内壁に接することにより、支持体が同芯状に設置される。
これにより、簡易な構成により超音波モジュールを容易にセンタリングすることができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の超音波探触子において、前記突起部が、前記支持体の周方向に複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る超音波探触子においては、突起部が支持体の周方向に複数設けられ、これら複数の突起部が収納部の内壁に接することにより、超音波モジュールが同芯状に設置される。
これにより、簡易な構成により確実に超音波モジュールをセンタリングすることができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項2または請求項3に記載の超音波探触子において、前記支持体の外壁に、前記振動子に電圧を印加するための配線基板が設けられており、前記配線基板が、前記突起部によって前記外壁上の位置決めがなされていることを特徴とする。
【0013】
この発明に係る超音波探触子においては、突起部を基準にして外壁上において配線基板が位置決めされる。
これにより、配線基板の取り付けを精度よく容易に行うことができる。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波探触子において、前記支持体が箱型に形成されており、前記収納部の筒孔の横断面形状が略矩形に形成されていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る超音波探触子においては、支持体が箱型に形成され、この支持体が、横断面形状を略矩形にした筒孔に設置される。
これにより、超音波モジュールが、収納部内において、中心軸線周りに相対回転するのを防止することができ、その超音波モジュールを安定的かつ容易に収納することができる。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波探触子において、前記支持体が略円柱状に形成されており、前記収納部の筒孔の横断面形状が略円形に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る超音波探触子においては、支持体が略円柱状に形成され、この支持体が、横断面形状を略円形にした筒孔に設置される。
これにより、超音波モジュールを収納部内に容易に組み込むことができる。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の超音波探触子において、前記収納部の内壁に、前記スペーサ部材と嵌合する嵌合穴が形成されていることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る超音波探触子においては、超音波モジュールを収納部内に収納すると、スペーサ部材が嵌合穴に嵌合する。
これにより、超音波モジュールが、収納部内において、中心軸線周りに相対回転するのを防止することができ、その超音波モジュールを安定的に収納することができる。
【0020】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の超音波探触子において、互いに嵌合する複数組の前記スペーサ部材および前記嵌合穴のうち、少なくとも一組の嵌合寸法が、他の組の嵌合寸法と異なるように設定されていることを特徴とする。
【0021】
この発明に係る超音波探触子においては、少なくとも一組の嵌合寸法が、他の組の嵌合寸法と異なっているため、組み込み前の超音波モジュールを周方向に回転させてずらすと、その超音波モジュールは収納部内に組み込むことができなくなる。
これにより、収納部内における超音波モジュールの周方向の相対回転位置が決められる。そのため、超音波モジュールはその相対回転位置が誤って組み込まれることなく、その結果、組み込み作業効率を向上させることができる。
【0022】
請求項9に係る発明は、請求項7に記載の超音波探触子において、互いに嵌合する前記スペーサ部材および前記嵌合穴が複数組設けられており、前記収納部の周方向において、前記スペーサ部材および前記嵌合穴の組ごとの設置間隔が異なるように設定されていることを特徴とする。
【0023】
この発明に係る超音波探触子においては、スペーサ部材および嵌合穴の組ごとの設置間隔が異なっているため、組み込み前の超音波モジュールを周方向に回転させてずらすと、その超音波モジュールは収納部内に組み込むことができなくなる。
これにより、上記請求項8に係る発明と同様の効果を奏することができる。
【0024】
請求項10に係る発明は、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の超音波探触子において、前記収納部の内部において前記スペーサ部材によって前記収納部の長さ方向に移動可能に支持された前記超音波モジュールを、前記収納部の内部に固定する固定手段を備えることを特徴とする。
【0025】
この発明に係る超音波探触子においては、収納部の内部において長さ方向に移動可能に支持された超音波モジュールが、固定手段により、収納部の内部に固定される。
これにより、収納部内に超音波モジュールを容易に組み込むことができ、所望の位置において容易に固定することができる。
【0026】
請求項11に係る発明は、請求項10に記載の超音波探触子において、前記固定手段が、前記支持体に形成されたテーパー部と、前記収納部の内壁および前記テーパー部の間に設けられるくさび部材とを備えることを特徴とする。
【0027】
この発明に係る超音波探触子においては、超音波モジュールが収納部内に組み込まれた状態で、テーパー部にくさび部材を押し付けることにより、超音波モジュールが収納部内に固定される。
これにより、簡易な構成により、確実に超音波モジュールを所望の位置に固定することができる。
【0028】
請求項12に係る発明は、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の超音波探触子において、平坦面を有するベース部材の前記平坦面上に前記収納部を載置して、前記スペーサ部材によって前記収納部の長さ方向に移動可能に支持された前記超音波モジュールを、前記平坦面に押し付けることにより、前記超音波モジュールの前記長さ方向の位置決めがなされていることを特徴とする。
【0029】
この発明に係る超音波探触子においては、平坦面に載置された収納部内に、超音波モジュールを組み込んで、この超音波モジュールを平坦面に押し付ける。すると、収納部の開口端と超音波モジュールとが平坦面上に揃えられる。
これにより、超音波モジュールの前記長さ方向の位置決めを精度よく容易に行うことができる。
【0030】
請求項13に係る発明は、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の超音波探触子と、この超音波探触子を操作するための本体部とを備えることを特徴とする。
【0031】
これにより、上記請求項1から請求項12のいずれか一項に係る発明と同様の効果を奏することができる。
【0032】
請求項14に係る発明は、超音波を発生させる振動子が支持体によって支持されて構成される超音波モジュールと、この超音波モジュールを内部に収納する筒状の収納部とを備える超音波探触子の製造方法において、前記収納部と同芯状に前記超音波モジュールを設置するための突起部を前記支持体の外壁に形成する形成加工工程と、この形成加工工程によって形成された突起部を有する前記支持体に、前記振動子を取り付けて超音波モジュールを組み立てる組立工程と、平坦面を有するベース部材の前記平坦面上に、前記収納部を載置する載置工程と、この載置工程によって載置された収納部内に、前記組立工程によって組み立てられた超音波モジュールを組み込んで前記平坦面に押し付ける組み込み工程と、この組み込み工程によって組み込まれ押し付けられた超音波モジュールを、前記収納部内に固定する固定工程とを備えることを特徴とする。
【0033】
この発明に係る超音波探触子の製造方法においては、形成加工工程により、支持体の外壁に突起部が形成され、組立工程により、振動子が支持体に取り付けられて超音波モジュールが得られる。そして、載置工程により、ベース部材の平坦面に収納部が載置され、組み込み工程により、超音波モジュールが収納部内に組み込まれ、平坦面に押し付けられる。このとき、超音波モジュールと収納部が平坦面上に揃えられる。さらに、固定工程により、超音波モジュールが収納部内に固定される。
これにより、超音波モジュールの収納部内における長さ方向の位置を、精度よく容易に位置決めすることができ、製造時における作業負担を軽減させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、支持体の外壁と収納部の内壁との間にスペーサ部材を設ける構成としたことから、これら部品の製造を容易にするとともに、簡易な構成によって精度よく容易に超音波モジュールを収納部内でセンタリングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(実施例1)
以下、本発明の第1実施例における非破壊検査装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施例としての非破壊検査装置1を示したものである。
この非破壊検査装置1は、被検体に押し当てて探傷を行うプローブ(超音波探触子)2と、このプローブ2を操作するための箱型の操作本体部(本体部)3とを備えている。
【0036】
操作本体部3の前面中央には、探傷のための画像を映し出すモニタ6が設けられており、このモニタ6の近傍には各種の役割を担うスイッチ7が設けられている。操作本体部3の上面には、様々な入力機器および出力機器を接続するための接続部9が設けられている。
また、プローブ2は、箱型のプローブ本体11とケーブル12とを備えている。ケーブル12の一端にはプローブ本体11が取り付けられている。一方、ケーブル12の他端には、接続コネクタ14が設けられており、この接続コネクタ14を介してケーブル12の他端が接続部9に着脱可能に取り付けられている。これにより、ケーブル12を介して、プローブ本体11と操作本体部3とが接続されている。このプローブ本体11の製造方法は後述する。
【0037】
プローブ本体11は、図2に示すように、ステンレス鋼からなるハウジング(収納部)16を備えている。このハウジング16は、軸線Lを中心として延びる有底角筒状をなしており、その側壁の一つにはケーブル12を通すための円形の開口部20が形成されている。この開口部20には、ケーブル12を固定するためのクランプ17が設けられている。また、ハウジング16内は、図4に示すように、4つの内側壁(内壁)18が互いに直交して配置された構成とされており、ハウジング16内には、これら4つの内側壁18によって区画された空洞部(筒孔)19が設けられている。さらに、隣り合う内側壁18の連接部分には外方に向けてR状に緩やかに形成されたR壁部22が設けられている。これにより空洞部19は、その横断面形状が略矩形とされ、その四隅はR状に緩やかになっている。そして、R壁部22の最も外側に配される最外点22pから軸線Lに到る仮想線dの長さ寸法はすべて同一になるように構成されている。
【0038】
この空洞部19内には、超音波を発生させる超音波モジュール23が設けられている。
超音波モジュール23は、図3に示すように、中心軸線Mの周りに箱型に形成された支持体25を備えている。支持体25は、背面負荷材として超音波を吸収する材質からなっている。例えば、支持体25は、ポリウレタン樹脂に酸化金属粉末を混合して注型し熱硬化することにより形成されている。さらに、上記酸化金属としては、三酸化タングステンの粉末を重量比でポリウレタン樹脂1に対して3倍を混合して使用している。
【0039】
支持体25の中心軸線M周りの周方向の四隅には、外方に向けて突出する突起部(スペーサ部材)29が設けられている。これら突起部29は、支持体25の四隅の上端から、中心軸線M方向に沿った支持体25の高さ方向の略中央にわたって延ばされており、それら四隅の下端側は突起部29のないフリーな状態になっている。また、突起部29は上面視して扇状に形成されており、その曲線部分には中心軸線Mに沿って延びるR状に形成されたR面30が設けられている。これら突起部29の突出寸法は全て同一に設定されており、すなわち、図4に示すように、R面30の最突出点30pから中心軸線Mに到る仮想線eの長さ寸法は全て同一になるように構成されている。
【0040】
支持体25の側壁部(外壁)32は、正面視して、幅方向Wの幅寸法が、突起部29が設けられた上端側で小さく、下端側で大きい凸形状をなしており、それら上端側と下端側の境界には側壁段差部33が設けられている。
さらに、側壁部32の一つには、例えばフレキシブル基板やリジット基板等のプリント配線板から構成された電極配線部材(配線基板)35が取り付けられている。この電極配線部材35は、側壁部32に合わせた凸形状をなしており、上端側と下端側の境界に基板段差部36が設けられている。そして、この電極配線部材35は、突起部29の下端に基板段差部36を押し付けることにより、側壁部32上の位置が決められている。つまり、突起部29は、電極配線部材35の側壁部32上の位置決めを行う位置決め手段として機能するものである。
【0041】
さらに支持体25の底面には、中心軸線Mを中心に合わせて圧電振動子(振動子)26が設けられている。圧電振動子26は、電圧を印加することにより変形するようになっており、この圧電振動子26が振動することにより、超音波を送受信するようになっている。さらに圧電振動子26の底面には、被検体に接触させる音響整合層27が設けられている。この音響整合層27は、被検体と圧電振動子26との間の音響マッチングをとるとともに、圧電振動子26を保護するためのものである。
このような構成のもと、圧電振動子26を振動させて超音波を発生させると、支持体25側に向かう超音波は支持体25により吸収、減衰させられ、音響整合層27側に向かう超音波は被検体に向かうようになっている。
【0042】
このような超音波モジュール23が、空洞部19内においてハウジング16と同芯状に配置されている。すなわち、超音波モジュール23は、図4に示すように、それぞれのR壁部22とR面30とを接触させることにより、仮想線dと仮想線eとがそれぞれ重ねられ、軸線Lと中心軸線Mとが一致するようにして配置されている。つまり、超音波モジュール23は、空洞部19内において、ハウジング16の横断面略中央に配置されている。
【0043】
さらに、図2に示すように、ベース部材40の平坦面39上に載置されたハウジング16内に、超音波モジュール23を組み込んで、この超音波モジュール23を平坦面39に押し付けることにより、平坦面39を基準面として超音波モジュール23とハウジング16の開口端とが揃えられている。すなわち、ベース部材40は、ハウジング16内において、軸線L方向における超音波モジュール23の位置を決める位置決め手段として機能するものである。
【0044】
次に、プローブ本体11の製造方法について、その全工程のうちの特に超音波モジュール23をハウジング16内に設置する工程を中心として説明する。
まず、図2に示すように、形成加工工程により、支持体25と上記の突起部29とを型により一体的に形成する。そして、組立工程により、支持体25に圧電振動子26と音響整合層27を取り付ける。
【0045】
さらに、側壁部32に電極配線部材35を以下のようにして取り付ける。すなわち、側壁部32に接着剤等を塗布した後、基板段差部36を突起部29の下端に押し付ける。そして、そのまま電極配線部材35の裏面を側壁部32に密着させる。これにより、電極配線部材35の側壁部32上の位置が容易に決められて固定される。
そして、ケーブル12を開口部20に通して、はんだ付けにより各導線を電極配線部材35に接続する。このとき、側壁部32の下端側には突起部29が設けられておらず、フリーな状態になっているため、はんだ付けを容易にすることができる。
【0046】
さらに、載置工程により、ハウジング16を、軸線Lとベース部材40の延在方向とが直交するように、平坦面39上に縦に載置する。そして、この載置されたハウジング16内に、組み込み工程により、超音波モジュール23を組み込む。このとき、R壁部22とR面30とを接触させることにより、超音波モジュール23が、ハウジング16と同芯状に、かつ軸線L方向に移動可能に支持される。この超音波モジュール23を平坦面39に押し付ける。これによって、平坦面39を基準面として、超音波モジュール23とハウジング16の開口端とが容易に揃えられる。
【0047】
この揃えられた状態で、空洞部19内に接着剤を流し込むことにより、超音波モジュール23を固定する。このとき、側壁部32の下端側には突起部29が設けられておらず、フリーな状態になっているため、接着剤が流れやすくなる。
そして、ハウジング16に蓋部16aを接着して、上記のようなプローブ本体11が得られる。
【0048】
次いで、このように構成された本実施例における非破壊検査装置1の作用について説明する。
まず、プローブ2を操作本体部3に取り付けて、プローブ本体11を被検体内に挿入する。そして、所定のスイッチ7を押圧することにより、不図示の電源回路からケーブル12を介して電極配線部材35を経て圧電振動子26に電圧が印加される。すると、圧電振動子26が振動し、被検体内に向けて超音波が発せられる。この超音波は被検体に反射させられエコーとして圧電振動子26を振動させる。これにより、超音波が受信され、モニタ6にその受信状態が映し出される。そして、モニタ6に映し出される画像を見ながら探傷を行い、探傷が終わると検査結果に応じて所定の処置が行われる。
【0049】
ここで、探傷の際に傷の位置を正確に特定するためには、超音波モジュール23を、ハウジング16内の中央に正確にセンタリングして設置する必要がある。
本実施例においては、以下のようにして、容易にセンタリングが行われる。
すなわち、超音波モジュール23をハウジング16内に組み込むと、R壁部22とR面30とがそれぞれ接触する。そのため、仮想線dと仮想線eとがそれぞれ一致するように重ね合わされる。これにより、中心軸線Mと軸線Lとが一致するように配され、超音波モジュール23がハウジング16と同芯状にセンタリングされて配置される。
【0050】
以上より、本実施例における非破壊検査装置1によれば、R壁部22とR面30とを接触させるだけで、超音波モジュール23をハウジング16内に容易にセンタリングすることができる。また、ハウジング16は有底角筒状に形成され、その内側壁18に接触させる突起部29を設けた構成としたことから、従来のように被係合部等を設ける必要がなくなり、それら部品を安価かつ容易に製造することができる。
また、突起部29が支持体25の周方向の四隅に設けられていることから、超音波モジュール23を、ハウジング16内において安定して確実に支持することができる。
【0051】
また、突起部29の下端に基板段差部36を押し付けるだけで、電極配線部材35を側壁部32に容易かつ精度よく取り付けることができる。
さらに、支持体25が箱型に形成され、かつ空洞部19の横断面形状が略矩形にされていることから、ハウジング16内において、超音波モジュール23が中心軸線M周りにぶれることなく、安定的かつ容易に超音波モジュール23を支持することができる。
さらに、平坦面39に載置されたハウジング16内に、超音波モジュール23を組み込んで、平坦面39に押し付けるだけで、超音波モジュール23の軸線L方向の位置決めを精度よく容易に行うことができる。
また、プローブ2の製造時においても、R壁部22とR面30とを接触させるだけで、超音波モジュール23をハウジング16内に容易にセンタリングすることができることから、製造時における作業負担を大幅に軽減させることができる。
【0052】
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図5から図7は、本発明の第2の実施例を示したものである。
図5から図7において、図1から図4に記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施例と上記第1の実施例とは基本的構成は同一であり、以下の点において異なるものとなっている。
【0053】
すなわち、本実施例における超音波モジュール23は、支持体25の側壁部32に、その上端側が斜めに切り掛れたテーパー部42が設けられて構成されている。そして、このテーパー部42にくさび43が嵌め合わされるようになっている。
テーパー部42の両側には突起が設けられているが、これらは電極配線部材35の位置決め手段として機能させるものであり、または内側壁18に接触させることにより、ハウジング16内において、超音波モジュール23を安定して移動させるようにするためのものである。なお、このテーパー部42の両側の突起はなくてもよい。その場合、テーパー部42と対向して配置される側壁部32に電極配線部材35を取り付けるようにすれば、両側の突起部29により、その位置決めも容易に行うことができる。
【0054】
このような構成のもと、ハウジング16内に超音波モジュール23を組み込んで、R壁部22とR面30とを接触させる。そして、超音波モジュール23を所定の位置に配し、その位置においてテーパー部42にくさび43を嵌め合わせる。さらに、図6および図7に示すように、くさび43を押し込むと、くさび43が内側壁18とテーパー部42との間に配されて、超音波モジュール23が、クランプ17の設けられた内側壁18側に押圧される。そのため、R壁部22とR面30とが接触した状態で、超音波モジュール23がハウジング16内において固定される。このとき、R壁部22とR面30とが接触していることから、超音波モジュール23がハウジング16内においてセンタリングされた状態になる。すなわち、くさび43およびテーパー部42は固定手段として機能するものである。
【0055】
以上より、テーパー部42にくさび43を嵌め合わせるだけで、超音波モジュール23をハウジング16内の所望の位置に容易に固定することができる。
なお、図5から図7においては、上記第1実施例におけるケーブル12を省略しているが、実際にはケーブル12が接続されているのは言うまでもない。
【0056】
(実施例3)
次に、本発明の第3の実施例について説明する。
図8および図9は、本発明の第3の実施例を示したものである。
本実施例におけるプローブ本体11は、有底円筒状に形成されたハウジング16を備えている。ハウジング16内には、図9に示すように、空洞部19を作る円状に形成された内側壁18が設けられ、これにより空洞部19は、その横断面形状が略円形とされている。内側壁18には、周方向に同間隔を空けて凹部(嵌合穴)48が設けられている。そして、凹部48の最も深い点48pから軸線Lに到る仮想線dの長さ寸法はすべて同一になるように構成されている。
【0057】
また、超音波モジュール23は、略円柱状の支持体25を備えている。この支持体25の側壁部32には、周方向に同間隔を空けて、外方に向けて突出する突起部29が設けられている。これら突起部29の先端は、R状に緩やかにして形成されており、それら突起部29の最突出点29pから中心軸線Mに到る仮想線eの長さ寸法は全て同一になるように構成されている。
【0058】
このような構成のもと、突起部29を凹部48にそれぞれ嵌合させて、超音波モジュール23をハウジング16内に組み込むと、超音波モジュール23は、突起部29と凹部48との嵌合によって軸線L方向に移動可能に支持される。さらに、突起部29と凹部48とを嵌合させると、突起部29の最突出点29pと凹部48の最も深い点48pとが一致するため、仮想線dと仮想線eとがそれぞれ一致するように重ね合わされる。これにより、中心軸線Mと軸線Lとが一致するように配され、超音波モジュール23がハウジング16と同芯状にセンタリングされて配置される。
【0059】
以上より、上記第1の実施例と同様の効果を奏することができるだけでなく、突起部29と凹部48とを嵌合させることにより、超音波モジュール23をハウジング16と同芯状に配置することができ、軸線L周りの超音波モジュール23のブレを防止し、超音波モジュール23を安定的に収納することができる。
また、支持体25が略円柱状に形成され、空洞部19の横断面形状が略円形にされていることから、超音波モジュール23をハウジング16内に容易に組み込むことができる。
なお、凹部48を設けるとしたが、これら凹部48はなくても構わない。これにより、超音波モジュール23をさらに容易にハウジング16内に組み込むことができる。
【0060】
(実施例4)
次に、本発明の第4の実施例について説明する。
図10は、本発明の第4の実施例を示したものである。
本実施例においては、一つの突起部29aの突出寸法を、他の二つの突起部29bの突出寸法より大きくし、さらに、一つの凹部48aの深さ寸法を他の二つの凹部48bの深さ寸法より大きくして構成されるものである。すなわち、これら一つの突起部29aと一つの凹部48aとが嵌合される嵌合寸法gが、他の二つの嵌合寸法hよりも大きく設定されている。
【0061】
このような構成のもと、超音波モジュール23をハウジング16内に組み込際には、一つの突起部29aと一つの凹部48aとを嵌合させ、他の二つの突起部29bと他の二つの凹部48bとをそれぞれ嵌合させる。このとき、超音波モジュール23を周方向に回転させてずらすと、一つの突起部29aと他の二つの凹部48bとは、寸法が異なるため、嵌合することができない。すなわち、所定の突起部29a,29bと凹部48a,48bとを嵌合させないと、超音波モジュール23をハウジング16内に組み込むことができない。
【0062】
以上より、ハウジング16内における超音波モジュール23の周方向の相対回転位置を一意的に決めることができる。そのため、超音波モジュール23を、その相対回転位置を間違えて組み込むことなく、組み込み作業効率を向上させることができる。
【0063】
(実施例5)
次に、本発明の第5の実施例について説明する。
図11は、本発明の第5の実施例を示したものである。
本実施例においては、突起部29a,29bおよび凹部48a,48bの周方向の設置間隔が異なって構成されたものである。すなわち、一つの突起部29aから他の二つの突起部29bまでのそれぞれの周方向の距離(設置間隔)iが、他の二つの突起部29bの周方向の間の距離(設置間隔)jよりも大きく設定されている。また、これに応じて、一つの凹部48aから他の二つの凹部48bまでのそれぞれの周方向の距離iが、他の二つの凹部48bの周方向の間の距離jよりも大きく設定されている。これにより、所定の突起部29a,29bと凹部48a,48bとを嵌合させないと、超音波モジュール23をハウジング16内に組み込むことができないようになっている。
【0064】
以上より、上記第4の実施例と同様の効果を奏することができる。
なお、上記第4および第5の本実施例においては、突起部29a,29bおよび凹部48a,48bを3組づつ設けているが、これに限ることはなく、その設置数や設置位置は適宜変更可能である。
【0065】
なお、上記第1から第5の実施例においては、一体成形により突起部29が設けられるとしたが、これに限ることはなく、突起部29を別部材として取り付けるようにしてもよい。
また、支持体25に突起部29を設けるとしたが、これに限ることはなく、内側壁18に設けるようにしてもよい。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る非破壊検査装置の第1の実施例を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す超音波モジュールをハウジング内に組み込む様子を示す説明図である。
【図3】図1に示す超音波モジュールを示す斜視図である。
【図4】図1に示すプローブ本体を示す透視平面図である。
【図5】本発明に係る非破壊検査装置の第2の実施例の要部を示す概略構成図である。
【図6】図5に示すプローブ本体を示す断面図である。
【図7】図5に示すプローブ本体を示す透視平面図である。
【図8】本発明に係る非破壊検査装置の第3の実施例の要部を示す概略構成図である。
【図9】図8に示すプローブ本体を示す透視平面図である。
【図10】本発明に係る非破壊検査装置の第4の実施例の要部を示す透視平面図である。
【図11】本発明に係る非破壊検査装置の第5の実施例の要部を示す透視平面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 非破壊検査装置
2 プローブ(超音波探触子)
3 操作本体部(本体部)
16 ハウジング(収納部)
18 内側壁(内壁)
19 空洞部(筒孔)
23 超音波モジュール
25 支持体
26 圧電振動子(振動子)
29 突起部(スペーサ部材)
32 側壁部(外壁)
35 電極配線部材(配線基板)
39 平坦面
40ベース部材
42 テーパー部(固定手段)
43 くさび(固定手段)
48 凹部(嵌合穴)
g 一組の嵌合寸法
h 他の組の嵌合寸法
i,j 距離(設置間隔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発生させる振動子が支持体によって支持されて構成される超音波モジュールと、この超音波モジュールを内部に収納する筒状の収納部とを備える超音波探触子であって、
前記支持体の外壁と前記収納部の内壁との間に、前記超音波モジュールを前記収納部と同芯状に設置するためのスペーサ部材が設けられていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記スペーサ部材が、前記支持体の外壁に設けられた突起部を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記突起部が、前記支持体の周方向に複数設けられていることを特徴とする請求項2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記支持体の外壁に、前記振動子に電圧を印加するための配線基板が設けられており、前記配線基板が、前記突起部によって前記外壁上の位置決めがなされていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記支持体が箱型に形成されており、前記収納部の筒孔の横断面形状が略矩形に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記支持体が略円柱状に形成されており、前記収納部の筒孔の横断面形状が略円形に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記収納部の内壁に、前記スペーサ部材と嵌合する嵌合穴が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の超音波探触子。
【請求項8】
互いに嵌合する複数組の前記スペーサ部材および前記嵌合穴のうち、少なくとも一組の嵌合寸法が、他の組の嵌合寸法と異なるように設定されていることを特徴とする請求項7に記載の超音波探触子。
【請求項9】
互いに嵌合する前記スペーサ部材および前記嵌合穴が複数組設けられており、前記収納部の周方向において、前記スペーサ部材および前記嵌合穴の組ごとの設置間隔が異なるように設定されていることを特徴とする請求項7に記載の超音波探触子。
【請求項10】
前記収納部の内部において前記スペーサ部材によって前記収納部の長さ方向に移動可能に支持された前記超音波モジュールを、前記収納部の内部に固定する固定手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項11】
前記固定手段が、前記支持体に形成されたテーパー部と、前記収納部の内壁および前記テーパー部の間に設けられるくさび部材とを備えることを特徴とする請求項10に記載の超音波探触子。
【請求項12】
平坦面を有するベース部材の前記平坦面上に前記収納部を載置して、前記スペーサ部材によって前記収納部の長さ方向に移動可能に支持された前記超音波モジュールを、前記平坦面に押し付けることにより、前記超音波モジュールの前記長さ方向の位置決めがなされていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の超音波探触子と、
この超音波探触子を操作するための本体部とを備えることを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項14】
超音波を発生させる振動子が支持体によって支持されて構成される超音波モジュールと、この超音波モジュールを内部に収納する筒状の収納部とを備える超音波探触子の製造方法において、
前記収納部と同芯状に前記超音波モジュールを設置するための突起部を前記支持体の外壁に形成する形成加工工程と、
この形成加工工程によって形成された突起部を有する前記支持体に、前記振動子を取り付けて超音波モジュールを組み立てる組立工程と、
平坦面を有するベース部材の前記平坦面上に、前記収納部を載置する載置工程と、
この載置工程によって載置された収納部内に、前記組立工程によって組み立てられた超音波モジュールを組み込んで前記平坦面に押し付ける組み込み工程と、
この組み込み工程によって組み込まれ押し付けられた超音波モジュールを、前記収納部内に固定する固定工程とを備えることを特徴とする超音波探触子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−180319(P2006−180319A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372841(P2004−372841)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】