説明

超音波洗浄方法及びその装置

【課題】 必要最小限のエネルギで、被洗浄物から取除かれて液体二酸化炭素に分散した汚染物質或いは液体二酸化炭素に溶解した汚染物質を効率良く分離し、液体二酸化炭素を清浄に保持したまま、被洗浄物を洗浄する。
【解決手段】 被洗浄物13が洗浄槽14に収容され、第1液相を形成する液体二酸化炭素11が洗浄槽14に貯留される。洗浄槽14の内部に超音波発振器16が設けられる。超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が超音波発振器16により上記液体二酸化炭素11を伝搬して被洗浄物13に衝突し、被洗浄物13から汚染物質が除去される。液体二酸化炭素11に溶解しない第2液相を形成しかつ極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体12が洗浄槽14に貯留され、第1液相の液体二酸化炭素11と第2液相の液体12が混合手段17により混合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、電気部品、自動車部品、金属部品、機械部品などの産業製品に用いられる部品を超音波により洗浄する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗浄技術は産業製品の仕上げに重要な技術であり、浸漬洗浄、超音波洗浄、光洗浄、高圧ウォータジェット洗浄、ウエットブラスト洗浄、超振動洗浄などの洗浄技術が知られている。これらの洗浄技術には、水、水系洗浄剤、塩素系洗浄剤、炭化水素系洗浄剤、界面活性剤系洗浄剤、シリコーン系洗浄剤、フッ素系洗浄剤、臭素系洗浄剤、グリコール系洗浄剤、エステル系洗浄剤などが用いられている。
しかしながら、オゾン層保護法によって、1995年末に特定フロンなどの生産・使用が全廃となり、引き続きクロロフルオロカーボン(CFC)、ハロン、1,1,1-トリクロロエタン、ハイドロフルオロカーボン(HCFC)、臭化メチルが段階的に廃止されることとなっている。またグリーン購入法の制定により、電気産業及び自動車産業では、製品の原料や製造工程が環境にやさしいことが要求される段階にきており、上記洗浄剤のうち環境に負荷をかけるおそれのある洗浄剤は使用を避ける傾向が今後予想される。そのため水系洗浄剤への期待が相対的に高まることとなるけれども、水系洗浄剤を用いると、被洗浄物に錆を発生し易く、乾燥速度が遅く、更に廃水処理が必要となるなどの問題点があった。
【0003】
このような状況において、洗浄剤として二酸化炭素を用いる方法が注目され、超臨界二酸化炭素を用いた洗浄方法(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。この洗浄方法では、先ずキャビテーション生成手段を設けた洗浄室内に汚染物質を含む基体を配置し、約50℃より低い温度であって約10MPa或いはそれよりも低い圧力の液化二酸化炭素を洗浄室内に導入する。次に二酸化炭素ガスの臨界温度より低い温度で液化二酸化炭素を汚染物質を含む基体と接触させ、上記汚染物質を基体から取除くのに十分な時間だけ洗浄室内の液化二酸化炭素をキャビテーション生成手段に晒す。更にキャビテーション生成手段により基体から取除かれた汚染物質を、減圧又は濾過、或いは減圧及び濾過の双方により液体二酸化炭素から分離する。
【特許文献1】特開平6−254520号公報(請求項1、請求項2、段落[0007]、段落[0027])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の特許文献1に示された洗浄方法では、基体から取除かれた汚染物質を液体二酸化炭素から分離するために、汚染物質を含む液体二酸化炭素を減圧又は濾過するか、或いは減圧しかつ濾過するけれども、液体二酸化炭素を減圧して二酸化炭素ガスにする場合、この二酸化炭素ガスを再び液化するのに多くのエネルギを必要とする不具合があり、また液体二酸化炭素を濾過する場合、液体二酸化炭素に溶解した汚染物質を除去できない不具合があった。
更に、上記従来の特許文献1に示された洗浄方法では、キャビテーションの形成及び消滅を液体二酸化炭素内で行っているけれども、液体二酸化炭素の温度が30℃以上になると、キャビテーションの形成及び消滅を安定的に行わせることができない問題点があった。
本発明の第1の目的は、液体二酸化炭素を二酸化炭素ガスにすることなく必要最小限のエネルギで、被洗浄物から取除かれて液体二酸化炭素中に分散した汚染物質、或いは液体二酸化炭素に溶解した汚染物質を、液体二酸化炭素から確実に分離できる、超音波洗浄方法及びその装置を提供することにある。
本発明の第2の目的は、超音波によるキャビテーションの発生及び消滅を安定的に行わせることができるとともに、上記キャビテーションを速やかに消滅させることにより、衝撃波により汚染物質を被洗浄物から効率良く除去でき、また第1液相の液体二酸化炭素を常に清浄に保った状態で被洗浄物を洗浄できる、超音波洗浄方法及びその装置を提供することにある。
本発明の第3の目的は、洗浄槽内の第1液相の液体二酸化炭素と第2液相の液体とを効率良く混合できるとともに、第1液相の液体二酸化炭素を効率良く冷却でき、また洗浄槽内の第2液相の液体中に含まれる汚染物質の増加を防止できる、超音波洗浄装置を提供することにある。
本発明の第4の目的は、洗浄槽内の液体二酸化炭素を液体のまま第1液相貯留槽に移送でき、洗浄槽に残存する二酸化炭素ガスを効率良く液化して第1液相貯留槽に移送でき、更に洗浄槽内の液体二酸化炭素を別の洗浄槽に効率良く移送できる、超音波洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、第1液相を形成する液体二酸化炭素11を被洗浄物13とともに洗浄槽14に入れ、超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が上記液体二酸化炭素11を伝搬して被洗浄物13に衝突することにより、被洗浄物13から汚染物質を除去する超音波洗浄方法の改良である。
その特徴ある構成は、液体二酸化炭素11に溶解しない第2液相を形成しかつ極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体12を洗浄槽14に入れて、上記第1液相の液体二酸化炭素11と上記第2液相の液体12とを混合するところにある。
この請求項1に記載された超音波洗浄方法では、超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が上記液体二酸化炭素11を伝搬して被洗浄物13に衝突することにより、被洗浄物13に付着している汚染物質が除去される。この除去されて第1液相の液体二酸化炭素11に含まれる汚染物質は、第1液相の液体二酸化炭素11と第2液相の液体12とを混合することにより、第2液相の極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体12に吸収されるので、第1液相の液体二酸化炭素11を常に清浄に保ちながら、被洗浄物13を洗浄できる。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に極性水溶液が、水、アルカリ水溶液又は酸性水溶液であることを特徴とする。
この請求項2に記載された超音波洗浄方法では、極性水溶液がアルカリ水溶液である場合、第1液相の液体二酸化炭素に溶解している汚染物質の油分が第2液相のアルカリ水溶液と反応してアルカリ金属塩が形成されるので、上記汚染物質の油分を第1液相から第2液相に効率良く移行させることができる。また極性水溶液が酸性水溶液である場合、第1液相の液体二酸化炭素に分散している汚染物質の金属粒子が第2液相の酸性水溶液に溶解するので、上記汚染物質の金属粒子を第1液相から第2液相に効率良く移行させることができる。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に極性有機溶媒が、アルコール類、ケトン類、アミド類、アミン類及びエステル類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の極性有機溶媒であることを特徴とする。
この請求項3に記載された超音波洗浄方法では、極性有機溶媒が界面活性剤として作用し、第2液相の極性有機溶媒が第1液相の液体二酸化炭素中に溶解している油分と反応してミセルを形成するので、上記汚染物質の油分を第1液相から第2液相に効率良く移行させることができる。ここで、ミセルとは、表面活性剤溶液中に、ある濃度以上で生成する表面活性剤の分子又はイオンの集合体をいう。例えば、界面活性剤溶液が界面活性剤水溶液である場合、この水溶液の濃度が臨界ミセル濃度以上になると、活性剤分子が水に易溶の親水基を水相側に向けて配向し、水の難溶の疎水基部分を内側に向けて配向することによって、分子又はイオンが一定数集まった集合体をいう。
【0007】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1に示すように、洗浄槽14の上部に溜った二酸化炭素ガスからなる第1ガスに、分圧0.1〜12.8MPaの不活性ガス又は非凝縮ガスからなる第2ガスを添加することを特徴とする。
この請求項4に記載された超音波洗浄方法では、第2ガスを添加して洗浄槽14内の気相部を加圧することにより、液体二酸化炭素11にその飽和蒸気圧以上の静圧が作用するので、超音波により液体二酸化炭素11中に発生したキャビテーションを速やかに消滅させることができる。これにより上記キャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が液体二酸化炭素11を伝搬して被洗浄物13に速やかに衝突するので、この衝撃波により汚染物質を被洗浄物13から効率良く除去できる。
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図1に示すように、洗浄槽14内の温度を0℃より高くかつ30℃より低い温度に保ち、洗浄槽14内の液体二酸化炭素11の分圧を3.4〜7.2MPaに保つことを特徴とする。
この請求項5に記載された超音波洗浄方法では、洗浄槽14内の温度及び蒸気圧を上記範囲内にそれぞれ保つことにより、洗浄槽14内の液体二酸化炭素11が液体の状態に保たれる。
【0008】
請求項6に係る発明は、図1に示すように、被洗浄物13が収容されかつ第1液相を形成する液体二酸化炭素11が貯留された洗浄槽14と、この洗浄槽14の内部又は外部に設けられ超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が上記液体二酸化炭素を伝搬し被洗浄物13に衝突して被洗浄物13から汚染物質を除去する超音波発振器16とを備えた超音波洗浄装置の改良である。
その特徴ある構成は、液体二酸化炭素11に溶解しない第2液相を形成しかつ極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体12が洗浄槽14に貯留され、上記第1液相の液体二酸化炭素11と上記第2液相の液体12とが混合手段17により混合されるように構成されたところにある。
この請求項6に記載された超音波洗浄装置では、超音波発振器16を作動させて超音波を発生させると、この超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が第1液相の液体二酸化炭素11を伝搬して被洗浄物13に衝突し、これにより被洗浄物13に付着している汚染物質が除去される。この除去されて第1液相の液体二酸化炭素11に含まれる汚染物質は、第1液相の液体二酸化炭素11と第2液相の液体12とを混合手段17にて混合することにより、第2液相の極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体12に吸収されるので、第1液相の液体二酸化炭素11を常に清浄に保ちながら、被洗浄物13を洗浄できる。
【0009】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明であって、更に図1に示すように、洗浄槽14の内部又は外部に設けられ洗浄槽14内の温度を0℃より高くかつ30℃より低い温度に保持する冷却手段18を更に備えたことを特徴とする。
この請求項7に記載された超音波洗浄装置では、洗浄槽14内の温度を冷却手段18により上記範囲内に保つことにより、洗浄槽14内の液体二酸化炭素が液体の状態に保たれる。
請求項8に係る発明は、請求項6に係る発明であって、更に図1に示すように、混合手段17が洗浄槽14に設けられた撹拌機であり、この撹拌機17の撹拌羽根17cが洗浄槽内の第1液相と第2液相との界面又はその近傍に位置するように設けられたことを特徴とする。
この請求項8に記載された超音波洗浄装置では、撹拌羽根17cにより第1液相と第2液相を効率良く混合できるので、第2液相の極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体12が第1液相の液体二酸化炭素11に含まれる汚染物質を速やかに吸収できる。
請求項9に係る発明は、請求項6に係る発明であって、更に図2に示すように、超音波発振器16を洗浄槽14の底部に設けることにより、この超音波発振器16が混合手段を兼ねることを特徴とする。
この請求項9に記載された超音波洗浄装置では、超音波発振器16を作動させると超音波が発生し、この超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波により第1液相と第2液相の界面が撹拌されるので、撹拌機を用いなくても第1液相の液体二酸化炭素11と第2液相の液体12とを混合できる。また超音波によるキャビテーションは第2液相の液体12の方が第1液相の液体二酸化炭素11より効率良く生成されるところ、超音波が先ず第2液相の液体12中を伝播するので、この第2液相の液体12でキャビテーションを生成することが可能になり、第1液相の液体二酸化炭素11より効果的なキャビテーションの生成及び消滅を期待できる。
【0010】
請求項10に係る発明は、請求項7に係る発明であって、更に図1に示すように、冷却手段18が洗浄槽14の周壁の内側に沿って設けられかつ水の流通するコイル18aを有し、このコイル18aの内側に筒状のシュラウド19が設けられたことを特徴とする。
この請求項10に記載された超音波洗浄装置では、シュラウド19の内側に被洗浄物13を収容できるので、被洗浄物13の収容空間を大きく確保できるとともに、洗浄槽14内の液体二酸化炭素11にシュラウド19の内側及び外側を通る強制循環流を形成できるので、コイル18aと接触する液体二酸化炭素11の量が増大し、液体二酸化炭素11を効率良く冷却できる。
請求項11に係る発明は、請求項6に係る発明であって、更に図1に示すように、洗浄槽14の上部に溜った二酸化炭素ガスからなる第1ガスに、不活性ガス又は非凝縮ガスからなる第2ガスを添加する第2ガス添加手段21を更に備えたことを特徴とする。
この請求項11に記載された超音波洗浄装置では、第2ガス添加手段21により第2ガスを洗浄槽14の上部に溜った二酸化炭素からなる第1ガスに添加して洗浄槽14内の気相部を加圧することにより、液体二酸化炭素11にその飽和蒸気圧以上の静圧が作用するので、超音波により液体二酸化炭素11中に発生したキャビテーションを速やかに消滅させることができる。これにより上記キャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が液体二酸化炭素11を伝搬して被洗浄物13に速やかに衝突するので、この衝撃波により汚染物質を被洗浄物13から効率良く除去できる。
【0011】
請求項12に係る発明は、請求項6に係る発明であって、更に図1に示すように、第2液相の液体12を洗浄槽14から抜出して濾過し更に洗浄槽14に戻す第2液相循環手段22を更に備えたことを特徴とする。
この請求項12に記載された超音波洗浄装置では、汚染物質が分散する第2液相の液体12を第2液体循環手段22により洗浄槽14から抜出して濾過することにより第2液相の液体12から汚染物質を除去した後に、この汚染物質が除去された清浄な第2液相の液体12を第2液体循環手段22により再び洗浄槽14に戻すので、洗浄槽14内の第2液相の液体12中に含まれる汚染物質の増加を防止できる。
請求項13に係る発明は、請求項6に係る発明であって、更に図1に示すように、第2液相の液体12を所定量ずつ連続的に洗浄槽14から抜出すとともに清浄な別の第2液相の液体12を所定量ずつ連続的に洗浄槽14に供給する第2液相交換手段23を更に備えたことを特徴とする。
この請求項13に記載された超音波洗浄装置では、汚染物質が溶解する第2液相の液体12を第2液体交換手段23により洗浄槽14から抜出すとともに、清浄な別の第2液相の液体12を第2液体交換手段23により洗浄槽14に供給するので、洗浄槽14内の第2液相の液体12中に含まれる汚染物質の増加を防止できる。
【0012】
請求項14に係る発明は、請求項6に係る発明であって、更に図3に示すように、一端が洗浄槽14の上部に接続されたガス回収管48の他端が第1液相貯留槽41の上部に接続され、一端が洗浄槽14の下部に接続された第1液相給排管47の他端が分岐して第1液相貯留槽41の下部及び上部にそれぞれ接続され、ガス回収管48にコンプレッサ49及びガス冷却器50が設けられ、第1液相給排管47に第1液相給排ポンプ51が設けられたことを特徴とする。
この請求項14に記載された超音波洗浄装置では、被洗浄物13の洗浄が完了したとき、被洗浄物13を洗浄槽14から取出す前に、洗浄槽14内の液体二酸化炭素11を第1液相給排ポンプ51により第1液相貯留槽41に移送した後に、洗浄槽14に残存する二酸化炭素ガスをコンプレッサ49により圧縮しかつガス冷却器50により冷却し液化して第1液相貯留槽41に移送する。この結果、洗浄槽14内の液体二酸化炭素11をガス化することなく、液体のまま必要最小限のエネルギで第1液相貯留槽41に移送できる。
請求項15に係る発明は、請求項7に係る発明であって、更に図3に示すように、冷却手段18が洗浄槽14内に設けられかつ水の流通するコイル18aを有し、このコイル18aに0℃より高く30℃より低い冷水のみならず30〜100℃の温水が流通可能に構成されたことを特徴とする。
この請求項15に記載された超音波洗浄装置では、被洗浄物13の洗浄が完了したとき、被洗浄物13を洗浄槽14から取出す前に、冷却手段18のコイル18aに温水を流通させることにより、洗浄槽14内の圧力を第1液相貯留槽41内の圧力より高くする。これにより洗浄槽14内の液体二酸化炭素11を第1液相給排ポンプ51により第1液相貯留槽41に効率良く移送できるとともに、洗浄槽14に残存する二酸化炭素ガスをコンプレッサ49及びガス冷却器50により圧縮しかつ冷却し液化して第1液相貯留槽41に効率良く移送できる。
請求項16に係る発明は、請求項14に係る発明であって、更に図4に示すように、洗浄槽71,72が複数設けられ、これらの洗浄槽71,72が切換手段80を介して互いに並列に接続されるとともに第1液相貯留槽41に並列に接続されたことを特徴とする。
この請求項16に記載された超音波洗浄装置では、複数の洗浄槽71,72を、洗浄中の洗浄槽71と待機状態の洗浄槽72とに分けることにより、洗浄の完了した洗浄槽71内の液体二酸化炭素11を、第1液相貯留槽41を介さずに待機状態の洗浄槽72に直接移送できるので、液体二酸化炭素11の移送を簡略化できる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によれば、第1液相を形成する液体二酸化炭素を被洗浄物とともに洗浄槽に入れ、超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が上記液体二酸化炭素を伝搬し被洗浄物に衝突して被洗浄物から汚染物質を除去し、更に液体二酸化炭素に溶解しない第2液相を形成しかつ極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体を洗浄槽に入れて上記第1液相の液体二酸化炭素と上記第2液相の液体とを混合したので、被洗浄物から除去されて第1液相の液体二酸化炭素に含まれる汚染物質が第2液相の極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体に吸収される。この結果、第1液相の液体二酸化炭素を常に清浄に保ちながら、被洗浄物を洗浄できるので、汚染物質の被洗浄物への再付着を防止できる。
また極性水溶液がアルカリ水溶液であれば、第1液相の液体二酸化炭素に溶解している汚染物質の油分が第2液相のアルカリ水溶液と反応してアルカリ金属塩が形成されるので、上記汚染物質の油分を第1液相から第2液相に効率良く移行させることができ、極性水溶液が酸性水溶液であれば、第1液相の液体二酸化炭素に分散している汚染物質の金属粒子が第2液相の酸性水溶液に溶解するので、上記汚染物質の金属粒子を第1液相から第2液相に効率良く移行させることができる。
また極性有機溶媒がアルコール類、ケトン類、アミド類、アミン類及びエステル類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の極性有機溶媒であれば、極性有機溶媒が界面活性剤として作用し、第2液相の極性有機溶媒が第1液相の液体二酸化炭素中に溶解している油分と反応してミセルを形成するので、上記汚染物質の油分を第1液相から第2液相に効率良く移行させることができる。
また洗浄槽の上部に溜った二酸化炭素ガスからなる第1ガスに、分圧0.1〜12.8MPaの不活性ガス又は非凝縮ガスからなる第2ガスを添加すれば、洗浄槽内の気相部が加圧されて、液体二酸化炭素にその飽和蒸気圧以上の静圧が作用するので、超音波により液体二酸化炭素中に発生したキャビテーションを速やかに消滅させることができる。この結果、上記キャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が液体二酸化炭素を伝搬して被洗浄物に速やかに衝突するので、この衝撃波により汚染物質を被洗浄物から効率良く除去できる。
【0014】
また洗浄槽内の温度を0℃より高くかつ30℃より低い温度に保ち、洗浄槽内の液体二酸化炭素の分圧を3.4〜7.2MPaに保てば、洗浄槽内の液体二酸化炭素を液体の状態に保つことができる。
また洗浄槽に被洗浄物を収容するとともに第1液相を形成する液体二酸化炭素を貯留し、液体二酸化炭素に溶解しない第2液相を形成しかつ極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体を洗浄槽に更に貯留し、超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が超音波発振器により液体二酸化炭素を伝搬し被洗浄物に衝突して被洗浄物から汚染物質を除去し、更に上記第1液相の液体二酸化炭素と上記第2液相の液体とを混合手段により混合すれば、被洗浄物から除去されて第1液相の液体二酸化炭素に含まれる汚染物質が、第2液相の極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体に吸収されるので、第1液相の液体二酸化炭素を常に清浄に保ちながら、被洗浄物を洗浄できる。
また洗浄槽の内部又は外部に設けられ洗浄槽内の温度を冷却手段により0℃より高くかつ30℃より低い温度に保持すれば、洗浄槽内の液体二酸化炭素を液体の状態に保つことができる。
また混合手段が洗浄槽に設けられた撹拌機であり、この撹拌機の撹拌羽根を洗浄槽内の第1液相と第2液相との界面又はその近傍に位置するように設ければ、撹拌羽根により第1液相と第2液相を効率良く混合できるので、第2液相の極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体が第1液相の液体二酸化炭素に含まれる汚染物質を速やかに吸収できる。
また超音波発振器を洗浄槽の底部に設けることにより、超音波発振器が混合手段を兼ねれば、超音波発振器の超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波により第1液相と第2液相の界面が撹拌されるので、撹拌機を用いなくても第1液相の液体二酸化炭素と第2液相の液体とを混合できる。
また冷却手段が洗浄槽の周壁の内側に沿って設けられかつ水の流通するコイルを有し、このコイルの内側に筒状のシュラウドを設ければ、シュラウドの内側に被洗浄物を収容できるので、被洗浄物の収容空間を大きく確保できるとともに、シュラウドの内側と外側に強制循環流を形成できるので、第1液相の液体二酸化炭素を効率良く冷却できる。
【0015】
また洗浄槽の上部に溜った二酸化炭素ガスからなる第1ガスに、不活性ガス又は非凝縮ガスからなる第2ガスを第2ガス添加手段により添加すれば、洗浄槽内の気相部が加圧されて、液体二酸化炭素にその飽和蒸気圧以上の静圧が作用するので、超音波により液体二酸化炭素中に発生したキャビテーションを速やかに消滅させることができる。この結果、上記キャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が液体二酸化炭素を伝搬して被洗浄物に速やかに衝突するので、この衝撃波により汚染物質を被洗浄物から効率良く除去できる。
また第2液相循環手段により第2液相の液体を洗浄槽から抜出して濾過し更に洗浄槽に戻したり、或いは第2液相交換手段により第2液相の液体を所定量ずつ連続的に洗浄槽から抜出すとともに清浄な別の第2液相の液体を所定量ずつ連続的に洗浄槽に供給すれば、洗浄槽内の第2液相の液体中に含まれる汚染物質の増加を防止できる。
また洗浄槽の上部をガス回収管により第1液相貯留槽の上部に接続し、洗浄槽の下部を第1液相給排管により第1液相貯留槽の下部及び上部にそれぞれ接続し、ガス回収管にコンプレッサ及びガス冷却器を設け、第1液相給排管に第1液相給排ポンプを設ければ、被洗浄物の洗浄が完了したとき、被洗浄物を洗浄槽から取出す前に、洗浄槽内の液体二酸化炭素を第1液相給排ポンプにより第1液相給排管を通って第1液相貯留槽に移送した後に、洗浄槽に残存する二酸化炭素ガスをコンプレッサによりガス回収管を通りガス冷却器で冷却して液化した後に第1液相貯留槽に移送する。この結果、洗浄槽内の液体二酸化炭素をガス化することなく液体のまま必要最小限のエネルギで第1液相貯留槽に移送できる。
また冷却手段が洗浄槽内に設けられかつ水の流通するコイルを有し、このコイルに0℃より高く30℃より低い冷水のみならず30〜100℃の温水を流通可能に構成すれば、被洗浄物の洗浄が完了したとき、被洗浄物を洗浄槽から取出す前に、冷却手段のコイルに温水を流通させることにより、洗浄槽内の圧力を第1液相貯留槽内の圧力より高くする。これにより洗浄槽内の液体二酸化炭素を第1液相給排ポンプにより第1液相貯留槽に効率良く移送できるとともに、洗浄槽に残存する二酸化炭素ガスをコンプレッサ及びガス冷却器により圧縮・液化して第1液相貯留槽に効率良く移送できる。
更に洗浄槽を複数設け、これらの洗浄槽を切換手段を介して互いに並列に接続するとともに第1液相貯留槽に並列に接続すれば、複数の洗浄槽を、洗浄中の洗浄槽と待機状態の洗浄槽とに分けることにより、洗浄の完了した洗浄槽内の液体二酸化炭素を、第1液相貯留槽を介さずに待機状態の洗浄槽に直接移送できるので、液体二酸化炭素の移送を簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施の形態>
図1に示すように、超音波洗浄装置は、被洗浄物13が収容されかつ第1液相を形成する液体二酸化炭素11と第2液相を形成する液体12が貯留された洗浄槽14と、この洗浄槽14の内部に設けられた超音波発振器16と、第1液相の液体二酸化炭素11と第2液相の液体12とを混合する混合手段17とを備える。洗浄槽14は、被洗浄物13を収容可能な槽本体14aと、この槽本体14a上面の開口部を開放可能に閉止する蓋14bとを有する。この洗浄槽14は内部の気密が保たれかつ所定の圧力に耐え得る気密耐圧容器である。第2液相を形成する液体12は、極性水溶液又は極性有機溶媒からなる。極性水溶液は、水、アルカリ水溶液又は酸性水溶液であることが好ましい。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化セシウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などが挙げられるが、経済性の面から水酸化ナトリウム水溶液を用いることがより好ましい。また酸性水溶液としては、希塩酸水溶液、希硫酸水溶液、希硝酸水溶液及び希フッ酸水溶液からなる群より選ばれた1種又は2種以上の水溶液又は混合水溶液が挙げられる。なお、上記極性水溶液には界面活性剤を添加することができる。この界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤、又は脂肪酸アミン塩、脂肪族4級アミン塩、芳香族4級アンモニウム塩、複素環4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤、或いは上記陰イオン界面活性剤及び上記陽イオン界面活性剤の混合物が挙げられる。
【0017】
一方、極性有機溶媒は、アルコール類、ケトン類、アミド類、アミン類及びエステル類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の極性有機溶媒であることが好ましい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール、デカノールなどが挙げられ、これらの単体又は混合物、或いはこれらを水と混合した水溶液として用いられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられ、これらの単体又は混合物、或いはこれらを水又はアルコールと混合した水溶液又は混合物として用いられる。またアミド類としては、ホルムアミド、アセトアミドなどが挙げられ、これらの単体又は混合物、或いはこれらを水又はアルコールと混合した水溶液又は混合物として用いられる。アミン類としては、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、イソプロピルアミンなどが挙げられ、これらの単体又は混合物、或いはこれらを水又はアルコールと混合した水溶液又は混合物として用いられる。更にエステル類としては、エチレングリコール酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられ、これらの単体又は混合物、或いはこれらを水又はアルコールと混合した水溶液又は混合物として用いられる。
【0018】
超音波発振器16は、この実施の形態では、洗浄槽14の内部に第1液相の液体二酸化炭素11に浸漬しかつ被洗浄物13に対向するように設けられる。具体的には、超音波発振器16は、槽本体14aの周壁から所定の間隔をあけて内方に、槽本体14aの円周方向に所定の間隔をあけて複数台配設される。なお、超音波発振器は槽本体の内側ではなく、槽本体の外側に設けてもよい。これらの超音波発振器16から発せられる超音波の周波数及び出力は被洗浄部13に付着する汚染物質の種類や量により変化させることができるように構成される。上記超音波発振器16により発生した超音波は液体二酸化炭素11中にキャビテーションを生成し、このキャビテーションが液体二酸化炭素11中で消滅するときに衝撃波が発生し、この衝撃波が液体二酸化炭素11中を伝搬して被洗浄物13に衝突することにより、被洗浄物13から汚染物質が除去されるように構成される。また第1液相の液体二酸化炭素11の比重は0.8〜0.85であるのに対し、第2液相の液体12は1〜1.2であるので、第1液相の液体二酸化炭素11は上層に移行し、第2液相の液体12は下層に移行する。更に第2液相の液体12は第1液相の液体二酸化炭素11に対して0.5〜100重量%、好ましくは10〜50重量%添加される。ここで、第2液相の液体12の第1液相の液体二酸化炭素11に対する添加割合を0.5〜100重量%の範囲に限定したのは、0.5重量%未満では第2液相の液体12が第1液相の液体二酸化炭素11に溶解するおそれがあり、100重量%を越えると洗浄槽14が必要以上に大きくなるとともに、洗浄に伴って発生する廃水の量が増大するからである。
【0019】
混合手段17は、この実施の形態では、洗浄槽14に設けられた撹拌機である。この撹拌機17は、槽本体14aの底壁下面に取付けられた減速機付モータ17aと、このモータ17aの出力軸17bに固着された撹拌羽根17cとを有する。撹拌羽根17cは洗浄槽14内の第1液相と第2液相との界面近傍に位置するように設けられる。具体的には、撹拌羽根17cは静止状態における第1液相と第2液相との界面の直上及び直下にそれぞれ1枚ずつ合計2枚設けられる。なお、撹拌羽根は2枚ではなく、3枚又は4枚以上設けてもよい。上記撹拌羽根17cは減速機付モータ17aによる回転方向の操作により、洗浄槽14内の中央を下降流とし洗浄槽14内の周壁近傍を上昇流とする中央上昇循環流であってもよく、或いは洗浄槽14の中央を上降流とし洗浄槽14の周壁近傍を下昇流とする中央下降循環流であってもよいが、汚染物質が液体二酸化炭素11に分散する粒子である場合、被洗浄物13の再汚染防止の観点から中央下降循環流とすることが好ましい。
【0020】
一方、洗浄槽14の内部には、冷水の流通するコイル型の冷却手段18が設けられる。この冷却手段18は、槽本体14aの周壁と超音波発振器16との間に螺旋状に設けられたコイル18aと、コイル18aの一端に接続された冷水供給管18bと、コイル18aの他端に接続された冷水排出管18cと、冷水供給管18bに設けられた冷水供給用開閉弁18dと、冷水排出管18cに設けられた冷水排出開閉弁18eと、冷水供給管18bに接続された冷水タンク(図示せず)と、冷水供給管18bの途中に設けられコイル18aに冷水を供給する冷水ポンプ(図示せず)とを有する。このコイル18aに冷水を流通させることにより、洗浄槽14内の温度が0℃より高くかつ30℃より低い温度、好ましくは10〜25℃の範囲に保持される。ここで、洗浄槽14内の温度を0℃より高くかつ30℃より低い温度に保持するのは、0℃以下では液体二酸化炭素11が水とハイドレードを形成して固体になってしまい、30℃以上ではキャビテーションの消滅が不安定なるからである。なお、二酸化炭素ハイドレードとは、二酸化炭素分子を水分子のカゴで包摂した物質をいう。また、洗浄槽14内の温度が0〜30℃の範囲であるとき、洗浄槽14内の液体二酸化炭素11の飽和蒸気圧は3.4〜7.2MPaであり、洗浄槽14内の温度が10〜25℃の範囲であるとき、洗浄槽14内の液体二酸化炭素の飽和蒸気圧は4.5〜6.4MPaである。また、この実施の形態では、冷却手段として洗浄槽内に設けられたコイル型の冷却手段を挙げたが、水の流通する複数の管からなる多管型、或いは内部に水の流通する扁平な空間を有するプレート型の冷却手段であってもよい。更に、冷却手段を洗浄槽の外部に設ける場合には、上記コイル型の冷却手段であってもよく、或いは多管型又はプレート型の冷却手段であってもよい。
【0021】
冷却手段18のコイル18aの内側であって超音波発振器16の外側には筒状のシュラウド19が設けられる。このシュラウド19はこの実施の形態では円筒状に形成される。このシュラウド19の洗浄槽14内への設置により上記中央上昇循環流又は中央下降循環流が効果的に発生する。なお、上記シュラウドは四角筒状、五角筒状、六角筒状等の多角筒状に形成してもよい。また洗浄槽14の上部には第2ガス添加手段21が接続される。この第2ガス添加手段21は、第2ガスを貯留する第2ガスタンク(図示せず)と、この第2ガスタンクと洗浄槽14上部とを接続する第2ガス供給管21aと、この第2ガス供給管21aに設けられた第2ガス回収用開閉弁21bと、第2ガスタンク内の第2ガスを洗浄槽14上部に圧送する第2ガス用コンプレッサ(図示せず)とを有する。上記第2ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、空気などが挙げられる。上記第2ガスの洗浄槽14の気相部(二酸化炭素ガスからなる第1ガスの溜った洗浄槽14の上部)における分圧は0.1〜12.8MPa、好ましくは0.1〜2.8MPaの範囲に設定され、上記気相部における第2ガスの分圧と液体二酸化炭素11の飽和蒸気圧との合計圧力は20MPa以下、好ましくは10MPa以下に設定される。上記第2ガス添加手段21により洗浄槽14上部の気相部に第2ガスが添加されて気相部が加圧されると、洗浄槽14内の液体二酸化炭素11にその飽和蒸気圧以上の静圧が作用し、これにより超音波により液体二酸化炭素11中に発生したキャビテーションを速やかに消滅させることができるようになっている。なお、上記第2ガス供給管21aには、真空用分岐管(図示せず)の一端が分岐して接続され、この真空用分岐管の他端には真空ポンプ(図示せず)が接続される。
【0022】
一方、洗浄槽14の下部には第2液相循環手段22及び第2液相交換手段23が接続される。第2液相循環手段22は、一端が洗浄槽14の底壁に接続され他端が洗浄槽14の周壁下部に接続された循環パイプ22aと、この循環パイプ22aに設けられ洗浄槽14内の第2液相の液体12を循環させる循環ポンプ22bと、循環パイプ22aに設けられ第2液相の液体12に分散する粒子を捕集する循環用フィルタ22cと、この循環用フィルタ22cの前後に設けられた一対の循環用開閉弁22d,22dとを有する。上記循環パイプ22aには循環用フィルタ22c及び一対の循環用開閉弁22d,22dをバイパスするバイパス循環パイプ22eが接続され、このバイパス循環パイプ22eには補助循環用フィルタ22f及び一対の補助循環用開閉弁22g,22gが設けられる。補助循環用フィルタ22fは循環用フィルタ22cと交互に用いられ、フィルタ交換のための洗浄装置の停止を不要するために設けられる。また第2液相交換手段23は、一端が洗浄槽14の底壁に接続され他端が清浄な別の第2液相の液体12を貯留する新液貯留槽(図示せず)に接続された第2液相供給管23aと、一端が洗浄槽14の周壁下部に接続され他端が汚染物質を含む第2液相の液体12を貯留する古液貯留槽(図示せず)に接続された第2液相排出管23bと、第2液相供給管23a及び第2液相排出管23bに設けられた2ヘッド型の交換ポンプ23cとを有する。交換ポンプ23cは、一方のヘッドで洗浄槽14内の第2液相の液体12を第2液相排出管22bを通って古液貯留槽に所定量ずつ連続的に排出するとともに、他方のヘッドで新液貯留槽内の清浄な別の第2液相の液体12を第2液相供給管23aを通って洗浄槽14下部に所定量ずつ連続的に供給するように構成される。また第2液相排出管23bには第2液相の液体12に分散する粒子を捕集する排出用フィルタ23dが設けられ、この排出用フィルタ23dの前後には一対の排出用開閉弁23e,23eが設けられる。更に上記第2液相排出管23bには排出用フィルタ23d及び一対の排出用開閉弁23e,23eをバイパスするバイパス排出管23fが接続され、このバイパス排出管23fには補助排出用フィルタ23g及び一対の補助排出用開閉弁23h,23hが設けられる。補助排出用フィルタ23gは排出用フィルタ23dと交互に用いられ、フィルタ交換のための洗浄装置の停止を不要するために設けられる。なお、図1中の符号24は洗浄槽14内の液体二酸化炭素12の温度を検出する温度センサであり、符号26は洗浄槽14上部の気相部の圧力を検出する圧力センサである。また符号27は第1液相の液体二酸化炭素11を洗浄槽14に供給するための第1液相供給管であり、符号27aは第1液相供給管27に設けられた第1液相用開閉弁である。符号28は洗浄槽14内の二酸化炭素ガスを排出するためのガス回収管であり、符号28aはガス回収管28に設けられたガス回収用開閉弁である。更に符号29は第2液相の液体12を排出するためのドレン管であり、符号29aはドレン管29に設けられたドレンバルブである。
【0023】
このように構成された超音波洗浄装置を用いた被洗浄物の洗浄方法を説明する。
先ず洗浄槽14の蓋14bをあけ、槽本体14aに汚染物質の付着した被洗浄物13を収容する。この被洗浄物13は、洗浄槽14に第1液相の液体二酸化炭素11及び第2液相の液体12を貯留してこれらを撹拌しない状態で、第1液相の液体二酸化炭素11中に全ての部分が浸漬される位置であって第2液相の液体12に接触しない位置に固定される。この状態で槽本体14aの開口部を蓋14bにより閉止し、真空ポンプを作動して洗浄槽14内部の空気を排出した後に、液体二酸化炭素11を第1液相給排管27を通して洗浄槽14に供給する。このとき冷却手段18のコイル18aに冷水を流通させて洗浄槽14内の温度を0〜30℃、好ましくは10〜25℃の範囲に保つことにより、液体二酸化炭素11を安定的に供給できる。次に交換ポンプ23cを作動して極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体12を洗浄槽14に供給し、洗浄槽14の下部に一定量の第2液相を形成する。この状態で撹拌機17及び超音波発振器16を作動させる。超音波発振器16の作動により超音波が発生し、この超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が液体二酸化炭素11を伝搬して被洗浄物13に衝突し、これにより被洗浄物13に付着している汚染物質が剥離して除去され液体二酸化炭素11中に溶出又は分散する。
【0024】
第2液相の液体12としてアルカリ水溶液又は界面活性剤を溶かした水を用い、撹拌機17により第1液相の液体二酸化炭素11と第2液相の液体12とを混合することにより、上記液体二酸化炭素11に含まれる汚染物質のうちの油分が第2液相の液体12と反応してアルカリ金属塩又はミセルを形成し、第1液相から第2液相に速やかに移行するので、第1液相の液体二酸化炭素11は清浄に保たれる。また撹拌機17により第1液相の液体二酸化炭素11と第2液相の液体12とを混合し、循環ポンプ22bを作動して第2液相の液体12を循環パイプ22aに循環させることにより、液体二酸化炭素に含まれる汚染物質のうちの粒子が第1液相から第2液相に移行した後に循環用フィルタ22cで捕集されるので、第1液相の液体二酸化炭素11は清浄に保たれる。更に第2液相の液体12として酸性水溶液を用い、撹拌機17により第1液相の液体二酸化炭素11と第2液相の液体12とを混合することにより、液体二酸化炭素11に含まれる汚染物質のうちの金属粒子が第2液相の酸性水溶液12に溶解し、第1液相から第2液相に速やかに移行するので、第1液相の液体二酸化炭素11は清浄に保たれる。
【0025】
なお、被洗浄物13に多量の汚染物質が付着している場合には、交換ポンプ23cを作動して洗浄槽14内の汚染物質を多く含む第2液相の液体12を所定量ずつ連続的に排出するとともに、清浄な別の第2液相の液体12を所定量ずつ連続的に供給することにより、第2液相の液体が比較的清浄な状態に保たれ、汚染物質の分散能力又は溶出能力を所定量以上に維持できる。また超音波発振器16の作動により洗浄槽14内の液体二酸化炭素11の温度の変動が激しい場合には、温度センサ24の検出出力に基づいてコントローラが冷却手段18のコイル18aに流通させる冷水の流量を調整することにより、上記液体二酸化炭素11の温度を所定値に保つことができる。このとき2枚の撹拌羽根17c,17cのうち液体二酸化炭素中に位置する上側の撹拌羽根17cの回転により、液体二酸化炭素11の鉛直方向の流れだけでなく半径方向外向きの流れを形成すると、洗浄槽14の周壁とシュラウド19との間に液体二酸化炭素11の上昇流が発生する。この結果、洗浄槽14の周壁とシュラウド19との間に存在する冷却手段18のコイル18aと接触する液体二酸化炭素11の量が増大するので、液体二酸化炭素11の冷却手段18による冷却効率を向上できる。また超音波によるキャビテーションの生成及び消滅が不安定である場合には、第2ガス添加手段21のガス用コンプレッサを作動して第2ガスを洗浄槽14に添加して洗浄槽14内の気相部を加圧する。これにより洗浄槽14内の液体二酸化炭素11にその飽和蒸気圧以上の静圧が作用するので、超音波により液体二酸化炭素11中に発生したキャビテーションを速やかに消滅させることができる。この結果、上記キャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が液体二酸化炭素11を伝搬して被洗浄物13に速やかに衝突するので、この衝撃波により汚染物質を被洗浄物13から効率良く除去できる。
【0026】
被洗浄物13の洗浄が完了すると、超音波発振器16、撹拌機17、循環ポンプ22b及び交換ポンプ23cを停止し、洗浄槽14内の大部分の液体二酸化炭素11を第1液相給排管27から抜出した後に、洗浄槽14内の二酸化炭素ガス又は二酸化炭素ガス及び第2ガスの混合ガスを、洗浄槽14内が大気圧になるまでガス回収管28から抜出す。この状態で洗浄槽14の蓋14bをあけて洗浄槽14内の被洗浄物13を取出す。この被洗浄物13は浄化され、この被洗浄物13から除去された汚染物質は洗浄槽14の下部に溜った第2液相の液体12に溶出又は分散している。この第2液相の液体12は交換ポンプ23cの作動により或いはドレンバルブ29aの開放により洗浄槽14から排出される。その後、汚染物質が付着した別の被洗浄物13を洗浄槽14に収容して上記と同様の手順で洗浄する。
【0027】
<第2の実施の形態>
図2は本発明の第2の実施の形態を示す。図2において図1と同一符号は同一部品を示す。
この実施の形態では、超音波発振器16が洗浄槽14の底壁に突設された小径部14c下面に設けられ、第1の実施の形態の撹拌機及びシュラウドは用いない。なお、超音波発振器は、洗浄槽の小径部下面ではなく、小径部外周面に設けてもよい。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
このように構成された超音波洗浄装置では、超音波発振器16の作動により超音波が発生し、この超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が、第2液相の液体12を伝搬して第1液相と第2液相の界面を撹拌するとともに、第1液相の液体二酸化炭素11を伝搬して被洗浄物13に衝突する。この結果、撹拌機を用いなくても上記衝撃波により第1液相の液体二酸化炭素11と第2液相の液体12とを混合できるとともに、上記衝撃波が被洗浄物13に付着している汚染物質を剥離して除去し、液体二酸化炭素11中に溶出又は分散させることができる。上記第2液相の液体12としては、界面活性剤、水酸化ナトリウム或いは塩酸などを溶かし込んだ水が最も好ましい。上記以外の洗浄方法及び動作は第1の実施の形態と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0028】
<第3の実施の形態>
図3は本発明の第3の実施の形態を示す。図3において図1と同一符号は同一部品を示す。
この実施の形態では、冷却手段18のコイル18aに30〜100℃、好ましくは40〜80℃の温水が流通可能に構成され、一端が洗浄槽14の上部に接続されたガス回収管48の他端が第1液相貯留槽41の上部に接続され、一端が洗浄槽14の下部に接続された第1液相給排管47の他端が分岐して第1液相貯留槽41の下部及び上部にそれぞれ接続される。冷却手段18の冷水供給管18bから分岐して温水供給管42が設けられ、この温水供給管42には温水供給用開閉弁42aが設けられる。また冷却手段18の冷水排出管18cから分岐して温水排出管43が設けられ、この温水排出管43には温水排出用開閉弁43aが設けられる。更に温水供給管42には温水タンク(図示せず)が接続され、温水供給管42の途中にはコイル18aに温水を供給する温水ポンプ(図示せず)が設けられる。温水供給用開閉弁42a及び温水排出用開閉弁43aを開き、冷水供給用開閉弁18d及び冷水排出用開閉弁18eを閉じて、温水ポンプを作動させることにより、コイル18aに温水が流通するように構成される。ここで、コイル18aに流通させる温水の温度を30〜100℃の範囲に限定したのは、30℃未満では洗浄槽14内の液体二酸化炭素11を気化させるのに時間が掛かり過ぎ、100℃を越えると水蒸気の発生が顕著になるからである。
【0029】
ガス回収管48には、このガス回収管48を開閉するガス回収用開閉弁48aと、洗浄槽14内の二酸化炭素ガスを増圧して排出するコンプレッサ49と、この増圧された二酸化炭素ガスを冷却して液化するガス冷却器50とが設けられる。また第1液相給排管47は、一端が洗浄槽14の下部に接続され他端が第1液相貯留槽41の下部に接続された給排用主管47aと、一端が給排用主管47aの途中から分岐し他端が第1液相貯留槽41の上部に接続された給排用分岐管47bとを有する。給排用主管47aの分岐部より第1液相貯留槽41側に第1液相給排ポンプ51と一対の第1液相用フィルタ52,52が設けられ、給排用主管47aに第1液相給排ポンプ51及び一対の第1液相用フィルタ52,52をバイパスして給排用バイパス管47cが接続される。洗浄槽14側の給排用主管47aには第1液相用開閉弁47dが設けられ、給排用分岐管47bには分岐用開閉弁53が設けられ、給排用バイパス管47cにはバイパス用開閉弁54が設けられる。また給排用バイパス管47cの分岐部と給排用分岐管47bの分岐部との間の給排用主管47aには第1開閉弁61が設けられ、給排用バイパス管47cの合流部と第1液相貯留槽41との間の給排用主管47aには第2開閉弁62が設けられる。なお、第1液相貯留槽41には、0℃より高く30℃より低い温度に冷水が流通する貯留槽用コイル56が設けられ、この貯留槽用コイル56に上記冷水を流通させることにより、第1液相貯留槽41内の温度を0℃より高く30℃より低い温度に保たれる。また上記貯留槽用コイル56には上記冷水に替えて30〜100℃の温水が流通可能に構成される。図3中の符号57はガス供給管であり、符号58はガス供給用開閉弁である。また符号63は新液貯留槽であり、符号64は古液貯留槽である。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0030】
このように構成された超音波洗浄装置を用いた被洗浄物の洗浄方法を説明する。
先ず洗浄槽14の蓋14bをあけ、槽本体14aに汚染物質の付着した被洗浄物13を収容する。次いで槽本体14aの開口部を蓋14bにより閉止し、真空ポンプを作動して洗浄槽14内部の空気を排出した後に、ガス供給用開閉弁58を開放して第1液相貯留槽41内の二酸化炭素ガスを洗浄槽14に供給し、洗浄槽14内の圧力を約6MPaにする。次に第2開閉弁62、第1開閉弁61及び第1液相用開閉弁47dを開放した後に、第1液相給排ポンプ51を作動する。これにより第1液相貯留槽41内の液体二酸化炭素11が給排用主管47aを通って洗浄槽14に供給される。所定量の液体二酸化炭素11が洗浄槽14に供給されたときに、第1液相給排ポンプ51を停止するとともに、ガス供給用開閉弁58、第2開閉弁62、第1開閉弁61及び第1液相用開閉弁47dを閉止する。その後の洗浄方法は第1の実施の形態と同一であるので、繰返しの説明を省略する。
【0031】
被洗浄物13の洗浄が完了すると、先ず第1液相用開閉弁47d、バイパス用開閉弁54及び分岐用開閉弁53を開いた後に、第1液相給排ポンプ51を作動する。これにより洗浄槽14内の液体二酸化炭素11が洗浄槽14側の給排用主管47a、給排用バイパス管47c、中央の給排用主管47a及び給排用分岐管47bを通って第1液相貯留槽41に移送される。このとき冷却手段18のコイル18aに温水を流通させて洗浄槽14内の温度を上昇させるとともに、貯留槽用コイル56に冷水を流通させて第1液相貯留槽41内の温度を低下させると、洗浄槽14内の液体二酸化炭素11の回収率を高めることができる。次に第1液相給排ポンプ51を停止し、第1液相用開閉弁47d、バイパス用開閉弁54及び分岐用開閉弁53を閉止した後に、ガス回収用開閉弁48aを開放するとともに、コンプレッサ49を作動すると、洗浄槽14内の二酸化炭素ガスが液化されて第1液相貯留槽41に回収される。洗浄槽14内の圧力が大気圧になったときに、コンプレッサ49を停止するとともに、ガス回収用開閉弁48aを閉止する。この状態で洗浄槽14の蓋14bをあけて被洗浄物13を洗浄槽14から取出すと、この被洗浄物13は浄化され、この被洗浄物13から除去された汚染物質は洗浄槽14の下部に溜った第2液相の液体12に溶出又は分散している。この第2液相の液体12は交換ポンプ23cの作動により洗浄槽14から排出されて古液貯留槽64に回収される。その後、汚染物質が付着した別の被洗浄物13を洗浄槽14に収容して上記と同様の手順で洗浄する。
【0032】
<第4の実施の形態>
図4は本発明の第4の実施の形態を示す。図4において図3と同一符号は同一部品を示す。
この実施の形態では、洗浄槽が第1洗浄槽71及び第2洗浄槽72の2台設けられ、これらの洗浄槽71,72が切換手段80を介して互いに並列に接続されるとともに第1液相貯留槽41に並列に接続される。具体的には、第1洗浄槽71の上部と第2洗浄槽72の上部がアッパ連通管73により接続され、第1洗浄槽71の下部と第2洗浄槽72の下部がロア連通管74により接続される。ガス回収管78は、一端が第1液相貯留槽41の上部に接続された回収用主管78aと、一端が回収用主管78aの他端に接続され他端が第1洗浄槽71側のアッパ連通管73に接続された第1回収用分岐管78bと、一端が回収用主管78aの他端に接続され他端が第2洗浄槽72側のアッパ連通管73に接続された第2回収用分岐管78cとを有する。またガス供給管79は、一端が第1液相貯留槽41の上部に接続された供給用主管79aと、一端が供給用主管79aの他端に接続され他端が第1回収用分岐管78bに接続された第1供給用分岐管79bと、一端が回収用主管78aの他端に接続され他端が第2回収用分岐管78cに接続された第2供給用分岐管79cとを有する。更に第1液相給排管77は、一端が第1液相貯留槽41の下部に接続され他端がロア連通管74の中央に接続された給排用主管77aと、一端が第1液相給排ポンプ51より第1液相貯留槽41側の給排用主管77aに接続され他端が第1洗浄槽71側のロア連通管74に接続された第1バイパス管77bと、一端が第1液相給排ポンプ51より第1液相貯留槽41側の給排用主管77aに接続され他端が第2洗浄槽72側のロア連通管74に接続された第2バイパス管77cと、一端が第1液相貯留槽41の上部に接続され他端がロア連通管74の中央に接続された給排用分岐管77dとを有する。
【0033】
一方、切換手段80はアッパ切換弁群81とロア切換弁群82とを有する。アッパ切換弁群81は、アッパ連通管73に設けられた第1アッパ切換弁81aと、第1回収用分岐管78bに設けられた第2アッパ切換弁81bと、第2回収用分岐管78cに設けられた第3アッパ切換弁81cと、第1供給用分岐管79bに設けられた第4アッパ切換弁81dと、第2供給用分岐管79cに設けられた第5アッパ切換弁81eとからなる。またロア切換弁群82は、第1洗浄槽71側のロア連通管74に設けられた第1ロア切換弁82aと、第2洗浄槽72側のロア連通管74に設けられた第2ロア切換弁82bと、給排用分岐管77dに設けられた第3ロア切換弁82cと、給排用主管77aに設けられた第4ロア切換弁82dと、第1バイパス管77bに設けられた第5ロア切換弁82eと、第2バイパス管77cに設けられた第6ロア切換弁82fとからなる。更に第2液相循環手段22は第1洗浄槽71及び第2洗浄槽72にそれぞれ1組ずつ設けられ、第2液相交換手段23は1組設けられ、この第2液相交換手段23は第1洗浄槽71又は第2洗浄槽72のいずれか一方に切換可能に接続される。なお、洗浄槽の台数は3台又は4台以上でもよい。上記以外は第3の実施の形態と同一に構成される。
【0034】
このように構成された超音波洗浄装置では、第1洗浄槽71で被洗浄物13を洗浄している間に、第2洗浄槽72に被洗浄物13を収容し、第2洗浄槽72から空気を排出し、更に第1液相貯留槽41から第2洗浄槽72に二酸化炭素ガスを供給して、第2洗浄槽72内を約6MPaに加圧した状態で待機する。第1洗浄槽71における被洗浄物13の洗浄が完了すると、先ず第5ロア切換弁82e及び第2ロア切換弁82bを開いた後に、第1液相給排ポンプ51を作動する。これにより第1洗浄槽71内の液体二酸化炭素11が第1洗浄槽71側のロア連通管74、第1バイパス管77b、給排用主管77a及び第2洗浄槽72側のロア連通管74を通って第2洗浄槽72に移送される。このとき第1洗浄槽71内の冷却手段18のコイル18aに温水を流通させて第1洗浄槽71内の温度を上昇させるとともに、第2洗浄槽72内の冷却手段18のコイル18aに冷水を流通させて第2洗浄槽72内の温度を低下させると、第1洗浄槽71内の圧力が第2洗浄槽72内の圧力より高くなって、この圧力差により第1洗浄槽71から第2洗浄槽72への液体二酸化炭素11の移送量を増大できる。次いで第1液相給排ポンプ51を停止し、第5ロア切換弁82e及び第2ロア切換弁82bを閉止した後に、第2アッパ切換弁81bを開放するとともに、コンプレッサ49を作動すると、第1洗浄槽71内の二酸化炭素ガスが液化されて第1液相貯留槽41に回収される。次に第1洗浄槽71内の圧力が大気圧になったときに、コンプレッサ49を停止するとともに、第2アッパ切換弁81bを閉止する。この状態で第1洗浄槽71の蓋をあけて被洗浄物13を第1洗浄槽71から取出すと、この被洗浄物13は浄化され、この被洗浄物13から除去された汚染物質は第1洗浄槽71の下部に溜った第2液相の液体12に溶出又は分散している。この第2液相の液体12は交換ポンプ23cの作動により第1洗浄槽71から排出されて古液貯留槽64に回収される。更に第1洗浄槽71を上記第2洗浄槽72と同様の手順で待機状態にする。なお、第1洗浄槽71から第2洗浄槽72への液体二酸化炭素12の移送が完了して、第1液相給排ポンプ51を停止し、第5ロア切換弁82e及び第2ロア切換弁82bを閉止した後に、第2洗浄槽72に第2液相の液体12を供給して第2洗浄槽72で被洗浄物13の洗浄を開始する。また第2洗浄槽72内の液体二酸化炭素11の量が不足している場合には、第4ロア切換弁82d及び第2ロア切換弁82bを開放し、第1液相給排ポンプ51を作動して、液体二酸化炭素11を第2洗浄槽72に補給した後に、第2洗浄槽72における被洗浄物13の洗浄を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明第1実施形態の超音波洗浄装置の構成図である。
【図2】本発明第2実施形態の超音波洗浄装置の構成図である。
【図3】本発明第3実施形態の超音波洗浄装置の構成図である。
【図4】本発明第4実施形態の超音波洗浄装置の構成図である。
【符号の説明】
【0036】
11 第1液相の液体二酸化炭素
12 第2液相の液体
13 被洗浄物
14,71,72 洗浄槽
16 超音波発振器
17 撹拌機(混合手段)
17c 撹拌羽根
18 冷却手段
18a コイル
19 シュラウド
21 第2ガス添加手段
22 第2液相循環手段
23 第2液相交換手段
41 第1液相貯留槽
47,77 第1液相給排管
48,78 ガス回収管
49 コンプレッサ
50 ガス冷却器
51 第1液相給排ポンプ
80 切換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液相を形成する液体二酸化炭素(11)を被洗浄物(13)とともに洗浄槽(14)に入れ、超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が前記液体二酸化炭素(11)を伝搬して前記被洗浄物(13)に衝突することにより、前記被洗浄物(13)から汚染物質を除去する超音波洗浄方法において、
前記液体二酸化炭素(11)に溶解しない第2液相を形成しかつ極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体(12)を前記洗浄槽(14)に入れて、前記第1液相の液体二酸化炭素(11)と前記第2液相の液体(12)とを混合することを特徴とする超音波洗浄方法。
【請求項2】
極性水溶液が、水、アルカリ水溶液又は酸性水溶液である請求項1記載の超音波洗浄方法。
【請求項3】
極性有機溶媒が、アルコール類、ケトン類、アミド類、アミン類及びエステル類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の極性有機溶媒である請求項1記載の超音波洗浄方法。
【請求項4】
洗浄槽(14)の上部に溜った二酸化炭素ガスからなる第1ガスに、分圧0.1〜12.8MPaの不活性ガス又は非凝縮ガスからなる第2ガスを添加する請求項1記載の超音波洗浄方法。
【請求項5】
洗浄槽(14)内の温度を0℃より高くかつ30℃より低い温度に保ち、前記洗浄槽(14)内の液体二酸化炭素(11)の分圧を3.4〜7.2MPaに保つ請求項1記載の超音波洗浄方法。
【請求項6】
被洗浄物(13)が収容されかつ第1液相を形成する液体二酸化炭素(11)が貯留された洗浄槽(14)と、前記洗浄槽(14)の内部又は外部に設けられ超音波によるキャビテーションの生成及び消滅に起因する衝撃波が前記液体二酸化炭素(11)を伝搬し前記被洗浄物(13)に衝突して前記被洗浄物(13)から汚染物質を除去する超音波発振器(16)とを備えた超音波洗浄装置において、
前記液体二酸化炭素(11)に溶解しない第2液相を形成しかつ極性水溶液又は極性有機溶媒からなる液体(12)が前記洗浄槽(14)に貯留され、
前記第1液相の液体二酸化炭素(11)と前記第2液相の液体(12)とが混合手段(17)により混合されるように構成されたことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項7】
洗浄槽(14)の内部又は外部に設けられ前記洗浄槽(14)内の温度を0℃より高くかつ30℃より低い温度に保持する冷却手段(18)を更に備えた請求項6記載の超音波洗浄装置。
【請求項8】
混合手段(17)が洗浄槽(14)に設けられた撹拌機であり、この撹拌機(17)の撹拌羽根(17c)が前記洗浄槽(14)内の第1液相と第2液相との界面又はその近傍に位置するように設けられた請求項6記載の超音波洗浄装置。
【請求項9】
超音波発振器(16)を洗浄槽(14)の底部に設けることにより、前記超音波発振器(16)が混合手段を兼ねる請求項6記載の超音波洗浄装置。
【請求項10】
冷却手段(18)が洗浄槽(14)の周壁の内側に沿って設けられかつ水の流通するコイル(18a)を有し、このコイル(18a)の内側に筒状のシュラウド(19)が設けられた請求項7記載の超音波洗浄装置。
【請求項11】
洗浄槽(14)の上部に溜った二酸化炭素ガスからなる第1ガスに、不活性ガス又は非凝縮ガスからなる第2ガスを添加する第2ガス添加手段(21)を更に備えた請求項6記載の超音波洗浄装置。
【請求項12】
第2液相の液体(12)を洗浄槽(14)から抜出して濾過し更に洗浄槽(14)に戻す第2液相循環手段(22)を更に備えた請求項6記載の超音波洗浄装置。
【請求項13】
第2液相の液体(12)を所定量ずつ連続的に洗浄槽(14)から抜出すとともに清浄な別の第2液相の液体(12)を所定量ずつ連続的に前記洗浄槽(14)に供給する第2液相交換手段(23)を更に備えた請求項6記載の超音波洗浄装置。
【請求項14】
一端が洗浄槽(14,71,72)の上部に接続されたガス回収管(48,78)の他端が第1液相貯留槽(41)の上部に接続され、一端が前記洗浄槽(14,71,72)の下部に接続された第1液相給排管(47,77)の他端が分岐して前記第1液相貯留槽(41)の下部及び上部にそれぞれ接続され、前記ガス回収管(48,78)にコンプレッサ(49)及びガス冷却器(50)が設けられ、前記第1液相給排管(47,77)に第1液相給排ポンプ(51)が設けられた請求項6記載の超音波洗浄装置。
【請求項15】
冷却手段(18)が洗浄槽(14)内に設けられかつ水の流通するコイル(18a)を有し、このコイル(18a)に0℃より高く30℃より低い冷水のみならず30〜100℃の温水が流通可能に構成された請求項14記載の超音波洗浄装置。
【請求項16】
洗浄槽(71,72)が複数設けられ、これらの洗浄槽(71,72)が切換手段(80)を介して互いに並列に接続されるとともに第1液相貯留槽(41)に並列に接続された請求項14記載の超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−75785(P2006−75785A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265046(P2004−265046)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】