説明

超音波溶着装置、超音波接合装置、布線装置

【課題】所定の押圧を正確に行うという条件を精密に管理して良好な溶着を行う。
【解決手段】本体フレーム10に対してスライド自在な超音波振動ユニット40に取り付けた工具ホーン44をワークに押圧して超音波溶着を行う超音波溶着装置において、工具ホーン44の移動量を測定する第一のリニアスケール50と、超音波振動ユニットを押圧する圧縮バネと、圧縮バネを圧縮する駆動手段28と圧縮バネの圧縮量を測定する第二のリニアスケール51と、圧縮バネによる押圧力を測定するロードセル45とを設け、駆動手段28を駆動して圧縮バネを圧縮したときに、ロードセル45で測定した圧縮バネによる押圧力と、第一のリニアスケール50で測定した工具ホーンの移動量と、第二のリニアスケール51で測定した圧縮バネの圧縮量とを駆動手段28にフィードバック制御して、ワークに任意の押圧力を付与した状態で超音波溶着を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波溶着装置、超音波接合装置および布線装置に関し、特に超音波溶着時、超音波接合時、あるいは布線時に、被溶着物あるいは被接合物であるワークを所望の圧力で押圧するようにした超音波溶着装置、超音波接合装置および布線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小さな部品や薄い部品を超音波溶着する、あるいは金属線板や金属板などを超音波接合する、絶縁被覆電線(ワイヤー)を布線する際には、被溶着物や被接合物を小さい押圧力あるいは所定の押圧力で正確に押圧した状態で超音波エネルギーを付与することが求められている(例えば、特許文献1参照)。
そこで、小さい押圧力あるいは所定の押圧力での押圧を正確に行う方法として、超音波発振手段に往復運動を伝えるエアーシリンダのロッドと超音波発振手段との間に移動方向に沿って伸縮自在な圧縮バネからなる荷重印加手段を設け、押圧時に超音波発振手段に弾性荷重を印加することが提案されていた。この方法によれば、超音波発振手段に往復運動を伝えるエアーシリンダのロッドと超音波発振手段との間に移動方向に沿って伸縮自在な圧縮バネを介在させて、圧縮バネによる緩衝作用により押圧力をある程度の範囲内で一定に保つことが可能である。
【0003】
ただし、作業条件が変わる都度、圧縮バネの設定荷重やバネ定数の適否の検討が必要で、必要により圧縮バネの荷重設定を変えていた。なお、圧縮バネを交換する場合もあった(例えば、特許文献2参照)。
一方、従来の超音波溶着装置や超音波接合装置では、超音波ホーンを変位させて被溶着物を押圧するサーボモータと、超音波ホーンが被溶着物に与える圧力を検知して信号に変換するロードセルと、超音波ホーンの変位を検知して信号に変換するデジタルゲージ(リニアスケールとも言う)とを用い、ロードセル及びデジタルゲージからの信号に基づきサーボモータの運転制御を行ってサーボモータにはロードセルからの信号に基づくフィードバック制御を行う方法が提案されていた。しかし、上記の超音波発振手段に伸縮自在な圧縮バネからなる荷重印加手段を設けた超音波溶着装置等にフィードバック制御を適用することは検討されていなかった(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−250862号公報
【特許文献2】特開2001−105160号公報
【特許文献3】特開2006−231698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、伸縮自在な圧縮バネからなる荷重印加手段を用いた超音波溶着装置、超音波接合装置あるいは布線装置において、工具ホーンの位置(h1)と圧縮バネの圧縮量(h2)と圧縮バネによる押圧力(P)をフィードバック制御することにより超音波溶着条件あるいは超音波接合条件を精密に管理し、小さい押圧力あるいは所定の押圧力での押圧を正確に行って良好な溶着結果、接合結果、あるいは布線結果を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、本体フレームに対してスライド自在な超音波振動ユニットに取り付けた工具ホーンをワークに押圧して超音波溶着、超音波接合、または布線を行う超音波溶着装置、超音波接合装置、または布線装置において、工具ホーンの移動量(h1)を測定する第一のリニアスケールと、超音波振動ユニットを押圧する圧縮バネと、圧縮バネを圧縮する駆動手段と、圧縮バネの圧縮量(h2)を測定する第二のリニアスケールと、圧縮バネによる押圧力(P)を測定するロードセルとを設け、駆動手段を駆動して圧縮バネを圧縮したときに、ロードセルで測定した圧縮バネによる押圧力(P)と、第一のリニアスケールで測定した工具ホーンの移動量(h1)と、第二のリニアスケールで測定した圧縮バネの圧縮量(h2)を駆動手段にフィードバック制御して、ワークに任意の押圧力を付与した状態で超音波溶着または超音波接合を行う制御手段と、を備えるようにしている。
【0007】
そして本発明では、制御手段は、駆動手段で圧縮バネを圧縮して所定の押圧力(Pb)に達したことをロードセルが検出したときに、前記工具ホーンの移動量(h1)の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量(h2)の変化(Δh2)を算出し、工具ホーンの移動量の変化(Δh1)と圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を等しく保つことにより圧縮バネ自体の圧縮量(δ)を変えず、圧縮バネの押圧力を一定値に保っている。このことにより、小さい押圧力あるいは所定の押圧力での押圧を正確に行うことを精密に管理し、良好な溶着結果を得るようにしている。
【0008】
また本発明の前記制御手段は、駆動手段で圧縮バネを圧縮して所定の押圧力(Pb)に達したことをロードセルが検出したときに、前記工具ホーンの移動量(h1)の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量(h2)の変化(Δh2)を算出し、工具ホーンの移動量の変化(Δh1)に対する圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を増大あるいは減少することにより、圧縮バネの圧縮量を変えて圧縮バネの押圧力(P)を変化させて所定の押圧力(Pb)を変化させるようにしている。
【0009】
また本発明の前記制御手段は、圧縮バネのバネ定数等の特性値を記憶手段に予め記憶しておくことにより、工具ホーンを超音波溶着作業等の始点から終点まで変位させて被溶着物あるいは被接合物を押圧する際に、記憶手段から圧縮バネのバネ定数等の特性値を読み出して駆動手段による圧縮バネの圧縮量を逐次算出して駆動制御するようにしている。
このことにより、圧縮バネのバネ定数がその作業に対して大きい、あるいは小さい場合であっても、駆動手段による圧縮バネの圧縮量を逐次算出して加減することにより、小さい押圧力あるいは所定の押圧力での押圧を正確に行うことを精密に管理し、良好な溶着結果を得ることができるようにしている。
【0010】
また本発明は、押圧方向と平行な軸周りに回転自在な回転体を有し、圧縮バネは、回転体の軸周りに複数設けられており、回転体を回転させることで押圧に用いる圧縮バネを選択可能としたり、圧縮バネを交換可能に設けたりしている。そのため、溶着作業、あるいは接合作業、あるいは布線作業の条件が変わっても、複数の圧縮バネの中から条件を満たす圧縮バネを選定して溶着作業、接合作業、あるいは布線作業に迅速に対応できるようにしている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動手段で圧縮バネを圧縮したときに、ロードセルが検出した圧縮バネの押圧力(P)と工具ホーンの移動量(h1)と圧縮バネの圧縮量(h2)をフィードバックし、工具ホーンの移動量の変化(Δh1)と圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を算出して駆動制御することにより、小さい押圧力あるいは所定の押圧力での押圧を正確に行うことを精密に管理し、良好な溶着結果あるいは接合結果を得ることができる。
【0012】
また、圧縮バネのバネ定数がその超音波溶着作業、超音波接合作業あるいは布線作業に対して大きい、あるいは小さい場合であっても、駆動手段による圧縮バネの圧縮量を細かく制御することにより、小さい押圧力あるいは所定の押圧力での押圧を正確に行うことを精密に管理し、良好な溶着結果あるいは接合結果を得ることができる。
更に、超音波溶着作業、超音波接合作業、あるいは布線作業の条件が変わっても、予め準備した複数の圧縮バネの中から条件を満たす圧縮バネを選定して各種の溶着作業、超音波接合作業、あるいは布線作業に迅速に対応することができる。
【0013】
そして、圧縮バネを交換可能にしたことにより、作業条件が変わっても迅速に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置の右側面図。
【図2】本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置の正面図。
【図3】本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置の斜視図。
【図4】本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置の制御ブロックの構成を示した図。
【図5】(a)本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置の圧縮バネの交換作業を示す部分断面図(b)本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置の圧縮バネの交換作業を示す部分断面図。
【図6】(a)本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置の圧縮バネの交換作業を示す部分断面図(b)本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置の圧縮バネの交換作業を示す部分断面図。
【図7】(a)本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置の圧縮バネの力の変化を示すグラフ(b)本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置の被溶着物にかかる押圧力の変化を示すグラフ。
【図8】本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置での溶着作業の動作手順を示すフローチャート。
【図9】本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置での圧縮バネの圧縮量(δ)、押圧力(P)、その他のパラメータ(h1、h2)の位置関係を示した図。
【図10】本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置で押圧力を段階的に変化させる制御をしたときの被溶着物にかかる圧力変化を示すグラフ。
【図11】本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置で押圧力を段階的に変化させる制御をしたときの動作手順を示すフローチャート。
【図12】(a)本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置での押圧状況の推移を示したグラフ(b)本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置での押圧状況の推移を示したグラフ(c)本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置での押圧状況の推移を示したグラフ。
【図13】本発明の第一の実施の形態にかかる他の超音波溶着装置の右側面図。
【図14】本発明の第二の実施の形態にかかる超音波接合装置の斜視図。
【図15】本発明の第二の実施の形態にかかる超音波接合装置のホーン先端の下から見た部分斜視図。
【図16】本発明の第二の実施の形態にかかる超音波接合装置の他のホーン先端の下から見た部分斜視図。
【図17】本発明の第三の実施の形態にかかる布線装置の斜視図。
【図18】本発明の第三の実施の形態にかかる布線装置の工具ホーン先端近傍の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一の実施の形態)
本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置を説明する。図1に本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置100の右側面図を、図2に超音波溶着装置100の正面図を、図3に超音波溶着装置100の斜視図を示す。
超音波溶着装置100は、側面から見てL字型をした本体フレーム10の底部10bの上にアンビル11を設け、アンビル11の上に被溶着物であるプラスチック板のワークW1、W2を重ねた状態で載置できるようにしている。本体フレーム10は、アンビル11から所定距離だけ離した位置に支柱部分10aを設け、支柱部分10aに対して超音波振動ユニット40を垂直方向に上下動自在に支持している。
【0016】
支柱部分10aの上部には、滑車支持部材21を設け、滑車回転軸22の周りに滑車23を回転自在に支持している。滑車23は、一端にバランスウェイト25を他端に超音波振動ユニット40を結びつけたワイヤ24を移動自在に支持している。超音波振動ユニット40は、ワイヤ固定部41を持つユニットフレーム42に超音波振動手段43を固定し、超音波振動手段43の先端には工具ホーン44を取り付けている。バランスウェイト25の重量は、超音波振動ユニット40の重量より、いくらか重くしてある。そのため、滑車23でワイヤ24を支持しただけの状態では、重量のアンバランスにより、バランスウェイト25が下降し、超音波振動ユニット40が上昇する。
【0017】
支柱部分10aの上部には、超音波振動ユニット40を押し下げるための駆動手段28を、回転軸を下に向けた状態で固定し、駆動手段28の回転軸に送りネジ29を取り付けている。送りネジ29の先端には押圧部材30を取り付けている。駆動手段28はサーボモータであり所定角度だけ回転することができ、回転した角度に応じた量だけ押圧部材30が上下動する。
【0018】
駆動手段28の直下には、支柱部分10aから上下一対の水平壁26a、26bが水平方向に張り出している。水平壁26a、26bの間には、回転式拳銃のレンコン状の回転式弾倉のような形をした圧縮バネ収容部31(回転体)を入れ、押圧方向と平行な軸27を通した状態で、軸27を中心に圧縮バネ収容部31を回転自在に支持している。本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置100の圧縮バネ収容部31には、3つの貫通孔が開いており、バネ定数の異なる3種類の圧縮バネ(A)32b、(B)33b、(C)34bを収納している。圧縮バネ(A)32b、(B)33b、(C)34bの下方には、バネ座32c、33c、34cを、上方には、バネ用蓋32a、33a、34aを当てている。なお、バネ座、圧縮バネそしてバネ用蓋を重ねたときの自然長(高さ)を圧縮バネ収容部31の貫通孔の長さより短くしている。このことにより、圧縮バネ収容部31を軸27を中心に回転したときに、上部のバネ用蓋が水平壁26aに引っかからないようにしている。
【0019】
駆動手段28の直下の水平壁26a、26bには貫通孔を開けており、上方の水平壁26aには押圧部材30を出入り自在にしている。また、下方の水平壁26bには、フランジ付きストッパ46を出入り自在にしている。
なお、既に説明した超音波振動ユニット40には、ロードセル45を載せ、ロードセル45の上にフランジ付きストッパ46を載せている。超音波振動ユニット40は外力が加わらなければ、バランスウェイト25の自重により上方に移動する。そのため、フランジ付きストッパ46を水平壁26bの貫通孔に貫入させると、駆動手段28から工具ホーン44までの各部分(28、29、30、32a、32b、32c、46、45、42、43、44)は一体的に動く。そのため、駆動手段28が回転すると、圧縮バネ32bを圧縮してその弾性力で工具ホーン44の下面をワークW1、W2に押し付けることができる。
【0020】
また図3に示したように、本体フレームの支柱部分10aには、工具ホーン44の移動量(h1)を測定する第一のリニアスケール50が設けられている。工具ホーン44の移動量(h1)は、本体フレーム10に対しての上下方向の移動量である。
さらに、上方の水平壁26aの上面には、圧縮バネの圧縮量(h2)を測定する第二のリニアスケール51が設けられている。圧縮バネの圧縮量(h2)は、上方の水平壁26aの上面からの押圧部材30の相対位置から測定される。
【0021】
図4に、本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置100の制御ブロックの構成を示す。主制御部60に駆動制御部61を接続し、駆動制御部61で駆動手段28の回転方向および回転角度を制御している。同様に、超音波振動手段43には超音波振動駆動部62を、第一のリニアスケール50には工具ホーンの位置読取部63を、ロードセル45には荷重読取部64を、圧縮バネ収容部31には荷重設定部65を、第二のリニアスケール51には圧縮バネの圧縮量読取部66をそれぞれ接続して主制御部60で一括制御している。更に主制御部60には、記憶部67と操作部68を接続している。記憶部67には、複数種類ある圧縮バネのバネ定数や溶着作業の終点の位置、超音波溶着時のタイミング等の制御プログラムを記憶させており、操作部68からは、操作者が溶着作業条件の詳細データの入力や、電源入の指示、溶着開始指示、電源断の指示等の操作情報を入力できるようにしている。主制御部60は逐次、記憶部67から情報を読み出して超音波溶着装置100を制御する。
【0022】
本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置100で圧縮バネを交換する作業手順を図5(a)(b)、図6(a)(b)の部分断面図を用いて説明する。図5(a)では、サーボモータである駆動手段28を駆動して押圧部材30を上方に持ち上げた状態を示している。図5(a)のように、押圧部材30を上方に持ち上げると、超音波振動ユニット40は、バランスウェイト25の自重により上昇して、フランジ付きストッパ46のフランジが水平壁26bの下面に当たった位置で停止する。押圧部材の凸部30aは圧縮バネの蓋32aから所定寸法だけ完全に離れる。この時点で、3種類の圧縮バネを入れた圧縮バネ収納部31を、軸27を中心に回転する。すると、図5(b)のように、圧縮バネ収納部31が回転して押圧部材の凸部30aの下に元々あった圧縮バネ(A)32bの代わりに異なるバネ定数の圧縮バネ(B)33bを位置させることができる。圧縮バネ収納部31には、バネ定数が大、中、小という3種類の圧縮バネを入れているので、行おうとしている超音波溶着作業等に適する圧縮バネを選択することができる。
【0023】
ちなみに、図6(a)では、押圧部材の凸部30aの下に他の圧縮バネ(C)34bを位置させた状態を示した。このように、超音波溶着作業等に応じた圧縮バネを選定して図6(b)のように、駆動手段28を反転駆動して押圧部材30を下方に移動する。そして駆動手段28で圧縮バネ34bを押圧して超音波溶着作業を開始することができる。
なお、圧縮バネ収納部31を回転して位置決めし、駆動手段28を反転駆動すると、図4で示した荷重設定部65は、どの圧縮バネが選定されたかを検出して主制御部60に伝える。
【0024】
図7(a)には各圧縮バネごとの圧縮バネ自体の圧縮量δと力Fとの関係を示しており、図7(b)には各圧縮バネを用いて超音波溶着するときの被溶着物に与える工具ホーンの押圧力P、つまり圧縮バネの力(F)を工具ホーンの押圧面積(Ap)で除した値(P=F/Ap)の変化を時系列的に示している。本実施形態において、超音波溶着装置は、図7(a)のようにバネ定数が相対的に大(k1)、中(k2)、小(k3)と異なる強さの圧縮バネ32b、33b、34bを任意に選択可能である。そして、本発明では、各圧縮バネを限界まで圧縮せず、ある程度圧縮できる余裕を残したときの圧縮バネ自体の圧縮量(δ1)での力(Fb=k*δ1)を使用することにしている。
【0025】
つまり、図7(b)のように、Aゾーンという範囲内の大きい押圧力が必要なときには、バネ定数が大(k1)の圧縮バネ(A)32bを用い、Bゾーンという範囲内の中間的な押圧力が必要なときには、バネ定数が中(k2)の圧縮バネ(B)33bを用い、Cゾーンという範囲内の小さい押圧力が必要なときには、バネ定数が小(k3)の圧縮バネ(C)34bを用いて対応することができる。図7(b)では、圧縮バネ(B)33b自体をδ1だけ圧縮したときの力(Fb=k2*δ1)で超音波溶着することを太線カーブで示している。
【0026】
図7(a)に示すように、圧縮バネBを選択しバネ自体の圧縮量(δ)をδ1とした場合、圧縮バネには、Fb=k2*δ1だけの力が付与される。図7(b)で、駆動手段28を駆動して圧縮バネBをバネ自体の圧縮量δ1まで圧縮していくと、工具ホーンのワークW1、W2に対する押圧力PはPbまで圧力上昇する。超音波溶着をするとワークW1、W2が溶融して工具ホーンの位置(h1)が下がるので、駆動手段28を駆動して工具ホーンの位置の変化量(Δh1)と同じ量だけ圧縮バネを逐次圧縮すれば(Δh2=Δh1)、圧縮バネ32bの圧縮量が変わらず一定圧でワークW1、W2を押圧し続ける、いわゆる保圧動作をすることができる。保圧動作が始まってから超音波振動を開始し、工具ホーン44の位置が終点に達するまでワークW1、W2に超音波エネルギーを与えることで、両者を超音波溶着することができる。
【0027】
図8に、本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置での溶着作業の動作手順をフローチャートとして示す。また、理解のために、図9に本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置での圧縮バネの圧縮量(δ)、押圧力(P)、その他のパラメータ(h1、h2)の位置関係を示した。
以下、図8のフローチャートに沿って、溶着作業の動作手順を説明する。必要により、図9を参照してほしい。
【0028】
まず、操作部68から超音波溶着装置の「電源入」が指示されると、超音波溶着装置の主制御部60が起動する(ステップST1)、操作部68から所定の押圧力(Pb)を始めとする溶着条件が入力されると、主制御部60は記憶部67に記憶し溶着条件を設定する(ステップST2)。ここでは、実施しようとする超音波溶着作業に適した任意の圧縮バネが自動または作業者の操作により選定され、選定されセットされた圧縮バネに対応した動作条件を記憶部67から主制御部60が読み出して、溶着開始の指示を待つ。
【0029】
より具体的には、操作部68から入力された工具ホーンの押圧面積(Ap)と、超音波溶着作業に用いたい所定の押圧力(Pb)から、必要な圧縮バネの圧縮力(Fb=Pb*Ap)を求め、バネ定数(k2)で除して、所定の押圧力(Pb)を得るために必要な圧縮量(δ1=Fb/k2=Pb*Ap/k2)を計算する。
操作部68より溶着開始の指示が入力されると(ステップST3のYes)、主制御部60より駆動制御部61を介してサーボモータである駆動手段28を駆動する。駆動手段28を駆動して送りネジ29を押し下げると、押圧部30は下降してバネ用蓋32aと圧縮バネ32bを圧縮する。本発明の構成では、圧縮バネ32bが圧縮バネ収容部31内にあって圧縮量を直接測定できないため、バネ用蓋32aと圧縮バネ32bを押し下げる押圧部30の位置(h2)を第二のリニアスケール51により測定している。バネ座32cの位置を動かさないで押圧部30を下方に移動した距離と圧縮バネ32b自体の圧縮量(δ)の値が等しいことは容易に理解されよう。
【0030】
なお、第一のリニアスケール50は、「工具ホーン44の位置(h1)」を読み取る。また、ロードセル45は、「圧縮バネ32bによる押圧力(P)」を読み取る。主制御部60は、これらの値を駆動制御部61にフィードバックするようにしている。
駆動手段28を駆動して押圧部30を下降すると圧縮バネ32bは圧縮量に応じた力を生じる。圧縮バネ32bは、フランジ付きストッパ46とロードセル45を押し下げ、下方の超音波振動ユニット40を押し下げる。超音波振動ユニット40の先端に取り付けた工具ホーン44は、ワークW1,2を押圧する。圧縮バネ32b自体を所定量(δ1)圧縮したとき、圧縮バネ32bは力(F=k2*δ1)を生じて、所定の押圧力(Pb=F/Ap)に達する(ステップST4)。
【0031】
ロードセル45の測定値(P)が予定している押圧力(Pb)であることを確認して(ステップST5)。ロードセル45の測定値(P)が予定している押圧力(Pb)であれば(ステップST5のYes)、超音波振動を開始し、ワークW1、W2を溶融する(ステップST6)。ステップST5でロードセル45の測定値(P)が予定している押圧力(Pb)でなければ(ステップST5のNo)、圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を必要量(α)だけ増減して(ステップST9)、ロードセル45の測定値(P)を予定している押圧力(Pb)にする。なお、必要量(α)は、主制御部60が記憶部67に記憶したバネ定数その他のデータから求める。
【0032】
ワークW1、W2が溶融を始めると工具ホーン44が下降する。主制御部60は、工具ホーン44の位置が予定している溶着作業の終点に達していなければ(ステップST7のNo)、工具ホーン44の位置の変化量(Δh1)と圧縮バネを圧縮する変化量(Δh2)を算出する。本発明の第一の実施の形態では、工具ホーン44の位置の変化量(Δh1)と圧縮バネを圧縮する変化量(Δh2)を等しくして、ワークW1とW2とが溶着して工具ホーン44が所定量下がったとしても、駆動手段28は同じ量だけ圧縮バネの蓋32aを押し下げて圧縮バネ32bの長さを一定に保ち、圧縮バネ32bの押圧力を所定の押圧力(Pb)を保ったまま、ワークW1,W2を溶着する。
【0033】
工具ホーン44の位置が溶着作業の終点に達すると(ステップST7のYes)、超音波振動を停止し、駆動手段28を反転駆動して原点復帰する(ステップST10)。操作部68に「電源断」の指示があれば(ステップ11のYES)、電源を切断する(ステップ12)。
なお、このフローチャートは実施の形態の一つを例示したものであり、必要により、超音波振動を開始するタイミングを、工具ホーンが任意の特定位置に到達した時点で超音波振動を開始するようにしてもよい。
【0034】
「電源断」の指示が無ければ(ステップ11のNo)、フローチャートのステップST3の直前に戻り、次の溶着開始指示が入力されるのを待機する。再び、操作部68に溶着開始の指示が入力されれば、同じ溶着条件設定のままステップST4からステップST10までの超音波溶着作業を行う。もし、ステップST3で、既に設定されている溶着条件で溶着を開始しないと入力されると(ステップST3のNo)、溶着条件設定のステップST2の直前に戻るので、新たな溶着条件を設定して(ステップST2)、溶着開始の指示が入力されるのを待つ(ステップST3)。
【0035】
本発明では、圧縮バネ収容部31に予め3種類のバネ定数の圧縮バネ(A)32b、(B)33b、(C)34bを入れておき、溶着作業に応じていずれかの圧縮バネを選択可能にしている。また、それぞれの圧縮バネを実際に圧縮した際の圧縮量に対する力(F)の実測値をバネ特性として記憶部67に記憶している。
先にも説明したように、溶着が始まり、工具ホーンの位置(h1)が下がったときに、駆動手段28を駆動し、工具ホーンの位置の変化(Δh1)と同じ量だけ圧縮バネを圧縮すれば(Δh2=Δh1)、圧縮バネ32b自体の圧縮量(δ)は変わらない。そのため、一定圧でワークW1、W2を押圧することができる。
【0036】
もしロードセル45の測定値(P)が予定している押圧力(Pb)と異なる場合には、主制御部60はロードセル45の測定値(P)を駆動手段28の駆動制御部61にフィードバックすることで、圧縮バネ自体の圧縮量(δ)を変えるよう駆動手段28による圧縮量(h2)を増減し、予定している押圧力でワークW1、W2を押圧する。具体的には、主制御部60は、工具ホーンの位置の変化(Δh1)と圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を同じにしているにも関わらず、ロードセル45の測定値(P)が予定している押圧力(Pb)より増えた場合には圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を工具ホーンの位置の変化(Δh1)より必要量(α)減らし(Δh2=Δh1−α)、押圧力(P)が減った場合には圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を工具ホーンの位置の変化(Δh1)より必要量(α)増やすように(Δh2=Δh1+α)、駆動制御部61を介して駆動手段28を制御する。このように、圧縮バネ32bについて圧縮量を細かく制御することにより最小限の押圧力変化で所定の押圧力を与えることができる。超音波溶着の溶着作業はごく短い時間で行われる。本発明は、短い溶着作業の時間内でワークが溶け出したときに所定の押圧力を一定に保つことができる。
【0037】
なお、本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置100について、図10にB1として示したように、工具ホーン44の位置が超音波溶着作業の始点から終点に至る間に、第一の押圧力(Pb1)に達した後、第一の押圧力(Pb1)を保って押圧して、所定時間(Δt)経過した時点から、押圧力を変化させて、超音波溶着作業の終点までを第一の押圧力(Pb1)より低い第二の押圧力(Pb2)で押圧するというように、二段階に押圧する超音波溶着をすることもできる。
【0038】
図11に、本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置で押圧力を段階的に変化させたときの動作手順をフローチャートとして示す。図11では、図8のフローチャートと比べると、ステップST6とステップST7の間に、ステップST20からステップST24の手順を追加している。以下、図8のフローチャートと異なる部分を中心に説明し、重複した部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
ステップST6で、所定押圧力(Pb1)でワークを押圧した状態で超音波振動を加えた後、所定時間(Δt)が経過すると(ステップST20)、圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を第一の押圧力(Pb1)と第二の押圧力(Pb2)の差分(−β)だけ変化させる(ステップST21)、その後直ぐに、押圧力(P)が第二の所定押圧力(Pb2)になったことを確認する(ステップST22)、押圧力(P)が第二の所定押圧力(Pb2)になっていれば、工具ホーン44の位置が溶着作業の終点に達するまでワークを押圧する(ステップST7)。もし、押圧力が第二の押圧力(Pb2)になっていないときは、図8のステップST9と同じように、圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を必要量(α)だけ増減する(ステップST24)。
【0040】
工具ホーン44の位置が予定している溶着作業の終点に達していなければ(ステップST7のNo)、工具ホーン44の位置の変化量(Δh1)と圧縮バネを圧縮する変化量(Δh2)を算出する。そして、工具ホーン44の位置の変化量(Δh1)と圧縮バネを圧縮する変化量(Δh2)を等しくする(ステップST23)。
工具ホーン44が溶着作業の終点に達したら(ステップST7のYes)、超音波振動を停止して工具ホーン44を原点復帰させる(ステップST10)。「電源断」の指示が操作部68に入力されると(ステップST11のYes)、電源を切断する(ステップST12)。このことにより、図10のように押圧力を二段階に変える超音波溶着ができる。
【0041】
なお、押圧力や超音波振動を付与するタイミング等の溶着条件については、フィードバックの内容を任意に設定して、所望の超音波溶着をすることができる。例えば、図12(a)は、圧縮バネ(B)32bを用いて超音波接合作業を行う際に、一定の押圧力に達する過程を急峻に立ち上げる場合(B2)と、なだらかに立ち上げる場合(B4)と、それらの中間的に立ち上げる場合(B3)の荷重曲線を示す。
【0042】
一定の押圧力に達する過程を急峻に立ち上げるか、なだらかに立ち上げるかは、記憶部67に駆動制御の方法として、駆動手段28であるサーボモータを急速回転駆動する制御プログラム、あるいは低速回転駆動するプログラムを記憶させておき、所望により選択して読み出して使用すればよい。
同様に、図12(b)のB5に示した曲線のように、一定の押圧力に達した後、工具ホーンの移動量の変化(Δh1)より圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を所定の割合で大きくしていけば、一定の押圧力に達した後、更に押圧力を高くすることができる。逆に、一定の押圧力に達した後、工具ホーンの移動量の変化(Δh1)より圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を所定の割合で小さくしていけば、図12(b)のB6に示した曲線のように、一定の押圧力に達した後、押圧力を小さくすることができる。
【0043】
また、図12(c)のB7に示した曲線のように、一定の押圧力に達した後、工具ホーンの移動量の変化(Δh1)に対して圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)をより大きく、あるいはより小さく交番的に変化させることにより、押圧力の大きさが波を打つように変化させることもできる。
なお、本発明を適用した超音波溶着装置を、汎用的な装置として使用する際には、複数のバネの一つを図13に示したような中実な剛体39としておき、必要により、バネを中実な剛体に置き換えられるようにしてもよい。
【0044】
なお、上記本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置100では、汎用装置として複数の圧縮バネを交換可能に収容して任意に選択する構造を示したが、かならずしも複数の圧縮バネを同時に収容しなくても、一つの圧縮バネだけを収容可能にして、必要により圧縮バネを取り替えるようにしてもよい。記憶部68に複数の圧縮バネのバネ定数等のバネ特性と超音波溶着条件を記憶させておけば、各種の超音波溶着条件に容易に設定可能だからである。
【0045】
また、本発明の第一の実施の形態にかかる超音波溶着装置100では、本体フレーム10に対して超音波振動ユニット40をスライド可能に支持した場合を説明したが、図13に本発明の第一の実施の形態にかかる他の超音波溶着装置101を示したように、本体フレーム10の支柱部分10aの一部を、支柱部分10aに対してスライド可能な別部品、すなわちスライド部材20として、このスライド部材20に対して超音波振動ユニット40をスライド可能に支持してもよい。図13では、スライド部材20の輪郭を他と識別し易くするため、太い実線で示した。本体フレーム10の底部10bにサーボモータ13を回転軸を上に向けた状態で固定し、サーボモータ13の回転軸に送りネジ14を取り付け、スライド部20には、送りネジ14と対をなすナットを埋め込んで、サーボモータ13を回転して回転角度に応じてスライド部20が上下動するようにすれば、工具ホーン44を原点復帰するときにスライド部20を一定量上昇させることにより、アンビル11と工具ホーン44の間を大きく開けて、ワークW1、2の出し入れを容易にすることができる。また、サーボモータ13の代わりに、エアーシリンダ等を用いて、空気圧によりスライド部20を支柱部分10aに沿って上下動するようにしてもよい。
【0046】
一般に、超音波溶着作業、超音波接合作業、あるいは布線作業に要する時間は1秒程度以下という短時間である。そのため、従来の方法では、短時間の作業途中に押圧力を細かく制御して一定に保つことができなかったのであるが、本発明によれば、小さい押圧力あるいは所定の押圧力での押圧を正確に行うことを精密に管理し、良好な溶着結果あるいは接合結果を得ることができる。
【0047】
なお上記では、超音波振動ユニット40をバランスウェイト25で上方に持ち上げる構成を説明したが、駆動手段28であるサーボモータに十分な回転保持力があるときは、バランスウェイト25を設けなくてもよい。また、圧縮バネの特性値を記憶部67に予め記憶する際に、バネ定数を記憶して利用しても良いし、変位に対するバネ力を実測した値を記憶して利用しても良い。力を一定に保つには実測値を利用したほうが良い場合があるからである。
【0048】
(第二の実施の形態)
次に本発明の第二の実施の形態として、超音波接合装置を説明する。図14に示したように、本発明の超音波接合装置200は、基本的な構成は既に説明した本発明の第一の実施の形態の超音波溶着装置100と同じであるが、超音波振動ユニット40’において工具ホーン90の端面の軸心から偏心した位置に牙状突起91を設け、捩り振動をする超音波振動手段93を用いて、工具ホーンの牙状突起91が工具ホーン90の軸を中心に微小な円弧を描く捩り振動をさせている。
【0049】
このような牙状突起91を設けた工具ホーン90を用いて金属板などの被接合物(W3、W4)を固相結合することは、出願人が既に特願2010−32366で詳細に説明した。図15は、牙状突起91を設けた工具ホーン90の一例を斜視図で示したものである。同図に示すように、牙状突起91は工具ホーン90の端面において軸心(V軸)から所定の偏心量(e)偏心した位置を軸(T軸)として突出している。
【0050】
また、被接合物の一方あるいは両方の接合対象面に凹凸を設けて、被接合物を強固に固相結合することについても出願人が特願2011−137761で詳細に説明した。図16は、被接合物を強固に固相結合する際に用いた工具ホーン95の一例を斜視図で示したものである。同図に示す工具ホーン95には、突起96が工具ホーン95の端面において軸心(V軸)から偏心した位置を軸(T軸)として突出しており、突起96の先端は僅かに捩り振動方向に沿い、押圧方向に凸の円弧状をなしている。金属板などの被接合物(W3、W4)を固相結合するには、ある程度強い押圧力を付与した状態で超音波エネルギーを与えることが求められる。本発明の第二の実施の形態の超音波接合装置によれば、超音波接合条件を精密に管理し、所定の押圧を正確に行って良好な接合結果を実現することができる。
【0051】
本発明によれば、超音波接合装置であっても、押圧力を付与する条件を任意に制御できるという利点がある。例えば、第一の実施の形態で、超音波溶着装置を例として説明した図10や図12(a)(b)(c)のように、押圧力や超音波振動を付与するタイミング等の諸条件については、フィードバックの内容を任意に設定することで押圧力の所定値を変えて、所望の超音波接合をすることができる。
【0052】
例えば、先に説明した図12(b)のようにすれば、圧縮バネ(B)32bを用いて超音波接合作業を行う際に、一定の押圧力に達した後、押圧力を増加する場合(B5)、一定の押圧力を持続する場合(B3)、一定の押圧力に達した後、押圧力を減少する場合(B6)の荷重曲線のように超音波接合作業をすることができる。
先に説明した図12(c)のようにすれば、圧縮バネ(B)32bを用いて超音波接合作業を行う際に、一定の押圧力に達した後、押圧力の増減を繰り返す荷重曲線(B7)のように超音波接合作業をすることができる。本発明によれば、同じ超音波接合装置であっても、このように多様な荷重曲線を用いた超音波接合作業をすることができるという利点がある。
【0053】
超音波接合作業では、以上説明したように押圧力を付与する条件を任意に変化させることにより接合強度を増すことが期待される。
【0054】
(第三の実施の形態)
本発明は、超音波溶着装置、超音波接合装置の他に、布線装置にも適用することができる。図17に第三の実施の形態として、本発明を適用した布線装置300の概略を斜視図として示す。布線装置300では、ホーン80に超音波振動を伝えるのであるが、本体フレームの支柱部分と底部を切り離して、支柱部分を本体フレーム10’とし、底部を移動テーブル12として紙面右方向(白抜き矢印)に移動できるようにしている。また、ホーン80の先端に牙状の突状押圧部81を設け、突状押圧部81の下面に絶縁被覆電線W6をガイドしながら押圧するガイド溝を設けている。そして、ホーン80の軸に対して傾斜して設けたワイヤーガイド82から突状押圧部81の下に、絶縁被覆電線(ワイヤー)W6を送り出すよう構成している。
【0055】
移動テーブル12に載置した接着剤付絶縁基板(ワーク)W5の上に絶縁被覆電線W6を乗せ、その上をホーン80の突状押圧部81で押圧して超音波振動を加え、接着剤付絶縁基板(ワーク)W5上の接着剤と絶縁被覆電線W6の表面に塗布された接着剤とを活性化して接着・固定し、更に移動テーブル12を移動して、他の位置に絶縁被覆電線(ワイヤー)W6を布線していく。
【0056】
突状押圧部81はホーン80の端面において軸心(V軸)から所定の偏心量(e)偏心した位置を軸(T軸)として突出しており、捩り振動をする超音波振動手段93を用いて、ホーン80は、突起状押圧部81に図17の符号Sで示した捩り振動を与えている。牙状の突起状押圧部81が絶縁被覆電線(ワイヤー)W6を接着剤付絶縁基板(ワーク)W5に押圧する押圧力は、既に第一、第二の実施の形態で説明したように、圧縮バネの圧縮量と、ホーン80の位置、ロードセル45による押圧力の各測定値をフィードバックして一定値を保つことができる。
【0057】
そのため、均一な押圧力のもと、牙状の突起状押圧部81から超音波捩り振動を与え、絶縁被覆電線(ワイヤー)W6の絶縁被覆を容易に溶かして、絶縁被覆電線(ワイヤー)W6を接着剤付絶縁基板(ワーク)W5に接着・固定することができる。
図18に、本発明の第三の実施の形態にかかる布線装置の工具ホーン先端近傍の正面図を示した。詳しい説明は省略するが、図18によれば、布線機300のホーン80とワイヤW6と接合対象物W5の位置関係が理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、超音波溶着装置、超音波接合装置および布線装置に関し、特に超音波溶着時、超音波接合時、あるいは布線時に、被溶着物あるいは被接合物であるワークを所望の圧力を保って押圧する超音波溶着装置、超音波接合装置および布線装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 本体フレーム
10a 支柱部分
10b 底部
11 アンビル
21 滑車支持部材
22 滑車回転軸
23 滑車
24 ワイヤ
25 バランスウェイト
26a、26b 水平壁
27 軸
28 駆動手段
29 送りネジ
30 押圧部材
31 圧縮バネ収容部
32a、33a、34a バネ用蓋
32b、33b、34b 圧縮バネ
32c、33c、34c バネ座
40 超音波振動ユニット
41 ワイヤ固定部
42 ユニットフレーム
43 超音波振動手段
44 工具ホーン
45 ロードセル
46 フランジ付きストッパ
50 第一のリニアスケール
51 第二のリニアスケール
60 主制御部
61 駆動制御部
62 超音波振動駆動部
63 工具ホーンの位置読取部
64 荷重読取部
65 荷重設定部
66 圧縮バネの圧縮量読取部
67 記憶部
68 操作部
90 超音波接合用工具ホーン
91 牙状突起
W1、W2 被溶着物
W3、W4 被接合物
W5 接着剤付絶縁基板
W6 絶縁被覆電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームに対してスライド自在な超音波振動ユニットに取り付けた工具ホーンをワークに押圧して超音波溶着を行う超音波溶着装置において、
前記工具ホーンの移動量を測定する第一のリニアスケールと、
前記超音波振動ユニットを押圧する圧縮バネと、
前記圧縮バネを圧縮する駆動手段と、
前記圧縮バネの圧縮量を測定する第二のリニアスケールと、
前記圧縮バネによる押圧力を測定するロードセルと、を設け、
前記駆動手段を駆動して前記圧縮バネを圧縮したときに、
前記ロードセルで測定した前記圧縮バネによる押圧力(P)と、
前記第一のリニアスケールで測定した前記工具ホーンの移動量(h1)と、
前記第二のリニアスケールで測定した圧縮バネの圧縮量(h2)と、
を前記駆動手段にフィードバック制御して、
前記ワークに任意の押圧力を付与した状態で超音波溶着を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする超音波溶着装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記駆動手段で圧縮バネを圧縮して所定の押圧力(Pb)に達したことを前記ロードセルが検出したときに、
前記工具ホーンの移動量(h1)の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量(h2)の変化(Δh2)を算出し、前記工具ホーンの移動量の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を等しく保って、前記圧縮バネ自体の圧縮量(δ)を変えず、前記圧縮バネの押圧力(P)を一定に保つよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の超音波溶着装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記駆動手段で圧縮バネを圧縮して所定の押圧力(Pb)に達したことを前記ロードセルが検出したときに、
前記工具ホーンの移動量(h1)の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量(h2)の変化(Δh2)を算出し、前記工具ホーンの移動量の変化(Δh1)に対する前記圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を増大あるいは減少することにより、前記圧縮バネの圧縮量を変えて前記圧縮バネの押圧力(P)を変化させて前記所定の押圧力(Pb)を変化させるよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の超音波溶着装置。
【請求項4】
前記制御手段には記憶手段を設け、前記圧縮バネの特性値を前記記憶手段に予め記憶しておくことにより、前記工具ホーンを超音波溶着作業の始点から終点まで変位させて被溶着物を押圧する際に、前記記憶手段から圧縮バネの特性値を読み出して、前記駆動手段による圧縮バネの圧縮量を逐次算出して駆動制御するようにしたことを特徴とした請求項1に記載の超音波溶着装置。
【請求項5】
さらに、押圧方向と平行な軸周りに回転自在な回転体を有し、
前記圧縮バネは、前記回転体の軸周りに複数設けられており、当該回転体を回転させることで押圧に用いる圧縮バネを選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の超音波溶着装置。
【請求項6】
前記圧縮バネを交換可能に設けた請求項1に記載の超音波溶着装置。
【請求項7】
本体フレームに対してスライド自在な超音波振動ユニットに取り付けた工具ホーンをワークに押圧して超音波接合を行う超音波接合装置において、
前記工具ホーンの移動量を測定する第一のリニアスケールと、
前記超音波振動ユニットを押圧する圧縮バネと、
前記圧縮バネを圧縮する駆動手段と、
前記圧縮バネの圧縮量を測定する第二のリニアスケールと、
前記圧縮バネによる押圧力を測定するロードセルと、を設け、
前記駆動手段を駆動して前記圧縮バネを圧縮したときに、
前記ロードセルで測定した前記圧縮バネによる押圧力(P)と、
前記第一のリニアスケールで測定した前記工具ホーンの移動量(h1)と、
前記第二のリニアスケールで測定した圧縮バネの圧縮量(h2)と、
を前記駆動手段にフィードバック制御して、
前記ワークに任意の押圧力を付与した状態で超音波接合を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする超音波接合装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記駆動手段で圧縮バネを圧縮して所定の押圧力(Pb)に達したことを前記ロードセルが検出したときに、
前記工具ホーンの移動量(h1)の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量(h2)の変化(Δh2)を算出し、前記工具ホーンの移動量の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を等しく保って、前記圧縮バネ自体の圧縮量(δ)を変えず、前記圧縮バネの押圧力(P)を一定に保つよう構成したことを特徴とする請求項7に記載の超音波接合装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記駆動手段で圧縮バネを圧縮して所定の押圧力(Pb)に達したことを前記ロードセルが検出したときに、
前記工具ホーンの移動量(h1)の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量(h2)の変化(Δh2)を算出し、前記工具ホーンの移動量の変化(Δh1)に対する前記圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を増大あるいは減少することにより、前記圧縮バネの圧縮量を変えて前記圧縮バネの押圧力(P)を変化させて前記所定の押圧力(Pb)を変化させるよう構成したことを特徴とする請求項7に記載の超音波接合装置。
【請求項10】
前記制御手段には記憶手段を設け、前記圧縮バネの特性値を前記記憶手段に予め記憶しておくことにより、前記工具ホーンを超音波接合作業の始点から終点まで変位させて被接合物を押圧する際に、前記記憶手段から圧縮バネの特性値を読み出して、前記駆動手段による圧縮バネの圧縮量を逐次算出して駆動制御するようにしたことを特徴とした請求項7に記載の超音波接合装置。
【請求項11】
さらに、押圧方向と平行な軸周りに回転自在な回転体を有し、
前記圧縮バネは、前記回転体の軸周りに複数設けられており、当該回転体を回転させることで押圧に用いる圧縮バネを選択可能であることを特徴とする請求項7に記載の超音波接合装置。
【請求項12】
前記圧縮バネを交換可能に設けた請求項7に記載の超音波接合装置。
【請求項13】
本体フレームに対してスライド自在な超音波振動ユニットに取り付けたホーンをワークに押圧して超音波接合を行う布線装置において、
前記ホーンの移動量を測定する第一のリニアスケールと、
前記超音波振動ユニットを押圧する圧縮バネと、
前記圧縮バネを圧縮する駆動手段と、
前記圧縮バネの圧縮量を測定する第二のリニアスケールと、
前記圧縮バネによる押圧力を測定するロードセルと、を設け、
前記駆動手段を駆動して前記圧縮バネを圧縮したときに、
前記ロードセルで測定した前記圧縮バネによる押圧力(P)と、
前記第一のリニアスケールで測定した前記ホーンの移動量(h1)と、
前記第二のリニアスケールで測定した圧縮バネの圧縮量(h2)と、
を前記駆動手段にフィードバック制御して、
前記ワークに任意の押圧力を付与した状態で超音波接合を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする布線装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記駆動手段で圧縮バネを圧縮して所定の押圧力(Pb)に達したことを前記ロードセルが検出したときに、
前記ホーンの移動量(h1)の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量(h2)の変化(Δh2)を算出し、前記ホーンの移動量の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を等しく保って、前記圧縮バネ自体の圧縮量(δ)を変えず、前記圧縮バネの押圧力(P)を一定に保つよう構成したことを特徴とする請求項13に記載の布線装置。
【請求項15】
前記制御手段は、前記駆動手段で圧縮バネを圧縮して所定の押圧力(Pb)に達したことを前記ロードセルが検出したときに、
前記ホーンの移動量(h1)の変化(Δh1)と前記圧縮バネの圧縮量(h2)の変化(Δh2)を算出し、前記ホーンの移動量の変化(Δh1)に対する前記圧縮バネの圧縮量の変化(Δh2)を増大あるいは減少することにより、前記圧縮バネの圧縮量を変えて前記圧縮バネの押圧力(P)を変化させて前記所定の押圧力(Pb)を変化させるよう構成したことを特徴とする請求項13に記載の布線装置。
【請求項16】
前記制御手段には記憶手段を設け、前記圧縮バネの特性値を前記記憶手段に予め記憶しておくことにより、前記ホーンを超音波接合作業の始点から終点まで変位させて被溶着物を押圧する際に、前記記憶手段から圧縮バネの特性値を読み出して、前記駆動手段による圧縮バネの圧縮量を逐次算出して駆動制御するようにしたことを特徴とした請求項13に記載の布線装置。
【請求項17】
さらに、押圧方向と平行な軸周りに回転自在な回転体を有し、
前記圧縮バネは、前記回転体の軸周りに複数設けられており、当該回転体を回転させることで押圧に用いる圧縮バネを選択可能であることを特徴とする請求項13に記載の布線装置。
【請求項18】
前記圧縮バネを交換可能に設けた請求項13に記載の布線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−63521(P2013−63521A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202001(P2011−202001)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000195649)精電舎電子工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】