説明

超音波発生用プローブ

【解決課題】高周波発生板を振動させて、高周波成分を含む数多くの針状の超音波を高周波発生板のほぼ全面で発生させ、無数の中空微小球体を高周波発生板のほぼ全面において効率的に破泡させて所定場所に外因性分子を分子導入することを課題とする。
【解決手段】(a) 高周波発生板取付開口(9)を有するプローブ本体(1)と、(b) 前記高周波発生板取付開口(9)にその外端縁(2G)が固着されて設けられ、電圧印加によって異なる位置から2以上の高周波を発生させる高周波発生板(2)とで構成されている事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波発生板の2以上の異なる位置から高周波を発生させ、高周波発生板のほぼ全面にわたって音響性を有する中空微小球体を破壊することが出来る、換言すれば超音波で効率よく破泡させる事が出来る医療用の超音波発生用プローブに関するもので、医療分野以外では洗浄、殺菌にも応用が可能であり、たとえば湖水、海水、ダムの浄化や、食品(牡蠣、海苔)の滅菌にも利用可能な超音波発生用プローブに係るものである。
【背景技術】
【0002】
超音波分子導入法は、超音波の特性を利用するもので、プローブから発生した超音波により、(1)経皮吸収の増大、(2)中空微小球体(音響性のナノバブル或いは/及びマイクロバブル)と外因性分子とを含む組成物乃至混合物を利用した細胞内への生理活性物質の導入、(3)生体内における薬物効果の増強などが報告されており、操作方法も簡便で装置も安価であり、非侵襲的に外因性分子を患部に導入することができる処から現在では心臓を始めとする循環器疾患、消化器疾患或いは悪性腫瘍の治療において重要な役割を果たしている。
【0003】
この従来型の超音波発生用プローブ(B)は、図3に示すようなもので、概略、円筒状のプローブ本体(1’)と、プローブ本体(1’)の先端開口に装着された金属板(6’)と、金属板(6’)の内面側に直接全面接着させて配置された圧電素子(2’)並びに圧電素子(2’)に設けられた電極に接続された給電コード(4’)(5’)とで構成されている。このような構造のプローブ(B)では、比較的厚い金属板(6’)に圧電素子(2’)の下面全面を、接着層(K’)を介して接着して外端縁全周を非接着[両者の間隙を(L’)で示す。]としているために、圧電素子(2’)に交流電圧又はパルス電圧を印加した場合、皮膚等への接触面となる金属面(6a’)からはひとつのガウシアン分布の形状=正規分布の超音波(PG)のみが発生する[図3(b)参照]。前記正規分布波形の超音波(PG)の後述する微小中空球体の破泡有効範囲を(YG)で示す。そしてこの一つの正規分布波形の超音波(PG)を利用して下記のような外因性分子(薬剤や遺伝子)の生体の所定場所への分子導入が行われていた。
【0004】
特許文献1は、生体の特定部位に外因性分子である生物学的活性薬剤を送達するための組成物、即ち、微小中空球体を含有する生物学的活性薬剤導入組成物を超音波に曝露することで、微小中空球体を特定部位で破泡させ、破泡時の衝撃圧で前記生物学的活性薬剤(この場合は遺伝子)が特定部位に取り込まれるようにするものである。
【0005】
更に詳述すれば、特許文献1は、内部ガスとしてパーフルオロカーボンを含有したアルブミン由来の音響性中空微小球体(ナノ又はミクロンバブル)を使用し、これに中空微小球体の共振周波数に近い周波数であり、中空微小球体をより低い音圧で確実に破泡させることができる1MHzの高周波数超音波を作用させて破泡させ、その衝撃圧で生体内に生物学的活性薬剤の導入を図る方法が開示されている。この方法は生体の特定領域、たとえば脳、消化管、血管、筋肉、特に癌組織などの生体の特定部位への生物学的活性薬剤導入を目指すものであるが、プローブの超音波発生面[図3の従来例では金属板(6')の外面(6a')]からは面央部分(YG)が最も音圧が高く、外に向かうほど立体的に音圧が漸減する正規分布状の固定周波数での超音波が発生するものを使用している。この場合、超音波発生面の狭い中央部分(YG)[前述のように図3(b)で破泡可能な有効範囲を(YG)として模式的に示す。]のみが中空微小球体を振動・破泡させる有効領域となり、大部分を占める周辺部分は破泡には殆ど働かず、生物学的活性薬剤の特定部位への導入量が非常に少ないという問題があった。
【0006】
引用文献2は、内蔵ガスがパーフルオロカーボンである中空微小球体(音響性のナノバブル或いは/及びマイクロバブル)を含み、治療用遺伝子を含有する急性心筋梗塞治療のための「遺伝子導入剤」に関する発明で、遺伝子導入剤を血中に注入することにより、心筋に導入された遺伝子導入剤中の中空微小球体を超音波照射下にて破泡させ、その衝撃によるHGF遺伝子(=治療用遺伝子)の心筋への導入を可能としたものである。使用超音波周波数は、中空微小球体破泡のためにやはり超音波発生用プローブの超音波発生面からは面央が最も高い前記正規分布状の固定周波数の超音波が発生するものを使用しており、前述同様有効範囲が狭く生物学的活性薬剤の特定部位への導入量が非常に少ないという問題があった。
【0007】
特許文献3は、腫瘍内またはその表面に中空微小球体を導入し或いは付着させ、当該中空微小球体を超音波で破泡させることにより、前記腫瘍を構成する腫瘍細胞の少なくとも一部を死滅させる腫瘍治療装置で、該腫瘍治療装置は生体内に投与された前記中空微小球体の存在を確認するための第1の超音波を発振する第1の超音波振動子と、前記中空微小球体を破泡させるための第2の超音波を発振する第2の超音波振動子とを具備し、腫瘍治療装置内の超音波制御手段によって前記第1の超音波の反射波から得られる情報に基づいて、前記第2の超音波の発振を制御するようになっており、第1の超音波と第2の超音波(周波数=100kHz〜10MHz、超音波の出力=0.1〜30W/cm)とは、それらの出力及び/又は周波数が異なるように制御されている。この場合もやはり超音波発生用プローブの超音波発生面からは面央が最も高い正規分布状の固定周波数の超音波が発生するものを使用している。この場合も前述同様超音波の有効領域が非常に狭く超音波振動子全面積のうちの僅かな面積内に位置する中空微小球体しか破裂させることができず、治療に時間が掛かり過ぎるという問題があった。
【0008】
以上のように音響性を有する中空微小球体、即ちナノバブル或いはマイクロバブルを利用したこの種の装置では、いずれも超音波発生用プローブの超音波発生面からは面央部分(YG)が最も音圧が高く、外に向かうほど立体的に音圧が漸減する正規分布状の固定周波数の超音波が発生するものを使用しており、いずれも超音波発生用プローブの超音波発生面全体に対して、中空微小球体破泡のための有効面が中央部分のごく僅かな領域(YG)に限定されてしまい、広い周辺部分での破泡が出来ず薬剤などの導入量がわずかであるという欠点を克服することができなかった(特許文献1‐3)。
【0009】
【特許文献1】特開2002−145784
【特許文献2】特開2004−210774
【特許文献3】特開2004−223175
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように従来の技術・手法では、或る固定周波数でガウシアン分布形状の単一超音波を発するプローブを使用して音響性を有する中空微小球体を使って生体の所定場所に外因性分子を分子導入することを基本概念としてきた。
これに対して本発明は、
1)圧電素子単独で構成された高周波発生板或いは薄い金属板に圧電セラミックス薄板を貼り付けた高周波発生板を高次に振動させて、高周波成分を含む数多くの針状の超音波を高周波発生板のほぼ全面で発生させ、或いは、
2)薄い金属板に複数の圧電セラミックス薄板を張り付けた高周波発生板を使用することで、数多くの針状の超音波を各圧電セラミックス薄板に対応部位に発生させ、結果として高周波発生面のほぼ全面でその数倍の針状の超音波を発生させ、又は、
3)高周波発生板にメッシュ状の絶縁板を接着させることで、メッシュで囲まれた領域をそれぞれ独立した領域とし、各領域から針状の超音波を数多く発生させるもので、これにより、無数の中空微小球体を高周波発生板のほぼ全面において効率的に破泡させ、無数の中空微小球体崩壊で発生する無数のキャビテーション気泡の衝撃圧を効果的に利用して生体の所定場所に外因性分子を分子導入すること或いは前記キャビテーション気泡の衝撃圧を生体の所定場所に作用させることを可能にする、特に医療用として特に有効なプローブを基本概念とする。なお、医療分野の他には洗浄、殺菌にも応用が可能で、たとえば湖水、海水、ダムの浄化や、食品(牡蠣、海苔)の滅菌にも利用可能である。以下、特に医療用を代表例として説明する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明において、高周波発生板(2)は、
(イ)1枚の圧電素子単独で構成された高周波発生板(2)の場合(請求項1)、
(ロ)1乃至複数の圧電素子(2a)と金属板(2M)で形成された場合(請求項2又は3)、とがあり、
(ロ-1)この場合、圧電素子(2a)が1枚の場合にはその外端縁(2G)の全周或いはその一部が固着されている場合と(請求項2)、
(ロ-2)圧電素子(2a)が複数で、その外端縁(2G)が固着されている場合と離間して間隙(L)が設けられている場合(請求項3)がある。
なお、高周波発生板取付開口(9)の形状は、円形の場合、楕円形の場合或いは四辺形(長方形や正方形)の場合など必要に応じた形状を取ることが出来るし、これに合わせて高周波発生板(2)或いは圧電素子(2a)の形状も円形の場合、楕円形の場合或いは四辺形(長方形や正方形)とすることができる。
【0012】
請求項1のプローブ(A)は図1に示されているように1枚の圧電素子単独で構成された高周波発生板(2)を使用したもので、高周波発生板(2)はその外周全周が固着されている場合或いは四辺形の場合には全周は勿論、その対辺が固着されている場合とがある。前述のようにプローブ本体(1)としてはその高周波発生板取付開口(9)が円形の場合、楕円形の場合或いは四辺形の場合など必要に応じた形状を取ることが出来る。この点は請求項2,3の場合も同様である。
(a) 高周波発生板取付開口(9)を有するプローブ本体(1)と、
(b) 前記高周波発生板取付開口(9)にその外端縁(2G)が固着されて設けられ、電圧印加によって異なる位置から2以上の高周波を発生させる高周波発生板(2)とで構成されている事を特徴とする。
【0013】
請求項2のプローブ(A)は[1乃至複数の金属板(2M)の外端縁(2G)が固着されている]場合で、図4及び図2又は図5(b)に示されている。即ち、
(a) 高周波発生板取付開口(9)を有するプローブ本体(1)と、
(b) 前記高周波発生板取付開口(9)にその外端縁(2MG)が固着された振動用の薄板(2M)と、
(c) その外端縁(2G)が前記高周波発生板取付開口(9)に固着され且つ前記薄板(2M)に貼着されている1乃至複数の圧電セラミックス薄板(2a)又は(2a1)…とで構成されている事を特徴とする。この場合も前述のように高周波発生板取付開口(9)が円形の場合、楕円形の場合或いは四辺形の場合など必要に応じた形状を取ることが出来る。なお、圧電セラミックス薄板が1枚の単体で構成されている場合には(2a)で示し、複数の場合には(2a1)…(2an)で示す。
【0014】
なお、図4は請求項2と3を同時に示したもので、請求項2の場合は、1乃至複数の圧電セラミックス薄板(2a)又は(2a1)…(2an)の外端縁(2G)[圧電セラミックス薄板(2a)が長方形で複数の場合、外端縁(2G)は短辺側で、長辺側はフリーとする。]が高周波発生板取付開口(9)に接着されている。
次の請求項3(この場合は1枚の場合はない。)は、複数の圧電セラミックス薄板(2a1)…の外端縁(2G)には間隙(L)が設けられている。
【0015】
請求項3のプローブ(A)は(前述したように請求項2と共に図4及び図5(a)に示されている。)複数の圧電セラミックス薄板(2a1)…(2an)がプローブ本体(1)の内周面から離間[この部分を間隙(L)で示す。]しているもので、
(a) 高周波発生板取付開口(9)を有するプローブ本体(1)と、
(b) 前記高周波発生板取付開口(9)にその外端縁(2MG)が固着された振動用の薄板(2M)と、
(c) プローブ本体(1)の内周面から間隙(L)を設けて前記薄板(2M)に貼着されている複数の圧電セラミックス薄板(2a1)…(2an)とで構成されている事を特徴とする。
【0016】
請求項4は、「請求項1〜3に記載のいずれかのプローブ(A)において、生成された高周波が針状を呈している」事を特徴とする。
【0017】
請求項5のプローブ(A)は図7に示されているように、「複数の圧電セラミックス薄板(2a1)…(2an)が用いられている請求項1〜3に記載のいずれかのプローブ(A)であって、
(a) 圧電セラミックス薄板(2a1)の1がガウシアン分布波形の超音波(PG)を形成し、
(b) 他が針状波形の超音波(P)を形成する」事を特徴とする。
【0018】
請求項6のプローブ(A)は図6に示されているように、「請求項1〜5に記載のいずれかのプローブ(A)であって、薄板(2M)或いは高周波発生板(2)の外面に網板(2e)が更に貼着されている」事を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明プローブによれば、高周波発生板は高次の波(2つ以上の波)を発生させて振動するものであるから、電圧印加により高周波発生板を振動させれば高周波発生板の表面のほぼ全面には振動の腹の部分が多数形成され、この部分から針状の超音波が多数発生する。換言すれば、高周波発生板のほぼ全面にわたって針状の超音波が多数発生し、これによってプローブの高周波発生板を、外因性分子及び中空微小球体を担持する皮膚被着ゲルシート或いはクリーム(又はジェル)に圧着又は接触させるだけで高周波発生板のほぼ全面にわたって無数の中空微小球体が断続的且つ継続的に破泡され、この破泡時の無数の衝撃圧によって外因性分子が高周波発生板のほぼ全面にわたって短時間で効率よく必要箇所に断続的且つ継続的に打ち込まれることになる。これによりこれまで以上に高い薬理効果を得られるようになった。
【0020】
その他、複数の圧電セラミックス薄板が用いられているプローブで、圧電セラミックス薄板の1がガウシアン分布波形の超音波(PG)を形成し、他が針状波形の超音波(P)を形成する場合(図7)、ガウシアン分布波形の超音波(PG)によって、患部のような特定部位を探査特定し、続いて針状波形超音波(P)によって当該特定部位に集中している中空微小球体を前述のように破裂させ、その衝撃圧で、その周囲の外因性分子を周辺細胞あるいは周辺の血管に効率よく打ち込む。この場合、ガウシアン分布波形の超音波(PG)を中心にその周囲に針状波形超音波(P)を生成させるようにしておけば、単に超音波(PG)から針状波形超音波(P)に切り替えるだけで探索した患部をその時点で叩く事が出来、治療作業をより効率的に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図示実施例に従って順次説明する。本発明に使用する「音響性を有する微小球体(10)」とは殻をもつ中空微小球体(ナノバブル=ナノミクロンレベルの微小泡又はマイクロバブル=ミクロンレベルの微小泡)で、その内部に、生体に投与されたとき、生体の温度(37℃付近)においてガス状(気体状)となる物質が封入されている。このような物質(封入ガス)としては、例えば、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、水素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトンのような不活性ガス、六フッ化硫黄、十フッ化二硫黄、トリフルオロメチル硫黄ペンタフルオリドのようなフッ化硫黄、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、エチレン、プロピレン、プロパジエン、ブテン、アセチレン、プロピンのような低分子量炭化水素類またはこれらのハロゲン化物、C38のような高分子ガスであるパーフルオロカーボン(なお、好ましい具体例の1つは1,1,1,2,2,3,3,3-オクタフルオロプロパン)、ジメチルエーテルのようなエーテル類、ケトン類、エステル類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、六フッ化硫黄、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタンが好適である。かかる中空微小球体(10)は、生体中での高い安定性を発揮する。
【0022】
また、中空微小球体の膜(外殻(11))を構成する材料としては、例えば、アルブミンのようなタンパク質、ポリカチオン性脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチダルエタノールアミンのようなリン脂質のような各種の脂質、パルミチン酸、ステアリン酸のような高級脂肪酸、ガラクトースのような糖類、コレステロール、シトステロールのようなステロール類、界面活性剤、天然または合成分子等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
中空微小球体(10)の平均粒径は、特に限定されず、一般的には約100nm〜10μmであるが、最小直径は小さければ小さいほど望ましく、実際には0.05〜10μm程度であるのが好ましい。毛細血管の内径が7μm程度なので、0.05〜7μm程度であるのがより好ましい。
【0024】
中空微小球体(10)は、外殻(11)だけで構成されてもよいし(図9)、内部に外因性分子(13)(例えば薬剤)を含む水膜(10a)が形成されていてもよいし(図10)、中空微小球体(10)の殻(11)内或いはその表面に外因性分子(13)を含有(図11は含有の場合)或いは付着(或いは吸着)させるようにしてもよいし、更にこの殻(11)内に外因性分子(13)を含む水膜(10a)を形成するようにしてもよい(図12)。勿論、中空微小球体(10)の中空空間全体に充填するようにしてもよい。その他、外因性分子(13)を球体内のガスに含ませておいてもよい。外因性分子(13)の種類としては、処置対象により適宜のもの、例えば薬剤や遺伝子が採用される。
【0025】
中空微小球体(10)は、音響性であるから超音波等の外力が加わることで振動し、更には超音波の印加された振動数によっては共振して或いは超音波の強さ(音圧)によって押し潰されて破泡させられる。そして、破裂した場合には、中空微小球体(10)の破片を核として多数のキャビテーション気泡(11a)が発生し、これにより周囲に衝撃圧を発生させる(図15)。そして、この衝撃圧でキャビテーション気泡(11a)近傍の細胞(例えば皮膚(20)や血管又は内臓)の細胞膜の透過性を変化させる。この透過変化を起こした細胞膜からキャビテーション気泡(11a)近傍に存在する外因性分子(13)、例えば薬剤や遺伝子(核酸)が患部の細胞や血管の内部に浸透し、これが血管の場合には外因性分子(13)が全身を循環することになる。この中空微小球体(10)や外因性分子(13)は経皮の場合、後述するゲルシート(12)に塗着された液体媒体(120)或いは皮膚(20)に塗布されたクリーム(121)から供給され、皮下又は内臓の場合には、例えば注射によって患部に供給される。
【0026】
ゲルシート(12)は、皮膚(20)からの外因性分子(13)の透過に用いられるもので、生体組織と音響インピーダンスが近似した粘性体であり、例えばシリコンで形成されていて、皮膚(20)への貼着面(12a)に無数の中空微小球体(10)や外因性分子(13)を含む液体媒体(120)の浸漬或いは塗着により付着される。中空微小球体(10)や外因性分子(13)は微細粒子であるから、ゲルシート(12)に付着したものの一部は内部に入り込むことがあるし、ゲルシート(12)は柔らかいものであるから予めゲルシート(12)内に必要中空微小球体(10)や外因性分子(13)を練り込んでおいてもよい。又、図示していないが、ゲルシート(12)に孔を開け、その孔に外因性分子(13)を充填するようにしてもよい。外因性分子(13)が中空微小球体(10)と別個に用意されている場合には前述同様浸漬或いは塗着により別個に付着される。
【0027】
図10〜12のように中空微小球体(10)に外因性分子(13)が含まれる場合にはゲルシート(12)の貼着面(12a)に該中空微小球体(10)を含む液体媒体(120)の浸漬或いは塗着により付着させる。外因性分子(13)を含ませず、キャビテーション気泡(11a)の衝撃圧のみを利用したい場合(例えば、キャビテーション気泡(11a)の衝撃圧により、その近傍の細胞にダメージを与えて死滅させる場合)には、中空微小球体(10)のみをゲルシート(12)の貼着面(12a)に付着させて使用する或いは患部に注射することになるし、2以上の外因性分子(13)を導入したい場合には、必要に応じて同種または異なる成分の外因性分子(13)を(特に皮膚(20)に接する貼着面(12a))に付着させる、又は皮下(或いは内臓の所定位置)に注射することも出来る。これらの組み合わせは必要に応じて適宜選択される。また。ゲルシート(12)に替えてクリーム(121)或いはジェルを使用することも可能である。この場合、クリーム(121)或いはジェルに中空微小球体(10)及び/又は外因性分子(13)とが予め必要量練り込まれている。
【0028】
本発明に係るプローブ(A)(即ち、複数の高次超音波(P)を断続的に或いは位相差を設けて発生させる装置)の基本型(実施例1)は図1に示すようなもので、以下、本実施例1について説明する。実施例1は、概略、円筒状のプローブ本体(1)と、超音波発生板(2)(本実施例では圧電素子単体で構成されている。)とで構成されている。圧電セラミックス単体で構成された超音波発生板(2)の表裏にそれぞれ設けられた電極(3a)(3b)に給電コード(4)(5)が接続されている。[図の電極位置は概念的なもので、正確な位置を表すものではない。]そして、超音波発生板(2)の外端縁(2G)がプローブ本体(1)の先端円筒部(1a)の内周面又は外端、即ち高周波発生板取付開口(9)に例えば接着により固着されている。なお、先端円筒部(1a)はネジにてプローブ握り部(1b)に脱着可能に螺着されている。なお、プローブ本体(1)は高周波発生板取付開口(9)さえあればよく、筒状である必要はなく、例えば板状のものでもよい。高周波発生板取付開口(9)の形状も特に限定されるものではない。
【0029】
円筒状のプローブ(A)の特徴は、圧電セラミックス単体で構成された円板状の超音波発生板(2)の外端縁(2G)全周(場合によっては反対側に位置する円弧又は辺)を先端円筒部(1a)の高周波発生板取付開口(9)に接着により固定している点[接着部位を(K)で示す。]で、或るデューティ比のパルス電圧印加時に超音波発生板(2)[=単体の圧電セラミックス]が同心円状に且つ前記同心円に沿って波状に面振動(高次振動)を起こし、超音波発生面(2S)における面振動の各腹から針状の超音波(P)が多数且つ断続的に発生する点である[図1(b)(c)]。図1(a')は超音波発生面(2S)における面振動を示す。
【0030】
超音波(P)の振動数は、超音波発生板(2)の固有振動数fと同じで面振動の各腹から針状の超音波(P)が多数発生する。主たる周波数は前述のように超音波発生板(2)の固有振動数fと同じであるが、2f, 3f, 4f….の高調波成分も含む(即ち、固有振動数fに高調波成分2f, 3f, 4f….が重畳される。)。節直径の数、節円の数は、円板状の超音波発生板(2)の周囲固定条件[=接着部位(K)に於ける接着に状態]で決定される。図1(c)は円板状の超音波発生板(2)から針状の超音波(P)が多数且つ断続的に発している状態を示す想像図である。上記のプローブ(A)は円筒状の場合を示したが、勿論、後に示す角筒型、或いは図示しないが楕円面型その他最適形状とすることも可能である。
【0031】
図2は図1の他の例(実施例2)で、超音波発生板(2)が圧電セラミックス薄板(2a)と薄板(2M)とで形成されている場合で、薄板(2M)は金属又は樹脂で形成されている。金属板の場合はアルミニウムが好ましい。その理由は、(a)音響インピーダンスが水の音響インピーダンスに近いこと、(b)軽いことの2点で、アルマイト処理をすることで水による腐食を防止できるからである。圧電セラミックス薄板(2a)は薄板(2M)に張り合わされており、圧電セラミックス薄板(2a)の表裏或いは圧電セラミックス薄板(2a)と薄板(2M)にそれぞれ設けられた電極(3a)(3b)に給電コード(4)(5)が接続されている。そして、薄板(2M)及び圧電セラミックス薄板(2a)の外周がプローブ本体(1)の高周波発生板取付開口(9)に例えば接着により固着されている。それ以外の点は図1と同じである。
【0032】
実施例3[図4及び図5(a)とその変形である図5(b)参照]は超音波発生面(2S)が四角(正方形又は長方形で、以下、一方の辺に対して他方の辺が僅かに長い長方形の場合を代表例とする。)のプローブ(A)で、上記円板の固定条件で制限された節の数を変更(更に増加)するために、互いに独立した圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…を複数使用している。即ち、外端縁(2G)の全周或いはその反対側の2辺が接着[接着層を(K)で示す。]された薄板(2M)に長方形の圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…を並列して貼り付けた(本実施例では8枚である。1枚ものについてはその変形例として後述する。)。実施例3[図5(a)]の場合では、短冊状の圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…は互いに離間しており、且つ、その短辺(2G)も高周波発生板取付開口(9)から離間しており、当該部位に隙間(L)が形成されている。一方、その変形[図5(b)]は圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…の短辺(2G)は高周波発生板取付開口(9)に接着されている。接着層を(K)で示す。
【0033】
いずれの場合も超音波発生状況は若干異なるが圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…の長辺側から見ると各圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…には複数の腹と節が形成され、複数の針状超音波(P)を形成する。一方、圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…の短辺(2G)側から見ると各圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…はそれぞれ1の針状超音波しか形成されないので、圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…の本数に応じた針状超音波(P)が並んで形成されることになる。図の実施例では、いずれも複数(この場合は8枚)の圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…のそれぞれの電極(3a1)(3a2)…(3b)から給電線(41)(42)…(5)が延びており、各給電線(41)(42)…(5)は一本に纏められており、超音波発生用入力信号は同時に或いは位相差を以って間欠的或いは連続的に入力されるようになっている。このようにすることで、後述のように各圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…は入力信号と共に同時に或いは位相差を以って間欠的或いは連続的に複数の針状の超音波(P)を対象物の接触面[例えば皮膚]である超音波発生面(2s)のほぼ全面に発生させることになる。このように圧電セラミックス(2a)を、(2a1)(2a2)…というように分割すると圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…の数だけ超音波を倍加させ、連続的又は間欠的或いは位相差を設けて発生させることができるという利点がある。
【0034】
実施例3の変形例である圧電セラミックス薄片(2a)が1枚ものの場合は、その外端縁(2G)の全周が接着層(K)によって固着されている例で、この場合は前述した図2と同じである。
【0035】
図6は前記プローブ(A)の超音波発生板(2)又は薄板(2M)の表面に網状の絶縁部材(2e)を貼着した例で、このようにすることにより、絶縁部材(2e)の格子内の領域(2z)がそれぞれ振動し、格子内の領域(2z)ごとに針状の超音波(P)が発生することになる。それ以外の点は上述した実施例1と同様である。
【0036】
なお、図示しないが、前記円筒プローブ(A)でも圧電セラミックス(2a)を分割して圧電セラミックス薄片の数だけ超音波を発生させることもできる。分割の方法は限定しないが一例を示すと、ミカンを輪切りにしたように、中心から放射状に略二等辺三角形状の圧電セラミックス薄片を配置するようにしてもよい。
【0037】
次に、超音波発生板(2)への電圧の印加の方法であるが図16に示すように、1サイクル(T)に対して(t)時間だけパルス電圧[或いは交流電圧]を印加する。この時、強度(パルス高さ)やデューティ比(t/T=100)、印加サイクル数(X)を変えることで、より広範囲な超音波発生条件の設定が可能になり更なる効果がある。これらは対象によって適宜決定されることになる。
【0038】
また、圧電セラミックス単体で構成された円板状の超音波発生板(2)或いは単一の圧電セラミックス薄片(2a)を使用する場合と異なり、複数の圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…を使用する場合には、入力信号の入力タイミングを変えて位相時間を与えることができ、発生場所を違えて超音波発生板(2)はそれぞれの位相差に従って超音波(P)を発生させることになり、これら位相差を有する複数の超音波(P)が互いに協働して中空微小球体(10)を効果的に破泡することができるようになる。なお、超音波(P)の周波数は、印加される皮膚(20)或いは内臓の組織に影響を与えずしかも中空微小球体(10)を破泡させるため通常1MHz程度である。勿論、上記条件を満足する限り、複数の圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…を使用する場合には、各圧電セラミックス薄片(2a1)(2a2)…の固有振動数を違えることは可能であるし、入力信号の位相差を変えることで、更により複雑な超音波を発生することが可能である。又、音圧を変更するには印加電圧を変えればよい。
【0039】
図7は第4実施例で、中央の金属板(6’)の周囲に円板状の薄板(2M)が設けられ、中央の金属板(6’)に従来の圧電セラミックス(2')がはりつけてあり、その周囲の薄板(2M)に複数の圧電セラミックス(2a1)(2a2)…(2an)が設けられており、その外端部(2G)の全部又は一部が接着層(K)にて隔壁(17)及び開口部(9)に固着されている例である。中央の圧電セラミックス薄板(2')からはガウシアン分布波形の超音波(PG)が形成され、その周囲の圧電セラミックス(2a1)(2a2)…(2an)が針状波形の超音波(P)を形成する。
【0040】
この場合、プローブ(A)を移動させつつガウシアン分布波形の超音波(PG)によって、患部のような特定部位を探査特定し、患部が見つかると続いて針状波形超音波(P)によって当該特定部位に集中している中空微小球体を破裂させ、その衝撃圧で、その周囲の外因性分子を周辺細胞あるいは周辺の血管に効率よく打ち込む。この場合、ガウシアン分布波形の超音波(PG)を中心にその周囲に針状波形超音波(P)を生成させるようにしておけば、単に超音波(PG)から針状波形超音波(P)に切り替えるだけで探索した患部をその時点で叩く事が出来、治療作業をより効率的に行うことができるようになる。
【0041】
なお、実施例4は、前述のとおりの構造が図7に図示されているが、実施例4の構造は当然これに限られず、実施例1〜3に示された構造すべて適用することができる。例えば、図7では周囲の圧電セラミック板(2a1)〜(2an)は円形でその外周縁(2G)の一部が隔壁(17)や開口(9)の内周面(図示していないが端面でも可)に固着されているが、圧電セラミック板(2a1)〜(2an)を扇形に形成し、その外周縁(2G)全体を固着するようにすることもできるし、薄板(2MG)を排除して直接圧電セラミック板(2a1)〜(2an)を実施例1と同様に直接固着するようにしてもよい。圧電セラミック板はいかなる形状にも成形できるため、図示していないが、リング状に形成し、前記同様リング状に形成された薄板(2MG)と隔壁(17)や開口(9)の内周面に固着してもよいし、リング状の単体圧電セラミック板を薄板(2MG)なしで直接取り付けてもよい。
【0042】
次に、超音波(P)の破泡作用について説明する。超音波(P)は針状のものでもガウシアン波形のものでも図14(a)(b)に示すように中心部分の音圧が高く、周辺に行くに従って次第に音圧が下がる。
【0043】
換言すれば、圧力(音圧)は中央から外に向かっている。一方、中空微小球体(10)は超音波発生面(2s)下のゲルシート(12)に塗着された中空微小球体(10)や外因性分子(13)を含む液状媒体(120)或いはクリーム(121)内に無数に存在し、超微粒のため液状媒体(120)或いはクリーム(121)内を泳動している。
【0044】
図14(b)に示すように従来のプローブ(B)にてゲルシート(12)或いはクリーム(121)にガウシアン波形の超音波(PG)を印加すると、前述のように超音波(PG)の音圧は中央部分から周囲に向かって漸減する。中空微小球体の超音波による破泡作用については明確ではないが以下のように推測される。
【0045】
従来の超音波プローブ(B)は、前述のように得られる超音波(PG)の圧力分布がなだらかな山形(ガウシアン分布)になるように、に金属板(6)が全面接着している。この場合は、中央部分(YG)が最大で周辺に行くほど低下する。そして、この超音波(PG)は或るデューティ比で印加されて超音波発生板(2)から間欠的に出力されている。
【0046】
一方、無数の中空微小球体(10)は液状媒体(120)等内を泳動している。従来のガウシアン波形の超音波(PG)が出力されると、この超音波(PG)の中央部分(YG)に位置していた中空微小球体(10)はその強力な音圧によって破裂し、前述のようにその周囲の外因性分子(13)を周辺組織に打ち込むことになる。しかしながら、超音波(PG)の中央部分(YG)の近傍にいる中空微小球体(10)や超音波(PG)に近づこうとしている中空微小球体(10)は中央部分(YG)から周辺方向に漸減する圧力によって中央部分(YG)から遠ざけられる方向に押し出される。従って、従来のガウシアン波形の超音波(PG)の場合には、超音波(PG)が出力されたとき、たまたま中央部分(YG)の範囲内に存在する中空微小球体(10)のみが破裂するのであって破泡効率が悪い。
【0047】
これに対して本発明プローブ(A)は、超音波発生板(2)にパルス電圧を印加すると超音波発生板(2)は面振動を起こすが、面振動の節、直径の数、節円の数は、超音波発生板(2)[圧電素子]の半径、板厚、密度、曲げ合成、固有角振動数で決定され、発生する超音波は高次振動モードの腹で発生し、これらが合成(f+f2+f3+…+fm+fn)されてプローブ(A)の超音波発生面(2s)から出力される。この超音波(P)には高調波成分が含まれ且つ互いに並列した針状を呈することになる。そして、そのレベルは場合によっては従来例と同じエネルギを加えた場合、遥かに高いピーク値を示す事がある。
【0048】
更に本発明プローブ(A)には、複数(換言すれば、2以上)の超音波(P)が超音波発生面(2S)から発生しているので、一方の超音波(P)の中央部分(Y)の周辺に存在し、破泡せずに当該中央部分(Y)から押し出された中空微小球体(10)はその勢いで隣接して生成されている他の超音波(P)内に押し込まれ、その超音波(P)の中央部分(Y)で破泡されることになる。
【0049】
また、超音波(P)が針状である場合、同じ入力エネルギに対して従来のガウシアン波形の超音波(PG)のピーク値に比べて針状超音波(P)のピーク値(換言すれば、音圧)は高く、超音波(P)内に侵入した中空微小球体(10)の破泡の確率がより高くなると考えられる。加えて、本発明の超音波(P)は複数生成させることができるので、中空微小球体(10)や外因性分子(13)を無数に含有する液状媒体(120)を広い範囲で攪拌することができ、中空微小球体(10)の泳動作用をより活発にして破泡確率を高めることができると考えられる。
【0050】
更に、超音波発生源が複数の圧電セラミック素子(2a1)…(2an)で構成され、それぞれが位相をもってパルス電圧印加されている場合には、前述の攪拌効果が更に増強(換言すれば、一方の超音波(P)から押し出されてその周辺に中空微小球体(10)が散らばり、該周辺部の中空微小球体(10)の密度が上昇した時点でその周辺部に位相差をもって他の超音波(P)が生成されると当然高密度でその周辺部の中空微小球体(10)の破泡が行われること)されると考えられる。
【0051】
次に、本発明プローブ(A)の中空微小球体(10)による経皮導入効果実証用の図面に代わる写真(図17)で、「コントロール写真」は中空微小球体(10)を使用せず、本発明プローブ(A)で外因性分子(13)の経皮導入を図った写真であり、「NB+US」は中空微小球体(10)による経皮導入効果実証写真である。実証方法は次の通りである。孔を明けたゲルシート(12)を皮膚に貼着し、「コントロール」ではこの孔に中空微小球体(10)なしで外因性分子(13)を担持した液体媒体(120)を、「NB+US」では中空微小球体(10)と外因性分子(13)を担持した液体媒体(120)を充填し、この充填部分を図1の本発明プローブ(A)にて高周波(P)にて印加した結果である。「コントロール」と「NB+US」とを比較すると分かるように「NB+US」の方が蛍光分子(TEXAS-RED=外因性分子)で染色された部分が多く、中空微小球体(10)の外因性分子導入効果が明らかであることが分かる。
【0052】
なお、中空微小球体(10)と外因性分子(13)を担持した液体媒体(120)の使用方法は同液体媒体(120)をゲルシート(12)の皮膚貼着面(12a)に付着させ、このゲルシート(12)を皮膚表面(20)に貼着し、この状態でパルス電圧を印加して超音波を発生させるようにしてもゲルシート(12)の性質上同様の効果が得られるものと考えられる。また、上述の関係からクリーム(121)或いは図示しないがジェルのようなものに中空微小球体(10)や外因性分子(13)(外因性分子(13)担持中空微小球体(10)も含む。)を分散・含有させてもよい。
【0053】
図18は図17と異なり、経皮的でなく、マウスの骨格筋にルシフェラーゼプラスミドを注射により外因性分子を導入し、外因性分子注入部位に超音波を印加した後、4日経過後のデータで、試料であるマウスとこれに印加した入力パルス数(横軸)、縦軸は遺伝子発現の値(導入外因性分子の発現量)との関係である。なお、R・L試料であるマウスの左足か右足かを示す符号である。パルス数(Pulse)は10、100、1000、2、20、200、50、500であり、デューティ比は上段の10%、20%、50%で示す。本発明プローブは1〜13、従来プローブは14〜20である。
【0054】
図18では、図1に示す本発明プローブでは全体的に傾向として従来プローブの外因性分子導入効果を若干上回っており、マウスNo.11でデューティ比20%―200パルス、マウスNo.12でデューティ比50%―50パルスの場合、高い外因性分子導入効果を示している。外因性分子導入効果にバラツキがあるのは個体差や照射にともなう実験手法のバラツキによるものと考えられる。
【0055】
図19は、図4、図5(a)に示す圧電セラミック素子(2a1)(2ab)…(2a8)が8本のタイプの本発明プローブと従来プローブとの比較で、外因性分子としてルシフェラーゼプラスミドを使用した。細胞はEMT6マウス乳がん細胞およびC26マウス結腸癌細胞を用いた。「特許(高次)」と記されているデータは本発明プローブであり、「平面」と記されているデータは従来プローブである。横軸で「コントロール(=0)、20,50,80」と記載されているのは[デューティ比%]で、左の図19(a)の縦軸は遺伝子発現強さ(外因性分子の発現効果(1MHz))を、右の図19(b)の縦軸は細胞損傷率(1MHz)を示す。本発明プローブのパルス電圧はいずれの圧電セラミック素子(2a1)(2ab)…(2a8)に同じ周波数のパルス電圧を同時に印加した。図4等に示す本発明プローブには、各圧電セラミック素子(2a1)(2a2)…(2a8)のいずれにも複数の針状超音波(P)が発生するので、全針状超音波(P)の発生数は一つの圧電セラミック素子の超音波発生数×圧電セラミックス素子数となり、図4等に示す本発明プローブの針状超音波(P)の数は図1の場合に比べて大幅且つ安定的に増加し、全針状超音波(P)の発生数の増大が外因性分子導入効果の大幅且つ安定的に寄与していると推測される。なお、両プローブ(A)(B)に印加されるパルス電圧は同じである。
【0056】
本発明は複数の針状超音波をプローブの接触面のほぼ全面から連続的に同時生成させ、広範囲且つ大量に中空微小球体を短時間で連続的に破泡させ、その衝撃圧で周囲(或いは内蔵)の外因性分子を従来にない量で周囲の細胞に打ち込むことが出来、従来行われていた超音波外因性分子導入をより効率的にすることが出来た。これによって患者の負担を大幅に軽減することが出来、医療の進歩に貢献することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】…本発明の実施例1の断面図とその超音波発生状況を示す図面
【図2】…本発明の実施例2の断面図とその超音波発生状況を示す図面
【図3】…従来例の断面図とその超音波発生状況を示す図面
【図4】…本発明の実施例3の断面図とその超音波発生状況を示す図面
【図5】…本発明の実施例3とその変形例を示す図面
【図6】…本発明のプローブに網を装着したものの分解斜視図
【図7】…本発明の実施例4の斜視図とその断面図
【図8】…本発明の針状超音波(a)(b)(c)と従来例のガウシアン分布超音波(d)の比較図面
【図9】…本発明に使用する中空微小球体の実施例1の断面図
【図10】…本発明に使用する中空微小球体の実施例2の断面図
【図11】…本発明に使用する中空微小球体の実施例3の断面図
【図12】…本発明に使用する中空微小球体の実施例4の断面図
【図13】…本発明プローブによる中空微小球体破泡状態を示す想像図
【図14】…本発明の針状超音波と従来例のガウシアン分布超音波による中空微小球体破泡作用を示す想像図
【図15】…中空微小球体破泡状態と外因性分子の導入作用を示す想像図
【図16】…プローブ印加電圧の図
【図17】…本発明超音波の中空微小球体破泡による外因性分子(蛍光分子)の導入効果を示す図面代用写真
【図18】…本発明プローブと従来プローブの外因性分子導入効果の比較グラフ
【図19】…本発明四角のプローブ(図4)と従来型のガウシアン分布超音波プローブによる細胞実験での遺伝子発現(左)と細胞損傷率(右)との比較グラフ
【符号の説明】
【0058】
(A) 本発明のプローブ
(B) 従来例のプローブ
(P) 針状超音波
(PG) ガウシアン波形の超音波
(1) プローブ本体
(2) 超音波発生板(単体で超音波発生板となる圧電素子(圧電セラミックス))
(2a) 薄板と共に超音波発生板を形成する単体の圧電素子(圧電セラミックス)
(2a1)〜(2an) 薄板と共に超音波発生板を形成する複数の圧電素子(圧電セラミックス)
(2M) 圧電素子と共に超音波発生板を構成することになる薄板
(3a)(3b) 電極
(4) 給電線
(5) 給電線
(6) 金属板
(10) 中空微小球体
(11) 外殻
(11a) キャビテーション気泡(11a)
(12) ゲルシート
(13) 外因性分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 高周波発生板取付開口を有するプローブ本体と、
(b) 前記高周波発生板取付開口にその外端縁が固着されて設けられ、電圧印加によって異なる位置から2以上の高周波を発生させる高周波発生板とで構成されている
事を特徴とするプローブ。
【請求項2】
(a) 高周波発生板取付開口を有するプローブ本体と、
(b) 前記高周波発生板取付開口にその外端縁が固着された振動用の薄板と、
(c) その外端縁が前記高周波発生板取付開口に固着され且つ前記薄板に貼着されている1乃至複数の圧電セラミックス薄板とで構成されている
事を特徴とするプローブ。
【請求項3】
(a) 高周波発生板取付開口を有するプローブ本体と、
(b) 前記高周波発生板取付開口にその外端縁が固着された振動用の薄板と、
(c) プローブ本体(1)の内周面から間隙(L)を設けて前記薄板に貼着されている複数の圧電セラミックス薄板とで構成されている
事を特徴とするプローブ。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のいずれかのプローブにおいて、
生成された高周波が針状を呈している事を特徴とするプローブ。
【請求項5】
複数の圧電セラミックス薄板が用いられている請求項1〜3に記載のいずれかのプローブにおいて、
(a) 圧電セラミックス薄板の1がガウシアン分布波形の超音波を形成し、
(b) 他が針状波形の超音波を形成する事を特徴とするプローブ。
【請求項6】
請求項1〜5に記載のいずれかのプローブにおいて、
薄板或いは高周波発生板の外面に網板が更に貼着されている事を特徴とするプローブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図8】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−165499(P2009−165499A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109894(P2006−109894)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(592200338)日本素材株式会社 (29)
【Fターム(参考)】