説明

超音波空間合成映像形成システム及び方法

【課題】連結部が目立たず、均一の画質の合成映像を提供することができる超音波空間合成映像形成システム及び方法を得る。
【解決手段】本発明に係る超音波空間合成映像形成システムは、複数のフレームで超音波空間合成映像を形成するシステムであって、各フレームを得る間、複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送受信する複数のトランスデューサと、前記各フレームを得る間、各トランスデューサで送受信された信号を遅延及び合算して、フレームデータを形成するビームフォーマと、複数のフレームを組み合わせて超音波空間合成映像を形成する映像合成部とを備え、前記各トランスデューサは、フレームが変わるごとに方向が変わるスキャンラインに沿って超音波信号を送受信し、少なくとも一つのフレームは、互いに平行な複数の第1スキャンライン、及び、 互いに平行でなく一つの中心点から延びる複数の第2スキャンラインから形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフレームで超音波空間合成映像を形成する超音波空間合成映像形成システム及び方法に関し、特に連結部が目立たず、均一の画質の合成映像を提供することができる超音波空間合成映像形成システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空間合成は映像処理技術の一種であって、複数のポイントまたは角(angle)で得られた各超音波映像フレームのスキャンラインを組み合わせることによって、一つの合成映像を形成する映像処理技術である。空間合成のために、実質的に独立した方向から得られて部分的に重なる連続的な各映像(以下、成分フレームという)を獲得する。成分フレームが変わるごとにスキャンラインの方向を調整することで、独立した方向で、即ち、それぞれ異なる角で成分フレームを得ることができる。図1〜図3は傾斜角がそれぞれ−15°、0°、15°であるスキャンラインSL1、SL2、SL3からなる成分フレームA、B、Cを示す。
【0003】
空間合成では成分フレームを和、平均、ピーク検出または他の方式に従って組み合わせて合成映像を形成する。従来の超音波空間合成映像形成方法によれば、図1〜図3に見られる成分フレームA、B及びCを組み合わせて図4のように一つの合成映像CIを形成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の超音波空間合成映像形成方法では、合成映像CI内に成分フレームの一部が重ならない領域R1、R2があって合成映像CI内に連結部(seam)Sが目立つだけでなく、合成映像全体領域の画質が均一でないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、連結部が目立たず、均一の画質の合成映像を提供することができる超音波空間合成映像形成システム及び方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る超音波空間合成映像形成システムは、複数のフレームで超音波空間合成映像を形成するシステムであって、各フレームを得る間、複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送受信する複数のトランスデューサと、前記各フレームを得る間、各トランスデューサで送受信された信号を遅延及び合算して、フレームデータを形成するビームフォーマと、複数のフレームを組み合わせて超音波空間合成映像を形成する映像合成部とを備え、前記各トランスデューサは、フレームが変わるごとに方向が変わるスキャンラインに沿って超音波信号を送受信し、少なくとも一つのフレームは、互いに平行な複数の第1スキャンライン、及び、 互いに平行でなく一つの中心点から延びる複数の第2スキャンラインから形成される。
【0007】
前記複数の第2スキャンラインは前記複数の第1スキャンラインより稠密に分布する。前記フレームは、指定フレームと、前記指定フレームを中心に順序的に対称である第1周辺フレーム及び第2周辺フレームを備え、前記指定フレームの全てのスキャンラインは互いに平行で、前記第1周辺フレーム及び第2周辺フレームは前記第と1スキャンライン及び前記第2スキャンラインを備える。前記第1及び第2周辺フレームの前記第1スキャンラインは、前記指定フレームのスキャンラインを中心に互いに対称であり、前記第1及び第2周辺フレームの前記第2スキャンラインは、前記指定フレームのスキャンラインを中心に互いに対称である。
【0008】
本発明に係る超音波空間合成映像形成方法は、複数のフレームで超音波空間合成映像を形成する方法であって、各フレームを得る間、複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送受信する段階と、前記各フレームを得る間、送受信された信号を遅延及び合算し、フレームデータを形成する段階と、連続するフレームを組み合わせて超音波空間合成映像を形成する段階を含み、前記超音波信号を送受信する段階で、フレームが変わるごとに方向が変わるスキャンラインに沿って超音波信号を送受信し、少なくとも一つのフレームを得る間、互いに平行な複数の第1スキャンライン、及び、互いに平行でなく一つの中心点から延びる複数の第2スキャンラインに沿って超音波信号を送受信する。
【0009】
前記複数の第2スキャンラインは前記複数の第1スキャンラインより稠密に分布する。前記フレームは指定フレームと前記指定フレームを中心に順序的に対称である少なくとも一つの第1周辺フレーム及び少なくとも一つの第2周辺フレームを備え、前記指定フレームの全てのスキャンラインは互いに平行で、前記第1周辺フレーム及び第2周辺フレームは前記第1スキャンライン及び前記第2スキャンラインを備える。前記第1及び第2周辺フレームの前記第1スキャンラインは、前記指定フレームのスキャンラインを中心に互いに対称であり、前記第1及び第2周辺フレームの前記第2スキャンラインは、前記指定フレームのスキャンラインを中心に互いに対称である。本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記の構成により、空間合成映像の全領域を全ての成分フレームのスキャンラインを組み合わせて得ることによって連結部が目立つようになるのを防止して合成映像の画質を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施の形態に係る超音波空間合成映像形成システム及び方法を説明する。
【0012】
図5を参照すれば、本発明の実施の形態に係る超音波空間合成映像形成システムである超音波診断システム100は、スキャンヘッド101と、送受信(T/R)スイッチ(transmit/receive switch)102と、トランスミッター(transmitter)103と、ビームフォーマ(digital beamformer)104と、システム制御部(system controller)105と、利得制御部(gain controller)106と、Bモードプロセッサ(Brightness-mode processor)107と、フレームメモリ(frame memory)108と、合成部(compounding unit)109と、スキャン変換部(scan converter)110と、ビデオプロセッサ111と、ディスプレイ部112とを備える。
【0013】
スキャンヘッド101は複数のトランスデューサ101aを備える。各トランスデューサ101aは各フレームを得る間、複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送受信する。即ち、空間合成のための複数のフレームを形成するために、スキャンヘッド101の各トランスデューサ101aはフレームが変わるごとに変わるスキャンラインに沿って超音波信号を送受信する。そして、少なくとも一つのフレームは、互いに平行な複数の第1スキャンラインSL11〜SL1N、及び、互いに平行でなく、トランスデューサ101aの一側縁部に位置した1個のトランスデューサの中心点から延びる複数の第2スキャンラインSL21〜SL2Mに沿って超音波信号を送受信する。
【0014】
連続する複数の成分フレームのうち指定フレームの全てのスキャンラインは互いに平行である。指定フレーム以外のフレーム(以下、周辺フレームという)は、互いに平行な複数の第1スキャンライン、及び、互いに平行でなく、トランスデューサ101aの一側縁部に位置した1個のトランスデューサの中心点からから延びる複数の第2スキャンラインを備える。ただし、複数の第2スキャンラインは複数の第1スキャンラインよりコンパクトである。図7〜図9に示すように、空間合成のために順次3つの成分フレーム、即ち第1周辺フレームPF1、指定フレームAF、第2周辺フレームPF2を形成する場合、指定フレームAFは全て同一の傾斜角を有するスキャンラインSLを備え、第1及び第2周辺フレームPF1、PF2はそれぞれ互いに平行な複数の第1スキャンラインSLA、SLC、及び、互いに平行でない複数の第2スキャンラインSLB、SLDを備える。指定フレームAFを中心に順序が対称である第1及び第2周辺フレームPF1、PF2の第1スキャンラインSLA、SLCは、指定フレームAFのスキャンラインSLを中心に互いに対称である。また、第1及び第2周辺フレームPF1,PF2の第2スキャンラインSLB、SLDは、指定フレームAFのスキャンラインSLを中心に互いに対称である。
【0015】
T/Rスイッチ102は超音波ビームの送/受信をスイッチングする。そして、トランスミッター103は送信モードでスキャンヘッド101の各トランスデューサ101aから送信される超音波信号の位相及び転送時間などを制御する。また、ビームフォーマ104は各フレームを得る間、各トランスデューサ101aで送受信された信号を遅延及び合算して、フレームデータを形成する。
【0016】
システム制御部105は、超音波診断システム100の使用者が使用者入力部(図示せず)を通じて入力した設定によってトランスミッター103とビームフォーマ104の動作を制御する。より具体的には、システム制御部105は、フレームごとに方向が変わるスキャンラインに沿って定められた周波数の超音波が送受信するようにする。また、システム制御部105は、スキャンヘッド101のアパーチャ(aperture)と映像深さによって適切に送受信信号を結合するようにビームフォーマ104を制御する。そして、利得制御部106は信号の利得(gain)を補償する。
【0017】
Bモードプロセッサ107はスキャンラインデータに基づいてBモード映像データを形成する。そして、フレームメモリ108はフレーム単位で映像を合成するために必要なメモリ空間でビームフォーマ104で得られた各フレームのデータを格納する。
【0018】
また、合成部109は、連続する成分フレームを組み合わせて超音波空間合成映像を形成する。図7〜図9に示された3つの成分フレームPF1、AF、PF2を組み合わせて、図10のような超音波空間合成映像CITを形成する。図10に示すように、本発明によって形成された超音波空間合成映像CITの全ての領域CIo、CIL、CIRでは全ての成分フレームPF1、AF、PF2のスキャンラインが組み合わせられる。即ち、第1領域CIoは指定フレームAFのスキャンラインSLと周辺フレームPF1、PF2の第1スキャンラインSLA、SLCとが組み合わせられて得られた領域である。第2領域CILは指定フレームAFのスキャンラインSL、周辺フレームPF1の第1スキャンラインSLA及び周辺フレームPF2の第2スキャンラインSLDが組み合わせられて得られた領域である。第3領域CIRは指定フレームAFのスキャンラインSL、周辺フレームPF1の第2スキャンラインSLB、周辺フレームPF2の第1スキャンラインSLCが組み合わせられて得られた領域である。従って、超音波空間合成映像CITの全ての領域が各フレームのスキャンラインが組み合わせられて得られることによって連結部(seam)が目立つことを防止することができ、超音波空間合成映像の画質を全体的に均一にすることができる。
【0019】
スキャン変換部110は走査線表示形式をディスプレイ部112で使用される表示形式に変換させる。そして、ビデオプロセッサ(超音波空間合成映像形成システム)111は超音波合成映像をディスプレイするのに適当な形態(format)に変換する。さらに、ディスプレイ部(超音波空間合成映像形成システム)112はビデオプロセッサ109で変換された超音波合成映像をディスプレイする。
【0020】
本発明について望ましい実施例を通じて説明したが、当業者であれば添付した特許請求の範囲の思想及び範疇を逸脱しないで様々な変形及び変更をなすことができる。例えば、前述した本発明の実施例でスキャン変換以後空間合成映像を形成することができる。即ち、フレームが変わるごとに方向が変わるスキャンラインに沿って超音波信号を送受信し、少なくとも一つのフレームを得る間、複数のトランスデューサは互いに平行な複数の第1スキャンライン、及び、互いに平行でなく、トランスデューサの一側縁部に位置した1個のトランスデューサの中心点から延びる複数の第2スキャンラインに沿って超音波信号を送受信して空間合成映像形成のための成分フレームを形成するという本発明の基本的な技術思想内で、各変形に適切に空間合成映像形成システム及び方法が変更されうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の空間合成映像形成のための成分フレームのスキャンラインを示す概略図である。
【図2】従来の空間合成映像形成のための成分フレームのスキャンラインを示す概略図である。
【図3】従来の空間合成映像形成のための成分フレームのスキャンラインを示す概略図である。
【図4】図1〜図3の成分フレームから得た空間合成映像のスキャンラインを示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る超音波空間合成映像形成のための超音波診断システムの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る成分フレームのスキャンラインとトランスデューサの関係を示す概略図である。
【図7】本発明による空間合成映像形成のための成分フレームのスキャンラインを示す概略図である。
【図8】本発明による空間合成映像形成のための成分フレームのスキャンラインを示す概略図である。
【図9】本発明による空間合成映像形成のための成分フレームのスキャンラインを示す概略図である。
【図10】図7〜図9の成分フレームから得た空間合成映像のスキャンラインを示す概略図である。
【符号の説明】
【0022】
100 超音波空間合成映像形成システム
101 スキャンヘッド
101a トランスデューサ
102 T/R スイッチ
103 トランスミッター
104 ビームフォーマ
105 システム制御部
106 利得制御部
107 Bモードプロセッサ
108 フレームメモリ
109 合成部
110 スキャン変換部
111 ビデオプロセッサ
112 ディスプレイ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフレームで超音波空間合成映像を形成するシステムであって、
各フレームを得る間、複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送受信する複数のトランスデューサと、
前記各フレームを得る間、各トランスデューサで送受信された信号を遅延及び合算して、フレームデータを形成するビームフォーマと、
前記複数のフレームを組み合わせて超音波空間合成映像を形成する映像合成部とを備え、
前記各トランスデューサは、フレームが変わるごとに方向が変わるスキャンラインに沿って超音波信号を送受信し、
少なくとも一つのフレームは、互いに平行な複数の第1スキャンライン、及び、互いに平行でなく一つの中心点から延びる複数の第2スキャンラインから形成されることを特徴とする超音波空間合成映像形成システム。
【請求項2】
前記複数の第2スキャンラインは前記複数の第1スキャンラインより稠密に分布することを特徴とする請求項1に記載の超音波空間合成映像形成システム。
【請求項3】
前記フレームは、指定フレームと、前記指定フレームを中心に順序的に対称である第1周辺フレーム及び第2周辺フレームとを備え、
前記指定フレームの全てのスキャンラインは互いに平行で、
前記第1周辺フレーム及び第2周辺フレームは、前記第1スキャンライン及び前記第2スキャンラインを備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波空間合成映像形成システム。
【請求項4】
前記第1及び第2周辺フレームの前記第1スキャンラインは前記指定フレームのスキャンラインを中心に互いに対称であり、
前記第1及び第2周辺フレームの前記第2スキャンラインは前記指定フレームのスキャンラインを中心に互いに対称であることを特徴とする請求項3に記載の超音波空間合成映像形成システム。
【請求項5】
複数のフレームで超音波空間合成映像を形成する方法であって、
各フレームを得る間、複数のスキャンラインに沿って超音波信号を送受信する段階と、
前記各フレームを得る間、送受信された信号を遅延及び合算し、フレームデータを形成する段階と、
連続するフレームを組み合わせて超音波空間合成映像を形成する段階とを含み、
前記超音波信号を送受信する段階で、フレームが変わるごとに方向が変わるスキャンラインに沿って超音波信号を送受信し、
少なくとも一つのフレームを得る間、互いに平行な複数の第1スキャンライン、及び、互いに平行でなく一つの中心点から延びる複数の第2スキャンラインに沿って超音波信号を送受信することを特徴とする超音波空間合成映像形成方法。
【請求項6】
前記複数の第2スキャンラインは前記複数の第1スキャンラインより稠密に分布することを特徴とする請求項5に記載の超音波空間合成映像形成方法。
【請求項7】
前記フレームは、指定フレームと、前記指定フレームを中心に順序的に対称である少なくとも一つの第1周辺フレーム及び少なくとも一つの第2周辺フレームとを備え、
前記指定フレームの全てのスキャンラインは互いに平行で、
前記第1周辺フレーム及び第2周辺フレームは、前記第1スキャンライン及び前記第2スキャンラインを備えることを特徴とする請求項5に記載の超音波空間合成映像形成方法。
【請求項8】
前記第1及び第2周辺フレームの前記第1スキャンラインは前記指定フレームのスキャンラインを中心に互いに対称であり、
前記第1及び第2周辺フレームの前記第2スキャンラインは前記指定フレームのスキャンラインを中心に互いに対称であることを特徴とする請求項7に記載の超音波空間合成映像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−54624(P2007−54624A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225177(P2006−225177)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(597096909)株式会社 メディソン (269)
【Fターム(参考)】