説明

超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラム

【課題】超音波診断装置において、仮想収縮中心の位置の設定に慣れるまでの時間が短縮させ、異なるユーザであっても同じ仮想収縮中心の位置を設定することを容易ならしめ、また、遷移中の過渡的な画像を非表示とすること。
【解決手段】ユーザによって入力可能な入力装置15を具備し、その入力装置15を用いて画像中に仮想収縮中心を設定し、組織の収縮拡張に伴う成分の運動情報を検出する超音波診断装置は、仮想収縮中心を設定する際、入力装置15で移動可能な同心円を画像に重畳して表示させ、同心円の中心を仮想収縮中心として設定する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心筋等の生体組織の速度を推定し、推定した速度情報を処理して組織の局所的な運動情報を出力することで医学診断に有効な情報を提供する超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心筋等の生体組織に関して、その機能を客観的かつ定量的に評価することは、その組織の診断にとって非常に重要である。特に、主に心臓を例として様々な定量的評価法が試みられている。近年は、組織速度を用いて歪みや変位といった局所的な壁運動指標による定量的評価法を提供する超音波診断装置及び画像処理方法が開示されている(例えば、特許公報1参照。)。これによれば、心臓の短軸像に仮想収縮中心を設定することで、壁厚方向の運動情報である壁の伸縮成分の評価が可能となる。
【0003】
図8は、従来の仮想収縮中心位置の設定画面を示す模式図である。
【0004】
図8に示すように、ユーザが仮想収縮中心位置を設定するには、短軸像に重畳表示された印(×)を画面上で操作することにより、任意に仮想収縮中心位置を設定する。
【0005】
また、生体組織の歪みや変位の算出方法は異なるが、組織変形の実時間を計算及び表示する装置及び方法が開示されている(例えば、特許公報2参照。)。
【特許文献1】特開2003−175041号公報
【特許文献2】特開2001−70303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、心臓の短軸像に対して要手的に収縮中心位置を設定する際に×印が表示させるだけなので、仮想収縮中心を設定し難いという問題があった。よって、仮想収縮中心位置の設定に慣れるまで時間を要する。また、同じ画像データに対しても、操作者が異なると異なる仮想収縮中心が設定される恐れがあった。
【0007】
また、歪みや変位を組織速度から求める場合には、時間的な積分処理が必要となる。ここで積分の開始時相では歪み及び変位等の運動情報メモリをクリアしている。よって、心臓を対象とすると、心電図のR波に同期した時相において心拍毎に所定の時相で本メモリがクリアされる。しかし、このような構成においては、操作者によって×印の移動中、次の心拍まで運動情報メモリがクリアされず遷移中の画像が表示されてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、仮想収縮中心の位置の設定に慣れるまでの時間が短縮させることができ、また、異なるユーザであっても同じ仮想収縮中心の位置を設定することを容易ならしめる超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明の他の目的は、遷移中の過渡的な画像を非表示とする超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る超音波診断装置は、上述した課題を解決するために、ユーザによって入力可能な入力装置を具備し、その入力装置を用いて画像中に仮想収縮中心を設定し、組織の収縮拡張に伴う成分の運動情報を検出する超音波診断装置において、前記仮想収縮中心を設定する際、前記入力装置で移動可能な円を前記画像に重畳して表示させ、前記円の中心を前記仮想収縮中心として設定する構成とした。
【0011】
本発明に係る超音波画像処理装置は、上述した課題を解決するために、ユーザによって入力可能な入力装置を具備し、その入力装置を用いて画像中に仮想収縮中心を設定し、組織の収縮拡張に伴う成分の運動情報を検出する超音波画像処理装置において、前記仮想収縮中心を設定する際、前記入力装置で移動可能な円を前記画像に重畳して表示させ、前記円の中心を前記仮想収縮中心として設定する構成とした。
【0012】
本発明に係る超音波画像処理プログラムは、上述した課題を解決するために、ユーザによって入力可能な入力装置を具備し、その入力装置を用いて画像中に仮想収縮中心を設定し、組織の収縮拡張に伴う成分の運動情報を検出するコンピュータに、前記仮想収縮中心を位置する際、前記入力装置で移動可能な円を前記画像に重畳して表示させ、前記円の中心を前記仮想収縮中心として設定する機能を実現させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムによると、仮想収縮中心の位置の設定に慣れるまでの時間が短縮させることができ、また、異なるユーザであっても同じ仮想収縮中心の位置を設定することを容易ならしめる。
【0014】
また、本実施の形態に係る超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムによると、遷移中の過渡的な画像を非表示とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムの実施の形態を示す構成図である。
【0017】
図1は、超音波診断装置10を示し、この超音波診断装置10は、心電計(ECG:Electro Cardio Gram)11、超音波プローブ12、超音波画像処理装置13、表示装置14及び入力装置15から構成されている。以下、各構成要素について説明する。
【0018】
心電計11は、被検体(図示しない)の心臓の電気現象の時間的変化を記録したグラフ、すなわち心電図を計測する。心電計11で検出された心電波形信号は超音波画像処理装置13に送られる。
【0019】
超音波プローブ12は、電気信号を超音波に変換する複数の超音波振動子を配列した超音波振動子アレイを備え、この超音波振動子アレイにより被検体に対して超音波の送受信を行なう。ここでは、超音波プローブ12は、被検体の心臓を対象としたセクタプローブであるものとする。
【0020】
表示装置14は、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)及びプラズマディスプレイ等を有しており、超音波画像処理装置13で生成した表示画面を表示する。
【0021】
入力装置15は、例えば、キーボードや、マウス等で構成され、ユーザによって操作等される。そして、入力装置15は、ユーザによる操作等に対応する信号を超音波画像処理装置13に供給する。
【0022】
図2は、超音波画像処理装置13のハードウェアの構成図である。
【0023】
図2に示すように超音波画像処理装置13は、コンピュータをベースとして構成されており、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、内部メモリとしてのRAM(Random Access Memory)23及び外部メモリとしてのHD(Hard Disk)24等の基本的なハードウェアから構成される。CPU21は、共通信号伝送路としてのバスBを介して、超音波画像処理装置13を構成する各ハードウェア構成要素に相互接続されている。なお、超音波画像処理装置13は、通信制御装置27やドライブ28を具備する場合もある。
【0024】
CPU21は、ユーザによって入力装置15(図1に示す)が操作等されることにより指令が入力されると、ROM22に記憶しているプログラムを実行する。又は、CPU21は、HD24に記憶しているプログラム、ネットワークNから転送され通信制御装置27で受信されてHD24にインストールされたプログラム、又はドライブ28に装着されたフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto Optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク及び半導体メモリ等のリムーバブルである記録媒体28aから読み出されてHD24にインストールされたプログラムを、RAM23にロードして実行する。表示画面にグラフィックを使用し、基礎的な操作を入力装置15によって行なうことができるGUI(Graphical User Interface)を利用するためのプログラムを有している。
【0025】
ROM22は、HD24からOS(Operating System)を読み込んでRAM23に展開し起動する役目を果たすIPL(Initial Program Loading)や、入力装置15及びドライブ28等の周辺機器を制御するBIOS(Basic Input/Output System)やデータを記憶する不揮発性の記憶装置である。
【0026】
RAM23は、CPU21のワークメモリや一時的な記憶に用いられる揮発性の記憶装置である。なお、ROM22は、書き換えができないタイプのマスクROMであっても書き換えができるタイプのPROM(Programmable ROM)であってもよい。
【0027】
HD24は、超音波画像処理装置13にインストールされたプログラム(アプリケーションプログラムの他、OS等も含まれる)や、超音波画像処理プログラム100や、CPU21が処理を行なう上で必要なデータを記憶する記憶装置である。
【0028】
通信制御装置27は、例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394ポートや、USB(Universal Serial Bus)ポート、LAN(Local Area Network)接続用のNIC(Network Interface Card)等で構成された通信I/F(InterFace)であり、各規格に応じた通信制御を行なう。また、通信制御装置27は、アナログモデムや、TA(Terminal Adapter)及びDSU(Digital Service Unit)、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)モデム等の電話回線を通じて、インターネットであるネットワークNに接続することができる機能を有しており、これにより、超音波画像処理装置13は、通信制御装置27からネットワークNに接続することができる。
【0029】
ドライブ28は、記録媒体28aの着脱が可能となっており、記録媒体28aに記録されたデータ(超音波画像処理プログラム100等のプログラムを含む)を読み出して、バスB上に出力し、また、バスBを介して供給されるデータを記録媒体28aに書き込む。
【0030】
以上のように構成される超音波画像処理装置13としてのコンピュータでは、CPU21がコンピュータにインストールされた超音波画像処理プログラム100を実行することにより、図3に示すように、送信手段101、受信手段102、Bモード処理手段103、組織ドプラ処理手段104、運動情報処理手段105、心電図信号増幅手段106、運動情報記録手段107及び表示制御手段108として機能する。なお、超音波画像処理プログラム100によらず、特定の回路を設けて超音波画像処理装置13を構成してもよい。
【0031】
図3に示した送信手段101は、超音波プローブ12の超音波振動子アレイから超音波を送波するための駆動信号を発生するものであり、所定のスキャンラインに向けて超音波ビームが形成されるよう振動子毎に所定の遅延特性をもたせた駆動信号を発生する機能を有する。
【0032】
受信手段102は、超音波振動子アレイの各超音波振動子で受波された超音波エコー信号に対して遅延加算処理を行なって所定のスキャンラインに対応した超音波エコー信号を生成する機能を有する。
【0033】
Bモード処理手段103は、遅延加算処理された超音波エコー信号に対して包絡線検波処理を施すことにより、超音波エコーの振幅強度に対応したBモード信号を生成する機能を有する。また、Bモード処理手段103は、Bモード信号の所定断面にかかる2次元分布を表したBモード超音波像を生成する機能を有する。
【0034】
組織ドプラ処理手段104は、直交検波処理及び自己相関処理等を行ない、遅延加算処理された超音波エコー信号のドプラ偏移成分に基づいて、被検体内で移動している組織の速度、分散及びパワーに対応した組織ドプラ信号を求める機能を有する。また、組織ドプラ処理手段104は、速度、分散及びパワー値の所定断面にかかる2次元分布を表した組織ドプラ超音波像を生成する機能を有する。
【0035】
運動情報処理手段105は、Bモード処理手段103及び組織ドプラ処理手段104の出力するBモード超音波像及びドプラ超音波像に基づいて、運動情報画像を取得するための各処理を実行する機能を有する。また、運動情報処理手段105は、演算区間の設定を行なう機能を有する。一連の組織ドプラ動画像に対して、HD24に記憶された画像の中から積分を開始する時相t=0(初期時相t0)を設定する。さらに、運動情報処理手段105は、初期時相t0だけでなく、ユーザによる仮想収縮中心の位置合わせ中は運動情報の記憶(メモリ)をゼロクリアする。
【0036】
心電図信号増幅手段106は、心電計12で検出した心電図信号を増幅する。
【0037】
運動情報記録手段107は、運動情報処理手段105と心電図信号増幅手段106との出力に基づいた各時相に対応する速度分布画像をHD24(RAM23)に記録する。
【0038】
表示制御手段108は、Bモード超音波像、ドプラ超音波像及び運動情報画像に基づいて表示画像を生成し、表示装置14に表示させる機能を有する。表示画像としては、例えば、Bモード超音波像と組織ドプラ超音波像の重畳画像や、Bモード超音波像と変位又は歪みの2次元分布像の重畳画像等がある。
【0039】
ここで、CPU21が実行するプログラムは、コンピュータに内蔵されている記録媒体としてのHD15やROM12に予め記録しておくことができる。又は、プログラムは、記録媒体28aに、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このような記録媒体28aは、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0040】
続いて、超音波診断装置10、超音波画像処理装置13及び超音波画像処理プログラム100の動作について、図4に示したフローチャートを用いて説明する。なお、超音波画像処理装置13に各種の処理を行なわせる超音波画像処理プログラム100を記述する処理ステップは、必ずしも、フローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的又は個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。また、超音波画像処理プログラム100は、1つのCPUによって処理されるものであってもよいし、複数のCPUによって分散処理されるものであってもよい。さらには、超音波画像処理プログラム100は、遠方のCPUに転送されて実行されるものであってもよい。
【0041】
被検体の心臓を対象とし、セクタプローブを用いて、心筋の組織の局所的な運動について2D画像を用い、組織ドプラ法により組織の速度情報を得て運動情報を評価する場合への本発明の適用について説明する。
【0042】
CPU21がコンピュータにインストールされた超音波画像処理プログラム100を実行することにより、送信手段101では、超音波プローブ12の超音波振動子アレイから超音波を送波するための駆動信号が発生される。所定のスキャンラインに向けて超音波ビームが形成されるよう振動子毎に所定の遅延特性をもたせた駆動信号が発生される(ステップS1)。
【0043】
超音波プローブ12では、超音波振動子アレイにより被検体に対して超音波の送受信が行なわれる。
【0044】
受信手段102では、超音波振動子アレイの各超音波振動子で受波された超音波エコー信号に対して遅延加算処理を行なって所定のスキャンラインに対応した超音波エコー信号が生成される(ステップS2)。
【0045】
Bモード処理手段103では、遅延加算処理された超音波エコー信号に対して包絡線検波処理を施すことにより、超音波エコーの振幅強度に対応したBモード信号が生成される。また、Bモード処理手段103では、Bモード信号の所定断面にかかる2次元分布を表したBモード超音波像が生成される(ステップS3)。
【0046】
組織ドプラ処理手段104では、直交検波処理及び自己相関処理等を行ない、遅延加算処理された超音波エコー信号のドプラ偏移成分に基づいて、被検体内で移動している組織の速度、分散及びパワーに対応した組織ドプラ信号が求められる。また、組織ドプラ処理手段104では、速度、分散及びパワー値の所定断面にかかる2次元分布を表した組織ドプラ超音波像が生成される(ステップS4)。
【0047】
運動情報処理手段105では、Bモード処理手段103及び組織ドプラ処理手段104の出力するBモード超音波像及びドプラ超音波像に基づいて運動情報画像が取得される(ステップS5)。
【0048】
次に、運動情報処理手段105の処理内容について説明する。
【0049】
まず、運動情報処理手段105では、運動場で定義された運動方向への速度の時空間分布像(時相毎の2次元分布像)が求められる。
【0050】
図5(a),(b)は、運動場の定義についての説明図である。
【0051】
図5(a)は、ラスタモーションフィールド(raster motion field)、図5(b)は、コントラクションモーションフィールド(Contraction Motion field)という運動場をそれぞれ示している。各図において×印が運動の向かう点であり、矢印が運動の向かう方向である。
【0052】
図5(a)のラスタモーションフィールドとは、超音波スキャンの各超音波ビーム方向に沿った運動場のことであり、この時の速度の符号は超音波プローブ12に近づくものが正、離れるものが負である。このようなラスタモーションフィールドにおいて、組織ドプラ法で推定される観察速度は、よく知られているように、実際の運動方向と超音波ビーム方向の速度成分とのなす角度(ドプラ角)をθとして、
[数1]
(観測速度)=cosθ×(実際の運動速度)
(0°≦θ≦180°)
のように表される。
【0053】
心臓における組織の運動状態は大変複雑であり、全てをラスタモーションフィールドで想定することには難がある。とりわけ、心筋の厚さ方向への収縮拡張の評価に最適な短軸画像を評価する場合には、超音波ビーム方向が運動方向と一致する収縮中心から見て、時計の12時方向(真上方向)の極狭い範囲でしか運動方向が合致しない。収縮中心から見て6時方向(真下方向)は、超音波ビーム方向と運動の方向が平行であるが向きは逆となる。
【0054】
よって、短軸で心筋の収縮拡張方向での運動を評価するには、図5(b)のようなコントラクションモーションフィールドという運動場を定義し、その運動場の方向が実際の運動方向であると仮定して補正速度を求めるのが好適である。コントラクションモーションフィールドは、心壁の仮想収縮中心を画像中に設定し、この仮想収縮中心に向かう方向を運動場として定義している。
【0055】
コントラクションモーションフィールドでは、
[数2]
(補正速度)=(観測速度)/cosθ
(0°≦θ≦180°)
により、仮想収縮中心に向かう速度成分が得られる。速度の符号は、仮想収縮中心に近づくものが正、離れるものが負である。このようなコントラクションモーションフィールドに対応して求められた補正速度の2次元分布像を求める。なお、必要に応じて補正速度の2次元分布像を表示装置14に表示するようにしてもよい。
【0056】
ここで、コントラクションモーションフィールドにおける仮想収縮中心位置の設定は、ユーザが入力装置15を用いて行なう。
【0057】
図6は、仮想収縮中心位置の設定を行なうためのレーダーチャート状ガイドを示す模式図である。
【0058】
図6に示すように、表示画面上に、心臓の短軸像と、同心円(円)及びその中心を交点とする十時線からなるマーカとが重畳表示される(ステップS5a)。ユーザは、解剖学的に円形の内外膜の輪郭に、マーカとしての同心円のいずれかを合わせることで、同心円の中心を仮想収縮中心として設定することができる。よって、ユーザはガイドを頼りに仮想収縮中心の位置を設定し易くなり、ユーザに依らず短時間で同じ位置に仮想収縮中心が設定され易くなる。そして、設定された仮想収縮中心に向かう速度成分が取得され、運動情報画像が取得される(ステップS5b)。
【0059】
ユーザによって心電図が参照されながら、運動情報処理手段105では、一連の組織ドプラ動画像に対して、HD24に記憶された画像の中から積分を開始する時相t=0(初期時相t0)が設定される。この場合は、積分開始時相だけでなく、積分終了時相t_endも選択可能としておくことが好適である。これにより、心周期に対する評価の関心時相の区間をユーザ所望の区間に設定することができる。
【0060】
図7は、演算区間の設定を説明するための図である。
【0061】
図7に示した心電図のR波でトリガされる所定の時相(R波の時相をtRとして、tR+t_delayの時相。t_delayは制御可能であり、t_delay=0の場合がR波同期と呼ばれる。)を自動的にt0として設定する(すなわち、t0=tR+t_delay)ものであってもよい。この場合の処理の終了時相は、次のトリガが生じるタイミングとして、ちょうど1心周期分の区間を定めておくのが好適であるが、開始時相から所定の時間間隔(t_int)を予め設定しておけば、t0+t_intの時相を終了時相として、心周期に対する評価の関心時相の区間を所望の区間に設定することができる。
【0062】
また、運動情報処理手段105では、初期時相t0だけでなく、ユーザによる仮想収縮中心の位置合わせ中は運動情報の記憶がゼロクリアされる(ステップS5c)。このように演算区間を設定することで、遷移中の過渡的な画像を非表示とすることができる。
【0063】
心電図信号増幅手段106では、心電計12で検出した心電図信号が増幅され(ステップS6)、運動情報記録手段107にて運動情報画像と共に心電図信号がHD24に記録される。なお、必要に応じて心電図信号を表示装置14に表示するようにしてもよい。
【0064】
表示制御手段108では、Bモード処理手段103で生成したBモード超音波像、組織ドプラ処理手段104で生成した組織ドプラ超音波像、運動情報処理手段105で取得した歪み及び変位画像に基づいて表示画像が生成される(ステップS8)。歪み及び変位画像は、HD24に記憶されたものであってもよい。表示装置14には、Bモード超音波像と組織ドプラ超音波像の重畳画像や、Bモード超音波像と歪み及び変位画像の重畳画像等が表示される。
【0065】
なお、Bモード画像にカラーコード化した運動情報を重畳した表示画像を表示する場合では、運動情報処理手段105で、初期時相t0のみ運動情報の記憶をゼロクリアしてもよい。その場合、ユーザによる仮想収縮中心の位置合わせ中は、表示制御手段108によって運動情報のカラーを消して表示画面を表示させることで、遷移中の過渡的な画像を非表示とすることができる。
【0066】
また、本実施の形態では心臓への適用例を示したが、その場合に限定されるものではなく、例えば、頸動脈等の血管系に対する運動情報の診断であっても適用が可能である。さらに、紹介してきた一連の処理手続きは、ネットワークNで接続されたワークステーション等のコンピュータにより、超音波診断装置10及び超音波画像処理装置13と切り離して行なっても構わない。
【0067】
本実施の形態に係る超音波診断装置10、超音波画像処理装置13及び超音波画像処理プログラム100によると、ユーザよる仮想収縮中心の位置設定が容易となり、仮想収縮中心の位置の設定に慣れるまでの時間が短縮させることができ、また、異なるユーザであっても同じ仮想収縮中心の位置を設定することを容易ならしめる。
【0068】
また、本実施の形態に係る超音波診断装置10、超音波画像処理装置13及び超音波画像処理プログラム100によると、遷移中の過渡的な画像を非表示とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムの実施の形態を示す構成図。
【図2】超音波画像処理装置のハードウェアの構成図。
【図3】超音波画像処理プログラムの実行を説明するための図。
【図4】超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラムの動作を示すフローチャート。
【図5】(a),(b)運動場の定義についての説明図。
【図6】仮想収縮中心位置の設定を行なうためのレーダーチャート状ガイドを示す模式図。
【図7】演算区間の設定を説明するための図。
【図8】従来の仮想収縮中心位置の設定画面を示す模式図。
【符号の説明】
【0070】
10 超音波診断装置
11 心電計
12 超音波プローブ
13 超音波画像処置装置
14 表示装置
15 入力装置
100 超音波画像処理プログラム
101 送信手段
102 受信手段
103 Bモード処理手段
104 組織ドプラ処理手段
105 運動情報処理手段
106 心電図信号増幅手段
107 運動情報記録手段
108 表示制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって入力可能な入力装置を具備し、その入力装置を用いて画像中に仮想収縮中心を設定し、組織の収縮拡張に伴う成分の運動情報を検出する超音波診断装置において、
前記仮想収縮中心を設定する際、前記入力装置で移動可能な円を前記画像に重畳して表示させ、前記円の中心を前記仮想収縮中心として設定する構成としたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記仮想収縮中心を設定する際、前記入力装置で移動可能な同心円を前記画像に重畳して表示させ、前記同心円の中心を前記仮想収縮中心として設定する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記仮想収縮中心を設定する際、前記入力装置で移動可能であり、前記円の中心を交点とする十字線を前記画像に重畳して表示させることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記入力手段を用いた前記円の位置移動中は、前記運動情報を非表示とすることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記入力手段を用いた前記円の位置移動中は、前記運動情報のメモリをゼロクリアして、前記運動情報を非表示とすることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
Bモード画像にカラーコード化した運動情報を重畳した表示画像を表示する場合、前記入力手段を用いた前記円の位置移動中は、前記運動情報のカラーを消して前記表示画像を表示させることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
ユーザによって入力可能な入力装置を具備し、その入力装置を用いて画像中に仮想収縮中心を設定し、組織の収縮拡張に伴う成分の運動情報を検出する超音波画像処理装置において、
前記仮想収縮中心を設定する際、前記入力装置で移動可能な円を前記画像に重畳して表示させ、前記円の中心を前記仮想収縮中心として設定する構成としたことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項8】
前記仮想収縮中心を設定する際、前記入力装置で移動可能な同心円を前記画像に重畳して表示させ、前記同心円の中心を前記仮想収縮中心として設定する構成としたことを特徴とする請求項7に記載の超音波画像処理装置。
【請求項9】
前記仮想収縮中心を設定する際、前記入力装置で移動可能であり、前記円の中心を交点とする十字線を前記画像に重畳して表示させることを特徴とする請求項7に記載の超音波画像処理装置。
【請求項10】
前記入力手段を用いた前記円の位置移動中は、前記運動情報を非表示とすることを特徴とする請求項7に記載の超音波画像処理装置。
【請求項11】
前記入力手段を用いた前記円の位置移動中は、前記運動情報のメモリをゼロクリアして、前記運動情報を非表示とすることを特徴とする請求項10に記載の超音波画像処理装置。
【請求項12】
Bモード画像にカラーコード化した運動情報を重畳した表示画像を表示する場合、前記入力手段を用いた前記円の位置移動中は、前記運動情報のカラーを消して前記表示画像を表示させることを特徴とする請求項7に記載の超音波画像処理装置。
【請求項13】
ユーザによって入力可能な入力装置を具備し、その入力装置を用いて画像中に仮想収縮中心を設定し、組織の収縮拡張に伴う成分の運動情報を検出するコンピュータに、
前記仮想収縮中心を位置する際、前記入力装置で移動可能な円を前記画像に重畳して表示させ、前記円の中心を前記仮想収縮中心として設定する機能を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【請求項14】
前記仮想収縮中心を位置する際、前記入力装置で移動可能な同心円を前記画像に重畳して表示させ、前記同心円の中心を前記仮想収縮中心として設定する機能を実現させることを特徴とする請求項13に記載の超音波画像処理プログラム。
【請求項15】
前記仮想収縮中心を設定する際、前記コンピュータに、前記入力装置で移動可能であり、前記円の中心を交点とする十字線を前記画像に重畳して表示させる機能を実現させることを特徴とする請求項13に記載の超音波画像処理プログラム。
【請求項16】
前記入力手段を用いた前記円の位置移動中は、前記コンピュータに、前記運動情報を非表示とする機能を実現させることを特徴とする請求項13に記載の超音波画像処理プログラム。
【請求項17】
前記入力手段を用いた前記円の位置移動中は、前記コンピュータに、前記運動情報のメモリをゼロクリアして、前記運動情報を非表示とする機能を実現させることを特徴とする請求項16に記載の超音波画像処理プログラム。
【請求項18】
Bモード画像にカラーコード化した運動情報を重畳した表示画像を表示する場合、前記コンピュータに、前記入力手段を用いた前記円の位置移動中は、前記運動情報のカラーを消して前記表示画像を表示させる機能を実現させることを特徴とする請求項13に記載の超音波画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−61422(P2007−61422A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252296(P2005−252296)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】