説明

超音波診断装置

【課題】弾性特性の計測時において、超音波振動子からの音響線が血管断面の中心を通るように、超音波振動子と血管との位置関係を調整するための構成を提供する。
【解決手段】
超音波診断装置は、長さ方向に配列された複数の振動素子を有する振動子を利用して、超音波を送信し、生体の組織で反射した超音波を受信する超音波プローブと接続可能である。超音波診断装置は、振動子に対し、長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させる送信部と、血管で反射された超音波を、振動子を用いて繰り返し受信して複数の受信信号を生成する受信部と、複数の受信信号に基づいて、反射波の強度分布に関する強度情報を生成する強度情報生成部と、強度情報に基づいて、反射強度が最大になったときの長さ方向に沿った位置を特定する判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置および超音波プローブに関し、特に、生体内の組織の性状特性を測定する超音波診断装置およびその制御方法、当該超音波診断装置に利用される超音波プローブの構造および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心筋梗塞や脳梗塞などの循環器系疾病を患う人々が増加してきており、このような疾病の予防および治療を行うことが大きな課題となっている。心筋梗塞や脳梗塞の発病には、動脈硬化が深く関係している。そのため、動脈硬化が進行する早期段階において、動脈硬化の度合いを診断する診断方法あるいは診断装置が求められている。
【0003】
従来、動脈硬化病変の診断は、血管カテーテルを用いて血管内部の様子を直接観察することによって行われていた。しかし、この診断では、血管カテーテルを血管に挿入する必要があるため、被験者への肉体的な負荷が大きいという問題があった。このため、血管カテーテルによる観察は、動脈硬化病変が存在していることが確かである被験者に対して、その場所を特定するために用いられ、例えば、健康管理のための検査として、この方法が用いられることはなかった。
【0004】
被験者への肉体的な負担が少ない非侵襲の医療診断装置として、超音波診断装置やX線診断装置が従来用いられている。超音波やX線を体外から照射することによって、被験者に苦痛を与えることなく、体内の形状情報、あるいは形状の時間変化情報を得ることができる。体内の測定対象物の形状の時間変化情報(運動情報)が得られると、測定対象物の性状情報を求めることができる。たとえば、血管の弾性率は、心拍による大振幅変位運動に重畳されている血管の微小な厚みの変化、つまり血管の歪み量と、血圧差とに基づいて求められる。したがって、運動情報を得ることにより、生体内の血管の弾性特性を求めることができ、動脈硬化の程度を直接知ることが可能となる。
【0005】
特に超音波診断は、X線診断と比較した場合、被験者に超音波プローブを当てるだけで測定できるので、被験者への造影剤投与が不要である点やX線被爆のおそれがない点で優れている。
【0006】
近年のエレクトロニクス技術の進歩によって、超音波診断装置の測定精度を飛躍的に向上させることも可能になってきた。これに伴って、生体組織の微小運動を計測する超音波診断装置の開発が進んでいる。生体組織の微小運動を高精度に計測することにより、動脈壁の弾性特性の二次元分布を詳細に測定することが可能となる。
【0007】
例えば、特許文献1は、制約付き最小二乗法を用いて超音波エコー信号の振幅と位相を解析することにより、測定対象を高精度でトラッキングする技術を開示している。この技術を位相差トラッキング法と呼ぶ。この技術によれば、血管運動による振幅が数ミクロンであり、周波数が数百Hzまでの速い振動成分を高精度に計測できる。このため、血管壁の厚さ変化や歪みを数ミクロンのオーダーで高精度に計測をすることが可能になると報告されている。
【0008】
また、特許文献2は、被検体に対して複数の走査区画を規定して超音波を走査し、走査区画ごとの血管弾性率を計測する技術を開示している。
【0009】
一方、特許文献3の超音波診断装置は、弾性特性とは異なる血管の特性、具体的には頸動脈の厚さを示す値を、被験者が動脈硬化であるか否かを判断するための指標として測定している。頸動脈は、内側から順に内膜、中膜、外膜の3層を有する構造を備えていることが知られている。特許文献3の超音波診断装置は、この内膜と中膜をあわせた厚さ(内中膜複合体厚:以下IMTと呼ぶ)の値を計測している。
【0010】
なお、特許文献3の超音波診断装置には血管3の変位(歪み)を計測する手段がないため、血管の弾性特性を測定することはできない。また、この超音波診断装置にはIMT値を計測前の段階で血管の3次元表示するための機能が必須であり、処理に時間を要するとともに、高コスト化が避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−5226号公報
【特許文献2】特開2001−292995号公報
【特許文献3】特開2006−000456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
血管の弾性特性を正確に計測するためには、血管の形状に関する正確な時間変化情報(運動情報)が必要である。そのためには、超音波の音響線が血管断面の中心を通る状態で血管の変位計測を行わなければならない。
【0013】
たとえば、図19の(a1)は、血管3に対して理想的に配置されたプローブ100の上面図であり、(a2)はその断面図である。プローブ100内に設けられた振動子101から出力される超音波の音響線が、血管3の断面の中心oを通っている。この状態であれば、心拍によって血管3の厚さが変化する方向と音響線の方向とは一致するため、血管の正確な歪み量を測定できる。よって、正確な弾性率を測定することができる。
【0014】
しかしながら、従来の超音波診断装置では、超音波の音響線が血管断面の中心oを通っているか否かに関して特に注意が払われていなかった。これは、超音波診断装置の使用者が操作に熟達していることを前提としているためと考えられるが、操作に慣れていない使用者による使用も当然に予想されるため、このような前提は適切ではない。
【0015】
操作に慣れていない使用者は、超音波の音響線が血管断面の中心を通るようにプローブ100を配置することは困難である。たとえば、図19の(b1)は、血管3の中心からずれた位置に配置されたプローブ100の上面図を示す。そして図23の(b2)はその断面図を示す。この状態では、血管3の厚さが変化する方向と音響線の方向とが一致していないため、血管の正確な歪み量を測定できない。
【0016】
上述の例は、プローブ100が血管3と平行に配置されている例を示している。しかしながら、血管3の方向は外部から視認できないため、血管3と垂直に近い状態で配置されることもある。図20(a)および(b)は、血管3とは平行でない状態で配置されたプローブ100の上面図を示す。振動子101からの音響線が血管断面の中心を常に通っていないため、やはり血管の正確な歪み量を測定できない。
【0017】
さらに、血管3は必ずしも表皮に平行に伸びているとは限らない。血管3が表皮から体内の深さ方向に伸びている場合には、表皮と平行な平面内でプローブ100をどのように配置したとしても、振動子101からの音響線が血管断面の中心を常に通ることはなくなる。すると、やはり血管の正確な歪み量を測定できない。
【0018】
上述したいずれの場合であっても、特に装置の操作に慣れていない使用者は、画像を見ながら手技で血管断面の中心を探し出すことは困難である。これでは測定された弾性特性は不正確になる。
【0019】
本発明の目的は、弾性特性の計測時において、超音波振動子からの音響線が血管断面の中心を通るように、超音波振動子と血管との位置関係を調整するための構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明による超音波診断装置は、長さ方向に配列された複数の振動素子を有する振動子を利用して、超音波を送信し、生体の組織で反射した前記超音波を受信する超音波プローブと、前記振動子に対し、前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させる送信部と、前記血管で反射された前記超音波を、前記振動子を用いて繰り返し受信して複数の受信信号を生成する受信部と、前記複数の受信信号に基づいて、前記反射波の強度分布に関する強度情報を生成する強度情報生成部と、前記強度情報に基づいて、前記反射強度が最大になったときの前記長さ方向に沿った位置を特定する判定部とを備え、特定された前記位置で前記超音波を送信して前記血管の性状特性値を演算する。
【0021】
前記超音波プローブは、前記超音波プローブ内において前記振動子の位置を変化させる駆動装置を有し、前記超音波診断装置は、前記駆動装置を制御して、前記振動子が前記超音波を送信する位置を変化させるプローブ制御部と、前記血管の性状特性値を演算する演算部とをさらに備えており、前記演算部が前記特定された前記位置における前記血管の性状特性値を測定した後に、前記プローブ制御部は前記駆動装置を制御して、前記超音波の送信方向に垂直で、かつ、前記振動子を前記長さ方向に垂直な方向に移動させてもよい。
【0022】
前記送信部は、移動後の前記振動子に対して、さらに前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させてもよい。
【0023】
本発明による超音波診断装置は、超音波を送信し、生体の組織で反射した前記超音波を受信する振動子、および、前記振動子の角度を変化させる駆動装置を有する前記超音波プローブと、前記駆動装置を制御して、前記超音波を送信する方向を変化させるプローブ制御部と、前記振動子に対し、超音波を送信させる送信部と、前記血管で反射された前記超音波を受信して、受信信号を生成する受信部と、前記受信信号に基づいて、前記反射波の反射強度に関する強度情報を生成する強度情報生成部と、前記強度情報に基づいて、前記反射強度が最大になったときの角度を特定する判定部とを備え、特定された前記角度で前記超音波を送信して前記血管の性状特性値を演算する。
【0024】
前記プローブ制御部が前記振動子の角度を変化させる前後において、前記送信部は、前記振動子に対し前記超音波をそれぞれ送信させ、前記受信部は、それぞれ送信された各超音波に対応する各受信信号を生成し、前記強度情報生成部は、前記各受信信号に基づいて、前記反射波の反射強度を示す強度情報を生成し、前記プローブ制御部は、前記振動子の角度を変化させた後の反射強度が、前記振動子の角度を変化させる前の反射強度よりも小さくなるまで、前記振動子の角度を変化させてもよい。
【0025】
前記振動子は、長さ方向に配列された複数の振動素子を有しており、前記判定部によって反射強度が最大になったときの角度が特定された後において、前記送信部は前記振動子に対し、前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させ、前記受信部は、前記血管で反射された前記超音波を、前記振動子を用いて繰り返し受信して複数の受信信号を生成し、前記強度情報生成部は、前記複数の受信信号に基づいて、前記反射波の強度分布に関する強度情報を生成し、前記判定部は、前記強度情報に基づいて、前記反射強度が最大になったときの、前記長さ方向に沿った位置を特定し、特定された前記位置で前記超音波を送信して前記血管の性状特性値を演算してもよい。
【0026】
前記超音波診断装置は、測定された前記血管の性状特性値を表示するための表示部をさらに備えていてもよい。
【0027】
本発明による超音波診断装置は、長さ方向に配列された複数の振動素子を有する振動子を利用して、超音波を送信し、生体の組織で反射した前記超音波を受信する超音波プローブと、前記振動子に対し、前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させる送信部と、前記血管で反射された前記超音波を、前記振動子を用いて繰り返し受信して複数の受信信号を生成する受信部と、前記複数の受信信号の各々に基づいて、前記血管の歪み量を演算する演算部と、前記歪み量が最大になったときの前記長さ方向に沿った位置を特定する判定部とを備え、前記演算部は、特定された前記位置で受信された前記超音波に基づいて、前記血管の歪み量以外の前記血管の性状特性値を演算する。
【0028】
本発明による超音波診断装置は、長さ方向に配列された複数の振動素子を有する振動子を利用して、超音波を送信し、生体の組織で反射した前記超音波を受信する超音波プローブと接続可能な超音波診断装置であって、前記振動子に対し、前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させる送信部と、血管で反射された前記超音波を、前記振動子を用いて繰り返し受信して複数の受信信号を生成する受信部と、前記複数の受信信号に基づいて、前記反射波の強度分布に関する強度情報を生成する強度情報生成部と、前記強度情報に基づいて、前記反射強度が最大になったときの前記長さ方向に沿った位置を特定する判定部とを備えている。
【0029】
前記超音波プローブは、前記超音波プローブ内において前記振動子の位置を変化させる駆動装置を有し、前記超音波診断装置は、前記駆動装置を制御して、前記判定部で特定する前記位置の情報に基づいて前記振動子の移動を制御し、前記振動子が前記超音波を送信する位置を変化させるプローブ制御部をさらに備えていてもよい。
【0030】
前記発明による超音波診断装置は、前記判定部で特定する前記位置で前記超音波を送信して前記血管の性状特性又は形状特性を演算する演算部をさらに備え、前記演算部が前記特定された前記位置における前記血管の性状特性値又は形状特性値を測定した後に、前記プローブ制御部は前記駆動装置を制御して、前記超音波の送信方向に垂直で、かつ、前記振動子を前記長さ方向に垂直な方向に移動させてもよい。
【0031】
前記送信部は、移動後の前記振動子に対して、さらに前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させてもよい。
【0032】
本発明の超音波診断装置は、超音波を送信し、生体の組織で反射した前記超音波を受信する振動子、および、前記振動子の角度を変化させる駆動装置を有する前記超音波プローブと接続可能な超音波診断装置であって、前記駆動装置を制御して、前記超音波を送信する方向を変化させるプローブ制御部と、 前記振動子に対し、超音波を送信させる送信部と、前記血管で反射された前記超音波を受信して、受信信号を生成する受信部と、前記受信信号に基づいて、前記反射波の反射強度に関する強度情報を生成する強度情報生成部と、前記強度情報に基づいて、前記反射強度が最大になったときの角度を特定する判定部とを備えている。
【0033】
前記プローブ制御部は、前記判定部で特定する前記角度の情報に基づいて前記振動子の回転を制御してもよい。
【0034】
前記超音波診断装置は、前記判定部で特定する前記角度で前記超音波を送信して前記血管の性状特性又は形状特性を演算する演算部をさらに備えていてもよい。
【0035】
前記プローブ制御部が前記振動子の角度を変化させる前後において、前記送信部は、前記振動子に対し前記超音波をそれぞれ送信させ、前記受信部は、それぞれ送信された各超音波に対応する各受信信号を生成し、前記強度情報生成部は、前記各受信信号に基づいて、前記反射波の反射強度を示す強度情報を生成し、前記プローブ制御部は、前記振動子の角度を変化させた後の反射強度が、前記振動子の角度を変化させる前の反射強度よりも小さくなるまで、前記振動子の角度を変化させてもよい。
【0036】
前記振動子は、長さ方向に配列された複数の振動素子を有しており、前記判定部によって反射強度が最大になったときの角度が特定された後において、前記送信部は前記振動子に対し、前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させ、前記受信部は、前記血管で反射された前記超音波を、前記振動子を用いて繰り返し受信して複数の受信信号を生成し、前記強度情報生成部は、前記複数の受信信号に基づいて、前記反射波の強度分布に関する強度情報を生成し、前記判定部は、前記強度情報に基づいて、前記反射強度が最大になったときの、前記長さ方向に沿った位置を特定してもよい。
【0037】
前記超音波診断装置は、測定された前記血管の性状特性値又は形状特性値を表示するための表示部をさらに備えていてもよい。
【0038】
本発明による超音波診断装置は、長さ方向に配列された複数の振動素子を有する振動子を利用して、超音波を送信し、生体の組織で反射した前記超音波を受信する超音波プローブと接続可能な超音波診断装置であって、前記振動子に対し、前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させる送信部と、血管で反射された前記超音波を、前記振動子を用いて繰り返し受信して複数の受信信号を生成する受信部と、前記複数の受信信号の各々に基づいて、前記血管の歪み量を演算する演算部と、前記歪み量が最大になったときの前記長さ方向に沿った位置を特定する判定部とを備え、前記演算部は、特定された前記位置で受信された前記超音波に基づいて、前記血管の歪み量以外の前記血管の性状特性値を演算する。
【発明の効果】
【0039】
本発明の超音波診断装置は、長さ方向に沿った振動子の異なる位置から超音波を逐次送信させて、受信信号の反射強度を取得する。そして、超音波診断装置の判定部は、反射波の強度を示す強度情報に基づいて反射強度が最大になったときの振動子の位置を特定する。これにより、弾性特性の計測時において、超音波振動子からの音響線が血管断面の中心を通るように、超音波振動子と血管との位置関係を調整することが可能となる。そして、その位置における血管の弾性特性を演算することにより、血管の正確な弾性特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】超音波診断装置11を用い、血管3の弾性特性の計測を行うための構成を示すブロック図である。
【図2】超音波プローブ13に内蔵された超音波振動子群30を示す図である。
【図3】(a1)および(b1)は、x方向に沿って配列された複数の超音波振動素子を用いて焦点を形成したときの超音波集束波の模式図であり、(a2)および(b2)は超音波集束波の簡略図である。
【図4】生体の組織を伝播する超音波ビームを模式的に示す図である。
【図5】超音波診断装置11の内部構成を示すブロック図である。
【図6】演算部19の内部構成を示すブロック図である。
【図7】表示部21上に示された血管壁40およびROI41の模式図である。
【図8】血管壁40のROI41で規定される領域における弾性特性を示す図である。
【図9】超音波を発生させながらx軸方向を走査する振動子30を示す図である。
【図10】超音波でx軸方向を走査した結果、強度情報生成部23が生成した超音波反射波の反射強度の分布を示す図である。
【図11】(a)および(b)は本実施形態による超音波プローブ13の物理的な構成を示す図である。
【図12】実施形態1による超音波診断装置11において血管3の弾性特性を計測する処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】(a)および(b)は、ケース50の比較的上方の点Kを支軸としてケース50を振り子のように振動させる超音波プローブ13の構成例を示す図である。
【図14】0度から徐々に大きくなるように超音波プローブ13の角度を変更しながら超音波を送信したときの、強度情報生成部23が生成した超音波反射波の反射強度の分布を示す図である。
【図15】振動子30の変形である振動子35を示す図である。
【図16】振動子35の角度と、超音波振動子群35aおよび超音波振動子群35bにおいて検出された反射強度の差分値Tとの関係を示す図である。
【図17】y軸方向に移動可能で、かつ、x軸を中心にして回転可能な超音波プローブ13の物理的な構成を示す図である。
【図18】実施形態2による超音波診断装置11において血管3の弾性特性を計測する処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】(a1)および(a2)は血管3に対して理想的に配置されたプローブ100の上面図および断面図であり、(b1)および(b2)は血管3の中心からずれた位置に配置されたプローブ100の上面図および断面図である。
【図20】(a)および(b)は、血管3とは平行でない状態で配置されたプローブ100の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照して、本発明による超音波診断装置の実施形態を説明する。
【0042】
図1は、超音波診断装置11を用い、血管3の弾性特性の計測を行うための構成を示すブロック図である。この構成は各実施形態において共通である。
【0043】
超音波プローブ13は被験者の体表2に密着するよう支持され、1または複数の超音波振動素子を利用して血管外組織1および血管3を含む体組織内部へ超音波(音響線)を送信する。血管外組織1は脂肪や筋肉等により構成される。送信された超音波は血管3や血液5にて反射、散乱し、その一部が超音波プローブ13へ戻り、エコーとして受信される。
【0044】
超音波プローブ13は、アレー状に配列された複数の超音波振動素子を内蔵している。後述の実施形態においては、本発明による超音波プローブ13の特徴的な構造および動作を説明するが、ここでは超音波プローブ13の基本的な動作原理を概説する。
【0045】
図2は、超音波プローブ13に内蔵された超音波振動素子群を有する振動子30を示す。振動子30では、超音波振動素子群が、たとえば一方向に沿って並べられており、いわゆる1Dアレイ振動子を構成している。
【0046】
振動子30は、各超音波振動素子を順次揺動させて超音波の送受信を行い、所定範囲を走査することができる。また振動子30は、複数の超音波振動素子からの各超音波の位相を所定の位置(焦点位置)において重ね合わせ、焦点位置において反射した信号を受信することもできる。後者の例を図3に示す。
【0047】
図3の(a1)および(b1)は、x方向に沿って配列された複数の超音波振動素子を用いて焦点を形成したときの超音波の集束波を模式的に示している。超音波の集束波は図示されるような所定の幅を持っており、z軸方向の所定の深さにおいて焦点を有する。
【0048】
なお、本願図面上では記載を簡略化することもある。たとえば図3(a1)に対応する超音波の集束波に代えて、図3(a2)において「音響線」として示される超音波ビームの中心軸のみを記載することがある。また図3(b1)に対応する超音波の集束波に代えて、図3(b2)において「音響線」として示される超音波ビームの中心軸のみを記載することがある。
【0049】
図4は、生体の組織を伝播する超音波ビームを模式的に示す。超音波プローブ13から出射した超音波送信波は、ある有限の幅を持つ超音波ビーム67としてz軸方向に進行し、生体組織60の血管外組織1および血管3中を伝播する。そして、伝播の過程において血管外組織1および血管3によって反射または散乱した超音波の一部が超音波プローブ13へ戻り、超音波反射波として受信される。超音波反射波は時系列信号として検出され、超音波プローブ13に近い組織から得られる反射の時系列信号ほど、時間軸上で原点近くに位置する。超音波ビーム67の幅(ビーム径)は、遅延時間を変化させることにより制御することができる。
【0050】
上述したように超音波反射波は血管外組織1、血管3、および血液5より生じる。音響線66上に位置する血管前壁の複数の測定対象位置Pn(P1、P2、P3、Pk・・・Pn、nは3以上の自然数)は、ある一定間隔で超音波プローブ13に近い順にP1、P2、P3
、Pk・・・Pnと配列されている。図4の上方を正、下方を負とする座標軸を深さ方向に設け、測定対象位置P1、P2、P3、Pk・・・Pnの座標をそれぞれZ1、Z2、Z3、Zk
、・・・Znとすると、測定対象位置Pkからの反射は、時間軸上でtk=2Zk/cに位置することになる。ここでcは体組織内での超音波の音速を示す。反射波信号(時系列信号)は測定対象位置の状態を表す情報として利用される。
【0051】
超音波診断装置11は、血管の弾性特性や歪みなどの、血管3の性状特性を測定する前に、血管3に対して超音波を送信して反射波信号を取得する。そして後述する実施形態1および2として説明する方法によって超音波プローブ13の振動子30から送信される超音波(音響線)が血管3の断面の中心を通るように、超音波プローブ13または振動子30と血管3との位置関係を調整する。
【0052】
両者の位置関係の調整が完了すると、超音波診断装置11は、超音波を体組織内部へ再度送信し、受信したエコーによる受信信号の解析および演算を行う。超音波診断装置11は、たとえば特許文献1に開示されている方法によって、検波信号の振幅および位相の両方を用い、制約付最小二乗法によって対象の瞬時の位置を決定し、高精度な(位置変化量の測定精度は±0.2ミクロン程度)位相トラッキングを行う。これにより、超音波診断装置11は、血管外組織1や血管3の運動情報、たとえば血管3の壁における微小部位の位置および厚さの時間変化を十分な精度で測定することができる。
【0053】
超音波診断装置11には血圧計12が接続されており、血圧計12が測定した被験者の血圧値に関する情報が超音波診断装置11へ入力される。血圧計12から得た血圧に関する情報を用いることによって、血管3の壁における微小部位の弾性特性を求めることができる。
【0054】
また、超音波診断装置11には心電計22が接続されている。超音波診断装置11は、心電計22から心電波形を受け取り、測定データの取得やデータリセットのタイミングを決定するトリガー信号として心電波形を使用する。
【0055】
以下の実施形態においては、超音波診断装置を利用して血管の弾性特性を求める例を説明するが、血管の弾性特性以外の血管の性状特性、たとえば血管の歪みなどを測定することも可能である。
【0056】
(実施形態1)
以下、本実施形態による超音波診断装置11を説明する。
【0057】
図5は、超音波診断装置11の内部構成を示すブロック図である。
【0058】
超音波診断装置11は、送信部14、受信部15、遅延時間制御部16、位相検波部17、フィルタ部18、演算部19、演算データ記憶部20、表示部21、強度情報生成部23、中心位置判定部24、および、プローブ制御部25を備えている。また、これら各構成要素を制御するため、マイコンなどからなる制御部26を備えている。
【0059】
超音波診断装置11の各構成要素のうち、強度情報生成部23、中心位置判定部24およびプローブ制御部25は、主として、超音波が血管断面の中心を通るように振動子30と血管との位置関係を調整するために設けられている。一方、位相検波部17、フィルタ部18、演算部19、演算データ記憶部20および表示部21は、主として血管3の弾性特性を測定し、測定結果を表示するために設けられている。送信部14、受信部15、遅延時間制御部16および制御部26は、振動子30と血管との位置関係の調整、および、血管の弾性特性の測定のいずれの動作時においても動作する。
【0060】
なお、図5に示す超音波診断装置11は超音波プローブ13を含んでいない。しかしながら、超音波プローブ13は超音波診断装置11の動作に必須であるため、超音波プローブ13を超音波診断装置11の構成要素として捉えてもよい。
【0061】
以下、超音波診断装置11の各構成要素の機能を説明する。
【0062】
送信部14は、所定の駆動パルス信号を生成し、超音波プローブ13に出力する。駆動パルス信号により超音波プローブ13から送信される超音波送信波は、血管3等の体組織において反射、散乱し、生じた超音波反射波が超音波プローブ13により検出される。超音波を発生させる駆動パルスの周波数は、時間軸上で隣接している前後の超音波パルスが重ならないように、測定対象の深さと超音波の音速とを考慮して決定される。
【0063】
受信部15は超音波プローブ13を用いて超音波反射波を検出し、検出によって得られた信号を増幅することにより、受信信号を生成する。受信部15はA/D変換部を含み、受信信号をさらにデジタル信号に変換する。送信部14および受信部15は電子部品などを用いて構成される。
【0064】
遅延時間制御部16は送信部14および受信部15に接続されており、送信部14から超音波プローブ13の超音波振動子群に与える駆動パルス信号の遅延時間を制御する。これにより、超音波プローブ13から送信される超音波送信波の超音波ビームの音響線の方向や焦点深度を変化させる。また、超音波プローブ13によって受信され、受信部15によって生成した受信信号の遅延時間を制御することにより、開口径を変化させたり、焦点位置を変化させたりすることができる。遅延時間制御部16の出力は位相検波部17に入力される。
【0065】
位相検波部17は、遅延時間制御部16で遅延制御された受信信号を位相検波し、実部信号と虚部信号とに分離する。分離された実部信号および虚部信号はフィルタ部18に入力される。フィルタ部18は、高周波成分、測定対象以外からの反射成分およびノイズ成分等を除去する。位相検波部17およびフィルタ部18はソフトウエアによってもハードウエアによっても構成することができる。これにより、血管3の組織内部に設定された複数の測定対象位置にそれぞれ対応し、実部信号と虚部信号を含む位相検波信号を生成する。
【0066】
演算部19は、種々の演算を行う。図6は、演算部19の演算処理を実現する機能ブロックを示す。演算部19は、形状測定値演算部31および性状特性値演算部32とを含む。心電計22から得られる心電波形は、演算部19へ入力され、測定データの取得やデータリセットのタイミングを決定するトリガー信号として使用される。この目的においては、心電計22は他の生体信号検出手段である心音計や脈波計と置き換えることも可能であり、心電波形の替わりに心音波形や脈波波形をトリガー信号として用いることも可能である。
【0067】
形状測定値演算部31は、位相検波信号の実部信号および虚部信号を用いて、血管3の組織内部に設定された複数の測定対象位置における位置変位量(位置の時間変位量)を求める。位置変位量は、測定対象位置(トラッキング位置)の運動速度を求め、この運動速度を積分することによっても同様に求めることもできる。そして複数の位置変位量から選ばれる任意の2つの位置における位置変位量の差分を求めることにより、その2点間の厚さ変化量を求めることができる。2つの位置の初期値あるいは、2つの位置における位置変位量の差分の初期値が与えられる場合には、2点間の厚さを求めることができる。
【0068】
なお、厚さまたは厚さ変化量を規定する2点は、血管3の組織内部に設定された測定対象位置と一致していなくてもよい。たとえば、複数の測定対象位置の中心の位置を用いてもよい。この場合には、中心を求めた複数の測定対象位置の位置変位量を平均し、平均した位置変位量を用いることが好ましい。複数の測定対象位置を用いる場合には、複数の測定対象位置を代表する位置および位置変位量は、単純な平均によって求めてもよいし、重み付けを行ってもよく、複数の測定対象位置に基づいて、2つの位置およびその位置における位置変位量が求められておればよい。
【0069】
性状特性値演算部32は、求めた厚さ変化量の最大値と最小値との差分から、最大厚さ変化量を計算し、血圧計12から得られる血圧データとから、2点間に位置する組織の弾性特性を求める。
【0070】
具体的には、性状特性値演算部32は、対象組織Tkの厚さHk(最低血圧時の値)、対象組織の厚さ変化量Dk(t)の最大値と最小値との差Δhkおよび最低血圧値と最高血圧値との差である脈圧Δpを用い、対象組織Tkにおける血管のスティフネスを表わす弾性指標Ekを下記の式として表す。
Ek=Δp×(Δhk/Hk)
【0071】
なお、任意の2点で挟まれた1点の弾性特性を求めてもよい。ただし、本実施の形態で用いている超音波プローブ13は、アレー状に配列された複数の超音波振動素子を有しているため、断層面内の任意の領域内すべての箇所の弾性特性を求めることが可能である。
【0072】
なお、性状特性値演算部32は弾性特性を求めるためにのみ設けられているのではなく、たとえばΔhk/Hを演算して、血管の性状特性のひとつである歪みを求めてもよい。
【0073】
再び図5を参照する。表示部21は、求められた生体組織の最大厚さ変化量、歪み、あるいは弾性特性をマッピングし、形状測定値または性状測定値の空間分布を示す心周期毎の空間分布画像を表示する。空間分布画像は1次元であってもよいし、2次元あるいは3次元であってもよい。形状測定値または性状測定値に応じた色あるいは諧調によって表示すれば、測定結果を把握し易い。
【0074】
このとき、操作者は、形状測定値または性状測定値を求めたい任意領域を表示部21上において指定することによって決定できる。この領域はROI(Region Of Interestの略)と呼ばれる。ROIは、操作者が測定値を求めたい領域を指定するための表示で、その大きさや位置を表示部21上で確認しながら、超音波診断装置11のインターフェース部(図示せず)を介して自由に設定することが可能である。
【0075】
図7は、表示部21上に示された血管壁40とROI41とを模式的に示している。ROI41が規定する領域には、血管壁40以外の組織も含まれている。血管壁40の画像はたとえば上述の演算とは別に受信信号を振幅強度に応じた輝度で変調することにより得られる。図8は、血管壁40のROI41で規定される領域における弾性特性を示している。ROI41で規定される領域には、例えば、6行×5列にマッピングされた画像データf(k)11〜f(k)65が配置され、画像データf(k)11〜f(k)65が空間分布画像Fkを構成している。前述したように画像データf(k)11〜f(k)65は、生体組織の最大厚さ変化量などの形状測定値あるいは歪みや弾性特性などの性状特性値である。
【0076】
演算部19で演算された位置変位量、厚さ変化量、弾性特性等のデータは、図5に示す演算データ記憶部20に記憶され、随時読み取ることが可能である。また、演算部19で演算された位置変位量、厚さ変化量、弾性特性等のデータは、表示部21に入力され、データを二次元画像などに可視化することができる。さらに、表示部21と演算データ記憶部20とを接続することによって、記憶された各種データを表示部21に随時表示することもできる。演算部19で演算された各種データは、表示部21へ出力され、記憶部20へも出力されることにより、リアルタイムでデータを表示しつつ、データを後で利用することができるよう保存されることが好ましい。しかし、どちらか一方のみの出力を行ってもよい。
【0077】
強度情報生成部23は、遅延時間制御部16で遅延制御された受信信号の振幅に基づいて、反射波の強度(反射強度)を測定し、反射強度の分布を示す強度情報を生成する。後述のように、本実施形態においては、振動子30のx軸(たとえば図4)と血管3が伸びる方向に沿った血管3の軸(以下「長軸」と呼ぶ。)とが実質的に垂直に配置されている。強度情報生成部23は、振動子30を利用してx軸方向に順次送信された超音波の反射波の反射強度を測定して強度情報を生成する。
【0078】
また、振動子30は超音波を発生させながら、体表に平行でかつ、x軸方向と垂直な方向、すなわち、血管の長軸方向に超音波プローブ13内を移動する。強度情報生成部23は、振動子30の移動に伴って得られる反射強度を測定して強度情報を生成する。
【0079】
中心位置判定部24は、強度情報に基づいて最も強い反射強度が得られたときの超音波プローブ13内の振動子30の位置を特定する。
【0080】
プローブ制御部25は、後述する、超音波プローブ13内の振動子30の移動を制御するための制御信号を出力する。たとえばプローブ制御部25は、制御部26からの指示に基づいて振動子30の移動開始および終了、移動方向および移動速度を制御する。またプローブ制御部25は、中心位置判定部24によって特定された位置に、振動子30を移動させる。
【0081】
以下、図9および10を参照しながら、振動子30と血管3との位置関係を調整する処理の原理を説明する。この処理によれば、振動子30から送信される超音波(音響線)が血管3の断面の中心を通過するため、血管3の弾性特性を正確に計測可能となる。
【0082】
なお、本実施形態においては振動子30のx軸(たとえば図9)と血管3の長軸とが実質的に垂直に配置されているとする。一方、振動子30のz軸(たとえば図9)と血管3の長軸とは必ずしも垂直ではなくてもよい。
【0083】
図9は、超音波を発生させながらx軸方向を走査する振動子30を示す。振動子30はケース50に収納されている。
【0084】
送信部14からの制御信号に基づいて、振動子30は一方の端部から他方の端部まで、たとえば図3の(a1)および(b1)に示すように、超音波を発生させながらx軸方向を走査する。
【0085】
図10は、超音波でx軸方向を走査した結果、強度情報生成部23が生成した超音波反射波の反射強度の分布を示す。横軸は振動子30の長さ方向(x軸方向)であり、縦軸が反射強度である。反射強度が得られると、中心位置判定部24は最大の反射強度Rmaxが得られたときの振動子30の位置Xoを特定する。
【0086】
中心位置判定部24によって特定された位置Xoが、超音波の音響線が血管3の断面の中心を通過する位置に対応する。その理由は以下のとおりである。送信波が断面の中心から離れた位置を通過するほど、送信波は、血管3の外壁および内壁において、入射方向に対して90度に近づく角度で反射されるため、血管3からの反射波の検出強度は小さくなる。一方、超音波送信波が断面の中心oに近い位置を通過するほど、血管3の外壁および内壁において超音波は入射してきた方向に反射されるため、血管3からの反射波の検出強度は大きくなる。そして超音波送信波が断面の中心oを通過するとき、超音波の入射方向と反射方向は血管3の外壁および内壁において一致するため、反射波の検出強度は最大になる。よって、反射強度が最大になるときの超音波を送信した振動子30上の位置が、超音波送信波が断面の中心oを通過する位置であるといえる。
【0087】
位置Xoが特定された後は、送信部14は位置Xoから超音波を送信することにより、血管3の弾性特性の計測を行えばよい。
【0088】
上述の例では、振動子30の位置は固定されていた。しかしながら、振動子30を血管3の長軸方向に沿って移動させ、移動後の位置において上述の動作と同じ動作を行うことにより、血管3の一定範囲の長軸方向の長さにわたって血管3の中心位置を特定しながら、各位置において正確な弾性特性を計測することができる。
【0089】
本実施形態においては、超音波プローブ13の内部で振動子30が移動できるよう、超音波プローブ13内部に振動子30を駆動する機構を設けた例を説明する。
【0090】
図11(a)および(b)は本実施形態による超音波プローブ13の物理的な構成を示す。(a)は斜視図であり、(b)は上面図である。超音波プローブ13は、ラック110およびモータ111を備えている。ラック110は、歯が設けられた平板状の棒であり、ケース50と物理的に結合されている。モータ111の回転軸にはピニオンが設けられており、ラック110の歯と噛み合わされている。モータ111が回転することにより、そのラック110とともにケース50がy軸方向に移動する。これにより、図9に示す振動子30の移動が実現される。モータ111を回転するための電力の供給、y軸方向の移動量に対応するモータ111の回転数および回転時間は、プローブ制御部25によって制御される。
【0091】
図12は、本実施形態による超音波診断装置11において血管3の弾性特性を計測する処理の手順を示すフローチャートである。ここでは図11(a)および(b)に示す超音波プローブ13が使用されるとする。
【0092】
ステップS1において、プローブ制御部25が超音波プローブ13に制御信号を送ると、振動子30は超音波を発生させながらx軸方向を走査する。そしてステップS2において、強度情報生成部23は、振動子30から繰り返し送信された超音波の反射波を検出し、反射強度を取得する。振動子30の一方の端部から他方の端部まで超音波を順次送信し、反射波を受信することにより、反射強度分布が得られる。
【0093】
次のステップS3では、中心位置判定部24は、反射強度が最大となる振動子30上の位置を、超音波が血管中央oを通過する位置(中心位置)として特定する。
【0094】
ステップS4において、制御部26はその中心位置における血管3の弾性特性の計測を指示する。この指示に基づいて、位相検波部17、フィルタ部18、演算部19および演算データ記憶部20が動作して、血管3の弾性特性を計測する。
【0095】
そしてステップS5において、表示部21は血管長軸の断面図を表示するとともに、演算部19によって計測された弾性特性を、その断面図上に重畳して表示する。
【0096】
ステップS6では、プローブ制御部25は、超音波プローブ13内で振動子30をy軸方向に一定距離だけ移動させる。たとえば、血管3の弾性特性を異なる5箇所について計測するときは、プローブ制御部25は、超音波プローブ13内の可動範囲の1/5の距離だけ、超音波プローブ13内で振動子30をy軸方向に移動させる。
【0097】
ステップS7において、振動子30が超音波プローブ13内の可動範囲の終端位置に到達したか否かを判定する。まだ到達していない場合には、処理はステップS1に戻り、到達していた場合には処理は終了する。
【0098】
上述したステップS1〜3の処理によって、反射強度が最大となる振動子30上の位置が、中心位置として特定され、その中心位置において血管3の弾性特性が計測されるため、血管の正確な歪み量を測定できる。よって、正確な弾性率を測定することができる。
【0099】
(実施形態2)
実施形態1においては、血管3の断面中心を特定するとともに、振動子30を超音波プローブ13内で所定の軸方向に沿って移動させるとした。これは血管3が表皮と平行に伸びているときには有効である。
【0100】
本実施形態においては、血管3が表皮と平行でないときにおいても、血管3に垂直な断面における中心を特定することが可能な超音波プローブを説明する。
【0101】
図13(a)および(b)は、ケース50の比較的上方の点Kを支軸としてケース50を振り子のように振動させる超音波プローブ13の構成例を示す。支軸は体表に平行である。後述する図17に示すように、モータの回転がギヤやベルトなどの伝達機構を介して支軸に伝わるように構成されている。ただし、モータの回転軸を支軸に一致させてもよい。これにより、振動子30から送信される超音波の送信方向を変化させることができる。振動子30の回転方向および回転する角度の制御は、プローブ制御部25によって行われる。図13(a)および(b)の例における可動角度は−90度から90度であるとする。なお、支軸である点Kは体表から離れた位置に設けたが、体表に近い位置に設けてもよい。
【0102】
図13(a)は角度θ0(θ0>0とする)だけ回転させたときの振動子30を示しており、図13(b)は角度を0としたときの振動子30を示す。図13(a)および(b)には、血管3の位置も示されている。本実施形態においては、血管3が表皮と平行ではなく、表皮から深さ方向に伸びているとしている。
【0103】
このように構成された超音波プローブ13を用いると、最大反射強度に基づいて、振動子30から送信される超音波が血管3の断面中心を通過するときの回転角を特定すれば、血管3に垂直な断面内の中心位置において血管3の弾性特性を計測できる。
【0104】
図14は、0度から徐々に大きくなるように振動子30の角度を変更しながら超音波を送信したときの、強度情報生成部23が生成した超音波反射波の反射強度の分布を示す。超音波の送信回数は、各角度位置において1回でよい。
【0105】
角度0においては、図13(b)に示すように、超音波は血管3に直角ではない角度で入射する。入射した超音波は、血管3の外壁および内壁においてその多くが入射方向とは異なる方向に反射され、一部のみが入射方向に戻り、その反射強度が測定される。
【0106】
角度0から角度θ0にいたるまでは、反射強度は徐々に大きくなっている。反射強度が
大きくなるほど、超音波が血管3に対して垂直により近い角度で入射していることを意味している。よって、中央位置判定部24は、より大きい反射強度が得られると、より垂直に近くなったと判定する。
【0107】
角度を徐々に大きくしていくことにより、反射強度が最大になる角度θ0(θ0>0)にいたる。反射強度が最大になったとき、超音波の進行方向は血管3の長軸に対して直交する。その理由は、実施形態1において、図9を参照しながら説明したとおりである。
【0108】
角度θ0において反射強度が最大であると判断するためには、振動子30を角度θ0よりも大きい角度に傾けて反射強度を測定する必要がある。より大きい角度のときに得られた反射強度が、角度θ0のときの反射強度よりも小さくなったときに、角度θ0において反射強度が最大になると判断できる。
【0109】
なお、振動子30が、図13(b)に示す角度0の状態から上述の角度θ0(θ0>0)とは反対の負の角度側に振られたときは、反射強度は徐々に小さくなる。超音波の送信方向が血管3と平行に近づいているためである。そこでプローブ制御部25は、振動子30を振る方向を逆に設定する。
【0110】
この構成によれば、超音波プローブ13の角度と血管3の伸びる角度との関係を意識する必要はないため、超音波プローブ13に不慣れな使用者が使用しても正確な弾性率を測定することができる。
【0111】
上述の実施形態の説明においては、最大反射強度を利用して、超音波が垂直に血管3に入射するときの断面中心を通過する位置を特定した。しかし、最大反射強度を利用しなくても、中心位置を特定することは可能である。たとえば、図15に示す、いわゆる1.5Dアレイ振動子を利用することにより、上述の角度θ0を高精度かつ高速に特定すること
ができる。
【0112】
図15は、振動子30の変形例である振動子35を示す。振動子35は、2列の超音波振動子群35aおよび35bを有する。超音波振動子群35aおよび35bは、超音波プローブ13内の移動方向(y軸方向)に沿って配列されている。
【0113】
振動子35を利用すると、超音波振動子群35aにおいて検出された反射強度、および、超音波振動子群35bにおいて検出された反射強度の差分Tに基づいて中心位置を特定することができる。その原理は以下のとおりである。
【0114】
図16は、振動子35の角度と、超音波振動子群35aおよび超音波振動子群35bにおいて検出された反射強度の差分値Tとの関係を示す。振動子35が図13(b)に示す角度0の状態から、図13(a)に示す角度θ0に示す方向に振られると、まず超音波振
動子群35bにおいて検出される反射強度が当初の0から徐々に増加し始める。超音波振動子群35aに関しては、超音波振動子群35aが血管3からより離れているため、超音波振動子群35aによって検出される血管3からの反射強度は、超音波振動子群35bによって検出される血管3からの反射強度よりも弱い。よって、出力差分Tは当初は正の方向に増加する。
【0115】
その後、振動子30の角度が大きくなるにつれて超音波振動子群35aの反射強度が増加し始めると、出力差分Tは徐々に減少する。そして超音波振動子群35aおよび35bの出力が等しくなると、出力差分Tは0になる。出力差分Tが0になっているときは、図14に示す方向からみると超音波振動子群35aおよび35bが血管3の中心軸に関して対称に配置されている状態にある。よって、このときの超音波振動子35の位置が血管に対して垂直な位置に対応する。
【0116】
振動子35を用いて反射強度の差分に基づいて中心位置を判定する方法によれば、図10に示す最大強度を判定する方法のような反射強度のピーク検出が不要であるため処理時間が短縮化される。また振動子35の角度を調整するにあたっては、出力差分Tの信号の正負を確認して正方向への回転か負方向への回転かを判断すればよい。たとえば正ならば同じ方向へ振動子30の回転を制御すればよいし、負ならば反対方向へ振動子30の回転を制御すればよい。なお本実施形態においては、超音波振動子群35aおよび35bの反射強度の差分の計算は、強度情報生成部23によって行われる。
【0117】
なお、図16の波形は理解を容易にするための例であり、必ずしも直線であるとは限らず、曲線として得られる場合もある。
【0118】
実施形態1においては、体表に平行に振動子30を移動させて超音波の送信位置を変化させる構成(図11等)を説明した。そして本実施形態においては、振動子30を振り子のように回転させて超音波の送信角度を変化させる構成(図9)を説明した。これらの構成は、組み合わせることが可能である。これにより、超音波を送信できる範囲がさらに広くなり、測定可能範囲を広くすることができる。換言すれば、超音波プローブ13を体表に当てる位置に関して、その許容範囲が広くなる。
【0119】
図17は、y軸方向に移動可能で、かつ、x軸を中心にして回転可能な超音波プローブ13の物理的な構成を示す。本実施形態による超音波プローブ13の構成要素のうち、図11(a)および(b)の超音波プローブ内の構成要素と同じものには同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
【0120】
実施形態1による超音波プローブに対して、本実施形態による超音波プローブ13は、x軸に平行な支軸を中心にして、振動子30を含むケース50をモータ111によって振り子のように回転させることができる。図11に示すラック110およびモータ111は、図17においてはラック112およびモータ113によって実現されている。
【0121】
本実施形態においては、ケース50はラック112に接続されている。また、ケース50は、モータ111の動力が伝達される支軸に対して回転できるように接続されている。回転時においては、ケース50、ラック112およびモータ113は一体となって駆動されるとする。モータ111の回転およびモータ113の回転は、プローブ制御部25からの制御信号に基づいて独立して制御される。
【0122】
図18は、本実施形態による超音波診断装置11において血管3の弾性特性を計測する処理の手順を示すフローチャートである。
【0123】
まずステップS10において、振動子30がy軸方向のある位置に存在するときおいて、プローブ制御部25が超音波プローブ13に制御信号を送ると、モータ111は、超音波を発生させながら超音波プローブ内で振動子30を振り子運動させる。
【0124】
ステップS11において、強度情報生成部23は、たとえば一方の回転端(+90度)から他方の回転端(−90度)まで振り子運動する間に送信された超音波の反射波を検出し、反射強度分布を取得する。
【0125】
ステップS12において、中心位置判定部24は、反射強度が最大となる振動子の角度を、超音波が血管を垂直に通過する角度として特定する。その後、制御部26が図12のステップS1〜S4の処理と同じ処理の実行を指示すると、位相検波部17、フィルタ部18、演算部19および演算データ記憶部20が動作して、血管に垂直な断面における中心位置が選定され、その中心位置における血管3の弾性特性が計測される。
【0126】
ステップS13において、表示部21は血管長軸の断面図を表示するとともに、演算部19によって計測された弾性特性を、その断面図上に重畳して表示する。
【0127】
ステップS14において、プローブ制御部25は、超音波を発生させながら振動子を血管長軸方向(y軸方向)に一定距離だけ移動させる。
【0128】
ステップS15において、プローブ制御部25は、振動子が終端位置に到達したか否かを判定する。まだ到達していない場合には、処理はステップS10に戻り、到達していた場合には処理は終了する。
【0129】
上述したステップS10〜12の処理によって、超音波が血管に垂直になるように調整される。さらに、上述したステップS1〜3の処理によって、反射強度が最大となる振動子30上の位置が中心位置として特定され、その中心位置において血管3の弾性特性が計測されるため、血管の正確な歪み量を測定できる。よって、正確な弾性率を測定することができる。
【0130】
なお、上述の処理手順では、まず振動子30を振り子運動させて超音波が血管に垂直になるよう調整し、その後、血管長軸方向に振動子30を移動させるとした。しかしながら、この順序は例である。たとえば血管長軸方向に振動子30を移動させながら、各位置において振動子30を振り子運動させ、その都度、超音波が血管に垂直になるよう調整してもよい。
【0131】
実施形態1および2では、反射強度が最大となる振動子30上の位置(中心位置)が特定されて、その位置からの音響線が血管3の短軸断面の中心を通るとして、その中心位置において血管3の弾性特性を計測するとした。
【0132】
しかしながら、反射強度を直接利用しない方法も考えられる。たとえば、振動子30から超音波を発生させながらx軸方向を走査して反射波を受信し、得られたそれぞれの反射波に基づいて、性状特性値演算部32を利用して血管組織の厚さの歪み量を計測する。中心位置判定部24はその歪み量の計測結果を受けて、歪み量が最大になったときの振動子30の長さ方向に沿った位置を特定する。歪み量が最大になったときに音響線が血管3の短軸断面の中心を通過しているといえる。その理由は以下のとおりである。中心から離れていくにつれて厚さ歪みは徐々に小さくなり、それにしたがって、厚さの上下面での反射強度も小さくなる。そして血管の端では厚さの上下面での反射はなくなる。中心から厚さの上下面の十分な反射がある範囲では、中心を通る音響線による厚さ歪みが最大になると考えられる。この結果、上述の処理によって特定された位置が上述の中心位置となる。性状特性値演算部32は、その中心位置における血管3の弾性特性を計測すればよい。
【0133】
上述の血管組織の厚さの歪みを測定する方法による処理の手順は、たとえば図12のステップS3およびS4を除いては実施形態1の処理の手順と同じである。具体的には、図12のステップS3に代えて、各反射波に基づいて性状特性値演算部32が血管組織の歪みを計測する処理を行えばよい。またステップS4に代えて、管組織の歪みが最大となったときの位置を中心位置判定部24が中心位置として特定し、性状特性値演算部32が、その中心位置において受信された超音波の反射波に基づいて血管3の弾性特性を計測すればよい。
【0134】
その結果、ステップS5では、中心位置における弾性特性が表示されることになる。なお、中心位置が特定された後は、改めて超音波の送受信を行ってもよいし、すでに得られている受信波に基づいて弾性特性を計測してもよい。なお実施形態1を例に説明したが、上述の処理は実施形態2の処理に対しても適用可能である。
【0135】
実施形態1および2においては、いわゆるラック&ピニオン方式で振動子30を超音波プローブ13内で移動させるとしたが、これは例である。モータ111および/またはモータ113とケース50とをベルトで結び、モータの回転によってベルトを巻き、または送ることにより、ケース50および振動子30の移動および回転を制御してもよい。また、駆動装置であるモータの種類も任意であり、たとえばリニアモータやボイスコイルモータを用いてもよい。使用するモータの駆動方式に応じて、振動子30を移動させるための超音波プローブ13内の構造を変えることは当業者であれば容易である。
【0136】
なお、プローブまたは超音波診断装置の本体にスイッチ(図示せず)を設け、超音波プローブ内の振動子の移動および/または回転を行うか否かを切り替えられるようにしてもよい。プローブの使用に熟達した操作者であれば、表示された弾性特性の画像を見れば弾性特性の測定結果が正確といえるか否か、すなわちプローブが適切に配置され、血管の断面中心において血管の弾性特性が測定されているか否かを容易に判断できるためである。中心位置の判定処理を行うか否かを切り替えることができることにより、超音波診断装置を使用者の習熟度に応じて動作させることができ、利便性を高めることができる。
【0137】
図10および図16を参照しながら説明した中心位置を特定する処理のうち、振動子30を移動させて反射強度を取得する処理は、他の測定、たとえば、血管3の形状測定や、血管3の直径測定にも利用できる。これは、測定した形状からも血管の中心位置を特定できることを意味する。血管3の形状を測定する処理に利用するときは、血管3の長軸に沿って複数の断面の形状のデータを蓄積することにより、形状データを取得する。形状データは、血管3が心拍によって変化する血管3の前壁の厚さ変化を含んでもよい。また血管3の直径を測定する処理は、これまで説明した中心位置における血管3の超音波プローブ13に近い側の壁からの反射波と、遠い側の壁からの反射波との差を演算することによって実行される。上述の反射強度を取得する処理を、超音波プローブ13が被験者の体表に当てられたときに予め実行しておくと、その後の処理を迅速に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の超音波診断装置は、生体組織の性状特性および形状特性の測定に好適に用いられ、正確な弾性特性の測定に適している。また、血管壁の弾性特性を測定し、動脈硬化病変の発見や動脈硬化の予防に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0139】
1 血管外組織
2 体表
3 血管
4 血管前壁
5 血液
11 超音波診断装置
12 血圧計
13 超音波プローブ
14 送信部
15 受信部
16 遅延時間制御部
17 位相検波部
18 フィルタ部
19 演算部
20 演算データ記憶部
21 表示部
22 心電計
23 強度情報生成部
24 中心位置判定部
25 プローブ制御部
26 制御部
30、35 振動子
31 形状測定値演算部
32 性状特性値演算部
40 血管壁
41 ROI
50 ケース
110、112 ラック
111、113 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に配列された複数の振動素子を有する振動子を利用して、超音波を送信し、生体の組織で反射した前記超音波を受信する超音波プローブと接続可能な超音波診断装置であって、
前記振動子に対し、前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させる送信部と、
血管で反射された前記超音波を、前記振動子を用いて繰り返し受信して複数の受信信号を生成する受信部と、
前記複数の受信信号に基づいて、前記反射波の強度分布に関する強度情報を生成する強度情報生成部と、
前記強度情報に基づいて、前記反射強度が最大になったときの前記長さ方向に沿った位置を特定する判定部と
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波プローブは、前記超音波プローブ内において前記振動子の位置を変化させる駆動装置を有し、
前記超音波診断装置は、前記駆動装置を制御して、前記判定部で特定する前記位置の情報に基づいて前記振動子の移動を制御し、前記振動子が前記超音波を送信する位置を変化させるプローブ制御部をさらに備えている、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記判定部で特定する前記位置で前記超音波を送信して前記血管の性状特性又は形状特性を演算する演算部をさらに備え、
前記演算部が前記特定された前記位置における前記血管の性状特性値又は形状特性値を測定した後に、前記プローブ制御部は前記駆動装置を制御して、前記超音波の送信方向に垂直で、かつ、前記振動子を前記長さ方向に垂直な方向に移動させる、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記送信部は、移動後の前記振動子に対して、さらに前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させる、請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
超音波を送信し、生体の組織で反射した前記超音波を受信する振動子、および、前記振動子の角度を変化させる駆動装置を有する前記超音波プローブと接続可能な超音波診断装置であって、
前記駆動装置を制御して、前記超音波を送信する方向を変化させるプローブ制御部と、
前記振動子に対し、超音波を送信させる送信部と、
前記血管で反射された前記超音波を受信して、受信信号を生成する受信部と、
前記受信信号に基づいて、前記反射波の反射強度に関する強度情報を生成する強度情報生成部と、
前記強度情報に基づいて、前記反射強度が最大になったときの角度を特定する判定部と
を備える、超音波診断装置。
【請求項6】
前記プローブ制御部は、前記判定部で特定する前記角度の情報に基づいて前記振動子の回転を制御する、請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記判定部で特定する前記角度で前記超音波を送信して前記血管の性状特性又は形状特性を演算する演算部を備える、請求項5又は6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記プローブ制御部が前記振動子の角度を変化させる前後において、
前記送信部は、前記振動子に対し前記超音波をそれぞれ送信させ、
前記受信部は、それぞれ送信された各超音波に対応する各受信信号を生成し、
前記強度情報生成部は、前記各受信信号に基づいて、前記反射波の反射強度を示す強度情報を生成し、
前記プローブ制御部は、前記振動子の角度を変化させた後の反射強度が、前記振動子の角度を変化させる前の反射強度よりも小さくなるまで、前記振動子の角度を変化させる、請求項5から7のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記振動子は、長さ方向に配列された複数の振動素子を有しており、
前記判定部によって反射強度が最大になったときの角度が特定された後において、
前記送信部は前記振動子に対し、前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させ、
前記受信部は、前記血管で反射された前記超音波を、前記振動子を用いて繰り返し受信して複数の受信信号を生成し、
前記強度情報生成部は、前記複数の受信信号に基づいて、前記反射波の強度分布に関する強度情報を生成し、
前記判定部は、前記強度情報に基づいて、前記反射強度が最大になったときの、前記長さ方向に沿った位置を特定する、請求項5から8のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
測定された前記血管の性状特性値又は形状特性値を表示するための表示部をさらに備えた、請求項3、4または7のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
長さ方向に配列された複数の振動素子を有する振動子を利用して、超音波を送信し、生体の組織で反射した前記超音波を受信する超音波プローブと接続可能な超音波診断装置であって、
前記振動子に対し、前記長さ方向に沿った異なる位置から超音波を逐次送信させる送信部と、
血管で反射された前記超音波を、前記振動子を用いて繰り返し受信して複数の受信信号を生成する受信部と、
前記複数の受信信号の各々に基づいて、前記血管の歪み量を演算する演算部と、
前記歪み量が最大になったときの前記長さ方向に沿った位置を特定する判定部と
を備え、前記演算部は、特定された前記位置で受信された前記超音波に基づいて、前記血管の歪み量以外の前記血管の性状特性値を演算する、超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−46856(P2013−46856A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−265994(P2012−265994)
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2007−209248(P2007−209248)の分割
【原出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】