説明

超高分子量のポリ−ガンマ−グルタミン酸、及びその利用方法

【課題】耐塩性菌株バチルス・サブチルスチョンククチャンによって製造される超高分子量のポリ−ガンマ−グルタミン酸、及びこれを含む食品、化粧品、飼料及びミネラル吸収促進用の組成物を提供する。
【解決手段】耐塩性菌株によって製造される分子量5,000kDa以上の超高分子量ポリ−ガンマ−グルタミン酸(PGA)であり、その95%以上の分子が分子量3,000〜15,000kDaの範囲に属し、バチルス・サブチルスチョンククチャンの培養を通じて製造することができ、優れた吸湿性、保湿性、徐放性、ミネラル溶解性、及び吸水性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、韓国の伝統の豆醗酵食品である清麹醤(チョンククチャン)から分離した耐塩性菌株バチルス・サブチルスチョンククチャン(Bacillus subtillis var. chungkookjang, KCTC0697BP)によって製造される超高分子量のポリ−ガンマ−グルタミン酸(以降、「PGA」と表記)、及びその利用方法に関する。より詳しくは、食用、水溶性、陰イオン性及び生分解性を表す高分子物質である分子量5,000kDa以上のPGA、及びこれを含む食品、化粧品、飼料及びミネラル吸収促進用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
PGAは、 D,L−グルタミン酸がガンマ−グルタミル(gamma-glutamyl)結合した重合体である粘液性物質であって、稲わらを利用した韓国伝統の豆醗酵食品である清麹醤、日本伝統の豆醗酵食品である納豆、ネパール伝統の豆醗酵食品であるキネマなどから分離したバチルス属の菌株から製造される。
バチルス属の菌株から製造されるPGAは、食用、水溶性、陰イオン性及び生分解性を有する高分子物質であって、吸湿剤、保湿剤及び化粧品の原料や、エステル誘導体の合成による生分解性プラスチックの製造のための素材物質としての利用が可能である。
最近、PGAの製造と利用に係り、難分解性重合体の代替商品の素材、エステル化反応による耐熱性プラスチックの開発と水溶性繊維及び膜の製造などに関心を置いた研究が、先進国を中心に盛んに行なわれている。また、PGAにガンマ線を照射する際に惹起される物性変化の研究及び架橋結合剤による水和ゲル(hydrogel)の開発及び産業化研究が推進されている。
PGA水和ゲルは、バチルス・サブチルスチョンククチャンの培養によって製造されるバイオポリマーであるPGAを原料として、分子間あるいは同一分子内の架橋結合を通じて製造され、吸水性、生分解性及び可塑性の特性を有する環境親和的な素材である。PGAの架橋結合の方法として、ガンマ線や電子線などの放射線の照射や、エポキシ樹脂などを利用した化学架橋剤を処理する方法などを挙げることができる。PGA水溶液に放射線を照射するとPGA分子間に架橋反応が起こり、吸水性、生分解性及び可塑性を有するPGA樹脂が得られる。
従来から、PGAの組成及び製造におけるマンガンイオンの影響、超音波分解による水溶性重合体への利用に対する研究、及びエステル誘導体の合成による低水溶性プラスチックの開発に関する研究(Biosci.Biotecnol.Biochem.,60(8):1239−1242,1996)とバチルス・サブチルスによるPGA製造及びカルシウム溶解剤として骨粗鬆症の治療効果を有する健康食品への応用(日本国特開平6−32742号公報)などが報告されている。
それ以外にも、水系のリン含量を減らして水質汚染を減少させる効果(ヨーロッパ特許第838160号)と、放射線照射により高ゲル化された、水溶性の、生分解性で吸着性のPGA樹脂を製造し、衛生用品、食品及び園芸産業に応用・活用した特許(日本国特開平10−251402号公報;日本国特開平7−300522号公報;日本国特開平6−322358号公報)などが出願公開されている。
また、PGAの溶解、沈殿及び乾燥による固形化生分解性の繊維、フィルム及びフィルム成形体としての利用(日本国特開平7−138364号公報;日本国特開平5−117388号公報)、及び薬物担体用ポリマー(日本国特開平6−92870号公報;日本国特開平6−256220号公報)に対する特許も公開されている。
一方、PGAの効率的な製造(韓国特許出願第1997−3404号;韓国特許出願第1997−67605号)と高濃度PGAの製造方法(韓国特許出願第2001−0106025号)に対する特許、及び高分子量のPGAを生産する耐塩性の菌株であるバチルス・サブチルスチョンククチャン(韓国特許公開2001−78440号;国際出願PCT/KR01/01372)に対する特許も出願されている。
従来製造されていたPGAの分子量は、100〜2,000kDa程度であり、これらはその応用に際し、特に化粧品や食品分野への利用において、ミネラルの溶解度、吸収率及び徐放性の点で限界を有していた。
そこで、本発明者らは、超高分子量のPGAを製造するために鋭意研究し努力した結果、バチルス・サブチルスチョンククチャンをブドウ糖、クエン酸、グルタミン酸を含む培地で回分式にて培養することにより、副産物なしに分子量5,000kDa以上のPGAを得て、これを保湿剤、吸収剤、ミネラルの吸収促進剤などの用途として適用した研究の結果、その効果が非常に優れていることを確認し、本発明を完成した。
【発明の開示】
【0003】
本発明の主な目的は、従って、分子量が5,000kDa以上の超高分子量のPGAを提供することにある。
本発明の他の目的は、前記超高分子量のPGAを含む化粧品、食品及び飼料を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記超高分子量のPGAを用いて製造した水和ゲル及びそれを含む吸湿剤又は吸収剤を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記超高分子量のPGA及びミネラルを含むミネラル吸収促進用の組成物を提供することにある。
前述したような目的を達成するために、本発明は、平均分子量が5,000kDa以上の超高分子量のPGAを提供する。
本発明において、前記PGAの分子量は5,000〜15,000kDaであることが好ましい。
本発明によるPGAは超高分子量であるため、従来の分子量の大きくないPGAに比べて吸湿性及び保湿性が非常に優れている。従って、本発明はまた、前記超高分子量のPGAを含む食品、化粧品及び飼料を提供する。
本発明によるPGAを原料にして製造した水和ゲルは、分子量の大きくないPGAを原料にして製造した従来製品に比べて吸水性が非常に優れている。従って、本発明はまた、前記超高分子量のPGAから製造された水和ゲル及び前記水和ゲルを含む吸湿剤又は吸収剤を提供する。
本発明によるPGAは、ミネラルイオンの溶解度を向上させる非常に優れた特性と、ミネラルイオンの徐放性における優れた特性を有する。従って、本発明はまた、前記超高分子量のPGAとミネラルとを含むミネラル吸収促進用の組成物を提供する。
本発明において前記ミネラルは、Ca、Fe、Mg、Zn、Cu又はSeであることが好ましいが、生体に必須なミネラルであれば特別な制限はない。
本発明において、前記PGAの代わりに、分子量5,000kDa以上の超高分子量のPGAと、陽電荷を有するポリアミノ酸との共重合体とすることができる。前記ポリアミノ酸は、好ましくはポリリジン又はポリアルギニンである。本発明によるPGAは陰電荷を帯びており、それ故、陽電荷を有するポリアミノ酸と静電気的に結合して共重合体を形成し得る。
本発明はまた、分子量が5,000kDa以上の超高分子量のPGAを、ミネラル吸収促進剤として使用する方法を提供する。
本発明において前記超高分子量のPGAは、微生物の培養によって製造される。本発明で超高分子量のPGAを製造するために用いた微生物は、バチルス・サブチルスチョンククチャン(Bacillus subtillis var. chungkookjang,KCTC 0697BP)であって、本発明の発明者らが2001年8月11日に出願した国際出願、PCT/KR01/01372号にその分離及び同定過程、生理学的特性などが詳細に記載されている。
前記菌株の形態学的、生理学的特性は次の通りである。
菌株は、LB寒天平板培地上で培養したとき、乳白色の菌集落を形成し、37℃以上の好気的条件において菌体の成長が活発であるグラム陽性菌であって、55℃以上の培養温度では菌体の成長が鈍化するという特性がある。 また、前記菌株は一般的なバチルス・サブチルスが有する食塩耐性濃度よりも高い9.0%の食塩(NaCl)濃度においても生育可能な耐塩性菌株であり、LB液体培地上で70時間以上に液体培養又は固体培養した場合、内生胞子を形成する典型的なバチルス菌である。前記菌株の16S rDNA塩基配列と、従来バチルス属の菌株の16S rDNA塩基配列とを比較分析した結果、バチルス・サブチルス(Bacillus subtillis)と非常に高い相同性(99.0%)を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
以下、実施例を通じて本発明を更に詳しく説明する。なお、これらの実施例は専ら本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲が、これらの説明や実施例によって制限されないことは言うまでもない。
例えば、下記実施例で超高分子量のPGAはバチルス・サブチルスチョンククチャン(Bacillus subtillis var. chungkookjang,KCTC 0697BP)菌株によって製造されることを例にしたが、これとは異なる菌株を使用したり、又は化学的な方法で超高分子量のPGAを製造したとしても、分子量が5,000kDa以上の超高分子量のPGAは、本発明の技術的範囲に属することは当然のことであろう。
【実施例1】
【0005】
超高分子量PGAの製造及び分子量測定
培地及び培養条件の最適化を通じて超高分子量PGAの製造が可能であるかを調べるために、次のような実験を行った。
PGA製造用の基本培地(L−グルタミン酸4%、グルコース3%、(NH4)2SO41%、Na−citrate1%、KH2PO40.27%、Na2HPO40.42%、NaCl0.05%、MgSO40.3%、ビタミン溶液1ml/Lが添加されたGS培地、pH6.8)3Lが入っている5L発酵槽に、バチルス・サブチルスチョンククチャン(Bacillus subtillis var. chungkookjang,KCTC 0697BP)菌株の1%培養液を接種し、撹拌速度150rpm、空気注入速度1vvmにして37℃で3日間培養した後、2Nの硫酸溶液を加えてpHが3.0になるように調節することにより、PGA含有の試料液を得た。
前記試料液を4℃で10時間静置して発酵液内の多糖類を取り除き、それにエタノールを発酵液の2倍量になるように加えて充分に混合した。混合液を4℃で10時間静置した後、遠心分離してPGA沈殿物を得た。
前記沈殿物に蒸留水を加えて溶解させ、タンパク質分解酵素100μg/mlを加えて37℃恒温器で6時間静置反応させ、PGA試料に存在する細胞外タンパク質を分解させた。
これを充分量の蒸留水で透析して遊離したグルタミン酸を取り除いた後、濃縮して純粋なPGAを得た。
図1に示すように、GPC分析によると、このようにして得られたPGAの平均分子量は13,000kDaであり、95%以上の分子が分子量3,000〜15,000kDaの範囲に属することを確認することができた。
この際、分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を利用して測定した。GPCを利用したPGAの分子量分析のために、GMPWXLカラム(VISCOTEK社)が2つ装着されたGPCシステム(ヨンイン科学社、韓国)を用いた。溶媒として0.1NのNaNO3を使用し、溶媒の流速は1分当り0.8mlにして分析した。標準物質としてはポリエチレンオキサイドを使用し、屈折計(refractometer,VISTOTEK社)を用いてPGAの分子量を測定した。
従来、バチルス・サブチルスチョンククチャン(Bacillus subtillis var. chungkookjang,KCTC 0697BP)菌株の培養によって得られるPGAの分子量は2,000kDa程度であったが(韓国特許公開2001−78440号)、本発明では、培地及び培養条件の最適化を通じて分子量が5,000kDa以上である超高分子量のPGAを成功裡に製造することができた。
【実施例2】
【0006】
超高分子量PGAの吸湿性及び保湿性
実施例1で製造された超高分子量PGAの吸湿性と保湿性を分子量600kDaの既存製品と比較した。
(1)吸湿性の比較
前記実施例1で得られたPGA、及び分子量600kDaの既存製品をシャーレにそれぞれ0.5gずつ入れて、45℃恒温槽の中に14時間入れておいて水分を完全に取り除いた試料を、炭酸カルシウムの飽和水溶液(精製水500gに炭酸カルシウム250gを添加)が入ったデシケーター(相対湿度81〜88%)に入れ、24時間にわたって経時による重量変化(吸湿性)を分析した。測定結果は図2に示した。
図2に示すように、分子量600−kDaのPGAの場合、24時間経過後、吸湿量が10%以下にとどまっているが、本発明による超高分子量PGAの場合は、吸湿量が約60%にも達しており、遥かに高い吸湿性を示していることが確認できた。
(2)保湿性の比較
前記(1)の条件において、48時間経過して充分に吸湿された試料を、乾燥シリカゲル(500g)が入っているデシケーター(湿度18%)に入れ、25℃を維持しながら24時間にわたって経時による水分減少率(保湿性)を測定した。測定結果は図3に示した。
図3に示すように、分子量600kDaのPGAの場合、24時間経過後、重量減少率が13%にも達しているのに対し、本発明による超高分子量PGAの場合は約10%程度であって、非常に高い保湿性を示すことが確認できた。
本実施例の結果により、本発明による超高分子量PGAを、化粧品、食品、飼料などの様々な保湿及び/又は吸湿用製品に活用することが可能であることが分る。
【実施例3】
【0007】
超高分子量PGAのCa溶解性
本発明による超高分子量PGAのCa溶解性を調べるため、以下のテストを行った。
実施例1で製造された超高分子量PGAを、0.062、0.125、0.25及び0.5mg/mlの濃度にて用意し、各濃度のPGA 0.5mlずつを10mMのCaCl2 0.5mlと20mMのリン酸緩衝溶液1.0mlの含まれた反応液に加えた後、37℃で反応させた。2時間経過後、各反応液を2000gで30分間遠心分離し、上清に残っているCaをCa定量キット(和光化学工業、日本)で定量した。 また、対照群としてマーカーA(市販PGA、味の素社、日本)、分子量1,000kDaのPGA及び分子量2,000kDaのPGAによるCa溶解性実験も併行した。テスト結果は図4に示した。
図4に示すように、全濃度にわたって本発明によるPGAが、従来製品に比べて遥かに多いCaイオンを溶解(吸着)しており、特に、PGAの濃度が0.125mg/mlである場合、マーカーA、分子量1,000−kDaのPGA及び分子量2,000−kDaのPGAはそれぞれ約12%、27%及び37%のCa溶解性を示したが、本発明による分子量5,000−kDaの超高分子量PGAは、約46%のCa溶解性を示した。
【実施例4】
【0008】
超高分子量PGAの腸内Ca吸収促進効果
実施例1で製造された超高分子量PGAを用い、Caの腸内吸収促進効果を調べるために以下の実験を行った。
濃度がそれぞれ0.05、0.1及び0.2%である分子量5,000kDaのPGAと、5mMの塩化カルシウムとを混合した溶液1.0mlをマウスに経口投与した。超高分子量のPGAがCaの腸内吸収促進に優れた効果を有することを明らかにするために、分子量が1,000kDaであるPGAとの比較実験を併行した。
30匹の4週齢(雄性)のマウス(BALB/c)を用い、適正温度に調節したマウスケージ中で、12:12時間の日照サイクルを設けて、基本飼料と共に蒸留水を与えて育てた。マウスをそれぞれ10匹ずつ3群に分け、第1群は分子量1,000−kDaのPGAを使用し、第2群は分子量5,000−kDaのPGAを使用し、第3群はPGAを使用しない対照群とした。塩化カルシウムを含むPGA溶液をそれぞれの群に経口投与し、対照群にはリン酸緩衝溶液を投与した。
経口投与して2時間後、エーテルで麻酔し、十二指腸から回腸までの全体の小腸をマウスの腹部から切り離した後、小腸を上下の2つの部分に分けてから冷生理食塩水で内容物を洗い出した。次いで、小腸組織に適正な冷生理食塩水を加えてホモジナイザーで均質化した。均質化された小腸組織を4℃で20分間にわたって8,000gで遠心分離した。遠心分離後、各分画の可溶性部分と非可溶性の沈殿物を分離し、−20℃に保持しながらそれらのCa含有量を定量キット(和光化学工業,日本)で分析した。分析結果は下記の表1に示した。
表1に示すように、分子量5,000kDaの超高分子量PGAのCa吸収促進効果が非常に優れていることを確認することができた。従って、超高分子量PGAはCa吸収用工業製品又は食用製品として活用可能であることが分った。
【0009】
[表1]

【実施例5】
【0010】
Caイオンの腸内吸収の際の徐放性に対する超高分子量PGAの効果
本発明による分子量5,000kDaのPGAが、Caイオンの腸内吸収の際に徐放性を示すかどうかを調べるため、以下の実験を行った。
分子量5,000kDaのPGA0.2%と、5mMの塩化カルシウムとを混合した溶液1.0mlを経口投与し、経口投与してから、1時間、1.5時間、2時間後にエーテルで麻酔し、十二指腸から回腸までの全体の小腸をマウスの腹部から切り離した以外は、実施例4と同様に実験を行った。テスト結果は図5に示した。
図5に示すように、分子量5,000kDaのPGAとCaとの混合溶液を投与した結果、Caの腸内吸収率は時間経過と共に増加し、これにより、本発明によるPGAは、ミネラルの腸内への吸収に対して優れた徐放性を示すことが確認できた。
【実施例6】
【0011】
Feイオンの血液内への吸収促進に対する超高分子量PGAの使用の効果
本発明による分子量5,000−kDaのPGAの使用による、Feイオンの血液内への吸収促進及び徐放性への効果を調べるため、以下の実験を行った。
分子量5,000−kDaのPGA 0.04%と、20mMの乳酸鉄とを混合した溶液1.
0mlを経口投与した。超高分子量のPGAがFeイオンの吸収促進に優れた効果を示すことを立証するために、分子量が1,000−kDaであるPGAとの比較実験を併行した。
30匹の4週齢(雄性)マウス(BALB/c)を使用し、適正温度に調節したマウスケージ中で、12:12時間の日照サイクルを設けて、基本飼料と共に蒸留水を与えて育てた。マウスをそれぞれ10匹ずつ3群に分け、第1群は分子量1,000kDaのPGAを使用し、第2群は分子量5,000kDaのPGAを使用し、第3群はPGAを使用しない対照群とした。PGAと塩化カルシウムを含む溶液をそれぞれの群に経口投与し、対照群にはリン酸緩衝溶液を投与した。 経口投与して3日後にエーテルで麻酔し、採血してパーティクルカウンター(Particle Counter:ERMA Inc.,日本、モデル名:PCE−170)で鉄含量を測定し、それをヘモグロビン量として表した。測定結果は下記の表2に示した。
表2から明らかなように、分子量が5,000−kDaであるPGAを投与した場合、Fe吸収促進効果が非常に優れていることが確認できた。従って、超高分子量のPGAはFe吸収用の工業製品又は食用製品として活用可能であることが分った。
【0012】
[表2]
PGA分子量によるFe吸収促進効果

【実施例7】
【0013】
超高分子量PGA水和ゲル(hydrogel)の吸水性
実施例1で製造された超高分子量PGA、及びPGA既存製品(600kDa)の5%水溶液に、25kGyのガンマ線を照射して水和ゲルを製造した。
次いで、前記製造された水和ゲルを水に浸し、24時間経過後にその増体量を測定することにより、水和ゲルの吸水性を調べた。測定結果は図6に示した。
図6に示すように、既存製品の吸収率は約2000倍であったが、本発明によるPGA水和ゲルの吸収率は約6400倍にも達しており、既存製品で作製した水和ゲルに比べて約3倍以上の吸収効率を示した。従って、本発明による超高分子量PGAを吸収用の水和ゲルとして活用する場合、従来品より少ない量で優れた吸収効果を示すことが可能であることが分る。
【産業上の利用可能性】
【0014】
上記したように、本発明は5,000kDa以上の超高分子量PGAを提供する。本発明はまた、前記超高分子量のPGAを含む化粧品、飼料及び食品と、前記PGAを利用して製造された高吸水性の水和ゲルを提供する。本発明はまた、ミネラルの体内吸収を画期的に増加させる分子量5,000kDa以上の超高分子量PGAを含む吸収促進用組成物を提供する。本発明によるPGAは超高分子量であるため、従来の分子量の小さいPGAに比べ、ミネラルの体内吸収と徐放性の効果が非常に優れており、ミネラル吸収用の工業製品又は食用製品として活用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、次の添付図と関連した以下の詳細な説明
によってより明確に理解されるであろう。
【図1】本発明によるPGAの分子量の分布を示すグラフである。
【図2】本発明による超高分子量PGAと既存製品との吸湿性を比べたグラフである。
【図3】本発明による超高分子量PGAと既存製品との保湿性を比べたグラフである。
【図4】本発明による超高分子量PGAのCa溶解度改善効果を示すグラフである。
【図5】本発明による分子量5,000kDaのPGAを使用した場合、時間経過によるCaの腸内吸収率を示す図である。
【図6】本発明による超高分子量PGAを原料にして製造された水和ゲルの吸収効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分子量が5,000kDa以上であることを特徴とする超高分子量のポリ−ガンマ−グルタミン酸(PGA)。
【請求項2】
平均分子量が15,000kDaであることを特徴とする請求項1記載のPGA。
【請求項3】
請求項1または2に記載のPGAから製造された水和ゲル。
【請求項4】
請求項1または2に記載のPGAを含む化粧品。
【請求項5】
請求項1または2に記載のPGAを含む食品。
【請求項6】
請求項1または2に記載のPGAを含む飼料。
【請求項7】
請求項3に記載の水和ゲルを含む吸水剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−202043(P2008−202043A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24118(P2008−24118)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願2004−521259(P2004−521259)の分割
【原出願日】平成15年7月10日(2003.7.10)
【出願人】(505011419)バイオリーダーズ コーポレイション (3)
【出願人】(505012690)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (7)
【Fターム(参考)】